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2020.03.02 (公開 2017.06.15) メンテナンス

人工海水の作り方~おすすめの人工海水の素と成分比較

海水魚は原則、海水でしか飼育することはできません。ですから、海水魚を飼育するのに海水は必須です。

しかし飼育するための水を海で汲んでくるのは現実的ではありません。内海など場所によっては汚れも酷く、病原菌等も含んでいる恐れがありますし、河川が近くにあるような場所では比重も安定しません。

また水温が低い冬期に水をくみ一気にヒーターで25℃にあげようとしたら微生物は死亡してしまい、海水が腐ってしまう恐れがあります。ベテランの方はわざわざ海に行って海水を汲んできて使っている人もおりますが、それは海水の成分や潮の流れなど、あるいはリスクを理解した上で行っているもので、初心者には真似をするのは難しいです。

人工海水の素~選び方のポイント

海水魚飼育に必要な海水をもっとも早く、しかも安全なものを入手するには「人工海水の素」を使って海水を作るのが簡単です。水道水に人工海水の素を入れると簡単に作ることができ、量さえ間違えなければ初心者でも安全に海水を作ることができます。

海水魚の飼育で使う人工海水のもとは海水を精製して作られるものですが、主に海水をろ過して、有害な物質を取り除くなどしたのちに蒸発させてつくられるものなので、天然海水よりも安心して使うことができます。

なお人工海水の素の最も主要な成分は塩化ナトリウムですが、似たようなものだからと言って食塩など、食用として販売されている塩は海水魚飼育には決して使わないようにします。

人工海水の素はさまざまなメーカー、ブランドのものが日本で販売されていますが、魚や飼いやすいサンゴ用のもの、サンゴの中でも最高峰と言われるミドリイシの仲間を飼育するために各種の元素が強化されたものがあります。またバイオアクティフシステムやゼオビットシステムといった、特殊なシステムに使用する専用の人工海水の素もあります。

カクレクマノミと飼いやすいサンゴを飼育するならば特に高級なものでなくても、安価な値段で販売されているもので問題ありません。

安心して使用できる主な人工海水の素のブランド

日本海水(マリンテック)「シーライフ」「ヴィーソルト」

マリンテック「シーライフ」は溶けやすく使いやすい人工海水の素で、サンゴ礁の魚や飼いやすいサンゴの飼育に適しています。私も実際に使用しているブランドのひとつです。普通に観賞魚店においてあるのは内容量別に4種類ですが、業務用の巨大サイズもあります。

ヴィーソルトはサンゴなどの無脊椎動物や海藻などにも使いやすい人工海水の素で、メーカーによれば純水を使用して海水を作ることを想定しているとのことですが、マスキング剤を使用すれば水道水でも使用可能です。

デルフィス「ライブシーソルト」

兵庫県のデルフィスが作っているライブシーソルトは国産人工海水の代表的なブランドのひとつで、魚はもちろん、サンゴなども状態よく飼育できる人工海水の素です。この商品にはカルキ抜きの成分が含まれており、人工海水の素を溶かすのにカルキ抜きをする手間を省くことができます

別売のカップを購入することで正確に人工海水の素の量を測ってつくることができます。またバケツや保管用のオプションアイテムも充実しています。2018年にパッケージや成分が若干変更になりました。量に合わせて4種類がありますが、60cm水槽であれば写真の200リットル用のものがあれば立ち上げ+水かえで2か月はもちます。

レッドシー「レッドシーソルト」「コーラルプロソルト」

▲レッドシーソルト

イスラエルのレッドシーが製造しているレッドシーソルトはその名の通り紅海の海水を精製して作った人工海水の素です。

特に初心者が魚やソフトコーラルなどを飼育するには元素がバランスよく配合されたレッドシーソルトのが使いやすいでしょう。一方コーラルプロソルトの方はミドリイシなどのハードコーラルなどを飼育するのにとくに適した人工海水の素で、カルシウムなどが強化配合されています。

レッドシーソルトは小袋からバケツまでさまざまなサイズの商品がラインナップされています。またライブシーソルト同様に別売りのカップを使うことによって正確に人工海水の素の量を測ることができます。

アクアリウムシステムズ「インスタントオーシャン」

フランスのアクアリウムシステムズが製造しているインスタントオーシャンは海外製の人工海水の素の中でもよく普及している製品です。

バケツでも販売されており、クマノミの絵が描かれたものはさまざまな海水魚店で置いてあるのを見たことがあるでしょう(ただし最近デザインが変更になったもよう)。インスタントオーシャンは多くの海水魚店でも使用されている安心の人工海水のひとつです。

このように様々な人工海水の素がありますが、どの製品でもカクレクマノミや一般的なサンゴの仲間を飼育することが出来ます。ちなみにこの記事を書いている筆者はシーライフとライブシーソルトを使用しています。

なおここでご紹介しているブランドは日本の観賞魚店で入手しやすい人工海水の素のブランドのリストであり、ここに掲載されていない人工海水の素が悪いもの、ということでは決してありません。ただし、中にはトロピックマリン社の「バイオアクティフシーソルト」などのような特殊システム用のものもあります。

人工海水を作るための便利グッズ

▲ライブシーソルト専用の目盛り付きカップ

人工海水を簡単に作るためのグッズも販売されています。たとえば、デルフィスの「ライブシー」シリーズには、専用の人工海水のもとの計量カップが販売されています。この目盛までライブシーソルトを入れると、10リットルの海水をつくるのに必要な人工海水の素の量が簡単にはかることができます。

なお「レッドシー」ブランドからも同様のものが販売されています。このような商品は、初心者の方がうまく人工海水を作るのにとても役立つでしょう。

人工海水を作るために必要なもの

いよいよ人工海水をつくります。まずは準備するものを紹介します。

人工海水のもと

人工海水の素を用意します。先ほどご紹介したライブシーソルトの人工海水の素です。

90cm水槽で一般的な水換えの頻度を考えると200リットルのものを買った方がお得です。

比重計

飼育水の比重を測る比重計です。比重計には屈折計、料理のときに使うボーメ計などもありますが、初心者ならプラスチック製の軽量な比重計を使うのがよいでしょう。

バケツ

▲コマセバケツはしっかりフタもでき何かと便利

バケツもできれば15~20Lくらいはいるものが欲しいところです。同じものが二つ手に入るならば、二つ置いておきたいものです。デルフィスからはライブシーソルト専用のバケツも販売されていて便利です。なお、写真は水槽用具ではなく、釣り用のコマセバケツですが、かなり便利なものです。フタができるので水かえのほか、病魚の隔離や磯採集などに役立ちます。

カルキ抜き

▲テトラ コントラコロライン

カルキ抜きも準備します。水道水に含まれる塩素を中和するために使用します。人工海水を作るのに必要か否かは人工海水の種類によって異なります。「ライブシーソルト」など、「塩素中和剤はいりません」と書かれている場合はカルキ抜きは必要ありません。一日汲み置きしておけばカルキは抜けるのですが、このカルキ抜きを使用するほうが楽でしょう。

攪拌させるもの

▲アルジーシステマ

ブラシなど人工海水をかき混ぜるものを何か準備して下さい。水槽用に販売されている長い柄のブラシや、スポイトなどが良いでしょう。ただし金属製のものなどは錆びてしまうためおすすめできません。

写真はアクアシステム アルジーシステマという、水槽用のブラシです。このほかにウェーブリーフ ターゲットスポイトなど、細長いスポイトなどで水をかき混ぜたり、エアレーションをするのもよいでしょう。

ホース

▲エーハイムのホース

ホースは飼育水を抜いたり、水中ポンプに接続して、作った人工海水を水槽にいれたりするのに役立ちます。水中ポンプに接続するのでしたら、ポンプに適合するホースが必要になります。写真はエーハイムのホースです。

ポンプ

▲エーハイムの水中ポンプ

バケツに作った人工海水を持ち上げて水槽に入れるというのは重いし、入れ方によっては砂が舞い上がってしまい汚れも舞い上がる恐れがあります。水中ポンプとホースを使えば簡単に人工海水を水槽に入れることが出来ます。

写真はエーハイムの水中ポンプですが、私はマキシジェットも多用しています。水中ポンプはヘルツフリーでないことが多いので、購入の際は注意しなければなりません。

ヒーター

ヒーターは冬には必需品です。飼育している水槽と同じ水温にセッティングします。水温の急変は病気などを招く恐れがあるからです。オートヒーターでもよいのですが、水温設定が可能な電子サーモ付きヒーターのほうが使いやすいです。

水温計

水温計を使い、ヒーターで温めた水の温度のチェックをします。

はかり

人工海水の量をはかるのに、はかり、そしてはかりの受け皿が必要になります。ライブシーソルトやレッドシーソルトには専用の計量カップが販売されていますので、それを使うのもよいでしょう。なお、ここであげたもののほか、タオルなどもあればよりよいです。

人工海水の作り方・順序

①あらかじめバケツに水道水を汲み、水道水の中に中和剤をいれておきます(ライブシーソルトなど中和剤がはいっているものは不要)

②ヒーターを使って飼育水と同じ水温にします。水温は水温計で測ります。

③人工海水のもとをはかって水槽に入れます。

④人工海水のもとをかき混ぜます。5分ほど待ち、白い濁りが消えているのを確認します。

⑤比重計で比重をはかり、濃すぎるようでしたら真水を足して調整します。その後再度比重計で比重のチェックを行います。

⑥ホースで海水を抜き、抜いた分だけ人工海水を入れます。どのくらい人工海水を抜いたかわからない場合は、同じバケツをもう一つ購入しておくとよいでしょう。

⑦人工海水を入れるときは水中ポンプを使って入れるとよいです。この場合は水中ポンプ用のホースも必要です。海水を抜くホースもこれを使ってかまいません。いずれにせよ、入れる場合はできるだけ砂が舞い上がらないように注意すべきです。

人工海水の素の保存方法

人工海水の素は開封したあとなるべく早く使い切ることが大切です。湿気が多いと固まってしまいやすくなかなか溶けなくなります。

大きい袋の人工海水の素(200Lなど)だと割安ですが、保管には十分気を付けなければなりません。袋を小分けにする方法もありますが、その場合も湿気には気をつけます。いずれにせよ、開封後早いうちに使い切ることが推奨されます。「ライブシーソルト」は600リットル分購入すると200リットルのものが3袋入っており、使う分だけ開ければよいのでおすすめです。

安心して使える天然海水

▲八丈島の海。晴れたときは海がきれい

冒頭で、初心者は天然海水を使わない方が良いと書きましたが、天然海水でも安心して使用できる場合があります。

通信販売専門店や、一部の海水魚店では天然海水をそのまま販売しています。近海で自ら汲んでくる海水とちがい沖合の清浄な海水を汲んできて処理をしているもので、安心して使用することができます。産地は伊豆諸島(写真)、小笠原諸島、沖縄などです。

このような海水には、添加剤に含まれないごくごく微量な成分なども含んでいるので、サンゴが元気になったりコケが生えにくいという特徴をもつものもあります。デメリットは重量があることで、人工海水よりも割高になってしまいます。さらに配送してもらうとなるとコストもかさみ、余程拘りがなければ継続して依頼することは難しいと思います。それでも職人さんなど天然海水を使いたいアクアリストは多いのです。

人工海水の作り方まとめ

  • 初心者には人工海水が使いやすい
  • 人工海水のもとは種類も豊富。用途に合わせてセレクトしたい
  • 作り方をよく見て人工海水を作る
  • 人工海水は湿気を嫌う。保存に注意
  • 販売されている天然海水は安心して使える
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