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2020.11.13 (公開 2019.11.08) 水槽・器具

海水魚水槽を温める「ヒーター」の種類と使い方

ヒーターはその名の通り熱を発する器具で、海水魚だけでなく熱帯性の魚を飼育するのに必要な器具です。しかし、その使い方をあやまると魚を殺したり、火事になり財産を失うおそれさえあります。また、ひとくちにヒーターといってもいくつかのタイプがありますので、ヒーターの使い方には注意しましょう。今回は海水魚飼育初心者向けに、どのヒーターを購入すればいいかをご紹介します。

ヒーターとは

わたしたちが飼育する海水魚はカクレクマノミやナンヨウハギ、スズメダイ、小型ヤッコなど熱帯域に生息するものが多く、そのような魚は日本の冬の低水温に耐えられず死んでしまいます。そのため、冬には水温をあげて魚が凍えて死んでしまわないようにする必要があります。そのときに使うのがヒーターです。

「なんだ、冬に水温を温めるのか。じゃあ夏場はヒーターは必要ないね」なんて思っている方もいるかもしれませんが、夏はクーラーと力を合わせて水温を一定に保つという役目もあります。これは水温の変動が大きいと海水魚は病気にかかりやすくなってしまうからです。秋や春など季節の変わり目、寒暖差が激しいときなど重宝します。

海水魚水槽で使うヒーター

総合ペットショップのヒーターコーナー

海水魚水槽で使用されるヒーターは一般的に、サーモスタットとセットで使うヒーターと、サーモスタット不要のオートヒーターの2種類があります。

サーモスタットと接続するヒーター

▲コトブキのヒーターとサーモスタット

サーモスタットという、温度調節の装置と組み合わせて使うヒーターです。サーモスタットはバイメタル式と呼ばれる二つの金属の板を張り合わせたものと、電子サーモスタットがありますが、現在ではほぼすべてが電子サーモスタットになっています。電子サーモスタットの方が若干高価なのですが扱いやすくて便利だからです。

さらにヒーターとサーモスタットを外すことができるタイプ(コトブキ・セーフティヒートセット、ジェックス・ヒートナビパックなど)と、ヒーターとサーモスタットを外すことができないタイプ(ジェックス・ヒートナビなど)があります。後者のほうが前者より若干安く、センサーが一体になっているなどメリットもあるのですが、ヒーター、もしくはサーモスタットが壊れるようなときにはすべて交換することが必要というデメリットがあります。

オートヒーター

▲エヴァリスのオートヒーター

これはあらかじめメーカーが設定した温度(誤差1.5℃ほど)に水温を合わせてくれるすぐれものです。またサーモスタットが必要なく、水槽周りがコンパクトになります。ただし、オートヒーターは水温の調節ができないというデメリットもあります。できるだけサーモスタットつきのヒーターを使いたいところですが、万が一魚病が発生し魚を隔離したときの温度調節とか、人工海水を溶かすときに水を温めておくとか、あるいはヒーター故障時の予備とかそのようなときにも活躍しますので持っておくのが一番よいでしょう。

ヒーター使用時の注意

ヒーターは水温を温める、熱を出す装置です。熱帯性海水魚の生存には必要不可欠のアイテムではありますが、使い方を間違えると魚やサンゴが死亡したり出火するおそれもありますので、十分注意しなければなりません。

サーモスタット接続ヒーターは単独では使用不可

量販店や、大きな観賞魚店では、ヒーターがたくさん売られています。どの製品を買おうか悩みますが、サーモスタットに接続するタイプのヒーターは決してヒーター部だけでは使ってはいけません。はじめて海水魚を飼育するのであれば温度調節可能な電子式サーモスタットつきヒーターを購入するのが無難です。逆にオートヒーターをサーモスタットに接続するのもやめましょう(ただし一部サーモスタットに接続できるオートヒーターもある)。

センサー部の露出に注意

▲センサーが水中から露出している。この状態では魚が死ぬおそれあり

電子サーモスタットが付属するヒーターには温度を感知するセンサーがついています。このセンサーが水から露出してしまうと温度調節ができず、過度に水が温められて魚が死んでしまうことがあります。海水魚の場合、水の蒸発による水位の変動などにも注意しなければなりません。

ヒーターは水から露出させない

▲コトブキのヒーターにつく「SHマーク」

通電中のヒーターを水から露出させてはいけません。とくに水替えの際、ヒーターが水から露出して火事になった事例が東京消防庁のウェブサイトで紹介されています(外部リンク)。水替えなどでヒーターを露出させるときは、必ず電源を切って、ちょっと時間がたってから水を抜くようにします。

観賞魚用ヒーターの安全規格としてはJPPMA(日本ペット用品工業会)などの関係団体が2012年につくった「観賞魚用ヒーター統一規格」(SHマーク)、2015年につくった「観賞魚用ヒーター品質規格」(SPマーク)があります。ヒーターの表面温度を400℃以下(紙などが発火しない温度)に抑えるなど、安全に配慮したつくりとなっています。

水温は常にチェック

ヒーターがついているから大丈夫!というものではなく、温度は常にチェックします。ヒーターやサーモスタットが故障していたり、通電していなかったら、当然水温は上がらず、熱帯の魚は死んでしまいます。逆にヒーターのセンサー部が水面から露出していたら水温が上昇しすぎて魚が煮えてしまいます。そのため水温計を用いてかならずチェックする必要があります。

アクリル水槽での注意

アクリル水槽でヒーターを使用すると、水槽が熱で変形してしまう可能性もあります。そのため、アクリル水槽でヒーターを使用するならヒーターカバーが必需品となります。また、ヒーターカバーには海水魚がヒーターに触ってやけどをしてしまうことを防ぐ役割もあるため、できるだけつけるようにしたいものです。あらかじめヒーターカバーがついているものも多く販売されており、実際に購入する際も意識してみるとよいでしょう。

ヒーター設置場所

ヒーターは水槽の中に入れることになります。オーバーフロー水槽でない場合は魚を飼育している水槽にそのまま入れますが、魚がやけどしないようにヒーターカバーをつけるか、最初からヒーターカバーがついているものを選ぶとよいでしょう。

オーバーフロー水槽であればヒーターやセンサー、水温計をサンプ内に設置して隠すことができるので見た目がスッキリしてよいのですが、水温の管理がおろそかになってしまわないかという問題もあり注意が必要です。もちろん水の蒸発によりセンサーが露出しないかということにも気を配りましょう。

メーカー別おすすめヒーター

ジェックス

水槽からLEDライト、餌まで観賞魚飼育用品ならほぼ何でもそろう大阪府の大手メーカーのジェックス。もちろんヒーターも数多くラインナップしています。

ジェックス製の電子式サーモスタットつきヒーター「ヒートナビ」は安全性に優れている(と謳う)ヒーターで、しかも安価ではありますが、注意点があります。ヒーター部は1年に1回の交換が推奨されますが、ヒートナビはサーモスタットとヒーター部が一体になっており、ヒーターだけ交換するということはできません。そのためヒーターが壊れたら付属のサーモスタットごと買い替えなければならず、逆も同様です。これを購入するならおなじジェックスから出ている「セーフカバーナビパック」を購入し、毎年ヒーター部を買いかえるのがずっと効率的です。

このヒーターは統一規格対応商品(SHマークつき)であるだけではなく無料のユーザー登録をおこなうと品質保証が2年に延長されるキャンペーンを行っており、品質への自信があふれています。ただしジェックス製のヒーターのうち旧型の商品ではリコールがかかっているものもありますので注意が必要です。

なお、商品リンクは60cm規格水槽での飼育に適したヒーターをご紹介します。

ジェックス セーフカバー ヒートナビ SH220

ジェックス セーフカバー ヒートナビ SH220

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ニッソー

ニッソーも古くから観賞魚用品を販売してきました大手メーカーでしたが、現在は哺乳類・爬虫類などの用品メーカーである株式会社マルカンのいち事業部となっています。

ニッソーの電子式サーモスタットは「シーパレックス」で、これに各種ヒーターを接続します。「プロテクトヒーター ストロングセーフ」は難燃性樹脂のヒーターカバーが付属しています。「プロテクトプロヒーター」はパイロットランプ付きで通電状態を確認できます。統一規格対応商品でSHマークつきです。

このほか水温が一定に調整される「プロテクトオートヒーター」もあります。サイズは3種あり、高温にさらされやすい170Wのものにはアルミ製のカバーが付属しています。

コトブキ工芸

コトブキもジェックス・ニッソー同様水槽から水槽周辺機器、アクセサリまでさまざまな用品を扱うメーカーです。あらかじめヒーターと電子式サーモスタットETシリーズがセットになっている「セーフティヒートセット」を購入すれば、ヒーターの交換もらくらくです。交換用のヒーターにはSHマークつきの「セーフティヒーターSH」と、SPマークがついた最先端安全機能がうりの「セーフティヒーターSP」があります。大きさ別にそれぞれ3種類がラインナップ。これにヒーターカバーを使用すれば安心でしょう。

エヴァリス

これまで紹介してきた3社は観賞魚の飼育用品を総合的に扱うメーカーですが、エヴァリスはヒーターをメインとしているメーカーです。温度固定タイプのコンパクトなヒーターを色々販売しており、筆者でも魚病治療や隔離飼育の際によく使用しています。

温度固定タイプのほか、他のメーカー同様サーモスタットつきのヒーター、サーモスタットとヒーターが分離するヒーターも販売しています。また観賞魚以外にもカメ用のヒーター、産業用のオートヒーターなども製造しています。もちろんSHマーク対応。なおサムネイル画像に写っているヒーターはエヴァリスのヒーターです。

エヴァリス プリセットオートヒーター AR 200W

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ゼンスイ

ゼンスイといえば水槽・活魚用クーラーやLEDライトのメーカーとして有名ですが、積極的な宣伝は行っていないものの、ヒーターも取り扱っています。カタログによれば大型の、海水でもさびず割れる心配もないチタン製の高級ヒーターを販売しています。一番小さいものでも棒状部29cm、お値段も税別34000円~という高級品です。もちろんそれだけで使用することはできず、同じくゼンスイから出ている専用のZS水温コントローラーなどを使用することになります。いけす料理店のいけすなどを製造するゼンスイらしい、大型水槽用のモデルです。

その一方、小型水槽用に「テガル」というものもあります。テガルはペルチェ式クーラーとヒーターが一体化したもので、これまであまりなかった小型水槽の冷却に適しています。しかしながらアマゾンなどでヒーターが作動しないとか、水温の上昇しクーラーが作動せず魚が全滅した、とかいう口コミも散見されています。画期的な新商品だけに、そのようなトラブルもおこってしまうのかもしれません。なお筆者は事務所の水槽でクマノミ水槽に使用していますが、とくに問題は起こっていません。

このほか水槽用のヒーターのほか、部屋のエアコンをつけっぱなしにしておく方法もあります。水槽の数が多いときなどに有利になるでしょう。一方石油ストーブでは海水魚水槽を温めてはいけません。これは石油ストーブでは有害な一酸化炭素が発生し、pHを低下させてしまうおそれがあるからです。

ヒーターまとめ

  • サーモスタットつきのヒーターと一体型のオートヒーターがある
  • サーモスタットつきのヒーターはヒーター部が外せるものが経済的
  • オートヒーターも1つは持っておきたい
  • サーモスタット接続用ヒーターは単独では使用できない
  • サーモスタットにオートヒーターも接続しない
  • センサー部を露出させないよう注意
  • ヒーターの電源を切らずに水を抜くことは絶対しない
  • ヒーターをつけていても水温には注意
  • 魚がやけどしないようヒーターカバーつきのものがよい
  • 水の蒸発には注意
  • ジェックス「ナビパック」コトブキ「セーフティヒートセット」などがおすすめ
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