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2020.09.25 (公開 2019.09.13) 海水魚飼育の基礎

海水魚水槽の停電と災害対策

日本は災害大国です。2018~2019年だけでも島根、大阪北部、北海道、山形、千葉などで大きな地震が発生し、毎年夏から秋にかけては台風や低気圧もやってきます。それにより発生する、水槽の中の海水魚にとって恐怖なのは「停電」です。水槽は循環ポンプ、水流ポンプ、ろ過槽、プロテインスキマー、クーラー&ヒーター、照明など、ほぼすべてのものが「電力」で動いています。この電力が絶たれるということは、生物にとっては「死」を意味します。ですから、電力が復旧するまでの間どうすればいいか、考えてみましょう。

災害時の水槽

災害やそれによる停電が発生したら以下のことに注意します。

まず海水・酸素の確保

海水魚の短時間の生存に必要な要素は「海水」と「酸素」になります。酸素は重要で、これがないと海水魚は酸欠で死んでしまいます。停電していれば照明もつかないので、当然サンゴも光合成できず、死んでしまいます。まず乾電池で動くエアポンプを使用して酸素の確保に全力を尽くしましょう。

水槽が割れてしまったというときは、速やかに残った水と魚をバケツにうつすようにします。このとき割れたガラスで手を怪我しないように注意します。

餌は控えめに

災害が発生したら餌やりは控えたいものです。これは災害による停電もしくは断水が長く続くようなことがあれば、水替えをすることが難しくなるからです。餌を食べると魚というものは排せつしなければならず、それにより生物ろ過がはじまり、それにより硝酸塩が水槽に蓄積されてしまいます。ですから餌をやるのをやめるか、ハナダイなども餌を控えめにするようにします。

災害時の水温調整

高水温の際は水槽の周辺に保冷剤を置いたり、氷を入れたペットボトルを浮かべるなどの対策をしますが、大きな水槽では冷えにくく、小型水槽では冷えすぎることもありますので、水温計と生物の容態を見ながらでなければなりません。また災害で停電が起きれば氷や冷えた保冷剤などは入手しにくくなり、どのようにして水温を低めに保つかは悩みのタネといえます。また水槽に直接氷を入れると冷えすぎることもありますのでやめましょう。

低水温の際はお湯を入れたペットボトルを浮かべるなどの方法もありますが、こちらも水槽の生物の容態と水温計をチェックしながら慎重におこなわなければなりません。カイロなどでは水槽は温めにくいようです。

地震の後の水かえ

▲写真はメンテナンスの際の白濁り。地震の後も白く濁ったようである

地震の揺れが収まり、安定した後は水替えをしたほうがよいでしょう。これは地震により水槽内の汚れ(白点病の原因となる生物なども含む)が舞ってしまい、水が白濁し魚が病気にかかって死んでしまうおそれがあるからです。実際に東日本大震災の後でも魚が白点病にかかって死んでしまったとかいうケースが聞かれました。綺麗な海水が確保できるのであれば、水替えをするようにしましょう。

停電後の復帰

▲外部ろ過槽を使用している場合は要注意

外部ろ過槽(パワーフィルター)を使用している場合は、停電から復帰する際に注意しなければならないことがあります。

外部ろ過槽は密閉式で、停電時水が流れなくなるとその中にいた好気性のバクテリアが死滅したり、硫化水素が発生することもあり、そのような腐った水が水槽に戻れば魚は死んでしまいます。そのため外部ろ過槽は停電後、電力が復帰しても水が流れないよう、電源を抜いておく必要があります。その後再度イチからのセットアップが必要になります。その間電池式エアポンプと水作エイトを使用しておくとよいでしょう。

上部ろ過槽であっても、長く停電が続くようであればろ過槽のろ材を全部入れ替え、再度セットアップするのが安心です。

オーバーフロー水槽や外掛けろ過槽を使用している場合、余裕があればサンプの中でエアレーションを行い、サンプ内のバクテリアに酸素を供給してあげるのもよいでしょう。

水槽の免震・減災を考える

マメデザイン「マメセーバー」を使う

小型プロテインスキマーの「マメスキマー」などでおなじみのマメデザインから出ている水槽用の免震装置です。電気を使用しないため、地震による停電のあとの余震も安心です。

その他詳しいことや購入方法などは以下のサイトをご覧くださいませ(マメデザインによるマメセーバー紹介サイト、外部リンク)

フタは重要

最近のサンゴ水槽では水槽にフタをしないこともあります。理由は水槽に届く光量が若干低下すること、水が跳ねてそこにコケが付着することがある、などの理由です。しかし、地震が多発する日本では地震対策のため、フタは必須といえるでしょう。フタをしていると地震が発生した際の水のハネだけでなく、魚の飛び出しも防ぐことができます。

RO水・人工海水のもとをストック

▲RO水をためるポリタンク

RO水をためておけば地震のあとの水替えなどもできます。上記のように地震の後というのは水が濁りやすく、水替えしたい場合も出てきます。そんなときに重宝します。家庭にRO浄水器を設置しているならポリタンクの中にためておくのが一番安価で使いやすいでしょう。また海水魚ですのでRO水だけでなく人工海水もストックしておかなければなりません。

管理人の停電対策

▲筆者の自宅にあるパナソニックの蓄電池

「海水魚ラボ」の管理人の自宅は、パナソニックの太陽光発電と創蓄システム(外部リンク)を導入しています。これは簡単にいえば太陽光発電をおこない、発電した電気を蓄電池で貯め、停電時などに活用するというものです。

平成30年の台風24号(チャーミー)は9月30日に日本に上陸し、甚大な被害をもたらしました。我が家のある茨城県南でも大規模な停電が発生してしまいましたが、我が家ではこの蓄電池に電池をためていたおかげで魚たちはチャーミーによるおよそ7時間の停電のなかであっても無事にのりきることができました。

なお、この太陽光発電と蓄電池の設置については、業者と契約することになります。太陽光パネルの設置について、パネル(正確には太陽電池モジュール)の数や大きさなどにも左右されますが、大体数百万といったところです(我が家では2017年12月に導入しましたがその後価格の変動がかなりあると思われますので詳細な価格は伏せます)。いくつかの会社に見積もりをとり、しっかり熟考して購入・取付け、そしてサポートをしてもらわなければなりません。

防災に役に立つグッズ

コマセバケツ

▲一般的なコマセバケツ。このフタに穴をあけてチューブを通すと便利

▲コマセバケツのほか生き餌用バケツを使用する方法も

大きな地震などで水槽が倒れたり、避難するときに魚を連れて行く場合など、コマセバケツが重宝することがあります。フタに熱コテなどでチューブが通るような穴をあけておけば運搬中も水がこぼれず便利です。非常事態以外にも、水替えや採集にも役に立つので一つは持っておくことをおすすめします。

生き餌用の「アジバケツ」などでもよいのですが、このようなタイプは金属製のパーツも使用されており使用する場合は注意が必要です。

乾電池式エアポンプ

▲電池で動くエアポンプが必要

魚は酸素がなければ生きていけません。ろ過槽やプロテインスキマーが動いていれば水槽内に酸素が供給されるのですが、電源が切れれば酸素の供給ができなくなり、死んでしまいます。そういうときに役に立つのが、乾電池で動くエアポンプです。

注意しなければいけないのは乾電池式のエアポンプは電池がなければ動かないことです。そのため、必ず電池もセットで多量に保管しておくようにしましょう。また、災害が発生したらアマゾンなどのECモールで注文しても届くのに時間がかかることがあります。あらかじめ購入し備えておかなければ意味がありません。

アマゾンで販売されているものでも色々ありますが、安価なものは中国から直送されサポートもあまり期待できません。ニッソーやジェックス、釣り具ブランドのハピソンやダイトウブクといったブランドのエアポンプが安心でしょう。

ニッソー(マルカン)のエアポンプ

個人的にはニッソーのエアポンプが最も優れているように思います。2種類あり、α―B1はオーソドックスなタイプ、α―B2は防滴タイプです。大手ブランドの商品ですので、どこの熱帯魚店で入手しやすく、α―B1についてはECモールで探せば1000円を切るという低価格も魅力的です。

しかしながら音はある程度大きいです。ただ音が静かということは動作しているか分かりにくいということもあり、音が大きい=デメリットとは一概にいえないところがあります。

ジェックスのエアポンプ

▲ジェックスのアトム5

▲単三電池しかないときに役に立つ

ジェックスのアトム5はほかの乾電池と異なり、単三乾電池で動きます。電池の種類がニッソーのエアポンプと異なりますが、もし単三電池しかなかった場合などに役立つアイテムです。熱帯魚店、ECモールはもちろん、釣具店でもよく販売されています。ただ旧型のポンプは海水には適していないのか、海水で使っていると故障することもありました。本体に水をかけないように注意したいところです。

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釣り具メーカーのエアポンプ

釣り具用品でもエアポンプを作っているメーカーがあります。ハピソンは旧パナソニック(ナショナル)の釣り具関連事業を引き継いだ山田電器工業という会社が展開するブランドです。電気ウキや針結機、ライトのほかエアポンプを何種類か製造しています。

ハピソンのエアポンプの面白いのは「2Wayエアポンプ」です。これは単1電池のほか、自動車のシガーソケット電源でも動かすことができます。自動車を使って避難するときなどに使えるかもしれません。ただ熱帯魚店では扱っているところが少なく、大きめの釣具店やECモールで購入する必要があります。

ダイトウブクもエアポンプなどを製造している釣り具のメーカーのひとつです。「ブクブク106」は防水機能はついていませんが単純なつくりで極めて安価でパワーもあります。もちろん水に落としたりしないように注意したいところです。「ワンブク」は安価なのはもちろん単1乾電池1本で動作するので便利です。ダイトウブクのエアポンプは釣りや採集だけでなく活魚運搬の現場でも使用されている信頼のブランドです。

水作エイト

▲水作エイト。魚の隔離や運搬にも最適

水に空気を送り込むだけならエアポンプについていることが多いエアストーンだけで十分ですが、魚を元気な状態で生かしておく必要があるため、それだけでは不十分です。「水作エイト」などの投げ込み式ろ過槽も必要になります。エアチューブはエアポンプに付属していることが多く、その先に水作エイトを接続すればよいのです。

水作エイトは淡水魚、とくにキンギョやメダカなどを飼育するのに実績がありますが、海水魚飼育でも非常時や運搬時など、何かと役に立つアイテムです。多くの観賞魚店で販売されるので入手しやすいというのもメリットといえます。

水作 エイトコア K-M

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まとめ

  • 海水魚飼育には「電気」が大切
  • まずは酸素と海水の確保を
  • 電池で動くエアポンプで酸素を確保する
  • 餌はひかえめに
  • 冬はお湯の入ったペットボトルを浮かべるという方法も
  • 夏季水温を下げるのはむずかしい
  • 地震のあとは水替えしたい
  • 外部ろ過槽の停電からの復帰は要注意
  • 水槽にフタをしておくと水が外にはねにくい
  • RO水と人工海水はストックしておきたい
  • 普段通りを心がけるなら創蓄システムが有効
  • コマセバケツや乾電池式エアポンプは重要。電池も多数ストックする
  • 水作エイトでろ過も行いたい
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