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2020.10.23 (公開 2020.10.23) 海水魚の買い方

海水魚を購入するなら幼魚・成魚どちらが飼育しやすい?

海水魚店ではさまざまな魚が販売されています。成魚だけでなく、幼魚も販売されていることがあります。魚、とくにヤッコなどについては雑誌や書籍などで「幼魚のうちから飼うとよい」といわれる魚もいますが、それはどのような理由があるのでしょうか。そして、幼魚から飼育するメリット・デメリットについてはどのようなものがあるのかをご紹介します。

幼魚・成魚どちらから飼育すべきか

幼魚で購入するメリット


▲タテジマキンチャクダイの幼魚

幼魚のほうがよいとされるのはキンチャクダイ科、ヤッコの仲間です。ヤッコといえば、幼魚の色彩や斑紋が成魚と大きく異なる特徴があります。とくにサザナミヤッコやタテジマキンチャクダイなどのサザナミヤッコ属、クイーンエンゼルなどのホラカンタス属で顕著です。小型ヤッコではあまり模様の変化はないのですが、大きな個体をそのまま小さくしたようなアブラヤッコやソメワケヤッコ、アカハラヤッコなどは非常にかわいいものです。中にはコガネヤッコのように目玉模様が入るようなものもいます。

またおおむね幼魚のほうが餌付きのよいことが多いといえます。小さいのは好奇心旺盛でサンゴ岩やライブロックをつつきまくっていますが、配合餌にも早く慣れやすいからです(チョウチョウウオにも同様のことがいえます)。ただし体力があまりないので、その点については注意が必要です。また、シマヤッコやスミレヤッコといった種類は神経質で混泳相手によっては餌付かないこともあるので、少なくとも小さいうちは単独で飼わなければなりません。

このほかスズメダイの仲間やベラの仲間なども成長するにつれて斑紋や色彩が変化します。しかしスズメダイの仲間は成長するにつれ地味になることが多く、さらに性格もきつくなります。ベラの仲間も大きくなるのは注意が必要です。成長するとどんな風になっていくのか、わかっているアクアリストはよいのですが、そうでないとスズメダイが暴君と化し、地獄を見ることになる可能性もあります。

成魚、もしくは若魚で購入するメリット

▲タテジマキンチャクダイの成魚

基本的にやせやすい、もしくは臆病な魚ほど、ある程度の大きさのサイズで購入するのがよいでしょう。特にアイゴの仲間やナンヨウハギなどのニザダイ(ハギ)類はある程度のサイズに育ったのを購入するのが安心です。ただしナンヨウハギはある程度のサイズに育ち120cm水槽が欲しくなりますので、注意が必要です。

ヤッコの仲間は成魚や若魚でも入ってきます。成魚や若魚で飼うことの最大のメリットは、丈夫さ。これにつきます。ただしその分配合餌に対する餌付きは若干悪くなってしまいますし(種類によっては全く食わないことも)、小さい魚との混泳にも向かなくなります。

魚種別

ヤッコの仲間―幼魚は餌付きやすいが飼いやすいのは体力のある成魚

アブラヤッコ

アブラヤッコは大きいのは丈夫だが配合餌は食べず

ヤッコの仲間の小さい個体はかわいいからだけでなく、餌付きがよい、という理由で小さい個体が購入されることが多いのですが、あまりにも小さすぎるのはよくありません。ヤッコの幼魚は体力がなく、餌を切らすと痩せてしまいやすいからです。成長のため一日に何度か餌をあげたいからです。

逆に大きすぎるものは2,3日餌を切らしても痩せてしまうなんてことはないのですが、自然の海で食べていた餌に慣れてしまい、配合飼料に慣れにくいというデメリットもあります。マックスサイズに近いアブラヤッコは結局配合飼料は一切口にすることなく、アサリやエビのミンチなどを与えていました。小型ヤッコとしてはアブラヤッコのほか、ヘラルドコガネヤッコ、ソメワケヤッコ、イエローフィンエンゼル、エイブリーエンゼルはやや難しく、フレームエンゼルやアカハラヤッコ、フレームバックなどは比較的餌付きやすいといえます。

チョウチョウウオの仲間―幼魚はやせやすく難しい種は成魚でも難しい

▲チョウチョウウオ類の種ごとの特性も理解する必要がある

チョウチョウウオの仲間も小さいうちはやせやすいので頻繁に餌を与えなければなりません。潮溜まりで500円玉くらいのサイズのチョウチョウウオの幼魚を採集できますが、チョウチョウウオの仲間は飼育しているとすぐ背の肉がおちてしまいやすいです。チョウチョウウオの小さいものを海で観察していると、常に岩をつついています。つまり成長のために幼魚は多くの餌を要するのです。

チョウチョウウオの餌付けについてはその食性も深くかかわってきます。コクテンカタギやカスミチョウチョウウオ、ゾスター、ハタタテダイなどプランクトン食性の種類はそれほど餌付けは難しくないのですが、ウミヅキチョウチョウウオ、ミスジチョウチョウウオ、ミカドチョウチョウウオといった種類はサンゴのポリプを捕食するので難しくなります。とくにオウギチョウチョウウオ、ハナグロチョウチョウウオ、ハクテンカタギはもはや飼育困難といえるくらい飼育が難しいとされますが、ミスジチョウチョウウオやウミヅキチョウチョウウオなどは小さいものであればアサリから人工餌へ切り替えることもできます。

一方雑食性でも難しいものはいます。通称「ナミチョウ」とよばれるチョウチョウウオは毎年磯で採集できますが飼育は決して簡単とはいえません。意外と神経質でほかの魚との混泳には注意します。ほかハシナガチョウチョウウオ(チェルモン)やフエヤッコダイも雑食性で餌付きますが長期飼育となると難しいです。

スズメダイの仲間―幼魚はかわいいが成魚の姿も忘れずに!

▲クロスズメダイの幼魚。幼魚はかわいいのだが…

スズメダイの仲間は飼育しやすい種が多いのですが、成魚と幼魚で大きく模様が変わるという特徴を持っています。そのため、色や模様の変化を楽しむことができるのですが、大体黒や茶褐色といった地味な色彩になってしまうのです。しかも、海水魚店の店員でさえも、スズメダイが大きくなるとどんな色彩になるのか知らなかったりします。ある程度図鑑などで、そのスズメダイは大きくなるとどんな色彩になるのか調べてから飼育にのぞむようにしましょう。また、スズメダイの仲間は成長すると性格がとてもきつくなることが多いので注意します。もちろん、スズメダイがきれいな色ではなくなったり、気性が激しいからといって海へ逃がしてはいけません。

ベラの仲間―幼魚から飼うと成長と斑紋の変化が楽しめる

▲トカラベラの幼魚

▲やや大きくなった個体

ベラの仲間も成魚と幼魚で大きく異なります。また雌雄でも色彩が大きく異なり、幼魚の模様・色彩から雌の模様・色彩へと変わっていきます。雌はやがて雄に性転換する様子を観察できるかもしれません。飼育下でも成長する楽しみを味わえますが、ツユベラやカンムリベラといった種類は大型になり、とくにカンムリベラはメーターサイズになるので、購入する前にどのくらいのサイズにまで成長するのか、よく調べておきましょう。

またベラの仲間の習性をよく知ることも大切です。オグロベラの仲間やカミナリベラの仲間など、臆病な種類もいて混泳向きでないのもいます。逆にモチノウオ類、タキベラなどは性格がかなりきつめでこれも混泳には不向きです。ベラの仲間はどの種もヤッコなどと比べると餌は食います。幼魚でも心配しなくてもよいでしょう(チューブリップの仲間は除く)。餌の量はやや多めにしておけば問題ないでしょう。

ブダイの仲間―小さいうちはこまめな餌やりが大事

▲アオブダイの幼魚と思われるもの(中央)

ベラ科とともにベラ亜目を形成するもうひとつのグループであるブダイ科の魚は、多くの種が藻類を主食とした雑食性という食性をもっています。ベラと異なり、幼魚期はやせやすいのでしっかりと餌を与えなければなりません。ブダイの仲間に限らず、アイゴ、ニザダイ、ヤッコ、カエルウオなど、藻類をメインに食う魚はやせやすい傾向にあるといえそうです。「海藻70」など専用フードをしっかり与えて太らせるようにしましょう。

ニザダイ・アイゴの仲間―幼魚はやせやすいので注意が必要

▲ヒフキアイゴの幼魚。小さいのは飼いにくい

▲ある程度育ち背中の肉がしっかりしたものがよい

ニザダイやアイゴは初心者にはある程度育った個体をおすすめします。ナンヨウハギの小さいのは海水魚店でよく販売されていますが、白点病になりやすく幼魚だと体力もないため、初心者に不向きです。ある程度育った個体を購入するほうがどのくらいの大きさにまで育つのかわかりやすいでしょう。アイゴの仲間は小さいのはぺらぺらにやせやすいため、こまめな餌やりが必須となります。初心者がアイゴの仲間を飼うなら、こちらもある程度育ったものが安心できます。

餌食いはアイゴ類やナンヨウハギ、キイロハギ系はおおむね良好ですが、クロハギ属の一部(シマハギ、ニジハギ、クログチニザなど)は最初は配合飼料を食べにくいといえます。とくにシマハギは意外なほど餌付けにてこずることも。しかもこれは幼魚・成魚関係ないので注意が必要です。海藻系のフード(海藻70など)や、生の海藻(ウミブドウなど)をあげるなどの工夫も必要です。

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ハナダイの仲間―幼魚・成魚それぞれに異なる難しさ

ハナダイの仲間はやせてしまいやすいので注意!

ハナダイの仲間も幼魚と成魚どちらの購入をおすすめするか、悩ましい仲間です。幼魚は食が細いためか、常に餌を多く与えないとやせて死んでしまうし、成長すると配合飼料をなかなか食べなくなることがあるからです。キンギョハナダイは丈夫で買いやすいといわれますが、それでもあまり小さいのはやせやすく飼育が難しいところがあります。ある程度育った、よく太った個体を購入するようにしましょう。

またパープルクィーンやハナゴイ、オオテンハナゴイといった種類は臆病であり、どうしても飼育が難しいことがあります。逆にバートレッツアンティアスは丈夫ではありますがおとなしめのハナダイとは飼えないほどきつい性格をしています。キンギョハナダイやスミレナガハナダイといった種もほかのハナダイ、特に小型種やハナダイの幼魚にとっては存在がプレッシャーとなることもありますので、注意が必要です。

ハコフグの仲間―幼魚はかわいいが購入はおすすめしない

ハコフグの幼魚

ハコフグの仲間は体が骨質の甲に覆われているという特徴があります。そのため海水魚店で泳いでいるハコフグがやせているか、そうでないかの判別がしにくいところがあります。その時点でもう初心者向けといえないところがあります。また幼魚は餌を食べるのも遅く、パフトキシンと呼ばれる毒を出して魚を殺すこともあるのでほかの魚との混泳も難しいです。ハコフグはできるだけ、ある程度大きいのを購入して単独で飼育したほうが安全ではありますが、いずれにせよ初心者には全くおすすめできない魚であることには変わりありません。

テンジクダイの仲間―種類や個体によって配合餌を食わないこともあり

▲大型個体はなかなか配合餌に餌付かないことも

テンジクダイの仲間は幼魚から成魚まで販売されていることがあります。キンセンイシモチ、マンジュウイシモチなど一部の種類は小さな稚魚が販売されていますが、このような個体はスレなどの傷に極めて弱いところがあります。大きな魚の存在はプレッシャーになり、逃げる過程でもスレ傷ができることがあります。このほか小さくても気が強いスズメダイ系は要注意です。

適切な環境下では餌は配合飼料などをよく食べてくれます。ただし釣りで採集された大きめの個体や、養殖されたプテラポゴンなどは最初のうちは配合飼料を受け付けないことがあります。その場合は動物プランクトンフードやイワシなどのミンチを与えるしかありません。そのような餌は水質の悪化を招きやすいので注意が必要です。

海水魚の幼魚と成魚どっちを買うべき?まとめ

  • 幼魚は成魚よりも餌付きやすいが体力がなくやせやすいので注意
  • 成魚は幼魚よりも体力があるが餌付きにくいことがあり性格もきついことが多い
  • ヤッコの仲間は小型個体のほうが餌食いはよい
  • チョウチョウウオの仲間は種類により餌付けが難しいことも
  • スズメダイは大きくなると色が黒っぽくなり、性格も荒くなる
  • ベラは幼魚雌雄で色が異なり変化を楽しめる
  • 藻類を食うブダイやアイゴ、ハギなどは幼魚だとやせやすい
  • ハナダイの仲間も幼魚だとやせやすい
  • ハコフグの幼魚は餌を食うのが遅く飼育しにくい
  • テンジクダイの仲間は成魚だと配合餌を食わないことも
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