2020.08.22 (公開 2020.07.27) 海水魚図鑑
メタリックシュリンプゴビーの飼育方法~派手で飼育もしやすいがやや大型になる
メタリックシュリンプゴビーは、クビアカハゼやハチマキダテハゼ、ヤノダテハゼ同様、ダテハゼ属の共生ハゼです。全長10cmを超えこの仲間では大型になり、派手な色彩をしています。黒っぽい底砂を敷いて飼育すると、暗色の体に青白い斑点が光り輝き、非常に美しくなります。丈夫で飼育も容易ですが、入荷直後の状態にだけは注意しましょう。今回はメタリックシュリンプゴビーの飼育方法をご紹介します。
標準和名 | なし |
学名 | Amblyeleotris latifasciata Polunin and Lubbock, 1979 |
英名 | Metallic shrimp-goby, Wide-barred shrimpgoby |
分類 | 条鰭綱・スズキ目・ハゼ亜目・ハゼ科・ハゼ亜科・ダテハゼ属 |
全長 | 10cm(海では14cm) |
飼育難易度 | ★☆☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトレッドMなど |
温度 | 25℃ |
水槽 | 60cm~ |
混泳 | 多くの魚と混泳できる |
サンゴとの飼育 | サンゴには無害。イソギンチャクに食われやすい |
メタリックシュリンプゴビーって、どんな魚?
▲メタリックシュリンプゴビー
メタリックシュリンプゴビーは西太平洋(フィリピン、インドネシア、タイ、マレーシアなど。日本からの記録はまだない)~インド洋に生息している共生ハゼの仲間です。分類学的にはクビアカハゼやヤマブキハゼなどと同様、ダテハゼ属の魚で、ヤノダテハゼ同様に細長い体が特徴です。しかし本種はヤノダテハゼよりもがっしりとした体をもち、太くて茶色い5本の横帯、頭部にある青く輝く斑点、第1背鰭や体側前半部に見られる赤い斑点などが特徴的です。
共生するテッポウエビは?
主にニシキテッポウエビと共生し、このほかコシジロテッポウエビに似た種のテッポウエビと共生することがあります。ダテハゼ属の仲間の多くはあまりテッポウエビの種類にはこだわらないようで、簡単に共生を楽しむことができるというメリットがあります。
メタリックシュリンプゴビー飼育に適した環境
水槽
全長10cmと比較的大きく育つハゼですので、できれば水槽も最低でも60cmくらいは用意してあげましょう。ほかの共生ハゼとの飼育を楽しむのであれば90cmくらいはあったほうがよいかもしれません。
水質とろ過システム
メタリックシュリンプゴビーは多少硝酸塩の蓄積にもたえますが、できるだけきれいな水で飼育してあげたいところです。やや大型の種で、小型水槽で飼育しにくいため、外掛けろ過槽は選択肢になく、砂を動かすこともあり(テッポウエビがいなくても)、底面ろ過槽もいけません。おすすめは上部ろ過槽で、それに外部ろ過槽も補助的に使用しろ過能力をあげることもできます。またオーバーフロー水槽は高価ですが設置してしまえばほかのろ過槽よりも圧倒的に高いろ過能力を誇ります。
メタリックシュリンプゴビーはサンゴには何ら悪さをしませんので、サンゴ水槽での飼育もできます。ただし、サンゴ飼育に最適なベルリンシステムの水槽では魚を多く入れることはできませんので、注意が必要です。
水温
メタリックシュリンプゴビーに最適な水温は25℃前後です。浅場にも見られるためもう少し高い水温でも大丈夫ですが、できるだけ28℃以下にとどめましょう。筆者は22~23℃で長いこと飼育していました。もちろん水温の変動が大きいのはいけません。水温の変動が大きいと体調を崩して病気になりやすいからです。ヒーターとクーラーを使って水温を一定にキープすることが重要です。
砂とサンゴ岩
底に砂を敷いてあげて飾りもいれると、共生ハゼは落ち着きます。砂は普通のサンゴ砂でもいいのですが、灰色から黒色の砂を敷くと微妙な色彩を維持しやすいとされています。ただし底に敷く砂はシーケムの「グレイコースト」などのような海水魚用のものでなければなりません。間違っても淡水魚用のソイルなどを使用しないようにしてください。もちろん、サンゴ砂を敷いて飼育していても飼育自体には何ら問題はありません。
またサンゴ砂はパウダーだけでなく、大きな粗目のサンゴ砂も敷いてあげましょう。これはパウダーサンドだけではテッポウエビが巣を作りにくいからです。私の水槽ではパウダー状のサンゴ砂をベースに、粗目のサンゴ砂や礫状のサンゴ砂を敷いています。
フタ
共生ハゼの仲間は意外と飛び出してしまいやすい魚といえます。壁面をつたうように移動したり、何かに驚いたり、浮かぶ餌を食べようとするときなどに、勢い余って飛び出してしまうこともあります。そのため、しっかりフタをする必要があります。
メタリックシュリンプゴビーに適した餌
メタリックシュリンプゴビーは動物食で底生小動物や動物プランクトン、魚の稚魚などを捕食しています。水槽内では配合飼料をすぐ食べてくれるため、あまり問題はありません。プランクトンフードは水を汚すので、たまに与える程度にとどめます。できれば沈降性のものが望ましいです。たとえば「メガバイト」シリーズであれば、長く浮かぶ小粒のSサイズよりも、沈むのが早いMサイズが適しているでしょう。Lサイズでは大きすぎるように思います。
メタリックシュリンプゴビーをお迎えする
▲ダンダラダテハゼの名前で販売されていたもの
メタリックシュリンプゴビーは日本には分布していないので、購入にたよることになります。共生ハゼでもギンガハゼやヒレナガネジリンボウなどはよくお店で見られますが、この種は流通量が少ないといえます。また別種の名前で販売されることもあり「ダンダラダテハゼ」の名前で販売されていた店舗もあります。ちなみに写真の個体は東京都の「ナチュラル」、もしくは横浜市都筑区の「kazika」で購入した個体で、それぞれ別の個体となります。
高価な魚ではないのですが、この魚の産地はフィリピンやインドネシアなどですので、状態には注意しなければなりません。体表に傷があったり、一部が赤くなっているようなものは購入してはいけません。また鰭の裂けくらいはすぐに治りますが、溶けているようにぼろぼろなのは避けるべきです。もちろん入荷直後のものも購入しないようにしましょう。
メタリックシュリンプゴビーとほかの生き物との関係
ほかの共生ハゼとの混泳
性格はやや強めですが、強すぎではないです。ハチマキダテハゼと混泳していましたが、特に問題はありませんでした。ただし小型のヒレナガネジリンボウなどはプレッシャーを受けることがあるので避けたほうがよいかもしれません。またがっちりとした体形のニチリンダテハゼも気が強いためあまりおすすめできません。
ほかの魚との混泳
▲ほかの魚との混泳もできる!
性格がやや強く、ほかの魚との混泳もこなします。ニシキテッポウエビと共生させた水槽で様々な魚と混泳させていました。温和なキンセンイシモチやミヤケテグリのほか、気が強いソラスズメダイなどとも一緒に飼育していました。ただし肉食性の強い魚とは一緒に飼育するべきではありません。本種はダテハゼの仲間でも特に細長い体をしており、肉食魚に食べられてしまいやすいからです。また気性の激しい大型スズメダイやメギスの仲間とも飼育するべきではないかもしれません。
サンゴ・無脊椎動物との相性
メタリックシュリンプゴビーはサンゴにいたずらをすることはありません。そのためサンゴ水槽での飼育もできます。ただし、共生するテッポウエビがレイアウトを崩さないか、一応ちゅういしたほうがよいでしょう。クマノミの仲間が共生するようなイソギンチャクと飼育すると、イソギンチャクに食べられてしまうことがあります。共生ハゼは驚いたりしたときにイソギンチャクの触手につかまってしまうことがあるためこの組み合わせもできるだけ避けたほうが賢明です。ただしマメスナギンチャクなどのスナギンチャク系や、小型のディスクコーラルなどは無害です。大型のディスクコーラルはときに小魚を食べてしまうこともあるため注意します。
テッポウエビ以外の甲殻類との相性は、大型のエビ、大型のカニ、大型のヤドカリは避けます。クリーナーシュリンプはおおむね問題ないのですが、オトヒメエビは大きなハサミをもって動きの遅いハゼなどを食べてしまうのでいけません。小型のサンゴヤドカリ、アカシマシラヒゲエビ(スカンクシュリンプ)、サラサエビなどは問題ありません。
メタリックシュリンプゴビーまとめ
- 細身な体と鮮やかな色彩が特徴な大型のダテハゼ属魚類
- ニシキテッポウエビなどと共生する
- やや大きくなるため60cm水槽がほしい
- ろ過は上部ろ過槽かオーバーフローシステムが最適
- 水温は25℃前後がよい
- 意外なほど飛び出し事故が起こりやすいのでフタはしっかり
- 砂を敷いてあげること。海水用の黒い砂を敷くのもおすすめ
- 沈降性の餌がおすすめ
- 傷がついていたり体の一部が赤くなっているようなものは購入しない
- 入荷直後の個体も購入しない
- 多くの魚と混泳できるが肉食魚やスズメダイは避ける
- サンゴには無害だがイソギンチャクには捕食されることも
- 大型の甲殻類もできれば避けたい