ツムギハゼの飼育方法~熱帯の海にすむ有毒のハゼ

ツムギハゼは日本ではおもに琉球列島の汽水域から内湾に生息しているハゼの仲間です。見た目は何も変わったところがないハゼなのですが、このハゼはほかのハゼとは大きく異なっているところがあります。それは、体にふぐ毒をもつということです。しかし食べなければ問題ありません。このツムギハゼは沖縄などでは河川の汽水域などで釣れることもあります。今回はこのツムギハゼの飼育方法をご紹介します。

標準和名 ツムギハゼ
学名 Yongeichthys criniger (Valenciennes, 1837)
英名 Hair-finned goby, Horny goby, Poisonous gobyなど
分類 スズキ目・ハゼ亜目・ハゼ科・ハゼ亜科・ツムギハゼ属
全長 10cm
飼育難易度 ★★☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッドなど
温度 25℃前後
水槽 45cm以上
混泳 小魚は食べてしまうことがあり。大型魚・肉食魚との飼育も避ける
サンゴ飼育 可だがあまり似合わない

ツムギハゼって、どんなハゼ?

ツムギハゼはハゼ科ツムギハゼ属のハゼで、熱帯域に分布しています。日本では静岡県以南から記録がありますが、基本的には熱帯性の魚で、奄美大島以南に多い種です。生息場所は河川河口周辺の汽水域(マングローブ林があるところなど)、漁港の内部、内湾などです。

体側に並ぶ黒い3つの斑点が明瞭な以外は、あまり大きな特徴はありません。地味なハゼですが、ほかのハゼと大きく異なるところがあります。それはツムギハゼの筋肉や皮膚などに強い毒がある、というところです。

ツムギハゼの持つ毒

ツムギハゼの毒はテトロドトキシン、つまりふぐ毒です。

ツムギハゼの毒は個体による差も大きいとされています。おそらくツムギハゼも毒をもつしくみはフグの仲間と同様に、食物連鎖であると思われるのですが、細菌を食べるほか、同じように毒をもつオキナワフグの死骸を食べるともされています。またツムギハゼの近縁種であるキララハゼ属のホクロハゼなど、一部の種もテトロドトキシンをもつ可能性があるようです。

ツムギハゼ以外で毒をもつハゼにはキイロサンゴハゼやコバンハゼといった魚がいます。この仲間は皮膚から毒を出して、バケツなどの容器にほかの魚と一緒に入れておくとほかの魚を殺すことがあります。

ツムギハゼ属

▲キララハゼ属のモヨウハゼと思われる個体

ツムギハゼ属は4種が有効種とされ、日本においてはツムギハゼ1種類が知られています。ただしツムギハゼはYongeichthys nebulosusと同一の種とされることもあります。またツムギハゼ属はスジハゼなどを含むキララハゼ属と近縁の属とされており、同じく近縁のフタスジノボリハゼ属と同様にキララハゼ属に入れられることがあります。ツムギハゼはキララハゼ属の魚とは、頭部の鱗の分布などで見分けられる、とされているのですが、一般アクアリストが鱗の分布だけで属を見分けるのは難しいところがあります。

ツムギハゼに適した飼育環境

水槽

あまり大きくなる魚ではなく、泳ぎ回るタイプの魚でもないのでそれほど大きな水槽は必要ありませんが、45cm以上の水槽が飼育しやすいのでおすすめです。60cm水槽は水量が大きくなる分、45cm水槽よりも安定するので、さらに飼いやすいといえます。

水質とろ過システム

ツムギハゼは水質悪化にはかなり耐えられる魚ですが、できるだけ綺麗な海水で飼育するように心がけましょう。ろ過槽は多くのろ材を入れられ、酸素がバクテリアにいきわたりやすい上部ろ過槽がおすすめです。小型水槽であれば外掛けろ過槽でもよいのですが、ろ過能力不足に陥りやすいので、外部ろ過槽との併用がおすすめです。

もっともおすすめなのはオーバーフロー水槽にしてサンプの中でろ過を行う方法です。また、サンゴを飼育するためのベルリン水槽でも飼育できますが、あまり似合わず、魚も多く入れられないので注意が必要です。

水温

熱帯性の魚ですので、水温は原則25℃をキープします。基本的には病気になりにくい丈夫な魚ですが、あまりにも水温の変動が大きすぎると病気になってしまうことがあります。

底砂

多くの海水魚飼育の場合、底砂はサンゴ砂が最適です。ツムギハゼの生息環境はマングローブ周辺の砂泥底に多いですが、泥はあまり水槽には向いていないところがあります。ただし最近は海水魚飼育で使用できるマッドや、海水魚に使える黒っぽい砂(シーケム・グレイコーストなど)も販売されていますので、そのような底床を使用するのもおすすめです。ただし熱帯魚用のソイルは絶対に使用してはいけません。

ツムギハゼに適した餌

自然下では底生小動物や細菌、口に入る魚までなんでも食べますが、飼育下ではすぐに配合飼料を食べてくれることも多いです。餌は底に沈むタイプの沈降性のものがおすすめです。たとえば「メガバイト」であればSサイズよりもMサイズの方が向いているでしょう。どうしても食べないときは最初は冷凍のホワイトシュリンプなどを与えますが、冷凍餌は与えすぎると水質悪化を招きやすいので注意が必要です。小型水槽では外掛けろ過槽などが使われることが多く、とくに気をつけなければなりません。

ツムギハゼをお迎えする

採集する

▲宮崎の沿岸で釣れたツムギハゼ

四国や九州の太平洋岸や琉球列島で採集することもできます。動きはほかのハゼほどは素早くなく、網で掬うこともできますが、一番簡単なのは釣り採集です。小さな針にオキアミをつけて、ハゼの前に垂らしてあげれば、簡単に釣ることができるでしょう。ただし針を飲みこんでしまった個体は飼育には向きません。

購入する

ツムギハゼは海水魚専門店ではあまり見られず、入荷しても「ハゼsp.」などとして販売されていることがあります。またケショウハゼやクツワハゼ、近縁とされるキララハゼ類などとまざって販売されていることもあります。購入するときは鰭がぼろぼろ、体や鰭に傷やただれがある、などの個体は購入しないようにします。また入荷して間もない個体も購入してはいけません。

ツムギハゼとほかの生物の相性

ほかの魚との関係

ツムギハゼは意外なほど動物食性が強く、採集して同じ水槽の中に入れたアゴハゼを平らげてしまったこともあります。口に入るサイズの魚との混泳は避けた方が無難でしょう。

また、ツムギハゼを捕食してしまうような魚との混泳は厳禁です。ツムギハゼの毒は個体により変異があり、強い毒をもつものや、逆にまったく毒がないものもいるので、食べられてしまうこともあり、食べた魚も殺してしまう可能性があるからです。おとなしい魚なのでおとなしい魚との混泳が望ましいといえます。また、フグの仲間のように死亡すると毒を出す可能性も否定はできません。私がツムギハゼを飼育していた時は単独での飼育でしたので、残念ながらそれは確認できていません。

サンゴ・無脊椎動物との相性

サンゴとの相性は概ね悪くはないのですが、底の方にサンゴを置いておくとハゼが砂を舞いあがらせたときに、砂を被ることもあるのでよくありません。また、本種の生息域を考えても、あまりサンゴ水槽に似合う海水魚ではないともいえます。甲殻類は小さすぎると捕食してしまいますし、大きい甲殻類には食べられてしまうこともあります。

ツムギハゼ飼育まとめ

  • 主に熱帯の汽水域や内湾、マングローブ域にみられるハゼ
  • フグとおなじテトロドトキシンを皮膚や筋肉などにもっている
  • スジハゼなどが含まれるキララハゼ属と近縁
  • うまく飼育するなら45cm水槽で飼育したい
  • 外掛けろ過槽よりは上部ろ過槽がよい
  • 水温は25℃前後をキープする
  • 泥やソイルは使用しない。専用のマッドや黒い底砂がおすすめ
  • 沈降性の粒餌が最適
  • 琉球列島などでは釣りで釣れることが多い
  • 小魚は食べてしまうことがある
  • 逆に大型の魚や甲殻類に襲われることも
  • サンゴとの飼育は可能だがあまり似合わない

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