2020.09.21 (公開 2020.01.22) サンゴ図鑑
サンゴの脱皮について~脱皮するサンゴの種類、脱皮後の対策
トサカの仲間やウミキノコの仲間は、定期的に「脱皮」を行います。この脱皮はエビやカニなど甲殻類の脱皮とは異なり、表皮の部分を落とすだけで、ヘビの脱皮などに近いといえるでしょう。今回はサンゴが脱皮する理由、甲殻類の脱皮との違いの詳細、脱皮した後どうすればいいのか、などについてご紹介します。
脱皮する主なサンゴ
カタトサカの仲間
▲カタトサカの仲間
カタトサカの仲間は種類が多く同定が難しいグループです。このタイプの個体は沖縄から入ってくることも多く、輸送距離・時間が短い(=状態がよい)ものが入手できるので比較的飼育しやすいといえます。光と水流はやや強めを好みますが、250wメタハラの直下などは避けるようにします。また毒性も強いため注意が必要で、ウミキノコなどとはできるだけ接触させないのが望ましいでしょう。カタトサカの飼育方法の詳細はこちらをご覧ください。
ウミキノコの仲間
▲ウミキノコ
ウミキノコの仲間も分類学的にはカタトサカと同じウミトサカ科のソフトコーラルです。ソフトコーラルの仲間では丈夫であり比較的飼育しやすいことから従来からよく飼育され、水槽内で脱皮をすることもアクアリストによく知られてきました。カタトサカと比べると毒性はかなり弱く、とくにカタトサカやヌメリトサカなどとの接触は避けた方が無難です。なお、ウミキノコの仲間にちかいウネタケも同様に飼育することができます。ウミキノコの飼育方法はこちらをご覧ください。
甲殻類との脱皮の違い
▲アカシマシラヒゲエビの脱皮
エビをはじめとした甲殻類は脱皮して大きく成長します。エビの体は外骨格に覆われており、脱皮して脱ぎ捨てるとその下に新しい外骨格ができています。折れた脚やハサミも何回か脱皮を繰り返すと元通りになるようです。
脱皮は甲殻類の成長に欠かせないものですが、危険なことでもあります。エビの仲間は脱皮不全で死んでしまうこともあります。マリンアクアリウムでの脱皮不全の原因はヨウ素不足といわれ、ヨウ素を添加してあげたいものです。また、脱皮直後は体が柔らかいため、魚に襲われて死んでしまうこともあります。
その一方これらのサンゴの脱皮は表皮だけがはがれおちるというもので、ヘビなどの脱皮と似ているようなものです。フサカサゴ科のボロカサゴなどの魚も脱皮を行いますが、この仲間の魚も表皮がはがれおちるというタイプで、ウミキノコなどと似たタイプといえます。
なぜサンゴは脱皮するのか
▲蛍光グリーンが強いウミキノコ。奥にあるのが脱皮した皮
先述したように、サンゴの脱皮は表皮がはがれるというもので、エビなど甲殻類の脱皮とは大きく異なるものです。
サンゴは魚やエビと異なり、自由に泳いだり歩いたりして動くことができません。そのため水流にのってゴミが付着したり、コケが生えたりすることがあります。この表皮はこれらを落とすためにあると考えられます。
なおサンゴが脱皮しても、甲殻類の脱皮のように脱皮不全を起こすということはないのですが、サンゴは成長のためにヨウ素や微量元素を必要としているので、ヨウ素の添加剤で補う必要があります。とくにトサカやウミキノコなどのソフトコーラルを多数入れた水槽には必須といえるでしょう。ヨウ素は魚の体色の維持などにも重要な元素ですので、しっかりと添加してあげたいものです。
脱皮した皮はどうする?
そのまま放置しても水流さえ十分であれば飛ばされてろ過槽に落ちるなどして消滅してしまいます。美観を損ねてしまうというようなことがあれば、スポイトを使用してふきとばしたり、吸い取ってとりのぞいたりするようにします。一般的に飼育されているサイズのカタトサカやウミキノコの脱皮程度で水が汚れるとかいうならば水槽のろ過システムに問題があるのかもしれません。
サンゴ脱皮まとめ
- 主にカタトサカやウミキノコといったウミトサカ科のサンゴが脱皮をおこなう
- 甲殻類は脱皮して外骨格が捨てられるが、サンゴの仲間は外側の皮がはがれるだけ
- ヘビやボロカサゴなどに見られる脱皮もサンゴのそれに近い
- サンゴが脱皮をおこなう理由は付着したゴミやコケを落とすため
- 脱皮不全は起こすことはないがヨウ素はサンゴに添加してあげたい
- 脱皮した皮はろ過槽などに取り込まれ消滅する
- 美観を損なう場合はスポイトなどを使って吸い取ってもよい