2019.07.24 (公開 2019.03.25) 海水魚図鑑
スジクロユリハゼの飼育方法~臆病で痩せやすいので混泳には要注意!
スジクロユリハゼはこれまで紹介したゼブラハゼやオグロクロユリハゼと近縁の種ですが、体側に明瞭なオレンジ色の縦帯があるなど、ゴージャスな色彩をした極めて美しい魚です。しかしながら臆病でやや深い場所にすむので高水温に注意が必要など、ほかのクロユリハゼの仲間と比べて気をつけたいポイントがいくつかあります。
また、お値段も高めで、初心者には手を出しにくい魚といえます。今回はスジクロユリハゼをうまく飼育するためのポイントをご紹介します。
標準和名 | スジクロユリハゼ |
学名 | Ptereleotris grammica Randall and Lubock, 1982 |
英名 | Lined dartfish |
分類 | 条鰭綱・スズキ目・ハゼ亜目・クロユリハゼ科・クロユリハゼ属 |
全長 | 10cm |
飼育難易度 | ★★☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトレッドS、ホワイトシュリンプなど |
温度 | 22℃前後 |
水槽 | 60cm~ |
混泳 | 臆病なので混泳に注意 |
サンゴとの飼育 | ウチウラタコアシサンゴやイソギンチャクなどを除き問題なし |
スジクロユリハゼってどんな魚?
▲烏帽子状の大きな背鰭が格好いい
スジクロユリハゼはスズキ目・クロユリハゼ科(もしくはオオメワラスボ科のクロユリハゼ亜科)・クロユリハゼ属に分類される遊泳性ハゼです。クロユリハゼ属は日本からは少なくとも12種が知られていますが、ほかの種類とは体側にオレンジ色の縦帯があることによって容易に見分けることができます。また背鰭が大きく烏帽子状で、同じような形の背鰭を有するビューティフルダートフィッシュやスミレハナハゼと似ていますが、これらの種とも体側の模様が異なるので容易に区別できます。和名や英名の由来はおそらく体側にあるオレンジ色の線にちなむのでしょう。
亜種関係
スジクロユリハゼには亜種が設定されることがあります。日本(伊豆諸島、高知県柏島、沖縄諸島、宮古諸島)からインドネシア、ニューギニア周辺にすむものと、インド洋のモーリシャスなどに生息するものは体側にある縦帯の色彩が異なるため、別亜種とされていました(Ptereleotris grammica melanota Randall and Lubock, 1982)。しかしながら近年はこれら二つの種をまとめることが主流となっているようです。
スジクロユリハゼに適した飼育環境
水槽
あまり激しく泳ぎ回る魚ではありませんが、全長10cmほどとやや大きく成長する魚のため、60cm以上の水槽での飼育をおすすめします。ほかの魚と混泳するのであれば90cm以上の水槽で飼育するべきでしょう。
水質とろ過システム
サンゴ礁域の深場にすみ、安定した綺麗な水で飼育したいものです。上部ろ過槽でも飼育できますが、オーバーフロー水槽で飼育した方が安定した環境での飼育ができるでしょう。サンゴに悪戯することもなく、魚の数さえ抑えられればベルリンシステムやゼオビットシステムなどでの飼育もできます。
水温
スジクロユリハゼは遊泳性ハゼの中でもとくに深い場所(水深およそ30~65m)に生息する種です。ですから水温もあまり高くなるのは望ましくありません。22~24℃くらいのやや低めの水温で飼育するのが望ましいです。
フタ
遊泳性ハゼ全般にいえることですが、水槽にフタをしないと何かに驚いて飛び出してしまい事故死してしまうことがありますので、必ずフタをしましょう。
ライブロックとサンゴ岩
▲スミゾメハナハゼとともにライブロックの中に隠れてるスジクロユリハゼ
水槽には必ずライブロックかサンゴ岩を入れてあげましょう。スジクロユリハゼは大変臆病な性格ですので、隠れ家を作ってあげたいものです。とくにスジクロユリハゼとほかの海水魚を混泳させるのであれば、これらは必ず水槽に入れてあげるべきです。
スジクロユリハゼに適した餌
スジクロユリハゼは海中では動物プランクトンを食していますが、水槽内では配合飼料をすぐ食べてくれます。しかしながら水槽内で餌を食べず餓死してしまうケースも多いです。これは状態のよくないものを購入した、もしくは老いた個体を購入していたという可能性もありますが、最も多いのは水槽に入れたあと、強い魚に追われるなどして引きこもりになってしまい、気が付いたら餓死していたなんていうケースです。こういうときは餌の種類を変えるなどするよりも、強い魚との混泳を避け、いじめるような魚は隔離するなどの対処が必要です。
餌はフレークフードよりも小さな粒状のものがよいでしょう。ホワイトシュリンプやコペポーダなど生餌もよいですが、生餌は与えすぎると水を汚すので注意が必要です。
スジクロユリハゼをお迎えする
スジクロユリハゼはほかのクロユリハゼ属魚類と比べて高価な種類といえます。多くの種は1000円前後で販売されますが、スジクロユリハゼは10000円近くのお値段で販売されていることもあります。これはスジクロユリハゼはやや深場にすむ種類で、なかなか獲れないからです。
この仲間は入荷後のケアが重要です。一般的に魚は入荷後1週間以上たったものを購入するのが望ましいのですが、クロユリハゼの仲間は1週間もストックしていると痩せてしまっていることが多いのです。一部のお店ではクロユリハゼの仲間のみ専用の水槽で飼育していることもありますが、多くの店ではヤッコやスズメダイなど強めの魚とストックしていることも多く、これらの魚にびびって出て来なくなることも多いのです。逆に入荷してすぐの個体は病気発生などのリスクもあり、購入は望ましくありません。信頼できる海水魚店で、長期ストックされよく太った個体を選択するとよいでしょう。もちろん赤いただれがあったり、鰭がぼろぼろになっているなどの個体は購入してはいけません。
参考までに、我が家で飼育している個体は愛知県清須市の「ラパス」で購入したものです。
スジクロユリハゼの混泳
同種同士の混泳
▲愛知県「ラパス」で販売されていたクロユリハゼ。複数入れても問題ない
スジクロユリハゼは同種同士の複数飼育も可能です。臆病な性格をしており、1匹だけで飼育するとひきこもってしまうこともありますので、何匹かで飼育するとよいでしょう。もし1匹だけ飼育するなら、クロユリハゼやオグロクロユリハゼなど、同じくおとなしい遊泳性ハゼと飼育するようにします。
ほかの魚との混泳
スジクロユリハゼからほかの魚に攻撃を仕掛けるようなことはなく、多くの小型魚と混泳できます。小型のハナダイやイトヒキベラなど同じ環境にすむ魚との混泳も可能ですが、スジクロユリハゼにプレッシャーがかかっていないか、よく観察するようにしましょう。共生ハゼや口に入らないサイズの小型ハゼとの飼育もできます。
混泳を避けるべき魚はスズメダイやメギス、大きくなるハギ(ニザダイ)など気が強い魚や、肉食性の強い魚です。ただしスズメダイの仲間であってもクロオビスズメダイやヒメスズメダイ、ヒメスズメダイによく似たブラックテールクロミスなど、比較的おとなしめの魚であれば、混泳できることもあります。ただしできるだけこのスジクロユリハゼをメインとし、スジクロユリハゼがなれたらほかの魚を追加するのがベストです。
サンゴ・無脊椎動物との相性
▲サンゴ水槽を泳ぐスジクロユリハゼ
サンゴには全く無害ですので、一般的にアクアリウムで飼育される好日サンゴであればどのようなサンゴとも飼育できます。生息環境を考えれば浅場SPSよりはLPSなどがよく似合うでしょう。イソギンチャクやウチウラタコアシサンゴは魚を食べてしまうのでおすすめできません。
無脊椎動物は魚を襲うことがないものは入れられます。しかし大型のカニやヤドカリ、イセエビなどは入れられません。
スジクロユリハゼ飼育まとめ
- ゼブラハゼなどと同様クロユリハゼ科の遊泳性ハゼ
- 体側のオレンジ色の縦線が特徴
- 60cm以上の水槽で飼育することが望ましい
- 綺麗な水を好む。しっかりしたろ過層が必要
- ほかのクロユリハゼよりも低めの22℃前後で飼育したい
- 飛び出すおそれあり。フタは確実に
- ライブロックやサンゴ岩などで隠れ家をつくる
- 強い魚と一緒に飼育すると餓死するおそれも
- 粒状の餌もよく食べる。生の餌は水質悪化につながるおそれあり
- 信頼できるお店で長期ストックされてよく太ったものを選びたい
- 同種や近縁種との混泳も可能
- 気が強い魚や肉食性の魚との混泳はしない
- サンゴ水槽での飼育もよい