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2020.12.01 (公開 2020.12.01) サンゴ図鑑

ロングテンタクルアネモネの飼育方法~クマノミの仲間が共生するイソギンチャク

ロングテンタクルアネモネは長い触手をもつ大型のイソギンチャクで、クマノミの仲間が共生するタイプのイソギンチャクです。きれいな水と強めの光が必要なイソギンチャクではありますが、適応範囲は広いようで比較的飼育しやすい種類ともいえます。また、砂の中に体をうずめていることがあり、サンゴイソギンチャクやセンジュイソギンチャクほど激しく移動することはあまりないなど、イソギンチャクをはじめて飼育するのに適した種類といえます。今回はロングテンタクルアネモネの飼育方法をご紹介します。

ロングテンタクルアネモネって、どんなイソギンチャク?

▲ロングテンタクルアネモネ

上記のイソギンチャクとは別種かもしれない

ロングテンタクルアネモネはサンゴ礁周辺の岩礁などに生息するイソギンチャクです。英語名Long-tentacle anemoneは「長い触手のイソギンチャク」という意味です。その名の通り、非常に長い触手をもち、触手に触れた魚をとらえたりサンゴにダメージを与えたりする困ったちゃんです。また本種の場合、触手がとくに口周辺でまばらで本数が少ない印象をうけますが、マバラシライトイソギンチャクと呼ばれる種類やオオサンゴイソギンチャクなど、おそらく複数種が含まれると思われます。主に琉球列島、西太平洋からインド洋に生息し、日本においてはフィリピンなどから入ってくる種で価格は比較的安価です。

ロングテンタクルアネモネと共生するクマノミ

ロングテンタクルアネモネは(比較的)カクレクマノミが入りやすいイソギンチャクとされています。共生するまで時間がかかるかもしれませんが、サンゴイソギンチャクなどよりは早いでしょう。またクマノミやハナビラクマノミなども好んで入ります。ほかのクマノミも入ってくれることが多いですが、ハマクマノミ系統はタマイタダキイソギンチャクなどのほうを好むようです。

ロングテンタクルアネモネに適した飼育環境

水槽

最低でも60cm水槽が欲しいところです。ロングテンタクルアネモネはあまり歩き回らない種類ではありますが、触手が長くのびること、またイソギンチャクは水を汚しやすいので少しでも広めの水槽で飼育したいからです。

水質とろ過システム

水質はサンゴだけでなくイソギンチャクにも重要な要素です。サンゴ同様に硝酸塩の少ないきれいな水が求められます。ただしイソギンチャクの場合はサンゴと異なり飼育水を著しく汚しやすいという特徴があります。つまりサンゴ以上に水質や餌には注意しなければなりません。

ろ過槽は上部ろ過槽、外部ろ過槽、オーバーフローシステムなどがよいでしょう。底面ろ過装置はイソギンチャク飼育にはよく使われたものですが本種は砂の中の基質につく習性が強いため、底面ろ過槽は使用しないほうがよいかもしれません。またロングテンタクルアネモネはサンゴイソギンチャクや、センジュイソギンチャクほど激しい移動はあまりしないのですが、それでも少しは移動するため、ろ過装置のストレーナーには必ずスポンジを使って吸い込まれないように配慮をしたいものです。

このほかにプロテインスキマーもあると水槽から残り餌などをハイパワーで取り除いてくれるのでよい水質を維持するのに役立つでしょう。外掛け式のものでもよいですので、ぜひとも入れてあげたいところです。

水温

水温は25℃前後が望ましいです。通常のサンゴと同じくらいです。あまりにも高水温にさらされると褐虫藻が抜けるなどし、弱って死んでしまうので温度はしっかり一定の水温を保つことが重要です。安定した環境は海水生物の飼育には重要ですが、イソギンチャクなど飼育が難しい生物の場合はとくに重要な要素となってきます。クーラーとヒーターを駆使し25℃をキープしましょう。なおヒーターには専用のヒーターカバーをつけておきましょう。

イソギンチャクの飼育について光は重要な要素ではありますが、ロングテンタクルアネモネはメタハラなどのような強めの光でも、比較的安価なLEDでも飼育でき光への順応性が高いといえます。逆に強い光のもと長期間いると色が抜けてしまうことがありますので、注意します。イソギンチャクの様子を見ながら照明の位置や強さを決めていくとよいでしょう。

水流

水流もあったほうがよいのですが、イソギンチャクはどうしても動くので水流のポンプを体でふさいでしまうという出来事が起きる危険性があります。そうなると体に傷がついてそこから死んでしまうこともあるので水流ポンプは使用しにくいです。ろ過槽からの水の流れを工夫したり、エーハイムのサーフェススキマーを使用するなどの工夫もしましょう。

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底砂とライブロック・サンゴ岩

ロングテンタクルアネモネは自然下では砂の中に体をうずめていることも多く、ある程度砂を敷いてあげたいものです。また岩の隙間にいたりすることもあるので、水槽内でもライブロックやサンゴ岩で岩組を組んであげましょう。底砂はあまり深く敷きすぎると硫化水素が発生する危険性もありますので、5cmくらいまでにとどめておきたいところです。

ロングテンタクルアネモネに最適な餌と添加剤

イソギンチャク専用のペレット

イソギンチャクに与える餌もいろいろ販売されています。おすすめはバイタリス(エムエムシー企画レッドシー事業部)のアネモネペレットで、水を汚しにくいドライフードです。ただしイソギンチャクの調子が悪いときや飼育をはじめたばかりのときなどは生のエビや魚の切り身などの餌を与えるようにします。しかしこれらは水を汚しやすいのでしっかりとしたろ過システムの構築と適度な水かえは欠かせません。

添加剤

サンゴ同様ミネラル豊富な海水を好みます。pH、KHも安定した環境が必要であることを考えると、しっかり添加剤も添加するべきです。カルシウム。ストロンチウム、マグネシウム、アルカリニティ。ヨウ素、微量元素の添加剤がほしいところです。レッドシーの各種添加剤や、ブライトウェル(マーフィード)の各種添加剤がおすすめです。

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ロングテンタクルアネモネをお迎えする

▲白っぽいものや透明のものはきれいだが要注意!

ロングテンタクルアネモネは比較的安価で購入できますが、イソギンチャクすべてに共通することとして「入荷直後の個体は購入しない」「白っぽいもの、色が抜けたものは購入しない」ということを守りましょう。また内臓が出たり、触手を下に向けてだらーん、としているのも絶対に選んではいけません。いきつけのショップに相談してみるとよいでしょう。とくにクマノミと共生を考えるのであれば、クマノミとイソギンチャクをセットで購入するのもよいかもしれません。もちろん売ってくれれば、の話ですが。

ロングテンタクルアネモネとほかの生物との相性

クマノミ類をのぞく魚との相性

イソギンチャクは強力な刺胞毒をもち、触れた魚を殺して餌にしてしまいます。そのためクマノミの仲間以外の海水魚とは一緒にしないほうがよいでしょう。魚の遊泳空間さえ確保できれば事故は起こりにくい、ともされますが、照明の点灯および消灯、ほかの魚に追いかけられた、地震や振動などに驚いた、などの理由によりイソギンチャクの触手に触れてしまい、最悪食べられてしまうことがあります。そのためイソギンチャクとクマノミ以外の魚を飼育するということは危険性があります。下写真ではマンジュウイシモチと組み合わせていますが、できるだけ魚との飼育は避けたほうがよいのです。また、タツノオトシゴなど動きがスローな魚や、ハゼの仲間やカエルウオといった底生の魚も捕食されやすいです。

またフグやチョウチョウウオなどは大きさにもよりますがイソギンチャクを捕食してしまうこともあり、これもだめな組み合わせといえそうです。

サンゴとの相性

▲ソフトコーラルとであれば飼えなくはないが注意したい

ロングテンタクルアネモネはほかのイソギンチャクほどではないのですが、たまに移動することがあります。そして移動によってサンゴにダメージを与えてしまうことがあります。とくにハードコーラルとの相性は悪いです。ハードコーラルと一緒にイソギンチャクをうまく飼育している人もいますが、条件がぴたりと合い、イソギンチャクにとって適した位置にずっといるということが条件になります。ソフトコーラルであればまだ入れられますが、それでも十分に注意しなければなりません。

ロングテンタクルアネモネ飼育まとめ

  • 長い触手をもつが複数の種が含まれていると思われる
  • カクレクマノミはサンゴイソギンチャクなどよりも入りやすい
  • 安定して飼育するのに60cm以上の水槽が必要
  • 硝酸塩濃度の低いきれいな水を好む。ろ過槽もしっかりしたものを
  • ろ過槽のストレーナーにはスポンジをしっかりつけておきたい
  • 水温は25℃をキープ。ヒーターカバーも忘れずに
  • 強い光を好むが適応性は広いよう
  • 水流についても工夫がいる
  • 砂の中に体をうずめるため砂は必ず敷いておきたい
  • 餌や添加剤の添加も重要
  • 白いのや透明なものはきれいだが褐虫藻が抜けている可能性も
  • 魚は捕食される可能性があるので注意
  • サンゴとの相性もよくない

取材協力

コーラルタウン

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