2020.10.14 (公開 2020.10.13) 海水魚図鑑
ツインデムワーゼルの飼育方法~スズメダイとしては比較的温和で飼育しやすい
ツインデムワーゼルはリボンスズメダイ属のスズメダイです。リボンスズメダイ属の魚は従来はアクアリスト業界では見向きされていませんでしたが、近年ではたまに海水魚店で見ることができるようになりました。なお本種は「ビオラリボンスズメダイ」という名前で販売されていることが多いですが、ビオラリボンスズメダイとは別種とされています。今回はこのツインデムワーゼルの飼育方法をご紹介します。
標準和名 | なし |
学名 | Neopomacentrus sororius Randall and Allen, 2005 |
流通名 | イエローテールデムワーゼル、ビオラリボンスズメダイ |
英名 | Twin demoiselle |
分類 | スズキ目・スズキ亜目・スズメダイ科・リボンスズメダイ属 |
全長 | 7cm |
飼育難易度 | ★☆☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトレッドなど |
温度 | 25℃前後 |
水槽 | 45cm~ |
混泳 | スズメダイの中では比較的おとなしい種 |
サンゴとの飼育 | 可 |
ツインデムワーゼルって、どんな魚?
ツインデムワーゼルはスズメダイ科・リボンスズメダイ属の魚です。体色は灰色っぽく、尾の部分が黄色っぽくなっているのが特徴です。背鰭の後方や臀鰭は黄色っぽく、成長すると尾鰭には小さな輝点が入ることがありますが、臀鰭にはそれがありません。
分布域はインド洋で、コモロ諸島、マダガスカル、東アフリカ沿岸から、東はインドネシアにまで見られます。アクアリウムの流通にのる本種はインドネシアで採集されたものであることが多く、安価で購入できます(後述)。リボンスズメダイ属の魚はほとんど真水のような場所から海域に見られますが、本種は海域にのみ見られます。生態についての情報はあまり多くはないのですが、内湾のサンゴ礁域でみられるそうです。
近縁種との違い
▲ツインデムワーゼルの特徴、二つの斑点
本種は「ビオラリボンスズメダイ」という名前で販売されていることが多いですが、現在はビオラリボンスズメダイとは別種とされています。たしかにに古い図鑑ではビオラリボンスズメダイと同種とされていることも多いのですが、ツインデムワーゼルでは臀鰭に青白い斑点があることや胸鰭基部付近に二つの青色輝点があるのが特徴で2005年に別種とされ、ツインデムワーゼルは新種記載されました。なお写真の個体ではわかりにくいかもしれませんが、2つの斑点を見ることができます。なお、鰓蓋後方、側線始部にも斑点がありますが、これはビオラリボンスズメダイにも見られる特徴です。なお、本種の口の周りは黄色くなく暗い色になっており、この特徴によりよく似たもう1種、コーラルデムワーゼルとも見分けることができます。これらのリボンスズメダイの仲間は従来は海水魚店で見られませんでしたが、近年は海水魚店でたまにみるようになりました。丈夫さはそのまま、スズメダイの仲間としてはおとなしめのものも多いので人気は出そうです。
ツインデムワーゼル飼育に適した環境
水槽
大型になるスズメダイというわけではないので、45cm水槽でも飼育することができます。ただし混泳を考えるなら60cm以上の水槽が最適でしょう。また大型個体であれば最初から60cm以上の水槽で飼育するのがベターといえます。
水質とろ過システム
スズメダイの仲間はおおむね硝酸塩の蓄積に強く、本種も同様なのですが、それでも硝酸塩の蓄積はあまりよくありません。できるだけきれいな水で飼育してあげたいものです。ろ過槽は45cm以下であれば外掛けろ過槽、または小型プロテインスキマーと外部ろ過槽の組み合わせ、60cm水槽以上では上部ろ過槽の使用がよいでしょう。ただし、用意できるのであればオーバーフロー水槽での飼育がが最適です。
ツインデムワーゼルはサンゴには悪影響を及ぼさないので、サンゴ水槽での飼育もできます。ただしベルリンシステムなどでサンゴを飼育しているのであれば、魚はあまり多く入れられません。サンゴを上手く飼育するのであれば魚は少なめにするのが鉄則です。
水温
熱帯性の浅い海に生息している種で25℃前後をキープすれば問題ないでしょう。大体22~27℃くらいであれば状態よく飼育できますが、クーラーとヒーターを使用して常に一定の水温に保たなければなりません。これは水温の変動が大きくなると、体調を崩し、いつもは丈夫なスズメダイの仲間でも病気になってしまうおそれがあるからです。
隠れ家
▲隙間の多いライブロックはよい隠れ家になる
ライブロックやサンゴ岩、飾りサンゴなどの隠れ家を用意してあげるとはやく落ち着くので、天敵のいない水槽でも入れてあげましょう。
ツインデムワーゼルに適した餌
海の中では流れてくる動物プランクトンを捕食しています。ですが水槽内では細かくした配合飼料をよく食べてくれるのであまり心配しなくてよいでしょう。プランクトンフードなども食べますが、水質を悪化させやすいのでたまに与えるくらいで十分です。
ツインデムワーゼルをお迎えする
ツインデムワーゼルは先ほども述べたように「ビオラリボンスズメダイ」として販売されていることも多いです。インド洋のサンゴ礁域に広くいますが、主産地はインドネシアのサンゴ礁域で、状態がよくないことも多いのです。購入する際に注意したいポイントはいくつかありますが、入荷直後の個体は購入せず、ある程度魚が落ち着いて餌も食べるようになった個体を購入するのが望ましいといえます。
もちろん入荷してある程度時間がたったものでも、体表に傷やただれがあるもの、鰭がぼろぼろだったり、傷やただれがあるもの、白い点がついているもの、背の肉がおちている(やせている)ものなどは購入してはいけません。
ツインデムワーゼルとほかの生物の関係
ほかの魚との混泳
▲ローランズデムワーゼルなどとの混泳例
比較的おとなしいスズメダイです。そのため、同種同士、もしくはほかの魚と混泳させることもできます。ただし大きく育ったものは気が強くなり、遊泳性ハゼや小型ハゼとの混泳は避けたほうがよいかもしれません。カクレクマノミや小型ヤッコなど、おなじくらいの大きさの魚との組み合わせが最適です。一方、ハタの仲間やカサゴの仲間などの肉食魚、メギスや大型スズメダイなど、気性の激しい魚との混泳はいけません。
サンゴ・無脊椎動物との相性
ツインデムワーゼルはサンゴとの相性もよく、ソフト、ハードコーラル問わず、熱帯の浅瀬にすむサンゴであればどのようなサンゴとも組み合わせることができますが、SPSやソフトコーラルがよく似合うといえます。ただしイソギンチャクの仲間はスズメダイの仲間を食べてしまうことがありますので、あまりおすすめできません。なお、イソギンチャクといってもディスクコーラルやマメスナギンチャクなどはビオラリボンスズメダイに無害です。
甲殻類についてはクリーナーシュリンプや小型のオウギガニ、サンゴヤドカリやベニワモンヤドカリ、ヨコバサミ系とは飼育できますが、大型のエビ(イセエビなど)、大型のカニ、大型のヤドカリなどとは飼育しないほうが無難です。
ツインデムワーゼル飼育まとめ
- 灰色の体で尾のオレンジ色が美しい種
- 「ビオラリボンスズメダイ」という名前で流通することもあるが別種
- 45cm以上の水槽で飼育したい
- 水質悪化には強いができるだけきれいな海水で飼育する
- 水温は25℃前後、常に一定であることが重要
- ライブロックなどの隠れ家を入れておくと早く落ち着く
- 餌は動物プランクトン。配合飼料もすぐ食べてくれる
- 入荷直後は購入を避けたい
- 病気のものや鰭がぼろぼろ、体表などに傷やただれがあるものなどは避ける
- ほかの魚との混泳も楽しめるが、大型個体は注意
- 気が強いメギスや大型のスズメダイ、肉食魚との飼育は避ける
- サンゴとの相性はよい
- イソギンチャクや大型の甲殻類にも注意