2020.09.22 (公開 2019.11.13) 海水魚図鑑
ヒメフエダイの飼育方法~動物食性がつよく小魚とは飼えない
ヒメフエダイはスズキ目フエダイ科の海水魚です。フエダイ科の魚は大きくなり、美味しいものが多く、食用魚としてよく知られている魚です。ですがその中には美しい色彩のものもおり、そのような魚はアクアリストに飼育されることもあります。このヒメフエダイも成魚は美味しいのですが幼魚はメタリックな青色や錆色で大変美しい魚です。しかし観賞魚として飼育される魚としては大きくなり、動物食も強いので混泳には注意が必要です。今回はこのヒメフエダイについてご紹介します。
標準和名 | ヒメフエダイ |
学名 | Lutjanus gibbus (Forsskål, 1775) |
英名 | Humpback red snapper, Paddletail snapperなど |
分類 | 条鰭綱・スズキ目・スズキ亜目・フエダイ科・フエダイ属 |
全長 | 40cm |
飼育難易度 | ★★☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトレッドなど |
温度 | 25℃前後 |
水槽 | 120cm~ |
混泳 | 口に入らないサイズの魚は飼育できる。ハタなど強すぎる性格の魚とは注意 |
サンゴとの飼育 | 大食いで水質を悪化させることもあり要注意 |
ヒメフエダイって、どんな魚?
▲青色が特徴的な幼魚
ヒメフエダイはスズキ目・フエダイ科の魚です。フエダイ科の魚は4つの亜科に分かれていますが、本種はこの科の中ではもっとも数が多いフエダイ亜科・フエダイ属の魚です。幼魚はメタリックブルーの体が特徴ですが、成魚になると赤みを帯びたグレーというか、錆色というか、独特な色彩になります。食用魚で市場にも出て、その時は大体赤みを帯びていますが、生きているときは色彩の変化が激しいです。
日本では食用になっていますが、中央太平洋の島嶼域ではシガテラ毒を引き起こすこともあります。沖縄では市場によくならび、方言名は「ミミジャー」です。
フエダイ科の魚
▲イレズミフエダイ
フエダイ科は種類は多いものの、大きく成長する種類もいるため、家庭の水槽で終生飼育できる種類は多くありません。ヨスジフエダイやニセクロホシフエダイなどは成魚サイズが小ぶりであり、120cm前後の水槽であれば長期飼育ができます。観賞魚として人気があるマダラタルミやホホスジタルミ、イレズミフエダイは50cmを超えるため、水槽もそれなりに大きなサイズのものが必要になってきます。
また遊泳性がつよいハマダイやヒメダイなどの種類は水族館でも飼育が難しいようです。特に高級魚としても知られるハマダイは大型になり1mを超えるサイズに成長するため、家庭水槽での長期飼育はまず無理でしょう。
ヒメフエダイに適した飼育環境
水槽
自然下では50cm、飼育下でも(水槽サイズにもよりますが)30cmほどになりますので、90cm水槽でも飼育できないことはないでしょうが、120cm以上の大きめの水槽で飼育したい魚といえます。
水質とろ過システム
フエダイの仲間は大食いで水を汚しやすいため、現実的なろ過システムはオーバーフロー水槽にしてサンプでろ過を行うシステムに限られてきます。上部ろ過槽と外部ろ過槽の両方を使用することもできますが、やはりオーバーフロー水槽が有利といえるでしょう。サンゴを飼育するようなベルリンシステムなどでの飼育はあまり適していません。フエダイはサンゴには無害ですが、水を汚しやすくシステムを崩壊させてしまうおそれがあるからです。
水温と病気対策
水温は25℃前後(22~27℃)をキープします。水温を一定に保たないと白点病などの病気にかかりやすくなってしまいますので、ヒーターとクーラーを使用して一定に保つようにつとめます。以前飼育していたときは白点病にかかってしまい死んでしまいました。病気対策は必要でしょう。
殺菌灯をつけるのが一番、というのではなく、いくら殺菌灯があっても水温が激しく上下すれば病気になりやすいです。また、砂をいじったりするような魚、たとえばベントスハゼ(大きくなったらフエダイに食われるおそれもあり)や、ヒメジの仲間は避けた方がよいです。
ヒメフエダイに適した餌
最初のうちは配合飼料を食べないこともありますが、すぐになんでも食べるようになります。しかしそのうちにエビなどの甲殻類は入れても食べられるようになってしまいます。
どうしても配合飼料を食べないときはキビナゴやアジなどの切り身、エビやイカの切り身に餌付かせますが、このような餌は水を汚しやすいため、与えすぎないように注意します。また、排せつの量も多く、強いろ過能力のろ過槽が必要な理由というのはそこにあります。
ヒメフエダイをお迎えする
▲ヒメフエダイの幼魚。磯の浅瀬に見られる
ヒメフエダイは幼魚がたまに販売されるほか、小型個体は釣りで採集することもできます。ただし針を飲み込んでしまったような個体は飼育には向いていません。サヨリ針、もしくは赤虫針でオキアミやエビの切り身などを餌にすれば釣れることがあります。この方法では他にもいろいろなフエダイの幼魚を釣ることができます。
本種は内湾の漁港や河川の河口の漁港などで釣ることができます。紀伊半島や四国、九州南部などの河口にある漁港ではフエダイ類が多く見られ、ヒメフエダイのほか、ナミフエダイ、フエダイ、クロホシフエダイ、ニセクロホシフエダイ、オキフエダイ、ゴマフエダイなどが見られます。このうち成魚サイズが小さいニセクロホシフエダイは家庭での水槽の飼育に最適ですが、ゴマフエダイは1mくらいにまで育つため家庭水槽での飼育には無理があります。ゴマフエダイなどはある程度大きくなっても河口域にとどまりますが、本種は大きく育つと河口から離れサンゴ礁へとその住処を移します。
スレには弱い面があるので、釣ったら防波堤の上などに置いておくようなことはせず、速やかに水をはったバケツの中にうつす必要があります。釣れた魚を持ち帰る方法については、こちらの記事もご覧くださいませ。
ヒメフエダイとほかの生物との関係
ほかの魚との関係
▲ヒメフエダイ(右)とオジサン(左)
ほかの魚との混泳もできますが、ヒメフエダイの口に入るような魚は餌になってしまうので避けなければいけません。また強健なハタ科の魚との混泳はいじめられることもあり、これも避けるべきです。スズメダイは大きい魚の餌になってしまうことがありますが、フエダイの仲間の幼魚と大型のスズメダイとの混泳では、大きなスズメダイに襲撃されてしまうこともあり適していません。混泳には大きめのヤッコや大型のハナダイ、ベラなどとの混泳が適しているでしょう。
写真ではオジサンと飼育していますが、オジサンは砂の中にいる生き物を捕食することもあり、砂を舞い上げることもあります。以前ヒメフエダイを飼育していたときは白点病にかかって死んでしまいました。あまり混泳させないほうが適しているかもしれません。
サンゴ・無脊椎動物との相性
無脊椎動物ではエビやカニなどの甲殻類などを好んで食べてしまいます。クリーナーシュリンプを襲うこともあり、基本的にはフエダイの仲間と甲殻類の飼育はタブーといってよいでしょう。
ヒメフエダイは動物食性が強いですが、サンゴを捕食するような種ではありません。ただしヒメフエダイをサンゴ水槽で飼育してしまうと小魚やエビを一緒に飼育することはできません。
ヒメフエダイ飼育まとめ
- 沖縄では食用としてもお馴染みのフエダイの仲間
- フエダイとしては小型種だがそれでも30cmを超える
- 水槽も120cmと大きめのものが欲しい
- オーバーフロー水槽にしてサンプでろ過するのがおすすめ
- 水温は25℃前後、病気予防のために一定に保つことを心がける
- 配合飼料に餌付きやすいが、餌付かないなら生の餌を与える
- 釣りにより採集した個体を飼育するのがよい
- ヒメフエダイの口に入るような小魚との混泳はできない
- ハタなど気が強い魚との混泳も避ける
- 甲殻類も襲って食べてしまう