魚の鰭の名称と位置について

魚の体の仕組みで重要なもののひとつが「鰭」(ひれ)です。魚はこの鰭を使って遊泳し、止まり、あるものは鰭を使って餌を捕食したり、またあるものは鰭を使って身をまもったりします。さらに鰭の位置は研究者に魚はどのように分類されるべきか、どのような進化をしてきたかを考えるヒントを与えてくれるのです。今回は鰭の位置、名称、数え方など鰭に関するあれこれを解説します。

鰭の位置と名称

▲クロソラスズメダイ(スズメダイ科)の鰭

背鰭(せびれ・ハイキ)

英語でDorsal fin (略称D)。マリンアクアリウムで飼育されることの多いスズキ目の場合背鰭はほとんどが1~2基で基底が長く、棘条部と軟条部からなりますが、ヘビギンポの仲間のように3基の背鰭をもつものや、タウエガジ科(カズナギ属やヒメイトギンポ属などをのぞく)のように背鰭がほぼすべて棘条で構成されるものなども見られます。

背鰭の数

背鰭の数は魚により違いがあります。海水魚は背鰭がひとつ(一基)か、ふたつ(二基)であることが多いです。前者はチョウチョウウオの仲間、ヤッコの仲間、ハナダイの仲間(のほとんどすべて)、ベラの仲間の多くが含まれ、後者はテンジクダイの仲間(一部は一基)、ヒメジの仲間、ハゼの仲間(一部は一基)などが含まれます。カエルウオの仲間は背鰭が1基ですが、背鰭中央に欠刻があり、2基に見えることもあります。ヘビギンポ科(スズキ目・ギンポ亜目)の魚とタラ科(タラ目)の魚は近縁ではありませんが、どちらも背鰭を3つもっているという特徴があります。また、中には背鰭の棘に毒をもつオニオコゼやミノカサゴ、アイゴなどの魚も知られており、注意が必要です。

図は主な魚の背鰭です。左列の魚は背鰭が1基、右側の魚は背鰭が2基の魚です。1のルリスズメダイなど、スズメダイ科の魚は背鰭が1基です。カクレクマノミなどは背鰭の中央部が凹んでおり、ひとによっては2つ背鰭があるように見えます。2のハタタテダイなどのチョウチョウウオ科やキンチャクダイ科の魚も背鰭は1基です。3のカエルウオは背鰭の中央に欠刻があり、ふたつ背鰭があるように見えます。4のサクラマスは背鰭は1基、その後方に脂鰭という肉質鰭をもちます。

右列は背鰭が2基の魚です。第1背鰭が棘条で構成され、第2背鰭は1棘~数本の棘と複数の軟条で構成されるものです。テンジクダイ科、ハゼ科(一部を除く)、アジ科、エボシダイ科などが含まれ、このうち5のテンジクダイ科と6のハゼ類は姉妹群ではないかとする研究もあります。またアジ科の第1背鰭は鰭膜がなく小さな棘があるだけのものもいます。7のモンガラカワハギの仲間は第1背鰭に棘条をもちますが第2背鰭には棘条がありません。このような特徴はほかにネズッポ科やヒメジ科、ワニギス亜目などももっています。8はサメの仲間です。サメの仲間はほとんどの種で背鰭が2基ですが、ラブカやカグラザメのように背鰭が1基しかないものもいます。

魚種によっては背鰭を有していないものもいます。タウナギやゴマウミヘビ、ミズウオダマシなどで、細長い体の魚が多いです。

臀鰭(しりびれ・デンキ)

英語Anal fin (略称A)。 スズキ目の魚の場合は2~3つの棘条がありその後方に軟条があるというパターンが多いです。また臀鰭の棘に強い毒をもつアイゴなどの魚も知られています。

なお、漢字で「尻鰭」とか書かれますがこれは誤りです。基本的に臀鰭の数はひとつですが、タラの仲間のようにふたつに分けられているという珍しいケースも見られます。また、一部の魚種では臀鰭と尾鰭がつながるようなものもいます。ウナギやアナゴなどがそれです。

胸鰭(胸鰭・キョウキ)

左右対になっている「対鰭」と呼ばれるもののひとつです。英語でPectoral finですが、同じPからはじまる腹鰭との混同をさけるために「P1」と略されます。

多くの魚類では胸鰭には棘条がありません。ミノカサゴの仲間は長い背鰭の棘に毒を持っていますが、同じく派手な胸鰭には棘がなく、当然毒もありません。その一方ナマズの仲間は胸鰭に棘を持っており、中にはゴンズイなどこの棘に毒を有する種もいますので、素手で触らない方がよいでしょう。ホウボウの仲間は胸鰭が大きく、内側にはハデな模様があります。またホウボウやハリゴチなど一部の魚では胸鰭下部に遊離軟条をもっています。

腹鰭(はらびれ・フッキorフクキ)

胸鰭同様に左右の鰭で1対になっている対鰭のひとつです。英語でPelvic finで、やはり胸鰭と同様の理由から「P2」と略されます。スズキ目の場合腹鰭には棘条があるものがほとんどで、1棘5軟条のものが多いです。ただしアイゴの仲間のように腹鰭に二つの棘をもっているものもいます。またハゼの仲間のように腹鰭が吸盤状になる魚も知られています。胸部の直下にあるもの多く胸鰭と勘違いされやすいので、注意が必要です。

腹鰭の位置

▲腹鰭と胸鰭の位置関係。赤は腹鰭、青が胸鰭を示す

原始的な形質を持つような魚ほど腹鰭は腹部のほうにあります。例えばイセゴイの仲間、コイの仲間、ニシンの仲間、サケの仲間です。スズキの仲間では腹鰭が胸鰭の下あたりまでくることが多く、ハゼの仲間など腹鰭が吸盤状に変化しているものも知られています。マリンアクアリウムで飼育される魚はほとんどが腹鰭が胸鰭の下に来ています。

図は魚の胸鰭と腹鰭の位置的な関係をしめしたものです。ウツボ(1)などウナギ目の魚は腹鰭がありません。またウツボ科では胸鰭も見られません。シシャモ(2)はサケ目の魚で原始的な形質をもち、腹鰭が腹部にあり胸鰭よりも後方になります。フエヤッコダイ(3)などスズキ目のほとんどの魚は胸鰭のすぐ下に腹鰭があります。右列は特殊な腹鰭を持つ魚で、カスリミシマ(4)などミシマオコゼ科の魚の腹鰭は胸鰭の前方にあり、モンガラカワハギ科(5、写真はイトヒキオキハギ)の魚の腹鰭は退化的、フグ科(6、写真はヨリトフグ)では完全に腹鰭が消失しています。

尾鰭(おびれ・ビキ)

英語でCaudal fin (略称C)。その名の通り魚類の尾部にある鰭です。一部の魚種では背鰭や臀鰭とつながります。ウナギやウツボ、アナゴ、ゲンゲといった魚がそれです。一方モヨウモンガラドオシなどに代表されるウミヘビ科の多くには尾鰭はなく、背鰭と臀鰭がつながりません。魚の泳ぎ方は尾鰭の形状にも左右されていることも多く、例えばマグロやカジキなど外洋を高速で泳ぐ魚は大きな推進力を得られる三日月形の尾鰭をもっています。一方ハタの仲間は大きなウチワのような形の尾鰭でダッシュするのに向いていますが、ハタの仲間にはバラハタのような三日月形の尾鰭のものもおり興味深いものです。

尾鰭のない魚

▲尾鰭がないタツノオトシゴ

魚によっては尾鰭がないものもいます。アクアリウムでお馴染みの魚としてはタツノオトシゴの仲間は尾鰭がなく、そのかわり尾部を自由自在に動かし、海藻・海草やサンゴ、ロープに撒きついたりします。エイの仲間は尾鰭があるものとないものがおり、ないものは尾部がむち状です。また、尾部には毒棘をもっているものもおり、注意が必要です。また先述のウミヘビ科の魚も尾鰭はありませんが、同じウミヘビ科であってもニンギョウアナゴ亜科のものや、ヒレアナゴといった種は尾鰭を持っています。

またゴンズイなどは従来は第2背鰭とされていたものが体背部尾鰭(DPC)とされ、鰭条数の表記方法が従来から変更されているので注意が必要です。

脂鰭(あぶらびれ)

▲アユ

英語ではAdipose finとよばれるもので、背鰭の後方についている肉質の鰭です。海水魚ではサケマス、ニギス、ヒメ、エソなどに見られるものです。ほかの条鰭綱の鰭とは異なり肉質で鰭条もなく、ほかの鰭と性質が異なります。海水魚ではこの鰭を有するものでアクアリストにお馴染みというのはいませんが、淡水魚ではカラシンやナマズの仲間などにこの鰭をもつものが多くいます。淡水釣りで「アブラビレ」といえばサケ・マスのことを指し、コイ科のアブラハヤなどと区別していますが、ほかにも脂鰭を有する魚がいます(ギギ、アユなど)。

小離鰭(ショウリキ)

▲マサバ

アジ科、サバ科、サンマなどの魚類に見られるもので、背鰭や臀鰭の後方にそれぞれ複数存在する小さな鰭のことです。このような鰭を有する魚はアクアリウムの世界ではほとんど見られませんが、食用魚としては一般的なものが多くいます。アジの仲間ではムロアジ属やツムブリなどは背鰭と臀鰭の後方に一つしかありませんが、オニアジでは多数の小離鰭をもっており、ほかのアジ科とは容易に見分けられます。

舵鰭(かじびれ)

マンボウ類特有の鰭です。背鰭と臀鰭の一部が変化しているもので、鰭条式ではClavusと表記されます。Caudal fin(尾鰭)と同じく「C」ではじまりますが、この鰭はマンボウ類にしかなく、特に混同されることはないといえます。ただ、その位置から尾鰭と間違えられやすいといえます(マンボウ類の成魚はヤリマンボウをのぞき尾鰭を欠く)。また鰭条式ではD+A+Clavusとし、背鰭軟条、臀鰭軟条、舵鰭軟条の合計を記述することがあります。また、尾鰭を有するヤリマンボウについては、尾鰭軟条も表記することがあります。

頭鰭(あたまびれ・トウキ)

▲ナンヨウマンタ。黒の矢印の部分が頭鰭

トビエイ科のエイに見られる鰭で、胸鰭の一部分が頭部前端に突出したものです。イトマキエイの仲間のものがよく知られており、左右のものが分離し耳状になります。トビエイなども頭鰭を持ち、頭部の前方に達しますが耳状に分離することはありません。

棘条と軟条

▲棘条と軟条

鰭には棘条と軟条があり、これらを総称し「鰭条」と呼んでいます。この鰭条の間には鰭膜と呼ばれる膜があります。この膜の模様が同定の形質になることもありますが、破れやすいので取り扱いには注意しなければなりません。また鰭条数は魚によって異なることも多く、同定のポイントになります。しっかり計測することが重要です。

棘条

節のない硬い鰭条で、棘とされることもあります。主に背鰭・臀鰭・腹鰭にあるものです。スズキ目の魚の場合、背鰭では大体10棘前後、多くても20棘ほどのものが多いのですが、中には50本以上の棘条をもつものもいます。また多くの魚ではその後方に軟条域があるのですが、タウエガジ科のものなど背鰭に軟条がないような魚もしられています。腹鰭は前方に棘があり、その後方に数本の軟条があるという魚が多いです。しかし、アイゴの仲間のように腹鰭が2本あるものもいます。臀鰭にも棘があり、スズキ目スズキ亜目では2~3棘とその後方に軟条があるというものが多いですが、タウエガジ科のトゲギンポのように臀鰭最後の軟条が棘になっているものもいます。オコゼの仲間やアイゴの仲間などは鰭の棘に毒をもっており、刺されると激しく痛むので注意が必要です。

軟条

軟条はその名の通り、棘条よりもやわらかいもので、棘条と異なり節があります。先端が分岐していることが多く、一部不分岐の軟条もあります。また鰭の最後の軟条とそのひとつ前の軟条が根元で分岐することがありますが、それは1つの軟条として数えます。そのため数え間違いのないよう注意し、背鰭を撮影するときはしっかり根元まで撮影しておいたほうがよいでしょう。

棘状軟条

淡水魚のコイ科がもつ特徴的な軟条です。分節があり一応軟条とはされているのですが不分岐で棘のように強いので、この名前がついています。一方ナマズの仲間でもこれが見られますが、ナマズ類は節がありません。

遊離軟条

▲ホウボウ。足のように見える細長いのが遊離軟条

ホウボウの仲間やハリゴチの仲間などは胸鰭下方の一部の軟条が鰭膜でつながっておらず、糸状に伸びたりしていることがあります。これを遊離軟条といいます。これで海底をはい回ったり、餌を探したりするといわれています。

鰭条数

一般的な海水魚

硬骨魚類の鰭条の数をあらわすのにはアルファベットとローマ数字とアラビア数字を使用することがほとんどです。ただし比Fishbaseのようにローマ数字を使わないこともあります(見やすいからかも)。アルファベットはD(背鰭)、A(臀鰭)、P1(胸鰭)、P2(腹鰭)、C(尾鰭)が基本です。ローマ数字は大文字のローマ数字が棘条を、小文字のローマ数字が不分岐軟条(棘状軟条)を表します。通常棘条と軟条の間はカンマで区切ります。

上の写真は「日本産魚類検索 第三版」から引用しましたカクレクマノミの鰭条数です。背鰭(D)が10~11棘、13~17軟条、臀鰭(A)が2棘11~13軟条、胸鰭(P1)が15~18軟条となります。腹鰭の軟条数が掲載されていませんが、省略されることも多いようです。カクレクマノミを含むスズキ目スズキ亜目の場合1棘5軟条であることが多いです。

こちらはカクレクマノミ同様、日本産魚類検索 第三版から引用しましたハタタテハゼの鰭条表記ですが、これは背鰭の棘数6と1の間にハイフンが入っています。これは背鰭が2基、つまり第1背鰭と第2背鰭が分離しており、第1背鰭が6棘、第2背鰭が1棘28軟条であることを示します。臀鰭は1棘26軟条です。

骨鰾類

淡水魚がほとんどで、海水魚は少ない骨鰾類ですが、鰭条の表記法を少しご紹介します。コイ目のように不分岐の棘状軟条を有する場合は小文字のローマ数字で表します。例えばD  ⅲ+7;A  ⅲ+9となっていれば、背鰭3棘状軟条7軟条、臀鰭3棘状軟条9軟条、ということになります。一方ナマズ目のもつ背鰭や胸鰭の棘は棘とみなされ、大文字のローマ数字で表します。D Ⅱ+6~7と表記されていれば、背鰭2棘と6~7軟条ということになります。また、小文字のアルファベットは骨鰾類に限らず不分岐の軟条をあらわすときに使いますので覚えておきましょう。

マリンアクアリウムでの鰭

▲アイゴの仲間は背鰭・臀鰭・腹鰭に毒棘があり。刺されないように

マリンアクアリウムにおいて魚の鰭は、海中での鰭の役目同様、鰭を使って泳ぎ、鰭を使ってとまり、鰭を使って餌を獲ったりします。ですが、アクアリストが魚の調子を見るポイントのひとつにもなります。元気な魚はふつう、鰭をゆったり動かしますが、病気になったりすると鰭暴れるように激しく動かしたりもします(種類によっては元気な魚でも激しく動かすことがあります)。また、鰭に白い点がついていたり、鰭が溶けているようであればそれぞれ原生生物による病気(白点病など)、細菌性の病気とも考えられます。鰭の様子や泳ぎ方に注意して病気の早期発見につとめたいものです。また、購入する前にそのような症状が出ているかどうかチェックし、そのような症状が出ている魚は購入しないようにしましょう。場合によっては同じ水槽にすむほかの魚も購入しないほうがよいかもしれません。なお、魚同士のけんかなどで鰭が少し傷ついた、鰭が若干切れているというのであれば、魚さえ元気であればやがて治っていきます。

また先述のように鰭の棘や棘状軟条に毒がある魚がいます。アイゴ類、ニザダイ類、カサゴ・オコゼの類、ゴンズイなどです。魚はなるべく手ではなくプラ製ケースなどで掬うようにしましょう。ヒフキアイゴと接触したときはずきずき痛みました…。

魚の鰭まとめ

  • 魚にとっては泳いだり曲がったり止まったりするのに鰭をつかう
  • アクアリストにとっては魚の状態を示す指標にもなりうる
  • 一般の魚の鰭は背鰭・臀鰭・腹鰭・胸鰭・尾鰭の5種
  • 魚によっては一部鰭がないものも
  • 鰭条数は魚の同定の指標にもなりうる
  • 元気な魚は鰭をゆったり動かす
  • 病気の魚は鰭を激しく動かしたりする
  • 鰭に白い点がついているものや鰭が溶けた魚は購入しない
  • アイゴやオコゼなど鰭棘に毒がある魚も

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