2020.09.21 (公開 2020.01.30) 海水魚図鑑
ヒメゴンベの飼育方法~サラサゴンベよりも大きくなり混泳にも注意!
ヒメゴンベはサラサゴンベと同じオキゴンベ属のゴンベの仲間です。しかしサラサゴンベよりも大きくなり、全長10cmをこえるため、小型水槽では飼育しにくく、大きいものは性格もきつくなり注意が必要です。飼育自体は丈夫で飼いやすいのですが、混泳については注意しなければなりません。今回はヒメゴンベの飼育方法をご紹介します。
標準和名 | ヒメゴンベ |
学名 | Cirrhitichthys oxycephalus (Bleeker, 1855) |
英名 | Coral hawkfish, Pixi hawkfish, Spotted hawkfishなど |
分類 | 条鰭綱・スズキ目・スズキ亜目・ゴンベ科・オキゴンベ属 |
全長 | 10cm |
飼育難易度 | ★☆☆☆☆ |
おすすめの餌 | メガバイトレッドなど |
温度 | 25℃前後 |
水槽 | 60cm~ |
混泳 | 性格はきつい。小魚や温和な魚、おなじゴンベ科魚類とは混泳できない |
サンゴとの飼育 | 可。ただしサンゴの上にのっかりストレスをあたえることも |
ヒメゴンベって、どんな魚?
▲もちろん背鰭の「ふさふさ」もある
ヒメゴンベはゴンベ科オキゴンベ属の海水魚です。体は薄いピンク色や白色で、体側には赤黒い斑点が並ぶという、派手な色彩の魚です。ゴンベの仲間の魅力の一つでもある背鰭の糸状突起もよく発達しています。成長すると全長10cmを超え、この仲間では大きく育つ魚です。そのため小型水槽での飼育にはあまり適していないので、注意が必要です。
色彩は個体により差が見られ、体のピンク色がより薄く白っぽいもの、逆にピンク色が強いもの、斑点が黄色味を帯びるものなど色々います。ミナミゴンベという魚は本種によく似ていますが、ヒメゴンベの尾鰭には赤い斑点が多数あるのに対し、ミナミゴンベの尾鰭には斑点がありません。
オキゴンベ属の魚
▲サラサゴンベ
▲オキゴンベ
ヒメゴンベはオキゴンベ属の魚です。オキゴンベ属はインド-汎太平洋(つまり、東太平洋沿岸も含む)に分布しています。8種が知られますがアクアリウムで流通するのはヒメゴンベ、ミナミゴンベ、サラサゴンベくらいのもので、他の種の入荷はまれです。
人気があるのはサラサゴンベで、ヒメゴンベ同様にカラフルな色彩をもち、しかも7cmとヒメゴンベと比べて小型であり、カクレクマノミなどとも組み合わせやすいといえます。
オキゴンベという魚は主に千葉県から九州までの太平洋岸、山口県以南の日本海岸に生息しています。オレンジ色の派手な色彩ですが模様は薄くやや地味です。観賞魚として流通することはほとんどないのですが、磯釣りなどで釣れることがあり、このような個体を飼育するのも楽しいでしょう。
ヒメゴンベ飼育に適した環境
水槽
水槽は45cm水槽でも飼育可能と思われますが、できれば60cm以上の水槽での飼育が望ましいでしょう。混泳させる魚の種類によっては90cm以上の水槽が必要なこともあります。またサンゴ水槽でも同様のサイズのものが望ましいでしょう。
水質とろ過システム
▲汚い水槽でも飼育はできるが…。
ヒメゴンベは非常に丈夫な魚ですので、汚い環境でも飼育できますができるだけきれいな水槽で飼育してあげたいものです。外掛けろ過槽はろ過能力が低く、水槽上部に隙間ができやすいのでおすすめできません。60cm水槽で上部ろ過槽、もしくはオーバーフロー水槽での飼育が望ましいでしょう。
サンゴを食べたりしないのでサンゴ水槽でも入れられますが、サンゴの上に乗っかりサンゴにストレスになることもあるので、分散するという意味でも大型水槽が望ましいでしょう。サンゴ水槽に最適なのはベルリンシステムや、ゼオビットシステムなどの超低栄養塩システムですが、これらのシステムでは魚は多く入れることができません。またヒメゴンベを入れたら小魚や小型甲殻類などは入れられなくなってしまいます。
水温
25℃前後が最適です。22~28℃であれば飼育可能で、ほかの魚の適正水温に合わせていいのですが、できるだけ一定の水温を保つようにします。水温の変動が大きいと、いくら丈夫なヒメゴンベであっても体調を崩して病気になってしまうことがあるからです。
フタ
ゴンベは特徴的な泳ぎ方をし、水槽から飛び出してしまうこともありますのでフタはしっかりしましょう。
ヒメゴンベに適した餌
ヒメゴンベは動物食性です。しかし、わざわざホワイトシュリンプやブラインシュリンプばかり与える必要はありません。配合飼料もすぐ食べるようになります。粒餌を与える場合は、サイズに合わせて粒のサイズを選ぶとよいでしょう。フレークは軽くて浮いているので魚には見えやすいですが、餌自体はうすっぺらで魚の腹を満たしにくいというデメリットもあるため、フレークよりは粒の餌の方がよいでしょう。
ホワイトシュリンプなどを与えるのもよいのですが、このような冷凍餌は与えると水を汚すので、配合飼料をなかなか食べないときや、採集・購入してすぐのときを除きあまり与えない方がよいかもしれません。
ヒメゴンベをお迎えする
ヒメゴンベは観賞魚店で購入できます。また紀伊半島や四国太平洋岸では採集することもできます。
購入する
▲健康なヒメゴンベ
ヒメゴンベは海水魚店で購入できます。しかし、サラサゴンベほど販売数は多くなく、サラサゴンベよりもやや高価です。また多くは東南アジアから来るため、しっかりチェックしなければなりません。
具体的にいえば、口に傷がない、鰭や体表に白い斑点がない、鰭や体表に爛れや白い点がない、鰭が溶けていない、眼が白く濁ったり突出していない個体を選ぶようにします。また入荷直後の個体はできる限り避けるようにします。入荷した日を聞いておきましょう。
採集する
▲磯で採集されたヒメゴンベ
ヒメゴンベは磯で採集できるほか、大きめの個体は磯釣りで採集することもできます。釣り採集では上手く採集すると網によるスレ傷などを防ぐことができます。口の傷は短い時間で癒え、翌日に餌を食べはじめる、ということもあります。
海水魚を釣りで採集する方法についてはこちらをごらんください。
ヒメゴンベとほかの生物の関係
ヒメゴンベとほかの魚との混泳
▲気が強い魚同士の混泳例
ヒメゴンベは性格がややきついので、混泳魚にも気を使います。ハゼの仲間や小型カエルウオなどは一緒に飼育してはいけません。
同じくらいの大きさのクマノミ、同じサイズのハナダイ、中・大型ヤッコ、ベラの仲間、ナンヨウハギなどが適しています。メギスの仲間はヒメゴンベが大きくなるとゴンベに捕食されるおそれがあり、大きすぎるとヒメゴンベとも激しく争うことがあります。スズメダイの仲間も大きすぎると危険です。写真はそのような強めの海水魚同士の混泳水槽です。
ヒメゴンベとサンゴ・無脊椎動物との相性
ヒメゴンベはサンゴを捕食するような魚ではなく、サンゴ水槽での飼育もできます。しかし、ヒメゴンベがサンゴの上に乗っかっているとサンゴにストレスになりますので、注意が必要です。観察を怠らないようにしましょう。
サンゴの上に乗っかることもありますが、逆にイソギンチャクとの飼育ではイソギンチャクに捕食されてしまうこともあります。ただし小型のディスクコーラルやマメスナギンチャクに捕食されることはありません。幼魚は大型のディスクコーラルには注意する必要があります。
無脊椎動物については甲殻類との飼育はいけません。ゴンベの仲間は甲殻類をばりばり食べてしまうからです。またアカシマシラヒゲエビ(スカンクシュリンプ)のようなクリーナーさえ食べてしまうことがあるので危険です。逆に大きいイセエビなどには襲われる可能性もあり、一緒に飼育するのは避けるべきです。
ヒメゴンベ飼育まとめ
- サラサゴンベと同じ仲間だがやや大きく育つ
- 水槽は60cmが欲しい
- 汚い水槽でも飼育できなくはないが上部ろ過槽できれいな水を保ちたい
- 水温は25℃をキープする
- 飛び出しやすいのでフタもしっかりする
- 粒餌もすぐ食べる。食べない場合は冷凍のホワイトシュリンプなどを与える
- 購入する場合は魚の体や入荷した日をチェック
- 気が強いのでほかの魚との混泳は注意
- サンゴの上に乗っかりストレスになることもある
- 甲殻類は食べてしまうので一緒に飼育はできない