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2020.09.21 (公開 2017.11.15) サンゴ図鑑

ウミアザミの飼育方法~水質・水流・魚との関係

ウミアザミはソフトコーラルの中でも飼育が難しい種類として知られています。しかしながら繊細なポリプと淡いピンクの色彩、そして種類によってはポリプの先端をパクパクと開いたり閉じたりする動作を繰り返すという、他のサンゴにはあまり見られない特徴を持っており人気があります。今回は、このウミアザミを上手に飼育するためのポイントをご紹介します。

ウミアザミってどんなサンゴ?

ひとくちに「ウミアザミ」といっても種類は豊富です。シロスジウミアザミ、コフキウミアザミ、ブルームウミアザミ、チガイウミアザミなどの種類がありますが、人気なのはポリプの先端をパクパクと開いたり閉じたりするという他のサンゴではあまり見られない特徴をもつチガイウミアザミです。

このほか、ウミアザミの仲間にはチヂミウミアザミ、タチエダウミアザミなどの種類がいますが、観賞魚店ではあまり見られないものです。ここでは一般的に販売されているチガイウミアザミや、シロスジウミアザミなどの種類を中心に解説します。なお、「アザミサンゴ」と呼ばれることもありますが、この和名をもつサンゴは別に存在し、ウミアザミの仲間とは全く異なるハードコーラルです。

ウミアザミの飼育に適した環境

サンゴにはハードコーラルとソフトコーラルがあります。ソフトコーラルは骨格を持たないサンゴで、飼育はハードコーラルより簡単と思われがちですが、ウミアザミはソフトコーラルの中では「飼育が難しい」とされているサンゴです。これは水質の悪化に弱いためで、初心者の方は、水槽・水流・照明・プロテインスキマーなどの機材を充実させ、お店の人に相談することが、この仲間を上手く飼育する「近道」といえます。

水槽

▲ウミアザミの飼育例

60cm水槽や、もっと小さな水槽で飼育しているベテランアクアリストも多いのですが、ウミアザミが水質の悪化に弱いことを考えると、90~120cm水槽での飼育がおすすめです。とくにオーバーフロー水槽での飼育は、一般的な水槽とくらべて、圧倒的な水量を稼ぐことができるのでおすすめです。これはウミアザミが水質悪化に弱いため、安定した環境で飼育したいからです。

水質とろ過

▲プロテインスキマーを心臓部にしたベルリンシステムが最適

ウミアザミは水質悪化に弱いので、アンモニアや亜硝酸が検出されず、硝酸塩もほとんど検出されない環境が望ましいといえます。上部フィルターなどろ過槽を用いるシステムでも飼育できないことはないのですが、できればプロテインスキマーを併用して飼育したいものです。

水質悪化に弱いことを考えると栄養塩を蓄積しないベルリンなどのシステムでの飼育が最適といえます。プロテインスキマーを使って、魚の排せつ物や残り餌を生物ろ過が始まってしまうまえにガンガン取り除くようにしましょう。

一方でリン酸塩はわずかにあったほうが望ましいという意見もあります。実際に我が家でウミアザミを飼育している水槽でもリン酸塩はよく検出されています。わずかな量にとどめておくのも大事ですが、完全に取り除くことがないように注意したいものです。リン酸は魚の餌などから水槽に入ります。

水流

▲水流になびく触手がきれいなウミアザミ

ウミアザミは水流が強いところを好みますが、茎全体が常にゆれているような強い水流は苦手といえます。複数の水流ポンプを組み合わせ、水流をぶつけてランダムな水流が水槽内のサンゴにいきわたるようにするとよいでしょう。

水温

ウミアザミは高水温に弱い面もあり、できるだけ25℃をキープするように心がけます。それよりも低めの23℃前後では水が悪くなりにくく、水質の悪化に弱いウミアザミを飼育するのに適しているともいえます。

結論としては25℃でも23℃でもどちらでもよいのですが、クーラー・ヒーターは必須であり、できるだけ水温が安定していることが重要です。

ウミアザミの好む照明と置く場所

▲スポット照明に最適なボルクスジャパン「グラッシーレディオ」

ウミアザミは強めの照明が必要の種です。従来はメタルハライドランプか、蛍光灯多灯しか選択肢がありませんでしたが、現在はLEDでウミアザミを飼育していることが多いです。筆者の家の90cm水槽にはやってきてまる2年になるウミアザミがいますが、照明はLEDのみで、スポットLEDの「グラッシーレディオ」を2灯、細長い形状のゼンスイLEDライトを1灯使用しています。これだけでウミアザミを十分飼育できます。

置き場所は水槽の上の方。光がよく当たる場所に置いておきたいものです。しかしウミアザミがうまく開かない、育たないというときは光よりも前述した水質水流に問題があることが多いので、そちらの方を見直すようにしましょう。

ウミアザミの餌と添加剤

健全な飼育のために添加剤の添加

ウミアザミはミドリイシほど元素を必要としているとは思われにくいソフトコーラルですが、健全な飼育のためには添加剤の添加は重要と言えます。

特にヨウ素微量元素ストロンチウム、そしてマグネシウムくらいは添加しておきたいものです。ヨウ素はソフトコーラル、ハードコーラル、甲殻類、そしてもちろん魚類に重要なものですが、光により分解されたり、プロテインスキマーに取り除かれやすい元素ですので、定期的な添加が重要です。

鉄分は光合成に必須ですがウミアザミに必要な強い光のもと鉄分を添加するとコケが発生するおそれもあり、鉄分が入った微量元素添加剤で添加するのがベターといえます。ブライトウェルの「フェリオン」よりも「リプレニッシュ」が最適です。

餌は必要ないという意見と、わずかながら餌があった方がよいという意見もあります。餌を与えるのであれば「マリンデラックス」などの液体状の餌がよいといえます。ただし給餌でサンゴの調子を上げるのに水を汚してしまったら元も子もないので、少量にとどめておくようにします。

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ウミアザミ購入時の注意点

▲ウミアザミのそっくりさん、クセニアウミウシの仲間。ウミアザミを食べる。

ウミアザミの飼育はほかのサンゴと比べるとやや難しいのですが、観賞魚店での選び方も重要と言えます。避けるべきものはずっとうなだれているようなものや、縁辺が溶けているようなものです。またポリプの先端を閉じたままにしており、ほかの個体に比べて明らかにほっそりとしているものも選ばないようにします。

またウミアザミの仲間を食害するヒトデの仲間やウミウシの仲間が付着していることがあります。水槽内に持ち込まないように、いったんサンゴ用の薬で薬浴しておくことをおすすめします。

なおウミアザミはフィジー、インドネシアなどからも入ってきますが、輸送距離も少なく扱いも丁寧な沖縄産の個体が飼いやすいといえます。また観賞魚店で長く在庫されていて増えていたり、セラミック製の土台に付着させたりして販売されていることもあり、そのような個体もおすすめです。ただし土台に付着させたサンゴの場合は、完全に土台につくまで時間がかかることもあり、きちんと付着している個体を選ぶ必要があります。

いずれにせよ、産地や入荷した日、土台に付着されている個体を購入するときは土台に付着した日を店員さんに聞いてみるのが安心といえます。どうにもならないのはチガイウミアザミで、お店では元気でパクパクしており、水槽でもパクパクしていることが多いですが、突然パクパクしなくなることがあります。なぜパクパクしなくなるのか、どうすればまたパクパクするようになるのかはよくわかっていません。なおパクパクしなくなっても飼育に支障はありません。

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ウミアザミと他の生物との相性

ウミアザミと魚・甲殻類との相性

▲ウミアザミとヤクシマダテイシモチ

▲チリメンヤッコなどサンゴをつつく種との飼育は禁物

ウミアザミは魚に突かれやすいサンゴです。ポリプの先端がやわらかく、チョウチョウウオはもちろんヤッコの仲間にもつつかれてしまう可能性がありますのでそのような魚との混泳には向いていません。とくにサンゴ食性の強いソメワケヤッコやチリメンヤッコとの飼育は厳禁と言えます。このほかフグやカワハギなどもやわらかいポリプを啄むようにして食べてしまうので一緒に飼育してはいけません。

スズメダイやクマノミ、ハナダイ、小型のベラ、ニザダイ、テンジクダイ(イシモチ)などとの混泳は問題ないことが多いです。ただし大型の魚との混泳では水質が悪くなりやすいので、注意が必要になります。

カニなどの甲殻類は種類によってはウミアザミの茎状部を傷つけてしまう恐れがあるので注意します。スカンクシュリンプなどのクリーナーや、サンゴヤドカリなどの種類との飼育は概ね問題ありません。このほかウミウシの仲間(上記のクセニアウミウシ)やヒトデの仲間など、ウミアザミを食べてしまうようなものもいますので、要注意です。

飼育可 飼育不可又は注意
・スズメダイ
・クマノミ
・ハナダイ
・小型のベラ
・ニザダイ
・スカンクシュリンプ
・サンゴヤドカリ 他
・チョウチョウウオ
・ヤッコ
・フグ
・カワハギ
・大型魚
・カニ
・ウミウシ
・ヒトデ 他

ウミアザミと他のサンゴとの相性

▲トサカの仲間には強い刺胞毒をもつものもいる。要注意

ウミアザミは刺胞毒も弱く、他のサンゴとの接触もできれば避けたいところです。トサカの仲間はウミアザミに似ている立ち上がった形状で、ウミアザミとまとめておいてみたいところですが、カタトサカやヌメリトサカ、コルトコーラルといった種類には強い刺胞毒がありますので、弱い毒のウミアザミと一緒においておくとやられてしまうことがあります。

ウミアザミの増やし方

▲フラグの状態で購入したウミアザミ

▲巨大化したウミアザミ

ウミアザミはなかなか飼育が難しいとされることも多いのですが、よい状態で飼育でき、飼育環境がうまくはまるとライブロックに飛び火するような感じで増えていくこともあります。

我が家で飼育しているウミアザミは2015年にフラグの状態で購入したものですが、すぐにフラグから外れてしまい、たった1年で写真のように巨大化し、2年経った現在はフラグを固着させていたライブロックのあちこちについています。増やすためにはやはり清浄な水、ヨウ素などの添加など、ウミアザミの飼育に適した環境に整えるのが重要といえます。環境が整っていれば巨大化し増えますが、ミドリイシの水槽では邪魔になってしまうこともあります。

ウミアザミの飼育まとめ

  • ソフトコーラルの仲間ではやや飼育は難しい
  • 高水温と水質の悪化に気を付ける
  • 大きめのオーバーフロー水槽、ランダムな水流、23~25℃で安定した水温が必要
  • 硝酸塩はごくわずかしか検出されないきれいな水で飼育する
  • 照明も強いものが必要
  • ヨウ素・微量元素・マグネシウム・ストロンチウムを添加
  • 液状フードを与えてもよいが水を汚さないように
  • 沖縄産が比較的飼育しやすい。産地や入荷日をお店に聞いておく
  • ウミウシなどの寄生生物に注意。水槽に入れる前に薬浴を
  • チョウチョウウオはもちろん、ヤッコやフグなどとの飼育は難しい
  • 他のサンゴとは触れないように注意したい
  • 条件があえば爆発的に増えることも

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