フリーワード検索
海水魚の記事
サンゴの記事

2020.08.12 (公開 2020.08.12) 海水魚図鑑

バンデッドデムワーゼルの飼育方法~白黒模様が特徴的な飼いやすいスズメダイ

バンデッドデムワーゼルはスズメダイ科の魚で、白い体に黒い横帯が目立つ魚です。飼育はとてもやさしく、スズメダイの仲間ですが、大きめの水槽であれば他の魚とも比較的混泳させやすい種といえます。そしてサンゴにも無害ですので、リーフタンクにも入れることができます。今回はバンデッドデムワーゼルの飼育方法をご紹介します。

標準和名 なし
学名 Amblypomacentrus sp.
流通名 バンデッドダムゼルなど
英名 不明
分類 スズキ目・スズキ亜目・スズメダイ科・Amblypomacentrus属
全長 7cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッドなど
温度 25℃前後
水槽 45cm~
混泳 比較的おとなしく混泳も楽しめる(個体差あり)
サンゴ飼育

バンデッドデムワーゼルって、どんな魚?

バンデッドデムワーゼルは白っぽい体色に黒い横帯が2本あり、ミスジリュウキュウスズメダイやヨスジリュウキュウスズメダイ、あるいはルリスズメダイ属のミスジスズメダイなどに似ていますが、Amblypomacentrus属という別属の魚です。この仲間は3種類が知られており、フィリピン、インドネシア、ソロモン諸島、東インド諸島、ベトナムなどに3種が分布しています。

名称の問題

バンデッドデムワーゼルは「バンデッドダムゼル」ともよばれていますが、一般的に「バンデッドダムゼル」とよばれている種はダンダラスズメダイ属のスズメダイで、本種とは属からまた別のものになります。さらにややこしいことに「バンデッドダムゼル」と呼ばれるダンダラスズメダイ属の魚にも2つのタイプの種がおり、一般にはフィリピンからインドネシア、オーストラリアに生息するDischistodus fasciatus (Cuvier, 1830)をバンデッドダムゼルと呼んでいますが、オーストラリア北部にすむDischistodus darwiniensis (Whitley, 1928)もバンデッドダムゼルとよぶのでややこしいです。Fishbaseでは前者にBanded damsel、後者にBanded damsel-fishというコモンネームをつけて(一応は)区別しているようです。

ダンダラスズメダイ属の魚は入荷数が少なく入手しにくいところがあります。ホワイトダムゼルなど、一部の種が輸入されてくるくらいです。沖縄ではダンダラスズメダイが採集できますが、大きく育ち性格もきつめなので注意が必要です。

分類学的混乱

▲尾の付け根の黒い点が特徴的

一般的にアクアリウムで流通するバンデッドデムワーゼルはフィリピンなどから入るもので、フィリピンのものは背鰭の黒い帯が背鰭でつながらないという特徴により、一般的に「ブラックバンデッドデムワーゼル」と呼ばれるAmblypomacentrus brevicepsではなく、「バンガイダムゼルフィッシュ」と呼ばれるA.clarusというものに似ていますが、A.clarusは尾の付け根に黒い点がなく、黒い点があるのは地理的な変異か、別の種であると考えるのが妥当かもしれません。この仲間は世界中の海水魚店で販売されているものの、販売されているものはほぼすべてが尾の付け根に黒い点があるタイプです。今後この混乱が解消されることが望まれます。このサイトでは学名については未同定、もしくは未記載としてAmblypomacentrus sp.とします。この問題が解決すれば、また変更するかもしれません。

なおA.brevicepsは成長すると尾鰭の上下が少し伸長し、美しくなります。この種の入荷も楽しみに待ちたいところです。

バンデッドデムワーゼル飼育に適した環境

水槽

全長7cmくらいに育ちますので、45cm未満の小型水槽では難しいかもしれません。最低で45cm、60cm以上の水槽での飼育が理想といえるでしょう。混泳を考えるのであれば少なくとも60cm以上の水槽が有利といえます。

水質とろ過システム

バンデッドデムワーゼルは多くのスズメダイ同様ある程度汚い水でも耐えることはできます。しかしそれはベストな状態ではありません。45cm水槽では外部ろ過槽と外掛けろ過槽を用意してあげます。これは外掛けろ過槽は酸欠になりにくいがろ材をあまり多く入れることができず、外部ろ過槽は多くのろ材を入れられますが密閉式のろ過槽であり酸欠が起こりやすいという欠点があるからです。60cm水槽以上であれば上部ろ過槽、オーバーフロー水槽という選択肢があり格段にろ過能力が向上、飼育しやすくなります。

サンゴには無害で、ベルリンシステムなど、サンゴを飼育するためのナチュラルシステムでの相性もよいです。ただしナチュラルシステムは魚を多く入れるのに適したシステムではないので注意が必要です。

水温

水温は25℃をキープします。22~28℃くらいの範囲で一定をキープするのであれば問題なく飼育できますが、温度の変動があるのはいけません。水温の変動が大きいと丈夫なバンデッドデムワーゼルであっても体調を崩して病気になってしまうおそれがあるからです。ヒーターとクーラーをうまく使用して必ず水温を一定に保たなければなりません。

隠れ家

ほかの魚と一緒に飼育する際、バンデッドデムワーゼルやほかの魚が隠れられるような隠れ家が欲しいところです。サンゴ水槽であればサンゴの隙間やライブロックなどに隠れるのであまり問題ありませんが、魚水槽でもサンゴ岩などでしっかり隠れ家を組んであげたいものです。

バンデッドデムワーゼルに適した餌

▲「メガバイト レッド」などがおすすめ

バンデッドデムワーゼルは雑食性のようで、動物プランクトン、底生小動物、藻類などを捕食しています。飼育下ではすぐに配合飼料を食べるようになるので心配不要です。ちなみに我が家では「メガバイト」シリーズや「シグマグロウ」などを与えています。これらの餌をどうしても食べないときにはプランクトンフードを与えるようにしますが、あげすぎは水を汚すのでいけません。またほかに大きい魚、気性の激しいメギスや大型のスズメダイなどがいるとびびって餌を食わなくなることもあるので注意します。

バンデッドデムワーゼルをお迎えする

バンデッドデムワーゼルは日本には分布しておらず、購入にたよるしかありません。一般的にスズメダイの仲間は丈夫で飼育しやすいものが多いのですが、入荷直後は体調を崩していることもあるため避けなければなりません。フィリピンからの便でくるものは袋が小さめで、しかも水も少なく下手すると魚が何とか泳げるくらいというもので、これでは状態を崩しやすいといえるでしょう。

このほか、鰭がぼろぼろになっているもの(溶けているものを含む)、鰭や体表の一部が赤くなっているもの、呼吸が激しいもの、眼が濁ってるもの、鰭などに白い点がついているもの(ただし本種では鰭に白い斑点がはいることがある)などは購入してはいけません。入荷して時間がたち餌をよく食べているものが安心です。

バンデッドデムワーゼルとほかの生物の関係

ほかの魚との混泳

我が家の水槽で飼育しているバンデッドデムワーゼル

スズメダイの仲間はけっこう気が強めなのですが、ほかの魚との混泳も可能です。筆者はクマノミやほかのスズメダイ、カエルウオ、ヒメアイゴなどと一緒に混泳させています。また人によっては小型ヤッコなどと混泳させています。意外なほど多くの魚と混泳できますが、それでもおとなしいハゼなどとはやめたほうがよいかもしれません。またほかの魚と混泳させるのであれば60cm以上の水槽が適しています。

一方非常に大きなスズメダイ(ミツボシクロスズメダイなど)などは本種をいじめてしまうことがあるので混泳を避けます。このほか当たり前ですが肉食性が強い大型のバスレット、ハタの仲間、ウツボ、カサゴ、オコゼ、アンコウなどとは混泳できません。また、好む水温が大きく異なるような魚との混泳もやめましょう。

サンゴ・無脊椎動物との相性

バンデッドデムワーゼルはサンゴ水槽での飼育もおすすめです。サンゴには危害を加えることなく、どんなサンゴ水槽にも似合いますが、ウチウラタコアシサンゴなどは動きが弱い魚を捕食してしまう危険があり注意が必要です。また、クマノミと共生するような大型イソギンチャクはほかの魚を食べてしまうので一緒に飼育しないほうがよいでしょう。ディスクコーラルやマメスナギンチャクなどは問題ありません。

甲殻類は小型のものであればおおむね問題はなく、我が家ではベニワモンヤドカリやケブカガニなどと飼育しています。このほかサラサエビ類、クリーナーシュリンプ、小型ヤドカリなどであれば問題ないでしょう。いけないのは大型ヤドカリ、大型のカニ、大型のイセエビなどで、これらは肉食性が強く魚を捕食してしまう危険性があるからです。またクリーナーシュリンプもオトヒメエビは巨大なハサミをもち、夜に魚をバリバリ食べてしまうのでバンデッドデムワーゼルと一緒に飼育するのは避けたほうが無難でしょう。

バンデッドデムワーゼル飼育まとめ

  • 白と黒が特徴的なスズメダイの一種
  • 黒い横帯が背鰭でつながらず黒い点が尾の付け根にある
  • 英語で「バンデッドダムゼル」といえば別の種をさす
  • 水槽は45cm以上がおすすめ。混泳なら60cm以上の水槽を
  • 小型水槽では外掛けろ過槽と外部ろ過槽を使用し、大きめの水槽は上部ろ過槽をメインに
  • 水温は25℃前後。一定の水温を保つことが大事
  • ライブロックなどの隠れ家を入れてあげたい
  • 餌はよく食べてくれる
  • 調子を崩しやすいので入荷直後のものは購入しない
  • 鰭がぼろぼろのものやただれがあるもの、明らかにおかしい状態のものは購入してはいけない
  • スズメダイの仲間としてはほかの魚と比較的組み合わせやすい
  • サンゴには無害。大型の甲殻類との飼育は避ける
フリーワード検索
海水魚の記事
サンゴの記事
    もっと読む