2018.09.21 (公開 2018.07.09) サンゴ図鑑
カタトサカの仲間の飼育方法~水流や水質に工夫が必要
カタトサカは好日性のソフトコーラルの仲間です。スターポリプやディスク、ウミキノコと比べると飼育は若干難しめですが、うまく飼育するとよく伸びてポリプを開き、大きく成長します。
また、大きくなったらカットして株分けで増やすことも可能です。チョウチョウウオや一部のヤッコを除き、あらゆる魚との飼育も楽しめます。カタトサカをうまく飼育するのに必要なポイントをご紹介します。
カタトサカの仲間
▲ウミキノコもトサカの仲間
カタトサカの仲間はウミトサカ目・ウミトサカ科のソフトコーラルです。多くの種を含み、同定が難しい仲間です。観賞魚店でも区別されないで販売されていることがほとんどです。一般的に販売されているものでもナグラカタトサカ、ヤワタコアシカタトサカ、ヤナギカタトサカ、ワタゲカタトサカなど色々います。
なお、ウミトサカ科のなかにはウミキノコやウネタケの類も含まれますが、ボウウミワラビやウミゼリ、トゲトサカの類は別の科であるチヂミトサカ科に含まれています。これらのサンゴはややデリケートで、カタトサカの仲間はこれらよりは飼育しやすいといえるでしょう。
カタトサカの仲間に適した環境
水槽
▲大きく育ったトサカ。ヤナギカタトサカのよう
カタトサカの仲間は大きくなるものも多いので、そのような種類は90cm以上の水槽で飼育すると格好よく育ちます。小型の個体は45cm以下の水槽でも飼育可能ですが、将来的に大きく成長することも考えたほうがよいでしょう。
水質とろ過システム
▲硝酸塩が若干検出されるほうがよいかも
トサカは比較的水質の悪化に弱く、硝酸塩やリン酸塩が低い方がよいといわれます。しかし、我が家のように若干の硝酸塩が検出されているほうがよいという意見もあります。
実際に硝酸塩がほとんど検出されない環境で飼育したときより、若干の硝酸塩が検出される環境のほうが上手く飼育できています。種類によって差があるのかもしれません。なお、チヂミトサカ科のものはデリケートで硝酸塩が少ない環境を好みます。
水温
一般的なサンゴ礁の魚と同様23~25℃で問題なく飼育可能です。基本的には丈夫ですが狭い水槽の中で高水温が続くと弱ってしまいます。もちろん低すぎる水温にも弱いため、クーラーとヒーターが必須です。
水流
▲コーラルタウン(茨城県土浦市)のストック水槽で水流になびくナガレカタトサカ
カタトサカは基本的にやや強めの水流を好みますが、強い水流が直接長時間当たるというのはよくありません。
また種類によっては水流の好みに若干の差があるようで、あまりポリプが開かないというときは位置を変えてみてもよいかもしれません。ウェーブコントローラーなどを使用してもよいでしょう。
照明
▲緑色のトサカは青色のLED下で輝く
蛍光灯、LED照明、メタルハライドランプのどれでも飼育可能です。蛍光灯は多灯をしたほうがよいでしょう。メタルハライドランプは150Wがおすすめです。ただし、現在の主流はLEDです。明るい白っぽいものが好まれるようですが、緑色っぽい色彩のトサカは青色のLED下での発色も魅力的です。写真ではその美しさを伝えられませんが…。
カタトサカの仲間に適した餌と添加剤
餌
▲植物プランクトンの液状フードを与えるとよい
カタトサカの仲間は好日性サンゴで、陰日性サンゴのトゲトサカと異なり餌は必要、というわけではありませんが、我が家ではプランクトンフードを水流に乗せて与えています。給餌するときは動物性プランクトンフードではなく、植物プランクトン(フィトプランクトン)フードを与えます。
添加剤
▲ヨウ素の添加が効果的
ソフトコーラルをうまく育成するには添加剤の定期的な添加も不可欠です。カルシウムはハードコーラルほど必要ではありませんが、ストロンチウム、マグネシウム、ヨウ素、微量元素は添加することをおすすめします。
ヨウ素はソフトコーラルにとって特に重要な元素です。光合成の促進やサンゴの成長、傷の回復などに効果があるようです。プロテインスキマーによって取り除かれやすいので定期的な添加が必要ですが、微量な成分ですので添加しすぎるのもよくありません。光合成するため鉄分も必要ですが、与えすぎるとコケの大発生につながりますので、ブライトウェルシリーズの「リプレニッシュ」のように鉄分が入った微量元素添加剤の使用をおすすめします。
カタトサカの仲間を入手する
購入方法
▲ヤワタコアシカタトサカかもしれない
カタトサカの仲間はインドネシアから来るもののほか、沖縄産のものが入荷することがあります。はじめてカタトサカの仲間を飼育するのであれば、輸送時間の短い沖縄のものがおすすめです。サイズや色彩によって若干お値段は異なりますが、大体2000~5000円ほどで販売されます。
カタトサカの仲間を購入するときは、ポリプがあまり出ていないもの、傷がついているもの、溶けかけているものなどは避けます。もちろん入荷したばかりのものも避けたほうが無難です。状態をしっかり見極める必要があるため、通信販売で購入するよりはなるべく実際にお店に足を運んで決めるようにしたほうがよいでしょう。
なお、鮮やかなピンクや紫、黄色をしたサンゴは人工的に着色されたものである可能性があります。きれいではありますが、トサカの仲間の魅力である繊細な色彩を楽しむことはできません。
先週、マリンキープ(所沢)でヤナギカタトサカ(白)購入。良い感じ。何よりクダゴンベがえらく気に入って離れない pic.twitter.com/0BYMiaKHIV
— 海水魚ラボ (@aquarium_lab) September 21, 2018
マリンキープ(埼玉県所沢市)で購入した沖縄産ヤナギカタトサカのホワイト。
寄生する貝に注意
▲目盛は1mm
小さな巻貝やウミウシの中にはトサカの仲間を食べてしまう、恐ろしいものがいます。写真の貝は購入したカタトサカの基部に付着していたもので、ミドリイシに有害な貝ににていますが、トサカを食害する恐れがある種類かは不明です。
Two Little Fishesの「コーラルクリーナー リバイブ」やLSS研究所「コーラルRXプロ」などで薬浴を行い、寄生生物を持ち込まないようにしましょう。
サンゴの薬浴の方法はこちらで解説しています。
レイアウト
トサカの仲間で背が高くなるものは水槽の後方にレイアウトすると見栄えがよくなります。
強めの光を欲するものはライブロックやサンゴ岩で山を作り、その頂にレイアウトするとよいでしょう。伸びたときのサイズと縮んだときのサイズが大きくことなりますので、レイアウトするときは伸びたときのサイズを考慮します。通信販売で来るものは大体が縮んでおり、伸びたときのサイズがわかりにくいため、これも状態の見極めと同様、お店まで足を運んで購入したい理由と言えます。
購入したとき、土台についていないものはライブロックやサンゴ岩のくぼみなどに刺しておくと数日後には活着します。土台がついているものは専用の接着剤で接着します。光が合わないときなど移動させられるように、接着剤の種類は貼ったり剥がしたりが容易にできるグル―タイプのものがよいかもしれません。
カタトサカと他の生き物との関係
ほかのサンゴとの相性
▲ウミアザミとは触れないように
カタトサカの仲間は毒性がやや強めですので、毒性が弱いウミアザミやチヂミトサカ、オオバナサンゴなどのサンゴとの接触を避けるようにします。逆に強毒をもつヌメリトサカやコルトコーラルには負けてしまいます。これらのサンゴとは触れないように気をつけなければなりません。
魚・無脊椎動物との関係
チョウチョウウオや大きめのヤッコなどにはつつかれるおそれがありますので不向きです。しかしそのほかの熱帯性海水魚とは概ね一緒に飼育することができます。
カニの仲間にはカイカムリの仲間の小型種やツノガニの仲間のように、トサカの仲間をちぎってその破片を体に付着させる種もいます。丈夫な種類ですので水が清浄であればすぐ回復すると思われますが、注意した方がよいかもしれません。
また、腹足綱(巻貝やウミウシの類)の中にはトサカを食べてしまうものがいるので注意します。ただし一般的にコケ取り目的で飼育されるシッタカ系のものやマガキガイなどはトサカには無害です。
ポリプが開かないときの対処法
水流
▲ナガレカタトサカはやや強めの水流があった方がよさそう
カタトサカの種類によって好む水流には若干の違いがあります。強めの水流を好む種類であれば、水槽の下方から上方に向かう水流を作るのもよいでしょう。複数の水流ポンプを使用したり、ウェーブコントローラーを使用するなど工夫しましょう。
照明
必要な光は種類によって若干異なります。照明が弱すぎるとひょろっとした姿になってしまいます。なるべく水槽の上の方に配置するとよいでしょう。我が家ではゼンスイLEDライトと、ボルクスジャパンのLED「グラッシーレディオ」シリーズを使用しています。
脱皮
カタトサカの仲間の開きが悪い、というとき、薄い皮みたいなものが付着しているときは脱皮をしている可能性があります。同じウミトサカ科のウミキノコの仲間も同様に脱皮をすることが知られています。これは表面にゴミが付着したりコケがついているときにそれらを落とすためともいわれています。
海水
▲天然海水で水かえ
▲ふさふさとポリプを出しているヤナギカタトサカ
うまく開かない、元気が無いと感じる場合、普段水かえに使っている水を天然海水にしてみるのもよいでしょう。
天然海水には海と同じだけの元素がふくまれており、我が家で使用したところ、ヤナギカタトサカの開きが若干よくなったように感じられます。ただし重量があり、コストがかかるというデメリットもあります。
カタトサカを増殖させる
トサカは簡単に増やすことができます。トサカの枝の部分をハサミなどでカットし、カットした部分をライブロックかサンゴ岩などの隙間にさしこめばやがて活着します。回復にはヨウ素の添加も有効のようですが、ブライトウェルの添加剤「リストア」のように、サンゴの成長、組織回復、発色を促すような添加剤の使用も効果的です。
ほかのトサカ、たとえばウミキノコや、チヂミトサカ科のサンゴも同様に増やすことができます。ただしチヂミトサカは水質にうるさいので注意しましょう。
カタトサカの仲間の飼育まとめ
トサカ類は本当に美しい。ただ水が汚かったりしてはだめ。水流も種によってびみょーにちがう。 pic.twitter.com/RxzD5lajR2
— 海水魚ラボ (@aquarium_lab) July 17, 2018
- ウミキノコやウネタケと同じ好日性ソフトコーラル
- 種類によってはかなり大きく育つ
- 若干栄養塩が検出される環境がよいかもしれない
- ヒーターとクーラーで一定の水温をキープ
- 水流の好みは種類により若干異なる
- 照明はLED、150Wメタハラ、蛍光灯で飼育可能。蛍光灯は多灯する
- 餌は不要。液体のフィトプランクトンを添加する程度でよい
- マグネシウム、ストロンチウム、ヨウ素、微量元素を添加。とくにヨウ素は重要
- 沖縄から来るものが状態よいことが多い
- ポリプが出ていないもの、入荷したばかりのもの、傷ついているものはだめ
- 寄生生物がついているおそれあり。薬浴したほうがよい
- 毒性はやや強め。ウミアザミやウミキノコと触れないように
- 逆にヌメリトサカなどに負けてしまうこともある
- チョウチョウウオや大きめのヤッコなどとは組み合わせない
- うまくポリプが開かない時は条件をいろいろ変えてみる