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2020.09.23 (公開 2019.08.26) 海水魚図鑑

ホシテンスの飼育方法~幼魚と成魚で斑紋や色彩が大きく変わる!

ホシテンスは夏のおわりから秋にかけて千葉県以南の太平洋岸で見られるベラの仲間です。幼魚のうちは体が茶色っぽく、背鰭が長く伸びたユニークな形をしており、枯葉に擬態しているとされます。しかし成魚になると体は灰色になります。全長25cmと、比較的大きく育つ魚ですので、小型水槽では長期飼育できない魚です。また、夜間に砂に潜る習性があるため、水槽の底にパウダー状か小粒のサンゴ砂を敷いて寝床を作ってあげましょう。

標準和名 ホシテンス
学名 Iniistius pavo (Valenciennes, 1840)
英名 Peacock razorfish, Indianfishなど
分類 条鰭綱・スズキ目・ベラ亜目・ベラ科・テンス属
全長 25cm
飼育難易度 ★★☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッドなど
温度 25℃
水槽 90cm~
混泳 気が強すぎる魚や小魚、甲殻類とは飼育不可
サンゴとの飼育 サンゴには無害だが、砂サンゴにかかるとダメージを受けることも

ホシテンスって、どんな魚?

▲ストック中の個体で砂を敷いていないが、飼育するときはかならず砂を敷く

ホシテンスはスズキ目・ベラ科・テンス属の魚です。ベラ科の魚ですが、キュウセンやニシキベラなどと比べると体高が高く、側扁した体つきが特徴です。分布域は広く南アフリカからパナマにまでおよび、紅海からスエズ運河を経て地中海東部にまで分布を広げました。日本国内では千葉県館山湾以南の太平洋岸や長崎以南に生息しますが、和歌山より北では越冬していないかもしれません。

テンスの仲間の分類

▲テンス

テンスの仲間の属学名は従来はXyrichtysとされましたが、近年はIniistiusという属学名が使用されることが多いです。これは2002年に、従来Xyrichtys属の同物異名とされていたIniistius属を頭部の形態などから区別し復活させたことによります。前者にはテンスモドキが、後者にはホシテンス、テンス、モンヒラベラなどが含まれます。

なお、属の標準和名はXyrichtys属が「テンスモドキ属」、Iniistius属が「テンス属」となります。ただしテンスモドキ属のうち大西洋のものとインド-中央太平洋に生息するものをそれぞれ別属とする意見もあります。そうなればテンスモドキにはNovaculops属という属学名が与えられることになるでしょう。

この仲間はどの種も夜間や危急時には砂に潜って眠ったり、危機をやりすごしたりします。

成長につれての変化

▲ホシテンスの幼魚

幼魚のうちは茶褐色の体で、黒っぽい模様などが体にあり、枯れ葉などに擬態しているようです。成長すると灰色の体に太い横帯と、黒色斑が出てきます。ただし後述する「クロテンス」タイプの個体については、幼魚・成魚問わず真っ黒な体をしています。

テンスの仲間の幼魚は同定が難しいこともありますが、本種の幼魚は背鰭棘がとても長く、先端が旗状になるという特徴があります(赤い矢印)。一方本種によく似たテンスは背鰭の先端がとがっており見分けられます。日本に生息するほかの種はこの2種ほど背鰭の先端が伸びないようです。

色彩変異「クロテンス」

ホシテンスと同種とされているものに「クロテンス」というのがいます。従来はNovacula nigra(のちにXyrichtys nigerとされる)という立派な学名があったのですが、これは現在ではホシテンスと同種(黒色化個体)とされています。ホシテンスは体が茶褐色で黒い模様があったりするのですが、クロテンスとされた個体は全体が真っ黒で、尾鰭の後縁だけが透明で、非常に格好いい魚です。

ホシテンス飼育に適した環境

水槽

全長25cmに達するため、45cm以下の水槽での飼育は厳しいでしょう。60cm水槽ならなんとかというレベルです。できれば大きさにゆとりのある90cm以上の水槽で飼育したいものです。

水質とろ過システム

比較的水質の悪化には耐えられますが、できるだけ綺麗な水で飼育したいところです。砂を動かすことを考えると、底面ろ過槽は使用しない方がよいでしょう。上部ろ過槽と外部ろ過槽の組み合わせがベストといえます。上部ろ過槽のみでも飼育できますが、外部ろ過槽単体では避けた方がよいかもしれません。予算が許すのであれば、オーバーフロー水槽にして強制ろ過で飼育するのがベストです。ベルリンシステムなどSPSを中心とした水槽での飼育もできなくもないですが、ホシテンスは大きく育つ魚ですので水を汚しやすいため、あまりおすすめはできません。

水温

25℃をキープします。22~27℃くらいまで幅広く対応できますが、温度が一定でなければ丈夫なホシテンスといえど病気になってしまうおそれがあるのでいけません。ヒーターとクーラーで水温を一定にしてあげましょう。

ホシテンスをはじめ、テンスのグループはどの種も夜間砂に潜って眠り、危険が迫ると砂に潜って身を守るタイプの魚です。そのため3~5cmくらいの厚さにサンゴ砂を敷いておきます。砂の粒はパウダーからやや大きめの粒でもよいのですが、尖っているものはできるだけ避けたいところです。

フタ

ホシテンスは結構臆病で、何かに驚くと突然暴れだすこともあるため、フタが必須となります。

ホシテンス飼育に適した餌

ホシテンスは海の中では甲殻類やゴカイの仲間を主に食べています。飼育下では粒状の配合飼料も食べてくれるので飼育はしやすいといえます。キョーリンから出ているメガバイトレッドであれば、幼魚は「Sサイズ」、成魚であれば「Mサイズ」と使い分けるとよいでしょう。

どうしても配合飼料を食べないようなときは、冷凍のホワイトシュリンプや小エビのむき身などをまず与えてみましょう。ただしこのような餌は水質の悪化を招くので与えすぎは禁物です。

ホシテンスをお迎えする

採集する

浅いところでふらふら漂っていることもありますので、そのような個体を2本の網で追いこんで採集するとよいでしょう。釣りで採集することもできますが、針を飲んでいる個体は飼育には向きません。

購入する

テンスの仲間の幼魚は、たまに海水魚店で販売されていることがあります。しかしながらフィリピンやインドネシアなどで採集されたものが多く、状態がイマイチなこともあります。購入するときは、体表に傷やただれがないか、鰭がぼろぼろでないか、鰭が溶けていないか、鰭や体表に白い点がついていないか、などをチェックしなければなりません。

また、砂が敷いてあっても砂の上に横たわっている個体は弱っていることが多いため、購入は避けます。また砂が水槽の底に敷かれていない水槽で泳いでいるものは購入しない方がよいかもしれません。ストレスで上手く眠れていない可能性もあるからです。

ホシテンスとほかの生物との関係

ほかの魚との混泳

▲ミツボシクロスズメダイとの混泳で背鰭がぼろぼろになったホシテンス

テンスの仲間との混泳に適しているのはヤッコの仲間、ハゼの仲間(大きめ)、ベラの仲間、テンジクダイの仲間、キンギョハナダイなど大型のハナダイなどです。ニザダイ(ハギ)などとの混泳もできますが、砂を巻き上げる習性があり、白点病になりやすい魚との混泳はあまり適していないかもしれません。チョウチョウウオも同様の理由のほか、鰭の先端などをつつくことがありますので、あまり混泳には向きません。

スズメダイのなかまのうち、デバスズメダイなど温和なものとの飼育は問題ないのですが、大型になるミツボシクロスズメダイなどと混泳させると、鰭や鱗をぼろぼろにされてしまうことがあります。そのため気性の荒い魚との混泳は避けたいところです。逆にホシテンスの口に入るような小型のハゼなどの魚との混泳もだめです。餌になってしまいます。

サンゴ・無脊椎動物との相性

サンゴとの飼育もできますが、ホシテンスの大きい個体は睡眠時など砂をまきちらかすので、サンゴはなるべく上の方に配置するなどの工夫が必要です。大型のイソギンチャクなど捕食性の強い生物との飼育もやめましょう。

甲殻類との相性は最悪で、ホシテンスが大きく育つと甲殻類、とくにエビの仲間などは餌になってしまいます。逆に大型のイセエビやカニなどには襲われることもあるので混泳は避けた方がよいでしょう。

ホシテンス飼育まとめ

  • 砂底に生息しているベラの一種
  • 幼魚は枯葉に擬態している
  • クロテンスと呼ばれていたものはホシテンスと同種
  • 25cmくらいになるので90cm水槽で飼育したい
  • 上部ろ過槽かオーバーフロー水槽で飼育する
  • 水温は25℃前後をキープする
  • 砂は重要。夜間に眠れるように3~5cmほど敷く
  • フタもしっかりする
  • 動物食性が強いが配合飼料もよく食べる
  • 東南アジアから来ることも多いので購入の際はよく確認する
  • 大型のスズメダイなどとの混泳は避ける
  • 口に入る魚との混泳も避ける
  • 甲殻類との組み合わせは全般的にNG
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