2020.09.21 (公開 2018.06.02) サンゴ図鑑
カクオオトゲキクメイシの飼育方法~色彩豊富で人気のサンゴ
カクオオトゲキクメイシは初心者にも飼育しやすい好日性ハードコーラルです。しかし、その色彩は豊富でコレクションしたくなり、マニアにも人気があるサンゴです。
餌もよく食べるので給餌する楽しみもあります。しかし魚にとっては「美味しい」サンゴらしく、ヤッコの仲間やチョウチョウウオにはつつかれる恐れもありますので注意が必要です。
カクオオトゲキクメイシってどんなサンゴ?
▲コハナガタサンゴなどと同じオオトゲサンゴ科のハードコーラル
名前に「キクメイシ」とついておりますが、キクメイシ科ではなくオオトゲサンゴ科に含まれている好日ハードコーラルです。同じオオトゲサンゴ科の中にはハナガタサンゴやコハナガタサンゴ、スコリミアなどがあります。
好日性で光合成だけでも飼育は可能ですが餌もよく捕食します。硝酸塩の蓄積にもよく耐え初心者にも飼育しやすいサンゴといえます。
カクオオトゲキクメイシの色彩バリエーション
▲赤色が強いオーストラリア産と思われる個体
▲緑色の個体
カクオオトゲキクメイシは色彩のバリエーションが多いことでも知られています。赤色、緑色、オレンジ色、紫色、さらには複雑に色が混ざっているマルチカラーの個体もいます。基本的には派手なものほど高価です。赤色、緑色の単色系のものは安価で入手できます。初心者はまず安価なもので経験を積むとよいでしょう。
似た種類
似た種類にヒメオオトゲキクメイシ、アマクサオオトゲキクメイシ、オオトゲキクメイシなどがありますが飼育条件などはほとんど同様です。同定はやや難しく、観賞魚店ではいずれも「カクオオトゲキクメイシ」として販売されていることが多いです。
カクオオトゲキクメイシに適した飼育環境
水槽とろ過
LPSの仲間の成長は遅めですので、小型水槽での飼育も可能ですが、60cm以上の水槽で飼育することをおすすめします。これは60cm水槽の方が水質は安定しますし、このようなサンゴはバリエーションが豊富でコレクションしたくなるからです。
水槽システムはろ過槽をもちいたシステムでも飼育できます。上部ろ過槽を使用したりオーバーフローにして、サンプでろ過をするようにしてもよいでしょう。
水質と水温
好日性ハードコーラルですので、きれいな水質を保つ必要があります。ただしミドリイシほどの栄養塩が少ない環境でなくても飼育できます。硝酸塩の蓄積にも耐えますが、あまり高くなりすぎないように注意します。水温は他の多くのサンゴ同様23~25℃が適温です。高水温には注意しましょう。
水流
強い水流は苦手ですが、デトリタスがたまらない程度の弱い水流は必須です。水中ポンプを一つはつけたいものです。もちろんサンゴに直接水流がかかるようではよくありませんので、配慮は必要です。
光量と置き場所
▲青色LEDのもとで光り輝く
カクオオトゲキクメイシは光を必要としますが、ミドリイシを飼育するような強い光はあまり好まないようです。メタルハライドランプなどの強い光量のもとで飼育するのであれば、陰になるようなところに配置したいものです。現在の流行りはLED照明ですが、青色のLEDを照射するとサンゴが光り輝くのでおすすめです。
もちろん動いてしまうことのないように、専用の接着剤で固定しましょう。砂の上に直接おくのもよくありません。
カクオオトゲキクメイシに適した餌と添加剤
餌
▲ポリプが開いた状態。この状態で給餌するとよい
カクオオトゲキクメイシは餌を食べるタイプのサンゴです。まず臭いが強い冷凍餌などを水に溶かしてポリプを開かせてから、スポイトで冷凍餌、もしくは以前ご紹介したバイタリスなど専用の配合飼料を与えるようにします。
サンゴに確実に餌を届けるために、給餌の際は循環ポンプや水流ポンプを一時的にとめる方法もあります。ただしその場合は必ず再始動させるのを忘れないでください。魚やサンゴなどが死んでしまうおそれもあります。
添加剤
▲マグネシウム、ヨウ素、ストロンチウム、微量元素。ほかカルシウムも添加したい
ミドリイシほど添加剤を必要とはしませんが、それでもハードコーラルですのでカルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、ヨウ素、微量元素は供給してあげたいものです。特にカルシウム、マグネシウム、ストロンチウムを添加し、給餌を行えばゆっくりですが成長を楽しむことも可能です。このあたりは成長が遅いキクメイシの仲間とは異なるところといえます。
サンゴやマリンプランツなどの光合成に必須な成分である鉄も添加したいところですが、鉄は微量元素の中にも入っていることが多く、過剰に添加するとコケが大発生するおそれもあります。
カクオオトゲキクメイシの入手方法
▲鮮やかな色彩で人気が高いオーストラリア産と思われるカクオオトゲキクメイシ
産地はインドネシアがメインで、ほかにオーストラリアなどからもやってきます。オーストラリアのカクオオトゲキクメイシはド派手な色彩で人気が高いですがかなり高価です。インドネシア産のものは比較的安価ですが、最近はインドネシア産のサンゴは輸出がストップしています。
このほか、たまにフラグにされたものが販売されていることもあります。これはインドネシアやオーストラリアでフラグにしたのではなく、多くの場合これらの国から輸入されたものを日本の海水魚店でフラグにしているようです。
選び方は他のサンゴと同様です。溶けているもの、骨格が見えている部分が多いもの、色が抜けているものなどは選ばないのが賢明です。フラグサンゴの場合は、フラグにしてから期間が短いのは避けるべきです。
カクオオトゲキクメイシと他の生物の相性
魚との相性
▲チョウチョウウオはもちろん、小型ヤッコも避けるべき
魚との相性はあまりよいとはいえません。チョウチョウウオ飼育をしている水槽にカクオオトゲキクメイシを入れるというのはチョウチョウウオに餌を与えていることになります。小型ヤッコはケントロピーゲ亜属はもちろん、ルリヤッコなどのクシピポプスも避けたほうがよいかもしれません。何かの理由で弱ってしまったり、あるいは欠けてしまうと、そこから食べられてしまうこともあります。
ほか注意すべきはセダカギンポ、マナベベラの仲間、クロベラの仲間、テングカワハギ、アイゴ類、ニザダイ類です。セダカギンポやベラ類、テングカワハギはポリプ食性の魚でLPSとの組み合わせは避けるのが無難です。アイゴやニザダイは概ね無害ではありますが、サンゴの状態が悪いと食べてしまうこともあるようです。遊泳性のハゼやテンジクダイ、ハナダイの仲間は問題ありません。
他のサンゴとの相性
▲強い毒をもつナガレハナサンゴの類との接触は特に避けるべき
カクオオトゲキクメイシはキクメイシの仲間と異なり毒性は弱めです。ですから他のサンゴやイソギンチャクとの接触はあまり好ましくありません。同じ種類のサンゴと接触するのはあまり問題はないようですがヒメオオトゲキクメイシなどはカクオオトゲキクメイシと比べるとやや毒性が強いともいわれています。コレクションするときは接触しないよう注意しなければなりません。
カクオオトゲキクメイシの飼育まとめ
- 丈夫で飼育しやすいハードコーラル
- キクメイシの名前があるが、キクメイシ科ではない
- ヒメオオトゲキクメイシなど近縁種も「カクオオトゲ」とされることがある
- 色彩のバリエーションが豊富でコレクションも楽しい
- 小型水槽でも飼育可能だが、60cm水槽での飼育が安心
- 強すぎない水流は必要。直接当たらないように
- 光は強すぎるとよくない。おすすめは青色のLED
- 餌を与えるとよく食べる
- 添加剤による元素添加が有効
- 小型ヤッコやチョウチョウウオとの相性は悪い
- 強毒のサンゴやイソギンチャクとは触れないように