2019.09.27 (公開 2017.12.02) サンゴ図鑑
アワサンゴの飼育方法~ウミウシとクマノミに要注意!
アワサンゴは、ハマサンゴ科の好日性ハードコーラルです。ハードコーラルの中では毒性が弱く繊細ですが、ゆらゆらした長いポリプをもつハードコーラルの中では丈夫で飼いやすく、この手のサンゴを初めて飼育するのに最適といえます。
ただ、「開かない」「ウミウシが寄生していた」という声も聞かれ、飼育や購入前における注意点も多く存在します。ここではこうしたアワサンゴについての飼育ポイントや不調時の対策をまとめています。
アワサンゴってどんなサンゴ?
▲ハマサンゴ
アワサンゴはハマサンゴ科のサンゴです。科の和名になっているハマサンゴは一般にSPS(ポリプの小さなイシサンゴ)とされているのに対し、アワサンゴはLPS(ポリプの大きなイシサンゴ)とされ、飼育についてもアワサンゴのほうがハマサンゴよりもはるかに楽といえます。
▲ハナガササンゴ
アワサンゴとよく似たサンゴにハナガササンゴというサンゴがいますが、ハナガササンゴはひとつのポリプに24本の触手があるのに対し、アワサンゴのポリプには12本しか触手がありません。ハナガササンゴもまたアワサンゴと飼育方法が異なっておりますので、また別項でご紹介します。
アワサンゴのバリエーション
アワサンゴの仲間も何種類かあり、いくつかのバリエーションが知られていますが、観賞魚店ではただ「アワサンゴ」として販売されていることが多いです。
ポリプは短いものが多いのですが、なかにはコモチハナガササンゴのようにポリプが細長く伸びるものもおります。色はさまざまですが、ポリプの中心が白っぽく、触手が薄い緑色というものが多く、ほか茶色っぽいもの、ピンク色のもの、紫色のもの、濃い緑色のものなど変異が見られます。
アワサンゴに適した飼育環境
水槽
アワサンゴは小型水槽でも飼育できないことはありませんが、初心者の方は小さくても45cm、できれば60cm水槽で飼育することをおすすめします。もちろん、オーバーフロー水槽であれば多くの水量をかせぐことができるのでさらに飼育しやすくなるといえます。
水質とろ過
アワサンゴは栄養塩の濃度は低い方がよいといえますが、比較的硝酸塩の蓄積には耐えられるハードコーラルですので、通常のろ過槽を用いての飼育も可能です。ただし、丈夫で飼育しやすいとはいえハードコーラルですので定期的な水かえを行うなどして、いつもきれいな水をキープするようにしたいものです。補助的にプロテインスキマーを使って魚の排せつ物や残り餌を分解してもらうのもよいでしょう。
水流
アワサンゴに対しては強すぎる水流は禁物です。もちろん水流が不要ということはないのですが、強い水流が直接当たるのはよくありません。ポリプがゆらゆらとたなびく程度の弱い水流が必要です。
水温
アワサンゴは日本にも分布するのですがハードコーラルの仲間は原則として国産のものが入ってくることはありません。多くはインドネシアなどから入ってくるものが販売されています。
あまりにも高水温は苦手ですので、25℃前後の飼育を心がけましょう。もちろん水温が上がったり下がったりするのは好ましくありません。ヒーターやクーラーを使って水温を常に一定にするようにします。
照明
アワサンゴに対してミドリイシのような強い光量は必要ありません。蛍光灯多灯やハイパワーLED1灯くらいでも十分飼育可能です。メタルハライドランプの250wや150wの多灯は強すぎというもので、あまり光の当たらない陰になるような場所においておくのが望ましいと言えます。
アワサンゴにおすすめの添加剤
ハードコーラルですので骨格を形成するためにカルシウム、ストロンチウムが必要です。このほかマグネシウム、ヨウ素、微量元素などを使用して必要な栄養をサンゴに届けるようにします。
アワサンゴは餌をまったく食べないということはありませんが、給餌で水質が悪化するおそれがあることを考えると与えない方がよいかもしれません。好日性のサンゴですので、基本的には蛍光灯やLEDの光による光合成だけで十分飼育可能です。どうしても与えたい場合は液体のフィトプランクトンなどを与えるくらいでよいでしょう。
一本でカルシウム・ストロンチウム・マグネシウム・ポタシウムを供給できる添加剤
アワサンゴの購入時の注意点
アワサンゴのポリプがよく開いているものを選ぶようにします。丈夫なサンゴではありますが、入荷したてのものや一部が溶けたようになっているもの、あるいは骨格だけになっている部位が多いものなどは避けます。初心者の方はお店の人に選んでもらうのがよいでしょう。
ウミウシ・ヒラムシに要注意!
アワサンゴには寄生するミノウミウシやヒラムシがついていることがあり、水槽にアワサンゴを入れる前に「コーラルRXプロ」や「リバイブ」などの薬品で薬浴を行う必要があります。
この寄生生物は1cmもない小さいものが多く、よく見ないと難しいのですが、発見したらスポイトなどですぐに水槽から取り除く必要があります。卵を産んでしまうとよく増えますので根絶は難しく、早いうちに退治することが大事です。
サンゴ専用の薬浴剤
アワサンゴと他の生物との相性
アワサンゴと魚との相性
▲クマノミに身を寄せられ、ストレスを受けたアワサンゴ
ハードコーラルを好んで食べるチョウチョウウオやゴールデンエンゼルなどの小型ヤッコ、フグの仲間とアワサンゴを飼育する場合は、ただの餌になってしまう可能性が高く注意が必要です。また、弱ってしまったらハギ(ニザダイ)やアイゴなどにもつつかれるおそれがあります
クマノミはアクアリストに人気がある魚ですが、アワサンゴとの飼育はやめたほうがよいかもしれません。
クマノミの仲間はイソギンチャクがない水槽ではアワサンゴにその身を寄せることがあります。しかしそれがアワサンゴにとってストレスになり閉じたままになって、死んでしまうことさえあります。
遊泳性ハゼ、ハナダイ、小型のバスレット、スズメダイ、テンジクダイ、イトヒキベラ類などとの飼育は問題ないでしょう。小型水槽であればイソハゼやベニハゼなどのピグミーゴビーとの飼育が楽しいのですが、小型水槽は意外と管理が難しく、注意が必要です。
アワサンゴと他のサンゴ・無脊椎動物との相性
アワサンゴと他のサンゴとの接触は避けるように配置して下さい。
毒性がこの仲間としては比較的弱く、ほかのサンゴの攻撃にも弱いからです。また他のサンゴと比べると骨格がやや軽いようですので、エビやカニ、ヤドカリといった甲殻類やマガキガイなどの貝にひっくり返されることのないように注意します。ひっくり返されるとアワサンゴに限らず、ハードコーラルにとってはダメージとなるためきちんとライブロックやサンゴ岩に接着しておく必要があります。
アワサンゴの飼育まとめ
- ハナガササンゴに似ているが飼育は容易
- 色彩やポリプの長さにはバリエーションがある
- できれば60cm以上の水槽で飼育したい
- 通常のろ過を用いたシステムでも飼育できる
- 水質悪化には強い方だが、水かえはきちんと
- 水流は必要だが、強すぎるのもダメ
- 水温は25℃前後で安定していることが重要
- メタハラの多灯は避ける。蛍光灯多灯やLEDがよい
- ハードコーラルなのでカルシウムやストロンチウムが必要
- マグネシウム、微量元素、ヨウ素も添加する。餌は不要
- 入荷したばかりのものや溶けているものなどは避ける
- 寄生するウミウシに注意。水槽に入れる前に薬浴を
- チョウチョウウオやサンゴ食の小型ヤッコとは飼えない
- クマノミとの飼育もやめたほうがよい
- 落下しないようにライブロックやサンゴ岩に接着する