2020.09.17 (公開 2020.09.17) 水槽・器具
バクテリア製剤の使用方法~水槽立ち上げ時にバクテリアを連れてくる
水槽の立ち上げにあたって、基本的にいきなり魚を入れてはいけません。立ち上げ初期は水槽にろ過バクテリアが存在していないためです。ろ過バクテリアは海水魚水槽のろ過の要ともいえ、あるていど増殖するまで魚は入れられません。ではこのろ過バクテリアを最初にいれればいいのではないか、という声も聞かれますが、それもひとつの案です。これについては簡単で、市販されているバクテリア製剤を入れればいいのです。
海水水槽におけるバクテリアの役割
水槽で魚が餌を食べて排せつをする、もしくは餌が残ってしまうと、やがてバクテリアに分解されてアンモニアになります。このアンモニアは魚にとっては猛毒でほぼ検出されないようにする必要があります。このバクテリアをバクテリアが亜硝酸に分解してくれます。しかしこの亜硝酸も毒性が強いため、別のバクテリアにより亜硝酸を硝酸にかえてもらう必要があるのです。硝酸になれば毒性は低いですが、それでも蓄積されるとサンゴや無脊椎動物、一部のデリケートな魚にはよくありません。ですから水かえをして水槽から硝酸を排出する必要があります。繰り返しますが、水槽で発生する硝酸・亜硝酸・アンモニアはもとをただせば魚の排せつ物であることが多いです。つまり、サンゴや水質悪化に弱い生物を飼育するならば魚が少ないほうがいい、といわれるワケはここにあるのです。
バクテリアを水槽に持ち込む方法はいくつかあります。ライブロックを入れることやすでにバクテリアが付着されたろ材を使用する方法、天然海水やショップで使用された清浄な飼育水を使用する方法などもありますが、今回は市販されている「バクテリア製剤」を使用して水槽にバクテリアを投入する方法をご紹介します。
バクテリア製剤とは
バクテリア製剤というのは新鮮なバクテリアをガラス管やプラスチック製の容器にパッキングしたものです。バクテリアにもいろいろ種類がありますが、一般的には硝化細菌や反硝化細菌が含まれているとされます。多くはバクテリアだけでなく、バクテリアの餌も一緒に入っていることがあります。バクテリア剤の種類は通性嫌気性バクテリアとされることも多く、密封していて酸素が少ない状態でも繁殖できるようです。
バクテリア製剤の比較は難しい
バクテリア製剤の各商品の比較は難しいことです。なぜならばバクテリアは私たちの目には見えず、メーカーを信じるしかないことと、その効果がなかなか体感しにくいからです。硝酸塩やそのほか栄養塩が少なくなった!という体感はできるものの、それにももともといたバクテリアの量、飼育している魚の量までさまざまな要素がからみますので、一概に「どのバクテリア製剤がよい」と比較することは困難なのです。また、メーカーによってはバクテリア製剤のなかにどのようなバクテリアが入っているか公表していない、もしくは一部しか公表していないことも多いのでそういった意味でも単純に比較はしにくいといえます。
バクテリア剤を使用上の注意
こんなときに使おう
バクテリア製剤を使用するのは一般的には水槽を設置し、海水をはり、ろ過槽を稼働させ、あとは魚を入れるだけ、というときです。このときにバクテリアを入れると早く海水魚を入れることができますが、急に多数の魚を入れるのには不向きです。また、水かえを行うと水中を浮遊しているタイプのバクテリアが取り除かれたりしますので、そのときにバクテリア剤を添加するのもよいでしょう。また、プロテインスキマーも同様にバクテリアを水槽から取り除くことがありますので、強力なスキマーを使用している水槽に添加するというのもアリでしょう。ただし添加してすぐの間はプロテインスキマーは止めておいたほうがよいでしょう。また、水槽に添加するバクテリア製剤は1種類、もしくは1ブランドだけにとどめておいたほうがよいかもしれません。バクテリアの量のバランスが崩れる可能性もあるからです。
使用期限がある
バクテリアも生き物です。そのため使用期間というのもあります。プロディビオなどガラスアンプルの中に入っているものは通常の商品よりも長持ちするかもしれませんが、いずれにせよ、いちど開封したら早めに使い切らなければなりません。基本的に多くのメーカーは開封後1年以内に使用してください、といわれていることと思います。
紫外線殺菌灯は消しておく
紫外線殺菌灯は魚にとって脅威になる病原菌や原生生物などを殺してしまうのですが、殺菌灯に照射された小動物を無差別に殺してしまいます。もちろんバクテリアも殺してしまうのでよくありません。そのためバクテリア製剤を入れた後はしばらくの間(数時間くらい)は殺菌灯は消すようにしておきましょう。
プロテインスキマーとの関係
▲泡の力で水槽から有機物だけでなくバクテリアも取り除いてしまう
プロテインスキマーについては添加時、および添加後数時間は一時停止しておいたほうがよいとされます。消しておいたほうがよい理由はバクテリア製剤を入れてもスキマーにより取り除かれてしまうことがあるからです。もちろん添加して数時間経過した後、スキマーの再稼働を忘れた、なんていうことがないように注意しましょう。
ただし直接バクテリアを入れるのではなく、バクテリアを増やすための炭素源を投入した場合は急激にバクテリアが増殖してしまい、酸欠や水の白濁を招きやすいため、プロテインスキマーは重要といえます。とくにみりんなどは危険です。市販されているレッドシーのNO3PO4-xについても、プロテインスキマーを必要としています。
主なバクテリア製剤の種類
プロディビオ バイオダイジェスト(淡水・海水両用)
フランスのプロディビオが製造販売する商品で、海水・淡水両方使用できるバクテリアです。特徴はバクテリアがガラスアンプル内に封入されており、長期保存に優れている点です。しかしガラス製のため割ったりしないよう、取り扱いには注意が必要になります。ちなみに事務所の海水水槽はライブロックとこのバイオダイジェストを使用して立ち上げました。中身はメーカーサイトによれば硝化バクテリア、反硝化バクテリア、通性細菌とのことです。
バクテリアの水質浄化スピードをあげるには別に販売する添加剤を使用するとよいのですが、この添加剤は海水と淡水に分かれています。海水水槽であればバイオプティム、淡水水槽であればバイオトレースが効果的です。プロディビオの日本での代理店はエムエムシー企画レッドシー事業部です。
マメデザイン マメバクテリア ニトロマリン(海水用)
マメデザインが輸入・販売しているバクテリアです。ユニークなのはアンモニアを含有していることで、これと自然由来のゼリーで保護することによりバクテリアが長いこと生存できるというわけです。注意点はけっこうきついにおいがするということ(実際にマメデザインのサイトでも「嗅がないでください」との表記あり)と、投入時に若干のアンモニアが検出されることがあるということです(含まれているバクテリアが処理するので問題なしとされる)。きついにおいがいや、という人にはあまりおすすめできないかもしれません。
またマメバクテリアには淡水用と海水用のものがあり、淡水用のものを海水用に添加しないように注意しましょう。含まれているバクテリアの種類はメーカーサイトによるとニトロソモナス属、ニトロバクタ―属のバクテリアとのことです。通性嫌気性バクテリアとのことで、酸素があってもなくても増えていくタイプのようです。
リーフエボリューション ドクターティムシリーズ(海水用)
▲水槽立ち上げ時には「ワン&オンリー」の使用がおすすめ
このシリーズは海水と淡水のものがあり、海水だけでも6種類販売されていますが、用途別に必要なバクテリアを集めたものです。「ワン&オンリー」「ファースト ディフェンス」「ウェイスト アウェイ」「リフレッシュ」「エコ バランス」「クリアー アップ」が日本で販売されており、そのうち「ワン&オンリー」は水槽立ち上げに最適です。ほかの商品は魚の健康維持や濁りなどの除去をうたっていますが、甲殻類などに悪影響を及ぼすようなものもあるので、添加の前には説明書きをよく読んでから添加するようにしましょう。もちろん、これはドクターティムシリーズ以外のバクテリア製剤を使用する時も同様です。
ワン&オンリーの主成分は硝化細菌とのことです。リーフエボリューションシリーズの日本での代理店は「インスタントオーシャン」や「マキシジェット」などと同様にナプコリミテッドジャパンです。なお、ここで紹介したもののほかにも各種メーカーからさまざまなバクテリア製剤が販売されています。ここに紹介していないバクテリア製剤が決して悪いものではないということをご理解いただければと思います。
バクテリア製剤まとめ
- バクテリア製剤は硝化細菌・反硝化細菌やその餌を封入して販売されたもの
- 立ち上げた水槽にバクテリアを入れると早く魚を入れることができる
- ただし急に多くの魚を入れてはいけない
- バクテリア製剤の導入後は殺菌灯やプロテインスキマーは消しておく
- 「マメバクテリア」はアンモニアも封入されバクテリアが長持ちするがにおいがきつい
- 「バイオダイジェスト」はガラス製アンプルに入っていて長持ちするが取り扱い注意
- 「ドクターティム」シリーズは商品によって入っているバクテリアが異なる
- バクテリア製剤を購入したら説明書はよく読んでおきたい