2019.08.19 (公開 2019.07.09) 海水魚図鑑
ホシハゼの飼育方法~きれいで飼いやすく混泳もさせやすい
ホシハゼは名前の通り、黒い体に小さな青い斑点が多数散らばる、とても美しいハゼの仲間です。サンゴ礫や岩の下などに潜み、空き缶や座椅子など、人間が海に不法投棄したものの中にも潜むタフな魚です。それゆえか、丈夫で飼育しやすく、多くの海水魚との混泳も楽しめます。
標準和名 | ホシハゼ |
学名 | Asterropteryx semipunctata Rüppell, 1830 |
英名 | Starry goby |
分類 | 条鰭綱・スズキ目・ハゼ亜目・ハゼ科・ハゼ亜科・ホシハゼ属 |
全長 | 6cm |
飼育難易度 | ★☆☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトレッドなど |
温度 | 25℃ |
水槽 | 45cm~ |
混泳 | ホシハゼを食べる肉食性の魚とは組み合わせられない |
サンゴとの飼育 | 多くのサンゴと組み合わせられる |
ホシハゼってどんなハゼ?
▲夜間に撮影したホシハゼ。色が白く抜けている
ホシハゼはスズキ目ハゼ科ホシハゼ属のハゼです。体は黒っぽく、その名の通り体に輝青斑点があることが特徴です(夜間は白くなったりまだら模様がでることも)。成魚の背鰭第3棘が長く伸びています。ハゼの仲間は雄の背鰭が伸びることが多いのですが、このホシハゼは雌雄ともに背鰭棘が伸びるため、雌雄を見分ける要素にはなりません(ヒレナガネジリンボウも同様)。
分布域は広く千葉県以南の太平洋岸、隠岐諸島、九州北西岸、琉球列島、伊豆・小笠原諸島、インド-太平洋(紅海やハワイにもいる)に広く分布しています。日本では関東以南の太平洋岸の磯で採集することができるものの、クモハゼよりも数はずっと少ないです。
和名はおそらく体側に散らばる青色斑点を星空に見立ててでしょう。英語名も同様で「星空ハゼ」という意味になります。しかし、ホシゾラハゼというのはまた別のハゼの種の標準和名です。なお、よく似た標準和名をもつハゼに「ホシノハゼ」というのがいますが、これはクツワハゼ属の種類で、今回のホシハゼとはまた別の魚です。クツワハゼ属のハゼは性格がきつくなり、やや大きくなるので注意が必要です。
ホシハゼの近縁種
▲腹部に黒色(写真では茶色っぽく見える)の斑点がある
ホシハゼ属魚類は世界で9種が知られ、いずれの種もインド-中央太平洋に生息しています。日本にはそのうち7種が分布していますが、本州から九州に分布するのはホシハゼのみで、ほかの種は屋久島以南に分布しています。そのうちヒメホシハゼというのはホシハゼに似ていますが、ホシハゼは腹部に黒色斑があるのに対しヒメホシハゼにはないこと、ホシハゼは眼の後方に青色点がない(か、あっても列をなさない)のに対しヒメホシハゼでは眼の後方にも青色の斑点列があることなどにより見分けることができます。
▲ホシハゼの腹鰭。左右に分かれている
なお、ハゼの仲間の腹鰭は吸盤状になっていることが多いのですが、ホシハゼ属の中には腹鰭が吸盤状のものと、そうでないものがいるようです。ホシハゼは腹鰭が吸盤になっておらず左右に分かれるタイプで、このような形態のものは日本産ではほかにヒメホシハゼ、ヤノウキホシハゼが、吸盤状の腹鰭を持つ種はフタホシホシハゼ、イッテンホシハゼ、ノコギリホシハゼ、マダラホシハゼがいます。あまり派手な魚ではなく、観賞魚として販売されることは少ないのですが、たまにホシハゼやフタホシホシハゼ、ヤノウキホシハゼなどは沖縄便が強い海水魚店で販売されることもあります。
なお、近縁種との区別などは「決定版 日本のハゼ」を参考にしました。
ホシハゼ飼育に適した環境
水槽
ホシハゼはクモハゼなどよりは小型であり小型水槽での飼育も容易ですが、初心者は最低でも45cm水槽で飼育するようにしたいものです。同種同士、もしくはほかの魚との混泳を考えるのであれば60cm水槽で飼育することをおすすめします。
水質とろ過システム
硝酸塩の蓄積にはある程度耐えられますが、できるだけ綺麗な水で飼育するようにします。35~45cm水槽なら小型の外部ろ過槽に外掛けろ過槽、もしくはプロテインスキマーを組み合わせます。60cm水槽であれば上部ろ過槽がろ過能力が高いためおすすめです。
サンゴには無害なので、ベルリンシステムなど、サンゴを飼育するためのシステムでの飼育も可能です。ただしこのようなシステムではたくさんの魚を入れることができませんので注意が必要です。
水温
水温は25℃前後をキープするようにしましょう。もちろん水槽の温度が頻繁に上下するような環境はよくありません。ちゃんとヒーターやクーラーを使い、水温を一定に保つようにするべきです。
隠れ家
ホシハゼは臆病な性格をしており、ほかの魚との混泳を考えるのであれば、とくに隠れ家は必要です。ライブロックやサンゴ岩などで隠れ家を作ってあげましょう。塩ビパイプやシリコン製の飾りサンゴなどを使用してもよいのですが、人工的な感じになってしまいます。また、同種同士を飼育するのであれば、争いを避けるためにも、隠れ家が必要になります。
ホシハゼに適した餌
ホシハゼは海の中では小型の甲殻類などを主に捕食しています。飼育下ではすぐに配合飼料にもなれるので、餌の心配はしなくてもよいでしょう。どうしても餌付きにくい個体にはホワイトシュリンプなどを与えますが、このような餌は水を汚しやすいため与えすぎないよう注意が必要です。また釣り餌のオキアミなどは有害な添加剤が入っていることもあるため、おすすめしません。
ホシハゼをお迎えする
購入する
ホシハゼは観賞魚店でも販売されていることがあります。あまり高価ではありませんが、フィリピンなどから輸入される個体を購入する際は、体表に傷やただれがないこと、鰭がぼろぼろでないこと(若干の鰭膜裂けはすぐ治ることが多い)、体表に白い点がついていないことなどをよく確認します。また入荷してすぐの個体も避けたほうが無難です。
採集する
ホシハゼが多いのは千葉県以南の太平洋岸と琉球列島です。沖縄ではサンゴ礁域よりも港内の内湾などで見ることが多い気がします。大きな岩の下や海藻の一種ミルの合間、サンゴがあるような場所であれば死サンゴの下などにも見られます。もちろん、岩や死サンゴは採集したらちゃんと元の場所に戻しておくように心がけましょう。また、個体によっては空き缶や座椅子などのごみの下に潜んでいることもあります。
また、釣りで採集することもできます。空き缶が多い漁港内で、空き缶などの前にオキアミを垂らすと釣れることがあります。ただし針を飲み込んでしまったような個体は飼育には向きません。
ホシハゼとほかの生物の関係
ほかの魚との混泳
▲ホシハゼ(右下)とほかの魚の混泳例
ホシハゼはさまざまな魚との混泳ができます。小型・大型を問わずヤッコの類、ハナダイの類、遊泳性のハゼ、共生ハゼ、小型のベラ、小型のスズメダイ、カクレクマノミ、アイゴ、ハギなどと混泳できます。
ただしスズメダイの仲間でもヒレナガスズメダイや、クロスズメダイなどの大きく成長するものは非常に性格がきついため混泳を避けた方がよいでしょう。それ以外の種(水槽ではオヤビッチャ、ソラスズメダイと混泳している)であっても隠れ家を多く入れてあげましょう。
このほかゴンベの仲間やメギスの仲間などはホシハゼに対して攻撃を仕掛けるものもおり、注意が必要です。もちろんハタやカサゴなど、肉食性の強い魚も禁物です。
サンゴ・無脊椎動物の相性
一般にアクアリウムで飼育されるサンゴであればほぼどんな種のサンゴとも飼育できます。ただし、ウチウラタコアシサンゴやクマノミと共生するイソギンチャクなど、強い捕食性をもつ生き物とは飼育しないようにしましょう。イソギンチャクの仲間といっても、小型のディスクやマメスナなどであれば一緒に飼育できます。
甲殻類ではオトヒメエビやイセエビの類、大型のカニやヤドカリなどはホシハゼを襲う可能性があるのでやめた方がよいでしょう。アカシマシラヒゲエビ、シロボシアカモエビ、ペパーミントシュリンプ、サンゴヤドカリなどとの飼育は問題ありません。
ホシハゼ飼育まとめ
- 黒い体に青い斑点が散らばる
- 第1背鰭の形状で雌雄の判別は不可
- 丈夫で小型水槽での飼育もできる
- 小型水槽なら外掛けろ過槽と外部ろ過槽を使用するのがベター
- 水温は25℃で一定に保つ
- 飾りサンゴなどの隠れ家を豊富に入れる
- 配合飼料もすぐ食べるようになる
- 購入する際は白点病や鰭、ただれなどに注意
- 入荷直後のものも購入しないようにする
- スズメダイの大型個体やメギス、肉食魚などとの混泳は避ける
- サンゴとの飼育は概ね問題なし
- イソギンチャクや大型甲殻類はホシハゼを食べてしまうことも