2020.03.16 (公開 2018.12.28) 海水魚図鑑
サメの飼育方法まとめ~家庭で飼育できるサメの種類&生体と飼育の基礎
「サメ」といえば、「しなやかな海のハンター」「獰猛で種によってはヒトをも襲う」「巨大に成長する」などのイメージがあります。巨大水槽のある水族館で見るものであって家庭の水槽での飼育は難しいと思われがちですが、家庭の水槽で飼育することができるものもいます。
ただし、「小型のサメ」もそれなりのサイズに成長するため、大型水槽が必要です。家庭ではどのようなサメが飼育できるのか紹介していきます。
サメとはどんな魚?
サメは軟骨魚綱に含まれます。チョウチョウウオやヤッコ、ハゼ、フグなど一般的な魚のほとんどの種が含まれる「硬骨魚類」(条鰭綱)とは大きく異なるグループです。また、同じ軟骨魚類である「エイ」の仲間とは近縁なグループであり、サメとエイで板鰓亜綱を形成します。
硬骨魚類との違い
▲硬骨魚類は鰓孔が1対で、骨はかたい
硬骨魚類(条鰭綱、もしくはハイギョなどの肉鰭綱と合わせて硬骨魚綱)のほとんどはその名の通り硬い骨を持っています。一方でサメやエイは骨格の大部分が軟骨で構成されています。また、鰓孔が一対しかなく(黒い丸で囲んだ部分)、多くの種は鰓蓋があり、サメやエイなどと区別できます。ただし、軟骨魚綱のうちギンザメ目のもの(全頭亜綱)だけはほかの硬骨魚類ど同様、鰓孔は1対のみです。
サメとエイの違い
▲サメ(ツマジロ)の鰓孔は体の側面に開く
▲エイ(メガネカスベ)の鰓孔は体の腹面に開く
▲カスザメはエイに似ているが腹面に鰓孔がない
サメとエイは近い仲間で、ともに板鰓類(板鰓亜綱)と呼ばれる軟骨魚綱の魚です。1対しか鰓孔をもたない硬骨魚類(および全頭類)と異なり、サメもエイも5~7対の鰓孔を持っています。サメとエイの大きな違いは、鰓孔の開く位置にあります。サメの仲間は鰓孔が体の側面に開くのですが、エイの仲間の鰓孔は体の腹面に開くことにより区別することができます。
なお、エイに近い見た目のカスザメという魚は、鰓孔が腹面ではなく、体の側面に開くことから、エイの仲間ではなくサメの仲間になります。逆に名前に「サメ」とついているサカタザメやシノノメサカタザメ、ウチワザメといった種は鰓孔が体の腹面に開くことからエイの仲間になります。
高度な感覚器官
▲メジロザメ科のサメの頭部。小さい孔が多数みられる
サメの仲間は高度な感覚器官を持っています。とくにユニークなのがロレンチニ瓶(びん)と呼ばれるものです。写真のサメの頭部にたくさんある孔がその開口部で、餌となる生物が発生する微弱な電場も感じ取ることができる、とされています。なお、サメに近縁なエイの仲間もサメ同様にロレンチニ瓶を持っています。ガンギエイ科コモンカスベ属のツマリカスベとモヨウカスベはそれぞれ非常によく似た種で、腹面のロレンチニ瓶の分布を見て同定することになります。また、傷ついて出血した餌の臭いを感じる嗅覚も非常に優れています。
このほかテンジクザメの仲間にあるひげも感覚器官とされています。濁った海底でも餌を探すのに役に立つのでしょう。
取り扱い注意
▲大型の魚や哺乳類を捕食するホホジロザメの歯
サメ、といえばよく「ヒトを襲う」というイメージが付きまといます。しかし多くのサメはおとなしく、ヒトを襲うことはありません。もちろん、ホホジロザメやイタチザメなど、ヒトを襲うサメがいることも事実です。
サメの仲間は鋭い歯をもつものがおり、そのようなサメに咬まれると怪我をすることがあります。例としてツマグロなどメジロザメの仲間、ネズミザメの仲間はもちろん、じっとしているおとなしそうなサメでもオオセやカスザメなどは強い歯を持ちますので咬まれないように注意しなければなりません。
また防衛のために危険な武器を使うサメがいます。ネコザメやツノザメの類がそれで、2つある背鰭のそれぞれ前方に大きく強い棘があります。カリフォルニア産のネコザメ科魚類ホーンシャークがカスザメの仲間に捕食されそうになるも、棘が口に引っかかり無事にカスザメから逃れる動画はよく知られています。この棘には毒があるともいわれており、手で触れないように注意が必要です。
サメに近縁とされているエイの仲間のうち、アカエイの仲間、ヒラタエイの仲間、トビエイの仲間、ツバクロエイの仲間などは尾部に大きな毒棘をもっています。シビレエイの仲間は毒棘を有していませんが、発電器官を有しており、触ると電気ショックを受けることもありますので注意が必要です。
生息場所
▲淡水で一生を過ごすポタモトリゴン科のエイPotamotrygon motoro
サメの仲間はサンゴ礁の浅瀬から北極圏の深海までほぼ世界中の海に分布しています。しかしひとつの種のサメが熱帯や温帯、寒帯にすむというわけでなく、それぞれすみ分けています。亜寒帯ではネズミザメやアブラツノザメなど産業上重要な種を含みますが種数としては少なく、熱帯から温帯域に生息している種類が多いです。いっぽう、温帯から亜熱帯ならほとんどどの地域に生息しているというサメもいます。例えばホホジロザメ、アオザメ、マオナガ、イタチザメ、メジロザメ、アカシュモクザメ、ジンベエザメなどは世界中の暖かい海域に生息しています。なお、サメの仲間(エイ類はのぞく)のうち日本にはおよそ130種が生息しています。
サメの仲間で淡水に生息するものはオオメジロザメやGlyphis属といったメジロザメ科のごく一部の種をのぞき知られていません。一方エイの仲間では淡水に生息するものが知られています。有名な例が南米に生息するポタモトリゴン科のエイで、これらの種は一生を淡水で過ごします。日本の河川にもアカエイが見られることがたまにありますが、アカエイは普段は海域から汽水域に生息する種なので、純淡水で飼育することはできません。
家庭で飼育できるサメ
家庭で飼育できるサメには条件がありますが、いずれの種も衝動買いでは上手く飼育できるはずがありません。専門誌などをよく読み、ある程度飼育の知識を身に着けておくべきです。
【条件】
①底生性の種であまり泳ぎ回らないこと
②大きくなり過ぎないこと
③特殊な餌を必要としないこと
④輸送に耐えられる種であること
①底生性種であまり泳ぎ回らないこと
▲流線型の体をしたメジロザメの仲間は長距離を泳ぎ回る。家庭水槽での飼育は困難
サメといえば流線型のからだで外洋を泳ぎ回るイメージが強いです。しかし、そのようなサメは遊泳するのに広いスペースが必要ですから、当然家庭の小さな水槽で飼育するのには適していないといえます。
一方サメといっても常に海の底にいて、あまり泳ぎ回らないものもいます。このようなサメであれば家庭の水槽でも長期飼育ができます。ただし、家庭の水槽といっても最小で120cm、種類によっては200cm以上の水槽が必要になるものもいます。もちろん、水量もかなり多くなりますので床の補強もしなければなりません。
②大きくなり過ぎないこと
家庭用の水槽で飼育できるサメは小さいものがベストです。大きくなるサメのうち、メジロザメの仲間やネズミザメの仲間は1.の条件から飼育困難ですが、水族館で飼育されることが多いナースシャーク(アメリカテンジクザメ)やオオテンジクザメの仲間も全長2mくらいになりますので、巨大な水槽がなければ飼育できません。水族館並の超巨大水槽が用意できるのであれば別ですが…。
③特殊な餌を必要としないこと
映画でもおなじみのホホジロザメや、現生魚類最大種のジンベエザメなどは①と②の条件から飼育は困難なのですが、この条件を考えても飼育は難しいといえます。
ホホジロザメは幼魚のうちは魚を捕食していますが、成長するとアシカなどの鰭脚類や大型魚を好んで捕食するようになります。もちろん餌用のアシカをまるごと一頭販売しているペットショップなど存在しません。ジンベエザメはプランクトン食性ですのでまだ飼育可能でしょうが、大食いであり、このサメを飼育している沖縄美ら海水族館では1日30kgオキアミなどを与えているようです。
④輸送に耐えられる種であること
これはホホジロザメやジンベエザメのような巨大なサメのほか、深海性のサメなどに当てはまります。水深200m前後の海域を曳く沖合底曳網漁業では、珍しい深海性のサメも色々あがりますが、これらのサメは輸送に弱いため飼育がどうしても難しくなってしまうのです。
比較的容易に飼育できるサメ
ネコザメ目
▲ネコザメ科のシマネコザメ
ネコザメ目はネコザメ科のみからなり、サメの仲間でもとくに原始的なサメとされています。主に日本近海に生息するネコザメ、日本からアジアの海に生息するシマネコザメ、オーストラリア近海にすむポートジャクソンシャークなどが販売されています。このほか、アメリカ西岸にすむホーンシャークが輸入されることもありますが、現在は規制されているのか、なかなか入手できません。
▲ネコザメの卵
産卵形態は卵生で、らせん状の突起がある卵を産みます。大きいものでも1mを超えるほどで、海底でじっとしていることが多く、泳ぎもゆったり、サメとしてはあまり泳ぎ回らないので比較的飼育は容易といえますが、サメ全般にいえることとして水質の悪化に弱いということもいえます。注意しなければいけないのは背鰭の前方にある棘で、これには毒があるともいわれています。そのため素手で触れることは避けなければなりません。自然界では主に甲殻類や貝類などを強い歯で噛み砕いて捕食します。
テンジクザメ目・テンジクザメ科
▲イヌザメ
テンジクザメ目のサメは大体4~7科ほどに分けられますが、研究者によってその分け方が大きく異なります。その中には全長10mを超え、すべての原生魚類中最大種であるジンベエザメも含まれますが、多くの種は底生の小型種です。
テンジクザメ目のサメでとくに入手しやすく飼育しやすいといえるのはテンジクザメ科のイヌザメで、八重山諸島、尖閣諸島から西太平洋のサンゴ礁に生息する小型のサメです。幼魚がよく販売されているので、入手は難しくはありません。成魚でも1mを僅かに超えるくらいの飼いやすい種です。幼魚は白黒の縞模様が綺麗ですが、成長するにつれこの縞模様は薄くなっていきます。
また、イヌザメは卵生で卵の状態で販売されていることもあります。クマノミなどは卵が孵化した後は仔魚専用の餌を与えなければなりませんが、イヌザメは卵から孵化した仔ザメも大きく、すぐに餌を食べてくれますので、飼育しやすいといえます。
テンジクザメ科のサメにはほかにシマザメ、エポウレットシャークなど何種類かのサメが輸入されてきますが、どれも1m前後と小さく飼育しやすいです。ただしこれらのサメをうまく飼育するためには最終的に120cm、できれば150cm以上の大型水槽が必要になりますが、それでもほかのサメよりは家庭向きといえるでしょう。餌はイカなどの軟体動物や小魚などを捕食します。これらの餌は観賞魚店でなくてもスーパーなどで入手できるのもよいところです。
テンジクザメ目・オオセ科ほか
▲オオセ
▲アメリカテンジクザメと思われる種。ジンベエザメとは近縁だ
テンジクザメ目のサメは上記のように小型のサメが多いのですが、もっと大きなサメもいます。巨大な水槽を用意できるというのであれば、大型のテンジクザメの仲間であるオオセなども飼育できます。写真は日本近海に生息する種ですが、オーストラリア近海の種の中には複雑な皮弁をもった面白い種もいます。ただし、歯が非常に鋭いため咬まれるとけがをするおそれがありますので、扱いには注意が必要です。オオセは魚やイカなどを飲み込むようにして捕食します。
ジンベエザメ科(もしくはトラフザメ科)の底生種であるトラフザメの卵もまれに入ってきます。しかしトラフザメは2mに達する大型種なので、初心者のアクアリストは手をださないほうがよいでしょう。長期飼育にはもちろん巨大な水槽が必要になるため、家庭の水槽では飼育することが難しいといえます。一方同じように大型になるアメリカテンジクザメ(ナースシャーク、コモリザメ)は卵胎生で子サメを産みます。主に魚類やイカ、タコなどを捕食しています。
なお、アメリカテンジクザメは従来は大西洋のほか、東太平洋にもすむとされていましたが、東太平洋産のものは2015年に別種(Ginglymostoma unami)とされたようです。日本や西太平洋の記録はオオテンジクザメと混同されたものと思われます。
メジロザメ目・トラザメ科
▲トラザメは浅海から水深300mに分布
メジロザメ目はサメの仲間でも特に大きなグループです。トラザメの仲間はサメの仲間でも特に種類が多いのですが、その多くは小型種です。やや深い海に生息するものや温帯性のものが多く、冷たい海を好むものが多いといえます。そのため低い水温を維持できないと長期飼育は難しいです。常に低水温を維持できるような水槽冷却システムを用意できるのであれば丈夫で飼育は容易、種によっては水槽内で産卵することさえあります。
高水温に弱い種がほとんどなのですが、サンゴトラザメ(コーラルキャットシャーク)だけはサンゴ礁の浅い海に生息しているため比較的容易に飼育できます。底生のサメで泳ぎ回らないものの、120cm以上の水槽で飼育するようにしたいものです。トラザメ科のサメは概ね温和で、甲殻類や小魚を捕食します。
メジロザメ目・ドチザメ科とタイワンザメ科
▲本州~九州に生息するドチザメ。水族館では最もよく見られるサメの仲間
ドチザメ科のサメは日本国内に6種ほどが知られており、このうち科の標準和名にもなっているドチザメは観賞魚店にもよく入ってきます。沿岸性のサメで昼間はじっとしており、水質の変化に強いため高水温にさえ注意すれば飼育も容易といえます。ただし実際飼育するには小さくても180cm以上の大型水槽がほしいところです。
東太平洋にすむレパードシャーク(カリフォルニアドチザメ)はヒョウのような模様で人気が高いですが、現地(米国)の規制のため入手するチャンスは少ないといえます。基本的な飼育方法は日本のドチザメと同様ですが、高水温には日本産のドチザメ以上に注意しなければなりません。ドチザメ科のサメは胎生で仔サメを産みます。いずれにせよ成魚は並の水槽では満足に飼育できません。
タイワンザメ科のサメは日本近海にも2種が分布します。そのうち沖縄などの深い海にすむヒョウザメというサメがごくまれに観賞魚店に入ってくることがあります。見た目はドチザメ科のサメに似ていますが繁殖様式は卵生で、この卵も入荷することがあります。ただしかなり高価です。どの種も魚やイカ、タコなどを捕食しています。
メジロザメ目・メジロザメ科
▲水族館で飼育されているネムリブカ
メジロザメ科のサメは遊泳性のものが多く、家庭水槽で飼育するのには不向きです。しかし、巨大な水槽でツマグロ(ブラックチップ)や、ネムリブカ(ホワイトチップ)というサメを飼育しているアクアリストもいます。
しかしずっと泳ぎ回るツマグロを状態よく飼育するのであればどんなに小さくても幅3m、奥行きや高さもメータークラスのものを用意しなければなりません。ネムリブカは昼間はじっとしていますが夜間になると活発に遊泳しますので、大型水槽が必要になります。ツマグロは一日中遊泳し、泳ぎながら眠ります。つまり昼間も夜間も寝ていてもずっと泳ぎ続けるようです。一般家庭の水槽でカクレクマノミと一緒に…なんていうレベルの話ではなくなります。
メジロザメ科のサメは主に魚類を捕食し、ヨゴレやツマジロなど大型の種についてはヒトを襲った例もあります。ツマグロはヒトを襲うことはないのですが、鋭い歯を有しており、いじめたりするとかみつかれてけがをする恐れがあるので注意が必要です。
飼育困難なサメ
メジロザメ科の大型種
▲水族館で飼育されているメジロザメの仲間
メジロザメ科のサメは遊泳性が強いものが多く、そのようなサメは家庭の水槽では飼育しにくいものです。そのうち、ツマグロは小型で家庭の水槽でもなんとか飼育することができますが、ドタブカやオオメジロザメ、クロトガリザメなどのサメは2mを超える大きさになり、遊泳性も強いため、水族館クラスの水槽を用意する必要があります。ヨシキリザメやイタチザメなどの大型種、もしくは広い範囲を泳ぐサメは、水族館でも飼育するのが難しいほどです。
ネズミザメの仲間
ネズミザメ目のサメは16種が知られています。そのうちのほとんどが外洋性の大型種であるため、飼育は難しく、家庭の水槽ではまず飼育できない種類で、水族館でも飼育するのは難しいようです。
映画で有名なホホジロザメはさきほども述べたように水族館でさえ飼育困難で、沖縄の美ら海水族館で飼育したもののわずか3日間しか飼育できませんでした。アメリカのモントレーベイアクアリウムでは比較的長期の飼育例がありますが、かなり巨大な水槽を必要とする大掛かりなものであり、同じ水槽で飼育していたサメを捕食するなどして海に帰されたとされています。
オオワニザメ科のシロワニはゆったり泳ぐため飼育は可能そうに思えますが、こちらも巨大な水槽が必要になります。家庭水槽での飼育はまず無理といえるでしょう。
深海性のサメ
▲深海を遊泳するオオメコビトザメ。水族館でも飼育は困難
ラブカやミツクリザメといったサメはいずれも日本国内で発見された個体をもとに記載された深海性のサメです。両種ともほかのどのサメの仲間にも似ないユニークな種で、東海大学海洋博物館、沼津港深海水族館など、過去いくつかの水族館が飼育にチャレンジしてきましたが、残念ながら長期飼育は困難で、ごく短期間しか生存しませんでした。その一方で、深海性といっても浅い水深200m前後にすむ、あるいは浅場から深場まですむトラザメやナヌカザメといった種類の飼育は比較的容易で、どこの水族館でも見ることができます。
ツラナガコビトザメなどの種は餌を追って深いところと浅いところを行き来するともされており、広い水槽が必要になるため飼育が難しくなるようです。写真のオオメコビトザメは底曳網にかかったものですが、残念ながらすぐ死んでしまいました。
サメの仲間ではない魚
名前に「サメ」とついていても、サメの仲間ではない魚類がいます。
サカタザメ・ウチワザメ
▲サカタザメ属の一種。写真はかわいい幼魚。成魚は1mほどになる。
これらの魚は「サメ」と名前がついているものの、鰓が体の腹側に開くことから、エイの仲間になります。ウチワザメの仲間など小型種であれば水槽での飼育も可能ですが、水族館の人気者であるトンガリサカタザメやシノノメサカタザメなど巨大になる種は家庭の水槽での飼育は困難といえます。この仲間ではもっとも一般的な種類であるサカタザメも全長1mに達します。そのため大型水槽が必要となります。
オーストラリア産のフィドラーレイなど模様が美しい種類がたまに輸入されています。しかしながらこれも温帯性の種類ですので高水温で飼育しないように気をつけなければなりません。
ギンザメの仲間
▲ムラサキギンザメ。ギンザメの仲間はサメの仲間とは大きく異なる分類群
現在生きている軟骨魚類(軟骨魚綱)は大きく「板鰓亜綱」「全頭亜綱」の二つの亜綱に分けられます。そのうち前者にはサメとエイの仲間が、後者にはギンザメの仲間が含まれています。ですから、ギンザメもサメやエイと同様の軟骨魚類ではあるもののサメやエイとの縁は遠いといえます。鰓は体の側面に開き、サメの鰓孔は5~7対ですが、このギンザメの仲間は1対しかありません。繁殖形態は知られている限りでは卵生です。
前頭亜綱の魚は深海性の種が多く、あまりアクアリウムではなじみのない仲間ではありますが、ゾウギンザメの仲間やアメリカ西岸にすむスポッテッドラットフィッシュなど、浅い海に生息する一部の種は飼育されることもあるようです。ただし、飼育は難しいとされます。
チョウザメの仲間
▲カラチョウザメ
卵がキャビアの原料となるチョウザメは名前に「サメ」という名前がついていますが、サメの仲間ではなく原始的な硬骨魚類(条鰭綱-軟質区)です。卵目当ての乱獲がたたり、現在は全種がワシントン条約(CITES)の対象種であり、野生個体の国際的な取引に制限があるため、おもに養殖された個体が販売されています。多くはコチョウザメやロシアチョウザメなどの種や、「ベステル(Bester)」と呼ばれる、オオチョウザメ(Beluga)とコチョウザメ(Sterlet)の交雑個体で、淡水で飼育されるものが多いようです。
写真は鹿児島市の「いおワールド かごしま水族館」で飼育されていたカラチョウザメという種類です。1997年に鹿児島県開聞町の定置網にかかり、海水でジンベエザメやマダラトビエイなどと一緒に飼育されていました。全長2m以上の巨大な個体です。チョウザメの仲間は水槽での飼育に関してはコチョウザメなどの小型種を除き、終生飼育は困難といえます。
コバンザメの仲間
▲ヒシコバン。頭部にある吸盤でカジキ類に吸い付く
これも名前に「サメ」とついていますが、サメの仲間とは縁遠い条鰭綱-新鰭区・スズキ目魚類です。別名「コバンイタダキ」といい、背鰭が変化した吸盤で大型魚に吸い付く習性があります。吸着する生物は種によって大体きまっており、コバンザメはサメの仲間に多くついていますが、写真のヒシコバンはカジキの仲間に多く付着するようで、常にバショウカジキと一緒に定置網に入網していました。コバンザメは全長80cmと、それなりに大きくなるため、水槽も大きなものが必要になります。刺身などにして美味な魚です。
なお、コバンザメ科ではなく吸盤も有していないのですが、コバンザメによく似たスギという魚もサメやエイなど大型魚に付随して泳ぐ習性があります。
サメ飼育まとめ
- 一般的な魚類(硬骨魚類、条鰭綱)と異なる軟骨魚類
- 骨は軟骨で鰓孔の数が多いところが硬骨魚類と大きく異なる
- サメとエイの違いは鰓孔の位置
- ロレンチニ瓶と呼ばれる特殊な感覚器官をもつ
- ネコザメやトラザメ、テンジクザメなどの小型種は家庭での飼育も楽しめる
- 水質悪化には弱いので要注意
- メジロザメの仲間はよく泳ぎ家庭での飼育は困難
- ホホジロザメは水族館でも飼育困難
- 深海生のものは飼育が難しいものが多い
- サカタザメ・ウチワザメ・ギンザメはサメの仲間ではない
- チョウザメは原始的な硬骨魚類
- コバンザメはスズキ目の硬骨魚類。吸盤でサメやカジキなどに吸い付く