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2020.11.13 (公開 2020.06.17) 海水魚図鑑

ヒメアイゴの飼育方法~毒棘に注意!餌や飼育環境について

ヒメアイゴはアイゴ科の中でもヒフキアイゴに次ぐ人気種です。体側にはヒフキアイゴのような黒い点はないのですが、鮮やかな黄色と青白い模様が体に入るなど美しい魚なのでアクアリストにはお馴染みの魚です。しかしながら本種もほかのアイゴの仲間同様、背鰭・臀鰭・腹鰭棘に強い毒をもっており、刺されないよう注意しなければなりません。今回はヒメアイゴの飼育方法をご紹介します。

標準和名 ヒメアイゴ
学名 Siganus virgatus (Valenciennes, 1835)
英名 Barhead spinefootなど
分類 スズキ目・ニザダイ亜目・アイゴ科・アイゴ属
全長 25cm
飼育難易度 ★★☆☆☆
おすすめの餌 海藻70など
温度 25℃前後
水槽 90cm~
混泳 おとなしい魚とであれば混泳も可能。同種同士の混泳もできる
サンゴ飼育 ハードコーラルは種類や状態によってはつつくこともある

ヒメアイゴって、どんな魚?

ヒメアイゴはスズキ目アイゴ科アイゴ属の魚です。アイゴ科はアイゴ属のみが知られていますが、アイゴ属は主にふたつの亜属に分けられており、本種はSiganus亜属に含まれています。体の黄色が美しく、ヒフキアイゴとならび海水魚専門店ではよく見られる魚です。ヒフキアイゴとは異なり吻は伸びず、体側の黒い斑点がないこと、頭部に眼を通る黒い帯と、鰓蓋後方にも黒い帯があることなどの特徴があります。

ヒメアイゴの近縁種

▲マジリアイゴ

ヒメアイゴの近縁種としてはバードスパインフットSiganus doliatus Guérin-Méneville, 1829-38という種がいます。体側中央部に多くの雨だれ模様と尾柄部に青い縦線があるのが特徴です。ヒメアイゴの場合はこれらの模様がなかったり、あっても少ない、もしくは不明瞭です。バードスパインフットは西オーストラリアからインドネシア東部、ニューカレドニア、トンガ、パラオ、コスラエなどに分布し、フィリピンなどにもほとんど見られないようです。なお日本からも宮古諸島もしくは八重山諸島からバードスパインフットと思われるものが発見され、ヨコジマアイゴなる標準和名がつけられたことがありましたが、1950年代以降に採集された記録はなく、これもヒメアイゴと混同されている可能性があるということです。観賞魚としてはニューカレドニアなどから来たこともありますが、ヒメアイゴと比べると非常に高価でした。

またヒメアイゴ同様琉球列島から東南アジアのサンゴ礁にすむマジリアイゴもヒメアイゴによく似た魚といえるかもしれません。しかしマジリアイゴは鰓蓋後方に斜めに入る帯がないこと、体中に細い縦線が入ることなどからヒメアイゴとは区別することができます。沖縄ではアイゴ類をすべて食用にし、このマジリアイゴやヒメアイゴも食用となっていますが、意外なほど美味です。

毒棘に注意!

▲ヒメアイゴの毒棘

アイゴの仲間はどの種も鰭の棘に毒棘をもち、刺されると非常に痛い思いをします。この武器は背鰭に13棘、臀鰭に7棘、左右の腹鰭にそれぞれ2棘あります。水槽の掃除をしているときや、作業中に「うっかり」刺されてしまうという事故が多々あります。刺されたあとはよく洗い、やけどしない程度の熱さのお湯につけると痛みが多少やわらぎますが、それでも痛みが引かない場合は病院で手当てをうけるようにします。

ヒメアイゴに適した飼育環境

水槽

▲90cm水槽で飼育されているヒメアイゴ

ヒメアイゴは全長20cm、自然界では最大30cmになります。水槽は最低でも60cm、できれば90cm以上の水槽を用意したいところです。ほかの魚との混泳を考えるのであれば120cm以上の水槽が適しているでしょう。

水質とろ過システム

アイゴの仲間は同じニザダイ亜目のニザダイ科やツノダシ科ほどきれいな水でなくても飼育できますが、できるかぎりしっかりした環境で飼育してあげてほしいものです。水槽システム的にはしっかりろ過がしたいので外掛けろ過槽は使用せず、外部ろ過槽も単独で使用するのは避けるようにします。基本的には上部ろ過槽、もしくは上部ろ過槽と外部ろ過槽を使用しますが、オーバーフロー水槽が置けるのであれば一番おすすめです。

サンゴはつつくこともあるので、ベルリンシステムに代表されるサンゴ水槽であればソフトコーラルやSPSなどがよいでしょう。共肉をぷっくりと膨らませるキクメイシやオオトゲサンゴ類は一緒に飼育しないほうが望ましいといえます。またベルリンシステムなどはあくまでもサンゴを飼育するためのシステムであり、魚を入れすぎると硝酸塩などが蓄積され、サンゴが弱る原因となることもあります。そうするとサンゴは魚につつかれやすくなるという悪循環に陥りやすいのです。そのため入れすぎは厳禁です。

水温と病気対策

水温は基本的に25℃をキープするようにします。大体22~27℃ほどであれば状態よく飼育できるのですが、水温が一定でないと調子を崩してしまい、そこから白点病などの病気にかかることもあるのでヒーターおよびクーラーを使用して一定の水温をキープするようにします。また水中ポンプを使用して水槽全体にまんべんなく水流をつくることも大事です。病気予防としては殺菌灯をとりつけることを思いつきやすいのですが、殺菌灯をつけるよりもこれらの基本的なことが重要です。

ヒメアイゴに適した餌

▲アイゴ科の魚の餌といえばやっぱり…

ヒメアイゴは雑食性で、甲殻類や底生の小動物を捕食していることも多いのですが、藻類食が強く海藻を好んで食べます。そのため餌は海藻70やメガバイトグリーンなど、藻類を好んで食べる魚用の餌が最適です。しかしある程度大きいものはそれらの餌をなかなか食べてくれないこともあります。そのようなときはウミブドウ(クビレズタ)などの海藻を与えるようにします。ホワイトシュリンプなども食いますが、そればかり食わせると栄養が偏りがちで水を汚すこともあります。また釣りでアイゴ科魚類を狙う場合の特効餌としてオキアミや酒かすなどを使った練り餌をつかうこともありますがこのような餌を与えると水質が急激に悪化するおそれもあるので絶対に与えてはいけません。

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ヒメアイゴをお迎えする

▲ヒメアイゴ購入時にチェックしたいポイント

ヒメアイゴは国内ではほぼ琉球列島にしか分布しないようで(口永良部島での記録もある)、それより北方では購入にたよることになります。ヒメアイゴも、ほかのアイゴの仲間も、購入する前に確認するべきポイントはたいして変わりません。アイゴの仲間はやせやすいので、当然薄っぺらいものは避けます。そのような個体はたとえ元気であっても回復させにくいのです。また頭部が妙に大きく、厚く見えるのもいけません。これは周囲の肉がなくなっていって頭部が大きく見えるということになります。そのほかの注意点はほかの多くの魚と同様で体に白い点がついているもの、体表に傷やただれがあるものは避けるとか、眼は動くものによく反応しているか、などです。泳ぎ方はゆったりと泳いでいるものが最適です。

また入荷直後のものは購入しないほうがよいでしょう。ヒメアイゴは2,000~3,000円前後(昨今のCOVID-19のパンデミックの影響で流通量が少なくなりやや価格上昇気味)で購入できますが、このくらいの価格帯の魚も意外と雑に扱われやすいところがあります。さらにこのヒメアイゴの場合は産地も多くの場合フィリピンやインドネシアのような東南アジアで、この海域の魚はおおむねそのような傾向があります。

ヒメアイゴとほかの生物の関係

ヒメアイゴとほかの魚との関係

▲同種他種ともに協調性あり

アイゴの仲間は近縁とされているニザダイの仲間と比べると同種同士では争うことはあまりなく、同種同士での飼育も可能です。ただしある程度の大きさに育つ魚ですので、その場合でも90cm以上の水槽が望ましいです。ほかの魚との混泳は近縁の科であるニザダイの仲間、デバスズメダイなどおとなしめのスズメダイ、カクレクマノミ、ハナダイ、カエルウオ、テンジクダイ、ハゼ、バスレットなどかなり多くの種類の魚と混泳させることができます。ただし性格がきついメギスや大型のスズメダイ、臆病な遊泳性ハゼなどとの飼育には適さないところがあります。

ヒメアイゴとサンゴ・無脊椎動物などとの相性

▲海藻を食べるヒメアイゴ

ヒメアイゴをサンゴ水槽で飼育しているアクアリストもいますがヒユサンゴ(オオバナサンゴ)などはつついて捕食してしまうこともありますのであまり賢明とはいえないかもしれません。ソフトコーラルならまだつつかないので入れられますが、トサカやスターポリプ、ウミキノコ類にとどめたほうが無難かもしれません。サンゴ以外の無脊椎動物ではサンゴヤドカリ類やベニワモンヤドカリ、オウギガニの類、各種クリーナーシュリンプと飼育でき、ある程度の大きさまで育つとオトヒメエビなどとも飼えます。ただし大型のエビ・大型のカニ・大型のヤドカリとの飼育は避けたほうが無難です。

海藻は先ほども述べたように入れたらヒメアイゴに食べられてしまうため一緒に入れることはできません。餌として海藻を育てるのであれば別の水槽で育てる方式をとるとよいでしょう。

ヒメアイゴ飼育まとめ

  • ヒフキアイゴとともに海水魚店ではよく見られるアイゴ
  • ヨコジマアイゴ・マジリアイゴなどの近縁種もいる
  • 背鰭・臀鰭・腹鰭に毒棘あり要注意
  • 最低でも60cm、できれば90cm水槽が必要
  • 上部ろ過槽、上部ろ過槽と外部ろ過槽の使用、もしくはオーバーフロー水槽が最適
  • 水温は25℃をキープして病気を防ぐ
  • 餌は海藻70などが適しているが食べないときは海藻をあたえるしかない
  • やせやすく体が薄っぺらいものは購入を避ける
  • 白い点がついているものや体にただれがあるものなども購入を避ける
  • 同種同士の混泳もできる
  • ほかの魚との混泳も可能だが強すぎる魚はだめ
  • サンゴはつつくことがあり海藻は食べてしまう
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