2020.10.26 (公開 2017.10.21) サンゴ図鑑
オオバナサンゴの飼育方法~餌やり・添加剤・骨格が見えてしまったときの対処法
「オオバナサンゴ」というのは実はアクアリウム関係でのみ使われる名称で、標準和名ではヒユサンゴといいますが、ここではアクアリウムの世界でメジャーなオオバナサンゴとします。硬い骨格をもつポリプの大きなハードコーラルで、強すぎない光を好みます。また丈夫で初心者にもおすすめのサンゴです。今回はオオバナサンゴの飼育方法をご紹介します。
オオバナサンゴの特徴
▲極美の個体
▲オーストラリア産のオオバナサンゴ
オオバナサンゴの魅力はやはりその色彩でしょう。グリーン、レッドのどちらかが多く、二つの色が入ったツートンカラーやそれ以上の色が入ったマルチカラーなどもあります。オオバナサンゴの同じ色・模様のものは二つと同じものは存在しないといえますが、写真のオーストラリア産のものは写真のような縞々模様のものが多いようです。
ヒユサンゴ(オオバナサンゴ)。高水温のせいか色が抜け気味。復活なるか。 pic.twitter.com/uhErPOMWOa
— 椎名まさと (@aquarium_lab) November 2, 2018
オオバナサンゴに適した飼育環境
オオバナサンゴはLPSのなかでも飼育しやすいタイプといえますが、光や水温などにはちょっと注意が必要なサンゴといえます。一般的には弱めの光、やや低めの水温を好み、餌もたまに与えるとよいです。これらの点に気をつければ、飼育しやすいサンゴといえるでしょう。
水槽サイズ
オオバナサンゴは比較的水質の低下に強く、45cm水槽でも飼育できますが、初心者がうまく飼育するのであれば60cm以上の水槽が最適でしょう。初心者の方が90cmや120cmの大型水槽を購入するのはあまり現実的ではありませんが、一般的に販売されている60×30×33cmの水槽でも50リットル以上の水量を確保することができますし、45cmキューブ水槽は標準的な60cm水槽よりもさらに多くの水を入れることができます。おすすめはオーバーフロー方式の水槽です。サンゴを飼育するのであれば、水質の安定のため、できるだけオーバーフロー水槽で飼育することをおすすめします。
水質とろ過システム
硝酸塩が若干検出されるような水槽での飼育も可能ですが、やはりできるだけ綺麗な水で飼育したいものです。
水槽システムはろ過槽をもつ「強制ろ過」のシステムと、ろ過槽を持たず排せつ物などが生物ろ過により分解される前に強力なプロテインスキマーで水槽から取り除く「ベルリンシステム」のどちらかになります。ゼオビットなど、超低栄養塩のシステムはオオバナサンゴの飼育には適しません。
ベルリンシステムはプロテインスキマーの能力が重要になります。参考までに我が家の水槽では3年ほど飼育しているオオバナサンゴがいますが、90×45×60cmのオーバーフロー水槽でベルリンシステム、スキマーはH&S(エムエムシーのHS‐850を使用しています。
プロテインスキマー
プロテインスキマーはベルリンシステムの肝といえるような機材ですが、ろ過槽を用いて生物ろ過を行う方式であっても、残り餌や魚の排せつ物を亜硝酸や硝酸塩になる前にハイパワーで水槽から取り除いてくれるのでおすすめの機材です。小型水槽でしっかり水換えをするのであればQQ1のような小型のものでもよいかもしれませんが、オーバーフロー水槽ではインサンプ型の強力なものを使用しましょう。
水流
LPSはどの種も直接あたる水流は望ましくありません。オオバナサンゴに最適の水流は緩やかな流れで、あまり激しい流れは好みません。とはいえ水が淀まないような流れが欲しいものです。ハイドールの「コラリアナノ」などを使用し、水流をうみだしましょう。
光
オオバナサンゴは光も強すぎるものは好みません。したがってハイパワーのLEDや250wのメタルハライドランプの直下に置くべきではありません。照明はブルーLEDを当てれば光りますが、できるだけ多くの種類の光を当てるべきかもしれません。ちなみに私の水槽ではグラッシーレディオのRX072コーラル、ゼンスイLEDライトなどを使用しており、現在はゼンスイLEDの故障に伴いT5蛍光灯に変更しています。
水温
オオバナサンゴはやや深場系のサンゴで、また温帯に多いタイプのサンゴなので高水温に弱い面があります。基本的に22~25℃の水温を保つように心がけます。ヒーターとクーラーを使用し、水温の安定につとめなければなりません。
オオバナサンゴの置き場所
▲水槽の底の方に置くとよいが、砂の上に直接置かない
上記の要素を考えますと、オオバナサンゴは水槽の底の方、弱めの水流が当たるような場所に配置することがベストといえます。ただし砂の上に直接置いてはいけません。かならずサンゴ岩やライブロックの上に置くようにします。
砂の上に直接置くと、サンゴの下の水が動かず、そこから硫化水素が発生するおそれがあるためです。もちろん落下してサンゴが死んでしまうという事故を防ぐため、専用の接着剤を使用してサンゴ岩やライブロックに接着するようにします。なお、このオオバナサンゴは、砂の上に直接置いておらず、小さなライブロックの上に置いています。
また、縮んでいるときと共肉を大きく広げたときのサイズは大きく異なるので置き場所は共肉を広げたときのことを考えるようにしましょう。オオバナサンゴはほかのサンゴとの接触に極めて弱いからです。とくに毒性の強いウミバラ、ナガレハナサンゴ科のサンゴ、マルハナガタサンゴなどとの接触は避けるべきです。
オオバナサンゴに適した餌と添加剤
オオバナサンゴにおすすめの餌
▲餌を欲しがるオオバナサンゴ
オオバナサンゴは捕食性が強いサンゴで、餌をやるとよく食べてくれます。ただし毎日与えると消化不良などをおこすこともあるようで、よくありません。以前ご紹介したリーフロイズや、バイタリスのLPS用ペレットフードなどを与えるとよいでしょう。このほか冷凍のコペポーダなどを与えてもよいのですが、冷凍の餌は水を汚すおそれがあるので、頻繁にあたえるのはよくありません。
オオバナサンゴに必要な添加剤
オオバナサンゴはハードコーラルですので、添加剤も色々必要です。カルシウム、ストロンチウム、マグネシウム、ヨウ素、微量元素は供給してあげたいものです。
好日性のサンゴであり、光合成のために重要な成分である鉄分を必要としますが、鉄分の添加は藻類の大発生をも招いてしまうため、できるだけ鉄分が入った添加剤を使うのが望ましいでしょう。
オオバナサンゴの購入時のポイント
オオバナサンゴの特徴的な色が薄くなっているものは「褐虫藻」と呼ばれる体内に共生している藻類が抜け出してしまっているので、こうした個体の購入は避けます。また、サンゴの骨格を覆っている共肉がはげて骨が見えているものなども選んではいけません。できるだけ「ぷっくり」膨らんでいる個体がよいです。また、色が妙に薄いのも避けた方が賢明です。
オオバナサンゴとほかの生物との相性
オオバナサンゴと魚との相性
▲ヒフキアイゴ
オオバナサンゴは魚との相性があまりよくありません。チョウチョウウオの仲間はもちろん、ある種の小型ヤッコも突いてしまうのでN.G.です。さらに我が家ではヒフキアイゴにもつつかれてしまいました。オオバナサンゴは魚との接触に弱く、集中的につつかれたら隔離して養生させる必要もあります。
魚との飼育は小型のテンジクダイやベラ(チューブリップ系統はダメ)、ハナダイ、ハゼ類、カエルウオ、スズメダイ程度にとどめておいた方がよいでしょう。
オオバナサンゴと他のサンゴとの相性
オオバナサンゴはほかのサンゴとの相性もあまりよくありません。刺胞毒が弱く、ほかのサンゴとの接触に負けてしまいやすいのです。また強い光・強い水流も苦手なようで、これらの環境を好むミドリイシなどとの飼育にもあまり適していないかもしれません。もちろん配置に注意すれば同じ水槽で飼育するのも不可能ではないのですが、オオバナサンゴに餌を与えると水が汚れることもあり注意が必要です。
オオバナサンゴと無脊椎動物との相性
オオバナサンゴはヤドカリやカニなどの大きなハサミをもつ甲殻類により岩組から落下させられることもあります。そのため接着剤でしっかり固定しておきます。大きなイセエビや大きなカニ、大きなヤドカリなどは岩組ごと崩すこともあるためおすすめできません。
オオバナサンゴの飼育まとめ
- 色と形に変異が大きくて魅力的
- 水質の悪化にはミドリイシよりは耐性がある
- プロテインスキマーの使用がおすすめ
- 水流は弱めでほどよくサンゴにあたるように
- 青色の光を放つLEDがおすすめ。メタハラの直下は避ける
- 水温は25℃をキープ
- 砂の上に直接置かない
- 餌を与えると大きく成長する
- カルシウム、ストロンチウム、ポタシウム、マグネシウム、ヨウ素を添加
- 鉄分を含む微量元素も添加したい
- チョウチョウウオの良い餌になる。ハギ、ヤッコや砂をまき散らす魚も要注意
- 毒性は弱い。強毒のサンゴからは放してレイアウトする