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2020.07.28 (公開 2019.02.15) サンゴ図鑑

コモンサンゴの飼育方法~成長早くミドリイシよりも飼育しやすい

コモンサンゴ

コモンサンゴはイシサンゴ目ミドリイシ科のサンゴです。きれいな海水、強い光が必要とされますが、ミドリイシと比べてやや硝酸塩が多い海水でも飼育することができるので、いつかはミドリイシを、と思っているのであれば、このコモンサンゴを飼育してSPS飼育の勉強をするのもよいでしょう。

コモンサンゴってどんなサンゴ?

コモンサンゴはミドリイシ科コモンサンゴ属のハードコーラルで、アクアリウムではSPSと呼ばれています。ミドリイシ科のサンゴでありながら、ミドリイシよりは硝酸塩などの栄養塩が若干多い水質に適応することができるので、将来ミドリイシを飼育したいのであればこのコモンサンゴから飼育してみるというのもよいでしょう。成長はミドリイシよりも早く、環境さえ適切であればかなりの勢いで増えることもあります。

コモンサンゴの種類

コモンサンゴ属の一種

▲コモンサンゴ属の一種

ひとくちに「コモンサンゴ」といってもいくつかのタイプがあります。ウスコモンサンゴのように渦を巻くように育つもの、エダコモンサンゴのように枝状になるもの、さらに被覆状のものなどです。ウスコモンサンゴは造礁サンゴの仲間でも大変成長が早く、低栄養塩のもとで色が綺麗になることもあり、ハードコーラルを育てる楽しみが実感できるというものです。色彩はオレンジ、茶色、緑、ベージュ等が多いですが、美しい紫色などのものもありこのようなものは人気があります。

コモンサンゴに適した飼育環境

水槽

ウスコモンサンゴ

▲ウスコモンサンゴの類は水槽でも大きく育つ。水槽も大きなものが必要

状態よく飼育するのであれば大型(90cm以上)のオーバーフロー水槽一択です。これはウスコモンサンゴを飼育していると、さらに状態よく飼育する、あるいは成長や色揚げのために、プロテインスキマーやカルシウムリアクター、ドージングポンプなどのアイテムを水槽に取り付けたくなるからです。そしてコモンサンゴの飼育を経験し、ミドリイシへとステップアップするのであれば、これらの機材はどうしても必要になってくるからです(ないと飼育できないわけではありませんが、これらの機材があるのとないのでは飼育のしやすさに大きな違いが出ます)。ならばこれらのアイテムを取り付けやすいオーバーフロー水槽がベスト、ということになります。

水質とろ過システム

▲強制ろ過の飼育環境下でも生育したコモンサンゴ

ミドリイシ科、と聞けば完璧にきれいな水が必要と思われがちですが、ミドリイシよりは若干硝酸塩の蓄積にも耐えられる種類です。水槽システムとしてはベルリンシステムをはじめ、近年はゼオビットシステムや、レッドシーのリーフケアプログラムなどで飼育しているアクアリストも多いようです。また上部ろ過槽、外部ろ過槽などのように、ろ材を用いた強制ろ過のシステムでも飼育できないわけではありません。初心者がはじめてウスコモンサンゴを飼育するならば、この中ではベルリンシステムが一番よいでしょう。

なお、ベルリンシステムについてはこちらをご参照くださいませ。

水温

原則として25℃前後をキープします。浅場のサンゴだからといって30℃くらいになると弱ってしまいますので、必ずクーラーを設置します(サンゴ飼育においては当たり前のことですが)。

照明

ウスコモンサンゴ

▲強い照明のもとだと色が抜けてしまうこともある。要注意だ

照明は21世紀初頭ではメタルハライドランプしか選択肢がありませんでしたが、近年はLED照明、もしくはT5蛍光灯が主流となっています。メタハラは従来はよく使われていたのですが、近年は水銀の問題や発熱、重量(安定器)の問題などから各社生産を止めつつあり、交換球も入手しにくいなどの問題も発生しています。

LEDは水温上昇を招きにくく、球を交換する必要がないこと、複数のLEDを照射することによりサンゴに適した光をつくることができる、などのメリットがあります。しかしながら、集光のものの直下にウスコモンサンゴを置いてしまうと色が飛んで真っ白になってしまうこともあるので、照明をサンゴから離すなど、照明を置く場所に注意が必要なこともあります。T5はLEDよりも水温上昇を招いてしまうおそれがあることや、球を変える必要があるためコストがかかってしまいます。しかし水槽内をまんべんなく照らすことができるのは大きなメリットといえるでしょう。

水流

水流は強く、かつランダムなものが必要になります。水中ポンプを複数とりつけるのはもちろん、水流ポンプ用のコントローラーを使用してランダムな水流を作るようにするとなおよいでしょう。とくにウスコモンサンゴのような立ち上がった形のものは、水流が全体にあたりにくいことがありますので、水流にはとくに工夫が必要といえます。

LSS研究所から出ている「ボーテック」やマックススペクト(オーシャンアース)の「ジャイル」などの水流ポンプは高価ではあるものの、そのお値段にあった働きをしてくれるはずです。水槽の壁面に強い水流をぶつけて拡散した流れがサンゴに行き届くのが理想です。細くて強い水流がサンゴに当たると弱ってしまうことがあるので注意します。

添加剤

添加剤はほかのサンゴと同様です。骨格を作るためにカルシウム、ストロンチウム、ポタシウム。成分のバランスを保つのにも重要なマグネシウム、組織の成長に重要なヨウ素、さらに微量元素を添加するようにします。このほかサンゴの色揚げ用の添加剤も色々と容易されています。添加剤のおすすめシリーズはブライトウェルシリーズやコンティニュアムアクアティクスなど、種類が多くそろったものです。添加剤の種類が多く、欲しいものを購入することができます。

ただしカルシウムについてはカルシウムリアクターを使用して添加するほうがよいかもしれません。安定してカルシウムを水槽に供給でき、KHの安定にも役立つからです。

LSS研究所が展開する「ゼオビットシステム」やレッドシーの「リーフケアプログラム」など、マニュアル化されたシステムもありますが、これらのシステムを採用するのであればそのシステムの添加剤だけを使用しなければなりません。これらの添加剤の中には一般的なベルリンシステムでも使用できる製品もありますが、特に色揚げ系をうたう添加剤、微量元素系の添加剤は成分が過多になりやすいので注意が必要です。

コモンサンゴのポリプ

コモンサンゴやミドリイシは餌を積極的に食べるタイプのサンゴではありませんが、最近はSPS専用の餌も販売されていますのでそのような餌を与えるのもよいでしょう。水流ポンプや循環ポンプを停止させ、スポイトを使ってポリプに吹きかけるようにして与えます。

コモンサンゴを成長させる

コモンサンゴは非常に成長が早いサンゴです。枝状のエダコモンサンゴや、ウスコモンサンゴなどは添加剤を定期的に添加するだけでも成長していきますが、早く成長させるのであればカルシウムリアクターのほうがよいでしょう。もちろん綺麗な水で飼育することも忘れてはいけません。コモンサンゴが成長して下にあるサンゴに光が当たらないというのであれば、コモンサンゴを割ってしまうのもよいでしょう。割った個体はサンゴ用の接着剤でライブロックやフラグ用のプラグなどに接着させて、再び大きく成長させることもできます。

ゼオビットシステム下での飼育はSPSが綺麗なパステルカラーに色揚がりしますが、コモンサンゴの仲間はその中でも色が揚がりやすいようです。

デトリタスの除去

▲デトリタスがたまったコモンサンゴ

コモンサンゴの魅力のひとつはそのユニークな形状なのですが、それゆえデトリタス(生物の遺骸などに由来する粒子状の有機物)やゴミがたまりやすいといえます。そのためスポイトでとってあげたり、水流ポンプを使用してこれらの物質がたまらないように気を使うべきです。

コモンサンゴを購入する

購入する

インドネシアでブリードたコモンサンゴ

▲フラグサンゴとして販売された個体。小さい個体もやがて大きく育つ

従来はインドネシアからブリードされたものが大量に輸入されていましたが、現在は規制されておりなかなか入ってきません。

観賞魚店で増えたものを枝打ちなどして販売されていることもありますので、そのようなものを購入するのもよいでしょう。安価で販売されているコモンサンゴであっても、上手く飼育すれば大きく育ちます。またフラグサンゴ取扱い店ではフラッギングされた状態で販売されていることも多いです。

選ぶポイントは色が濃く乗っているもの。色が薄いもの(白っぽいもの)は褐虫藻が抜けている可能性があるためよくありません。ただし、ゼオビットシステムなどで飼育されているものは色が薄くなっていることもあります。

ほかのサンゴを選ぶときと同じく寄生生物がついていないことも選ぶポイントとしては重要です。コモンサンゴの仲間に付着していることが多い寄生生物としては、小さなウミウシや巻貝がついている可能性があるのですが、観賞魚店の販売水槽ではなかなか確認することができません。そのため水槽に入れる前に薬浴をする必要があります。

薬浴する

▲コモンサンゴに付着していたウミウシ。水槽に入れる前には必ず薬浴したい

コモンサンゴを水槽に入れる前には必ず薬浴をしてから水槽に入れるようにします。これはコモンサンゴを食害する白いウミウシや巻貝がついている可能性があるためです。ウミウシは全長数mmほどと小さいのですが、あっというまに増殖するおそれがあり厄介です。かならず水槽に入れる前に薬浴しましょう。このほかにアワサンゴやイボヤギ、ツツウミヅタ、ウミアザミなどはウミウシがついている可能性が高いため、必ず薬浴させます。ほかのサンゴも、寄生虫がついている可能性があるため、やはり薬浴させたいものです。

薬浴にはサンゴ専用の薬浴剤を使用します。間違っても海水魚の薬浴につかう「グリーンFゴールド」などは使用してはいけません。

我が家ではLSS研究所のコーラルRXプロやTwo Little Fishesのリバイブを使用して薬浴しています。松油やレモンなど自然のものを使用しており安心して使えます。またあまり寄生虫がついていないようなサンゴであってもサンゴの病気を防ぐことが(ある程度は)可能なので、どんなサンゴであっても水槽に入れる前に薬浴してから水槽に入れるようにしたいものです。

魚・無脊椎動物との相性

コモンサンゴは多くの魚種と組み合わせることができますが、チョウチョウウオの仲間にはつつかれてしまうおそれがあるため一緒に飼育してはいけません。小型ヤッコも種類によってはつつくので要注意です。ほかクロベラなどチューブリップの仲間、アツクチスズメダイ、セダカギンポ、テングカワハギといった魚はサンゴのポリプをつつくおそれがあるのでこれらの魚との相性もよくありません。それ以外の魚とは概ね一緒に飼育できます。

エビやカニ、ヤドカリといった甲殻類とも飼育できますが、サンゴやその土台をしっかりライブロックに接着しないとこれらの甲殻類にウスコモンサンゴが落とされたりすることもあるので、注意が必要です。

ほかのサンゴなどとの関係

▲アミジグサや海藻を食べてくれるシラヒゲウニ

ミドリイシと飼育すればレイアウトに変化をつけることができます。毒性は弱めの種類で、毒性が強いサンゴと接触しないように注意しなければなりません。またウスコモンサンゴが状態よく飼育できる環境であれば、スターポリプやウミアザミなどもよく育ちますので、これらのサンゴがSPSの上に乗っかって勢力を広げてサンゴを覆い尽くしてしまうこともあるため、増殖の勢いにあわせて間引く必要があります。

このほかウミズタの仲間やアミジグサなどの海藻もサンゴを覆い尽くすことがあります。これらの海藻にはニザダイ、アイゴの仲間やシラヒゲウニなどが有効ですが、海藻の種類によっては食わないこともあります。とくにアミジグサはあまり魚は食べてくれないようで、シラヒゲウニに頼るのがベストなようです。ただし、ウニは毒を持っていたり、レイアウトを崩す恐れがあるので取扱いには注意しましょう。

コモンサンゴの飼育まとめ

  • ミドリイシ科のサンゴであるが硝酸塩などの栄養塩が若干多い水質に適応することができる
  • 今後ミドリイシへステップアップしたい人におすすめのサンゴ
  • ウスコモンサンゴやエダコモンサンゴなど形が異なり種類も豊富
  • 90cm以上のオーバーフロー水槽を推奨
  • 水槽システムはベルリンシステムがおすすめ。ゼオビットなどもよい
  • 水温は25℃。夏はクーラーが必須
  • LEDの配置によっては色が抜けてしまうおそれあり
  • 強くランダムな水流が必要
  • カルシウム、ストロンチウム、マグネシウム、ポタシウム、微量元素、ヨウ素などを添加する
  • カルシウムなどはリアクターで添加したほうがよい
  • 色が薄いのは褐虫藻が抜けていることもあり購入は避ける
  • 水槽に入れる前に薬浴を行う
  • サンゴをつつくチョウチョウウオなどとの飼育は避ける
  • スターポリプやウミアザミ、海藻との飼育は注意が必要
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