2019.10.17 (公開 2019.02.20) サンゴ図鑑
キッカサンゴの飼育方法~ウスコモンサンゴとの違い・見分け方も紹介
キッカサンゴはイシサンゴ目ウミバラ科のハードコーラルです。薄い板状の形をしたものが多く、ウスコモンサンゴのように見える個体もいるのですが、ポリプの数が少なく、ひとつひとつのポリプはかなり大きいのが特徴です。
飼育はウスコモンサンゴよりも容易で、ある程度硝酸塩の蓄積には強いといえます。タバネサンゴやオオタバサンゴと同じく、ハードコーラルに初チャレンジという方におすすめのサンゴです。
ただし、魚やエビなどの食害に遭いやすいこと、毒性がやや強くほかのサンゴにダメージを与えたり、逆に強めの毒をもつサンゴからダメージを受けることがあるので注意が必要です。
キッカサンゴってどんなサンゴ?
▲ウスカミサンゴ属かもしれないもの。これもキッカサンゴとして販売されている
キッカサンゴはイシサンゴ目ウミバラ科のハードコーラルです。「キッカサンゴ」とひとくちにいってもバリエーションは豊富で、中には、コモンサンゴの仲間と間違えやすい種類もいますが、ポリプがやや大きく数が少ないことで見分けることができます。
また、おなじウミバラ科のサンゴであるウスカミサンゴの仲間も「キッカサンゴ」として販売されていることがあります。一方、リュウキュウキッカサンゴは、「キッカサンゴ」の名前がありますが、別科とされていることが多いです。いずれにせよキッカサンゴの仲間はナガレハナサンゴやオオバナ、スコリミアなどと比べるとマイナーなLPSともいえます。
▲ウミバラに近いサンゴとされる
カラーバリエーションは緑色や茶色、濃い赤色などが多く見られますが、ポリプの部位だけ色彩が異なるものも多いです。オーストラリアなどからはカラフルな個体が入ります。キッカサンゴはあまり人気がないのか、ほかのサンゴと比べると安価で購入することができますが、さまざまな色が合わさったレインボーカラーと称されるものはその中では高価です。また同じ科のサンゴにはウミバラなどもあり、飼育は容易といえます。
キッカサンゴ飼育に適した環境
水槽
じっくり飼育すれば水槽内でも大きく育つため、最低でも60cm、50リットル以上の水槽で飼育したいところです。大きい水槽であれば小型水槽と比べて水質が安定するので飼育しやすいといえます。
水質とろ過システム
比較的硝酸塩の蓄積には耐えられるサンゴです。どのようなサンゴであっても、硝酸塩など栄養塩の量はできるだけ少なく抑えたいものですが、抑えすぎてもいけないようです。ベルリンシステムがベストですが、強制ろ過システムでも上部ろ過槽・外部ろ過槽の併用であれば飼育可能です(スキマーがあればなおよい)。一方ゼオビットシステムなどはLPSには不向きです。これはLPSに必要な硝酸塩を取り除きすぎてしまうためです。
水温
基本的に25℃をキープします。やはり水温が上がったり下がったりではどんなサンゴであっても弱ってしまうおそれがあるためよくありません。
水流
強すぎず弱すぎずの水流を好みます。水流ポンプを複数使用したり、水流ポンプ用のコントローラーを使用してランダムな水流をつくるとよいでしょう。ただし共肉に直接強い水流があたるのもよくありません。ポンプから出た水の流れが水槽の壁面やガラス面に当たり、周囲に広がっていくような水流が好ましいでしょう。
照明
現在の主流であるLEDやT5蛍光灯などでも問題なく飼育できます。メタハラを使用するのであれば250W直下を避け、150Wが望ましいでしょう。ただしLEDライトであっても直接強すぎる光をキッカサンゴに当てると色が飛んでしまうこともあるようですので、置く場所には注意が必要です。また青色LEDを当てると光り輝くものもいます。
置き場所
▲キッカサンゴの裏面
キッカサンゴはミドリイシやショウガサンゴなどほど強い照明は必要ありませんが、好日性のサンゴなのである程度の光があたり、ほどほどの水流が当たる場所に置きます。
薄っぺらで水流や甲殻類の活動などによってひっくり返されることもあり、サンゴ専用の接着剤を用いてライブロックやサンゴ岩に接着します。
裏の形状が凹んでいるものはジェル状の接着剤ではくっつきにくいこともありますので、「コーラフィクスサーモフラグ」などお湯で溶かすタイプの接着剤や、「DDアクアスケープ」のようなパテタイプなど、厚く塗る接着剤が使いやすいかもしれません。
キッカサンゴの餌と添加剤
餌
▲ウスカミサンゴの仲間かもしれない個体。このタイプならオレンジ色の中に餌を与える
キッカサンゴの仲間はたまに餌を与えると調子を上げることができます。餌はスポイトやピンセットなどを用いて一つ一つのポリプに直接与えるようにします。ウスコモンサンゴなどのSPSと違って大きめのポリプを持っているため、給餌はとても楽です。
餌の種類はコペポーダなどの冷凍プランクトンフード、粉末フード、LPS用のペレットフードなどを与えます。給餌の間隔は1週間に1回くらいの間隔でよいでしょう。短すぎると消化不良を起こしたり、残り餌が水を汚すおそれがあるからです。
添加剤
▲キッカサンゴ飼育に必要な各種添加剤
キッカサンゴはハードコーラルですのでカルシウム、マグネシウム、ストロンチウムも添加したいものです。ほか、ヨウ素、微量元素も添加した方がよいでしょう。カルシウムやマグネシウムなどは専用のリアクターを使用するのがおすすめです。カルシウムリアクターにはKHを安定させる効果もあるため、より安定した環境で飼育できるからです。
キッカサンゴは水槽内で大きく成長させることも可能なサンゴです。水かえと添加剤でも成長させることはできますが、大きく成長させるのであればやはりカルシウムリアクターによるカルシウム供給や、KH値安定を行ったほうが有利といえるでしょう。
キッカサンゴをお迎えする
▲「リバイブ」で薬浴中のキッカサンゴの仲間
キッカサンゴは従来はインドネシアのものが主に流通していましたが、インドネシア産サンゴの輸出がストップした今、オーストラリア産のキッカサンゴの流通量が多くなったように思います。購入のポイントとしては色がうすいもの、一部骨格が露出しているもの、お店に到着してすぐのものなどは購入しないようにしましょう。もちろん、入荷してすぐの個体も購入しない方がよいでしょう。
また、キッカサンゴはLPSの仲間では比較的カットしやすいためかフラグにして販売されていることもあります。フラグサンゴを購入するときは、カットした傷が十分に塞がっているもの、一部骨格が露出していないもの、プラグの部分にひげ状、あるいはもやっとしたコケがついていないものを選ぶようにします。ひげ状のコケやもやっとしたコケがついているとサンゴを覆い尽くして殺してしまうおそれがあるからです。
もちろん、キッカサンゴを購入してもそのまま水槽には入れず、「コーラルRXプロ」や「リバイブ コーラルクリーナー」などのサンゴ洗浄用の薬を使用して薬浴をするようにします。
キッカサンゴと他の生物との関係
他のサンゴとの関係
キッカサンゴは毒性が強く、接触したサンゴにダメージを与えるとされていますが、ハナガタサンゴやセイタカイソギンチャク(カーリー)と接触することによりダメージを受けることもあるなど、ほかのサンゴとの接触にはそれほど強くない可能性もあります。
ただオオタバサンゴやコハナガタサンゴなどには接触することでダメージを与えることもあり、あまり近くに置かないようにするか、サンゴが動かないように接着剤でしっかりと接着する必要があります。
魚や無脊椎動物との関係
▲フシウデサンゴモエビ(サロンシュリンプ)は危険
キッカサンゴは魚やエビなどにつつかれやすいようです。我が家ではあまりサンゴをつつかないとされるヒトスジギンポなどにもつつかれてダメージを受けたことがありました。エビの仲間ではサロンシュリンプの類(フシウデサンゴモエビなど)などは本種の共肉をむしって食べてしまうこともあるようです。
チョウチョウウオやヤッコ、テングカワハギなどサンゴ食性が強い魚とはもちろん一緒にしてはいけません。ハゼやベラ(ポリプ食性のチューブリップなどはのぞく)、ハナダイ、クマノミ、バスレット、ハゼの仲間などとは問題なく組み合わせられます。
キッカサンゴ飼育まとめ
- ウミバラ科のハードコーラル
- 骨格が薄くウスコモンサンゴにも見えることがあるがポリプが大きく数が少ない
- 丈夫で飼育しやすくハードコーラル初チャレンジにもおすすめ
- 60cm以上の水槽で飼育する
- 硝酸塩の蓄積に強い。ベルリンシステムでも強制ろ過システムでも
- 水温は25℃で安定していることが重要
- 強すぎず弱すぎずの水流がほしい
- 250WメタハラやLEDの直下に配置しないほうがよい
- 薄い骨格のものは甲殻類によって落とされやすい。接着は必須
- 餌を与えたら調子があがる
- ハードコーラルなのでカルシウムやストロンチウム、マグネシウム、ヨウ素などを添加する
- 大きく成長させるならカルシウムリアクターがあった方が有利
- 色が薄いもの、骨格が露出しているものは購入を避ける
- フラグサンゴを購入するときはプラグにコケがついているもの、傷がふさがっていないものは避ける
- 毒性は強く接触注意
- チョウチョウウオやヤッコなど魚に食べられやすいので注意
- エビの中にも共肉をむしって食べるようなものがいる