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2019.04.20 (公開 2018.12.11) 海水魚図鑑

イエローリップダムゼルの飼育方法~ヤマブキスズメダイとの見分け方も紹介

イエローリップダムゼルは、淡い黄色がきれいなスズメダイの仲間です。観賞魚店では「ヤマブキスズメダイ」という名前で販売されていますが、ヤマブキスズメダイとは別種とされます。

性格はスズメダイの仲間では(比較的)大人しめなのでほかの魚と混泳もできますが、それでも温和な魚や小型魚、同種同士の混泳には少々注意が必要です。

標準和名 なし
学名 Amblyglyphidodon sp.
英名 なし。俗にYellowlip damselfishと呼ばれる。
分類 スズキ目・スズキ亜目・スズメダイ科・クラカオスズメダイ属
全長 約12cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッド冷凍イサザアミ
温度 25℃
水槽 60cm~
混泳 同種同士や弱い魚との混泳は要注意
サンゴ飼育

イエローリップダムゼルってどんな魚?

イエローリップダムゼル

イエローリップダムゼルはスズメダイ科・クラカオスズメダイ属の魚です。このクラカオスズメダイ属の魚は11種が知られており、ほかのスズメダイの仲間と比べてやや体高があるのが特徴です。本種はその中でも鮮やかな黄色い体をしており、同属他種とは容易に区別できます。

本種は日本には分布していません。学名はまだないとようですが、バツナダムゼルや、日本の琉球列島でも見られるニセクラカオスズメダイなどと近いといわれており、分類学的検討が必要とされます。また、クラカオスズメダイ属のスズメダイは分類が混乱しているともいわれ、今後の研究に期待したいところです。

体色

▲成魚も黄色いのがうれしい

本種のうれしいところは幼魚も成魚も鮮やかな黄色できれいなところがあげられます。また夜間や警戒しているときなどは体に黒い模様が現れることがあります。

ただし、全長12㎝ほどになり、スズメダイの仲間としてはやや大型になるので、その点は注意が必要です。

ヤマブキスズメダイとの違い

イエローリップダムゼルの尾の付け根背面には黒色点がある

▲イエローリップダムゼルの尾の付け根背面には黒色点がある

イエローリップダムゼルが観賞魚店で当該名称で販売されていることはまずありません。一般的には「ヤマブキスズメダイ」という名前で販売されています。しかし、ヤマブキスズメダイというのは本種とはまた別種とされています。イエローリップダムゼルでは尾の付け根背面に黒色斑があったり、鱗が縁どられているのが特徴とされていますが、それらの違いは微妙です。またごく小さい個体ではこれらの特徴が出ていないこともあるようです。

ヤマブキスズメダイは東インド―西太平洋に生息し、日本では琉球列島に分布します。ヤマブキスズメダイも観賞魚店で販売されていることがありますが、フィジー便などで入ってくる個体を除けば、イエローリップダムゼルの方が多いようです。イエローリップダムゼルはバリ島近海のみに生息しているとされていますが、写真記録によればフィリピンにも分布していると思われます。この名称は「ネイチャーウォッチングガイドブック スズメダイ」や、魚類写真資料データベースなどで使用されています。

イエローリップダムゼルの飼育に適した環境

水槽

先ほども述べたように、スズメダイの仲間としては若干大きくなる魚ですので、水槽もそのぶん大きめのものが必要になります。幼魚のうちは小型水槽でも飼育できますが、最終的には60㎝水槽が必要になってきます。複数飼育するのであればさらに大きな水槽でないと激しく争うおそれがありますので注意が必要です。

水質とろ過装置

スズメダイの仲間ということで比較的水質悪化には耐えられますが、できるだけ良好な水質をキープするようにしましょう。おすすめは上部ろ過槽かオーバーフロー水槽での飼育です。外部ろ過槽を使用する場合は上部ろ過槽やプロテインスキマーなどを使用し、酸欠に陥らないように注意します。なお、イエローリップダムゼルはサンゴにはいたずらをしないため、魚の数を抑えれればベルリンシステムでの飼育も可能です。

水温

内湾に広がるサンゴ礁の浅瀬、水深3~10mほどに生息する魚ですので、水温は25℃をキープするとよいでしょう。もちろん、水温は安定していることが重要で、水温が大きく変動するようであればいくら丈夫なスズメダイとはいえ白点病などの病気になる恐れがありますので、常に一定の温度を保つようにしなければなりません。

ライブロックとサンゴ岩

スズメダイの仲間ではやや大人しめの種類ではありますが、同種同士ではどうしても争うことがあります。そのため複数種を飼育するのであればライブロックやサンゴ岩を組み、隠れ場所などを作ってあげるようにします。

イエローリップダムゼルに適した餌

海の中では潮通しのよいサンゴ礁に生息し、流れてくるプランクトンを捕食します。水槽でもプランクトンフードをよく食べますが、水を汚すおそれがあるので配合飼料を与えたほうがよいでしょう。写真の個体は購入し、水槽に入れたその日から配合飼料(メガバイト レッドS)を食べていました。

イエローリップダムゼルを入手する

イエローリップダムゼルはインドネシアに(おそらくフィリピンにも)生息する種です。インドネシアも広いですが、そのなかでもバリ島周辺に生息しているようです。観賞魚店ではよく似たヤマブキスズメダイと同様に扱われ、価格も大変安価ではありますが、インドネシア産ということで状態には注意しなければなりません。

入荷直後のもの、体に大きな傷があるものは避けます。また白い点がついているものや赤いただれがあるものなどはその水槽のほかの魚にもうつるおそれがありますので、同じ水槽の魚を購入するのは避けた方がよいかもしれません。丈夫で大変飼育しやすいスズメダイの仲間ですが、最初の個体選びが重要といえるでしょう。環境にさえ慣れれば病気にもあまりかからず飼育しやすい魚といえそうです。

イエローリップダムゼルと他の生物との相性

同種同士の混泳

イエローリップダムゼル同士の混泳

▲イエローリップダムゼル同士の混泳

イエローリップダムゼルもスズメダイの仲間ですので、同種同士では若干争います。複数匹入れるのであれば、ヤッコやハギ(ニザダイ)の仲間など、大きなボス的存在を入れておくようにしますと、争いは若干緩和されるでしょう。ただ全く争うことがない、というわけではないので、ライブロックやサンゴ岩などで隠れ家を作ってあげることが重要です。

他の魚との混泳

イエローリップダムゼルと他の魚の混泳事例

▲クマノミとイエローリップダムゼルとの混泳例

スズメダイの仲間としては比較的おとなしい性格をしており、クマノミの仲間やハギ、カエルウオ、小型ヤッコなどさまざまな魚と混泳を楽しむことができます。ただ遊泳性ハゼや小型のハナダイなどはイエローリップダムゼルにもビビって引きこもりになってしまうことがあるので注意が必要です。

サンゴ・無脊椎動物との相性

イエローリップダムゼルはサンゴには害を与えません。LPS、SPS、ソフトコーラルいずれも混泳できますが、生息場所を考えるとソフトコーラルやSPSとの飼育が似合うでしょう。無脊椎動物はクリーナーシュリンプやサンゴヤドカリなどとの飼育できます。一方、イセエビや大型のヤドカリなど、肉食性の甲殻類と飼育すると捕食されるおそれもありますので、一緒に飼育するのは避けなければなりません。逆にカクレエビなど小さいエビは捕食されてしまうこともありますので注意が必要です。

イエローリップダムゼルと他の黄色いスズメダイ

ネッタイスズメダイ

ネッタイスズメダイ

ソラスズメダイ属の魚で、黄色いスズメダイの代表的な種です。産地はフィリピンやインドネシアなどの東南アジアや沖縄などで、頻繁に輸入されるため、イエローリップダムゼル同様に安価な値段で入手できます。しかしながら、それゆえ雑な扱いがされていることも多く、状態がイマイチの個体もいるので購入の際にはよくチェックしましょう。性格もイエローリップダムゼルと比べてかなりきついです。大きくなっても体は黄色いままです。

サルファーダムゼル

これもソラスズメダイ属の魚です。体色は鮮やかな黄色で、ネッタイスズメダイによく似ていますが、胸鰭基部の黒色斑がよく目立ちます。しかし気性はかなり荒く、ほかの魚を攻撃します。また主な生息地は西インド洋と紅海ですので、ネッタイスズメダイなどと比べると、どうしても高価になってしまいます。本種も大きくなっても体は一様に黄色いままです。

ヒレナガスズメダイ

ヒレナガスズメダイは全長10㎝を超える種ですが、ふつうは幼魚が販売されています。体は黄色い地色に黒い縦帯が入り美しいのですが、この美しいのは幼魚期だけで成長すると茶色っぽくなってしまいます。また色彩が変わってしまうだけであればまだよいのですが、成長するにつれ性格もキツくなってしまうので注意が必要です。混泳も大型ヤッコなどが望ましいでしょう。主に奄美諸島以南に分布しており、観賞魚としてはフィリピンやインドネシアから入ってくるので、安価で入手できますが、初心者は手を出さない方がよいでしょう。

カナリーデムワーゼル

まっ黄色の体から想像しにくいのですが、鮮やかなブルーのルリスズメダイと同属の魚です。生息地は西―中央太平洋の島嶼域で、分布域が限られます。そのためどうしても入荷量は少なく、また入荷しても、スズメダイとは思えないほど高価になってしまうのが難点といえます。また性格も荒いようです。もっともこれはルリスズメダイの仲間に共通した特徴ということがいえますが・・・。

イエローリップダムゼルの飼育まとめ

  • ヤマブキスズメダイに似た未記載種と思われるスズメダイ
  • ヤマブキスズメダイの名前で販売されることが多い
  • クラカオスズメダイ属でやや体高が高い
  • 成魚・幼魚共に黄色っぽい体が綺麗な種
  • 成魚の飼育には60cm水槽が必要
  • できるだけ綺麗な水で飼育する
  • 水温は25℃をキープ。安定していることが大事
  • ライブロックやサンゴ岩などで隠れ家をつくる
  • 配合飼料をよく食べるので餌付けは容易
  • 同種同士や温和な小型魚との混泳は要注意
  • サンゴ水槽での飼育も可能
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