砂に潜るベラの仲間・種類と飼育方法

砂に潜るベラの仲間・種類と飼育方法

前回は、ベラの仲間のうち、ニセモチノウオの仲間やタキベラの仲間などの「砂に潜らないベラ」を中心にご紹介してきましたが、今回はベラの仲間でも種類が多いキュウセンの仲間や、観賞魚として最近人気のススキベラ属やオグロベラ属の魚をご紹介します。

初心者にもお勧めのコガネキュウセンやパステルグリーンラスから、オグロベラの仲間などベテラン向けの種まで色も形もさまざまな種類がいます。




砂に潜るベラの種類

キュウセン類 Halichoeres & Parajulis

▲キュウセン類の代表種、コガネキュウセン

▲サンゴ礁の浅瀬で見られる普通種、ミツボシキュウセン

砂にもぐるベラの代表的なグループです。丈夫で飼いやすいものが多く、海水魚飼育初心者にもおすすめできます。また色彩も鮮やかな黄色や緑色などの綺麗なものが多いです。唯一の欠点は性格がやや強めということです。とはいえモンガラカワハギなどと異なり他の魚との混泳が困難というものではありません。

小型種が多く、60cm水槽でも長い事飼育できます。幼魚は地味な色彩のものが多いですが成長すると派手な色彩になる魚が多いです。

なお、キュウセンは現在ではParajulis属という、他のキュウセン類と別属とされていますが、外見ではなかなか別属のものとはわかりません。日本にはおよそ20種、世界ではおよそ80種がインド-太平洋の熱帯~温帯域、東太平洋、西大西洋の沿岸に生息しています。

キュウセン属 Parajulis 主な種 (★は日本に分布する種)

★キュウセン Parajulis poecilepterus (Temminck and Schlegel, 1845)

ホンベラ属 Halichoeres 主な種 (★は日本に分布する種)

★ホンベラ Halichoeres tenuispinis (Günther, 1862)

★コガネキュウセン H. chrysus Randall, 1981

★キスジキュウセン H. hartzfeldii (Bleeker, 1852)

★トカラベラ H. hortulanus (Lacepède, 1801)

★ミツボシキュウセン H. trimaculatus (Quoy and Gaimard, 1834)

★セイテンベラ H. scapularis (Bennett, 1832)

★カノコベラ H. marginatus Rüppell, 1835

★ムナテンベラ H. melanochir Fowler and Bean, 1928

★ムナテンベラダマシ H. prosopeion (Bleeker, 1853)

★ニシキキュウセン H. biocellatus Schultz, 1960

★ホクロキュウセン H. melasmapomus Randall, 1981

★イナズマベラ H. nebulosus (Valenciennes, 1839)

★アカニジベラ H. margaritaceus (Valenciennes, 1839)

★ホホワキュウセン H. miniatus (Valenciennes, 1839)

★クマドリキュウセン H. argus (Bloch and Schneider, 1801)

★ゴシキキュウセン H. richmondi Fowler and Bean, 1928

★アミトリキュウセン H. leucurus (Walbaum, 1792)

★カザリキュウセン H. melanurus (Bleeker, 1851)

★ツキベラ H. orientalis Randall, 1999

カナリートップラス H. leucoxanthus Randall and Smith, 1982 (インド洋)

レインボーラス H. iridis Randall and Smith, 1982 (東アフリカ、インド洋島嶼)

パステルグリーンラス H. chloropterus (Bloch, 1791) (西太平洋)

ペールラス H. pallidus Kuiter and Randall, 1995 (西-中央太平洋)

ティモールラス H. timorensis (Bleeker, 1852) (インド-西太平洋)

ウィードラス H. papilionaceus (Valenciennes, 1839) (西太平洋)

レッドヘッドラス H. rubricephalus Kuiter and Randall, 1995 (インドネシア)

セグロキュウセン H. cyanocephalus (Bloch, 1791) (西大西洋)

プディングワイフラス H. radiatus (Linnaeus, 1758) (西大西洋)

カンムリベラ属 Coris

▲ツユベラの成魚

西大西洋・東太平洋を除く世界中の暖かい海域に生息している仲間です。この属の魚はキュウセンの仲間と比べて大きくなるものが多く、全長1mを超える巨大なカンムリベラは夜間の睡眠時に砂の中に潜るベラの仲間としては最大のものです。このほか目も覚めるような赤色に白い模様がある幼魚が販売されているツユベラも成長すると劇的に変化します。インド-中央太平洋と東大西洋から25種ほどが知られ、そのうち日本からは5種が知られています。なお、「イエローコリス」という名で販売されているコガネキュウセンは「コリス」と名がありますがキュウセン類のグループです。

主な種 (★は日本に分布する種)

★カンムリベラ Coris aygula Lacepède, 1801

★ツユベラ C. gaimard (Quoy and Gaimard, 1824)

★シチセンムスメベラ C. batuensis (Bleeker, 1856)

★ムスメベラ C. picta (Bloch and Schneider, 1801)

★スジベラ C. dorsomacula Fowler, 1908

ブラックストライプトコリス C. pictoides Randall and Kuiter, 1982 (西太平洋)

クイーンコリス C. formosa (Bennett, 1830) (インド洋。ツユベラ似)

エレガントコリス C. venusta Vaillant and Sauvage, 1875 (ハワイ諸島)

ウェスタンキングラス C. auricularis (Valenciennes, 1839) (西オーストラリア)

サンダガーズラス C. sandeyeri (Hector, 1884) (豪州東岸、NZ、ロードハウ島)

メディテラニヤンレインボーラス C. julis (Linnaeus, 1758) (東大西洋、地中海)

カミナリベラ属 Stethojulis

▲磯で採集したカミナリベラの幼魚。雄の成魚は綺麗。

西太平洋からハワイ諸島、インド洋に生息するベラの仲間です。9種が知られ、日本には5種が分布しています。カミナリベラは温帯性で、夏から秋にかけてタイドプールでも採集することができます。その他の種類は沖縄からきたり、ごくまれに東南アジアから入ってくることもありますが、数は多くありません。比較的おとなしい種が多く、混泳には注意を払うべき仲間です。

主な種 (★は日本に分布する種)

★カミナリベラ Stethojulis interrupta terina Jordan and Snyder, 1902

★アカオビベラ S. bandanensis (Bleeker, 1851)

★オニベラ S. trilineata (Bloch and Schneider, 1801)

★ハラスジベラ S. strigiventer (Bennett, 1832)

★スミツキカミナリベラ S. maculata Schmidt, 1931

オグロベラ属 Pseudojuloides

インド-中央太平洋に広く分布するベラの仲間です。体が細くペンシルラスなどとも呼ばれています。やや臆病で気が強い魚との飼育は避けた方が無難です。世界ではインド-中央太平洋に生息しており(東太平洋産のものは別属に移された模様)、少なくとも15種と、まだ学名がついていないものが何種か知られています。日本では学名がついていないものを含め5種が知られます。

主な種 (★は日本に分布する種)

★オグロベラ Pseudojuloides cerasinus (Snyder, 1904)

★アオスジオグロベラ P. severnsi Bellwood and Randall, 2000

★スミツキオグロベラ P. mesostigma Randall and Randall, 1981

★オトヒメベラ P. sp. 1

★マイヒメベラ P. sp. 2

カレイドスラス  P. kaleidos Kuiter and Randall, 1995

ポリネシアンラス P. atavai Randall and Randall, 1981

ススキベラ属 Anampses

こちらもインド-中央太平洋に広く分布するベラの仲間です。12種がしられ、うち6種が日本に生息しています。ベラの仲間の雌の色はあまり派手ではないのですが、この属の種はどの種も雌雄ともに派手な色彩で、人気があります。よく輸入されるのですが長期飼育がそれほど易しいというものではありません。しかし美しい種類ですので、いつかは飼育してみたくなります。

主な種 (★は日本に分布する種)

★ブチススキベラ Anampses caeruleopunctatus Rüppell, 1829

★ニューギニアベラ A. neoguinaicus Bleeker, 1878

★ホシススキベラ A. twistii Bleeker, 1856

★ムシベラ A. geographicus Valenciennes, 1840

★クロフチススキベラ A. melanurus Bleeker, 1857

★ホクトベラ  A. meleagrides Valenciennes, 1840

ラインドラス A. lineatus Randall, 1972 (インド洋・紅海)

サイケデリックラス A. chrysocephalus Randall, 1958 (ハワイ諸島周辺)

ブルーアンドイエローラス A. lennardi Scott, 1959 (北西オーストラリア)

ブルーストライプオレンジタマリン A. femininus Randall, 1972 (南太平洋)

名称について

ニューギニアベラはあまり和名では呼ばれず、「ニューギニアラス」と呼ばれることが殆どです。海外産種の名前は安定しません。サイケデリックラスは、「レッドテールラス」、ブルーアンドイエローラスは「レナーズラス」、ブルーストライプオレンジタマリンは、「フェミニンラス」、または南太平洋に生息するため「サウスシーズラス」などと呼ばれることがあります。英語名は国、書籍によって変動が大きく、魚の名前はできるだけ学名をおぼえておくようにしたいものです。

ノドグロベラ属 Macropharyngodon

インド-中央太平洋に生息するベラの仲間です。世界で12種ほどが知られています。日本には3種が知られています。全長10cmほどの種が多く、60cm水槽で長く飼育できます。碁石模様や白い斑点などあるのが特徴で、体高があるところはススキベラの仲間にも似ています。

主な種 (★は日本に分布する種)

★ノドグロベラ Macropharyngodon meleagris (Valenciennes, 1839)

★セジロノドグロベラ M. negrosensis Herre, 1932

★ウスバノドグロベラ M. moyeri Shepard and Meyer, 1978

コーツラス M. choati Randall, 1978 (オーストラリア沿岸)

ジョフロワラス M. geoffroy (Quoy and Gaimard, 1824) (ハワイ、中央太平洋)

ディバイデッドラス M. bipartitus Smith, 1957 (西インド洋)

ブルースポッテッドラス M. cyanoguttatus Randall, 1978 (西インド洋)

シロタスキベラ属 Hologymnosus

▲シロタスキベラの稚魚

体が細く、体側に横線があることが多いです。小ぶりの幼魚が東南アジアから来ますが大きなものは全長30cmを超え、よく泳ぎ、大型水槽(120cmくらい)が必要なので注意が必要です。世界から4種が知られ、日本からは3種が知られています。

主な種 (★は日本に分布する種)

★シロタスキベラ Hologymnosus doliatus (Lacepède, 1801)

★ナメラベラ H. annulatus (Lacepède, 1801)

★アヤタスキベラ H. rhodonotus Randall and Yamakawa, 1988

サイドスポットロングフェースラス H. longipes (Günther, 1862)

テンス属 Iniistius

頭が角張り、第1背鰭が大きく伸びるのが特徴的です。砂に潜るベラの仲間としては丈夫で飼いやすいのですが、スズメダイの仲間との混泳ではぼろぼろにされる恐れがありますので、注意が必要です。世界で21種が知られ、うち日本では10種類が知られていてこのほかに学名や和名がついていないものもいます。日本にいてはテンスやホシテンスなどの種類は食用魚としても知られています。

主な種 (★は日本に分布する種)

★テンス Iniistius dea (Temminck and Schlegel, 1845)

★ホシテンス I. pavo (Valenciennes, 1840)

★ヒラベラ I. pentadactylus (Linnaeus, 1758)

★バラヒラベラ I. verrens (Jordan and Evermann, 1902)

★モンヒラベラ I. melanopus (Bleeker, 1857)

★ホシヒラベラ I. evides (Jordan and Richardson, 1909)

★ハゲヒラベラ I. aneitensis (Günther, 1862)

★ヒノマルテンス I. twistii (Bleeker, 1856)

★クロブチテンス I. geisha (Araga and Yoshino, 1986)

★ホウキボシテンス I. celebicus (Bleeker, 1856)

オビテンスモドキ属 Novaculichthys

英名で「ドラゴンラス」と呼ばれる格好いい、現在のところは世界で1属1種のベラです。幼魚の体の模様や鰭が特徴的で飼育したくなりますが、大きいものは30cmほどになるので小型水槽では飼育しにくい種です。成長することを考えると、終生飼育には90cmほどの水槽が欲しいといえます。相模湾以南の太平洋岸、インド-中央太平洋域、東太平洋にまでの極めて広い範囲にすみます。

主な種 (★は日本に分布する種)

★オビテンスモドキ Novaculichthys taeniourus (Lacepède, 1801)

オオヒレテンスモドキ属 Novaculoides

オビテンスモドキ同様1属1種のベラの仲間です。緑色が美しいベラで、英語でシーグラス(海草)ラスとも言われるようにアマモなどの海草が生える場所に生息しています。大きくても全長は15cmほどと小ぶりなので、オビテンスモドキよりも小型水槽での飼育に適しているかもしれません。

主な種 (★は日本に分布する種)

★オオヒレテンスモドキ Novaculoides macrolepidotus (Bloch, 1791)

砂に潜るベラ 飼育に適した水槽

水槽

種類によって異なるのですが、キュウセンの仲間の小型種などを単独で飼育するのであれば45cmでも飼育できないことはありません。60cm水槽であれば、多くの種類を飼育することが可能です。90cm~120cm水槽であれば、多くの種類のベラを飼育できますが、カンムリベラなどの巨大な種や、シロタスキベラの仲間などよく泳ぐタイプの種類は、もっと大型の水槽が欲しくなったりします。

ろ過槽

大型水槽ではオーバーフロー方式を採用することが望ましいですが、そうでなければ上部ろ過槽を使用するのが良いでしょう。ベラの仲間は大食いですので、しっかりとした生物ろ過が可能なろ過装置で飼育する必要があります。

フタ

この仲間は遊泳力が強かったり、ベラ同士や他の魚との争いで、勢い余って水槽の外に出てしまうこともあります。水槽にはしっかりふたをしたいものです。

砂はきめの細かいパウダー状の砂を敷いておきます。大きめのものはベラの種類によっては傷がつくこともあるので注意します。また、あまりにも厚く敷きすぎると、硫化水素が発生する恐れがあるので要注意です。小さなコガネキュウセンの場合は2~3cmくらい砂を敷くのが丁度よいといえます。

水温

普通の種類はカクレクマノミなど亜熱帯の魚を飼育するような25℃で十分ですが、やや深場に生息するカンムリベラ属の一部の種やオグロベラ属の魚、あるいは温帯性のホンベラやテンスなどはやや低めの22℃前後で飼育するのが良いでしょう。キュウセンなど温帯性の種の一部は、冬がくると砂の中で冬眠することが知られています。

砂に潜るベラ 適した餌

ベラの仲間はエビなどの甲殻類が大好きです。しかし、わざわざ海水魚店で肉食魚用に販売している生きたエビをわざわざベラにあげる必要はありません。勿論スーパーで販売されている冷凍のエビなどをメインに与える必要も全くありません。市販されている配合飼料で十分です。

ペレットの配合飼料を与えるときは粒のサイズに注意します。そのベラのサイズに合わせた粒の大きさを選ぶ必要があります。例えば大きめのテンスの仲間の場合は、粒がやや大きい配合飼料をあたえるようにします。フレーク状の配合飼料は浮いており、ベラも食べられますが浮かんでいる餌の争奪戦になりますので勢い余って飛び出す可能性もあります。フタはきちんとしておきます。

オグロベラやススキベラの仲間のように食が細いベラは冷凍のイサザアミやコペポーダ、イカのミンチなども与えるとよいでしょう。ただしこれをやると水が汚れる恐れがありますので水替えの間隔を短くするなどの対策をとり、硝酸塩やリン酸塩などの栄養塩を低く抑える必要があります。サンゴ水槽ではなおさら必要です。

他魚との混泳

他の魚の混泳は多くの魚と組み合わせられますが、似合う組み合わせとそうでないものがあります。オグロベラの仲間であればハナダイの仲間や小型のスズメダイの仲間(比較的大人しいスズメダイ属)、小型のバスレットの仲間とよくあいます。

気が強いキュウセンの仲間などはスズメダイの仲間の小型種やクマノミなどと組み合わせることもできます。ただしハタやモンガラカワハギ、大きめのスズメダイなどとはあまり組み合わせるべきではありません。メギスの仲間は似た形の魚を執拗に攻撃することがあるので気を付けます。

またキツネベラの仲間など強すぎるベラとの組み合わせは注意します。相性が悪いと、砂の中に潜ったままになってしまいそこから出てこないなんていうこともあります。砂に潜るベラ同士の関係ではキュウセン属、カンムリベラ属が強めで、カミナリベラ属などはおとなしい感じです。勿論、小型水槽にたくさんのベラを詰め込みすぎたり、巨大な種と小型の種を組み合わせたり、日本近海やオーストラリアに生息する温帯性の種を熱帯産の魚と組み合わせるということは無理というものです。

サンゴ・無脊椎動物との相性

サンゴとの飼育については注意点があります。夜間砂に潜って眠るので、大型のベラを飼育すると砂がかなり舞うようになってしまい、サンゴの上にかかったりすることもあります。砂の上に直接サンゴを置かないように注意したいものです。

もちろん甲殻類との関係もよくありません。ペパーミントシュリンプやキャメルシュリンプ、アシナガモエビなどは餌になってしまう恐れがあります。逆にオトヒメエビの仲間やその他大型の甲殻類との混泳では、逆にベラの方が餌食になってしまう恐れがあります。

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前回は、ベラの仲間を大まかにご紹介しましたが、今回は「夜間の休息時、砂に潜らないベラ」の仲間を色々とご紹介します。 ただ砂に潜らないベ...







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