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2020.02.14 (公開 2020.02.13) 海水魚の採集

関東の磯で採集できるウツボの仲間とウツボに似た魚たち

海水魚ラボではこれまで、何度かウツボの飼育についてご紹介しました。我が家ではウツボの仲間を3種類飼育していますが、これらはすべて和歌山、四国、沖縄で採集した、もしくは採集されたものを頂いたものです。では関東の磯でウツボの仲間を採集することはできるのでしょうか。

関東の磯でもウツボの仲間は4種類見られます。夏から秋の磯では関東の潮溜まりでもウツボに出会える可能性があるのです。今回は関東の海で採集できるウツボの仲間と、ウツボの仲間に似た魚をご紹介します。

関東の磯

▲千葉県の磯

関東地方の磯は四季の変化が大きいです。冬から春にかけては多くの海藻が見られ、夏や秋など水温が温むと海藻が春よりも減退していきます。もちろん、魚も季節により現れるものが変わります。メジナやカサゴのようにほぼ周年見られるものもいれば、スナビクニンやダンゴウオのように冬期にのみみられるもの、ムツのように冬から春に幼魚のみ浅瀬で見られるものなどがいます。また、夏から秋にかけては「死滅回遊魚」といい、南方系の魚が関東の磯でも見られます。では、ウツボの仲間は見られるでしょうか。

関東の磯で見られるウツボ

先ほども述べたように、関東地方の磯ではさまざまな南方系の魚が見られるにもかかわらず、ウツボ科魚類の種数は少ないです。ウツボは「葉形仔魚」(レプトケパルス)と呼ばれる期間を浮遊して過ごすようで、関東近辺に現れてもよさそうなものですが、繁殖場所が南方なのか、なかなか関東の磯には姿を現しません。関東地方の磯で見られるウツボは、以下の4種にほぼ限定されています。

ウツボ

お馴染みのウツボ

お馴染み、標準和名ウツボです。日本では茨城県以南の太平洋岸に広く分布する普通種で、房総半島でも周年見られます。南は九州まで多く、奄美大島や沖縄でも見られますがまれです。

黄色い体に褐色の帯があり、臀鰭の縁辺に明瞭な白色線があるのが特徴といえます。基本的には温帯性ですが、小笠原諸島、奄美大島や沖縄の慶良間諸島でもまれですが見られます。海外では朝鮮半島、台湾、ハワイ諸島に分布していますが、ハワイ諸島のウツボは同種のように見えません。

浅場から深場にまでみられ、浅いところのものは25℃くらいでも飼育することができます。成魚は唐揚げや干物などで賞味されています。

ワカウツボ

▲水族館で飼育されているワカウツボ

ワカウツボは千葉県以南太平洋岸の磯で見られるウツボです。ただし関東の沿岸ではあまり見られず、多くは紀伊半島や四国の沿岸で見られます。分布域はインド-太平洋域と東太平洋にまで及びますが、インド-太平洋域では熱帯域では見られません。そのため低めの水温で飼育するのがよさそうです。

個体により斑紋や色彩などが大きく異なるのも特徴的ですが、頭部や吻の部分が黄色であることも多いです。よくにたハナビラウツボとは、口の中の色彩により区別されます。ワカウツボは体色と同じか、灰褐色で、ハナビラウツボは白いです。

トラウツボ

▲トラウツボ

赤い体に白色の斑点がある美しいウツボです。トラウツボの特徴はこのほかに両顎が湾曲し、完全に顎を閉じられず常に口から牙状の歯をのぞかせること、後鼻孔が長い管状になることもあげられます。温帯性で千葉県から屋久島までの太平洋岸、小笠原諸島では多く見られますが、沖縄では伊江島からの記録があるもののほとんど見られないようです。海外ではインド-太平洋域にいます。

その派手ないでたちから観賞魚として人気が高いウツボです。しかし全長80cmになり、大型水槽が必要です。

コケウツボ

コケウツボは相模湾から奄美大島までの太平洋岸と台湾、ガラパゴス諸島に分布する種です。口の部分はトラウツボ同様に湾曲していて、鋭い牙を口から覗かせますが、後鼻孔は管状にならないこと、体にコケ状の斑紋があること、などの特徴によりトラウツボとは見分けられます。やはり全長90cmになるため、大型水槽でないと飼育できない種です。

このほか、千葉県から相模湾沿岸ではタカマユウツボ、オキノシマウツボ、アミウツボ、ミゾレウツボ、ユリウツボ、クロエリウツボなどが確認されていますが、まれなタカマユウツボを除き深場にすむため磯採集で遭遇することはできないことから今回は除外させていただきました。

ウツボの仲間を採集したら

ウツボは2本の網を使い、片方の網でもう片方の網へ追い込むようにして採集するとうまくとれます。テレビなどでよく使われる銛やヤスで採集すると、ウツボは死んでしまうのでよくありません。

ウツボを採集したら、速やかに綺麗な海水をはったバケツの中に泳がせる必要があります。ウツボは海から出てもしばらくの間は生きていられますが、その割には酸欠に弱いためエアポンプで酸素を送ることも忘れてはいけません。ただしフタを開けっ放しにしておくとすぐ脱走してしまうので、フタを閉めても空気を送られるようなバケツを購入するか、コマセバケツに穴をあけるなど改造しておくとよいでしょう。

ウツボと間違えられやすい魚

関東の磯では一見、ウツボの仲間に見えるものの、ウツボの仲間でないものも見られます。ほかのウナギ目の仲間もいるのですが、多くはカズナギ属や、ダイナンギンポ属の魚です。

カズナギ属

▲コモンイトギンポ

カズナギの仲間はスズキ目・ギンポ亜目・タウエガジ科(従来はゲンゲ科とされた)の魚です。細長い体をしていて、口が大きくウツボに似ている魚です。日本では北海道、本州~瀬戸内海、九州北岸に生息する温帯性の魚で、関東沿岸ではトビイトギンポ、コモンイトギンポ、カズナギの3種が知られていますが10cm前後と小さなものが多いです。また高水温にも弱く、水温が高い夏場には浅瀬から姿を消してしまいます。水槽でも水槽用クーラーがなければ飼育は不可能です。

ウツボの仲間ににていますが、背鰭には棘をもち、明瞭な胸鰭をもっていることにより見分けることができます。

ダイナンギンポ属

▲ダイナンギンポの仲間も磯で採集できる

ダイナンギンポの仲間もカズナギ属同様タウエガジ科の魚で、関東の磯ではダイナンギンポとベニツケギンポの2種が見られます。この仲間はウツボ同様長い体が特徴ですが、ダイナンギンポには胸鰭があること、ウツボの仲間には見られない、網目のような側線が体にあることで見分けることができます。磯でもよく見られますが、テトラポッドの隙間にいるカサゴやキジハタなどを狙う「穴釣り」でも釣れてきます。高水温にはカズナギ属よりも耐えられるようですが、20℃前後の水温での飼育が理想です。一方ベニツケギンポは25℃までであれば耐えられるようです。

ダイナンギンポは30cmほどに育ちますが、ベニツケギンポは15cmほどの小型種です。

関東の磯で採集できるウツボ まとめ

  • 関東の磯でも4種のウツボに出会える可能性がある
  • 主にウツボ・ワカウツボ・トラウツボ・コケウツボの4種が知られる
  • 網で掬うことが重要。銛やヤスで突いたらウツボが死んでしまう
  • すぐに綺麗な海水の入ったバケツに入れる
  • 酸欠に弱いのでエアレーションも重要
  • カズナギやダイナンギンポの類は胸鰭があるのでウツボの仲間と見分けやすい
  • ダイナンギンポとウツボの仲間は特徴的な側線の有無でも見分けられる
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