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2020.12.07 (公開 2018.01.19) 海水魚図鑑

ニセモチノウオの飼育方法~混泳・餌の注意点

ニセモチノウオは、全長10cmにもならない小型種で、かつカラフルでかわいいベラの仲間です。しかし小型でありながら性格がやや強めなのでハゼなどとの混泳には注意が必要です。ここではニセモチノウオを上手く飼育するためのポイントをまとめました。

標準和名 ニセモチノウオ
学名 Pseudocheilinus hexataenia (Bleeker, 1857)
英名 Sixline wrasse
分類 スズキ目・ベラ亜目・ベラ科・モチノウオ亜科・ニセモチノウオ属
全長 8cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッド冷凍イサザアミ
添加剤 アイオディオン
温度 23~28度
水槽 45cm以上
混泳 同種同士はNG、気が弱い魚は注意
サンゴ飼育

ニセモチノウオってどんな魚?

▲ニセモチノウオ

モチノウオ亜科の代表種、モチノウオ属のアカテンモチノウオ

ベラの仲間は種類が豊富で500種以上が知られています。ベラ科はタキベラ亜科・カンムリベラ亜科・モチノウオ亜科・ブダイベラ亜科の4亜科に分けられることが多く、このほかにテンスの仲間を独立した亜科にしたり、ブダイ科やオーストラリア近海のオダクス科をベラ科の亜科にするなど研究者により意見が分かれています。

ニセモチノウオはその中のモチノウオ亜科に含められます。モチノウオ亜科のベラはベラ科で最大種であるメガネモチノウオやヤシャベラなどさまざまな種を含んでおり、小型種のハシナガベラやイトヒキベラ、クジャクベラの類はニセモチノウオ同様アクアリストにお馴染みの種ベラです。

ニセモチノウオに適した飼育環境

水槽

ニセモチノウオは小型のベラですので小さいキューブ水槽での飼育も可能ですが、小型水槽は水温や水質の変動が激しく安定しにくいため、もう少し大きめの45cm以上の水槽で飼育することをおすすめします。理想は60cm水槽です。

水質

ニセモチノウオは丈夫な魚ですので水質悪化にも比較的強いのです。もちろんアンモニアや亜硝酸が多量に検出されるような水槽では飼育してはいけません。

ろ過槽は上部・外部ろ過槽のどちらでもよいですが、外部ろ過槽は酸欠になりやすいという根本的な問題がありますので、上部ろ過槽と組み合わせたり、小型のプロテインスキマーと組み合わせるようにします。

水温

ニセモチノウオはサンゴ礁の比較的浅い場所(水深30m以浅)に生息する種類ですので、基本的に23~28℃、理想は25℃で飼育したいところです。高水温では魚の色があせるなどの影響が出やすいので注意しましょう。

めったに病気になることはないニセモチノウオですが、あまりに水温の変動が大きいと体調を崩して病気になることがあります。ヒーターとクーラーを使用して水温を一定に保ちましょう。

フタ

ニセモチノウオの仲間は他の魚と争うことがあり、その争いの際や何かに驚いたときなど、水槽から飛び出してしまうことがあります。フタはきちんとしておきましょう。

ライブロック・サンゴ岩

ニセモチノウオは夜間の睡眠時は砂に潜らないベラですので、砂を敷かなくても飼育することができます。夜間は岩やサンゴの陰で眠りますので、ライブロックやサンゴ岩を水槽に入れ、ニセモチノウオのベッドを作ってあげましょう。

ニセモチノウオの餌と添加剤

ニセモチノウオは餌付けやすく配合飼料をよく食べてくれるはずです。このほか甲殻類が大好物で、クリル(乾燥オキアミ)や、冷凍のホワイトシュリンプもよく食べます。ただし冷凍餌は水を汚すおそれがあり、栄養も偏りがちなので単用を避けて下さい。添加剤はヨウ素を添加してあげるとよいでしょう。ビタミン類は配合飼料にも含まれていますが、不安な場合は添加しましょう。

ニセモチノウオの入手方法

ニセモチノウオは南アフリカ~トゥアモトゥ諸島までのインド-中央太平洋の熱帯・亜熱帯域に広く分布していますが、観賞魚としてはフィリピンやインドネシア、たまに沖縄などから入ってきます。

選び方の基本は他の魚と同様です。口やそのまわりに傷がないこと、体表に傷があったり、赤くなっていないことなどです。泳ぎ方がおかしい個体や入荷してすぐの個体は避けた方が無難です。個体をしっかり見たり、お店の人に入荷日をたずねたりするようにします。入荷量は少なくないのでじっくり選びましょう。一旦水槽の水になじめば強健(すぎ?)で、病気にもなりにくいです。

ニセモチノウオの混泳

同種同士の混泳

ニセモチノウオは同種同士で争うことが多いため原則として、よほど大型の水槽でないかぎりひとつの水槽で1匹しか飼育できません。状態のよい巨大なサンゴ水槽や、大型ヤッコやハギの仲間など強い魚が入っている水槽では複数飼育も不可能ではないですが、小型水槽での同種同士の混泳はおすすめできません。

他の魚との混泳

小さい体のニセモチノウオですが、性格は結構きついので、他の魚との混泳、とくに温和なハゼなどとの混泳は特に注意する必要があります。またキュウセンやキツネベラの類、メギスの仲間など、よくにた体形の魚と争うこともありますので、これらの魚との混泳にも注意が必要です。

ヤッコやクマノミ、大型のハナダイ、チョウチョウウオなどとの混泳は可能です。大型魚の多数いる水槽でも堂々としています。ただ大型魚と言ってもハタやカサゴなど、ニセモチノウオを捕食するおそれがある魚との飼育はできません。

サンゴ・無脊椎動物との相性

ニセモチノウオは浅いサンゴ礁域にすむ魚なので、サンゴ水槽での飼育もよいでしょう。特にミドリイシなどのSPSが状態よく飼える環境で飼育すると美しい色彩になります。キクメイシやオオタバサンゴなどほかのサンゴとの飼育も可能ですがケヤリムシやハードチューブの仲間との飼育はつついてしまうおそれもありますのでおすすめできません。

またエビやカニなどの無脊椎動物は襲って食べてしまうこともあります。キャメルシュリンプやグラスシュリンプはもちろん、スカンクシュリンプなどのクリーナーも個体によっては捕食してしまうおそれがありますので注意が必要です。逆にニセモチノウオを捕食してしまうような大型の甲殻類とは一緒にしてはいけません。

ニセモチノウオと同じように飼育できる魚

ニセモチノウオ属Pseudocheilinusは南アフリカからハワイまでの海域に7種類が分布しています。この7種のうち海水魚店で見られるのは5種で、そのうち、ヒメニセモチノウオとヤスジニセモチノウオ、そしてニセモチノウオの3種はほとんど同じ方法で飼育することができます(同じ水槽で飼育できるというわけではありません)。

ヒメニセモチノウオ P. evanidus

ヒメニセモチノウオは体の線が非常に細く、眼の下に白い縦線が入るのが特徴です。名前に「ヒメ」とあり、温和そうな雰囲気ですが性格はニセモチノウオ同様に強いので他の魚との混泳は注意が必要です。インド-太平洋域に分布しており、日本でも四国など太平洋岸の磯で見ることができます。

ヤスジニセモチノウオ P. octotaenia

体側に8本の縦線があります。色彩には若干の変異があり、とくにハワイ産の個体は体側の縦線が明瞭で美しいもので別種かと思うほどです。写真の個体は東南アジア産。

基本的な飼育方法はニセモチノウオとほとんど同じですが、大きいものでは体長10cmを超えることもあるので大きめの水槽が必要で、性格もニセモチノウオと比べるとかなりきついので混泳には注意が必要です。大型魚との混泳が適しています。和名、学名、英名Eight-lined wrasse、いずれも体側の縦線にちなみます。ただし観賞魚店で「エイトラインラス」として販売されているものは、本種ではなくクジャクベラ属の魚のことを指すことが多いので注意が必要です。

日本にはこれら3種のほか、ヨスジニセモチノウオP. tetrataeniaとヨコシマニセモチノウオP. ocellatusの計5種が輸入されています。この5種はいずれも日本に分布しますが、観賞魚としては日本産はあまり見られず輸入されてくることが多いもので、それぞれフォーラインラス、オセレイトラスなどという名前で販売されています。ヨスジニセモチノウオは中央太平洋に広く分布しますが、主にハワイ便で入って来ていたもので、ハワイの規制により入荷が減ってしまうのは避けられないでしょう。

なお、世界にはこれらのほかP. citrinusP. dispilusという種がおりますが、前者はクック諸島やポリネシアに、後者はインド洋のモーリシャスやレユニオンに分布しており、めったに輸入されない種です。

ニセモチノウオの飼育まとめ

  • 成魚でも10cmほどの小型種
  • イトヒキベラやクジャクベラと同じモチノウオ亜科のベラ
  • 睡眠時は砂に潜らない
  • 小型水槽でも飼育可能だが、初心者は45cm以上の水槽で飼育したい
  • 上部フィルターを使用するとよい
  • 水温は23~28℃で安定していることが重要
  • 飛び出し注意。フタはしっかり
  • 配合飼料にすぐに餌付く。添加剤はヨウ素を添加したい
  • 口や体表に傷があったり、泳ぎ方が変な個体は避ける
  • 基本的にひとつの水槽では1匹しか飼えない
  • ハゼの仲間など温和な魚、体形が似ている魚は要注意
  • 大型ヤッコやチョウチョウウオと一緒に飼育できる
  • 甲殻類は大好物

2018.09.10 (公開 2018.01.16) サンゴ図鑑

シャコガイの飼育方法~難易度は高く光と水質が重要!

シャコガイは、サンゴではないもののサンゴと同じように飼育できる無脊椎動物のひとつです。

アサリやホタテなどと同様二枚貝ではありますが、外套膜に褐虫藻を共生させ光合成をすることや、清浄な水を好むことから、サンゴ、それもミドリイシなどと同じレベルの水質が求められます

飼育がやや難しく初心者向けではありません。このシャコガイを上手く飼育するためのポイントを紹介します。

シャコガイってどんな貝?

▲干潮時にできる潮溜まりで見られたシャコガイ

シャコガイはシャコガイ科の貝の総称です。熱帯から亜熱帯の珊瑚礁域に生息するアサリやホタテガイなどと同じ二枚貝の仲間です。

シャコガイ科の貝は殻長が30cmを超える大型種も多く、二枚貝の仲間では世界最大種であるオオシャコガイもこの仲間の貝です。カラフルな色彩の外套膜を持つものが多く、観賞用として人気があります。

シャコガイと他の貝の決定的に違うところ

二枚貝も他の生き物と同様にエネルギーを得て生きていく必要があります。多くの二枚貝は海水中の有機物やプランクトンを餌にしていますが、このシャコガイの仲間は、外套膜に褐虫藻を共生させて光合成で生成されたものを摂取してエネルギーのほとんどを得ています。

マリンアクアリウムで飼育される二枚貝の仲間にはミズイリショウジョウガイ、ヒオウギガイ、トサカガキ、フレームスキャロップなどがいますが、シャコガイの飼育方法はこれら他の二枚貝の仲間より、サンゴの仲間に近いといえます。

シャコガイの種類

観賞用として出回るものの多くがヒメジャコやシラナミガイで、とくに小型種で鮮やかな色彩のヒメジャコがもっともよく販売されています。シラナミガイやヒレジャコガイといった種はヒメジャコと比べて大型になります。

ヒメジャコガイ

琉球列島の浅瀬でもよくみられるシャコガイの仲間です。美味な種類なので沖縄では養殖も盛んに行われており、そのため海水魚専門店ではもっともよく見られるシャコガイの仲間といえます。

シャコガイの仲間でも小型種であるため比較的小型の水槽でも飼育できますが強い光ときれいな水が必要です。

ヒレジャコガイ

貝殻に小さな突起がありほかのシャコガイの仲間とは容易に区別できます。ヒメジャコよりもやや深いところに多いようで比較的少ない光量で飼育することができますが、ヒメジャコのように青っぽい派手なカラーの外套膜をした個体は少ないです。沖縄では食用となる貝で養殖もされています。

ヒレナシシャコガイ

西~中央太平洋のサンゴ礁に生息するシャコガイの仲間で、色彩的には外套膜に細い線が入るものが多く独特な種です。大きいものでは殻長50cmを超え、オオシャコガイに次ぐ巨大なシャコガイです。残念ながらあまり海水魚店に入荷することがない種です。

シラナミガイ・トガリシラナミガイ

シラナミガイは別名ナガジャコガイとも呼ばれているように、やや細長い形の殻をしています。外套膜の色はメタリックグリーンや濃い青色、茶色など豊富です。殻長30cmほどになり、ヒメジャコと比べるとやや大きくなる種類です。

最近シラナミガイと別種とされたトガリシラナミガイは外套膜のヒダの数が多く、シラナミガイにある線上の縁取り斑紋がないというのが特徴のようですが、ヒダの数は成長により異なるようです。鮮やかな模様をもちますが、美しい個体はとても高価です。

シャゴウガイ

シャコガイ科にはシャコガイ属のものの他に、シャゴウガイというのがいます。殻の形はシャコガイとは大きく異なっていますが、これも飼育の基本的なことはシャコガイと変わりません。ただしこの貝はシャコガイと違って砂底にいることが多い種類です。

シャコガイに適した飼育環境

シャコガイはミドリイシなどのSPSが飼えるレベルの水質が求められ、飼育難易度が高いものとなっています。

水槽

シャコガイの仲間は清浄な水質を好むので、水質が悪化しにくい、なるべく大きな水槽で飼育したいものです。

特にヒレジャコやヒレナシシャコガイなどのような、比較的大きくなる種類を飼育するなら、大型の水槽が必要になります。ベテランであれば小型のヒメジャコを小型水槽で飼育することもできます。

水質と水槽システム

硝酸塩がごくわずかに検出される程度の非常に清浄な水を好みます。簡単に言えば、ミドリイシに代表されるSPSの仲間を飼育できるようなレベルの水質が理想です。

水槽システムはろ材をもちいた飼育システムだと硝酸塩を極限まで下げるのは難しいので、ベルリンシステムに代表されるナチュラルシステムなど栄養塩を低レベルに抑える水槽システムが理想だといえます。

水流

水流は必要ですが、強すぎるのはダメです。外套膜がめくれてしまうような強すぎる水流が直接当たるのを避けます。

照明

シャコガイはほかの二枚貝と異なり光合成をしますので、照明は水質の次に重要となります

従来はメタルハライドランプ150~250W、一部の種は蛍光灯多灯でも飼育可能というものが多かったのですが、現在はハイパワーのLEDが主流です。

とくに強めの光で飼育したいのはヒメジャコです。この種類は極めて浅い場所に生息し干潮時に水から露出してしまうような場所にも見られるほどです。つまり、太陽光が直接ガンガン当たるような場所に生息しているため、当然強い光が必要になるわけです。次に強い光を欲しているのがシラナミガイです。ヒレジャコはヒメジャコやシラナミガイよりも比較的深い場所にいるようで若干弱い光でも飼育可能です。

置き場所

▲サンゴ岩に穴をあけてその中に潜んでいる

シャコガイの外套膜には毒がないので、毒性の強いサンゴやイソギンチャクなどと触れないように注意します。また海水魚店での水槽では砂の上においてあることも多いのですが、砂の上においておくと、ウミケムシなどに襲われてしまうことがありますので避けたほうが無難かもしれません。

ライブロックの上においておくと、岩を溶かして穴をあけ、その中に入り込むこともあります。

シャコガイの餌と添加剤

シャコガイには餌は不要とされており、多くの飼育書でもそのように書かれていますが、たまに植物プランクトン(フィトプランクトン)を給餌してあげるのもよいでしょう。実際にいくつかのメーカーからシャコガイ用の餌が販売されています。

添加剤はカルシウム・ストロンチウム・マグネシウム・ヨウ素・微量元素を供給してあげるとよいでしょう。光合成をおこなうので鉄分も必要になりますが、鉄分の過剰な添加はコケの大発生にもつながりますので、鉄分の含まれている微量元素の添加が安心です。カルシウムは添加剤を用いて添加するだけでなく、カルシウムリアクタを使用する方法もあります。

もうほとんど二枚貝というよりもサンゴ、それもハードコーラルに近い飼育方法と言えます。

シャコガイの選び方

写真のように入水管を大きく開きすぎているような個体は避けた方がよいとされています。また外套膜の色が妙に薄くなっているものもだめです。

入荷してすぐの個体、外套膜が傷ついているような個体も選んではいけません。

シャコガイの殻に小さな巻貝がついていないかどうかもよくチェックすべきです。このような貝はシャコガイに寄生しており、見つけ次第水槽から取り除く必要があります。夜行性の貝なので、深夜他の魚が寝静まった際に水槽を照らして探してみましょう。

シャコガイと他の生物との相性

魚・無脊椎動物との相性

▲フグやチョウチョウウオとの飼育は禁物

チョウチョウウオや大型ヤッコ、フグやベラなどはシャコガイをつついて捕食してしまうおそれがあるためあまり適していません。小型ヤッコは大型ヤッコほど突かないのでなんとか一緒に飼育できます。シャコガイとの飼育に向いているのは、クマノミをふくむスズメダイ類、ハナダイ類、ハゼ、カエルウオ、テンジクダイの仲間などです。

甲殻類はシャコガイを食べてしまうものがいるので注意します。このほかにウミケムシの仲間もシャコガイを捕食することがありますので見つけたら取り除くようにします。

サンゴとの相性

▲毒が強いサンゴの近くに置かない

シャコガイはかなり強い光と綺麗な水を必要とするため、SPS、つまりミドリイシやコモンサンゴなどと一緒に飼育したいサンゴです。

イボヤギなど水を汚す陰日性サンゴとの飼育はあまり向いていません。シャコガイは毒がなく、ナガレハナサンゴなどのように強い毒をもつサンゴやイソギンチャクなどと触れないようにする必要があります。

シャコガイの飼育まとめ

  • 二枚貝の仲間だが、外套膜に褐虫藻を共生させて光合成をする
  • どの種も飼育はやや難しく、清浄な水が必要
  • ヒメジャコは小型、外套膜が鮮やかな青いものも
  • シラナミガイも美しい色彩で人気がある
  • ヒレジャコは大型、やや弱めの光でも飼育可能
  • ヒレナシシャコガイは殻長50cmを超える大型種
  • 餌は専用のフィトプランクトンフードを与える
  • ハードコーラル飼育と同様の添加剤が必要
  • 寄生している小さな巻貝に注意
  • 入水管を大きく広げている、色が妙に薄い、外套膜が傷ついているものはだめ
  • フグやチョウチョウウオなどとの飼育は不可
  • ウミケムシに襲われることもあるため砂の上に置かない
  • 他のサンゴと接触するようなことは避ける

2018.09.14 (公開 2018.01.14) 海水魚図鑑

ニチリンダテハゼの飼育方法~共生・餌・混泳の注意点

ニチリンダテハゼはダテハゼ属のハゼで、大きく丸い背鰭が特徴的な種類です。

ダテハゼの仲間はテッポウエビと共生することで知られ、丈夫で飼育しやすく、初心者でも水槽で共生を観察することができます。ここではニチリンダテハゼをうまく飼育するためのポイントをまとめました。

標準和名 ニチリンダテハゼ
学名 Amblyeleotris randalli Hoese and Steene, 1978
英名 Randall’s prawn-goby
分類 スズキ目・ハゼ亜目・ハゼ科・ハゼ亜科・ダテハゼ属
全長 10cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッド
温度 23~25度
水槽 45cm以上
混泳 他の共生ハゼ、気が強い魚とは注意が必要
サンゴ飼育

ニチリンダテハゼってどんなハゼ?

ニチリンダテハゼと他のダテハゼの違い

ダテハゼ属はインド-太平洋の熱帯・亜熱帯に多く生息するハゼの仲間で、未記載のものを含め40種以上が知られており、どの種も砂地でテッポウエビ類と共生する、いわゆる「共生ハゼ」のいちグループです。

このニチリンダテハゼは大きくて丸い第1背鰭を持ち、その中に白く縁どられた黒色斑があるため、ほかのダテハゼの仲間とは容易に見分けることができます。また体にはほかのダテハゼと同じく橙色の横帯があります。この横帯のうち最後の1本が尾鰭の基底にあるのも特徴です。

ニチリンダテハゼの飼育に適した環境

水槽

45cm以下の水槽での飼育も可能ではありますが、他の魚や水質の変化にうるさいサンゴの仲間と飼育するのであれば、60cm以上の水槽で飼育するのが理想的です。ニチリンダテハゼは全長10cmほどになり、この仲間としては大きくなる種ですので、その意味でも大きめの水槽で飼育したほうがよいかもしれません。

水質

ある程度硝酸塩の蓄積に耐えられるのですが、できるだけきれいな水で飼育してあげたいものです。外掛け式ろ過槽や外部ろ過槽を単用しただけでは上手く飼育しにくいので、これらふたつのろ過槽を組み合わせるとか、あるいは酸素がよくろ過バクテリアに供給される上部ろ過槽などを用いるのもよいといえます。

水温

水温25℃でも飼育可能ですが、本種は水深15~50mと、ダテハゼの仲間としてはやや深場に生息する種ですので、低めの23℃ほどで飼育するのもよいでしょう。もちろん水温が一定しない、すぐ上がったり下がったりするようではハゼも病気になってしまうおそれがありますので、よくありません。

フタ

本種に限らず共生ハゼは水槽から飛び出してしまうことがありますので、飛び出しへの対策が必要です。水槽にしっかりガラスふたをしておくことはもちろん、できれば小さな隙間もプラスチック板で埋めるようにしたいものです。

テッポウエビとの共生

ニチリンダテハゼと共生するニシキテッポウエビ

ダテハゼの仲間を飼育する上での最大の楽しみは「テッポウエビとの共生」です。ただし、テッポウエビであればどんな種類でもニチリンダテハゼと共生してくれるわけではありません。海中ではニシキテッポウエビやコシジロテッポウエビなどのテッポウエビと共生しているようです。これらの種類は海水魚店でもよく販売されており入手は容易といえます。

テッポウエビを選ぶときのポイントとしては、体が傷ついていないか、ハサミや脚が多く欠損していないかなどがあげられます。ハサミや脚は再生しますが、欠損が多いと再生するのに時間がかかることもあります。

底砂

ニチリンダテハゼの飼育において、特にテッポウエビとの共生を楽しむのであれば砂は必須です。全部パウダー状の砂を敷くのではなくというよりは、粒の大きさの異なる砂を敷いてあげるとテッポウエビが巣を作りやすくなるのでおすすめです。

ニチリンダテハゼの餌と添加剤

ニチリンダテハゼはよほど状態が悪い、あるいは他に強い魚が水槽内にいて怯えているのでなければすぐに配合飼料を食べてくれるはずです。

おすすめの餌は粒状の沈降性配合飼料です。フレーク状や軽い粒状の餌だと沈みにくい、あるいは沈むスピードが遅いので底の方にいるハゼの仲間には食べにくかったりします。また浮かんでいる配合餌を食べようとして水槽の上の方にいると何かに驚いて飛び出し死んでしまうこともあります。

そしてテッポウエビとの共生を楽しみたいのであればヨウ素を水槽に添加するようにします。甲殻類はまれに脱皮不全を起こして死んでしまうことがありますが、これの原因のひとつはヨウ素不足にあるともいわれています。またヨウ素は魚にも有用な成分であるので、添加してあげましょう。

重要な微量元素であるヨウ素ですがプロテインスキマーを使用していると水槽から取り除かれやすいため、定期的な添加が重要です。

ニチリンダテハゼを入手する

ニチリンダテハゼは、同属のクビアカハゼなどと比べ分布範囲は狭く、西太平洋の熱帯域にのみ分布します。日本においては奄美大島や伊江島、八重山諸島などで観察されています。観賞魚としてはフィリピンやインドネシアなどの東南アジアから入ってきます。

できるだけ入荷してすぐの個体は購入せず、1週間ほどしてから購入するようにするとよいでしょう。体や鰭に傷がないか、泳ぎ方がおかしくないかなど、購入する前に販売されている個体をよく観察するようにします。基本的には丈夫な魚であり、一旦水槽になれれば病気の心配はあまりしなくてよいでしょう。

ニチリンダテハゼと他の生物との相性

共生ハゼとの混泳

▲争いで鰭がぼろぼろになることも

ニチリンダテハゼはほかの共生ハゼよりも大きくなり、気が強いので狭い水槽でほかの共生ハゼと混泳することはおすすめしません。

どうしてもほかの共生ハゼと混泳したいときは最初に別の共生ハゼを飼育し、そのハゼが慣れたら本種を入れるようにするとよいでしょう。ただし、小型のヒレナガネジリンボウなどの種類は本種に駆逐されてしまうおそれもあります。観賞魚店では3cmくらいの可愛いサイズの個体と他の共生ハゼを同じ水槽に入れて販売していることがありますが、大きくなるにつれて気が強くなるので注意しなければなりません。

他の魚との混泳

▲メギスの仲間は気が強い。混泳注意

ダテハゼ属の魚としてはやや強めな性格の種であり、小型ヤッコや温和なスズメダイ、テンジクダイ、カエルウオ、ハナダイの仲間などとの混泳は可能です。遊泳性のハゼを飼育するとテッポウエビとハゼが共生している巣穴に居候する様子を観察することができます。

しかしメギスや大きなスズメダイ、ハギなどあまりにも気が強い魚と混泳すると、自慢の大きな背鰭をぼろぼろにされてしまうおそれがありますので、注意が必要です。特に隠れる場所が無かったりするとこのようなことがおこるおそれがあります。大きなベラやハタ、バスレットの仲間などはニチリンダテハゼやテッポウエビなどを捕食するおそれもあり混泳は不可です。

サンゴ・無脊椎動物との相性

サンゴ水槽でも飼育可能ですが、テッポウエビと共生させると、砂を掘ってサンゴをひっくり返してしまうおそれがあります。サンゴ岩やライブロックをしっかりと組み、サンゴは専用の接着剤で岩組に接着させましょう。

イソギンチャクの仲間は種類によってハゼなどの魚も捕食することがあります。動きが遅めのハゼやカエルウオの仲間は特に捕食されやすいといえます。ひとつの水槽で「イソギンチャクとクマノミの共生」と、「テッポウエビと共生ハゼの共生」を楽しむことは絶対無理ということはないようですが、注意が必要です。

ニチリンダテハゼの飼育まとめ

  • やや大きくなり気が強い。大きめの水槽で
  • ニシキテッポウエビやコシジロテッポウエビと共生する
  • 水温は23~25℃で安定していることが重要
  • 飛び出すことがあるのでふたはしっかり
  • 餌は沈降性のペレットがよい
  • テッポウエビを上手く飼育するためにヨウ素を添加
  • 丈夫だが、入荷してすぐの個体の購入は避ける
  • 他の共生ハゼとは争うが、他の小型魚とは混泳できる
  • メギスや強いスズメダイなどとの混泳は注意。肉食魚との混泳は不可
  • サンゴとの飼育は可能だがレイアウトが崩れないよう注意
  • イソギンチャクとの飼育は避けたい

2020.01.30 (公開 2018.01.10) 海水魚図鑑

マガキガイの飼育方法~底砂の掃除・コケ対策に

サンゴを飼育するためには強い光が必要です。しかし強い光を当てると水槽のガラス面、ライブロックやサンゴ岩、そして砂にコケが生えてしまいます。コケは多くの場合有害というわけではないのですが、見栄えが悪くなるため、早めに水槽から取り除くようにしたいものです。

サンゴ砂に生えたコケの除去、あるいは砂にコケが生えにくいようにするのにはマガキガイという貝が有効です。マガキガイが砂上をはい回ると砂が動いてコケが生えにくくなりますので、海水魚水槽の底砂のコケ対策に最適な貝です。このマガキガイを水槽に入れることにより、底砂が白い状態を長い事キープできるでしょう。

マガキガイってどんな生き物?

▲アクアリストになじみのある軟体動物門の生物の例

▲マガキガイと同じ科のクモガイ。土産物屋でもおなじみの種

貝の仲間(軟体動物門)は大きく7または8つの綱に分けられます。無板綱(カセミミズの仲間)、単板綱(ネオピリナの仲間)、多板綱(ヒザラガイの仲間)、二枚貝綱(アサリ、ハマグリ、ホタテガイなどの仲間)、ツノガイ綱、腹足綱(いわゆる巻貝など)、そして頭足類(イカ、タコ、オウムガイなど)です。その中でも腹足綱は種類が多く、海域や淡水域など水中に生息するもののほか、カタツムリの仲間のように陸生のものもいます。また、貝殻のないウミウシの仲間やナメクジの仲間なども含まれています。

マガキガイは腹足綱の中のスイショウガイ科に含まれる巻貝です。スイショウガイ科の巻貝は本種の他、棘が生えている不気味な姿のクモガイや、「水」の字のような形をしており厄除けとして飾られてきたスイジガイなど、貝殻コレクターに人気のある種類の貝を多数含みます。このマガキガイには棘がありませんが、猛毒をもつイモガイの仲間のような姿・形をしており、擬態とも考えられます。

なお、名前に「マガキ」とありますが、重要な食用種である二枚貝のマガキとは全く関係はありません。殻の模様が籬(まがき:竹や柴などを粗く編み作った垣根のこと)に似ていることからこの名前がついたようです。

マガキガイに適した環境

水槽

▲水槽を掃除中のマガキガイ

マガキガイだけを飼育するという方は少ないでしょう。小型水槽でも飼育できますが、同じ水槽で他魚の飼育もすることを考えますと、飼いたい魚に合わせて水槽サイズを選ぶ必要があります。

例えばクマノミの仲間を飼育していて、水槽の底の掃除をさせたいのであれば60cm水槽でもよいですが、ハナダイやニザダイなどの水槽底の掃除をさせたいのでであれば、それらの魚をうまく飼育するために90cm以上の水槽が必要になってきます。

ろ過槽

丈夫な生物で水質の悪化には比較的耐えられますが、いくら丈夫な生物とはいえアンモニアや亜硝酸が検出されるような環境では厳しいので、できるだけ綺麗な水で飼育するようにします。

ろ過は外部ろ過槽、上部ろ過槽、オーバーフロー水槽にしてサンプでろ過する方式などなんでもよいのですが、しっかりろ過できているかが重要です。

水温

水温については耐性があり、きれいな水では28℃くらいの水温まで飼育可能ですが、できるだけ25℃前後の水温で飼育してあげるようにします。20℃前後の水温でも飼育可能で近海産の魚との飼育も可能です。もちろん水温が安定していることが重要です。

マガキガイの選び方

▲眼と口を出しているマガキガイ

入荷量は多く、どこの海水魚店でも確実にストックしているのがマガキガイです。値段も安価で1個体でおよそ数百円~1000円前後で販売されますが、複数個体を購入すると安価になることも多いです。

選び方としては、眼や口を出していて、かつよく動いている個体を選ぶのがよいでしょう。砂の中に身を隠してじっとしていることもあり、眼や口を出していないから悪いというわけではなく、逆に死んでいてヤドカリなどにより殻から身が引きずりだされてようとしていることもあります。マガキガイの販売水槽をよく観察してみましょう。

マガキガイと魚・無脊椎動物との相性

▲ベニワモンヤドカリはマガキガイを襲うこともある

マガキガイはクマノミ類、ハゼ類、ニザダイ類など多くの魚と組み合わせられますが、大きなベラの仲間やフグ、モンガラカワハギなどのように貝類を捕食してしまう魚との組み合わせは避けた方が無難といえます。

ヤドカリやエビと一緒に飼育するアクアリストの方も多いようですが、この組み合わせも注意するべきです。とくにヤドカリのうち、ベニワモンヤドカリなどの種類はマガキガイを襲って食べてしまい、亡骸となったマガキガイの殻に入ることもあります。この仲間は平たい体をしており、マガキガイやタカラガイの殻に入っていることが多い種類です。このほかにクリーナーシュリンプとして水槽に入れられることも多いスカンクシュリンプなども、弱ったマガキガイを捕食するおそれがありますので、これらの生物との飼育には注意が必要です。

マガキガイ同士は複数飼育も可能です。何個体かまとめて水槽に入れるのもよいですが、限度というものもあります。マガキガイのサイズにもよりますが、35cm水槽に10匹も20匹も入れるというのであれば、それは入れすぎです。

なお、小型水槽でマガキガイが死亡してそのままにしていると水質が悪化し他の生物も死んでしまうこともあります。また死殻も長いこと水槽に放置していると殻の中に入った水が動かなくなってしまい硫化水素が発生してしまうおそれもありますので死んでしまったものはなるべく早く水槽から出すようにします。

マガキガイとサンゴとの関係

▲砂の中にひそむマガキガイ。サンゴをひっくり返されないよう注意

マガキガイがサンゴを捕食するということはありません。ただ、マガキガイが移動するときにサンゴを動かしたり、あるいはサンゴをひっくり返して死なせるおそれがあります。できるだけサンゴを接着するようにしたり、レイアウトに使うサンゴ岩やライブロックも崩れないように組み、このような事故を防ぐようにしましょう。

マガキガイを食べる

マガキガイは関東地方以南の太平洋岸に広く分布する貝で、食用としても知られています。塩でゆでてつま楊枝を使い身をほじるようにして食べると美味しい種。

高知ではちゃんばら貝と呼ばれていますが、生きた貝をひっくり返すと長いふたを刀のように振り回すためこの呼び名がついたようです。

マガキガイの飼育まとめ

  • サンゴ砂表面を攪拌してくれるため、コケが生えにくくなる
  • 魚の残り餌や微生物などを捕食する
  • 丈夫で硝酸塩蓄積にも強いができるだけ綺麗な水で飼う
  • 水温は20~28℃で、一定にキープしたい
  • 安価で購入しやすい
  • 眼や口を出していて、よく歩いているものを選ぶ
  • ベラの仲間やフグの仲間などはマガキガイを食べることもある
  • ベニワモンヤドカリはマガキガイを襲って食べることも
  • スカンクシュリンプなども弱ったマガキガイを襲うことがある
  • サンゴとの関係は概ね良好だが、しっかり固定しておくこと
  • 高知などでは食用になる
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