2020.08.25 (公開 2020.08.25) サンゴ図鑑
カクレクマノミと相性のよいサンゴと悪いサンゴ
カクレクマノミをうまく飼うことができるようになると、サンゴも気になってきます。サンゴの中にはカクレクマノミの相性がよいものと、よくないものがいます。サンゴ飼育の難易度はお店の人に聞けばわかりますが、お店の人はあなたが何を飼育しているか知りません。
そのため、カクレクマノミと相性の悪いサンゴを購入してしまうとサンゴが短命に終わってしまいやすいところがあります。今回はカクレクマノミとサンゴとの相性についてご紹介します。なお、ほかの魚とサンゴの相性はこちらもご参照ください。
カクレクマノミとは
カクレクマノミはスズキ目スズメダイ科の魚で、映画「ファインディング・ニモ」に登場するキャラクター「ニモ」「マーリン」のモデルになったとされる(実際はペルクラの方ともされますが)魚です。クマノミの仲間はスズメダイ科の中でも特異なグループで、鰓蓋に変わった棘があったり、イソギンチャクと共生する変わった習性を有し、クマノミ属とその近縁種であるPremnas属とあわせてひとつの亜科を形成します。
従来からアクアリウムの世界では人気があった魚ですが、映画公開後はさらに人気が高まりました。カクレクマノミは天然の個体、養殖の個体が販売されていますが、個人的には養殖個体のほうがよく慣れており初心者にも飼育しやすいと思います。天然物はやや病気になりやすいという点もあり、そういう意味でも初心者には養殖個体がおすすめです。
カクレクマノミと一緒に飼いたいサンゴ
マメスナギンチャク
▲マメスナギンチャク
マメスナギンチャクはサンゴの仲間とされていますが分類学的にはだいぶ離れたグループです。小さくてかわいい、またカラーバリエーションが豊富で集める楽しみもあります。餌はたまに与えることで成長を促します。「~ギンチャク」と名前がついていますが、スナギンチャクのグループでイソギンチャクのようにクマノミとは原則共生しません。ただし隠れ家がないときなど、クマノミが寄り添うことはあります。
ディスクコーラル
▲ディスクコーラル
ディスクコーラルはサンゴというよりイソギンチャクに近い仲間ですが、サンゴの一種として販売されています。そのサンゴの中でももっとも丈夫で飼育しやすいもので、初心者にもっともおすすめのサンゴともいえます。この特徴は非常に重要です。なぜならばカクレクマノミが飼いたい!という人は初心者に多く、その初心者はお店に足を運べばサンゴも飼育したくなるからです。まずはカクレクマノミと、このディスクコーラルのような飼いやすいサンゴを飼育し、サンゴ飼育のスキルを身につけるとよいでしょう。また、ヘアリーディスクなどはカクレクマノミがすり寄ることもあります。
スターポリプ
▲スターポリプ
スターポリプ(ムラサキハナヅタ)も飼育しやすいサンゴとされますが、マメスナギンチャクなどよりはやや難しいです。ある程度きれいな水であればよく増殖してくれますが水流や照明の変化などにデリケートなところがあります。ロングタイプのスターポリプは知らない人が見ればイソギンチャクにもよく似ているようで、実際にカクレクマノミがすり寄ることもあります。
トサカ
▲トサカとハナビラクマノミ
トサカはソフトコーラルの一種で、イソギンチャクとは大きく異なるグループとされていますが、写真のようにハナビラクマノミと一緒に飼育していると、ハナビラクマノミがトサカの中で休息していました。トサカの仲間は種類によって飼育難易度が異なり、カタトサカの仲間は比較的飼育しやすく、チヂミトサカはミドリイシ並みにきれいな水が欲しいところです。またトゲトサカやベニウミトサカなどは給餌が必要で、ベテランでも飼育しにくい種です。ヌメリトサカなどは強い毒がありほかのサンゴとの接触は避けます。なお写真の個体はカタトサカの仲間です。
ウミキノコ
▲ウミキノコ
浅いサンゴ礁に生息するソフトコーラルの一種であるウミキノコはやはり浅いサンゴ礁域に生息するカクレクマノミとの相性が抜群といえます。またウミキノコの種類によってはカクレクマノミがすり寄ることがあります。飼育はトサカの仲間ではやさしいほうではありますが、毒性が強いサンゴとは接触させてはいけません。よく似たウネタケもウミキノコと同様の条件で飼育できます。
キッカサンゴ
▲キッカサンゴ
キッカサンゴはとても丈夫で飼育しやすいハードコーラルです。適切に飼育してカルシウムなどを添加してやればよく成長します。魚との相性もおおむねよく、カクレクマノミとの飼育も何ら問題はありません。はじめてのハードコーラルに最適な種のひとつです。
ウミバラ
▲ウミバラとペルクラ
ウミバラはキッカサンゴと同じ科のハードコーラルですが変わった形が特徴です。さらにキッカサンゴよりも共肉が厚くボリュームがあります。カクレクマノミと飼育すると、カクレクマノミがウミバラをイソギンチャクのかわりに寄り添うことがあります。我が家ではトサカやウミキノコも飼育していますが、我が家のカクレクマノミはウミバラを好むようです。写真はコーラルタウンで飼育されていたペルクラですが、ペルクラも同様の習性をもっているのでしょう。共肉は厚めなので、後述のアワサンゴなどと比べてサンゴにはあまり悪影響もないようです。丈夫で飼育しやすく、ハードコーラルに初めてチャレンジしたい、という方にはおすすめですが、触れたサンゴは溶かしてしまうことがありますので注意しましょう。
シコロサンゴ
▲シコロサンゴ
丈夫で飼育しやすいサンゴで、SPS(ポリプの小さなイシサンゴ)をはじめて飼育するのには本種は最適です。きわめて丈夫で飼育しやすいですが、クマノミの仲間はあまりシコロサンゴの中には入りません。むしろ小型のハゼやカエルウオなど、カクレクマノミとの混泳に適した魚の隠れ家に最適です。毒性はやや強くほかのサンゴと触れないように注意が必要です。
キクメイシ
▲キクメイシ
キクメイシも飼育しやすいサンゴですが成長がやや遅く、傷つけたり一部が減退すると回復させることが難しいという注意点もあります。この仲間は飼育しやすいものも多く、カクレクマノミとの相性もよいものが多いです。キクメイシの仲間はほかにもタバネサンゴなどもおり、これらもクマノミ類との相性はかなりよいといえるでしょう。
コモンサンゴ
▲ウスコモンサンゴ
コモンサンゴのはミドリイシ科の一種で、初心者にはやや難しいサンゴの仲間です。ミドリイシの仲間はきれいな水を好み、硝酸塩の蓄積には弱いのです。しかしコモンサンゴの仲間はミドリイシと比べて硝酸塩の蓄積に耐性があるため、シコロサンゴなどは除けば、SPSの入門種として最適なもののひとつです。カクレクマノミとの飼育も全く問題はありません。
ミドリイシ
▲ミドリイシの仲間
ミドリイシの仲間は美しいのですが繊細で、最も飼育が難しいサンゴのひとつとしても知られています。しかしながら色上げや成長を楽しみ、美しい水景を作りたい、ベテランアクアリストにとって大人気のサンゴです。その水景にはイソギンチャクを入れにくいのですが(ミドリイシにダメージを与えることもあるため)、カクレクマノミを泳がせているアクアリストも多いです。
カクレクマノミと一緒に飼いにくいサンゴ・注意が必要なサンゴ
アワサンゴ・ハナガササンゴ
▲アワサンゴ
▲ハナガササンゴ
アワサンゴはややデリケートなサンゴです。カクレクマノミとは相性がよくないのですが、これはカクレクマノミがアワサンゴにすり寄りことがあるからです。アワサンゴは共肉も薄く、すり寄られるとダメージを受けやすいようです。同じ仲間のハナガササンゴは長期飼育が難しいサンゴとしても知られており、なおさらカクレクマノミと一緒に飼育するのはやめるべきでしょう。
ナガレハナサンゴ
▲ナガレハナサンゴ
ナガレハナサンゴなど、ハナサンゴ科のサンゴも同様にカクレクマノミとの飼育しにくいサンゴです。これも理由はアワサンゴなどと同様で、カクレクマノミがすり寄るからとされます。また近縁種のコエダナガレハナサンゴなどもクマノミがすり寄ってダメージを受けることもあります。またこれらのサンゴはキクメイシやキッカサンゴなどよりは輸送のダメージに弱い、元素欠乏に弱い、水質にデリケートなど、飼育が難しいところがありますので、初心者にもあまり向きません。
ハナガタサンゴ・オオバナサンゴ
▲ヒユサンゴ(オオバナサンゴ)
ハナガタサンゴやオオバナサンゴなどは丈夫で飼育しやすいハードコーラルです。たまに餌を与えることによりコンディションを良好に保つことができます。しかしながらクマノミを入れると顔を突っ込んでまでサンゴの餌を奪うことがあります。サンゴにも十分餌がいきわたっているかどうか、しっかりチェックしましょう。またカクレクマノミはこれらのサンゴにすり寄ることがありますが、アワサンゴなどと比べると問題にはなりにくいといえます。ただしどうしても長いことすり寄られてサンゴがストレスを受けている、というようなときは隔離すべきかもしれません。
カクレクマノミとサンゴの相性まとめ
まず結論として、カクレクマノミを飼育している水槽にサンゴを入れるのであれば相性がよいサンゴを、自分の飼育スキルと相談しながら水槽に導入していくのがベストといえます。
- サンゴの中にはカクレクマノミとの相性がよいものと、よくないものがいる
- よいものはソフトコーラル全般、シコロサンゴ、キッカサンゴ、ウミバラ、キクメイシ、ミドリイシなど
- 相性がよくないものはアワサンゴ、ハナガササンゴ、ナガレハナサンゴの類など
- 注意が必要なものはヒユサンゴ(オオバナサンゴ)、ハナガタサンゴなど