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2020.06.17 (公開 2018.05.22) 海水魚図鑑

デバスズメダイの飼育方法~丈夫で飼育しやすく初心者にもおすすめ

デバスズメダイはスズキ目・スズメダイ科の魚です。スズメダイの仲間は性格がキツいものが多いのですが、このデバスズメダイは温和であり、飼育も非常に容易なため、海水魚飼育初心者に最適な魚です。

海では大きなテーブル状のミドリイシなどのサンゴの周囲に大群で生活し、危険が迫るとサンゴの枝間に隠れる習性をもっています。複数飼育も可能で、水槽内でもデバスズメダイの群れを再現することができます。

標準和名 デバスズメダイ
学名 Chromis viridis (Cuvier, 1830)
英名 Blue-green chromis, Blue puller
分類 スズキ目・スズキ亜目・スズメダイ科・スズメダイ属
全長 約8cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッド
温度 24~26度
水槽 45cm以上
混泳 多くの魚と組み合わせられる
サンゴ飼育

デバスズメダイってどんな魚?

デバスズメダイはスズメダイ科・スズメダイ属の魚です。スズメダイ科の魚はクロスズメダイなどのように、成長に伴い色彩が変化してしまうものがいますが、このデバスズメダイは幼魚も成魚も青緑色の色彩をしたきれいな魚です。丈夫で飼育しやすいので、初心者にも最適です。

デバスズメダイと同属の魚

スズメダイ

スズメダイ

デバスズメダイの含まれるスズメダイ属は、スズメダイ科の中でも最大のグループで、およそ100種類が知られています。多くの種がインド-中央太平洋に分布しますが、アメリカ西岸や大西洋、地中海などにも生息しています。

その100種のうち観賞魚として流通するのは20種ほどです。海水魚専門店でもクロオビスズメダイ、シコクスズメダイ、ヒメスズメダイ、カリブ海産のブルークロミスなどの種類がみられますが、このスズメダイ属のなかでもデバスズメダイは特によくみられる種類といえます。

九州北部ではスズメダイ属のスズメダイを食用にします。奄美諸島や沖縄などでもアマミスズメダイやキホシスズメダイ、タカサゴスズメダイなどの大型種を食用にします。スズメダイ科魚類の大きいものは全般的に塩焼などにして美味しいものです。

スズメダイ科の魚はミスジリュウキュウスズメダイ、ソラスズメダイ、ルリスズメダイなど性格がきついものが多いですが、スズメダイ属の魚は比較的温和で協調性があります。

デバスズメダイのそっくりさん

アオバスズメダイ

デバスズメダイにそっくりなものにアオバスズメダイという魚がいます。

アオバスズメダイとデバスズメダイを見分ける特徴としては、胸鰭腋部の様子です。

アオバスズメダイの胸鰭腋部には明瞭な黒い点があります(矢印)。デバスズメダイにはこの黒色斑はないので見分けられますが、慣れないと難しいかもしれません。

飼育方法について大きく異なるところはなく、海水魚店でもほとんど区別されていません。ただデバスズメダイよりも若干大きくなるため水槽も大きめのもので飼育したいところです。

分布域はインド-太平洋域で、日本でも八丈島や琉球列島で見られます。またデバスズメダイ・アオバスズメダイともにハワイ諸島にはいないようです。

標準和名:アオバスズメダイ
学名:Chromis atripectoralis Welander and Schultz, 1951
英語名:Black-axil chromis
分類:スズキ目・スズキ亜目・スズメダイ科・スズメダイ属
全長:11cm

デバスズメダイに適した環境

水槽

単独または数匹であれば30cmほどの小型水槽での飼育も可能ですが、海の中では大きな群れをつくるため、できるだけ大きめの水槽で飼育してあげたいところです。45cm水槽がよいでしょう。もちろん60cm、90cmと水槽が大きければ大きいほど魚の飼育には有利です。

ろ過槽

硝酸塩の蓄積にもよく耐える丈夫な魚ではありますが、水が黄ばんでいるような状態ではよくありません。外掛け式ろ過槽や外部ろ過槽は単用をなるべく避け、上部ろ過槽やプロテインスキマーと一緒に使うようにしましょう。

もちろんオーバーフロー水槽にしてサンプ(水溜め)でろ過をおこなう方式や、ミドリイシなどの飼育に適したベルリンシステムなどのシステムなどでの飼育も可能です。デバスズメダイの故郷であるサンゴ礁の海でも大きなミドリイシの周辺にデバスズメダイが群れているのはよく見られる光景ですので、それを再現するのも楽しいでしょう。ただしミドリイシの飼育は難しいので初心者アクアリストにはおすすめできません。

水温

サンゴ礁の浅瀬に生息するため高水温には結構強く、30℃以上の海水でも元気に泳いでいることがありますが、できるだけ25℃前後で飼育するようにしましょう。高水温だと褪色することもあります。

もちろん水温が安定していることも重要で、とても丈夫なデバスズメダイでも一日に水温が20℃になったり30℃になったりするようであれば、白点病にかかってしまうおそれがあります。

デバスズメダイに適した餌

デバスズメダイに限らず、スズメダイ属のほとんどの種は、海の中では動物プランクトンを主食としています。

しかし飼育下ではわざわざ冷凍のプランクトンフードをメインとして与えなくてもよいでしょう。状態がまともな個体であれば動物性配合飼料にもすぐに餌付いてくれるはずです。痩せているときや繁殖を狙っているのであればプランクトンフードなどを与えてもよいのですが、与えすぎは水質の悪化につながりますので注意が必要です。

デバスズメダイの入手方法と飼育前のチェック

デバスズメダイは日本では高知県以南の太平洋岸に生息しており、釣りや磯採集することも不可能ではありませんが、海水魚店で購入して入手することが多いでしょう。

デバスズメダイの選び方

デバスズメダイは東アフリカ・紅海からライン諸島まで、インド-太平洋域の極めて広い範囲に分布していますが、日本の観賞魚店で販売されているものの大部分は沖縄や東南アジアで採集された個体です。デバスズメダイは1匹あたりの値段は数100円前後と非常に安価な魚で、雑に扱われてしまいやすい傾向があります。そのため購入前のチェックは怠ってはいけません。ネット通販では観賞魚店よりも概ね安価で購入できますが、このチェックをしにくいので初心者にはあまりおすすめしません。

選び方のポイントはほかの魚とあまり変わりません。鰭や体表に白い点があるものや赤いただれ、内出血のようなものがあるものは、白点病や感染症にかかっているおそれもあるためおすすめできません。お店のストック水槽で鰭がぼろぼろになっているものやほかの個体、あるいは別種の魚からいじめられたりしているものも避けるのが無難です。このほか眼が出目金のように突出しているものも選ぶべきではありません。

フィリピンなど東南アジアに生息する魚のうち、スズメダイの仲間は、小さい袋に入れられてくるものも多く、魚はかなりストレスを感じているといえます。長旅の疲れが癒えていない、来たばかりのものも避けた方がよいでしょう。

はじめてデバスズメダイを飼育するのであれば、輸送時間が短い沖縄産のものや、海水魚店で売れ残り、長期間ストックされた元気そうな個体を選ぶとよいでしょう。いったん水槽に慣れてしまえば病気にもなりにくく長期飼育が楽しめます。

デバスズメダイと他の生物との混泳

同種同士の混泳

デバスズメダイの群れ

デバスズメダイはスズメダイの仲間でも温和で自然下では大きな群れを作ります。狭い水槽でもあまり激しい争いをしないため、同種同士での飼育も楽しむことができます。ただし水量の少ない水槽であまりにも多くの数を入れてしまうと水質が悪化してしまうこともありますので注意が必要です。60cm水槽であれば10~15匹前後が安心でしょう。もちろん最初のうちは多くの魚をいれず、1~2匹の魚を入れて水槽をまわしておくことが大事です。

大型水槽で大型個体を複数飼育していると水槽内で産卵することもあります。背鰭や胸鰭が黒くなったり、体が黄色っぽくなる婚姻色を楽しむこともできるかもしれません。同じスズメダイ科であるクマノミの仲間とは異なり、家庭での繁殖は困難ですが、ぜひともチャレンジしてほしいと思います。

他の魚との混泳

水族館で飼育されているデバスズメダイとメガネモチノウオ

▲水族館で飼育されているデバスズメダイと大型魚

スズメダイとしては温和なデバスズメダイは、多くの種類の魚と組み合わせることができます。ハナダイの仲間、小型のハゼの仲間、ヤッコの仲間、チョウチョウウオの仲間、アイゴ、ニザダイ、小型のベラ、人気のカクレクマノミなど色々な魚と組み合わせることができますが、カサゴの仲間、ハタの仲間やウツボの仲間などはスズメダイを捕食してしまうおそれがあり、混泳は避けるべきです。

水族館では大型の水槽でスズメダイの仲間と大きめの肉食魚(ヨスジフエダイやメガネモチノウオなど)を混泳させたりしていますが、これは遊泳のためのスペースが広くあり、スズメダイが隠れるようなサンゴ岩などもたくさん入っているから食べられにくいものです。そのため、狭い家庭の水槽で真似することはほとんど不可能といえます。

サンゴ・無脊椎動物との関係

ウスコモンサンゴ

浅場のSPSがよく似合う

デバスズメダイはサンゴにちょっかいをかけることはありませんのでほぼすべてのサンゴ水槽でも飼育できます。デバスズメダイの生息場所を考えると、やや深場に生息するLPSよりはミドリイシやハナヤサイサンゴなど浅瀬に生息するSPSが似合います。ただし、SPSの飼育は初心者には難しいので、初心者アクアリストは別のサンゴとの組み合わせがよいでしょう。

イソギンチャクやウチウラタコアシサンゴなど、魚を捕食してしまう無脊椎動物には食べられてしまうおそれがありますので注意が必要です。

甲殻類は大型のヤドカリやイセエビなどはデバスズメダイを襲ってしまうためよくありません。逆に小さすぎるエビは食べられてしまうおそれもあります。スカンクシュリンプ、ホワイトソックス、キャメルシュリンプ、サロンシュリンプ、サンゴヤドカリなどとは特に問題なく混泳可能です。クリーナーシュリンプは概ね問題ありませんが、オトヒメエビは動物食性が強いのでなるべく避けます。

デバスズメダイの飼育まとめ

  • 丈夫で飼育しやすく初心者にもおすすめ
  • 幼魚・成魚ともに青緑色の美しい色彩
  • 温和で同種同士の飼育も可能
  • 胸鰭腋部が黒いのはアオバスズメダイという別種
  • 硝酸塩の蓄積には強いが綺麗な水で飼育したい
  • 水温は25℃をキープ。安定していることが重要
  • 小型水槽でも飼育可能だが、45cm以上の水槽で飼育したい
  • 動物プランクトン食。飼育下では配合飼料を与える
  • 安価で購入可能だが、よくチェックしてから購入したい
  • 初心者にはネット通販はおすすめしない
  • 60cm水槽では群れで飼育するとよい
  • ほかの小型魚との混泳もよい。ただし肉食魚はだめ
  • サンゴ水槽での飼育もよい
  • イセエビやオトヒメエビなどはおすすめできない

2020.07.17 (公開 2018.05.16) 海水魚図鑑

カゴカキダイの飼育方法~カーリー対策になるがサンゴ水槽では難しい

カゴカキダイ

カゴカキダイは古くから飼育されてきた海水魚です。熱帯性の魚というものではないですが、きれいな色彩から観賞魚として知られています。

カーリー対策として飼育することもできて、また食べて楽しむのもOK。チョウチョウウオに似た外見をしていますが実際にはメジナなどに近い仲間とされます。

ここではそんな魅力が詰まったカゴカキダイの飼育についてまとめていきます。

標準和名 カゴカキダイ
学名 Microcanthus strigatus (Cuvier, 1831)
英名 Stripey, Convict fish, Footballerなど
分類 スズキ目・スズキ亜目・カゴカキダイ科・カゴカキダイ属
全長 20cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッド
温度 20~25度
水槽 60cm以上
混泳 小型のハゼや臆病なバスレットは注意
サンゴ飼育 ハードコーラルはつついてしまう

カゴカキダイってどんな魚?

カゴカキダイの分類

カゴカキダイに近いとされる魚たち

カゴカキダイ科の魚は4属5種が知られていますが、全ての種がオーストラリアやその周辺海域に分布し、北半球に生息するのはカゴカキダイだけです。ただこのカゴカキダイにも何種かいるのではないかといわれ、海域により微妙な違いがあることから別種とされることもあります。

たとえばRudie H. Kuiter氏の図鑑「Coastal fishes of South-eastern Australia」では、日本やその周辺にすむものとオーストラリア産の西海岸にすむものは異なるかもしれない、とされており、その場合Microcanthus vittatus (Castelnau, 1873)、東海岸に生息するものにMicrocanthus howensis (Whitley, 1931)の学名があてられる可能性があるとのことです。日本産の個体をタイプ標本として学名がつけられており、日本産カゴカキダイの学名変更はなさそうです。

なお、カゴカキダイ科の魚はタカベ科やメジナ科と近縁とされ、これらの科とあわせ「イスズミ科」とされていることもあります(Fishbaseなど)。なお、「海水魚ラボ」における科や属の扱いは原則として日本産魚類検索 全種の同定 第三版(東海大学出版会、2013年)を参考としております。外国産種についても上記のFishbaseなどを含む様々なデータベースや図鑑などを参考にしております。

カゴカキダイの生息場所

水深100mを超える海底から漁獲されたカゴカキダイ

水深100mを超える海底から漁獲されたカゴカキダイ

体色が鮮やかなことから熱帯性の魚と勘違いされがちですが、東北地方以南のほとんど各地の沿岸にみられる魚です。ただ、ナベカと違って奄美諸島や琉球列島でも見られます。生息場所は沿岸の岩礁域で、春から夏にかけては潮溜まりでかわいい幼魚にも出会えます。しかし生息する水深は幅広いようで、水深100m以深で網をひく沖合底曳網漁業でも採集されます。

内湾にも出現し、時には河川の汽水域でも見られることがあります。低塩分にもある程度耐性があるのかもしれません。

カゴカキダイに適した飼育環境

水槽

カゴカキダイは水槽でも10cmを超えます。そのため小型水槽では終生飼育するのは困難といえます。最低でも60cm水槽が必要になります。大型個体を複数飼育するのであれば90cm水槽で飼育するとよいでしょう。

水質

比較的水質悪化には耐えますが、つねに綺麗な水を保つことが重要です。60cm水槽であれば上部ろ過槽をメインに、外掛けプロテインスキマーや外部ろ過槽を使用するとよいでしょう。複数匹で飼育すると排せつ物の量が多くなり水が汚れやすくなるため、ろ過槽の増強は必須となります。

水温

20~25℃くらいの水温で飼育するのがベストといえます。近縁の科であるイスズミやメジナ同様高めの水温でも飼育可能ですが、28℃くらいに抑えるようにしましょう。水槽用クーラーを使用し、安定した水温で飼育することが大切です。

レイアウト

カゴカキダイの生息地をイメージしたレイアウトを組みましょう。おもに岩礁域に見られる魚なので、擬岩やライブロックなどを複雑に組みあげレイアウトします。ライブコーラルは食べられてしまうこともありますので、あまり組み合わせない方がよいでしょう。

カゴカキダイに適した餌

カゴカキダイは雑食性で様々な餌を食べます。釣り針により口に小傷がついた個体はなかなか餌をたべないこともありますが、配合飼料にもすぐになれます。

配合飼料はペレット・フレーク、いずれもよく食べます。クリル(乾燥オキアミ)もよく食べますが、釣り餌のオキアミは防腐剤などが入っているおそれがあるため、飼育している魚には絶対に与えないでください。

カゴカキダイを入手する

カゴカキダイは近海産海水魚を中心に取り扱っている店舗を除き、観賞魚店では販売されていることは少ないです。そのため、自分で採集するのが一番早いといえます。

▲千葉県で撮影されたカゴカキダイの稚魚

カゴカキダイの幼魚は関東地方の磯では春から初夏に磯の浅場で見ることができます。幼魚も成魚と同じような模様をしており、小さくてもはっきりとわかります。太平洋側だけでなく、日本海岸でも採集することができます。写真は千葉県の磯で撮影した幼魚。

高知県で釣れた掌サイズのカゴカキダイ

高知県で釣れた掌サイズのカゴカキダイ

福岡県福津市で採集されたカゴカキダイ。日本海岸にもいる

▲福岡県福津市で採集されたカゴカキダイ。日本海岸にもいる

成魚は俊敏な泳ぎをするので、釣りで採集することになります。細かいサヨリ針などに餌のオキアミなどをつけると簡単に釣れますが、針を深く飲み込んでしまったものは飼育には向きません。

逃がしても死んでしまうことが多く、そういうものは食べてあげたほうがよいでしょう。防波堤の上に放置したままにしておくことのないように。

カゴカキダイと他の生き物との相性・混泳

他の魚との混泳

水族館で飼育されているカゴカキダイ

水族館で飼育されているカゴカキダイ

カゴカキダイの性格はやや強めです。小型のハゼや臆病なバスレットなどとの混泳は避けた方がよいでしょう。

大きめのハナダイや、メジナ、イスズミ、カサゴなどとの混泳は問題ないようです。水族館でも、大きなサメやエイ、アジなどがいる水槽で本種が飼育されていることも多いです。逆にほかの魚をつついたりするコトヒキなどの魚との混泳は避けたほうがよいでしょう。広い水槽では同種同士の混泳も可能なようです。

サンゴ・無脊椎動物との相性

カゴカキダイの食性は雑食性で、甲殻類や軟体動物などを捕食し、水槽に蔓延るカーリーなどを食べてくれますが、個体によってはカーリーだけでなくハードコーラルをつついて食べてしまうこともあります。そのようなサンゴとの飼育は避けた方が無難といえます。

サンゴ水槽のカーリー駆除には本種よりもペパーミントシュリンプや、アイプタシアZなど専用の薬品を使用して駆除した方がよいかもしれません。

甲殻類は小型のものは食べてしまいます。スカンクシュリンプなどのクリーナーは問題ないことが多いですが、イセエビやイシガニなど大きな甲殻類はカゴカキダイを捕食してしまうことがありますので避けなければなりません。

食べても美味しい

カゴカキダイとハタタテダイの塩焼

カゴカキダイの塩焼。左の魚はハタタテダイ

カゴカキダイは観賞魚として飼育されるだけでなく、食用としても知られています。見た目は鮮やかで、食するのをためらってしまいそうになりますが、実は脂がよくのっており塩焼や煮つけなどで美味しく食べることができます。

主な漁法としては刺網、定置網、底曳網ですが、カゴカキダイを専門に狙うことはまずありません。またこれらの漁法で漁獲されたカゴカキダイは擦れなどがあったり、揚がった時点で弱っていたりするため、残念ながら飼育にはあまり適しません。

カゴカキダイの飼育まとめ

  • 黄色と黒の縞模様が美しく熱帯魚と思われがち
  • チョウチョウウオに似ているが、メジナやイスズミに近い仲間とされる
  • 沿岸から水深100mを超える深場にまでみられる
  • 終生飼育には60cm以上の水槽が必要
  • 水温は25℃でよい。それより上がるようならクーラーを設置したい
  • 配合飼料もよく食べてくれる
  • 小型のものは磯採集、大きめのものは釣りで採集する
  • やや気が強め。小魚との混泳は避ける
  • 甲殻類やサンゴは食べられることがある

2019.12.08 (公開 2018.05.14) 海水魚図鑑

ナベカの飼育方法~採集も飼育も容易だが餌に注意

ナベカ

ナベカは鮮やかな色彩が特徴的なイソギンポの仲間です。

派手な色彩から熱帯魚と思われがちですが温帯性の魚で、沖縄などの亜熱帯の海では見ることができません。

標準和名 ナベカ
学名 Omobranchus elegans (Steindachner, 1876)
分類 スズキ目・ギンポ亜目・イソギンポ科・ナベカ族・ナベカ属
全長 7cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッド冷凍イサザアミ
温度 24~26度
水槽 30cm以上
混泳 小型ハゼは注意
サンゴ飼育 基本的に可

ナベカってどんな魚?

ナベカ

ナベカはイソギンポ科の魚です。イソギンポ科の魚は種類が多く、フタイロカエルウオ、カエルウオ、テールスポットブレニー、モンツキカエルウオ、セダカギンポ、ヒゲニジギンポなど観賞魚として、あるいは水槽の壁面などに生えるコケを食べてくれる「掃除屋さん」としてよく知られているものが多くいます。

ただしイソギンポ科とはいえ、コケ取り魚ともされているカエルウオとは若干離れたグループのようで、付着藻類を主食としているカエルウオと異なり雑食性のようです。

ナベカ属の魚はおよそ20種類が知られています。いずれもインド-西太平洋に生息しており、大西洋では南アフリカ周辺にのみ生息していましたが、日本を含むインド-西太平洋に生息するイダテンギンポが西大西洋にも進出して外来魚となっています。

ナベカの魅力は何と言っても鮮やかな黄色の体です。この体色から熱帯魚と間違えられることもありますが、温帯性の魚で関東の磯でも周年見られます。卵は貝殻などに産み付けられ雄は卵を保護する習性をもっています。

ナベカに適した環境

ナベカを含むイソギンポ族・ナベカ族の飼育方法では基礎的なものを以前ご紹介しました。こちらの記事もご参照ください。

水槽

ナベカは大きくても10cm以下で、小型水槽でも終生飼育できます。他の魚と飼育するのであれば45cm以上の水槽で飼育するとよいでしょう。初心者であれば、45cm水槽で飼育すれば管理も楽です。

水質

水質にはあまりうるさくはありませんが、できるだけ硝酸塩濃度を低く保つようにしたいものです。外部ろ過槽よりは上部ろ過槽、小型水槽であれば外部ろ過槽と外掛けろ過槽の併用、もしくは小型プロテインスキマーを併用するのがおすすめです。基本的にはたいへん丈夫で飼いやすい魚といえます。

水温

温帯性の魚ですが、25℃でも飼育できます。我が家でも水温25℃で飼育していますが、特に体調を崩したようなことはありません。ただそれより水温が上がってしまったり、短期間で大きく水温の変動があるようではよくありません。クーラーやヒーターを使用し、年中25℃で飼育するようにしましょう。

隠れ家

ナベカは自然下では岩の隙間などに隠れています。水槽で飼育する場合もアクセサリなどを入れてあげましょう。サンゴ水槽で飼育すると、枝状サンゴの中に隠れたりします。小型水槽ではおすすめしませんが、複数飼育するのであれば大量に隠れ家を入れてあげましょう。

市販のもののほか、カキの殻などもよい隠れ家です。漁港で潮が引いたとき、干上がりそうなカキの殻の中に入っていたナベカを採集したこともあります。

ナベカに適した餌

雑食性で餌付きもよく、適した水温で飼育し、状態さえまともであればすぐに配合飼料を食べてくれるはずです。配合飼料は水に沈みやすいペレットフードがおすすめでよく食べてくれます。どうしても食べない場合は、冷凍のホワイトシュリンプやブラインシュリンプなどを与える必要があります。

カエルウオの仲間はコケを掃除するために入れられることがありますが、同じイソギンポ科の魚であるナベカは水槽に付着するコケはあまり食べてくれません。

ひとくちに「イソギンポ科」といっても、食性はさまざまです。たとえばサツキギンポやヒゲニジギンポは動物プランクトン食性、ニセクロスジギンポなどは他の魚の皮膚を食いちぎったりプランクトンを食べます。ニラミギンポ属の仲間はコケを食べたりプランクトンを食べたりします。カエルウオ属やモンツキカエルウオの仲間は付着藻類を主食とし、ガラスなどに生えたコケも食べてくれます。セダカギンポなどのように生きたサンゴを捕食するものまでいます。

このイソギンポ科やチョウチョウウオ科などのように、ひとつの科の中でも種類により食性が大きく異なるものを飼育するときは、図鑑などで食性をあらかじめ調べておく必要があります。

ナベカの入手方法

ナベカは日本の広い範囲に生息しますが、先ほども述べたとおり、沖縄や奄美など亜熱帯の地域では見られない魚です。また海外では朝鮮半島や中国の一部に分布するのみです。

入手方法は自分で採集する、または近海魚に強い観賞魚店で購入する、の二通りがあります。

採集する

初夏の千葉県の磯。海藻が多い潮溜まりでナベカを採集した。

日本海側で採集したナベカ

日本海側で採集したナベカ

クモギンポ

暖かい海をこのむクモギンポ

岩礁に生息する種で、水深1m以下の潮溜まりでも多くみられる種類ですので、採集は難しくありません。温帯性の魚ですので、ほとんど一年中採集することができます。岩の下などに隠れていることも多く、岩棚の下を探したり、岩をひっくり返したりして探します。探し終わったら岩を元通りにしておきましょう。

日本海側や太平洋側、瀬戸内海沿岸に見られますが水温が高い場所ではあまり見られないようです。水温が高い和歌山や高知の潮溜まりでは本種とよく似たクモギンポという種がみられます。飼育方法はナベカと同様ですが、高水温にかなり強いです。ただ色彩はナベカと比べて地味です。

購入する

ナベカ購入時のポイント

ナベカ購入時のポイント

近年は観賞魚店でも販売されていることがあります。近海海水魚に強いお店であれば、在庫していることも多いです。購入するときは、体表が赤くなっていないか、鰭がぼろぼろになっていないか、体表や鰭に細かい白い点がついていないかなど、注意してみてみましょう。鰭の基部にある大きな白点は斑紋ですので、気にしなくてもよいでしょう。もちろん、入荷して間もないものも購入は避けるべきといえます。

入荷もしくは採集直後を除き、病気にはあまりかかりにくく飼いやすい魚といえます。小魚ですが4~5年ほど飼育することができます。

ナベカと他の生き物との相性・混泳

ナベカは同種同士で争うこともありますので、小型水槽では1匹のみにとどめておくのが無難といえます。他の魚との混泳が楽しいでしょう。

他の魚との混泳

ナベカとヒレナガネジリンボウの争い・混泳

ナベカとヒレナガネジリンボウの争い

ナベカは25℃くらいの水温でも長期飼育が可能ですので、熱帯性魚類との混泳も可能です。温和なスズメダイやカクレクマノミなどの小型のクマノミ属、カエルウオの仲間、小型ヤッコなどと混泳できます。

ただしやや性格がきつめですので小型ハゼなどと混泳するときは注意が必要です。逆に大型のスズメダイなど気が強すぎる魚との混泳はやめた方がよいでしょう。またハタの仲間やカサゴ、オコゼ、カエルアンコウと飼育するとナベカが餌になってしまうおそれがありますのでやめましょう。

問題が発生したらナベカを隔離ケースで飼育するとよいでしょう。一旦飼育した個体には寄生虫などがついているおそれがあるため、採集した場所に逃がすこともしてはいけません。

サンゴ・無脊椎動物との相性

ゴカイ類

▲ゴカイ類との飼育は注意

サンゴとの飼育は可能ですが、ケヤリムシなど環形動物の仲間などは突いてしまうこともありますので注意が必要です。また甲殻類なども極小サイズのものは捕食してしまうおそれがありますので気をつけましょう。

一方細身な体をしており、大きなエビ・カニ類、あるいはイソギンチャクの仲間の餌になってしまうおそれがありますのでこれらの生き物との飼育は避けなければなりません。経験上はサンゴヤドカリの仲間、フシウデサンゴモエビ、サラサエビなどとは同居も可能です。クリーナーシュリンプは概ね大丈夫ですが、オトヒメエビの仲間は大きなハサミでナベカやハゼなどの動きが遅い魚を餌にしてしまいますので危険です。

ナベカの飼育方法まとめ

  • 熱帯魚に見えるが温帯性の魚。沖縄などにはいない
  • 小型水槽での飼育も可能だが45cm以上の水槽がおすすめ
  • 水質にはあまりうるさくないが、硝酸塩が蓄積されすぎるのはよくない
  • 水温は25℃で問題ないが、それ以上上がるようならクーラーが必要
  • 岩の下や隙間などに隠れる。隠れ家を作ってあげたい
  • 配合飼料をよく食べる。コケはカエルウオほどは食べない
  • 本州の磯でも採集できる。関東では周年見られる
  • 近海魚に強い海水魚店で販売されていることも
  • 同種同士は争うので注意
  • 性格は若干きつめ。小型のハゼとは争うことも
  • 逆にスズメダイ科の大型種や肉食魚との混泳は危険
  • ゴカイ類はつつくことも
  • カニやエビ、イソギンチャクなども要注意

2020.12.04 (公開 2018.05.01) メンテナンス

水槽内の硝酸塩の値を下げる4つの方法

レッドシーの硝酸塩テストキット

サンゴや魚を飼育していて、サンゴの調子がイマイチという場合、硝酸塩が蓄積されている可能性があります。この硝酸塩を減らすためにはどうすればよいでしょうか。飼育において見直すべきところ、対策をまとめました。

硝酸塩とは

ミドリイシ

ミドリイシなどSPSの飼育にはベルリンシステムが理想

魚などの生物の排せつ物や残餌は魚にとって猛毒のアンモニアとなります。このアンモニアをバクテリアが毒性の低い亜硝酸にかえてくれます。亜硝酸はさらにバクテリアにより分解され、最終的には硝酸塩となります。この一連が生物ろ過です。

硝酸塩は、一般的に用いられる強制ろ過システムだと水槽に蓄積されてしまい、それ以上分解することが難しく、そして蓄積されすぎると魚やサンゴに悪影響を与えてしまいます。そのため、水替えを行い、水槽から硝酸塩を取り除く必要があります。

ベルリンシステムでは硝酸塩を蓄積するろ過槽を設けず、プロテインスキマーを用いて排せつ物や残餌の段階で水槽から取り除き、最後には窒素まで分解されます(脱窒)。しかし水替えが不要というわけではありません。水替えの頻度は減るでしょうが、水替えには「水槽バランスのリセット」という意味もあり、水替え不要のシステムというのはありえないものです。

また、ベルリンシステムはサンゴを中心に飼育するためのシステムであり、魚を大量に飼育できるシステムではありません。システムが立ち上がっていないのに多くの魚を入れてしまうと失敗してしまいます。

硝酸塩の値を下げるために必要なことは一にも二にも「水替え」です。

硝酸塩が蓄積されすぎるとどうなる?

ハードコーラル、とくにミドリイシやハナヤサイサンゴは硝酸塩の蓄積に弱く死んでしまったり、色が悪くなったりします。これらの水質に敏感なサンゴの硝酸塩は5mg/リットル以下が理想とされています。

他のサンゴ、たとえばオオバナサンゴやハナガタサンゴなどは若干量の硝酸塩があったほうがよいともいわれますが、それでも20mg/リットル以下にとどめておきたいものです。

ハナダイ

ハナダイの仲間は綺麗な水を好む

魚は硝酸塩が高くても生存することはできますが、色があせてしまったり病気がでやすくなったりすることもあります。その結果海水魚の魅力を大きく損ねてしまうことにもなりますので、なるべく硝酸塩の値を低く保ちたいものです。

また長い間水替えをしていない水槽に新しく魚を入れると、すぐ死んでしまうこともあるので注意します。以前から飼育している魚が元気なように見えても、それは高い硝酸塩に慣れてしまっているだけなのです。

硝酸塩濃度をチェックしよう

飼育水を直接みても、海水が黄ばんでくるなどの特徴はありますが、硝酸塩がどのくらい蓄積されているのかはわかりにくいものです。これを可視化してくれるのがテスター(テストキット)です。

硝酸塩の蓄積や、元素欠乏に弱いミドリイシを飼育するのであればKH、カルシウム、マグネシウム、リン酸塩の値はチェックするべきですが、魚と丈夫なLPS、あるいはソフトコーラルだけを飼育する場合でも、少なくとも硝酸塩とpH値は測定すべきです。硝酸塩の濃度が高くなるとpHも下がってきますので、測定は重要です。

硝酸塩を下げる前にやるべきこと

硝酸塩の値を添加剤やバイオペレットを用いて下げる前に、以下のことを見直すようにしましょう。

定期的に水替えする

硝酸塩を水槽から取り除くもっとも簡単かつ安全な方法です。しかし、硝酸塩が砂の間やライブロックなどに蓄積してしまうと定期的に水替えしてもなかなか硝酸塩の濃度が下がらなくなってしまうこともあります。

魚の数・給餌を見直す

魚の数が多くなると、排せつ物や残り餌の量も増えてしまいます。魚がたくさん水槽にいるとその分硝酸塩の濃度も高くなりやすくなるといえます。

また給餌方法の見直しも必要です。餌が少しでも残ってしまうと生物ろ過が行われやがて硝酸塩に変わってしまいます。ハナダイやハゼなどではコペポーダなどをばら撒いて与えたいものですが、餌のロスを少なくしないと、上記のようなことがおこってしまいます。特にハナダイの仲間は水質悪化に弱いものがいるため、注意しなければなりません。

プロテインスキマーを使用する

プロテインスキマーは、生物ろ過がはじまる前の排せつ物・残餌などの段階で水槽から取り除かれますので、その分硝酸塩が砂やろ過槽に蓄積されるスピードを抑えることができます。水槽にあったサイズのものを使用しましょう。

またエアーレーションを行い水中に空気を溶け込ませる効果もあります。これは以下の項目で紹介する添加剤やバイオペレットを使用する上でスキマーの設置が欠かせない理由にもなっています。

ただし、過信は禁物です。プロテインスキマーを使用して水が汚れにくくなることはあっても、「水替えが不要になる」ということはありません。

硝酸塩を下げる4つの方法

「水替え」以外の硝酸塩を下げる方法についてまとめます。

  1. 海藻入れる
  2. 添加剤を入れる
  3. バイオペレットを入れる
  4. 嫌気層を作る

①海藻を入れる

クビレズタ(ウミブドウ)。飼育しやすい緑藻の仲間

クビレズタ(ウミブドウ)。飼育しやすい緑藻の仲間

海藻は硝酸塩を含む栄養塩を吸収してくれます。この海藻を魚やサンゴを飼育するためのメイン水槽、もしくはリフジウムと呼ばれる別水槽を設けてそこで育てる方法があります。

リフジウムでは24時間照明を点灯させられるというメリットがあります。海藻は寿命が来ると全体が溶けてしまいますが、24時間照明を点灯させることで溶けなくなります。魚やサンゴを飼育しているときは、24時間照明を点灯させるとストレスになりますので、こまめにトリミングし株分けをすることで全体が溶けてしまうのを防ぐようにします。

おすすめの海藻はクビレズタ(ウミブドウ)、タカノハズタ、ヘライワズタなどのイワズタ科の緑藻類です。これらの緑藻は初心者でも容易に飼育できます。小さなワイングラスのようなカサノリや紅藻なども綺麗ですが、これらの飼育は難しいです。またアミジグサの仲間のようにライブロックなどに付着しあっという間に増殖し、サンゴの成長に悪影響のある種もいます。

筆者が自宅でサンゴ(ウスコモンなどのSPS)を海藻と飼育していたところ、硝酸塩はほとんど検出されなかったのですが、海藻をヒフキアイゴの餌にしてしまい無くなってしまったあと急速に硝酸塩の値が増加してしまいました。海藻を飼育することにより、意外なほど硝酸塩の除去効果が期待できます。

海藻を入れる場合プロテインスキマーは必要とはしません。ただし、スキマーにはエアレーションの効果もあったり、微細な汚れを取り除く効果もあるので、使用しても問題はありません。

ヨウ素、微量元素(鉄分を含む)の添加は必須です。鉄分はコケの発生につながりますので、過剰な添加は禁物です。ヨウ素や微量元素はプロテインスキマーに取り除かれやすいので特に定期的に添加することが重要です。

海藻を入れるメリット

海藻の中でもウミブドウと呼ばれるクビレズタや、ヨレズタ、タカツキズタなど美しいものは観賞用としてもすぐれています。また、メイン水槽で育成できる場合は特別な機材を必要としないのもよいところです。

海藻の中には小さなプランクトンが多数見られ、これらは魚やサンゴの餌にもなります。照明は蛍光灯、またはスポットタイプのLEDで問題ありません。

海藻を入れるデメリット

ナンヨウハギ

ニザダイの仲間は海藻を捕食してしまう

メイン水槽で海藻を育成する場合、水槽にはアイゴやニザダイの仲間を入れることができなくなります。これらの魚が海藻を食べてしまうことがあるからです。カエルウオの仲間は、海藻に付着する微小な藻類を捕食しますが、海藻には悪影響を与えません。このほかマガキガイやコケ取り貝なども問題ありません。

リフュジウムを使用して海藻を飼育する場合、照明を24時間点灯させることが推奨されます。これは海藻の寿命が来て一気に溶けてしまうのを防ぐためですが、これを行うとどうしても電気代がかかってしまいます。それ以前にリフュジウムを設置するにも新たに水槽を購入したりする必要があり、コストがかさんでしまいます。また海藻を入れたからといって水替えをしなくてもよくなったり、大量に魚を入れることができたりする、というものではありませんので、注意が必要です。

バイオペレットや添加剤などを併用し硝酸塩やリン酸塩を取り除きすぎると海藻の栄養がなくなってしまい、海藻が溶けたりしてしまうこともありますので、注意が必要です。

海藻を育てるシステム

海藻を育てて硝酸塩・リン酸塩を排除する飼育システム「エコシステム」も存在します。アメリカのEcoSystem Aquarium(日本総代理店はAMAジャパン)によるシステムで、ミラクルマッドと呼ばれる専用の底砂を敷き嫌気層を作り硝酸塩を取り除いたり、ミラクルマッドからミネラルや微量元素を海水に溶出させるなどして、自然の海を再現する試みです。エコシステムの運用はある程度のノウハウが必要であり、サンゴメインの水槽には適しているが魚メインの水槽には適していないなどの注意点があります。

このほかReef live(LSS研究所)からは「シーウィードリアクター」というものが販売されています。この商品を使用することで簡単にリフジウムを作ることができます。メーカーによれば水質の改善、独自の吸収効果、夜間のpHの安定、ORP上昇などの効果を謳っています。従来は水槽の上に照明を置いていましたが、この商品はスパイラル照明を使用し、底の方にまで光が届くようになっています(光量の調整も可能)。さらに内部式のものにはDCポンプとコントローラが標準装備されています。

内部式・外部式それぞれ3つのサイズがラインナップ、色も白・黒・赤の3色から選ぶことができます。デメリットは外から海藻の様子が見えにくいことがあげられます。また海藻の種類はイワズタの仲間よりもホソジュズモという海藻がよいようです。

②添加剤を入れる

レッドシー社の「NO3:PO4-X」や、ハートトレードが販売するアメリカ製「AZ-NO3」という商品があります。

レッドシーのNO3:PO4-Xはリン酸塩も水槽から取り除きますが、スキマーが必ず必要であり、専用のテストキットを使用してチェックする必要があります。AZ-NO3のほうはプロテインスキマーがない水槽でも使用不可ではありませんが、酸欠になるおそれがあるため、エアレーションはしたほうがよいでしょう。

低栄養塩を実現させるためのVSVメソッド(Vodka, Sugar, and Vineger)も同様に、ウォッカや砂糖、酢を炭素源として水槽に投入しバクテリアの増殖をうながし、水槽から硝酸塩を急速に除去します。もちろん市販の添加剤を添加する方式でも、VSVメソッドでも、説明書やマニュアルをよく読んだり、情報を入手してそれらに従わなければなりません。

メリット

毎日添加をし続けることで安全かつ効率的に硝酸塩(NO3:PO4-Xではリン酸塩も同時に)除去することができます。ハイパワーのプロテインスキマーが必要ですが、バイオペレットリアクターを必要としないのがメリットといえるでしょう。サンゴ水槽だけでなく、魚水槽での硝酸塩除去にも使用できます。

デメリット

これらの商品はいずれも「バクテリアの餌」のようなもので、バクテリアの活性が高まりますが、硝酸塩が高い水槽では水が白濁してしまうおそれがあります。また、好気性のバクテリアが増殖しすぎると酸欠を起こすおそれもあるので注意しなければなりません。

NO3:PO4-Xはプロテインスキマーのついていない水槽では使用できません。きちんと説明書をよく読まないとかえって害になることがありますので注意が必要です。

またNO3:PO4-Xの主成分はメタノール(メチルアルコール)ですが、これは強い可燃性をもつため保管にも注意が必要です。さらに炭素源を水槽に添加する場合はあらゆるバクテリアが発生するおそれがあるため、この点も気をつけなければいけません。

このほか最近はみりんを水槽に添加して硝酸塩を減らす、というのも流行っていますが、このみりんも入れすぎてバクテリアが急速に増殖して酸欠の状態がはっせいしやすくなるなど、手軽に聞こえますが水槽崩壊のリスクがあることも理解しておかなければなりません。

AZ-NO3(硝酸塩除去剤)240ml

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③バイオペレットを入れる

バイオペレット

専用のリアクターの中にバイオペレットを入れて、リアクターの内部でペレットを回転させて利用するものです。バイオペレットも炭素源、つまり「バクテリアの餌」のようなもので、好気・嫌気両方のバクテリアの増殖を促し、硝酸塩を窒素ガスにして水中から取り除きます。

写真のバイオペレットはオランダのVanHouten社のもので、硝酸塩だけでなくリン酸塩も除去することができます。材料は生分解性樹脂で、使用しているうちに減少してしまいますので、数か月に一度ペレットを追加する必要があります。

バイオペレットの表層部に好気性の、その内側には嫌気性のバクテリアが繁殖するため、好気性バクテリアの増殖による酸欠を防ぐために水中に酸素を供給するプロテインスキマーが必要になります。またプロテインスキマーは硝酸塩をバクテリアにとりこませたあと、バクテリアを取り除く役割もすることから、設置は必須です。

メリット

添加剤と同様、楽に硝酸塩濃度を下げることができるのがメリットといえます。添加剤の場合は毎日添加しなければならないのですが、このバイオペレットはバイオペレットリアクターにペレットを入れるだけで硝酸塩やリン酸塩の除去を行うことができます。ただし、硝酸塩濃度はテスターを使用して計測したいものです。

デメリット

バイオペレットリアクターと、ホース、ポンプなどを別途購入する必要があること、水中ポンプを使用する場合は水温上昇を招くこともあり、注意が必要です。また硝酸塩が高い状態でバイオペレットを使用すると、好気性バクテリアが過剰に発生してしまい、それにより酸素を消費し酸欠を起こしたり水が白濁してしまうおそれもあるため注意が必要です。また、もともと硝酸塩濃度が少ない水槽では思ったような効果が得られない場合があるようです。

またバイオペレットリアクターをうまくまわすことも必要です。水流が強すぎるとペレットがリアクターの上方、弱すぎると下方にたまってしまうので強すぎず弱すぎず、適切なサイズの水中ポンプも必要になります。もちろんプロテインスキマーもハイパワーのものが必要ですし、硝酸塩の測定もハイレベルなテスターが欲しいところ。機材にお金がかかってしまうのも欠点といえるかもしれません。

④嫌気層を作る

砂を分厚く敷き好気性・嫌気性両方のバクテリアのすみかを作る図

砂を分厚く敷き好気性・嫌気性両方のバクテリアのすみかを作る

水槽に嫌気層を作る方法です。よくいわれているのが砂を厚く敷くDSB(Deep Sand Bed)システムと呼ばれるものです。これは細かいパウダー状の砂を分厚く敷くことにより、水槽の下部の方に酸素の極めて少ない嫌気層を作成する方法です。

さらにこのDSBを進化させたモナコ(ジョベール)システムという方法もあります。もちろん、実際にセットするときには図で示したもののほかに水中ポンプやエアレーション、温度調節のための装置、照明などが必要になります。ライブロックも好気性バクテリアを水槽に導入するのに必要です。

砂を分厚く敷き、嫌気層を作ると硫化水素が発生し、魚やサンゴにダメージを与えるおそれがあります。ではなぜわざわざ砂を分厚く敷き嫌気層を作るのでしょうか。

嫌気層を作ると、酸素を嫌う嫌気バクテリアが増殖しますが、この嫌気バクテリアは硝酸塩を窒素にまで分解してくれるのです。このほかにLSS研究所が出しているナイトレイトリアクターという器具もあります。専用のサルファー(硫黄)メディアを使用して硝酸塩を水槽から取り除きます。

メリット

一般的な好気バクテリアは残り餌や生物の排せつ物から出てきたアンモニアを亜硝酸、亜硝酸を硝酸塩に変えてくれます(生物ろ過)が、硝酸塩は水槽にのこり、水替えをして水槽から取り除く方法が一般的です。

しかし嫌気層を作る方法では嫌気バクテリアが硝酸塩を窒素にまで分解してくれることが大きなメリットとしてあげられます。この嫌気層をペレットや専用の添加剤を使用しなくても簡単に作れるのがDSBシステムです。

デメリット

ベントス食ハゼ

DSBではベントス食ハゼの飼育はできない

底砂を厚く敷き嫌気層を作るのであれば、当然大量の砂を用意する必要があります。このほかに大きなデメリットとしては砂を掘り起こす魚や甲殻類は入れられないということもいえます。具体的に言えばベントス食性のハゼやチンアナゴ、ジョーフィッシュなどの魚やテッポウエビなどです。

さらに硫化水素が発生するなどして、魚が突然死してしまうこともあります。これらの理由からか、最近はDSBシステムもモナコシステムもあまり用いられず、ベルリンシステムやゼオビット、バイオアクティフなどのシステムでサンゴを飼育しているマリンアクアリストが多いようです。また、DSBやモナコシステム、ベルリンシステム、ゼオビットなどはあくまでもサンゴを中心に飼育するシステムであり、魚を多く入れられるシステムではないことも理解しておく必要があります。

ナイトレイトリアクターを使用する場合は、ORP(酸化還元電位)コントローラーを使用する必要があります。メーカーによればORPコントローラーがなくても使用自体はできますが、トラブルを避けるためにもORPコントローラーを使用するのが安心です。

硝酸塩の値を下げる方法まとめ

ここまで海藻、添加剤、バイオペレット、嫌気層を作成する方法を簡単にご紹介しました。本ページでは概略のみご紹介しましたが、実際にシステムを取り入れる上では正確な運用とシステムに対する理解が必要です。とくにVSVメソッドのように少し間違えると魚を死なせてしまうシステムもありますので注意が必要です。

  • 生物ろ過により水槽内に蓄積される
  • 蓄積された硝酸塩は水替えで水槽から排出するのが基本
  • 嫌気性バクテリアにより脱窒するシステムも
  • 硝酸塩の蓄積に弱いサンゴはベルリンシステムでの飼育が推奨される
  • ベルリンシステムでも水替えが不要になるわけではない
  • 硝酸塩濃度はテストキットでチェック。pH値も同時にチェックしたい
  • 魚が多いと排せつ物も多くなり硝酸塩が増える
  • 給餌の際に残餌をなるべく出さないようにしたい
  • スキマーは排せつ物や残餌の段階で水槽から取り除く。設置は有効
  • 海藻は硝酸塩やリン酸塩を吸収する
  • 添加剤やバイオペレットは好気性バクテリアの餌を供給する
  • 嫌気層を作り嫌気性バクテリアの増殖を促す方法も

各システムのメリット・デメリット

方法 メリット デメリット
海藻飼育 ・簡単
・海藻が鑑賞対象になる
・プロテインスキマー不要
・電気代がかかる
・飼育できない種がある
添加剤 ・簡単
・魚中心の水槽でもOK
・プロテインスキマー必要
・バクテリアが増えすぎる可能性
・NO3:PO4-Xは可燃性
・酸欠に注意
・菌の発生リスク
バイオペレット 簡単 ・専用リアクターが必要
・水温の上昇を招くこともある
・バクテリアが増えすぎる可能性
・酸欠に注意
・適度な流量のポンプが必要
嫌気層 簡単 ・大量の砂が必要
・飼育できない種がある
・硫化水素の発生リスク

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