2022.08.09 (公開 2017.06.19) メンテナンス
海水魚水槽のコケ予防と対処法~すぐ汚くなってしまうのはどうして?
海水魚飼育、いえ、淡水魚を含む全ての観賞魚の飼育においてコケは悩みのタネと言えます。ほとんどのコケは魚には害はないものの、水槽の中の魚が見えにくくなり「観賞」魚飼育とはなりにくいものです。また、コケの大量発生は水槽内の美観を損ねてしまい、アクアリウムにおいてモチベーションを大幅に下げてしまうものといえます。モチベーションを下げてしまう前に、毎回の掃除の際、少しずつでもいいですのでコケを水槽から取り除くようにしましょう。
コケの種類
水槽にはえる「コケ」にも色々な種類があります。なお、ここで示したコケの名称はあくまでも「俗名」であり、学名や標準和名など学術的な名称ではありません。
茶ごけ
水槽をセットすると最初に生えてくるコケが「茶コケ」です。ライブロックや砂の上、水槽のガラス面にはえてきます。ガラス面に生えたものはスクレイパーで落とします。その後水替えもきちんとします。
なお底砂に生えたコケは底砂をかくはんしてくれるハゼやマガキガイなどを入れるとよいでしょう。ハゼの仲間は直接コケを食べてくれるわけではないのですが、底砂をかくはんしてくれることにより、底砂にコケが生えにくくなります。
トロロ藻
長いどろっとしたコケの仲間で、水槽の壁面やライブロック、サンゴの骨格につきます。またフラグサンゴでは土台などにつくこともありますので、このようなコケがついているものは購入しない方がよいでしょう。アイゴなどの藻類食の魚や、エビの仲間などが食べてくれます。経験上はヒフキアイゴはよく食べてくれました。このほか歯ブラシでコケをとるのも良い方法と言えます。ただし継続的な除去が重要になります。
赤ゴケ(シアノバクテリア)
藍藻の仲間で、べたっとした赤紫色の薄い膜のようなものが底砂やライブロック、サンゴなどを覆ってしまいます。この赤ゴケには毒があるといわれ、魚は食べてくれません。水流で簡単にはがれますのでスポイトでとっていくとよいです。水流ポンプで水のよどみをなくしたり、水替えをするのもよいでしょう。
また、シアノバクテリアにきく薬剤というのもあります。しかしサンゴに無害とうたっていても、サンゴが弱ったり死んだりすることがありますので注意します。
コケ対処法
好日性サンゴやクマノミなど一般的な海水魚を飼育している水槽で、「コケがはえないようにする」方法というのは存在しません。照明をつければコケもはえてきますし、照明をずっとつけないのでは浅い海の魚にもよくないし好日性サンゴはエネルギーを得られず死んでしまいます。ですからコケをはえないようにする、というよりは、コケをはえにくくしたり、コケが出たら適度に取り除くようにします。
スクレーパーでコケ掃除
ガラス壁面についたコケはスクレーパーで落とします。ガラス水槽ではごしごしコケを落とせますが、アクリル水槽ではそうはいきません。アクリル水槽では柔らかいスポンジや専用のスクレーパーが販売されているので、そのようなものを使うのも良いでしょう。
歯ブラシでコケ掃除
ライブロックや飾りサンゴについたコケは歯ブラシなどを使うと綺麗にとることができます。できれば新品の歯ブラシを購入し、よく洗ってから掃除に使うようにします。
生物兵器を投入しよう
コケを食べてくれる生物も色々とおります。貝の仲間や甲殻類の仲間、あるいは藻食性の魚などにコケを食べてもらいましょう。
藻食性の巻貝
(写真は温帯性のシッタカ)
観賞魚店で販売されている「シッタカ貝」の仲間なのですが、カクレクマノミなど熱帯性の魚を飼育している水槽を掃除するのにはあまり向いていません。理由は良く観賞魚店で販売されているシッタカの仲間は温帯性のものが多く、クマノミの仲間よりも低い水温を好むからです。
観賞魚店でも最近はチョウセンサザエやニシキウズなどのような、暖かい海域に生息する「シッタカ」に近縁の巻貝の仲間を販売するようになりました。このほかにサラサバテイやヤコウガイといった貝も販売されていますが、これらの種は大きくなるので小型水槽には向いていません。60cm水槽ならチョウセンサザエやニシキウズのような貝を3~4個体ほど入れておきます。あまりにもたくさん入れすぎると、コケがなくなり飢え死にすることもあるからです。
マガキガイ
ソデボラ科(以前はスイショウガイ科とされた)の巻貝の仲間で、砂を攪拌してくれたり、コケを食べたりしてくれるので、底砂の上に生えるコケ退治に役に立ちます。
一般的に初心者向きのハゼの仲間、クマノミの仲間、小型ヤッコの仲間、バスレットの仲間と同居するのには全く問題ありませんが、モンガラカワハギなど強い歯で貝をばりばり食うような魚や、ベニワモンヤドカリなどのヤドカリに襲われてしまうことがあるので注意します。
海水魚店ではほぼ常に、しかも安価な値段で販売されています。そのため入手も容易といえるでしょう。採集もできますが、よく似た殻の形をした貝に「イモガイ」というものがいます。このイモガイは毒の矢を持っており、魚を食べてしまいます。またヒトを殺すようなアンボイナガイや、タガヤサンミナシ、ヤキイモなど強い毒をもつものにも注意が必要です。
タツナミガイ
巻貝の仲間ですが、見た目は貝殻を持たない、アメフラシの仲間です。茶コケなどをよく食べてくれるのですが、他の生物が食わないシアノバクテリアなども食してくれるとされます。大型種であり、また紫色の液を出すこともありますので、注意が必要です。なお、タツナミガイはいつも販売されているというわけではありません。
エビ類
アシナガモエビの仲間はトロロ状のコケを食べてくれます。肉食魚、とくに夜行性の肉食魚がいる水槽にはあまり向いていません。コケの掃除はしてくれるのですが、魚の皮膚につく寄生虫などを食べるわけではないですので、食べられてしまいます。
もちろんコケばかり食べるわけではなく、海水魚用の餌も食べます。
カニ類
トゲアシガニやエメラルドグリーンクラブというカニがコケを食べてくれます。小型のものであればあまり悪さをしません。トゲアシガニは近海の磯で自家採集も可能ですが大きいものは他の生き物に悪さをすることもあります。いずれもライブロックについたコケなどを食べてくれます。
ハゼの仲間
ハゼの仲間はコケを食べてくれるわけではないのですが、砂をもぐもぐして鰓孔から吐き出す、通称「ベントスハゼ」の仲間は、砂をかくはんしてくれるので、底砂にコケが生えにくいようにしてくれるともいえます。
ベントスハゼの仲間にはサラサハゼ属、クロイトハゼ属のハゼと、ツインスポットゴビーと呼ばれる種が知られていますが、この中でツインスポットゴビーはカニハゼとも呼ばれ、背鰭の模様がカニににた人気の種ではありますが、初心者には飼育が難しいのであまりお勧めできません。
クロイトハゼ属やサラサハゼ属のうち、アカハチハゼやクロイトハゼ、ジュウモンジサラサハゼのように中層を遊泳する種は、砂を含んだ後中層を泳ぎ、サンゴの上に落としてしまうなんてこともあるので、これらの種はサンゴ水槽に向きません。オトメハゼやミズタマハゼといった種類がインド洋から入ってきます。サンゴを飼育した水槽なら、このような種がお勧めです。
カエルウオ
イソギンポ科・カエルウオ族の魚です。カエルウオの仲間はサンゴ岩やライブロックにつくコケを食べてくれ、コケの種類については壁面についているものも食べます。コケをよく食べてくれるのはカエルウオ、ヤエヤマギンポなどで、フタイロカエルウオやモンツキカエルウオなども食べます。ただし、カエルウオの仲間はすべてコケを食べてくれるわけではありません。たとえばセダカギンポという種類は、ヤエヤマギンポによく似ていますが食性は全く異なり、コケを食べないどころかサンゴを食べてしまいます。
カエルウオの仲間を飼育するうえでの注意は、おなじ仲間同士でけんかをすることがあること、ふたをしないと飛び出す恐れがあること、コケを食べてくれるがコケだけでは飼育することが難しい事です。植物食性が強いので、そのような魚向けの配合飼料を与えたいものです。
ヒフキアイゴ・ニザダイの仲間
アイゴの仲間やニザダイの仲間もコケを食べてくれます。少し長めのコケが好物で、このようなコケが繁茂してこまっていた90cm水槽にヒフキアイゴをいれると、数日でコケが無くなりました。ただしクビレヅタなどのような有用な海藻も食べてしまうので注意が必要です。
これらの魚を飼育する上での注意は、まず、やせやすいこと。ヒフキアイゴも意外と痩せやすい魚で、ペラペラの体になってしまうと回復しにくいので、植物質の配合飼料もこまめに与える必要があります。
ふたつ目は、背鰭などの鰭棘に毒があるので注意します。とくにニザダイの仲間は尾柄部にも切れ味抜群の恐ろしい棘があるので気を付けます。
さらに、ニザダイの仲間は病気に罹りやすい点にも注意します。そしてニザダイの仲間の中にはクロハギやカンランハギなど、全長50cm近くにもなる種類もいるのでそのような種類の飼育には大型水槽も必要です。アクアリストに人気のナンヨウハギだって100L以上の水量が要ります。それらの点を考慮しますと、ニザダイの仲間の飼育はあまり初心者には向いていないかもしれません。
コケがはえにくい環境づくり
水槽に「コケをはやさない」ことはできませんが、アクアリストの工夫により、コケがはえにくいような環境をつくることはできます。
照明はつけっぱなしにしない
綺麗だからずっと観賞したいといって、24時間照明をつけておくのはよいことではありません。サンゴ礁にも夜は来ます。夜のサンゴ礁は静まり、魚はサンゴの隙間や砂の中に隠れ、夜行性のハンターからの捕食されにくいようにしているのです。ですが水槽内では危険なハンターが居ないから照明を消さなくていいのかと言えばそうではありません。魚だって夜間は寝ますが照明がついているとなかなか寝られない種もいます(ベラの仲間は時間になると眠ってしまいますが)。
また照明を当てる時間が長いと水槽にコケが生えやすくなるともいえます。コケの仲間も光合成をして増えていくので、日が当たる時間が長い方が成長によいわけです。
コケの栄養となる成分を取り除く
コケの栄養となる硝酸塩は主に生物ろ過によって、リン酸は主に餌や水道水から、ケイ酸は主に水道水から、水槽に入ってきます。しかし餌をあげなければ魚は死んでしまいますし、水かえをしなければさらに酷くコケが生えてしまうことになるでしょう。
吸着剤
リン酸塩やケイ酸塩は吸着剤を使って水槽から取り除く方法が一般的です。ろ過装置内に吸着剤を入れてこれらの成分を吸着してもらいますが、種類によっては吸着の限度を超えると逆に放出してしまうようなものもありますので、こまめに換えるようにします。
RO浄水器
生物ろ過によって生み出される硝酸塩を排除しようとしても、水道水で水替えするならばケイ酸やリン酸が水槽にもたらされることになってしまいます。RO浄水器を使用すれば、水道水中のリン酸塩やケイ酸塩などの成分を取り除いてくれるのですが、どうしても高価になってしまいます。
殺菌灯
これまでご紹介してきたものは水に含まれるリン酸塩やケイ酸塩などの栄養塩を取り除くことに重きが置いていたものでしたが、殺菌灯はコケの胞子を殺すことでコケが生えにくくするというものです。もちろん殺菌灯を通したからといってすぐにコケが生えなくなる、なんてことはありませんので注意が必要です。何度か殺菌灯の中を海水が通っているうちに紫外線が照射されて菌が死ぬ、というものです。
殺菌灯の使用で注意したいのは、殺菌灯の「球」の交換です。まだ照射できていても、殺菌灯の効きが弱いな、と感じたら早めに交換するようにしたいものです。
コケ対策 まとめ
アクアリウムではコケとの戦いは避けて通れません。
- 水替えをきちんとする
- こまめにコケ掃除をして、美しい水槽外観をキープ
- 照明を当てすぎない
- 生物兵器を導入する
ことによって、綺麗な状態を長期間キープするようにつとめましょう。