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2020.08.18 (公開 2020.08.18) 餌・添加剤

海水水槽に“みりん”を添加する効果と危険性について

みりんは料理の調味料として使われる料理用酒の一種です。

このみりんはもちろん、本来の用途は料理に使うものであり、アクアリウム用ではないのですが、最近このみりんを海水水槽に添加するのが流行っているようです。はたして、なぜみりんを添加しているのでしょうか。どのような効果が得られるのでしょうか。そしてみりんは安全なものなのでしょうか。今回はそのあたりを考えてみたいと思います。

なぜみりんを添加するのか

みりんを添加するとバクテリアがみりんに含まれる炭素をとりこみ、効率よく硝化・脱窒を行います。このみりんを添加して硝酸塩を抑える方法のもとになったと思われる方法として、米国などではやった「VSVメソッド」というのがあります。

VSVとは、ウォッカ、砂糖、酢の頭文字で、これらを水槽に添加するというものです。これらに含まれる炭素をバクテリアに供給、活性化をはかり硝化・脱窒のプロセスを高めるというものです。その結果海水水槽の硝酸塩を低レベルで維持できる、というわけですが、VSVメソッドは大変危険な方法なので、初心者にはおすすめすることはできません。またある程度経験を積んできたアクアリストであっても、失敗したという経験談も聞かれますので、よく理解していないと失敗することになります。エキスパート向けのメソッドといえます。

みりんを添加するメリット

みりんはスーパーなどで安価に販売されています。日本全国ほぼどこでも販売されていて入手も容易にできるというのもメリットです。ただし確かにアクアリウムショップで販売されているNO3PO4-Xよりは安価なのですが、ここでお金をケチって魚を死なせてしまうリスクを冒すことを考えると、あまり安い買い物とはいえず、メリットとなっていないようにも思います。

また、硝酸塩を極限まで減らしてサンゴの色上げの効果もうたわれていますが、硝酸塩を大幅に減らしてサンゴの色上げをするのであれば、多少の出費があってもゼオビットなどのほうが安心です(これらもしっかりマニュアルを守らなければ失敗するので注意)。したがってこれもメリットとはいえないかもしれません。

みりん添加の危険性と注意点

みりん添加については適切なマニュアルなどはなく、実際にみりん添加をおこなっているアクアリストから教えてもらうのがベストですが、いずれにせよ添加は自己責任でおこなってください。

すべてのバクテリア(細菌)類の増殖

炭素源はあらゆるバクテリアの餌になり、硝化・脱窒を行ってくれるバクテリアだけでなく、病原菌が繁殖する危険性も秘めています。そのため、初心者が何も知らずに添加してしまうのは危ないといえます。また本来VSVメソッドは酒(みりん)のほかに砂糖や酢も添加しているのですが、この3種類を添加する理由としては、ひとつの炭素源だけを入れているとバクテリアの種類が偏ってしまうためよろしくないということです。つまりある種のバクテリアだけが増殖してしまうことはバランスを崩してしまいよくないといえるのです。

SPS水槽において菌が増殖した場合、KHの値が高すぎるとSPSが細菌に感染するということが起こりやすいともいわれており、このようなところも注意しなければなりません。一見手軽で簡単なように見えるみりん添加ですが、ベルリンシステムなどよりもずっと慎重さが求められます。

酸欠になりやすい

同様にみりんの量が過剰であると、バクテリアがかなり増殖しますが、このうち好気性バクテリアが増えすぎたり、水中の酸素を大量に消費するようなバクテリアが増えてしまうと水が白濁、酸欠になりやすくなってしまいます。そうなると魚が全滅してしまうおそれもあります。さらにみりんだけを添加すると同じ種類のバクテリアが増殖しやすく、その中には酸素消費量の多いものも含まれているようです。

プロテインスキマーが必須

▲酸素供給や過剰なバクテリアの除去のため強力なスキマーが必要

みりんを添加する水槽にはプロテインスキマーが必須となります。これはバクテリアが増えすぎた際にそのバクテリアを水槽から出すのに使用したり、好気性バクテリアに消費されやすい酸素を補うのに重要です。水槽のサイズのちがいもあり、どのスキマーがいいとはいいにくいのですが、ベンチュリー式、ベケットヘッド式、もしくはダウンドラフト式のプロテインスキマーを使用して、エアリフト式は避けるようにします。

なお、添加するのは必ず「本みりん」でなければなりません。みりん風調味料などは中身が異なりますので絶対に添加してはいけません。

「NO3:PO4‐X」の使用が安心

ここまでいろいろ述べてきましたが、みりんを水槽に添加し硝酸塩濃度を下げるのは危険であり、初心者には全くおすすめできません。しかしながら、このみりんの代わりになる、初心者にも扱いやすいアイテムがあります。それがレッドシーから出ている「NO3PO4-X」です。これはレッドシーが製造しているもので、きちんとしたマニュアルもあり、それに従えばよいので初心者でも簡単に硝酸塩を減らすことができるでしょう。成分はエタノールやメタノール、酢酸などで、結局アルコールが主成分ですが、いくつかの成分が含まれているため、単一のバクテリアのみが繁殖しやすいという状況に陥りにくくなっているのかもしれません。

ただし、NO3:PO4-Xもその使用のためにはプロテインスキマーが必須となります。理由はみりんを添加するときと同様で、過剰なバクテリアを水槽から取り除いたり、酸素を供給し酸欠をふせぐなどの役割をします。このほかに、正確に添加量を測定できる専用のテストキットも必要になります。高価であり必要なものは多いのですが、その分みりんよりも安全に、しかも効率よく硝酸塩を減らすことができるでしょう。さらにみりんを使っただけではあまり除去できないリン酸も減少させてくれます。私であればこちらのNO3:PO4‐Xを使用します。

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みりん添加まとめ

  • 水槽内にみりんを添加することで硝酸塩を減らせる可能性がある
  • バクテリアがみりんに含まれる炭素を取り込み効率よく硝化脱窒を行う
  • VSVメソッドが原型であるが水槽崩壊につながることもあるためおすすめできない
  • 安価で入手もしやすいが魚やサンゴを殺すことも考えるとおすすめしにくい
  • 硝化・脱窒のバクテリアだけでなく病原菌も増殖してしまうおそれがある
  • 好気性バクテリアの中には大量に酸素を消費するものもあり酸欠にも注意
  • プロテインスキマーは必要
  • NO3:PO4-Xの添加はマニュアル化されており初心者にも比較的扱いやすい
  • NO3:PO4-Xを添加する際にもプロテインスキマーが必要
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