2018.09.10 (公開 2018.01.16) サンゴ図鑑
シャコガイの飼育方法~難易度は高く光と水質が重要!
シャコガイは、サンゴではないもののサンゴと同じように飼育できる無脊椎動物のひとつです。
アサリやホタテなどと同様二枚貝ではありますが、外套膜に褐虫藻を共生させ光合成をすることや、清浄な水を好むことから、サンゴ、それもミドリイシなどと同じレベルの水質が求められます。
飼育がやや難しく初心者向けではありません。このシャコガイを上手く飼育するためのポイントを紹介します。
シャコガイってどんな貝?
▲干潮時にできる潮溜まりで見られたシャコガイ
シャコガイはシャコガイ科の貝の総称です。熱帯から亜熱帯の珊瑚礁域に生息するアサリやホタテガイなどと同じ二枚貝の仲間です。
シャコガイ科の貝は殻長が30cmを超える大型種も多く、二枚貝の仲間では世界最大種であるオオシャコガイもこの仲間の貝です。カラフルな色彩の外套膜を持つものが多く、観賞用として人気があります。
シャコガイと他の貝の決定的に違うところ
二枚貝も他の生き物と同様にエネルギーを得て生きていく必要があります。多くの二枚貝は海水中の有機物やプランクトンを餌にしていますが、このシャコガイの仲間は、外套膜に褐虫藻を共生させて光合成で生成されたものを摂取してエネルギーのほとんどを得ています。
マリンアクアリウムで飼育される二枚貝の仲間にはミズイリショウジョウガイ、ヒオウギガイ、トサカガキ、フレームスキャロップなどがいますが、シャコガイの飼育方法はこれら他の二枚貝の仲間より、サンゴの仲間に近いといえます。
シャコガイの種類
観賞用として出回るものの多くがヒメジャコやシラナミガイで、とくに小型種で鮮やかな色彩のヒメジャコがもっともよく販売されています。シラナミガイやヒレジャコガイといった種はヒメジャコと比べて大型になります。
ヒメジャコガイ
琉球列島の浅瀬でもよくみられるシャコガイの仲間です。美味な種類なので沖縄では養殖も盛んに行われており、そのため海水魚専門店ではもっともよく見られるシャコガイの仲間といえます。
シャコガイの仲間でも小型種であるため比較的小型の水槽でも飼育できますが強い光ときれいな水が必要です。
ヒレジャコガイ
貝殻に小さな突起がありほかのシャコガイの仲間とは容易に区別できます。ヒメジャコよりもやや深いところに多いようで比較的少ない光量で飼育することができますが、ヒメジャコのように青っぽい派手なカラーの外套膜をした個体は少ないです。沖縄では食用となる貝で養殖もされています。
ヒレナシシャコガイ
西~中央太平洋のサンゴ礁に生息するシャコガイの仲間で、色彩的には外套膜に細い線が入るものが多く独特な種です。大きいものでは殻長50cmを超え、オオシャコガイに次ぐ巨大なシャコガイです。残念ながらあまり海水魚店に入荷することがない種です。
シラナミガイ・トガリシラナミガイ
シラナミガイは別名ナガジャコガイとも呼ばれているように、やや細長い形の殻をしています。外套膜の色はメタリックグリーンや濃い青色、茶色など豊富です。殻長30cmほどになり、ヒメジャコと比べるとやや大きくなる種類です。
最近シラナミガイと別種とされたトガリシラナミガイは外套膜のヒダの数が多く、シラナミガイにある線上の縁取り斑紋がないというのが特徴のようですが、ヒダの数は成長により異なるようです。鮮やかな模様をもちますが、美しい個体はとても高価です。
シャゴウガイ
シャコガイ科にはシャコガイ属のものの他に、シャゴウガイというのがいます。殻の形はシャコガイとは大きく異なっていますが、これも飼育の基本的なことはシャコガイと変わりません。ただしこの貝はシャコガイと違って砂底にいることが多い種類です。
シャコガイに適した飼育環境
シャコガイはミドリイシなどのSPSが飼えるレベルの水質が求められ、飼育難易度が高いものとなっています。
水槽
シャコガイの仲間は清浄な水質を好むので、水質が悪化しにくい、なるべく大きな水槽で飼育したいものです。
特にヒレジャコやヒレナシシャコガイなどのような、比較的大きくなる種類を飼育するなら、大型の水槽が必要になります。ベテランであれば小型のヒメジャコを小型水槽で飼育することもできます。
水質と水槽システム
硝酸塩がごくわずかに検出される程度の非常に清浄な水を好みます。簡単に言えば、ミドリイシに代表されるSPSの仲間を飼育できるようなレベルの水質が理想です。
水槽システムはろ材をもちいた飼育システムだと硝酸塩を極限まで下げるのは難しいので、ベルリンシステムに代表されるナチュラルシステムなど栄養塩を低レベルに抑える水槽システムが理想だといえます。
水流
水流は必要ですが、強すぎるのはダメです。外套膜がめくれてしまうような強すぎる水流が直接当たるのを避けます。
照明
シャコガイはほかの二枚貝と異なり光合成をしますので、照明は水質の次に重要となります。
従来はメタルハライドランプ150~250W、一部の種は蛍光灯多灯でも飼育可能というものが多かったのですが、現在はハイパワーのLEDが主流です。
とくに強めの光で飼育したいのはヒメジャコです。この種類は極めて浅い場所に生息し干潮時に水から露出してしまうような場所にも見られるほどです。つまり、太陽光が直接ガンガン当たるような場所に生息しているため、当然強い光が必要になるわけです。次に強い光を欲しているのがシラナミガイです。ヒレジャコはヒメジャコやシラナミガイよりも比較的深い場所にいるようで若干弱い光でも飼育可能です。
置き場所
▲サンゴ岩に穴をあけてその中に潜んでいる
シャコガイの外套膜には毒がないので、毒性の強いサンゴやイソギンチャクなどと触れないように注意します。また海水魚店での水槽では砂の上においてあることも多いのですが、砂の上においておくと、ウミケムシなどに襲われてしまうことがありますので避けたほうが無難かもしれません。
ライブロックの上においておくと、岩を溶かして穴をあけ、その中に入り込むこともあります。
シャコガイの餌と添加剤
シャコガイには餌は不要とされており、多くの飼育書でもそのように書かれていますが、たまに植物プランクトン(フィトプランクトン)を給餌してあげるのもよいでしょう。実際にいくつかのメーカーからシャコガイ用の餌が販売されています。
添加剤はカルシウム・ストロンチウム・マグネシウム・ヨウ素・微量元素を供給してあげるとよいでしょう。光合成をおこなうので鉄分も必要になりますが、鉄分の過剰な添加はコケの大発生にもつながりますので、鉄分の含まれている微量元素の添加が安心です。カルシウムは添加剤を用いて添加するだけでなく、カルシウムリアクタを使用する方法もあります。
もうほとんど二枚貝というよりもサンゴ、それもハードコーラルに近い飼育方法と言えます。
シャコガイの選び方
写真のように入水管を大きく開きすぎているような個体は避けた方がよいとされています。また外套膜の色が妙に薄くなっているものもだめです。
入荷してすぐの個体、外套膜が傷ついているような個体も選んではいけません。
シャコガイの殻に小さな巻貝がついていないかどうかもよくチェックすべきです。このような貝はシャコガイに寄生しており、見つけ次第水槽から取り除く必要があります。夜行性の貝なので、深夜他の魚が寝静まった際に水槽を照らして探してみましょう。
シャコガイと他の生物との相性
魚・無脊椎動物との相性
▲フグやチョウチョウウオとの飼育は禁物
チョウチョウウオや大型ヤッコ、フグやベラなどはシャコガイをつついて捕食してしまうおそれがあるためあまり適していません。小型ヤッコは大型ヤッコほど突かないのでなんとか一緒に飼育できます。シャコガイとの飼育に向いているのは、クマノミをふくむスズメダイ類、ハナダイ類、ハゼ、カエルウオ、テンジクダイの仲間などです。
甲殻類はシャコガイを食べてしまうものがいるので注意します。このほかにウミケムシの仲間もシャコガイを捕食することがありますので見つけたら取り除くようにします。
サンゴとの相性
▲毒が強いサンゴの近くに置かない
シャコガイはかなり強い光と綺麗な水を必要とするため、SPS、つまりミドリイシやコモンサンゴなどと一緒に飼育したいサンゴです。
イボヤギなど水を汚す陰日性サンゴとの飼育はあまり向いていません。シャコガイは毒がなく、ナガレハナサンゴなどのように強い毒をもつサンゴやイソギンチャクなどと触れないようにする必要があります。
シャコガイの飼育まとめ
- 二枚貝の仲間だが、外套膜に褐虫藻を共生させて光合成をする
- どの種も飼育はやや難しく、清浄な水が必要
- ヒメジャコは小型、外套膜が鮮やかな青いものも
- シラナミガイも美しい色彩で人気がある
- ヒレジャコは大型、やや弱めの光でも飼育可能
- ヒレナシシャコガイは殻長50cmを超える大型種
- 餌は専用のフィトプランクトンフードを与える
- ハードコーラル飼育と同様の添加剤が必要
- 寄生している小さな巻貝に注意
- 入水管を大きく広げている、色が妙に薄い、外套膜が傷ついているものはだめ
- フグやチョウチョウウオなどとの飼育は不可
- ウミケムシに襲われることもあるため砂の上に置かない
- 他のサンゴと接触するようなことは避ける