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2020.07.17 (公開 2020.07.17) メンテナンス

ライブロックに二枚貝が付着していた際の対処方法

マリンアクアリウムで使用されるライブロックにはさまざまな生物が付着していますが、その中にはそのまま水槽で飼育し続けてよいものだけでなく、害を及ぼすおそれがあるため、水槽から取り除きたい生物もいます。ライブロックからはたまに二枚貝の仲間が出てくることもあります。この二枚貝は果たして飼育している魚やサンゴに害を与えてしまうのでしょうか。それとも何もせずそのまま飼育していてよいのでしょうか。今回はライブロックから出てくることがある二枚貝とその対応方法についてご紹介します。なお、ライブロックから出現する生物についてはこちらもご覧ください。

二枚貝とは

▲アサリ

分類学的には動物界・軟体動物門・二枚貝綱に属する生物です。昔は斧足綱とも呼ばれていましたが、昨今は二枚貝綱と呼ばれることが多くなっているようです。二枚貝は巻貝やツノガイの仲間と異なり、その名前の通り、二つの殻をもつ貝の仲間です。一般的には岩に固着したり、砂泥底中に埋まりながら暮らしており、自力で動くことができないような種類も多いです。食性は一般的に水管から有機物やプランクトンを吸い込んで捕食しています。海産が多いのですが、ドブガイやヌマガイ、シジミなど淡水に生息するものもいます。

二枚貝は食用種も多く、思いつくだけでもアサリ・ハマグリ・バカガイ・アカガイ・ホタテガイ・マテガイ・カキなど、美味なものもいろいろといます。しかしながらその食性ゆえに有害物質を取り込むこともあるので食用にする際には注意が必要なことがあります。このほかに真珠養殖の母貝としてアコヤガイなどのウグイスガイ類を使用したり、貝細工を作ったりします。

ライブロックにつく二枚貝

二枚貝の仲間と一口に言ってもさまざまなものがあります。アサリやハマグリのように砂泥底にもぐってすむものや、岩の中に穴を掘ってすむもの、岩に付着しているものがいますが、ライブロックについている二枚貝は岩に付着するもので、エガイの仲間やイガイ科、もしくは小型のウグイスガイ科、あるいはカキの仲間のものが多いです。このほか大型のサンゴを購入すると岩の中に穴をほってすむ二枚貝が見られることがあります。

フネガイ科

▲エガイと思われる貝

フネガイ科に属する二枚貝の仲間で、ライブロックにつく二枚貝としては多くみられるものです。ライブロックの隙間や穴の中に潜んでいることも多く、結構高い確率で入ってくる貝といえます。サンゴ礁ではベニエガイなどの美しい種が知られていますが、まず観賞魚店では販売されない種類といえます。おもに足糸というものを出して岩やコンクリートに固着しています。

イガイ科

▲ムラサキイガイ

この仲間は欧州で「ムール貝」と呼ばれよく食べられているものです。主に岩やコンクリートなどに足糸と呼ばれるもので張り付いています。写真の個体にも見られます(長いふさふさの糸のようなもの)。ほかにミドリイガイなどの貝もいますが、サンゴ礁にはあまり多くはないようです。サンゴ礁ではイガイの仲間にかわり、ウグイスガイやフネガイの仲間が多くなります。そのためライブロックについていることはあまり多くないように思います。

ウグイスガイ科

▲ウグイスガイ科の代表種 アコヤガイ

ウグイスガイ科の貝もいろいろいますが、小さいのがライブロックについてくることがあります。ただしキュアリングの際にはじかれることも多くありますので、発生することは少ないようです。この仲間で有名なのはアコヤガイで、この貝は真珠養殖の母貝になります。ほかこの科にはマベガイなど、真珠養殖の母貝になるものが多いです。このほか似たようなアオリガイ科の仲間も見られますが、アオリガイの仲間はウグイスガイ科よりも貝殻がもろいので到着時には死んでいることもあります。

この仲間も足糸を使用して岩などにくっつきます。写真でもアコヤガイの左のほうに緑色の足糸が見られます。

カキの仲間

熱帯のサンゴ礁にもカキの仲間が生息しており、一部はライブロックなどに小さいのが付着していることもありますが、トサカガキなどは美しい形・色をしているので販売されていることもあります。ライブロックに付着していますが、これまでご紹介した貝とは異なり、この仲間は足糸でくっついているわけでなく、セメント質を分泌して岩に付着しているようです。日本沿岸ではマガキやイワガキ、イタボガキなどを食用にしていますが、ライブロックの中に生息するものは食用にはなりません。

二枚貝は有害?無害?

▲ライブロックについていたが死んでしまったエガイの仲間

二枚貝は巻貝とはことなり、サンゴを食べたり魚を襲うということはしません。そのためマリンアクアリウムではほぼ無害な存在ではあります。しかし、注意点としては死んでしまうと著しく水質を悪化させてしまうということがいえます。とくに大きな二枚貝を小型水槽で飼育しているときなどは注意が必要です。ただ写真のような小型個体が死んでしまってもあまり水質に悪影響はありませんでした(殻サイズ2.5cm、水槽サイズ40cm。アクアシステムのルノアール360)。

また、よく「二枚貝は水質浄化に役立つ」などとうたわれて販売されていますが、これは二枚貝が粒子状の有機物をろ過するようにして捕食しているものの、それほど劇的な水質改善は望みにくく、また逆に何かのトラブルがあって死んでしまったら一気に水槽崩壊に近づきます。結論として、特に大きな害は及ぼさないものの、小型水槽での飼育には注意が必要な生き物といえます。場合によっては取り出したほうがよいかもしれません。また水槽から取り出しても、海に逃がすようなことは決してしてはいけません。

マリンアクアリウムで飼育される二枚貝

二枚貝も種類が豊富ですが、マリンアクアリウムではあまりお目にかかれません。砂に潜っているものも多く、そういう意味でもなかなか見られないといえますが、飼育が難しいものも多いというのがその理由といえます。しかし、中にはマリンアクアリウムで飼育される二枚貝もいます。

シャコガイ

▲シャコガイ

シャコガイは二枚貝の中でもアクアリストにはお馴染みの貝といえます。外套膜に褐虫藻を共生させてそこから主にエネルギーを得ているため、強い光がないと飼育は難しいといえます。また水質も高いレベルのものが求められ、サンゴ、それもSPSを飼育するような環境が欲しいところです。そのため、初心者には飼育が難しい貝といえます。

なお、シャコガイ科には世界最大の二枚貝の仲間であるオオシャコガイも含まれています。この仲間はいずれの種も食用として人気で養殖もされているほどです。シャコガイの飼育方法はこちらをご覧ください。

ミノガイの仲間

▲フクレユキミノか?

ミノガイ科の貝も飼育されることがあります。有名なのが「フレームスキャロップ」ともよばれるウコンハネガイで、非常にカラフルな色彩で人気がありますが、殻を開閉させて動くという特徴があります。しかしこのほかにも似たような貝が何種類かおり、一部の種は海で採集することもできます。ただし長期飼育についてはやや難しいような印象を受けます。また写真のミノガイ(フクレユキミノ?)は貝殻が薄く写真の個体も少し欠けてしまっていました。

ライブロックにつく二枚貝まとめ

  • ライブロックに二枚貝がついていることもある
  • ライブロックにつく二枚貝はほぼすべて岩に固着するタイプ
  • フネガイ科のエガイなどが多くみられる
  • イガイ科は岩などによく固着するがライブロックについていることは少ない
  • ウグイスガイ科やアオリガイ類は小さいものがついていることがある
  • カキの仲間が固着していることもある
  • 基本的に生物を捕食するなど害を与えることはない
  • 死ぬと水質が急激に悪化する
  • 水槽から出す場合も海に逃がしてはいけない
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