混泳前に海水魚を「隔離」する方法と注意点

海水魚を混泳するのに最も気をつけなければならないのは「争い」です。強い魚が弱い魚を追いまわすと、弱い魚は怯えて引きこもってしまい、餌も食べずに死んでしまうことがあります。そうなる前に水槽から掬って隔離ケースに入れたり、仕切り板を使用して互いの魚を隔離することが必要になります。今回は海水魚を隔離する方法と注意点についてご紹介します。

海水魚を隔離する

▲アクアリストに人気のヤッコの仲間は縄張りをつくる

海水魚はもともと海で暮らしていた魚です。広い海ではそれぞれの魚が縄張りをもてますが、狭い水槽では縄張りをなかなか持てず、激しく争うことがあります。そのため本当は大きめの水槽に魚1匹だけで飼育したいところですが、アクアリストとしてはそれでは面白くないといいます。

さまざまな種類の海水魚を泳がせる「混泳」は楽しいことではありますが、アクアリストに人気にあるヤッコの仲間などは激しく争うおそれがあります。争って弱い個体が死ぬのを防ぐため「隔離」をさせなければならない場合も出てきます。争いで勝っている強い魚を一定の間隔離ケースなどで隔離しておき、その間に縄張りを壊したり、傷ついた弱い魚を隔離して傷の様子をチェックしたりします。魚は傷ついたところからほかの魚などにつつかれることがあり、そこから病気で死んでしまうこともあるためです。

隔離を行うのは混泳中の争いで弱い魚を隔離することだけではありません。例えば新しく魚を採集、もしくは購入したときにメイン水槽に入れる前に、いじめられないかどうか確認する「お見合い」や、配合餌に餌付きにくい魚の餌付けを行うのにも隔離を行うことがあります。

隔離する前に考えること

強い魚を隔離する

基本的に強い魚と弱い魚でなんらかのトラブルが起きたとき、強い魚を隔離するのが普通です。網とプラケースをうまく使用して魚を掬います。うまく掬えないときは、夜間の動きが鈍いときに掬うとよいでしょう。強い魚が隔離されている間に、水槽内の飾りの配置などを全部変えて強い魚の縄張りを壊すなどするとよいでしょう。ただ、岩組などの配置を換えるときには白点病などの病気が出てしまう可能性があるので注意しましょう。

弱い魚を隔離する

基本的に強い魚を隔離するのが普通ですが、強い方に弱い方が襲撃され、体表に若干の傷や鰭の裂けがあるような場合は弱い方を隔離します。場合によっては薬浴を行い、細菌の感染を抑えるようにします。戻すときにはほかの魚も一緒に入れて攻撃の対象を分散させるのもよいでしょう。

そもそも隔離できるのか

▲複雑なサンゴ水槽では魚を取り出して隔離しにくい

サンゴ水槽ではほかの魚を隔離するのが難しいです。理由はサンゴ水槽で魚を掬うことは難しく、むりに掬おうものならばサンゴが傷ついたり、魚が逃げて魚の体が傷ついたり、サンゴの岩をどけて掬おうとしたら汚れが水中を舞ってしまい、そこから病気が発生してしまうおそれもあります。

サンゴ水槽の魚を隔離するのであれば釣り針に餌をつけて釣り、水槽から取り出す方法がありますが、この方法では口に傷がついたり針を飲み込んで死んでしまうこともあります。このほか魚が深夜寝静まった時に魚を掬う方法もありますが、夜間魚がどこで寝ているのかなどを突き止める必要があり、ライブロックの奥などで寝ている魚などは掬うことができません。

サンゴ水槽に魚を入れるのであれば、どんな魚を入れるか、その入れたい魚はどのくらいの大きさになるのか、性格は、食性は、など計画的にイメージすることが重要です。もちろん魚を過密に入れないよう注意します。

魚を隔離する方法

隔離ケースを使用

▲「ビックフィッシュハウス」を使用してカクレクマノミを隔離

魚を隔離する、ということでまず思いつくのが隔離ケースです。隔離ケースは各社からさまざまな製品が販売されていますが、アズーの「ビックフィッシュハウス」が大容量なのでおすすめです。ただし、ケースが大きいと水槽にうまく収まらなかったり、水の流れを遮ってしまうこともあるため注意が必要です。そういうときは小さい隔離ケースを使用しないで、水槽内に仕切り板を設置して対応するとよいでしょう。

仕切り板(セパレーター)を使用

水槽にセパレーターという仕切り板を置き、左右で別の種類の魚を飼育するということはよくあります。たとえば仕切りの片方でクマノミやスズメダイなどを飼育し、もう片方でこれらの魚とは一緒に飼育できない魚、たとえばカサゴやオコゼなどの肉食性の魚を飼育するというものです。

欠点としては、魚の泳ぐスペースが狭くなることです。例えば90×45×45cm水槽で飼育しているところの真ん中に仕切り板を置いておけば其々45×45×45cmの遊泳スペースしかなくなってしまいます。また、隔離ケース同様に水がよどみやすいこともあります。そういうときは水中ポンプを使用して水流をつくるなどして対処しましょう。

60~90cm水槽でスズメダイやクマノミなど小魚の隔離に使用する場合、1/3くらいの区画で仕切るとよいでしょう。また、新しい魚を導入し、一緒に泳がせる前に仕切り板を使用して水槽を区切り「お見合い」に使用することもできます。

水流に注意

仕切り版を使用すると水が若干よどみやすくなるので注意が必要です。水中ポンプを使用して水流をつくりよどみをなくすようにします。隔離ケースを使用する場合はケースのサイド部分の穴を通じて、ケースの中にもポンプからの水流が若干入ってくるのが理想的です。

別水槽で隔離する

▲白点病治療のため別水槽で隔離

別に水槽を用意し、そこで魚を飼育する方法です。この方法では飼育水がメイン水槽と同じではないため、毒を出すハコフグなどを隔離したり、薬を使って病魚を治療するときに役立ちます。しかしながら水温を一定にするためのクーラーやヒーターなどを別途用意する必要があるため、ほかの隔離方法と比べて莫大な金額がかかってしまいます。

水槽にパイプを立ててメイン水槽と水を循環させる方法もありますが、これだと同じ海水が回るためハコフグの隔離はできず、サンゴ水槽と接続すれば魚病薬の使用もできなくなります。

隔離ケース・仕切り板で隔離できないケース

隔離ケースや仕切り板は基本的に飼育水槽と同じ水を使います。ですから、これらでは対処できないケースもでてきます。

冷水性海水魚

▲ダンゴウオの仲間は低い水温で飼育する

ダンゴウオやスナビクニンなど冷たい水を好む海水魚はそれらの生物を飼育する専用の水槽が必要になります。これらの魚は温帯から亜寒帯、寒帯の海にすむ魚で、低い水温を好む魚だからです。隔離ケースも本水槽と同じ水を使うため、同じ水温になります。ですからクマノミなど熱帯性の海水魚やサンゴを飼育している水槽内で隔離することはできません。暑すぎて弱ったり死んでしまいます。こういう魚を飼育するのであれば別の水槽を用意し、単独で水をまわす必要があります。もちろんクーラーもハイパワーのものが必須です。

ハコフグなど

▲ハコフグの仲間(写真はコンゴウフグ)は皮膚から毒を出す

ハコフグの仲間は観賞魚として人気がありますが、危険が迫ったり、弱ったりすると皮膚から毒を出します。それによりほかの魚を道連れにして死んでしまうことがあります。ハコフグが弱っていても隔離するときはバケツなどで隔離するようにして、隔離ケースは使わないようにましょう。これは隔離ケースはメイン水槽に浮かべておく、もしくはメイン水槽に吸着しておくものであり、ハコフグが毒を放出すると飼育水にも毒が溶け出して水槽で飼育するほかの魚が死んでしまうおそれがあるからです。

また、ヌノサラシやマロンフィッシュなども皮膚から毒を出します。ヌノサラシの仲間はハタ科であり魚食性が強いため隔離ケースなどで飼育したいところですが、毒をだしてほかの魚を殺してしまうこともあり、別水槽で飼育した方が安全です。このほかコバンハゼの仲間やミナミウシノシタなどの魚も皮膚や孔から毒を出すので注意が必要です。

ウツボ

▲トラウツボなどの大型種は要注意

ウツボの仲間はその大きさから、隔離ケースで隔離するのは現実的ではありません。仕切り板を設けても仕切りの上から脱走し、仕切りの反対側へ行ってしまうおそれがあります。また仕切りと水槽の隙間を行き来することもできます(もちろんしっかりフタをすることが前提)。そうなれば仕切りの反対側で飼育している小魚などを捕食してしまうこともあります。ウツボの仲間は「海のギャング」と呼ばれていますが、実際には誇張があるといえます。しかしながら動物食性の魚であることは変わりありません。私も以前飼育していたイエロータイルフィッシュを捕食されてしまったことがあります。そのときはセパレーターで隔離していましたが、セパレーターの隙間から侵入してしまったようです。

大型のウツボはセパレーターの隙間から侵入できないのですが、力が非常に強く、仕切り版を外してしまうこともあるので、そのようなウツボは大型水槽で単独飼育するしかありません。

サンゴ水槽での薬浴

 

▲グリーンFゴールドもサンゴ水槽には使用できない

白点病にかかりやすい魚といえばチョウチョウウオやニザダイの仲間があげられますが、ヤッコなどもかかることがあります。基本的にサンゴ水槽は良好な水質をキープする必要があり、白点病が出にくく、出ても自然治癒してしまうことが多いのですが、オトメハゼなどのベントスハゼを後からうっかり入れてしまったとか、ヒーターやクーラーが故障し大きな水温変動があったとかそのようなときに白点病が出てしまうことがあります。

治療は必ず魚を水槽から出して行います。サンゴ水槽に薬は原則使用できません。隔離ケースでも薬を使用してはいけません。ちょっとの量の違いで魚を殺してしまい、魚が銅中毒に陥ることもある硫酸銅イオンはもちろん、グリーンFゴールド顆粒なども使用禁止です。海外のメーカーではサンゴに安全とうたう魚病薬もありますが、これらも一部のサンゴには害になるおそれがあったり、あまり効果がないなんてことがあります。

海水魚の隔離まとめ

  • 海水魚は水槽内で争うことが多い
  • 争う魚を隔離するだけでなく「お見合い」や餌付けのために隔離することも
  • 争いの時は強い魚を隔離し、隔離している間に縄張りを崩す
  • 弱い魚を隔離するときは傷ついたとき。戻すときにほかの魚と一緒に戻すテクニックも
  • サンゴ水槽では魚を隔離しにくい。混泳は計画的に行うこと
  • 隔離ケースを使用するが小型水槽では難しい
  • 小型水槽では仕切り板を使用する
  • 仕切り板を使えば水槽の左右で別の魚を飼育できる
  • ハコフグの隔離や魚病薬を使うときは別水槽で隔離する必要がある
  • ハコフグなどは皮膚から毒を出す
  • 生息地の水温が大きく異なる魚は別水槽で飼育するしかない
  • ウツボなどは仕切り板の隙間を移動することがある

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