2020.09.26 (公開 2019.02.19) サンゴ図鑑
マルハナガタサンゴの飼育方法~丈夫で飼いやすいハードコーラル
マルハナガタサンゴは大きな円形のポリプを持ち、自然下では大きな群体で見られるハードコーラルです。比較的丈夫で、強い光も必要ではなく飼育しやすいサンゴですが、毒性がやや強くほかのサンゴとの接触を避けたいところです。また餌を給餌するとよく食べ調子があがりますが、与えすぎると水を汚すこともあるので注意したいところです。
マルハナガタサンゴってどんなサンゴ?
マルハナガタサンゴはイシサンゴ目オオトゲサンゴ科のハードコーラル(LPS)です。円形の骨格が特徴的なハナガタサンゴの仲間で、海の中では多数の個体からなる群体をつくっていますが、海水魚店ではポリプ数個のものが販売されていることが多いです。カラーバリエーションがありコレクション性が高いサンゴともいえます。
この科にはほかにもカクオオトゲキクメイシやコハナガタサンゴといった種が含まれており、ハードコーラルとしては飼育しやすいものが多いです。
カラーと形のバリエーション
カラーバリエーションは多々ありますが、オレンジやベージュ系の色彩のものが多いです。まれにマルチカラーのものもありますが、このような個体はどうしても高価で入手しにくいです。
また、同じオレンジ系でも、薄い黄色の点が入るものなど、色や模様の入り方には色々なバリエーションがあり、コレクションする楽しみもあります。
このほか、中心が楕円形のものなど、若干の形のバリエーションがありますが、一部は別種のようです。近縁のものにはパラオハナガタサンゴやアザミハナガタサンゴなどがあり、ノウサンゴの仲間にも近いようです。飼育方法はマルハナガタサンゴなどとあまりかわらないですが、一部は低栄養塩の環境を好むかもしれません。
名前の似ているハナガササンゴ
▲ハナガササンゴ
ハナガタサンゴと似た名前のサンゴに「ハナガササンゴ」というのがいます。しかしながら、似ているのは名前だけで、分類も姿も飼育難易度も大きく異なるサンゴです。
ハナガササンゴはハマサンゴ科のLPSで、ポリプを長く伸ばした姿が特徴的です(ただしポリプを長く伸ばさないものもいる)。そして古くから知られているわりには飼育方法、いまだにどうすれば長期飼育できるかは多数のアクアリストが試行錯誤中であり、ようやくある程度は長期飼育できるようになりましたが、それでも飼育難易度は高いといえるでしょう。
マルハナガタサンゴに適した飼育環境
水槽
成長が早いサンゴというわけではないので、小型水槽でも飼育は可能ですが、初心者アクアリストには水質や水温が安定しやすい60cm以上の水槽で飼育することをおすすめします。
水質とろ過システム
外掛けろ過槽や外部ろ過槽、上部ろ過槽を使用した強制ろ過やナチュラルシステム(ベルリンなど)で飼育することができます。ただし、最近はやりの超低栄養塩環境をつくる「ゼオビット」などは栄養塩を取りすぎてしまうためマルハナガタサンゴなどのLPSにはあまり向いていないともいえます。
餌を与えたほうがよいサンゴですが、餌を与えると水が汚れやすくなります。そのためプロテインスキマーを用いるのもよいでしょう。オーバーフロー水槽以外でプロテインスキマーを使用するなら外掛け式のものが理想です。できればカミハタ「海道達磨」やゼンスイ「QQ1」など、ベンチュリー式のスキマーが理想です。
ただし水槽の縁の形状によっては使用できなかったり、水槽のサイズによってはパワーが足りなかったりすることもあります(どちらも60cmまでの水槽で使用するのが現実的)。
水温
基本的に25℃をキープするようにします。このあたりは、一般的な海水魚やサンゴと同様です。もちろんヒーターとクーラーで温度を一定に調整するようにします。
照明
ミドリイシのような250Wメタルハライドランプ直下のような強力な光のもとで飼育するのはよくありません。LEDもハイパワーのものであればやや離れたところから照射するとよいでしょう。夜間青色のLEDでサンゴを照らすようにすると個体によっては光るのでおすすめといえますが、日中はほかの色のLEDも照射するようにしたいものです。
水流
水流も強いものは必要ありません。強い水流を好むミドリイシやコモンサンゴの類と飼育するのであればやや水の流れが弱い場所においてやります。やってはいけないことはポンプから勢いよく出てきた水の流れを直接マルハナガタサンゴに当ててしまうことで、共肉などがダメージを受けてしまうこともあります。一度壁面などにあたり拡散した水の流れが当たるようにします。
マルハナガタサンゴにおすすめの餌と添加剤
餌
▲通常の状態のマルハナガタサンゴ
▲餌のニオイを嗅ぎ付けポリプを大きく開いた状態のマルハナガタサンゴ
マルハナガタサンゴは給餌をすることで調子を上げることができるサンゴです。おすすめの餌はLPS用のペレットフード、または粉末状サンゴフード、冷凍のホワイトシュリンプなどです。まずニオイの強い餌を流してサンゴの口を開かせ、開いたら水流ポンプや循環ポンプなどを止め、サンゴの口の中にスポイトなどを使用して餌を流してあげます。
給餌が終わったら水流ポンプや循環ポンプは再度始動させることを忘れてはなりません。とくに循環ポンプは再度始動することを忘れると魚やサンゴが死亡するおそれがあります。
添加剤
マルハナガタサンゴは飼育はしやすい、といっても骨格をもつハードコーラルなので骨格のもとになるカルシウム、ストロンチウム、ポタシウム、マグネシウムなどはぜひとも添加したいところです。このほかすべての海洋生物に必須のヨウ素と微量元素も添加してあげましょう。ただしカルシウムはカルシウムリアクターを導入するのがもっとも効果的といえます。カルシウムリアクターがあれば骨格が少しずつ大きくなっていきますし、KHの維持もしやすいです。
マルハナガタサンゴを入手する
入手時の注意点
マルハナガタサンゴはインドネシアなどから入ってきていましたが規制のためなかなか入手しにくくなりました。最近はオーストラリア便などで入ってきますが美しいものが多く、やや高価です。入手するときの注意点は、しっかり共肉がついているものを選び、白い骨格が見えているものは避けることと、色が飛んで白っぽくなっているものを避けることです。基本的に丈夫な種なのですが、購入するときにダメージを受けているものはなるべく購入しないようにしたいものです。
薬浴
マルハナガタサンゴにも寄生虫や病原菌などがついている可能性があるため、水槽に入れる前に「リバイブ」や「コーラルRXプロ」など専用の洗浄薬を用いて薬浴したほうがよいでしょう。
マルハナガタサンゴと他の生物との関係
置き場所
▲ほかのサンゴの陰になるような場所に置かれたマルハナガタサンゴ
土台がついていないものは骨格の部分にサンゴ用の接着剤を塗りライブロックやサンゴ岩にくっつけるようにします。セメントやフラグ用プラグなどの土台に付いているものは土台をサンゴ岩やライブロックに接着します。土台に付いているものであっても砂の上に直接置かないようにします。
ミドリイシやコモンサンゴなどのSPSとも飼育はできますが、マルハナガタサンゴを置く場所には注意が必要です。SPSが好むような強い光、強い水流はどちらもあまり好きではないので、陰になる場所に置くとか、やや水流が緩やかな場所に置くような工夫をしなければなりません。
ほかのサンゴとの接触
毒性はやや強いため、毒性が弱いオオタバサンゴやコハナガタサンゴなどとの接触は避けなければなりません。逆に毒が強めのハナサンゴの類との接触も禁物です。シコロサンゴとの接触では毒性がやや強めとされているシコロサンゴが大きなダメージを受けたので決して毒性が弱いというわけではないようです。
魚・無脊椎動物との関係
▲アブラヤッコなどサンゴ食が強い魚と組み合わせてはいけない
ハナガタサンゴはクマノミの仲間、スズメダイの仲間、底性・遊泳性ハゼの仲間、ベラの仲間(チューブリップは除く)、カエルウオ、ハナダイ、バスレットなど多くの魚と組み合わせることができます。逆に組み合わせてはいけないのはチョウチョウウオの仲間、クロベラなどのチューブリップの仲間などサンゴを食べてしまうおそれがある魚です。ヤッコも、とくにサンゴ食性が強いソメワケヤッコやヘラルドコガネヤッコといった種は組み合わせない方がよいでしょう。
ヤドカリやカニ、エビなどの甲殻類や、底砂掃除をしてくれるマガキガイなどの貝類と一緒に飼育する場合、ひっくり返されることもあるためサンゴを土台にしっかりと接着しておくようにします。しかしそれでも大型のカニやヤドカリなどの甲殻類は土台をひっくり返してしまうことがありますので、大型の甲殻類と一緒に飼育するのは避けるようにします。またフシウデサンゴモエビなどのように、エビの種類によってはハナガタサンゴの仲間の共肉をかじるようにして食べてしまうものもいます。
マルハナガタサンゴ飼育まとめ
- カクオオトゲキクメイシなどと同様オオトゲサンゴ科のLPS
- オレンジ、ベージュ、グリーンなどのバリエーションがある
- 名前が似ているハナガササンゴは全くの別物
- 初心者であれば60cm以上の水槽で飼育する
- ベルリンシステムでも強制ろ過でも飼育できるが低栄養塩水槽は不向き
- 水温は25℃
- メタハラや強力なLEDの直下に置かないようにする
- 水流も強すぎるのはよくない
- 餌をあげるとよく食べる
- ハードコーラルなのでカルシウム、マグネシウム、ストロンチウムなどの添加が必須
- カルシウムリアクターを使用するのがおすすめ
- 骨格が見えていたり色が飛んでいるものは避ける
- 水槽に入れる前に薬浴をしたい
- ほかのサンゴとの接触は避ける
- チョウチョウウオなどサンゴ食性の魚とは組み合わせない。ヤッコもなるべく組み合わせない方がよい
- エビの種類によっては共肉をむしることもある