2020.09.21 (公開 2017.11.24) 海水魚図鑑
ミスジリュウキュウスズメダイの飼育方法~混泳の注意、サンゴとの関係など
ミスジリュウキュウスズメダイは白と黒の縞模様がかわいいスズメダイの仲間です。ほかの多くのスズメダイの仲間と同様に丈夫で飼育しやすく、入荷量も多くて安価で初心者にも向いているように思われがちなのですが、やはりほかの多くのスズメダイの仲間と同様にきつめの性格をしており混泳には注意が必要です。
標準和名 | ミスジリュウキュウスズメダイ |
学名 | Dascyllus aruanus (Linnaeus, 1758) |
分類 | スズキ目・スズキ亜目・スズメダイ科・ミスジリュウキュウスズメダイ属 |
全長 | 8cm |
飼育難易度 | ★★☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトレッド、冷凍イサザアミ |
温度 | 23~26度 |
水槽 | 60cm未満~ |
混泳 | 気が弱い魚はいじめてしまう |
サンゴ飼育 | 可 |
ミスジリュウキュウスズメダイってどんな魚?
ミスジリュウキュウスズメダイ属のスズメダイは、世界で10種類が知られており、そのうち7種類を日本の海水魚店で見ることができます。本種は眼を通る帯があること、尾鰭は白色で横帯がないこと、二つの横帯が背鰭でつながっているという特徴があり、これらの特徴から同属他種と区別することができます。
幼魚と成魚では色彩に大きな差はありませんが、幼魚は腹鰭・臀鰭の前縁が青色になるのが特徴です。
日本では小笠原諸島、和歌山県以南の太平洋岸に分布し、とくに琉球列島に多く見られます。海外では南アフリカから中央太平洋にかけて広く分布していますが、ハワイ諸島には生息しません。内湾のサンゴ礁に多く、ミドリイシなどの枝状サンゴや海藻の中に潜んでいます。
ミスジスズメダイとの違い
ミスジリュウキュウスズメダイと名前がよく似た種類に「ミスジスズメダイ」という魚がいます。学名はChrysiptera tricinctaで、ルリスズメダイ(コバルトスズメ)と同属の魚です。ミスジリュウキュウスズメダイに似ていますが、体側の2本の黒色帯が背鰭でつながらないことにより区別できます。
観賞魚店ではミスジリュウキュウスズメダイのことを「ミスジスズメダイ」と呼んでいることもありますが、全くの別種であり、混同しないように注意が必要です。
また価格も1匹1000円以上と、ミスジスズメダイのほうがミスジリュウキュウスズメダイよりも高価です。海域により腹鰭が白いものと黒いものがおり、それぞれ別種とされることもあります。日本では伊豆大島以南に分布しますがあまり多いものではなく、生息水深も10m以深とやや深めです。また、ミスジスズメダイと呼ばれる種類も海域により微妙な変異があり、別種とされていることもあります。
ヨスジリュウキュウスズメダイとの違い
▲ヨスジリュウキュウスズメダイ
ミスジリュウキュウスズメダイ属のスズメダイは日本に4種生息しています。ミスジリュウキュウスズメダイ、フタスジリュウキュウスズメダイ、ミツボシクロスズメダイ、そしてヨスジリュウキュウスズメダイ(写真)です。
ヨスジリュウキュウスズメダイはその名の通り、頭部に1本、体側に2本黒色横帯がありますが、尾鰭にもミスジリュウキュウスズメダイにはない黒色横帯があり区別することができます。またヨスジリュウキュウスズメダイの体側の模様は背鰭でつながらず、この点でもミスジリュウキュウスズメダイと区別可能です。
ミスジリュウキュウスズメダイと比べると分布域は狭く、西太平洋の熱帯・亜熱帯域にのみ分布し、日本では沖縄諸島以南に分布しますがミスジリュウキュウスズメダイと比べてやや少ない種類です。飼育方法などについてはまた別の機会にご紹介します。
なお、ミスジリュウキュウスズメダイとヨスジリュウキュウスズメダイの交雑個体と思われるものも沖縄の慶良間諸島で撮影されています。一見ミスジリュウキュウスズメダイに見えますが尾柄部に黒いラインが入ります。
交雑個体は、この本に掲載されています。
そのほかの近縁種との違い
従来はインド-太平洋域に広く分布するとされたミスジリュウキュウスズメダイですが、近年はインド洋や紅海に生息するものを別種とすることもあります。Dascyllus abudafur (Forsskål, 1775)というのがそれで、英名ではIndian ocean humbug damselといいます。この種は尾鰭に黒い模様があるのが特徴ですが、微妙な個体も多いようです。なお、同じように尾鰭が黒くなるヨスジリュウキュウスズメダイとは体側の2本の黒色帯が背鰭でつながるのが特徴で、そこで見分けるのがベストです。
以前ご紹介したミツボシクロスズメダイの飼育方法はこちらをご参照ください。
スズメダイ全般の飼育方法はこちらをご参照ください。
ミスジリュウキュウスズメダイに適した環境
水槽
▲ミスジリュウキュウスズメダイの幼魚
写真は45cm水槽でミスジリュウキュウスズメダイの幼魚を飼育している例です。単独飼育であれば30cmほどの小型水槽でも飼育可能ですが、実際は他の魚と混泳することが多いでしょうから、60cm以上の水槽を推奨します。縄張りを強く主張する魚なので、混泳にはある程度広いスペースが必要になります。
ろ過槽
ミスジリュウキュウスズメダイを外部ろ過槽だけで飼育することもできないわけではありませんが、酸素が触れる上部ろ過槽をおすすめします。
もちろん外部ろ過槽と上部ろ過槽の併用もおすすめです。外掛け式ろ過槽ではろ材をあまり多く入れられないのが難点です。丈夫で病気にもかかりにくいスズメダイの仲間ですが、ろ過をきちんとしないと上手く飼育することは難しいのです。
ミスジリュウキュウスズメダイにおすすめのろ過槽
水温
ミスジリュウキュウスズメダイは基本的にサンゴ礁の浅場に生息する魚で、28~30℃と高めの水温にも耐えられるのですが、できればもっと低めの水温で飼育したい種類です。
一般的な熱帯性海水魚同様に25℃前後での飼育が適しているといえるでしょう。もちろんクーラーとヒーターを併用し、水温が変動するのを防ぎます。
ライブロック・サンゴ岩
スズメダイの仲間は縄張りをもつものが多く、本種も例外ではありません。ライブロックやサンゴ岩を組み合わせて縄張りを主張できるようにします。
ミスジリュウキュウスズメダイに適した餌と添加剤
ミスジリュウキュウスズメダイの餌は一般的に配合飼料を与えます。粒餌だろうがフレークだろうが、入荷状態さえ悪くなければ水槽にいれてすぐに餌を食べてくれるはずです。
基本的に雑食性で、自然下では藻類なども捕食しており、「海藻70」など藻類を好んで食べる魚向けの餌も与えたいものです。これにビタミン類やヨウ素を添加すると完璧といえるでしょう。
メインに与えたい配合飼料「メガバイト」
植物食魚類におすすめの餌「海藻70」
ビタミン添加剤
ミスジリュウキュウスズメダイの入手方法
海水魚店で購入する
ミスジリュウキュウスズメダイはルリスズメダイやデバスズメダイなどと同様、海水魚店で100%見る魚と言ってもよいくらいでしたが、最近は性格がきつめなため、扱っているお店は以前より少なくなったような気もします。価格は安価で、1匹300円前後で購入できます。
購入時の注意点は他のスズメダイの仲間と同様です。鰭が大きく切れていたり、白色の点がついているもの、赤くただれているところがあるものなどはやめておいた方がよいでしょう。
安価な魚なので、袋も小さいもので来ることが多いなど、雑に扱われやすい種ともいえます。本種は主に太平洋沿岸に分布しており、フィリピンやインドネシアからの長旅の疲れも癒え、よく餌を食べている個体を選んで購入するようにし、輸入されてすぐの個体を購入するのは避けます。
磯で採集する
▲ミスジリュウキュウスズメダイが多数みられた内湾。ミドリイシなどが多く見られた
ミスジリュウキュウスズメダイは自分で採集することもできます。和歌山県や高知県でも採集例がありますが、奄美諸島以南のサンゴ礁域に多く生息しています。
水深1mほどの、潮が引くと海面から露出してしまうような浅いサンゴ礁域にもよく見られます。枝サンゴの中に入ってしまったような個体は採集が難しいですが、周囲に海藻が生えているような場所で、その海藻の中に逃げ込んだ個体は容易に採集できます。観賞魚としては安価な値段で購入できる魚ですが、スズメダイのファンであれば、ぜひ自分で採集したミスジリュウキュウスズメダイを飼育してみてほしいと思います。
ミスジリュウキュウスズメダイの混泳
ミスジリュウキュウスズメダイと他の魚との混泳
▲複数飼育も不可能ではないが要注意
他の魚との混泳も楽しめる魚ですが、ミスジリュウキュウスズメダイは性格が若干きつめで、大きくなるほど気が強くなるので、いくつか注意したい点があります。
ミスジリュウキュウスズメダイと他の魚を混泳させるときは、最後にスズメダイの仲間を追加するようにします。もちろん、ライブロックやサンゴ岩を使用して複雑に岩組を組み他の魚の隠れ家も作ってあげましょう。
共生ハゼや遊泳性ハゼ、あるいは小型のハナダイの仲間は臆病なので、それらの魚との組み合わせはあまりおすすめできません。混泳の相手はスズメダイ、クマノミ、ハギ(ニザダイ)、アイゴ、ベラ、ゴンベなどの大きめの魚や、性格が強めの魚が望ましいといえます。カクレクマノミもOKです。
物怖じしない性格ですので大型ヤッコとの混泳も可能です。ただしハタやカサゴなどの肉食性の魚は、本種を捕食してしまうこともありますので組み合わせは避けたほうがよいでしょう。
同種同士は争う恐れがありますので、できるだけ広い水槽で組み合わせるようにします。そして他の強めの魚とも飼育するようにして攻撃対象を分散させるようにします。ひどくいじめられてしまっている個体がいる場合、あるいは1匹が極端に強い場合などは隔離する必要もあります。もちろん海に逃がすようなことは絶対にやめましょう。
ミスジリュウキュウスズメダイとサンゴ・無脊椎動物との相性
▲水族館の海藻水槽で飼育されている例
ミスジリュウキュウスズメダイはサンゴに対し全く害を加えません。浅いサンゴ礁域に生息する魚ですので、オオバナなどのやや深めの場所にすむサンゴよりはミドリイシなど浅場のサンゴとの飼育が似合います。特に自然の海でもよくみられるミドリイシの枝間に本種が隠れる光景を再現できたら素敵でしょう。
また生息場所を再現するという意味で、海藻水槽での飼育もよいでしょう。海藻に付着する小さな藻類はミスジリュウキュウスズメダイにとってはよい餌になります。
サンゴ以外の無脊椎動物との飼育も可能です。スカンクシュリンプ、ホワイトソックス、マガキガイ、サンゴヤドカリなどとの飼育は問題ありません。ただし掃除をしないペパーミントシュリンプやキャメルシュリンプの脱皮直後の個体などはミスジリュウキュウスズメダイの餌になってしまう恐れもありますし、オトヒメエビやイセエビといった大型のエビは逆にミスジリュウキュウスズメダイを捕食してしまうおそれもあります。
ミスジリュウキュウスズメダイの飼育まとめ
- 白黒の縞模様がかわいいが性格はややきつめ
- ミスジスズメダイとは背鰭の色彩が異なる
- ヨスジリュウキュウスズメダイとは背鰭や尾鰭の色彩が異なる
- 小型水槽でも飼育できるが、混泳は60cm以上を推奨
- 上部ろ過槽、または上部ろ過槽と外部濾過槽の併用が望ましい
- 水温は25℃
- 縄張りを作れるようにライブロックやサンゴ岩を組む
- 植物質の餌も与えたい
- 入荷直後の個体、鰭が切れているもの、体赤くただれているものなどは購入を避ける
- 温和なハゼやハナダイとの組み合わせは避ける
- サンゴとの飼育は問題ない
- 甲殻類、とくにエビは脱皮直後は注意