2020.07.08 (公開 2020.07.08) 海水魚図鑑
メガネスズメダイの飼育方法~幼魚はきれいだが成魚は地味な色彩になるので注意
メガネスズメダイは背中が赤く、頭部から背中にかけて青いラインが入るかわいいスズメダイです。しかしながらこの特徴は残念ながら幼魚のころだけの特徴で、成長すると茶色い地味な魚になってしまいます。また幼魚のうちはおとなしい性格をしているのですが、やはりスズメダイらしく成長すると性格がきつめになってしまうので注意が必要です。丈夫で飼育しやすく、その点は安心できます。今回はこのメガネスズメダイの飼育方法をご紹介します。
標準和名 | メガネスズメダイ |
学名 | Pomacentrus bankanensis Bleeker, 1854 |
英名 | Speckled damselfish, Fire damselなど |
分類 | 条鰭綱・スズキ目・スズキ亜目・スズメダイ科・ソラスズメダイ属 |
全長 | 8cm |
飼育難易度 | ★☆☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトレッド/グリーンなど |
温度 | 25℃ |
水槽 | 60cm~ |
混泳 | 幼魚はおとなしいが成魚は性格がきつい。混泳には注意 |
サンゴとの飼育 | 多くのサンゴと飼育できる |
メガネスズメダイって、どんな魚?
▲メガネスズメダイの幼魚
メガネスズメダイはスズメダイ科・ソラスズメダイ属の魚です。ソラスズメダイのように青い光沢はなく、幼魚のうちは紺色と赤色が目立つ美しいスズメダイです。ちなみに本種が含まれるソラスズメダイ属というのはスズメダイ科の中でも非常に大きいグループで、およそ80種近くが知られていて、スズメダイ属に次いで大きなグループといえます。和名はおそらく背鰭軟条部の斑紋から、英名もSpeckled damselfishといい、直訳すると「斑入りのスズメダイ」という意味になります。一方で学名は本種のタイプ標本が採集されたインドネシアのバンカ島にちなむと思われます。
西太平洋のサンゴ礁に見られ、沖縄など日本のサンゴ礁でもみることができます。房総や三浦ではほとんど見かけないのかもしれませんが、和歌山や四国では幼魚がよく見られます。今回ご紹介する個体も高知県の磯で採集した個体になります。
メガネスズメダイ幼魚と成魚の違い
▲メガネスズメダイの成魚。奄美諸島産
スズメダイは幼魚と成魚では色彩が異なることが多く、幼魚から成魚へ成長していく過程で色が地味になってしまうことが多いのですが、残念ながらこのメガネスズメダイもそうなってしまいます。幼魚は写真のように赤というかオレンジ色という色彩が鮮やかですが、成魚は茶褐色の体に白い尾という地味な色彩に変貌してしまいます。そして成長するにつれて性格もキツくなりますので、採集しても本当に持って帰っていいものか、よく考えるようにしましょう。
よく似たスズメダイ
メガネスズメダイによく似たスズメダイとしてオジロスズメダイというのがいます。オジロスズメダイもメガネスズメダイ同様に南方に多いスズメダイで、沖縄では非常に多くみられる種類です。オジロスズメダイは伊豆半島下田以南の太平洋岸に幼魚が出現しますがほとんど越冬していないようです。成魚はメガネスズメダイ同様琉球列島で普通種です。この2種は非常によく似ていますがメガネスズメダイは眼下骨下縁が鋸歯状であり、この部分が円滑なオジロスズメダイと見分けられます。また、メガネスズメダイは成魚でも背鰭に目玉模様(眼状斑)があるのが特徴ですが、この目玉模様は薄くて目立たないこともあるので注意が必要です。先ほどご紹介した奄美諸島産のメガネスズメダイの背鰭の目玉模様も後方に小さくあるだけです。
メガネスズメダイに適した飼育環境
▲小型水槽で飼育しているメガネスズメダイの幼魚
水槽
メガネスズメダイの幼魚は小型の水槽でも飼育できますが、成長につれ大きめの水槽が必要になります。単独でなら45cm水槽でも飼育できますが、できれば60cm水槽が欲しいところです。ほかのスズメダイとの混泳を考えるのであれば90cm以上の水槽が必要になるでしょう。
水質とろ過システム
基本的に丈夫で飼育しやすく、水質悪化もある程度は耐えてくれますが、できるだけきれいな水で飼育してあげたいものです。小型水槽では外掛けろ過槽が使われやすいのですが、できるだけ外掛けろ過槽だけでなく、外部ろ過槽も一緒につかうべきでしょう。60cm水槽ではろ過能力の高い上部ろ過槽も使用できるのでより安定した飼育が可能になるはずです。もちろんオーバーフロー水槽であればより安定した状態で飼育できます。
メガネスズメダイはサンゴに無害なので、サンゴ水槽での飼育もできます。浅い場所に生息しており、浅場ミドリイシの類やソフトコーラルの合間を泳ぐメガネスズメダイはかわいいものです。ただしサンゴを飼育するのに適したベルリンシステムは魚を多く入れるのには適していないので注意が必要です。
水温
原則としては25℃をキープします。大体22~27℃くらいで飼育できますが、海では30℃近くになったところでも見られます。ただし高水温だと餌食いは悪くなり、酸欠にもなりやすく水質も悪化しやすいので、できるだけ27℃以下で飼育するようにしましょう。もちろん水温の変動には注意します。メガネスズメダイは丈夫で病気にもなりにくい魚ですが、水温の変動が大きいとさすがのメガネスズメダイも体調を崩し病気になってしまうことがあるので、一定の温度をキープするようにします。特に春や秋は水温が変動しやすいので注意が必要です。
隠れ家
メガネスズメダイは縄張りをつくるタイプのスズメダイです。そのため隠れ家を作ってあげるようにします。サンゴ水槽ではサンゴの合間に隠れたりしますが、魚水槽ではライブロックやサンゴ岩を使用するようにしましょう。流木や金属製のものはだめです。
メガネスズメダイに適した餌
▲「メガバイト」シリーズがおすすめ。Sサイズが最適か。
メガネスズメダイは雑食性で、藻類や動物プランクトン、底生小動物を捕食しています。飼育下では配合飼料をすぐ食べてくれるような個体がほとんどで、丈夫で飼育しやすい魚といえるでしょう。ただし幼魚は配合飼料の大きな粒は食べにくいので手ですりつぶして与えるなどの配慮が必要です。冷凍のホワイトシュリンプやコペポーダなどもよく食べますが、このような餌は水を汚しやすいので多量に与えるのは避けます。
メガネスズメダイをお迎えする
▲採集後バケツの中を泳ぐメガネスズメダイ
海水魚店でもまれに販売されていますが、多くの場合は磯で採集することになるでしょう。意外と岩の隙間などに素早く逃げ込むので採集しにくいところがありますが、二つの網で追い込むようにして採集するとうまく獲れることがあります。しかし、幼魚はかわいいのですが、成魚は大きく変貌してしまうため、最後まで飼育できる覚悟があるアクアリストしか持ち帰ってはいけません。もちろん飼育できなくなっても放流するということはしてはいけません。
メガネスズメダイとほかの生物との関係
ほかの魚との混泳
▲メガネスズメダイも幼魚のうちはおとなしい
幼魚はほかの魚との混泳もできますが、成魚は性格がややきついので混泳は注意が必要です。小魚は攻撃の対象になることがあるため、自分よりも大きな魚、たとえば大型ヤッコやニザダイ(ハギ)などが適しています。ただ自分より大きい魚、といっても肉食魚との混泳はいけません。餌になってしまうことがあります。
サンゴ・無脊椎動物との相性
ソラスズメダイ属のスズメダイはどの種もサンゴは食べないので、サンゴ水槽に入れることができます。どのサンゴとの相性もよいのですが、先述したように浅いところにすむミドリイシやソフトコーラルは本種と生息環境がかぶるのでよく似合います。ただしクマノミが入るような大型のイソギンチャクには捕食されることもあるので、これはやめましょう。小型のディスクコーラルやマメスナギンチャクは問題ないことが多いです。
甲殻類についてはメガネスズメダイの口に入るものはだめですが、逆に大型のエビ、大型のカニ、大型のヤドカリは小魚を捕食してしまうのでよくありません。クリーナーシュリンプは問題ないことが多いですが、オトヒメエビの大きいのはやはり小魚を襲うのでこれもいけません。
メガネスズメダイ飼育まとめ
- 幼魚のうちは赤い体と青い線がきれい
- 成魚になると茶褐色になってしまう
- よく似たものにオジロスズメダイというのがいる
- 終生飼育にはできれば60cm水槽が欲しい
- 綺麗な水を保つために複数種のろ過槽を使いたい
- 水温は25℃前後を一定に保つ
- 縄張りをつくる。隠れ家を入れると落ち着く
- 雑食性で配合飼料も食べるので餌には困らない
- 磯で採集できるが性格がきつい
- 終生飼育できないアクアリストはもちかえってはならない
- 大型のヤッコやハギと混泳できるが肉食魚はだめ
- サンゴとであれば飼育しやすい