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2019.10.17 (公開 2017.08.18) 海水魚飼育の基礎

海水魚・サンゴに重要な「水流」の作り方と役割

サンゴを上手く飼育するには何が必要でしょうか。それは太陽のような強い光、清浄な海水、そして水の流れです。

きらきらした水やハイパワーの灯具から放たれる光は、アクアリストの目に見えてわかるものですが、水流というのは見ただけではなかなかわからないこともあり、初心者とベテラン・アクアリストの差がつきやすい要素ともいえます。

しかし水流は極めて重要な要素であり、水流がなくなるとサンゴは弱り、死んでしまうこともあります。ここではサンゴを上手く飼育するための水流についてまとめてみました。

なお水流と同じく重要な「光」については以下で解説しています。

水流が必要である理由

水流がほとんど無くなると水があまり動かなくなり、そのような場所に微生物の死骸や糞などの粒子(デトリタス)が蓄積され、病気が発生することもあります。

水がなかなか動かない隔離水槽などで長い間魚を隔離しておくと、同じような理由でデトリタスがたまったり病気が発生することがあるのであまりおすすめできません。サンゴは魚以上に水流を欲しているといえます。

しかしサンゴは魚と異なり、原則自分で動くことはできません。

サンゴのポリプに水をいきわたらせることは必要な成分をサンゴが摂取するのには水流がなければいけません。またサンゴをデトリタスが被ってしまうとサンゴは呼吸ができず死んでしまう恐れがあります。そのようなことがないようにするためにも水流というのは大事なのです。水槽にも水流が絶対に必要になります。

水流を生み出すポンプの種類

水流を発生させるにはいくつかの方法があります。揚水にも使える水中ポンプを使用する方法、水流専用の水中ポンプを使う方法、ウェーブボックスを使用する方法、ろ過槽から水流を発生させる方法などです。

ただしろ過槽から発生した水流は細めの水流であることが多く、サンゴに必要な太い水流を水槽につくるには専用のポンプやウェーブボックスなどが必要です。

水中ポンプ

水流を発生させるための基本的な方法は、水中ポンプを使用する方法です。オーバーフロー水槽の揚水ポンプだったり、殺菌灯やクーラーを接続するのに使う水中ポンプも水流を生み出すのに使うことが出来ます。

ただしこのようなポンプから出てくる水流は細めなので、水槽の壁面に水流を当てるなどして拡散させる必要があります。「マキシジェット」のような製品はオプションパーツも色々そろっており使いやすいでしょう。

水流専用ポンプ

水中ポンプにはオーバーフロー水槽のサンプ(水溜め)からメインの水槽に水を持ち上げたり、上部フィルターに水を持ち上げるための水中ポンプのほかに、水流を生み出すための専用ポンプもあります。現在水槽に水流をつくるのにはこちらの方が主流と言えます。

形は色々ですが、多くの商品が丸みを帯びた形で水槽の壁面に取り付けるようになっています。取り付け方も吸盤ではなく、磁石のものが多いです。

主な商品としては、ハイドールの「コラリア」シリーズ、「ピコ エボマグ」、ナプコ「ニューウェーブ」シリーズなど比較的安価なものから、エコテックマリンの「ボーテック」、マックススペクト「ジャイル」など高価なものもあります。

エコテックマリン ボーテック

日本ではLSS研究所が輸入販売する「ボーテック」は特許技術により電源が水中に入らないため水温が上昇しにくく、またフタをきちんと絞められるため飛び出しやすい魚の飼育にも向いています。付属のコントローラを使用して波を生み出します。

マックススペクト ジャイル

「ジャイル」は独特の細長い形が特徴の水中ポンプで、帯状の水流を作りだし、水槽全体の水を循環させます。

ハイドール ピコ エボマグ

ハイドールの「ピコ エボマグ」は安価な商品で、メーカーも「カードサイズの約半分」とアピールしているほど小さなポンプです。大型水槽で使うには力が足りないのですが、これまであまりなかった小型水槽に最適なポンプといえます。しかも小型ポンプなのに吸盤でなくマグネットで固定できるのは安心といえます。

なお安価な水流専用ポンプはヘルツフリーではないことが多く、お住まいの地域の周波数にあった製品を購入する必要があります。

ウェーブボックス

LSS研究所が輸入販売する「TUNZE ウェーブボックス」シリーズはその名の通り水槽内に「波」を発生させるポンプがついた箱です。箱についている強力なポンプで水槽全体の水を吸引し、大きな排出口から排出して水槽に波を生み出します。

高価な商品なのですが、コントローラなども付属し、水槽内に波を発生させるのにこれほど便利な商品はないかもしれません。

強い水流を生み出すパーツ

▲このような給水口にアクセサリをつけることで水流を増幅させられる

LSS研究所から出ている「スーパーウェーブアクセラレータ」という製品はオーバーフロー水槽の給水口に取り付けることにより、水流を増幅させられるユニークなものです。塩ビパイプに合うサイズを購入して取りつけるようにします。

エムエムシー企画レッドシー事業部から販売されているハイドール社製の回転式ディフレクター「フロー」も同じようにポンプやフィルターの吐出口に取り付けることにより複雑な水流を作るのに役立ちます。

上手な水流の作り方

ひとつのポンプを使う

ひとつの水流ポンプを使う場合、ポンプからサンゴに直接水流を当てるのではなく、水槽の壁面に水流をぶつけ、ぶつけた場所から拡散された水流が水槽の各所にあるサンゴにいきわたるようにするのが望ましいと言えます。

ポンプから水流を直接サンゴにあてるのは望ましいとはいえず、ポリプなどがはがれてしまったり、最悪、群体自体が死んでしまうおそれもあります。

ふたつ以上のポンプを使う

強い流れが必要なサンゴを飼育するにはふたつ以上の水中ポンプを使用して複雑な水流を作ることをおすすめします。ふたつの水中ポンプから出てくる水流同士をぶつけて大きな乱流を発生させて自然の海に近い流れをつくりたいものです。

また背が高い水槽であれば、ポンプをひとつ水槽の底に設置し、水槽の底から表層付近にまで流れる水流をつくるのもおすすめです。トサカの仲間などはそのような流れを好むものも多いです。

専用のコントローラーを使う

ミドリイシの仲間などの飼育にはウェーブコントローラーの使用がおすすめです。専用のコントローラを使用することで複数のポンプを操作することができます。時間ごとにポンプのスイッチを入れたり切ったり、給餌中は水流を弱めたりといった芸もでき、ミドリイシ以外のサンゴ全般にもおすすめです。

ポンプのメンテナンス

▲コラリアに大量の海藻が付着した様子。こうなる前に取り除きたい

▲コケが生えてきたら取り除いてあげたい

ポンプに石灰藻やその他の海藻、コケなどが生えたりすることがあります。パワーが落ちたり藻が絡まって水の出が悪くなる恐れもあります。そのため適切に取り除く必要があります。

コケや海藻は歯ブラシなどで取り除きます。歯ブラシは新品のものを使用したいものです。またアクアシステムから「アルジーシステマ」という、水槽や用品専用のブラシも販売されていますが、ブラシ自体が細長いため扱いにくいこともあります。短く持つとよいでしょう。

ポンプについた石灰藻を取り除くにはクエン酸や、専用のクリーナーに漬けておき石灰藻を取り除く方法がおすすめです。スクレーパーで無理してがりがり削る必要はありません。

魚水槽での水流

▲ニザダイ科の魚を飼育するならとくに水流があった方がよい

魚の中でとくに強い水の流れを好むのは、サンゴ礁域や岩礁域などの、波が強く当たるような場所の魚や、やや深場に生息する魚です。

カエルウオやニザダイなどの魚には強い流れを作ってあげると喜ぶはずです。やや深い海にすむ魚を飼育する水槽なら、水槽の下から上に向かって流れるような水流を作るとよいでしょう。

サンゴ水槽の水流

ミドリイシなど枝状のサンゴは水流がないとコケなどが絡まりそこから白化することもあります。

LPSのなかでもオオバナサンゴなどはあまり強い水流を好みません。

自ら動くことができないサンゴは、魚以上に水流を必要としているといえます。水流ポンプを二つか三つくみあわせ、強い複雑な流れを生むように工夫します。とくにSPS(ポリプの小さなイシサンゴ)はどのような水流のもとで飼育されたかにより、育ち方も変わってきます。

しかし全てのサンゴが強いものを好むか、と言われるとそのようなことはありません。LPS(ポリプの大きなイシサンゴ)の触手やソフトコーラルが常に倒れたような状態になっているというのは水流が強すぎるということです。そのような状態が長く続けばサンゴは確実にダメージを受けてしまいます。

ミドリイシなどのSPSが最も強い水流を好み、次いでナガレハナサンゴ、キクメイシなどのLPSやソフトコーラル、そしてオオバナサンゴなどのLPSです。陰日性サンゴは全般的にやや強めの水流を好みます。

水流の重要性と作り方まとめ

  • サンゴだけでなく魚水槽でも水流は大事
  • サンゴには直接水流を当てない
  • 水流専用ポンプを使って水流をつくる
  • 複数のポンプで複雑な流れを。コントローラーの使用もよい
  • 海藻やコケなどをこまめに取り除く
  • ニザダイやカエルウオの仲間は強い水流を好む
  • すべてのサンゴが強い水流を好むわけでない
  • オオバナサンゴなどには弱い水流を
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