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2020.01.31 (公開 2017.06.26) 海水魚図鑑

ヒレナガネジリンボウの飼育方法~餌・混泳の注意点

ヒレナガネジリンボウは黄色い頭と体側の黒色横帯が特徴的な共生ハゼの一種です。共生ハゼの仲間では小型の種でコトブキテッポウエビ(ランドールズピストルシュリンプ)と共生することで知られています。丈夫で飼育しやすく初心者でも飼育できますが、臆病な性格をしており注意が必要です。

標準和名 ヒレナガネジリンボウ
学名 Stonogobiops nematodes Hoese and randall, 1982
別名 ハタタテネジリンボウ
分類 スズキ目・ハゼ亜目・ハゼ科・ハゼ亜科・ネジリンボウ属
全長 約5cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッド冷凍イサザアミ
温度 24~26度
水槽 30cm以上
混泳 気が強い魚とは注意が必要
サンゴ飼育

ヒレナガネジリンボウって、どんなハゼ?

ヒレナガネジリンボウは、スズキ目ハゼ科ネジリンボウ属のハゼです。ネジリンボウ属もいわゆる共生ハゼであり、テッポウエビと共生しています。本種の特徴としては、頭部のうち眼の前方が黄色で、第1背鰭の棘が長く伸びる、体側に斜めの黒~茶褐色の縞模様がある、斜めの縞模様の間に細い縞模様がない、などの特徴があります。全長は5cmほどで、共生ハゼとしては小型の種類です。

共生するテッポウエビ

▲コトブキテッポウエビ

ヒレナガネジリンボウと共生するテッポウエビはコトブキテッポウエビ(ランドールズピストルシュリンプ)です。小型のヒレナガネジリンボウと、やはり小型のテッポウエビであるコトブキテッポウエビとの相性はばっちりです。飼育は難しくはないので、初心者でも共生を楽しむことができます。

テッポウエビと共生するハゼは必ずしもエビがいなくてもよい、といわれます。ただしそれは大きめのダテハゼやオニハゼの話で、ヒレナガネジリンボウはやや小ぶりで臆病なので、できるだけコトブキテッポウエビと組み合わせるようにしましょう。

ネジリンボウ属の魚たち

▲ヤシャハゼ

ネジリンボウ属の魚は世界で7種が知られています。ヒレナガネジリンボウのほか、紅白の色彩が美しいヤシャハゼ、インド洋のドラキュラシュリンプゴビー、ヒレナガネジリンボウに似ているが背鰭の形が異なるネジリンボウの4種が流通します。ほかの種は分布が限定され、観賞魚として入ってくることはほぼ望めません。

ドラキュラシュリンプゴビーはインド洋産でやや高価、ヤシャハゼもやや高価で、ネジリンボウは入荷が望めないほどではなくても、入荷数は極めて少ないといえます。マリンアクアリウムの世界で安価で入手しやすいのは、ヒレナガネジリンボウくらいのものです。

ヒレナガネジリンボウに適した飼育環境

水槽

ヒレナガネジリンボウは共生ハゼとしては小型であり、泳ぎ回ることもないためベテランであれば30cmほどの小型水槽でも飼育できます。しかしこのくらいの小さい水槽は初心者には難しいですので、45cm、できれば60cm水槽で飼育するようにしたいものです。水量が多ければ水質も安定しやすいからです。

一般的に海水魚であれば、オーバーフロー水槽が最適、といえるのですが、ヒレナガネジリンボウについては当てはまらないような気もします。臆病で驚いたときにフロー管からサンプに落下してしまうこともあるからです。

水質とろ過システム

ヒレナガネジリンボウは水質の悪化にはある程度耐えられますが、なるべく綺麗な水で飼育したいものです。ろ過槽もしっかりしたものが必要になります。単体の水槽であれば45~60cmの水槽に、上部ろ過槽というのがおすすめです。外部ろ過槽はろ材を多く入れられるのですが、密閉式のろ過槽であるため酸欠になりやすいので注意が必要です。外掛けろ過槽は水槽のふちにひっかけるタイプで酸欠になりやすくはないため使いやすいのですが、フタをしっかりしめることができず、飛び出してしまう恐れがあります。

オーバーフロー水槽でも飼育できます。圧倒的なろ過能力をもつオーバーフロー水槽であれば飼育自体はしやすいのですが、びっくりしたときにフローパイプからサンプに落ちてしまうこともあります。直接サンプに落ちるのであればまだよいのですが、ウールボックスに落下してしまったら死んでしまうので注意が必要です。オーバーフロー水槽よりも単体の水槽で飼育した方が安全かもしれません。

フタ

ヒレナガネジリンボウを飼育するのであればフタは必要です。やはりこれも驚いてしまうと水槽から飛び跳ねて死んでしまうことがある共生ハゼの性格に由来するものです。しっかりフタをしめましょう。上部ろ過槽を使う場合もモーターの部分の隙間埋めをしておきたいものです。

水温

原則25℃をキープします。22~28℃くらいであれば飼育可能ですが、水温が安定していることが重要です。ヒレナガネジリンボウは病気にかかりにくい魚ではありますが、水温が大きく変動するようだと、たとえ丈夫なヒレナガネジリンボウといえ病気になってしまうこともあるからです。

砂と隠れ家

▲ヒレナガネジリンボウの隠れ家が必要

共生ハゼとテッポウエビを水槽内で共生させるには、小粒の砂と粗めのサンゴ砂を用意しておきます。そうするとテッポウエビが巣を作りやすいようです。かなり臆病なのでテッポウエビがいない場合は確実に隠れ家を入れるようにしましょう。ただし、エビがいない状態での飼育はあまりおすすめはしません。

ヒレナガネジリンボウに適した餌

海では動物プランクトンや底生小動物などを捕食しています。ヒレナガネジリンボウは口が大きめですので粒餌なども食べられますが、やや小さめの沈降性フードが食べやすいのでおすすめです。水に浮かぶフレークフードは勢い余って飛び出すこともあり、要注意です。

おすすめはキョーリンから出ている「ひかりプレミアム メガバイト レッド」です。サイズはS、M、Lと3サイズありますが、Sサイズのほうが食べやすいかもしれません。ビーカーなどに入れ、水を加えてスポイトなどでばら撒くようにして与えれば、確実にヒレナガネジリンボウに届くでしょう。

生の餌、たとえばコペポーダやホワイトシュリンプもよく食べてくれます。必須脂肪酸などが豊富に含まれており、たまに与えるとよいのですが、常食させるには足りず、たくさん与えすぎると水質の悪化につながります。

ヒレナガネジリンボウをお迎えする

ヒレナガネジリンボウは国内にも生息していますが、若干深めの水深にいるため、採集することはできません。そのため購入に頼ることになります。基本的には丈夫な魚ですが、鰭や体表にただれがある、口や体表に傷がある、白い点がついているものは購入してはいけません。なお、入荷してすぐの個体も弱っていたりすることがあるので、購入するのはやめておきましょう。なお、多くの場合テッポウエビもセットで販売されていることが多く、エビとハゼを一緒に購入すると割引してくれるようなお店もあります。

ヒレナガネジリンボウと他の魚との混泳について

かわいい見た目ですが、ペア以外の同種同士ではケンカすることもありますので、よほど広い水槽でないと同種同士の組み合わせが難しいといえます。ヒレナガネジリンボウは見た目から雌雄の判別はできないため、ショップであらかじめペアにしたものを購入するしかありません。

ほかの共生ハゼとの混泳

▲ヒレナガネジリンボウ(左)とクビアカハゼ(右)の混泳例。このほかヒメオニハゼも飼育していた

まずはヒレナガネジリンボウが落ち着けるような環境をつくるのが先です。そしてヒレナガネジリンボウと共生するハゼもなるべく小ぶりでおとなしいものを選びます。筆者はヒレナガネジリンボウとヒメオニハゼ、クビアカハゼ、ハチマキダテハゼなどと組み合わせていたことがあります。

ダテハゼ類は極端な大型種でなければいけるかもしれませんが、人気のニチリンダテハゼはかなりでかくなり、性格もきつめなので組み合わせない方が賢明です。このほかギンガハゼなどのイトヒキハゼ属もかなり性格きつめですので、おすすめできません。

ほかの魚との混泳

▲大きな口を開けてイソギンポ科のナベカを威嚇するヒレナガネジリンボウ

ヒレナガネジリンボウと飼育するならおとなしい魚が最適です。おすすめは遊泳性ハゼ、小型のハナダイ、テンジクダイ、小型のカエルウオなどです。逆に強すぎるスズメダイや、甲殻類を好んで食べるベラ、肉食性が強いメギスやゴンベなどとは一緒に飼育できません。カクレクマノミは、経験上90cm水槽では一緒に飼育できましたが、小型水槽ではカクレクマノミに驚き、飛び出して死んでしまうということもありました。あまりおすすめできない組み合わせです。

ヒレナガネジリンボウとサンゴ・無脊椎動物との相性

サンゴはソフトコーラルもハードコーラルとわず、一般的な海水魚店で販売されるサンゴならほとんどのサンゴと組み合わせられます。組み合わせられないのは極端な低温を好む深海性サンゴと、ウチウラタコアシサンゴで、水温の面や強い捕食性のサンゴであることから組み合わせられないのです。クマノミの仲間と共生するイソギンチャクもハゼのような動きが遅い魚を食べてしまうことがあり、危険です。

甲殻類はコトブキテッポウエビはもちろん、サンゴヤドカリやベニワモンヤドカリ、小型のカニなどとは組み合わせられますが、大型のエビ・大型のカニ・大型のヤドカリやシャコの仲間とは組み合わせられません。

ヒレナガネジリンボウまとめ

  • 小型だが飼育しやすい共生ハゼの一種
  • コトブキテッポウエビとの共生が楽しめる
  • 小型水槽でも飼育できるが小さすぎるものは初心者にはだめ
  • 45~60cm水槽が望ましい
  • オーバーフローではサンプやウールボックスに落下しやすいので注意
  • 上部ろ過槽がおすすめ
  • 飛び出すおそれあり、フタはしっかりと。上部ろ過槽の隙間埋めもしたい
  • 細かい砂と粗い砂を用意しておくとよい
  • 餌は沈降性の配合飼料がおすすめ
  • ほかの共生ハゼと飼うときは本種を最初に入れるとよい
  • 気が強い魚との混泳はだめ
  • サンゴとの飼育はよいが、イソギンチャクとは飼わないようにする
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