2022.08.09 (公開 2017.07.11) 水槽・器具
海水魚用クーラー・ヒーターのおすすめと選び方
海水魚用クーラー・ヒーターの選び方において、一般的に「メーカーが推奨するものの一回り大きいスペックで選びましょう」と言われるのは理由があります。
それは、飼育環境によって熱損失量を加味する必要があり、どうしてもスペック通りの働きをしてくれるとは限らない、また単純な水槽の水量で判断することができないからです。
クーラーの選び方
【クーラー選定における計算式】
【公式】
選定L数=全水量(A)+熱損失量(B)計算式例
【A】水槽容積と濾過槽容積の合計
水槽:108L
濾過槽:20L
108L+20L=128L【B】水槽で使用する電気機器の出力合計
「1w=1L」として計算
照明:150w
ポンプ:20w
殺菌灯:20w
150w+20w+20w=190w=190L選定L数=(A)128L+(B)190L=318L
参照(一部改編):ZENSUI
このケースだと、単純な水槽の水量で見るとゼンスイZC-200αが適しているように思えますが、熱損失量を加味した正確な計算では、ZC-500α程度でないと水温が安定しないことになります。
これを踏まえたうえで、メーカーが推奨する「選定L数」を見ると、よりあなたにとっての選び方が見えてくるはずです。
ゼンスイZCクーラーαシリーズ|メーカー推奨の対応水量
αシリーズ | 選定L数 |
ZC-100α | 100L相当 |
ZC-200α | 200L相当 |
ZC-500α | 450L相当 |
ZC-700α | 700L相当 |
ZC-1000α | 1000L相当 |
ですから、50リットル程度の小型水槽で飼育している方も、取り付けている機材を加味すると、ゼンスイを例に取ればZC-100α以上のスペックのクーラーは必要になってしまいます。
ケチって低スペックのものを購入すれば、ほぼ間違いなく失敗します。「こんなにハイスペックのクーラーが必要になるとは思わなかった」と感じているかもしれませんが、プロテインスキマーや添加剤、殺菌灯と違って、クーラー選びに関して言えば、アクアリウムにおいて最もお金をかけなければいけないポイントと言えます。
一般的に、クマノミの仲間などサンゴ礁の魚を飼育するのに適した水温は23~25℃といわれています。
サンゴ礁域の浅場で水温30℃近くになることがありますが、一般的な水槽でそのような温度になってしまうと厳しいものです。サンゴは高水温が続くと死滅の危機がおとずれてしまいます。水槽では常に25℃、ハワイやカリブ海の魚を飼うには22℃、この水温を一定に保つように心がけます。
水温チェックで病気の予防
▲温帯性の魚は水温に注意が必要
私たちが季節のかわり目に風邪をひくことがあるように、魚は水温の変動時に病気にかかりやすくなるので注意します。1日に3℃も4℃も温度がかわるような水槽では魚も病気になることがあります。
熱帯性のカクレクマノミは23℃で飼育しても、25℃で飼育しても、27℃で飼育してもあまり問題はありません。大事なのはこの温度で安定していることなのです。温帯域の魚やハワイ・大西洋産の魚はもっと低めの22℃前後で飼育するのが適しています。
水槽の温度を下げる
▲深場の魚や温帯、大西洋の魚は低めの水温を好む
水温を下げる方法としては、冷却用のファンを用いる方法、水槽用のクーラーを用いて下げる方法があります。小型水槽であれば冷却用ファンや比較的安価なペルチェ式クーラーで水温を下げますが、大型水槽では水槽用のクーラーを用いて冷却する方法がとられます。
冷却用ファンで水温を下げる
水槽の水温を下げるには水槽用のクーラーで下げるのがベストですが、今は大分安価になったとはいえ、クーラーは気軽に購入できるような金額ではないという方も多いでしょう。
比較的安価に水槽を冷やすのに水槽用のファンがあります。60cm水槽くらいまでなら良いでしょうが、それ以上の水槽では現実的ではないかもしれません。
逆に温度が下がりすぎるということもありますので、かならず専用のサーモスタットを併用する必要があります。またこの装置を使うことによって水槽の水が減ってしまい、「足し水」が必要になります。この場合カルキ抜きをした真水を少々足すことになります。
水槽用クーラーで水温を下げる
一般的な水槽用のクーラーにはコンプレッサー式のものとペルチェ式のものがありますが、海水魚飼育用にはコンプレッサー式のものがお勧めです。
コンプレッサー式クーラー
一般的に「水槽用クーラー」と言えばこちらのことをいいます。最近は小型水槽も人気で、このタイプのクーラーもさまざまな種類がラインアップされており、価格も5ケタ内でおさまるものが多くなりました。
主なものではゼンスイ「ZCシリーズ」やジェックスの「クールウェイ」、エムエムシー企画レッドシー事業部が輸入販売するテコ社製のクーラーなどがあります。水槽の水を確実に冷やすことが出来ますが、デメリットとしては価格が高いことのほか、クーラーの音がうるさいことがあげられます。
メンテナンスとしては、クーラーの吸気口に詰まったほこりなどをたまに取り除く必要があります。
ペルチェ式クーラー
ペルチェ素子を使ったクーラーのことです。ペルチェ素子というのは、端折っていえば電流を流すと表裏に温度差が発生する素材のことで、主に小型冷蔵庫やさまざまなものの冷却などで使用される方式ですが、観賞魚用の冷却装置についてもこの方式を採用した商品があります。
具体的なメーカー、製品名をあげますと、ゼンスイ「テガル」やテトラ「クールタワー」などの製品があります。
特に「テガル」は冷却するだけでなく加温機能も備えるなど優れた点があります。ただしコンプレッサー式の水槽用クーラーほど水槽を冷やす能力はないので過信は禁物です。涼しい部屋においた水槽の水温をさらに下げるという使い方をします。
クーラーを選ぶ
▲ポンプは魚やサンゴ飼育には必需品だが…
海水魚を飼うのには、外部式ろ過槽と同じようにクーラーも適合水量は1ランクも2ランクも上のものがすすめられることが多いのですが、それには理由があります。
まず水中にある、ありとあらゆるポンプは熱を出してしまうということです。オーバーフロー水槽でサンプ(水溜め)から水をくみ上げるポンプ、オーバーフローでなくても水をろ過槽にくみ上げるポンプは熱源となります。サンゴ飼育には水流を生み出すためのポンプも必要になりますし、とくにミドリイシなど淀みを嫌うサンゴを飼育するのには多数取りつける必要があります。さらに言えばプロテインスキマーもポンプを使って水槽の水を温めますし、殺菌灯は接続するポンプもそうですが、殺菌灯そのものが紫外線を照射するもので、それによっても水は温められます。
次に海水魚を飼うためには豊富な水量を確保できるろ過装置がすすめられること。これは外部ろ過槽を大型化したり、広いろ過槽を確保できる上部ろ過槽をセレクトするとなると、水量が増えるのは当然です。
そして照明の影響もあります。サンゴを飼うのには照明が必要ですが、LEDの他にメタルハライドランプや、T5蛍光灯などを勧められることがあります。最近はLEDが人気ですが、サンゴ、特にミドリイシ等の愛好家は今でもメタハラやT5などを使用していることも多いのです。
クーラーは絶対に価格だけで選ばず、自分の水槽よりも対応する水量が多いものを選ぶようにします。なお、クーラーと水槽を接続するには、別途ホースと循環ポンプが必要になります。循環ポンプもハイパワーのものを、お住まいの地域の周波数にあったものを購入します。
室内のクーラー(エアコン)で冷やすのはだめなの?
家のクーラーではだめなのか、という質問をたまに受けます。実際、水槽用のクーラーを使用せず、家のクーラーだけで海水魚を飼育することも不可能ではありませんし、お店も個々の水槽にクーラーをつけるということはせず、部屋ごと冷却することも多いのです。
しかし、24℃に水温を保つには、室温を22℃くらいに設定しておく必要があり、ポンプをいくつもつけるようであればさらに室温を冷やす必要が出てきてしまいます。また何らかの理由で部屋の温度が大きく変動したら、変化はそれほど急でなくても水温も変動してしまいます。やはり基本は水槽用のクーラーをつけるようにして、その補助として室内のクーラーをつけるようにするとよいでしょう。
水槽の温度を上げる
水温を下げる方法はコンプレッサー式のクーラーを使う方法やペルチェ式クーラー、ファンを使う方法がありますが、水槽の温度を上げるのはヒーターを使うに限ります。ヒーターを運用するにはサーモスタットを使う方法や、オートヒーターを使う方法があります。
ヒーターで温度を上げる
▲オートヒーター
ヒーターは冬水温を上げるときに使うもの、と思われがちな製品です。しかし、実際はそれだけではありません。「夏、冷えすぎた水槽の水をあたためるもの」「春と秋、クーラーと手を組んで安定しない水温を一定に保つもの」というものでもあります。ですから春夏秋冬、水槽やサンプに入れておくべきです。
オーバーフロー水槽のろ過槽やサンプ(水溜め)はガラスのものもありますが、日本においてはアクリル製のサンプが多いです。このままヒーターを直置きするとアクリルが溶けるなどトラブルのもとになります。キスゴムを付けるというアクアリストも多いのですが、キスゴムだけではどうしても不安ですので、必ずヒーターカバーがついた製品を選ぶようにします。勿論サンプを持たない一般のアクリル水槽でもヒーターを直置きしないように注意します。
サーモスタットを選ぶ
▲ヒーターと電子サーモスタット。セットで販売されていることも。
ヒーターは決してそのまま使わず、サーモスタットとつなげて使用します。サーモスタットはバイメタル式のサーモスタットや電子サーモスタットがありますが、扱いやすい電子サーモスタットをおすすめします。
このほか最初から設定してある温度まで水温を上げる機能をもつオートヒーターも小・中型水槽向けのものを中心に普及しています。これにはサーモスタットをつなげることはしません。またヒーターは陸に置いたまま通電させてはいけません。物をとかしたり最悪発火するおそれもあります。必ず水の中に入れた状態で通電させます。
クーラー、ヒーター、共通の注意点として、水温のセンサーを必ず水槽内に入れておくようにします。とくに水が蒸発しやすい冬の時期はセンサーの位置にも注意します。
クーラー・ヒーターの選び方まとめ
- クーラー・ヒーターの「対応水量」は単純な水槽の水量で判断できない
- クマノミなど熱帯性海水魚の適温は25℃前後。23℃でもよい
- 温帯、ハワイ、カリブ海、深場の魚はもっと低い水温で飼育する
- 水温は安定していることが大事
- 水温はポンプや照明、殺菌灯などによって常に温められている。
- クーラーは公称対応水量よりも大きなコンプレッサー式がおすすめ
- 小型水槽ならファンやペルチェ式クーラーの選択肢も
- ヒーターは春夏秋冬水槽に入れておく
- ヒーターと電子サーモスタットの組み合わせがおすすめ
- 水から出した状態で決して通電させないこと
- センサー類は必ず水槽内に。水位にも注意