2020.06.24 (公開 2020.06.24) サンゴ図鑑
「初心者向け」とされていても飼育に注意が必要なサンゴ
一般的に「サンゴの飼育は難しい」とされています。実際に魚よりは難しいところがあるのですが、種類によっては案外飼いやすいものもいます。ただし書籍などで「初心者向けのサンゴ」「飼育しやすいサンゴ」とされているものでも、飼育が難しかったりします。今回はいくつかの書籍などで「初心者向けのサンゴ」「飼育しやすくおすすめ」といわれることが多くても実際は飼育がしにくいサンゴを4種類ご紹介します。
なお、初心者にも最適なサンゴはこちらでご紹介しています。また書籍などで「難しい」とされているミドリイシなどのサンゴはやっぱり難しいところがあります。難しいサンゴについてはこちらをごらんください。
簡単だといわれていても飼育が難しいサンゴ
海水魚雑誌や、飼育ガイド本の中では「初心者向けのサンゴ」という記述がなされているサンゴがいくつかあります。しかしその中には海水魚飼育からサンゴ飼育へのステップアップしたばかりのアクアリストには難しいものもあります。今回は初心者向けといわれながらも筆者が実際に飼育したサンゴとしてはやや難しかったものをご紹介します。
アワサンゴ
▲アワサンゴ
従来アワサンゴは「初心者向けのサンゴ」「丈夫なハードコーラル」とされ、実際に長く飼育されていることも多いのですが、本種はハマサンゴ科のハードコーラルで、やや気難しいところがあります。最初のうちはポリプを長く伸ばしているから大丈夫、と思いきや、元素の欠乏に敏感なようで、定期的な添加、もしくは水替えが重要なようです。
さらにほかの生物に生存を脅かされるということもあります。アワサンゴにはウミウシの仲間が寄生していることもあり、見つけ次第取り除きますが、駆除できないことも多く、水槽に入れる前にできるだけ「コーラルRXプロ」などで薬浴するようにします。また、クマノミの仲間は大人気で初心者アクアリストでも飼いやすいこともあり、水槽に入れてしまうことも多いのですが、アワサンゴをイソギンチャクと勘違いしてクマノミがすり寄ることがありますが、そうなるとダメージを受けてしまうので注意が必要です。それでも飼育の難易度はよく似た仲間のハナガササンゴと比べればかなり低いといえます。
キクメイシ
▲キクメイシ
キクメイシは丈夫なハードコーラルで初心者が購入してもすぐ死んでしまうことは少ないサンゴです。しかし、注意点があります。キクメイシは骨格が分厚く成長がおそい、というところです。またダメージを受けると回復に時間がかかってしまうのです。水流はやや強めを好みますが、強くないと飼えないというものでもありません。成長は遅いですが、カルシウムリアクターを使用すれば骨格は確実に大きくなってくれるはずです。また餌も与えたら食べます。触手が開いているときにプランクトンフードなどを吹きかけて与えるとよいでしょう。
接触すると毒性はつよいものと、よわいものがおり、先ほど述べたアザミハナガタサンゴからの攻撃にも負けてしまうものがいました。さらに骨格だけになったところにコケがはえたらサンゴの生きている部分を覆うこともあり、注意しなければなりません。餌については与えると食べますが水質の悪化に注意しなければなりません。なお、オオトゲキクメイシやカクオオトゲキクメイシは名前に「キクメイシ」とありますが別の仲間であり、飼育方法も異なっているので注意が必要です。
ハナガタサンゴ
▲アザミハナガタサンゴ
ハナガタサンゴもよく飼いやすいサンゴとして紹介されますが、過去何度か飼育してきたものの若干難しいところがあるような気がします。餌は食べないとされていますが、あったほうがよいでしょう。もちろん毎日ではなく、1週間から10日に一度くらいでかまいません。またヤッコやハギ、アイゴなどの食害にはかなり弱く、傷がついたり弱ってしまうと回復させるのが困難になってしまいます。共肉が剥げたところに藻が生えてしまうと助からないことも多いのです。また添加剤はミドリイシを飼育するときほどは重要視されないといえますが、ハナガタサンゴを飼育するのにも添加剤は重要です。とくにKHは骨格の成長のために重要で、このようなLPSを飼育する上ではKHを高めにすることが推奨されています(レッドシーのリーフケアレシピなど)。
またハナガタサンゴという名前で呼ばれているものもいくつか種類があり、小型のマルハナガタサンゴは初心者にも長期飼育がしやすいといえます。アザミハナガタサンゴは大型になりそういうものは添加剤をしっかり添加し、定期的に水かえをすれば長期飼育できますが、食害にはかなり弱いので注意します。
カタトサカの仲間
▲カタトサカの仲間
カタトサカの仲間はソフトコーラルの一種です。飼育は難しくはないのですが、水流ポンプによる水流が欲しいところです。強い水流がサンゴに四六時中直接当たるようなものはだめで、弱め~若干強めの水流が間接的にあたるようなものが望ましいです。また光はやや強めを好み、レイアウトではできるだけ上の方に配置しておきたいサンゴです。そのためステップアップに最適のサンゴということになりそうです。
カタトサカを飼育するのに餌は必要なく、細かいプランクトンフード、もしくは液状フードを少量与える程度にとどめておいたほうがよいでしょう。毒性は中程度ですが、ウミキノコやウミアザミ、ツツウミヅタなどには勝ちます。それらのサンゴを溶かしてしまうことがあるので接触するところにおかないようにしましょう。水質についても配慮が必要で、硝酸塩の低い環境を好みますが、逆に硝酸塩がほとんど検出されないのもよくないように感じます。
まとめ
- サンゴ飼育は海水魚飼育とくらべてやや難しい
- 書籍で「サンゴ飼育初心者向け」とされていても飼育が難しいものもいる
- アワサンゴはウミウシなどが寄生していることもある
- アワサンゴにクマノミがすり寄るとダメージを受けることが多い
- キクメイシやアザミハナガタサンゴはダメージを受けると回復させにくい
- カタトサカは水流や水質に気遣う必要がある