2020.09.22 (公開 2019.10.18) 海水魚図鑑
アカオビシマハゼの飼育方法~丈夫で飼いやすいが混泳は要注意
アカオビシマハゼは沿岸の内湾などに生息しているハゼの仲間です。体側にはいる縦縞模様が特徴で、状態などにより体が黒くなり白い横帯が入ることもありますが、基本的に幼魚も成魚もほぼ同じ模様です。水質悪化にも強く丈夫で飼育しやすくかつ可愛い模様で飼いたくなる魅力にあふれた魚ではありますが、動物食性が強く小魚などを捕食することもありますので注意が必要です。
標準和名 | アカオビシマハゼ |
学名 | Tridentiger trigonocephalus (Gill, 1859) |
英名 | Chameleon goby |
分類 | スズキ目・ハゼ亜目・ハゼ科・ゴビオネルス亜科・チチブ属 |
全長 | 10cm |
飼育難易度 | ★☆☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトレッドなど |
温度 | 22~25℃ |
水槽 | 45cm以上 |
混泳 | 小魚は捕食することも。逆に大型魚に捕食されることもあり注意 |
サンゴ飼育 | 可能だがあまり似合わない |
アカオビシマハゼって、どんなハゼ?
▲アカオビシマハゼ。写真は幼魚
アカオビシマハゼは琉球列島を除く日本の広い地域に分布する、ハゼ科チチブ属のハゼです。「チチブ」といえば淡水から汽水のテナガエビ釣りなどでお馴染みのハゼですが、このアカオビシマハゼは河口域から内湾の海域(磯や障害物のまわり)に生息しています。ハゼとしてはやや大きめで、全長10cm近くにまで育ちます。
体の模様の特徴としては、体側に2本の縦帯が入ることがあげられます。これにより河川にすむチチブとはだいぶ異なった雰囲気です。ただし、同じ個体でも体が黒っぽくなり体に薄い横帯が入ることもあります。
チチブ属とは
▲河川の中~下流や湖沼に多いヌマチチブ。静岡県で採集
アカオビシマハゼが含まれるチチブ属はアジア周辺に生息する種で、日本からは7種が知られています。歯の形が独特で、3尖頭の歯という共通の特徴をもっています。日本産のチチブのうち、ヌマチチブとチチブは淡水の釣りでも釣れるのでお馴染みの方も多いでしょう。琉球列島にはチチブやヌマチチブはおらず、その代わりにナガノゴリが生息しています。どの種も河川から河口周辺、内湾に生息しています。
近縁種シモフリシマハゼ
アカオビシマハゼは体にある縦列鱗数が54~60と多く、体側に明瞭な縦帯があるなどの特徴をもちます。同じような特徴をもつものにシモフリシマハゼという種がいますが、この種は河川の河口域などに多く(アカオビシマハゼは沿岸から内湾)、臀鰭に赤色の縦線がない(アカオビシマハゼではある)こと、頭部腹面には細かい白色斑が密集するなどの特徴があります。またどちらの個体も体側に不明瞭な横帯が出ることがあります。
外来生物としてのアカオビシマハゼ
アカオビシマハゼの分布域は北海道小樽から九州までの日本海・東シナ海沿岸、青森県から九州までの太平洋岸、瀬戸内海にまでおよび、海外では中国、朝鮮半島、中国、香港、台湾に見られます。しかし、このほかオーストラリアや米国の西海岸にも定着しているようです。同様にマハゼやショウキハゼも移入されていますが、これは船のバラスト水の中に入るなどして分布が広げられたというもののようです。外来生物は移入先でどんな影響を引き起こすかわかりませんが、本種の場合大きいものが小魚を捕食してしまう可能性があります。もちろん、飼育できなくなっても海へ逃がすことなどないようお願いいたします。
アカオビシマハゼ飼育に適した環境
水槽
小型水槽で終生飼育することができますが、初心者であれば45cm水槽が望ましいでしょう。できれば60cm水槽が水質が安定しやすいためおすすめです。なお筆者が本種の飼育に使用していたのは35cm水槽の底面に穴をあけてオーバーフロー化したものです。
水質とろ過システム
アカオビシマハゼはほかの魚よりも水質悪化には強いですが、それでもできるだけきれいな海水で飼育してあげたいものです。ろ過システムは小型水槽であれば外掛けろ過槽と外部ろ過槽の併用、60cm水槽ならば上部ろ過槽がおすすめです。オーバーフロー水槽ではほかのろ過システムよりも圧倒的なろ過能力を稼ぐことができるので飼育はずっと楽になるでしょう。サンゴ飼育のためのベルリンシステムなどでも飼育できますが、あまり似合いません。
水温
温帯性の魚ですが比較的高水温には耐性があるようで、25℃でも飼育することができます。ただ水温が高くなったり低くなったりでは、丈夫なアカオビシマハゼであっても病気になるおそれがありますので、できるだけ一定をキープしましょう。
飾り
アカオビシマハゼは縄張りをつくるため、複数飼育するのであれば飾りサンゴやライブロックなども入れてあげましょう。殺風景になりがちですが、タコツボのようなアクセサリーや塩ビパイプなどでもよいです。もちろん水中に沈めると有毒物質が溶出するおそれがあるものなど(金属製品など)はいけません。
アカオビシマハゼに適した餌
アカオビシマハゼは雑食性ですが、動物食性がやや強いようです。海ではエビなどの甲殻類、小魚、そのほか無脊椎動物などを捕食しますが、水槽で飼育していれば早いうちに配合飼料に餌付くので楽です。ただアカオビシマハゼの体サイズにより餌を使い分ける必要はあります。たとえば幼魚ではおすすめ配合飼料のメガバイトのMサイズは食べられませんし、大きく育ったらSサイズでは小さくなってしまいます。
どうしても食べないようであれば冷凍のホワイトシュリンプなどを与えて餌付けする必要があります。ただ、このような餌は水質を悪化させるおそれがあるため注意が必要です。
アカオビシマハゼをお迎えする
アカオビシマハゼは観賞魚店で販売されていることはほとんどなく、欲しい場合は自分で採集するほかありません。磯採集では波浪が打ち付ける荒磯よりも内湾に面した波の穏やかな磯のほうが多く見られるでしょう。
釣りで採集する場合はオキアミを小さなハリにつけ、眼の前に落としてやれば食うことが多いです。ただし針を飲み込んだ場合は飼育には向きません。また幼魚は岸壁についていることも多く、網で掬って採集してもよいでしょう。ただしカキ殻の多いところでは怪我しないように注意します。またカキ殻が多いところでは網もぼろぼろになりやすいです。
アカオビシマハゼとほかの生物の相性
アカオビシマハゼは丈夫で飼育しやすい魚でありますが、気性が荒いのでほかの魚や甲殻類との組み合わせは注意が必要です。
ほかの魚との相性
▲アカオビシマハゼ(奥)が大きくなるとミナミイソハゼ(手前)が捕食されるおそれあり
アカオビシマハゼはほかの魚を捕食してしまうことがあります。とくにイソハゼの仲間などの小型種とは組み合わせないようにした方がよいでしょう。写真のようなミナミイソハゼとの混泳では、アカオビシマハゼが小さいうちであればまだよいのですが、大きくなるとアカオビシマハゼにミナミイソハゼが捕食されることがあります。どちらかを別水槽で飼育するしかありません。場合によっては共食いをするおそれもあります。
自分よりも大きなヤッコの仲間、大きめのハナダイ、ベラ、メジナなどは幼魚のうちをのぞけば問題ないことが多いです。逆にアカオビシマハゼのようなハゼの仲間は細身の体で、ミノカサゴの仲間やウツボの仲間などにとってはよい餌になってしまいますので、一緒に飼育してはいけません。
サンゴ・無脊椎動物との関係
サンゴには無害であり組み合わせることもできますが、あまり似合いません。またイソギンチャクの仲間やウチウラタコアシサンゴといった捕食性がつよい無脊椎動物はアカオビシマハゼを襲って食べてしまうこともあるので組み合わせない方がよいでしょう。無脊椎動物のうち、小型のエビやカニなどはアカオビシマハゼの餌になってしまうおそれがあるため望ましくありません。一方、大型のイセエビ類、カニ、ヤドカリなどはアカオビシマハゼを襲うことがあるため組み合わせられません。小型であってもオトヒメエビはハゼなど動きの遅い魚を襲うことがありますので、組み合わせないようにしましょう。
アカオビシマハゼ飼育まとめ
- 淡水の釣りでお馴染みのチチブと同じ仲間の海産ハゼ
- 体側の縞模様が特徴だが状態によっては消えることも
- 丈夫で米・豪でも外来種として定着
- 水槽は45~60cmで十分
- ろ過槽は上部ろ過槽。外部ろ過槽なら外掛けろ過槽と併用すること
- 水温は25℃
- 飾りサンゴなどで隠れ家をつくる
- 餌食いもよく配合飼料もすぐ食べる
- 観賞魚店で販売されることはなく自分で採集するしかない
- 口に入る魚や甲殻類は食べてしまうことも
- 逆に大型甲殻類には注意
- サンゴには概ね無害だがあまり似合わない