和歌山~九州の太平洋岸でみられるギンポ・カエルウオの仲間

和歌山から九州太平洋岸の磯では関東の磯よりも多くのカエルウオの仲間を見ることができます。この海域は温暖でサンゴが多くみられ、サンゴに依存するタイプのカエルウオも見られます。一方浅いタイドプールでも様々なカエルウオの仲間が見られ、これらを飼育するのも楽しいものです。しかし中にはニセクロスジギンポやセンカエルウオのように混泳に注意しなければならないものがいます。今回は和歌山~九州太平洋岸の磯で見られるカエルウオをご紹介します。

和歌山~九州太平洋岸の磯

▲高知県の磯で見られたサンゴとイバラカンザシ

紀伊半島から四国の太平洋岸、九州の日向灘沿岸には暖海性の魚が多くみられるようになります。そしてこの地域では磯の浅い場所でもサンゴが見られるようになります。キクメイシ類、シコロサンゴ類、ミドリイシ類と種類は多くはないのですが、このようなサンゴに依存するタイプの魚も見られ、その中には今回は紹介できなかったものの、タテガミカエルウオの仲間やセダカギンポが含まれます。またサンゴがあるということは黒潮があたるということでもあり、水温も暖かく、おそらく多くのカエルウオの仲間が越冬しているのではないかと思います(温帯性のカエルウオはもちろん越冬している)。ただし、関東の磯で見られる種のうちナベカなどは少なくなっているようです。

関東地方で見られるギンポ・カエルウオについてはこちらをご覧ください。

和歌山~九州太平洋岸で見られるギンポ・カエルウオ

「ギンポの仲間」の定義

「ギンポ」は感じで銀宝と書きます。これは硬くておれにくいものを「ギンポオ」とよび、死後硬直したギンポが硬くなったものをそう呼んでいたものを、最後のオが取れてギンポという名前になったともいわれています。しかしこの名前で呼ばれるものは2つのグループに分かれており、片方はゲンゲ亜目、もう片方はギンポ亜目に含まれます。前者はゲンゲ科、タウエガジ科、オオカミウオ科などが含まれています。

磯採集でお馴染みのものではダイナンギンポや、春の磯で多く見られるコモンイトギンポ、東京では天ぷらなどでお馴染みのギンポなどが含まれています。一般にアクアリストにお馴染みのカエルウオ、ヤエヤマギンポなどは後者のギンポ亜目の魚です。ここでは「ギンポ亜目」の魚を扱います。もっとも、和歌山から九州太平洋岸の磯ではゲンゲ亜目の魚は極めて珍しいものといえます。

イソギンポ

▲和歌山県で採集したイソギンポ

イソギンポは夏の終わりには数cmほどの小型個体も多くみられるようになり、主にブイなどについていることが多いです。小さいのはかわいいのですがコケは食べずゴカイなどは食べてしまうこともあるため、注意が必要です。またある程度の大きさになると大きな犬歯が生えるようになるので、つかもうとするとかまれることもありその点も注意します。

タテガミギンポ

▲高知県で採集したタテガミギンポ

後頭部に糸状の皮弁があるのが特徴のイソギンポ族の一種です。またタテガミギンポはイソギンポとは異なり大きな犬歯をもちませんので、その点でも見分けられます。基本的には丈夫で飼育しやすい魚ですが、カエルウオとは分類的に離れているため、コケはあまり食べてくれないので注意が必要です。

カエルウオ

▲日南海岸で採集したカエルウオ

関東の磯ではカエルウオの仲間が少なく、特に房総半島の潮だまりで見られるカエルウオの仲間はほとんどカエルウオのみでしたが、紀伊半島以南では幾分種類が増えます。しかしながら紀伊半島、四国沿岸、九州沿岸においてもこの種が最も多いカエルウオ族魚類であることは疑いの余地がないでしょう。

性格はこの地域で採集できるカエルウオの中でもかなりキツく、注意する必要がありますがスズメダイ類やクマノミ類、ヤッコ、ハギ、ハナダイなどにとってはよいタンクメイトになります。丈夫で買いやすく、もちろんコケはよく食べてくれます。ただし水槽にしっかりフタをしないと飛び出して死んでしまう可能性があります。また琉球列島ではよく似ているニセカエルウオがいますが、この種も和歌山や高知などでも採集されています。ただし外見で見分けるのは難しいといえるでしょう。

センカエルウオ

▲高知県で採集できたセンカエルウオの小型個体

センカエルウオもカエルウオの仲間で、灰色の体に黒い縦線が体に入るのが特徴です。サンゴ礁の潮だまり、ごく浅い場所にみられ、四国や日南海岸での潮だまりで採集できます。しかしカエルウオの仲間よりも臆病で、混泳水槽での飼育難易度は高いです。本種を飼育するのであればカエルウオの仲間は本種のみにしたほうが早く餌付くようになるでしょう。また飛び出しにも注意が必要です。

タネギンポ

▲高知県のタイドプールで採集したタネギンポ

タネギンポはカエルウオのようにも見えますが、ほほの部分の模様がカエルウオと異なるので見分けることができます。また雄の眼の上の皮弁もカエルウオとは大きく異なっています。性格はカエルウオ同様強めで、弱い種とは混泳させられません。そしてカエルウオ同様飛び出しやすいのでフタはしっかりしておきましょう。飛び出しにさえ気を付ければ飼育は難しくなく、よくコケも食べてくれます。

シマギンポ

▲シマギンポ

シマギンポはヤエヤマギンポ属の種類で、背中の白い斑点と腹部の長円斑、そして胸鰭基部付近の大きな白色斑が特徴です。ヤエヤマギンポは主に奄美諸島以南にみられますが、紀伊半島以南の太平洋岸や長崎沿岸でも見ることができます。写真の個体は高知県のタイドプールで採集したもので、岩の隙間にいたものを採集しました。片方の手に網をもちシマギンポが隠れた岩の隙間の出口に網をおいて、もう片方の手でシマギンポを追い込む方法で採集しましたが、この方法はほかのカエルウオの仲間を採集するのにも適しています。もちろんヤエヤマギンポと同じく、コケをよく食べてくれます。

ロウソクギンポ

▲ロウソクギンポ

和歌山以南の磯で見られる種で、体に青白店がある種です。眼の上にアンテナのような皮弁を有しているのも特徴です。また雄は頭部が黒くなりよく目立ちます。ただしこの手の魚はコケとりとして入れられることも多いのですが、本種はカエルウオほどはコケをたべてくれません。

クモギンポ

▲高知県で採集したクモギンポ

和歌山~九州太平洋岸の磯ではナベカ族の魚は少ないのですが、このクモギンポは比較的多くみられるものです。この地域の磯ならほとんどどこにもいそうな種類といえそうです。生息場所も波打ち際のごく浅い潮だまりにたくさん見られますが複雑な動きをしたり危険が迫ると孔の中に入ったりして意外と採集しにくい種といえます。千葉県では多いナベカはこの地域では少なく、和歌山でも北のほうに多いようですが、南方ではなかなか少ない種です。

ニジギンポ

▲ニジギンポ

ニジギンポは磯というよりは流れ藻や浮遊ブイなどについているものを採集することが多いといえます。イソギンポ科の魚の卵は岩などの基質に産み付けられるため長い距離を回遊することはあまりないのですが、本種は流れ藻などの浮遊物につきかなりの距離を移動できます。飼育については飛び出すことがあるためしっかりフタをする以外に気を付けることはないですが、混泳ではほかの魚の鰭をかじったりしますので単独飼育が無難でしょう。また下顎の歯はかみそりのようになっており注意しなければなりません。

カモハラギンポ

▲水族館で飼育されているカモハラギンポ

カモハラギンポはヒゲニジギンポの仲間で、日本の太平洋岸でよくみられる種です。写真は水族館で撮影したものなのですが、高知の磯や漁港などではこの魚をよく見ます。この色彩で同属の多くの魚と見分けられますが、沖縄のニジギンポには本種によく似た模様のものがいて、擬態の可能性もあります。牙に毒をもつ本種にニジギンポが擬態するのか、下顎にカミソリのような大きな牙をもつニジギンポに本種が擬態しているのかは不明ですが、いずれにせよ混泳水槽では入れにくい魚です。また、カモハラギンポは流れ藻につくようなことはなく、中層をふらふら泳いでいます。

ニセクロスジギンポ

▲ニセクロスジギンポ

ホンソメワケベラによく似た種で、擬態と考えられています。千葉県以南に分布する魚ですが、主な分布域はインド―太平洋域の熱帯サンゴ礁であり、南へ行けば行くほど遭遇しやすい魚といえます。このニセクロスジギンポがホンソメワケベラに擬態する理由としては、大型魚の体表につく寄生虫を食ってくれるホンソメワケベラは大型魚に襲われにくいということで似た模様にして身をまもり、そして同時にほかの魚の皮膚や鱗、鰭などを食いちぎるというところがあげられます。この修正は水槽の中でも見られますので、上の2種同様、混泳水槽には入れたくない魚といえます。

ヘビギンポ

▲ヘビギンポ

ヘビギンポは関東沿岸でも見られますが、和歌山や高知の沿岸でも見ることができます。ただし高知沿岸などではクロマスク属の魚も浅瀬に多くみられるため、関東の磯よりも少ないような気もします。輸送に弱く飼育に耐えられるものを入手することは難しいのですが、一度慣れれば容易に飼育できます。

クロマスク属

▲クロマスク属の魚

クロマスク属の魚はサンゴ礁域や岩礁に生息していますが、伊豆などでは多くありません。ヨゴレヘビギンポか、アヤヘビギンポ、もしくはアカヘビギンポと思われますが、写真ではわかりにくいところがあります。この種は海の中ではきれいなオレンジから褐色のものが見られるのですが、この色を水槽で再現するのは難しいようです。さらに輸送にも弱いなど注意点が多く初心者向けとはいえないところがあります。

和歌山~九州太平洋岸の磯で見られるギンポ・カエルウオ科魚類を飼うときのポイント

餌の注意点

▲カエルウオやタネギンポなどカエルウオ族におすすめの「海藻70」

餌は動物食性のもの、雑食のもの、雑食だが藻類を中心に食うものの3タイプがあります。動物食性のものはニジギンポなどの仲間でこのような種はほかの魚の鰭をつついて食べたりするものもいますが、多くは配合飼料になれます。雑食のものはクモギンポ、タテガミギンポ、ヘビギンポなどでこれらも各種配合飼料で問題ありません。藻類を中心とした食性をもつものはカエルウオやタネギンポ、シマギンポなどで、これらの種類は藻類食魚類向けの餌を与えます。キョーリンの「海藻70」が最適です。またセンカエルウオのような臆病な種は強いカエルウオと一緒だと餌を食べないこともありますので、まずはそのような気の強い種を別水槽などに移してから与えるとよいでしょう。

飛び出し注意

カエルウオの仲間は水槽から飛び出して死んでしまうという事故が起こりやすいです。そのため水槽の上にしっかりとフタをしめるようにします。またニジギンポ系の種も飛び出すことがあるため、この仲間全般にフタは必須といえます。

混泳はどうする?

カエルウオやタネギンポは多くの種類と飼育できますが、やや性格がきついので他のカエルウオとの混泳は避けたほうがよいでしょう。シマギンポはそれほど性格がきつくはなく、多くのカエルウオと飼育できそうです。センカエルウオはやや臆病で、ホホグロギンポなどハナカエルウオ属魚類と似たところがあります。

また、上記の通りニジギンポやカモハラギンポ、ニセクロスジギンポなどはほかの魚をつついたり鰭や鱗をかじるためほかの魚と混泳させないほうが無難でしょう。そのため、いろいろな魚を飼いたい初心者にはおすすめしません。

和歌山~九州太平洋岸のギンポ・カエルウオまとめ

  • 関東沿岸よりも多くの種類を見ることができる
  • イソギンポやタテガミギンポはコケはあまり食わないが飼いやすい
  • カエルウオやタネギンポはコケをよく食うが性格はきつい
  • シマギンポはヤエヤマギンポに近い仲間でコケをよく食う
  • センカエルウオは臆病でカエルウオとは混泳させられない
  • カモハラギンポやニジギンポはほかの魚をかじる悪癖あり
  • ニセクロスジギンポは魚の鱗や鰭、皮膚をかじる
  • 藻類食のものは「海藻70」などを与えたい
  • フタはしっかりとする
  • カモハラギンポなどはほかの魚との混泳はすすめられない

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