フリーワード検索
海水魚の記事
サンゴの記事

2020.07.08 (公開 2020.07.08) 海水魚図鑑

メガネスズメダイの飼育方法~幼魚はきれいだが成魚は地味な色彩になるので注意

メガネスズメダイは背中が赤く、頭部から背中にかけて青いラインが入るかわいいスズメダイです。しかしながらこの特徴は残念ながら幼魚のころだけの特徴で、成長すると茶色い地味な魚になってしまいます。また幼魚のうちはおとなしい性格をしているのですが、やはりスズメダイらしく成長すると性格がきつめになってしまうので注意が必要です。丈夫で飼育しやすく、その点は安心できます。今回はこのメガネスズメダイの飼育方法をご紹介します。

標準和名 メガネスズメダイ
学名 Pomacentrus bankanensis Bleeker, 1854
英名 Speckled damselfish, Fire damselなど
分類 条鰭綱・スズキ目・スズキ亜目・スズメダイ科・ソラスズメダイ属
全長 8cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッド/グリーンなど
温度 25℃
水槽 60cm~
混泳 幼魚はおとなしいが成魚は性格がきつい。混泳には注意
サンゴとの飼育 多くのサンゴと飼育できる

メガネスズメダイって、どんな魚?

▲メガネスズメダイの幼魚

メガネスズメダイはスズメダイ科・ソラスズメダイ属の魚です。ソラスズメダイのように青い光沢はなく、幼魚のうちは紺色と赤色が目立つ美しいスズメダイです。ちなみに本種が含まれるソラスズメダイ属というのはスズメダイ科の中でも非常に大きいグループで、およそ80種近くが知られていて、スズメダイ属に次いで大きなグループといえます。和名はおそらく背鰭軟条部の斑紋から、英名もSpeckled damselfishといい、直訳すると「斑入りのスズメダイ」という意味になります。一方で学名は本種のタイプ標本が採集されたインドネシアのバンカ島にちなむと思われます。

西太平洋のサンゴ礁に見られ、沖縄など日本のサンゴ礁でもみることができます。房総や三浦ではほとんど見かけないのかもしれませんが、和歌山や四国では幼魚がよく見られます。今回ご紹介する個体も高知県の磯で採集した個体になります。

メガネスズメダイ幼魚と成魚の違い

▲メガネスズメダイの成魚。奄美諸島産

スズメダイは幼魚と成魚では色彩が異なることが多く、幼魚から成魚へ成長していく過程で色が地味になってしまうことが多いのですが、残念ながらこのメガネスズメダイもそうなってしまいます。幼魚は写真のように赤というかオレンジ色という色彩が鮮やかですが、成魚は茶褐色の体に白い尾という地味な色彩に変貌してしまいます。そして成長するにつれて性格もキツくなりますので、採集しても本当に持って帰っていいものか、よく考えるようにしましょう。

よく似たスズメダイ

メガネスズメダイによく似たスズメダイとしてオジロスズメダイというのがいます。オジロスズメダイもメガネスズメダイ同様に南方に多いスズメダイで、沖縄では非常に多くみられる種類です。オジロスズメダイは伊豆半島下田以南の太平洋岸に幼魚が出現しますがほとんど越冬していないようです。成魚はメガネスズメダイ同様琉球列島で普通種です。この2種は非常によく似ていますがメガネスズメダイは眼下骨下縁が鋸歯状であり、この部分が円滑なオジロスズメダイと見分けられます。また、メガネスズメダイは成魚でも背鰭に目玉模様(眼状斑)があるのが特徴ですが、この目玉模様は薄くて目立たないこともあるので注意が必要です。先ほどご紹介した奄美諸島産のメガネスズメダイの背鰭の目玉模様も後方に小さくあるだけです。

メガネスズメダイに適した飼育環境

▲小型水槽で飼育しているメガネスズメダイの幼魚

水槽

メガネスズメダイの幼魚は小型の水槽でも飼育できますが、成長につれ大きめの水槽が必要になります。単独でなら45cm水槽でも飼育できますが、できれば60cm水槽が欲しいところです。ほかのスズメダイとの混泳を考えるのであれば90cm以上の水槽が必要になるでしょう。

水質とろ過システム

基本的に丈夫で飼育しやすく、水質悪化もある程度は耐えてくれますが、できるだけきれいな水で飼育してあげたいものです。小型水槽では外掛けろ過槽が使われやすいのですが、できるだけ外掛けろ過槽だけでなく、外部ろ過槽も一緒につかうべきでしょう。60cm水槽ではろ過能力の高い上部ろ過槽も使用できるのでより安定した飼育が可能になるはずです。もちろんオーバーフロー水槽であればより安定した状態で飼育できます。

メガネスズメダイはサンゴに無害なので、サンゴ水槽での飼育もできます。浅い場所に生息しており、浅場ミドリイシの類やソフトコーラルの合間を泳ぐメガネスズメダイはかわいいものです。ただしサンゴを飼育するのに適したベルリンシステムは魚を多く入れるのには適していないので注意が必要です。

水温

原則としては25℃をキープします。大体22~27℃くらいで飼育できますが、海では30℃近くになったところでも見られます。ただし高水温だと餌食いは悪くなり、酸欠にもなりやすく水質も悪化しやすいので、できるだけ27℃以下で飼育するようにしましょう。もちろん水温の変動には注意します。メガネスズメダイは丈夫で病気にもなりにくい魚ですが、水温の変動が大きいとさすがのメガネスズメダイも体調を崩し病気になってしまうことがあるので、一定の温度をキープするようにします。特に春や秋は水温が変動しやすいので注意が必要です。

隠れ家

メガネスズメダイは縄張りをつくるタイプのスズメダイです。そのため隠れ家を作ってあげるようにします。サンゴ水槽ではサンゴの合間に隠れたりしますが、魚水槽ではライブロックやサンゴ岩を使用するようにしましょう。流木や金属製のものはだめです。

メガネスズメダイに適した餌

▲「メガバイト」シリーズがおすすめ。Sサイズが最適か。

メガネスズメダイは雑食性で、藻類や動物プランクトン、底生小動物を捕食しています。飼育下では配合飼料をすぐ食べてくれるような個体がほとんどで、丈夫で飼育しやすい魚といえるでしょう。ただし幼魚は配合飼料の大きな粒は食べにくいので手ですりつぶして与えるなどの配慮が必要です。冷凍のホワイトシュリンプやコペポーダなどもよく食べますが、このような餌は水を汚しやすいので多量に与えるのは避けます。

メガネスズメダイをお迎えする

採集後バケツの中を泳ぐメガネスズメダイ

海水魚店でもまれに販売されていますが、多くの場合は磯で採集することになるでしょう。意外と岩の隙間などに素早く逃げ込むので採集しにくいところがありますが、二つの網で追い込むようにして採集するとうまく獲れることがあります。しかし、幼魚はかわいいのですが、成魚は大きく変貌してしまうため、最後まで飼育できる覚悟があるアクアリストしか持ち帰ってはいけません。もちろん飼育できなくなっても放流するということはしてはいけません。

メガネスズメダイとほかの生物との関係

ほかの魚との混泳

▲メガネスズメダイも幼魚のうちはおとなしい

幼魚はほかの魚との混泳もできますが、成魚は性格がややきついので混泳は注意が必要です。小魚は攻撃の対象になることがあるため、自分よりも大きな魚、たとえば大型ヤッコやニザダイ(ハギ)などが適しています。ただ自分より大きい魚、といっても肉食魚との混泳はいけません。餌になってしまうことがあります。

サンゴ・無脊椎動物との相性

ソラスズメダイ属のスズメダイはどの種もサンゴは食べないので、サンゴ水槽に入れることができます。どのサンゴとの相性もよいのですが、先述したように浅いところにすむミドリイシやソフトコーラルは本種と生息環境がかぶるのでよく似合います。ただしクマノミが入るような大型のイソギンチャクには捕食されることもあるので、これはやめましょう。小型のディスクコーラルやマメスナギンチャクは問題ないことが多いです。

甲殻類についてはメガネスズメダイの口に入るものはだめですが、逆に大型のエビ、大型のカニ、大型のヤドカリは小魚を捕食してしまうのでよくありません。クリーナーシュリンプは問題ないことが多いですが、オトヒメエビの大きいのはやはり小魚を襲うのでこれもいけません。

メガネスズメダイ飼育まとめ

  • 幼魚のうちは赤い体と青い線がきれい
  • 成魚になると茶褐色になってしまう
  • よく似たものにオジロスズメダイというのがいる
  • 終生飼育にはできれば60cm水槽が欲しい
  • 綺麗な水を保つために複数種のろ過槽を使いたい
  • 水温は25℃前後を一定に保つ
  • 縄張りをつくる。隠れ家を入れると落ち着く
  • 雑食性で配合飼料も食べるので餌には困らない
  • 磯で採集できるが性格がきつい
  • 終生飼育できないアクアリストはもちかえってはならない
  • 大型のヤッコやハギと混泳できるが肉食魚はだめ
  • サンゴとであれば飼育しやすい

2020.07.07 (公開 2020.07.07) 水槽・器具

水槽のバックスクリーンは必要?うまく使えば景観を大きく変えられるかも

バックスクリーンは水槽の後方に貼るシートです。バックスクリーンを使用することにより、水槽の後方の部分を見えなくしたり、水槽の景観を大きく変えることもできます。

またバックウォールという水槽の内側に置く壁のようなアイテムもあります。今回は水槽のバックスクリーンの使用方法や貼り方などについてご紹介します。

バックスクリーンとは

バックスクリーンは透明な水槽の後方が目立つようなときに、水槽の後方に貼るシートのようなものです。水槽の後方の外面に貼るのが一般的で、魚の美しい色を引き立てたり、水中景観を再現するのに適したアイテムです。しかしながら必需品というわけではなく、バックスクリーンをしなければ海水魚が飼えない、というものではもちろんありません。

バックスクリーンの色彩

水槽の中には後面がもともと黒くなっているものがありますが、写真はコトブキ製水槽の「プログレ」に黒いバックスクリーンを水槽の外側にセロハンテープで貼り付けたものです。黒色のバックは魚の鮮やかなカラーを引き立てますが、暗い感じになってしまうのが欠点となります。写真ではオジサンの尾柄部付近にいるヒメフエダイの姿が見えにくくなっています。

AQ-60 バックスクリーン 黒 600

AQ-60 バックスクリーン 黒 600

284円(12/14 06:15時点)
Amazonの情報を掲載しています

青色

青色のバックスクリーンはサンゴ礁の海の色を再現するのに最適といえます。写真の水槽はやはりコトブキ製の60cm水槽プログレの後方に、青色のバックスクリーンをセロハンテープで貼り付けています。コトブキから出ているバックスクリーン「ツーカラーバックスクリーン」はひとつでふたつのカラーを再現できるのでおすすめです。昔(1970年代)の海水魚や熱帯魚の水槽はこのような青いバックも多かったように思いますが、なぜか最近はあまり見ません。

寿工芸 2カラーバックスクリーン600

寿工芸 2カラーバックスクリーン600

988円(12/14 06:15時点)
Amazonの情報を掲載しています
寿工芸 2カラーバックスクリーン1200

寿工芸 2カラーバックスクリーン1200

932円(12/14 06:15時点)
Amazonの情報を掲載しています

バックスクリーンを貼らない

▲背景が透明な水槽

一般的に販売されている水槽の多くではバックスクリーンを使用しないときは透明です。バックが透明の水槽は解放感があり、水槽の置き方を工夫すれば両方の面から観賞することができます。実際に我が家のサンゴ水槽ではバックスクリーンを使用していません。しかしその一方で後ろに何か置いているのが丸見えだったり、後方で塩だれが発生したり、やはり後方にコケが生えていると目立つというデメリットもあります。また常に両方からみられるというのは魚にとってストレスになりうる場合がありますので、ある程度隠れ家を組んであげたいものです。

バックスクリーンを貼る

▲黒いバックの海水魚&サンゴ水槽

バックが透明な水槽であれば、専用のバックスクリーンが色々販売されていますので使ってみてもよいでしょう。色は黒や青などが多いですが、あまりにカラフルなものは海水魚には似合わないでしょう。海水魚がすでにカラフルな色彩をしているからです。バックスクリーンを貼る方法は簡単で、先ほど紹介したように水槽の後方にセロハンテープでぺたりと貼るだけです。また背景に水草や流木などの写真が掲載された淡水魚用のバックスクリーンがありますが、このようなバックスクリーンはあまり海水魚には似合いません。

バックスクリーンを貼ることができる水槽とそうでない水槽があります。ガラス水槽にもいろいろな種類があるのですが、最初から水槽の後方に黒や白のパネルが貼られている水槽があります。写真の水槽などがそうで、この水槽は購入した時点で後ろのガラス後方に黒いパネルが貼られていました。このような水槽ではバックスクリーンを水槽の内側に貼れば変更可能ではありますが、内側にバックスクリーンを接着するのには魚やサンゴに無害な接着剤を使う必要があります、またはがすことも難しく、もともとバックが黒い水槽を透明にすることもできません。さらにバックスクリーンの素材によっては溶けだしたり魚にかじられてしまう可能性もあったり、魚がバックスクリーンに挟まって身動きがとれないなんていうこともあります。バックスクリーンはできるだけ水槽後方の内側ではなく外側に貼るようにしましょう。

バックスクリーンのサイズ

水槽にバックスクリーンを貼るのであればそのサイズにも注意します。当然ながら60cm水槽にバックスクリーンには45cm水槽用のバックスクリーンではカバーできません。つなげることもできますが隙間ができやすく、ちゃちな感じになりやすいです。また水槽のサイズによってはサイズにピッタリのバックスクリーンが販売されていないこともあるので注意が必要です。

バックウォールを使用する

▲バックウォールを使用したコーラルタウンのサンゴ販売水槽

▲水槽背面から見たバックウォール

水槽の壁に貼り付けるバックスクリーンだけでなく、バックウォールというものも販売されています。これは水槽の内側につける壁のようなもので、淡水魚用、海水魚用にいろいろな製品が販売されています。淡水魚の場合は岩を組み合わせたものがありますが、海水魚水槽用には人工ライブロックと同一の素材でバックウォールが作られ販売されていることがあります。販売されていることは多くないのですが、チャームなどでたまに売っているので使ってみてもよいでしょう。ただしサイズによっては水槽にうまく収まらなかったり、最悪の場合は水槽のガラスが割れたり欠けたりすることもありますので必ず適したサイズのものを選ぶ必要があります。

まとめ

  • バックスクリーンを使用すれば水槽の景観を大きく変えることができる
  • 主に黒や青がメインでカラフルなものもある
  • バックスクリーンを使用しない方法もあるがコケや塩だれが目立つデメリットも
  • バックスクリーンは水槽の外側に貼って使用する。スクリーンのサイズに注意
  • 水槽の中に入れるバックウォールもある
  • バックウォールを使用するときは水槽サイズに特に注意したい
AQ-60 バックスクリーン 黒 600

AQ-60 バックスクリーン 黒 600

284円(12/14 06:15時点)
Amazonの情報を掲載しています
寿工芸 2カラーバックスクリーン600

寿工芸 2カラーバックスクリーン600

988円(12/14 06:15時点)
Amazonの情報を掲載しています

2020.07.18 (公開 2020.07.06) 海水魚の採集

磯採集で獲れても持ち帰らないほうがよい魚

磯採集ではいろいろな魚が採集できます。しかし、採集してもうまく飼育できないものや、ほかの魚を駆逐してしまう魚などは持ち帰っても死なせてしまったり、もてあますだけになってしまいます。今回は磯で採集できても持ち帰らないほうがよいかもしれない魚をご紹介します。

持ち帰らないほうがよい理由

磯で採集した魚。せっかく採集した魚ですので、持ち帰って飼育したくなりますが、すべての海水魚が飼育に向いているわけではありません。中には以下のような理由から、ほかの魚との飼育には適していない魚もいるのです。これらの魚は単独での飼育ならば問題ないように思えますが、大きくなるものもおり、結局あまり飼育には向いていないといえるでしょう。

気性が荒い

▲ネズスズメダイの成魚はかなり気が強い。単独で飼育するべき

まず気性が荒い魚は前から飼育していた魚をいじめることがあるため、入れないようにしたほうがよいでしょう。とくにスズメダイの仲間では有名で、幼魚はかわいいしカラフルなのですが成長すると地味な色彩になってしまうことが多く、さらにほかの魚を追いかけまわすようになってしまいます。メジナの仲間やイスズミの仲間なども気が強めのことがあり、これらの魚も注意したほうがよいでしょう。このほか水族館の人気者であるモンガラカワハギの仲間も強い歯と顎をもち、魚をかじったりします。

すぐ大きくなる

▲メジナは大きくなりやすい(写真は水族館で飼育していたもの)

すぐに大きくなってしまうような魚もいます。たとえばメジナやイスズミの仲間は小さいものでもあっという間に大きくなり木葉以上の大きさになってしまいます。そのため水槽もできれば最初から大きな水槽で飼育するようにしたいものです。このほかスズメダイやフエダイ、イサキの仲間なども成長が早くてすぐに大きくなってしまうので注意します。とくにフエダイやイサキ科は小魚も食べてしまうので気をつけなければなりません。またアジの仲間は大きくなるだけでなく遊泳力もつよいため、よほど大きな水槽でないとうまく飼うことは困難でしょう。

動物食性が強い

魚の中には動物食性が強い魚もいます。オニカサゴ、イソカサゴなどのカサゴ類やウツボ類、さらに先ほどもご紹介したフエダイ・イサキ科などがその例にあてはまります。また中にはカエルアンコウなどのように生きたもの以外はなかなか食べてくれないものもいます。タツノオトシゴはブリードものはホワイトシュリンプなどに餌付きやすいのですが、採集ものはそうではないためブリードものより飼育が難しいといえます(ブリード個体も飼育しやすいわけではない)。また、このほかにもハゼの仲間なども極小サイズの魚を食べてしまうことがあるので注意が必要です。

毒を出す

フグの仲間やハコフグの仲間も磯で採集できる人気の魚ですが、これらの魚は毒を出すことがあり、飼育は単独で行わなければなりません。持ち帰るときも単独で持ち帰らなければならず、かつ海水も共有しないほうがよいでしょう(つまり隔離ケースなどにいれるのではなく、別のバケツが必要)。このほか関東の磯で採集される魚としてはミサキウバウオなどが毒を持っていることが知られています。

飼えなくなっても放流してはいけない

▲最後まで面倒を見てあげよう

この「海水魚ラボ」でも何度か書いてきたことですが、飼育ができなくなったからといっても放流することのないようにします。たとえ採集場所に逃がすとしても、寄生虫や病気の問題などもあり、一度飼育した魚は採集場所であっても逃がさないようにお願いしたいものです。

持ち帰らないほうがよい海水魚一覧

今回は主に関東近辺の磯で夏に採集できる海水魚で、ほかの魚と飼育しないほうがよい魚をご紹介しています。これらのほかメバル、アイナメ、カジカ類、コモンイトギンポ、スナビクニンなどの魚は高水温に弱くサンゴ水槽には不向きなところがあります。またチョウチョウウオの仲間のようにサンゴを食べてしまうものなどもおり、そのような魚もサンゴ水槽しかないようであれば持ち帰らないほうがよいでしょう。

コトヒキ

▲コトヒキの幼魚。このくらいのサイズで真っ黒なこともある

▲ある程度大きくなったコトヒキ。模様は面白いのだが。

理由:性格が非常にきつい

コトヒキはスズキ目シマイサキ科の魚です。幼魚は真っ黒い体、成魚は弧を描く模様が特徴でなかなかきれいなので持ち帰りたくなりますが、性格が非常にきついためほかの魚と混泳させるのは困難といえるのです。とくにこの種は夏の磯、極めて浅い波打ち際や、お湯のように熱くなったタイドプールにも見られ子供が採集してしまうこともあります。しかし先述のような激しい性格の持ち主でほかの魚をいじめるため持ち帰らないようにしたいものです。大きくなるとルアーにもアタックし、食用となりなかなか美味です。

メジナ

▲春の磯ではよくみられるメジナ

理由:性格はややきつくすぐに大きくなる

メジナは日本の広い地域の沿岸でみられるお馴染みの磯魚です。性格はややきついという程度でほかの魚との混泳もできるのですが、問題なのは成長が早いことで、すぐに大きくなることです。餌を与えていると写真のような子メジナでも1年で木葉サイズを超えるような大きさになります。そのため狭い水槽しか持てないのであれば持ち帰らないほうがよいでしょう。また、メジナ科と近縁のイスズミ科も似たようなもので、成長が早いです。

一応メジナの飼育方法はこちらでご紹介しています。

シマスズメダイ

▲シマスズメダイの幼魚

理由:性格が非常にきつい

シマスズメダイもまた夏季、お湯のように熱い潮だまりでみられるスズメダイの仲間です。太平洋岸では千葉県以南のどこでも見られ、年によっては日本海岸でも見ることができ、7月ごろから磯でみられるため夏のはじまりを告げるような存在でもあります。しかしその性格は極めて激しく、大きく育ってしまうとルリスズメダイなどもかないません。潮だまりで簡単に採集でき、飼育も簡単ですが、安易に持ち帰ってはいけない魚ということがいえます。ちなみに塩焼きなどにして食べるとかなり美味な魚です。

ネズスズメダイ

▲ネズスズメダイの幼魚

▲ネズスズメダイの成魚。上の写真の1年くらい後に撮影

理由:性格が非常にきつく色も地味になってしまう

ネズスズメダイは関東近辺でも見られるスズメダイで、鱗の斑点と、背中のメタリックブルーがたいへんに美しいスズメダイです。しかしこの特徴を有するのは幼魚だけで、成長すると体はその名のとおりねずみ色に変貌してしまいます。関東の磯でも年によっては見られますが、成長した後のことも考えないとひどい目にあいます。たいへん丈夫で非常に飼育しやすい種ではありますが、大きくなった後のことも考えなければなりません。また、同じように関東でみられるルリスズメダイ属の魚であるミヤコキセンスズメダイや、イチモンスズメダイも似た習性をもっているので注意が必要です。

ミツボシクロスズメダイ

理由:かわいいのは幼魚だけ。性格非常にきつく危険

ミツボシクロスズメダイは体が黒く、白い大きな点がありかわいいスズメダイなのですが、かわいいのは幼魚のころだけで、成魚は黒く丸い体はそのままですが白い点は小さくなり、性格も非常にきつくなりソラスズメダイも敵いません。単独で飼育できるなら別ですが、そうでなければ確実にショップへの引き取り案件になってしまう種です。ですので海では見るだけにして、持ち帰りはしないようにしましょう。一応ミツボシクロスズメダイの飼い方については記してありますのでご覧ください。

コショウダイ

▲コショウダイの稚魚

▲ある程度の大きさになったコショウダイ

理由:性格がややきつめで大きく育つ

イサキ科のコショウダイの幼魚は真っ黒で、体高が高く、波打ち際を落ち葉のように漂っていることがありますが、成魚は全長50cm以上になる大型種です。水槽ではさすがにそれほどのサイズにはならないようですが、それでも大きな水槽が必要になります。また成長すると気が強くなり、小魚を捕食することもあるため、小魚との飼育は厳禁です。

カサゴの仲間

▲イソカサゴ(写真)やハオコゼが磯で多くみられる

理由:動物食性が強く餌付きにくいことも

関東近辺でもカサゴ、オニカサゴ、イソカサゴ、ハオコゼなどが採集できるのですが、動物食性が強くて小魚を食べてしまいます。またなかなか配合飼料を食べてくれないこともあり、初心者にはおすすめできない魚といえます。イソカサゴやハオコゼは単独で飼育すれば楽しいのですが、やはり小型の甲殻類は餌になってしまいます。一部の種は高水温にも弱いので注意しなければなりません。鰭棘に毒があるのでこの点も注意しなければなりません。

ウツボの仲間

▲トラウツボ

理由:動物食性が強く単独飼育が原則

ウツボの仲間も磯で採集できることがありますが、やはり動物食性が強く、ほかの魚と飼育しないで単独飼育が原則となります。飼育するとよく人に慣れかわいいものなのですが、脱走してしまったりするのでしっかりとフタをしておくこと、水質が悪化しやすいのでしっかりとしたろ過槽が必要になること、そして大型水槽が必要になることに注意が必要です。関東沿岸では種の標準和名ウツボのほか、トラウツボ、ワカウツボ、コケウツボなどが採集できます。鋭い歯をもつので取り扱いには注意が必要です。

フエダイの仲間

▲ニセクロホシフエダイ。小さいうちはかわいいが・・・。

理由:動物食性が強く大きくなる

フエダイの仲間は関東沿岸では種類が少ないのですが、それでもクロホシフエダイやニセクロホシフエダイ、イッテンフエダイ、ゴマフエダイなどは潮だまりでよく見られる魚といえます。しかしこれらの種類は動物食性が強く、口に入る魚や甲殻類は何でも食べてしまいます。またクロホシフエダイやゴマフエダイは大きく育ち、水槽内でも30cmを超えますので飼育する前に本当に終生飼育できるのか考えるようにしましょう。ニセクロホシフエダイはそれらの種類よりも小さくまだ水槽飼育向きではありますが、先述のように肉食性が強いので注意が必要といえます。

アジの仲間

▲カスミアジ

▲コバンアジの幼魚

理由:大きく育ちまた取り扱いにも注意が必要。動物食性も強い

アジの仲間も釣りなどで採集でき持ち帰って飼育されることがあるのですが、体表が弱く取り扱いには注意が必要です。また遊泳性が強く大型水槽が必要であり、小魚や甲殻類なども捕食しています。そのため非常に大きな水槽でアジや、アジと同じくらいの大きさの魚と混泳するしかありません。やはり飼育はおすすめできない魚といえます。関東沿岸ではギンガメアジ、カスミアジ、ロウニンアジなどの幼魚(俗にメッキアジと称される)、コバンアジの幼魚なども獲れますが、終生飼育は困難といえるでしょう。

ウバウオ

▲ミサキウバウオの幼魚

理由:毒をだすことがあり

ウバウオの仲間は粘液に毒をもっている魚です。ウバウオは小型種で吸盤を使い岩や大型の海藻にくっついています。ユニークな生態をもつ魚なのですが、粘液に毒があるとされます。また飼育は難しく、特に海藻につくウバウオは高水温に弱い感じがします。またサンゴ礁や岩礁につくミサキウバウオも飼育しやすいとはいえません。

ニジギンポ

▲ニジギンポ

理由:ほかの魚の鰭などをかじる

ニジギンポは流れ藻などについていたりしてかわいいのですが、ほかの魚の鰭をかじることもあり注意が必要です。またニジギンポと同じグループのテンクロスジギンポやニセクロスジギンポ、ヒゲニジギンポなども同様に鰭をかじったり、鱗を食べる習性が知られています。安易に持ち帰らないほうがよいでしょう。分類学的にはカエルウオやヤエヤマギンポ同様イソギンポ科の魚なのですが、コケを食べることはないので注意が必要です。また鋭いカミソリのような牙をもちかまれるとけがをすることもありますので注意しましょう。

フグ・ハコフグ

▲皮膚から毒を出す可能性があるサザナミフグ

理由:毒を出すことがあり飼育もやや難しい

フグやハコフグの仲間は毒魚で有名です。単独飼育であれば問題はないのですが、ほかの魚と飼育すると皮膚から毒を出してしまうことがあります。またフグやハコフグは飼育がやや難しく、初心者が飼育しても長生きさせにくいといえます。やせさせないようにしっかりと餌を与えてあげるようにします。またサンゴについては捕食してしまうこともあり、とくにSPSやLPSとの飼育はおすすめできません。

ソウシハギ・ウスバハギ

▲ソウシハギ(左)とウスバハギ(右)の幼魚

▲ソウシハギの成魚

理由:神経質で飼育しにくく巨大に育つ

ウスバハギもソウシハギもカワハギ科の魚ですが、どちらも大きくなり、とくにソウシハギはカワハギの仲間で最大級で80cmに達することもあります。どちらも幼魚は独特の形状をしておりついつい持ち帰りたくなってしまうものですが、幼魚のうちは神経質で尾鰭などつつかれやすいため、単独での飼育が望ましいといえます。一方成魚では巨大な水槽が必要になるため、いろいろ手間がかかる種といえます。ウスバハギは定置網や釣りで漁獲され食用になります。ソウシハギは琉球列島などを中心に食用になりますが血が非常に匂うことがあり、また内臓が毒化することもあるので注意が必要です。この毒はスナギンチャク類に含まれるものとされます。つまりはこの仲間はマメスナギンチャクなどをつつく恐れがあるということで注意が必要です。

またこの仲間は流れ藻につく習性がありますが、流れ藻につく魚はほかの魚との飼育が難しいものも多く注意が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。

モンガラカワハギ科

▲アミモンガラ

理由:性格が非常にきつく何でもかじる

磯ではモンガラカワハギ科の魚に遭遇することもあります。関東沿岸でもゴマモンガラやキヘリモンガラ、アミモンガラ、クラカケモンガラ、ムラサメモンガラなど一部の種はみることができます。その中でアミモンガラやキヘリモンガラは流れ藻についていることが多く、ブイなど流れ藻以外の浮遊物についていることもあります。性格が非常に厳しく(特に大きい個体)、単独飼育が安心です。また歯も鋭く、コードをかじるなどすることもあり、オーバーフロー水槽で飼育するのが安心です。しかしながらモンガラカワハギの仲間は愛嬌があり単独での飼育でもとても楽しい魚です。

ナンヨウツバメウオ

▲ナンヨウツバメウオの幼魚

ナンヨウツバメウオの成魚

理由:大きくなり巨大な水槽が必要になる

ナンヨウツバメウオは枯れ葉に擬態することで知られる魚です。太平洋岸だけでなく、日本海岸でも年によっては防波堤などでぷかぷか浮かんでいる本種を見ることができるのです。しかしこのように擬態をするのは幼魚のうちだけで、成長するとシルバーに変貌してしまいます。それだけでなく非常に大型になり。海では50cmに達するなど、あまり飼育には向いていないところもあります。なお、分類学的にはニザダイなどに近い仲間とされており、特に幼魚は白点病などに注意しなければなりません。

ハナオコゼ

▲流れ藻についていたハナオコゼ

理由:自分と同じサイズの魚も食べる

ハナオコゼはカエルアンコウの仲間ですが、ほかの仲間とは全く異なる習性を有しています。それは流れ藻に潜み、近づいてきた魚を捕食するというものです。そしてこのハナオコゼは自分よりも大きなサイズの魚をも捕食してしまうという特徴があります。カエルアンコウの仲間は磯やその周辺の砂地で見かけますが、これらもハナオコゼ同様に単独飼育しなければならず、初心者向けの魚でもありません。

タツノオトシゴ・ヨウジウオ類

▲タツノオトシゴは飼育が難しい

タツノオトシゴといえばアクアリストにもお馴染みの魚ではありますが飼育が難しいことで知られています。口が小さく配合飼料が食べられず、主に動物プランクトンを食しているからです。よく冷凍コペポーダや冷凍ホワイトシュリンプ(イサザアミ)などをあげるとよいとされますが、採集したタツノオトシゴはなかなか餌付かないことがあります。海水魚店で販売されているのは養殖物がほとんどで、そのような個体は冷凍ホワイトシュリンプを食べることも多く、飼育は楽といえますが水を汚しやすいので注意が必要です。また同じヨウジウオ科の魚で、同様の習性をもつヨウジウオも飼育が難しい海水魚として知られていますが、こちらはまだ飼いやすいかもしれません。

ほかの多くの魚とは混泳できず、多くの餌が必要で水を汚しやすいのでサンゴ水槽での飼育もあまり向いていません。ある程度の経験が必要な魚といえます。

採集できても持ち帰らないほうがよい魚まとめ

  • 採集しても飼育には向かない魚がいる
  • スズメダイの仲間やコトヒキ、モンガラカワハギ類などは気性が激しい
  • メジナの仲間などはすぐに大きくなってしまう
  • 動物食性が強い魚も飼育しにくい。とくにカエルアンコウやタツノオトシゴなどは生き餌しか食わないことも
  • 毒を出すフグやハコフグ、ウバウオの仲間なども注意が必要
  • 飼えなくなっても海に放流してはいけない

2020.07.03 (公開 2020.07.03) 海水魚図鑑

クツワハゼの飼育方法~磯でみられるかわいいハゼだが混泳は注意

クツワハゼは富山湾以南の日本海岸、千葉県以南の太平洋岸に広く分布するハゼの仲間です。体側に多数の赤い点があったり、鰓蓋に青く輝く斑点があったり、眼の後方から伸びる縦線があるなど美しい色彩のハゼで、丈夫で飼育も容易ではありますが、やや大きくなり性格もきつく動物食性も強いため小魚との混泳が難しいところがあり注意が必要です。今回はクツワハゼの飼育方法をご紹介します。

標準和名 クツワハゼ
学名 Istigobius campbelli (Jordan and Snyder, 1901)
英名 Campbel’s goby
分類 条鰭綱・スズキ目・ハゼ亜目・ハゼ科・ハゼ亜科・クツワハゼ属
全長 10cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッドなど
温度 25℃
水槽 60cm~
混泳 肉食性が強く小魚とは飼えない。クツワハゼを捕食するような魚とも飼育不可
サンゴとの飼育 多くのサンゴと組み合わせられるが、捕食性のものはだめ

クツワハゼって、どんなハゼ?

クツワハゼは全長10cmほどになるハゼ科・クツワハゼ属のハゼの一種です。特徴としては頭部、眼後方から伸びる赤黒い縦線があること、体側に赤い斑点が多数あること、鰓蓋に輝く青い斑点があることなどがあげられ、よく見れば派手できれいなハゼといえます。眼の下にも大きなX字のような模様がありますが、これは明瞭になったり不明瞭になったりします。分布域は国内では広く、山形県、富山湾以南の日本海岸、千葉県以南の太平洋岸、琉球列島、小笠原諸島父島に分布していますが、海外では朝鮮半島、台湾、中国沿岸に見られる程度で、アジアの大陸棚の魚といえるでしょう。

クツワハゼ属の仲間たち

▲ホシカザリハゼの小型個体

クツワハゼ属の魚はインド―太平洋に10種が知られ、そのうち日本にはクツワハゼのほか、ホシノハゼ、カザリハゼ、オキカザリハゼ、ホシカザリハゼ、マダラカザリハゼ、ヒメカザリハゼが知られています。いずれにせよ観賞魚として出回ることはほとんどなく、沖縄便に強い海水魚店で探すか、採集して飼育するしかありません。これらの種は若干クツワハゼと性格が若干違うようにも思いますので、また別にご紹介していきたいとおもいます。

クツワハゼに適した飼育環境

水槽

クツワハゼは10cmに達し、ハゼ科としてはやや大型の部類です。できるだけ60cm以上の水槽で飼育するようにしたいものです。混泳する魚の種類によってはより大きな水槽が必要になることもあります。

水質とろ過システム

クツワハゼは比較的硝酸塩の蓄積には強いのですが、しっかりろ過された環境で飼育したいものです。外部ろ過槽や外掛けろ過槽ではろ過能力が低いので、60cm以上の水槽では上部ろ過槽で飼育するようにします。もちろんオーバーフロー水槽が用意できるのであれば、オーバーフロー水槽が最適です。サンゴには無害ですので、小型のものはベルリンシステムに代表されるサンゴ水槽に入れることもできます。ハマサンゴなど内湾性の地味なサンゴが似合うでしょう。ただし、サンゴ水槽では魚は多く入れられませんので注意が必要です。とくにベルリン水槽では魚を多く入れると水質の低下につながりやすいので注意が必要です。

水温

温帯に多いのですが比較的高水温に強く25℃でも飼育できます。ただし水温が高くなりすぎると弱りやすいので注意が必要です。もちろん水質も変動しないようにヒーターとクーラーを使用して水温を一定に保つ必要があります。クツワハゼは丈夫で、病気にはなりにくいのですが、それでも水温の変動が大きすぎると病気になってしまいやすいからです。

飾りサンゴ

クツワハゼは海の中では岩やサンゴの下などに隠れています。水槽でも飾りサンゴやライブロックなどを組み合わせて落ち着けるような場所を作ってあげましょう。写真は魚水槽で飼育していた時のもので、底砂を敷いていませんが、砂は敷いても敷かなくても問題ありません。混泳するほかの魚に合わせましょう。チョウチョウウオであれば砂を敷かないほうがよく、ホンベラ属などのベラと飼育するならば細かいサンゴ砂を敷いてあげます。

フタ

底生のハゼは意外と水槽から飛び出してしまうこともあります。しっかりとガラスフタをして飛び出しを防ぐようにしましょう。

クツワハゼに適した餌

クツワハゼは動物食性が強く、底生の甲殻類やゴカイ類、多毛類などを捕食しています。しかし飼育下では配合飼料をすぐに食べてくれるため、そのような餌は与えなくても大丈夫です。おすすめは粒状の餌で、「メガバイト レッド」や「シグマグロウ」などを与えますが、粒のサイズは飼育しているクツワハゼのサイズに合わせて調整しましょう。幼魚であればSサイズ、やや大きめの個体はMサイズがおすすめです。

クツワハゼをお迎えする

クツワハゼは先述の通り海水魚店で売られていることはほとんどありませんが、本州から九州の沿岸にも見られ、近海魚に強いお店で販売されていることもたまにあります。そのような個体を購入するときは、鰭がボロボロのもの(とくに赤くただれているものはだめ)、体表に大きな傷やただれがあるもの、鰭や体表に白い点がついているもの、眼が濁っているもの、口に傷があるものなどは避けましょう。また入荷直後の個体もできるだけ避けなければなりません。

一方クツワハゼは磯で採集することもできます。浅い磯ややや大きめの潮だまりで出会えます。二つの網を使い、網をセットしておき、もう片方の網に追い込むようにすればうまく採集できるでしょう。また防波堤から釣れることもあり、写真の個体も釣りにより採集したものです。なお太平洋岸に多く、日本海岸には少ない印象です。太平洋岸では広く見られ、筆者は房総、高知、宮崎で確認しています。

クツワハゼとほかの生物との関係

ほかの魚との混泳

▲クツワハゼと小魚の混泳では小魚はだんだん減っていく

クツワハゼはやや大きくなるハゼです。そのため小さな魚とは飼育しにくいところがあります。ほかの魚との混泳は可能ですが、おとなしめのスズメダイや中型のハナダイ、ヤッコなどが無難でしょう。写真の背景にはボラの幼魚がうつっていますが、襲われて食べられてしまいました。そのため小型魚との飼育はNGといえそうです。一方逆に肉食性が強い魚、たとえばハタの仲間やカサゴの仲間などには逆に捕食されることもあるので注意が必要です。このほか性格強めのスズメダイ類やメギスの仲間などはクツワハゼをいじめることがあり、混泳は要注意です。

サンゴ・無脊椎動物との相性

▲小型のヤドカリなどが混泳相手に望ましい

先述のようにクツワハゼはサンゴ水槽でも飼育することができます。ただし、捕食性の強いイソギンチャクなどとの飼育はできません。ハゼなどはイソギンチャクに食べられやすいところがあるからです。

サンゴ以外の無脊椎動物との関係では、甲殻類との関係に注意が必要です。イセエビなどの大型のエビ、大型のカニ、大型のヤドカリに捕食されやすいところがあり、逆に小さな甲殻類は捕食されてしまうおそれがあります。小型のサンゴヤドカリやベニワモンヤドカリ、クリーナーシュリンプとしてもよく知られているアカシマシラヒゲエビなどが無難でしょう。オトヒメエビも大型魚のクリーナーとしても知られているのですが、大きなハサミをもち、ハゼの仲間など動きの遅い魚を捕食してしまうおそれがあり、混泳には向いていないところがあります。

クツワハゼ飼育まとめ

  • 美しい色彩だがやや大きくなる
  • 丈夫で飼育しやすい
  • 近縁種にカザリハゼやホシカザリハゼなどがいる
  • 60cm以上の水槽が欲しい
  • 上部ろ過槽やオーバーフロー水槽が最適
  • 25℃前後の水温で飼育可能
  • 動物食性が強いが配合飼料もよく食べる
  • 販売されていることは少なく採集するのが一般的
  • 小魚などは食べてしまうことがあるので注意
  • サンゴには無害だがイソギンチャクなどに捕食されることも
  • 甲殻類との関係は要注意

2020.07.03 (公開 2020.07.02) 海水魚図鑑

コケギンポの飼育方法~動物食性でコケは食べないので要注意!

コケギンポは眼の上にまつ毛のような皮弁がユニークな磯魚です。名前に「ギンポ」とあり、コケなどを食べそうですが口が大きくプランクトンや小動物、魚の稚魚などを食べる肉食性が強い魚です。したがってコケは食べないので注意が必要です。しかしながらそのユニークな顔などが特徴的で、ライブロックなどの穴から頭部だけを出している様子は面白く、大きくもならないため飼育していて楽しい魚です。今回はコケギンポの飼育方法をご紹介します。

標準和名 コケギンポ
学名 Neoclinus bryope (Jordan and Snyder, 1902)
英名 不明
分類 スズキ目・ギンポ亜目・コケギンポ科・コケギンポ属
全長 8cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッドなど
温度 23℃前後
水槽 45cm~
混泳 口に入らないサイズの魚や肉食魚をのぞき多くの魚と飼育できる
サンゴ飼育 問題なし、ただし捕食性のサンゴは注意

コケギンポって、どんな魚?

▲コケギンポ

コケギンポは日本の広い範囲に分布する魚です。「ギンポ」の名前がありますが、天ぷらでお馴染みのギンポが含まれるニシキギンポ科や、コケを食べてくれるカエルウオなどを含むイソギンポ科とは異なる科の魚です(ニシキギンポ科などとは科の上の「亜目」の時点で異なる)。頭部、眼の上に房状の皮弁があり、口がかなり大きくなるのが特徴です。食性は甲殻類などの無脊椎動物や、魚の稚魚、卵などを食べる肉食性が強い魚で、イソギンポ科のカエルウオの仲間のような藻類食性の魚ではありません。したがってコケ取りのために本種を入れてもコケを食べてはくれません。

コケギンポ科の魚

▲西大西洋に分布するセイルフィンブレニー

コケギンポ科魚類の分布の中心は北米・南米の沿岸で、太平洋岸と大西洋岸どちらにもいます。ただし大西洋といっても、欧州やアフリカの沿岸には生息していません。北米・南米沿岸以外の分布は日本や韓国、台湾など北西太平洋に限られ、種類数も1属8種と少ないです。観賞魚としては西大西洋産のパイクブレニー、セイルフィンブレニー、東太平洋産のハンコックブレニーなどが入ってきますが数は多くありません。なお、ハンコックブレニーは「バーナクルブレニー」の名前で販売されていることが多いのですが、厳密には一般的にバーナクルブレニーとされているのは別種のようです。

日本にはこの科の魚はコケギンポ属の魚のみが知られています。日本産のコケギンポ属魚類はアライソコケギンポ、トウシマコケギンポ、シズミイソコケギンポ、オキマツゲなど8種が知られていますが、その中でもこのコケギンポが最も多い種といえます。全長10cm前後の種が多い属ですが、東太平洋に生息するサーカスティックフリンジヘッドNeoclinus blanchardi Girard, 1858のように30cmになるような種もいます(コケギンポ科としても最大級)。

フサギンポとの違い

▲フサギンポ

コケギンポはたまにフサギンポと間違えられることがあります。眼の上に大きな皮弁があるところがよく似ています。しかしこの2種は分類学的には大きく異なり、コケギンポはイソギンポやカエルウオに近い「ギンポ亜目」なのに対して、フサギンポはダイナンギンポやオオカミウオなどに近い「ゲンゲ亜目」の魚です。またフサギンポは北海道や東北地方などの冷たい海が分布の中心であり、一般にアクアリウムで飼育されるサンゴや熱帯性の海水魚とは一緒に飼育できませんので注意が必要となります。北海道では釣り採集でき飼育もできますが、やはり高水温に弱く飼育しにくいのがネックです。

コケギンポとフサギンポの違いはコケギンポの背鰭は大体25本ほどの棘条と16~19本の軟条からなるのに対し、フサギンポの背鰭は50以上の棘条からなっています。また、コケギンポは大きくても全長10cmほどと小さいですが、フサギンポは50cm近くにもなります。フサギンポは「がんじ」「がんじー」などと呼ばれ食用となっていますが、コケギンポは食用にする話はほとんど聞きません。

棘条と軟条のちがいはこちらをご覧ください。

コケギンポ飼育に適した環境

水槽

コケギンポは全長10cm程度の小型種です。そのため小型水槽でも飼育できますが、あまりにも小さいと維持管理が大変になることもあるので、初心者の方はできるだけ45cm水槽で飼育するようにしましょう。

水質

硝酸塩の蓄積には強めの魚ですが、できるだけきれいな海水で飼育したいものです。小型水槽では外掛けろ過槽と外部ろ過槽の二つを組み合わせ、60cm以上の水槽であれば上部ろ過槽が最適です。もちろんオーバーフロー水槽が用意できればそれがベストといえます。ベルリンシステムなどサンゴ水槽でも飼育できますが、サンゴメインの水槽で飼育する場合は魚の数は少なめにしておいたほうが無難です。

水温

温帯性の魚です。比較的高水温にも耐えるようですが、25℃までが安心といえるでしょう。大体23℃くらいまでで飼育したほうがよいです。一方低い水温には比較的耐性があります。もちろん温度の急激な変化はよくありませんので、クーラーやヒーターを使用してできるだけ同じ水温で飼育したいものです。

飾りサンゴなど

コケギンポの隠れ家となるような飾りサンゴが必要です。コケギンポが入れるような直径で奥が深い円形の穴が開いているような飾りサンゴだと、中にコケギンポが入る様子を観察することができます。また専用の土管も販売されているので、そのようなものを使ってもよいでしょう。

コケギンポに適した餌

▲メガバイト レッドがおすすめ

名前に「ギンポ」とあるのですがアクアリウムでもおなじみのヤエヤマギンポやホシギンポなどのカエルウオの仲間とは異なる科の魚で、コケは食べることはほとんどなく、主に動物プランクトンや小型の甲殻類を捕食しています。しかしアクアリウムにおいては粒状の配合飼料もよく食べるので心配はいりません。どうしても食べない場合のみ、ホワイトシュリンプなどを与えますが、こういう餌は水質が悪化しやすいですので、なるべく配合飼料に慣らしたほうが安心といえるでしょう。「メガバイト レッド」などがおすすめです。

コケギンポをお迎えする

▲浅い磯でみられる

コケギンポは販売されることが少なく、近海魚専門店で購入するか、採集するしかありません。分布域が広く、太平洋岸では千葉県以南、日本海岸では積丹半島以南の岩礁域に生息し、タイドプールでもごく普通にみられる魚ですが、琉球列島では見られないようです。筆者は房総半島、三浦半島、九州北岸で採集しており、写真の個体も九州北岸で採集したものです。大きめの岩をどけたりすると出てくることがあり、それを網で掬うのです。また岩と岩の隙間などにも見られることがあります。

このほかある程度の大きさに育ったものは釣りで採集できることもあります。ただし小さな針と小さな餌でないと釣ることはできません。潮だまりでの採集が一番といえます。

コケギンポのとほかの生物との関係

ほかの魚との混泳

コケギンポは様々な魚との混泳が楽しめます。ただし、細い体をしており、肉食性の魚に襲われることもあります。ハタやカサゴなど明らかな魚食魚はもちろん、バスレットや大きめのハゼ、一部のテンジクダイとの混泳も注意すべきです。またスズメダイの大きいのなども性格がきつく混泳させないほうがよいでしょう。逆にコケギンポの口に入るような魚、例えばイソハゼの仲間の小さいのなどは避けたほうがよいかもしれません。

サンゴ・無脊椎動物との相性

コケギンポはサンゴ水槽での飼育もできます。生息地的にはLPSや地味なミドリイシとの飼育がよさそうですが、サンゴには無害でどんなサンゴとも組み合わせられます。ただし、クマノミが共生するタイプのイソギンチャク(マメスナギンチャクや小型ディスクコーラルであれば問題なし)、ウチウラタコアシサンゴなどのような捕食性が強いサンゴとの飼育は避けます。これは本種のようなギンポ類やハゼ類などはイソギンチャクにとくに捕食されやすいからです。

甲殻類は概ね問題ないのですが、コケギンポの口に入ってしまうようなものと組み合わせてはいけません。小型のサンゴヤドカリ、クモガニやオウギガニなどの小さいもの、サラサエビ、アカシマシラヒゲエビ(スカンクシュリンプ)、シロボシアカモエビ(ホワイトソックス)などが無難です。逆にイセエビや大型のカニ・大型のヤドカリなどの甲殻類はコケギンポを捕食するおそれがあるので避けましょう。小さくてもオトヒメエビの仲間は動きが遅いギンポやハゼなどを食べてしまうことがありますのでこれも避けなければならない組み合わせということがいえます。

コケギンポ飼育まとめ

  • 名前に「ギンポ」とあるがヤエヤマギンポの仲間ではない
  • 種の標準和名「ギンポ」とも無関係
  • フサギンポに似ているが全く違う仲間
  • コケの仲間は食べてくれない
  • 小型水槽でも飼育できるが45cm以上の水槽での飼育がおすすめ
  • 45cm水槽なら外部ろ過と外掛けろ過、60cm水槽なら上部ろ過槽がおすすめ
  • 水温は23℃前後が望ましい
  • 飾りサンゴや土管など隠れる場所が必要
  • 動物食性なので配合飼料を与える
  • 販売されることは少なく磯で採集するか釣るしかない
  • 多くの魚と混泳可能だが気が強い魚や肉食魚、コケギンポの口に入る魚とは飼育できない
  • サンゴには無害だがコケギンポを食べるイソギンチャクや大型甲殻類との飼育は不可

2020.07.15 (公開 2020.07.01) メンテナンス

レッドシーのpH/アルカリニティテストキットでKHを測定してみました

KHはpHの変動を緩やかにする役目を担うほか、サンゴに吸収されたりするため、水槽内では徐々に減っていきます。一方減ってしまうとpHの変動が大きくなり魚や無脊椎動物に悪影響を及ぼしたり、サンゴ(とくにミドリイシ)が白化してしまうこともあります。そのため定期的に添加したり、テストキットを使用して計測することが大事です。今回はレッドシーのpH/アルカリニティ テストキットを使用してKHを計測する方法をご紹介します。

KHとは

KHは炭酸塩硬度、もしくはアルカリ度ともいいます。ただし、これはアクアリウム関係のみで使われるようです。本来、炭酸塩硬度やアルカリ度はそれぞれ異なるものなのですが、海水魚水槽では同じようなものとして考えられていますので、ここでもそのように使用します。注意すべき点としては、単位には「dKH」や「meq/l」を使用するので、それぞれの単位が混同しないようにしましょう。KHはpHと関係があり、pHの変化を緩やかにしてくれます。また炭酸塩はサンゴの骨格の成分にもなっており、サンゴにも吸収されるので減少していきやすい傾向があります。

レッドシーのKHテストキット

イスラエルのレッドシー社から販売されているpH/アルカリニティ テストキットはその名の通り、pHとKH/アルカリニティの両方をはかることができるテストキットです。先ほども述べたようにpHとKHは関係性があり、KHはpHの変化を緩やかにしてくれる緩衝としての役目もあるのです。そのためpHもKHもどちらもしっかりチェックしておきたいところですが、このテストキットは両方を計測できるためこれ1つで足りてしまうというメリットがあります。またレッドシー製品ですので北海道から沖縄まで多くの店で購入することができるというのもメリットといえます。

なお、pHの計測方法はこちらをごらんください。

上位製品

レッドシーから販売されているKHを計測するためのテストキットは2種類あります。今回ご紹介するpH/アルカリニティ テストキットのほか、KH/アルカリニティプロ テストキットというものもあります。「プロ」という名称がついていることからもわかるように、より詳細にKHを計測することができます。例えばpH/アルカリニティ テストキットでは0.5°dKH(0.18meq/l)、または1dKH(0.36meq/l)の精度で計測できるのですが、KH/アルカリニティプロ テストキットでは0.14dKH(0.05meq/l)の精度で検出することができます。正確な量の添加剤の添加を必要とするレッドシーの水槽システム「リーフケアプログラム」での使用にはマストアイテムではありますが、一般的なベルリン水槽やろ過槽を使用した水槽で海水魚やサンゴを飼育する場合はpH/アルカリニティ テストキットで問題ありません。

実際に計測してみました

pHを計測するのは比色方式でしたが、KHの計測方法については異なります。薬品を滴下させ、何滴滴下したら色が変わったかを読み取り換算します。KHは55回分測定することができ、経済的にもお得といえそうです。

パッケージです。掲載されている魚はまさかのアラビアンモノクルブリームScolopsis ghanam (Forsskål, 1775)…。渋いチョイスが素敵です。

KH計測に必要なものは以下の通りです。1.ガラス管とガラス管のフタ、2.KH indicator(KH試薬)、3.カード(使用方法、色、KH計算表が表裏に掲載)、4.スポイト、5.注射器、6.テストキットの説明書です。このうちガラス管とフタ、注射器、テストキットの説明書は前回ご紹介しましたpHを計測するのと共用になっています。このほかpH測定用の試薬とpH用カラーカードが入っていますが、今回は使用しません。

まずはガラス管とガラス管のフタ、および注射器、そして写真には写っていませんがスポイトを軽く水洗いします。

飼育水をガラス管の中に正確に入れます。このテストキットでKHを計測した場合、0.5°dKH、または1°dKH単位で計測することができるのですが、0.5°dKH単位で計測する場合は10ml、1°dKH単位で計測する場合は5mlの飼育水を正確に注入していきます。今回は1°dKH単位で測定しますので、飼育水を5ml注入していきます。

付属のスポイトを使用し、KH試薬を適当にとり、1滴だけ海水が入ったガラス管の中に入れます。

1滴滴下したら前回のpH計測の時同様、フタをしめてよくふりふりします。

色が水色になったら測定開始です。写真は鮮やかな青にみえますが、本当はもっと薄いです。またKHが低い場合はこのカラーの色とは違うことがあるので注意が必要です。

色が緑、もしくは黄色に変わるまで試薬を一滴ずつ滴下します。滴下した回数はちゃんと覚えておかないといけません。この滴下した回数の合計が測定結果になるからです。なお、滴下した回数の合計、というのは最初の一滴も含みます。

一滴滴下したら再び10秒間繰り返します。その後も滴下して10秒間振る、という作業を繰り返します。

ガラス管の中の海水が緑色、または黄色になったら滴下を終了します。カードの裏面を見て、滴定した数分の数値を読み取ります。

色が変わった際に緑ではなく写真のようなオーバードースカラー(黄色)になったら、1°dKH単位で計測の場合は最後の数値より0.5°dKHを差し引いて計算します。13滴滴下してオーバードースになってしまった場合、12.5°dKHということになります。0.5°dKH単位で計測の場合は0.25°dKHを差し引いて計算します。

計測し終わったら、水を捨てガラス管とフタ、注射器、スポイトをよく洗って乾かして計測終了です。カードは計測し終わったらできるだけ早く箱に戻します。色落ちなどを避けるためです。

レッドシーKHテストキットまとめ

  • KHはpHとの関係性がある
  • サンゴ飼育にも重要な成分であるためこまめに計測したい
  • レッドシーのpH/アルカリニティテストキットはpHとKHの両方を計測でき便利
  • 0.5°dKH(0.18meq/l)、または1dKH(0.36meq/l)の精度で計測できる
  • より正確に計測したい場合はさらに正確にはかれる「KH/アルカリニティテストキット」もあり
  • 薬品を滴下させ、何滴滴下したら色が変わったかを読み取り換算する

2020.07.15 (公開 2020.06.29) メンテナンス

レッドシーのpH/アルカリニティテストキットでpHを測定してみました

海水魚飼育で重要な数値のひとつに「pH」があります。このpHは海水魚であれば8.1~8.3くらいを維持するようにしたいところです。そのpHを調べるのには試験紙やpHメーター、そして試薬を用いたテストキットを使って調べる方法があります。今回は海水魚水槽のpHの測定方法をおおまかなご紹介と、イスラエルのレッドシー製のテストキット「pH/アルカリニティてストキット」を用いたサンゴ水槽のpH測定方法をご紹介します。

pHとは

▲海水魚の場合pH8.1~8.5がよい

pHは水が酸性なのか、アルカリ性なのかを示す数値で、とくに淡水魚を飼育しているときはよく聞くものです。海水魚であれば大体8.1~8.3くらいを維持するとよいでしょう。この数値は常に一定ではなく、魚やほかの生き物の呼吸によりどんどんと低下していきます。そのためpHは定期的に計測するようにしましょう。

pHの測定方法

▲マーフィードの「エコペーハー」

アクアリストがとれるpHの計測方法は主に3種類あります。

  1. 試験紙で計測する方法
  2. pHメーターで計測する方法
  3. 試薬を使って計測する方法

試験紙で計測するのは簡易的なもので、小学校の理科の実験で使用したリトマス紙のようなものです。海水魚水槽の場合はpHメーターで計測するか、試薬で計測するかの2択となります。

pHメーターは内外様々なメーカーから販売されています。アクアリウム関連メーカーではニッソーやマーフィードから販売されていて、それを使うことができます。デメリットとしては電池が必要なこと(メーカー指定のボタン電池をつかう必要がある機種も)、落としたら壊れることもあること、経年するとセンサーなどがおかしくなることもあるようで、使い物にならなくなることなどです。

このほか試薬を使って測定する方法もあり、かなり正確に測定することができます。ただしこの試薬にも使用期限があるので注意します。主にレッドシーやセラジャパン、国内のメーカーでもデルフィスがライブシーブランドで出しています。今回はその中でもよく知られているイスラエルのレッドシー製のものを使用して、実際に計測してみました。

レッドシーのテストキット

レッドシーのpHを測定するためのテストキットは「pH/アルカリニティ」という商品で、pHだけでなくKHをも測定できます。KHの値はpHの変動に影響を及ぼすため、KHの維持(7~12dKHが望ましい)もpHの維持のためには重要なポイントのひとつといえるのです。また、KHは造礁サンゴの成長のためにも必要な成分ですのでこまめに計測したいものです。これは頻繁に計測したいもので、できるだけ簡単に測定できるキットが欲しいところですが、そのような意味でもレッドシーのテストキットは優れているといえるでしょう。

なお、ここではpHの測定方法をご紹介します。KHについてはこちらをご覧ください。

パッケージの魚は?

レッドシーのテストキットのパッケージには鮮やかな魚やサンゴの写真が使用されており目を引くものがありますが、その種類はトゲチョウチョウウオ(レッドシー=紅海らしく背鰭の斑がない紅海タイプ)やミドリイシなどが使われているのに対し、pH/アルカリニティのテストキットのパッケージに使われている魚はまさかのアラビアンモノクルブリームScolopsis ghanam (Forsskål, 1775)というイトヨリダイ科の魚です。この魚もインド洋から紅海に特産なのですが、まさかの大抜擢。渋いチョイスが面白いものです。

実際に測定してみました

今回は我が家の90cmサンゴ水槽のpHを計測してみました。ちなみに100回分計測可能です。pHは時間により数値に変動があるのですが、今回計測した時間は大体午前10時くらいです。

レッドシーのマリンテストキット pH/アルカリニティを購入し開封します。

中にはいろいろなものが入っていますが、必要なものだけご紹介します。1がpH計測用の試薬「pH indicator」(以下試薬)、2がガラス管と専用のフタ(レッドシーのタツノオトシゴマークつき)、3が注射器、4がカラーカード、5が取扱説明書です。このほかのもの(スポイトなど)はKH計測には使用しますが、ここでは使用しませんので省略します。このほか、万が一海水をこぼしてしまったときに拭くタオルや、最後に瓶や注射器などを乾燥させるペーパータオル(キムワイプなどがおすすめ)なども用意しておいたほうがよいアイテムです。

使用する前に、ガラス管、ガラス管のフタ、注射器の3つはよく洗浄する必要があります。

注射器を使用し、飼育水を正確に5mlとり、ガラス管に入れます。

海水が入ったガラス瓶の中に試薬を3滴滴下します。

ガラス管にキャップをして10秒間軽く振ります。

10秒間振ったらガラス管のフタを外し、カラーカードの上に乗せどの色が近いか見ます。写真からはわかりにくいのですが、実際の計測結果は大体8.0くらいでした。大体8.1~8.4くらいが適しているといわれています。測定結果がカードの色の中間的な色の場合はおおよその中間値を読み取ります。カラーカードや試薬については、使い終わったらすぐにパッケージの中に入れるようにしましょう。長いこと光にさらされないようにしたいところです。

最後に再度ガラス管、フタ、注射器をよく洗って乾かしておきます。ふたたび使う場合はガラス管やガラス管のフタ、注射器を再度洗ってから測定しましょう。ガラス管の中に残留物が残っている場合はクエン酸などの溶液を使用して洗い流すときれいにとれるようです。

測定結果から考えるべきこと

サンゴ水槽の測定結果は8.0でした。測定したのは大体昼の10時くらいです。pHは時間により変動があり、一般的には夜間に藻類などが呼吸をするようになると低下し、点灯直後に急上昇します。そのため数値は変動しやすいといえますが、pHの変動が大きすぎると魚やサンゴにダメージを与えてしまうのです。そのためにはpHだけでなくKHの値を上げる添加剤も必要になります。KHはpHの変動の緩衝材になり、生き物に与えるダメージを軽減してくれます。pHやKHの値を上げる添加剤もありますが、計測しながら規定量を守って添加することが重要です。そしてpHだけでなくKHの値も測定できるレッドシーのテストキットは非常に優れているといえるでしょう。また魚の数が多いとpHの値は減少していく傾向があるためサンゴ水槽であれば魚の数を減らすというのも対策になりえます。

レッドシーpHテストキットまとめ

  • pHはアクアリウムに大きな影響を与える
  • リトマス紙のような試験紙は簡易的なもの
  • pHメーターは水に落としたりすると壊れる可能性あり。また経年劣化もしやすい
  • 試薬を使えば正確に測れるが、薬品には使用期限があるので要注意
  • pHとKHは深い関係にありできるだけ両方を計測したい
  • レッドシーのテストキットはpHだけでなくKHも計測できるのでおすすめ

2020.07.08 (公開 2020.06.26) 海水魚図鑑

キンチャクガニの飼育方法~イソギンチャクをもつ不思議なカニ

キンチャクガニはハサミの部分にイソギンチャクをつけて振り回すという習性でよく知られたカニですが、色彩もカラフルで美しい種です。しかし体が非常に小さなカニなのでサンゴ水槽ではどこへいってしまったのか、わからなくなってしまうこともあります。今回はキンチャクガニの飼育方法をご紹介します。

標準和名 キンチャクガニ
学名 Lybia tessellata (Latreille, 1812)
英名 Boxer crab, Pom-pom crabなど
分類 十脚(エビ)目・抱卵亜目・短尾下目・オウギガニ科
全長 甲幅5mm
飼育難易度 ★★★☆☆
おすすめの餌 沈降性の配合飼料など
温度 25℃前後
水槽 小型水槽での飼育に向く
混泳 大きな魚との飼育はやめたほうがよい
サンゴ飼育 捕食性の強いサンゴなどとの飼育は避ける

キンチャクガニって、どんなカニ?

▲セスジボラの幼魚を威嚇するキンチャクガニ

キンチャクガニはオウギガニ科の小型のカニです。ほかのオウギガニの仲間と違うユニークなところは、脚部や甲に鮮やかな模様を有していること、ハサミにイソギンチャクをつけているというところです。これはハサミにイソギンチャクをつけて、捕食しようとしてやってきた大きな魚に対し攻撃を仕掛けるのです。また、イソギンチャクの毒で獲物を麻痺させて仕留めることもあるようです。英名はこの習性にちなみ「Boxer crab」とも呼ばれています。また「Pom-pom crab」などともよばれているようです。日本の太平洋岸からインドー太平洋に分布しているようですが、ハワイ諸島に生息しているものは別の種類のようです。なおこのほかにもヒメキンチャクガニやハタグモガニなど、同じ属のカニはハサミにイソギンチャクをつけて身を守っており、なかにはウミウシをつけているものもいるようです。

イソギンチャクを利用する甲殻類

▲ヤドカリコテイソギンチャクをつけたトゲツノヤドカリ

キンチャクガニのようにイソギンチャクを利用する甲殻類はほかにもいます。たとえばヤドカリの仲間のトゲツノヤドカリは左鉗脚掌部、つまり「左ハサミの掌」にヤドカリコテイソギンチャクとよばれるイソギンチャクをつけているのが特徴です。これも威嚇など身を守るために使うのでしょうか。また同じくヤドカリの仲間のソメンヤドカリなどもイソギンチャクを貝殻に付着させて天敵から身を守っているようです。

キンチャクガニはこのように身を守ったり、餌をとるのに使うのですが、たまにイソギンチャクを持っていないこともあります。イソギンチャクを失っても、飼育自体は問題ありません。

キンチャクガニ飼育に適した環境

キンチャクガニに適した水槽

キンチャクガニは小型水槽での飼育もできます。大きな水槽だと、どこへ行ってしまうかわかりにくくなるのですが、小さな水槽では本種の行動をじっくり観察できます。ただし小さな水槽は水量が限られ安定しにくいというデメリットもあります。そのため、小型水槽でも、いや、小型水槽だからこそろ過はしっかりしたものを構築してあげるべきです。

水質とろ過システム

先ほども述べたように小型水槽ではろ過槽の問題があります。小型水槽向けオーバーフロー水槽も悪くはないのですが、小型水槽で海水にすむ生物を飼育するのなら外掛けろ過槽と外部ろ過槽の両方を使用するのが一番飼育しやすいといえます。ふたつのろ過槽を組み合わせることで豊富なろ材の容量を確保することができ、またどちらかが何らかのトラブルで止まってしまっても(とくに外掛けろ過槽ではこのトラブルが起こりやすい)、もう片方が動けば最悪の事態は避けることができます。

本来は生きたサンゴのそばにすむ種で、サンゴ水槽で飼育するのもよいでしょう。小型水槽ではベルリンシステムなどはやりにくかったのですが、現在は小型のプロテインスキマーもベンチュリー式のものが出てきたりして、可能になってきました。ですがこのようなシステムでサンゴを飼育するときはやはり入れる生き物の数を減らして、ごくごく少量の生物だけ飼育するようにしなければなりません。また初心者には小型水槽でのベルリンシステムは難しいのである程度経験を積んだアクアリスト向けといえるでしょう。

水温

一般的に販売されている個体はインドー太平洋のサンゴ礁にすむものなので25℃前後で飼育します。もちろん、ヒーターとクーラーを使用するなどして、しっかり温度管理をするようにしましょう。

キンチャクガニに適した餌と添加剤

キンチャクガニなどのカニやヤドカリなどはどうしてもフレークフードは食べにくいので、底に落ちた配合飼料を与えます。クリルなどを与えてもよいのですが、栄養の偏りと酸化には注意が必要ですので、できるだけ配合飼料を中心に与えたいものです。またカルシウムは骨格の形成に役立ち、ヨウ素は生命力の維持などにも重要です。さらに甲殻類で起こりうる脱皮不全はヨウ素不足が原因のひとつともされ、定期的な添加が重要です。またサンゴ水槽ではプロテインスキマーにこしとられるなどしてなくなりやすいので定期的な添加が必須といえます。

キンチャクガニをお迎えする

キンチャクガニはなかなか採集できる種ではないので、観賞魚店で購入することになります。あまり高価な種ではないのですが、意外にも販売しているところが少ないです。甲殻類につよいお店で購入するのがよいでしょう。チェックポイントとしては眼が欠けているものはだめです。脚は1本2本折れているくらいでは何ともないのですが、大多数の脚やハサミがないのは回復に時間がかかるため購入を避けたほうが無難です。これはほかの甲殻類についても、同じことがいえます。

キンチャクガニとほかの生物との関係

魚との関係

小型の甲殻類は魚がビュンビュン泳いでいると引きこもってしまうことがあります。小型水槽で飼育する場合は混泳する魚もイソハゼやベニハゼなど、小型種のみにとどめておくべきでしょう。もちろん、甲殻類を食べてしまうベラやバスレットなどは厳禁です。ヤッコなども小型の甲殻類には脅威になることがあるので、避けたほうが無難です。

サンゴ・そのほかの無脊椎動物との相性

サンゴや無脊椎動物を襲ったり傷つけてしまうということはないのですが、LPSやイソギンチャクなど、捕食性が強い生物との飼育は避けたほうがよいかもしれません。また大きなエビなどとの相性も悪いところがあります。ミドリイシやソフトコーラルとの飼育は問題ありません。

キンチャクガニ飼育まとめ

  • イソギンチャクを手にもつ変わったカニ
  • イソギンチャクを使って身を守ったり餌をとったりする
  • イソギンチャクを水槽内でなくしてしまうこともあるが飼育には問題ない
  • 小型種なので大型水槽では観察しにくい
  • ろ過システムは小型水槽でもしっかりしたものが欲しい。もしくはベルリンシステム
  • 水温は25℃をキープする
  • 底に沈むタイプの配合飼料でないと食べにくい
  • 健全な成長のためにはヨウ素やカルシウムの添加が重要
  • 大きな魚はそれだけで脅威になることも。甲殻類を食う魚との飼育もだめ
  • 甲殻類や捕食性の強いサンゴとの飼育は避ける

2020.06.24 (公開 2020.06.24) サンゴ図鑑

「初心者向け」とされていても飼育に注意が必要なサンゴ

一般的に「サンゴの飼育は難しい」とされています。実際に魚よりは難しいところがあるのですが、種類によっては案外飼いやすいものもいます。ただし書籍などで「初心者向けのサンゴ」「飼育しやすいサンゴ」とされているものでも、飼育が難しかったりします。今回はいくつかの書籍などで「初心者向けのサンゴ」「飼育しやすくおすすめ」といわれることが多くても実際は飼育がしにくいサンゴを4種類ご紹介します。

なお、初心者にも最適なサンゴはこちらでご紹介しています。また書籍などで「難しい」とされているミドリイシなどのサンゴはやっぱり難しいところがあります。難しいサンゴについてはこちらをごらんください。

簡単だといわれていても飼育が難しいサンゴ

海水魚雑誌や、飼育ガイド本の中では「初心者向けのサンゴ」という記述がなされているサンゴがいくつかあります。しかしその中には海水魚飼育からサンゴ飼育へのステップアップしたばかりのアクアリストには難しいものもあります。今回は初心者向けといわれながらも筆者が実際に飼育したサンゴとしてはやや難しかったものをご紹介します。

アワサンゴ

▲アワサンゴ

従来アワサンゴは「初心者向けのサンゴ」「丈夫なハードコーラル」とされ、実際に長く飼育されていることも多いのですが、本種はハマサンゴ科のハードコーラルで、やや気難しいところがあります。最初のうちはポリプを長く伸ばしているから大丈夫、と思いきや、元素の欠乏に敏感なようで、定期的な添加、もしくは水替えが重要なようです。

さらにほかの生物に生存を脅かされるということもあります。アワサンゴにはウミウシの仲間が寄生していることもあり、見つけ次第取り除きますが、駆除できないことも多く、水槽に入れる前にできるだけ「コーラルRXプロ」などで薬浴するようにします。また、クマノミの仲間は大人気で初心者アクアリストでも飼いやすいこともあり、水槽に入れてしまうことも多いのですが、アワサンゴをイソギンチャクと勘違いしてクマノミがすり寄ることがありますが、そうなるとダメージを受けてしまうので注意が必要です。それでも飼育の難易度はよく似た仲間のハナガササンゴと比べればかなり低いといえます。

キクメイシ

▲キクメイシ

キクメイシは丈夫なハードコーラルで初心者が購入してもすぐ死んでしまうことは少ないサンゴです。しかし、注意点があります。キクメイシは骨格が分厚く成長がおそい、というところです。またダメージを受けると回復に時間がかかってしまうのです。水流はやや強めを好みますが、強くないと飼えないというものでもありません。成長は遅いですが、カルシウムリアクターを使用すれば骨格は確実に大きくなってくれるはずです。また餌も与えたら食べます。触手が開いているときにプランクトンフードなどを吹きかけて与えるとよいでしょう。

接触すると毒性はつよいものと、よわいものがおり、先ほど述べたアザミハナガタサンゴからの攻撃にも負けてしまうものがいました。さらに骨格だけになったところにコケがはえたらサンゴの生きている部分を覆うこともあり、注意しなければなりません。餌については与えると食べますが水質の悪化に注意しなければなりません。なお、オオトゲキクメイシやカクオオトゲキクメイシは名前に「キクメイシ」とありますが別の仲間であり、飼育方法も異なっているので注意が必要です。

ハナガタサンゴ

▲アザミハナガタサンゴ

ハナガタサンゴもよく飼いやすいサンゴとして紹介されますが、過去何度か飼育してきたものの若干難しいところがあるような気がします。餌は食べないとされていますが、あったほうがよいでしょう。もちろん毎日ではなく、1週間から10日に一度くらいでかまいません。またヤッコやハギ、アイゴなどの食害にはかなり弱く、傷がついたり弱ってしまうと回復させるのが困難になってしまいます。共肉が剥げたところに藻が生えてしまうと助からないことも多いのです。また添加剤はミドリイシを飼育するときほどは重要視されないといえますが、ハナガタサンゴを飼育するのにも添加剤は重要です。とくにKHは骨格の成長のために重要で、このようなLPSを飼育する上ではKHを高めにすることが推奨されています(レッドシーのリーフケアレシピなど)。

またハナガタサンゴという名前で呼ばれているものもいくつか種類があり、小型のマルハナガタサンゴは初心者にも長期飼育がしやすいといえます。アザミハナガタサンゴは大型になりそういうものは添加剤をしっかり添加し、定期的に水かえをすれば長期飼育できますが、食害にはかなり弱いので注意します。

カタトサカの仲間

▲カタトサカの仲間

カタトサカの仲間はソフトコーラルの一種です。飼育は難しくはないのですが、水流ポンプによる水流が欲しいところです。強い水流がサンゴに四六時中直接当たるようなものはだめで、弱め~若干強めの水流が間接的にあたるようなものが望ましいです。また光はやや強めを好み、レイアウトではできるだけ上の方に配置しておきたいサンゴです。そのためステップアップに最適のサンゴということになりそうです。

カタトサカを飼育するのに餌は必要なく、細かいプランクトンフード、もしくは液状フードを少量与える程度にとどめておいたほうがよいでしょう。毒性は中程度ですが、ウミキノコやウミアザミ、ツツウミヅタなどには勝ちます。それらのサンゴを溶かしてしまうことがあるので接触するところにおかないようにしましょう。水質についても配慮が必要で、硝酸塩の低い環境を好みますが、逆に硝酸塩がほとんど検出されないのもよくないように感じます。

まとめ

  • サンゴ飼育は海水魚飼育とくらべてやや難しい
  • 書籍で「サンゴ飼育初心者向け」とされていても飼育が難しいものもいる
  • アワサンゴはウミウシなどが寄生していることもある
  • アワサンゴにクマノミがすり寄るとダメージを受けることが多い
  • キクメイシやアザミハナガタサンゴはダメージを受けると回復させにくい
  • カタトサカは水流や水質に気遣う必要がある

2020.06.23 (公開 2020.06.22) メンテナンス

ライブロックからヒトデやクモヒトデが出現したときの対処方法

ライブロックの中からはさまざまな生物が出現します。その中にはそのまま水槽で飼育できるものもいますが、一方でほかの生物に害を及ぼすものが出てくることがあります。ライブロックからはヒトデの仲間も出てくることもあります。また、同じく棘皮動物門の生物である毛むくじゃらの足をしたクモヒトデの仲間もライブロックから出現することがあります。これらの生物は水槽内のほかの生物に害を与えるのでしょうか。それとも無害でしょうか。今回はライブロックから出現するヒトデについての対処法をご紹介します。

ヒトデとは

▲コブヒトデ

「ヒトデ」は棘皮動物門ヒトデ綱と呼ばれる分類群の生物の総称であり、星形の体が特徴的な生物です。アクアリウムの世界でもヒトデの仲間はいろいろいますが、中にはサンゴを食べるなどの種類もいるため、アクアリストからの人気はそれほど高くないといえます。主に流通するのはコブヒトデ、アオヒトデ、ジュズベリヒトデ、カワテブクロなどで、コブヒトデは普通に飼育されるほか、ヒトデを専門に食う変わったエビのフリソデエビの餌にもなります。観賞用としてのヒトデの飼育についてはまた別に解説します。

このほかにヒトデの仲間はライブロックについてくることがあります。ライブロックの隙間などに隠れていることも多く、そのままライブロックといっしょに運ばれてきます。今回はこのライブロックから出現するヒトデの仲間んついてご紹介します。

ライブロックから出てくるヒトデの仲間

ヒトデの仲間

▲ライブロックの中に潜んでいたヒトデの仲間

ライブロックの故郷といえる暖かい海に生息するヒトデといえば派手なアオヒトデなどを思い浮かべますが、実際にライブロックから出てくるヒトデは写真のような地味なものがほとんどであり、色は灰色から茶褐色のものが多いです。このような色合いをしているとライブロックの中にヒトデがいても気が付かないでしょう。しかしまれにピンク色がきれいなヒトデが出てくることもあります。いずれにせよ小型のものがほとんどで、大きなものが出てくることはほとんどありません。

クモヒトデの仲間

▲小型のクモヒトデはよく出現する

クモヒトデはヒトデと同じ棘皮動物門の生き物で、名前にも「ヒトデ」とありますが、ヒトデの仲間ではありません。クモヒトデ綱という別の仲間になりますが、ここではあえて含めました。大きめのライブロックの中にはほぼ確実にみられる生物で、隙間から細くて長い足を振っているのがよく見られます。一見、動きは遅そうなのですが、腕を振りながら意外と素早い動きをすることができます。写真のような茶色い体に5本の腕があるものが多いのですが、真っ黒な体のもの、赤みを帯びたもの、縞模様で腕が6本あるものなど、ひとくちに「クモヒトデ」といってもいろいろな種類がいるのです。

ヒトデは有害?無害?

ヒトデの仲間はときに害を及ぼすことがあります。ある種のヒトデはソフトコーラルやハードコーラルを襲って食べてしまいます。ただし、すべてのヒトデがそのようなものを捕食するというわけではないようで、我が家にいるヒトデはサンゴを食べているような様子は見られません。ただしサンゴが弱っているときなど、サンゴを捕食してしまう可能性は否定できません。これはほかの甲殻類などにも同じようなことがいえそうです。

クモヒトデはサンゴを食べてしまうなどの被害を及ぼすことはありません。主に微生物の死骸などの有機物を捕食しているようです。そのため見た目はよくないものの、生物には基本的に害はなく、有益な存在ともいえます。しかし消灯後深夜に水槽を除くと大きなクモヒトデが徘徊し、アクアリストをびっくりさせることがあります。

またヒトデ類はライブロックについているだけでなく、アオヒトデやコブヒトデ、マンジュウヒトデ、ジュズベリヒトデの類などが販売されていますが、飼育はやや難しめのが多いような気がします。一方ライブロックについているヒトデは飼育しやすく、我が家でも長いこと水槽で飼育しています。

ヒトデの駆除

▲クモヒトデは放置で問題なし

水槽のガラス面に引っ付いている個体を長いピンセットでつまみます。これだけでヒトデを駆除できます。素手で触ってもよくないわけではないのですが、ヒトデの中にも毒があるような種類がいますので、やはりピンセットなどでつまんだほうが安心といえるでしょう。消灯した深夜に水槽をのぞくと巻貝などとともにガラス面にへばりついていることがあります。それをピンセットでつまめばよいのです。ただし、体がちぎれてしまうとそこからまた元通りになってしまいます。この用途に使用するピンセットは海水で錆びず軽くて使いやすいカミハタの「多目的ピンセット」などがよいでしょう。

カミハタ 多目的ピンセット

カミハタ 多目的ピンセット

517円(12/14 13:24時点)
Amazonの情報を掲載しています

一方クモヒトデについては駆除の必要はなく、そのまま放置で問題ありません。ただし小型のものは最初のうちは水槽内のライブロックのあちこちで腕をふりふりしていますが、やがていなくなってしまうことも多いです。

ライブロックから出てくるヒトデまとめ

  • ライブロックからヒトデが出現することもある
  • 概ね灰色から茶褐色のものが多くカラフルなものはいない
  • ライブロックから出現するものは小型のものが多い
  • ヒトデのほかにクモヒトデも出現する
  • ヒトデはサンゴを食べることがあるため駆除したほうがよいかもしれない
  • ヒトデはピンセットでつまんで駆除する
  • ヒトデはちぎれるとそこから再生するので注意
  • クモヒトデは駆除する必要なし

2020.06.19 (公開 2020.06.19) メンテナンス

【カイメン】ライブロックやサンゴ岩に付着した塊の正体と対処方法

水槽のメンテナンスをしているときなど、写真のような黄色い塊みたいなものがライブロックやサンゴ岩についていることがあります。黄色だけでなく、灰色や紫色、ベージュなどのものも見られます。さわると柔らかくて強くつまむとちぎれてしまう、この謎の物体の正体は何なのでしょうか。そして駆除しなければいけないのか、それとも駆除の必要性がないものなのか、考えてみましょう。

黄色い塊の正体「カイメン」

▲紫色が美しいカイメンの一種。ややデリケートなよう

▲グレーのカイメンは維持しやすい

ライブロックに付着していた塊の正体は「カイメン」です。カイメンは文字通り海綿動物とよばれる生物の仲間で種類が豊富です。黄色いのだけでなく、黒いもの、グレーのもの、紫のものなど、様々な種類があります。カイメンの仲間を英名でスポンジといい、モクヨクカイメンなどは今でも天然スポンジの原料として知られていますが、現在はメラミンやウレタンなどのものが主流となっており、天然スポンジはあまり見られなくなっています。本州から九州の海岸でも多く見られますが、ちぎって採集した個体の飼育は難しいところもあります。ただしこの塊のような物体でも、カイメンではないこともあります。ホヤの仲間なども同じような塊を形成していたりします。

トップの写真の個体は黄色が鮮やかで、レモンスポンジと呼ばれる種類というのもおりこの種かと思われましたが、レモンスポンジはもっと黄色味が異なる別種のようです。

悪さはするの?

▲ヤッコやフグはカイメンを捕食する

カイメンは少しずつ成長していきますが、その成長は爆発的、というわけではなく、徐々に広がっていったり、これまでカイメンがついていないところについていたりするもので、生育がコントロールしやすいといえます。またカイメンは魚を殺したりすることはなく、逆にヤッコやチョウチョウウオ、フグなどのの餌となります。したがって、とくに悪さをする、ということはないのですが、カイメンが死んで腐敗してしまうと水質が悪化してしまうこともあるので、その点にだけは注意が必要です。

カイメンは微小な生物などをろ過して食べたりしており、一部の種は餌を与える必要があるのですが、我が家のライブロックから勝手に生えてきたこのタイプはとくに給餌しなくても問題なさそうです。給餌するのであればたまにブライトウェルアクアティクスから販売されているフィトプランクトン(植物プランクトン)フード「フィトゴールドS」などをたまにスポイトなどを使ってふきかけるように与えるとよいでしょう。なお、ほとんどの種は光合成はせず、光はなくても問題ないようです。

駆除方法

見栄えが悪いなどの理由でカイメンを取り除きたくなりますが、そのようなときは手でちぎるよりはピンセットでつまむように取り除きます。カイメンを手で触ると後にちくちくとした痛みがのこることがあるためです。また一部がライブロックについていると、またカイメンが生えてくることもあります。ただしカイメンは無害な生物であるため、駆除の必要性はほとんどありません。

また先述のようにカイメンはチョウチョウウオやヤッコなどにとってはよい餌となりますので、このような生き物がいるとカイメンは減っていってしまいます。カイメンと同比率のアミノ酸を含み、餌に添加することによって餌の嗜好性を高める「エンジェリクサー」という商品もブライトウェルアクアティクスから出ているくらいです。

販売されているカイメンとの違い

▲海水魚店で販売されている立派なカイメン

▲鮮やかな黄色が美しいレモンスポンジ

カイメンの仲間も種類が豊富ですが、一部の種はアクアリウムショップで購入することができます。これはオレンジスポンジなどと呼ばれるもので、大きくて見ごたえがあるので、海水魚店でもよく見ることができます。また非常に鮮やかなブルーの色彩が特徴なブルースポンジや、黄色がビビッドでよく目立つレモンスポンジなども販売されています。

ライブロックについているカイメンよりも派手で目立っていることが多いのですが、カイメンはやや取り扱いが難しい生物としても知られています。具体的には、トップの写真のように水から出して空気に触れるとカイメンの中に空気がたまりそこから腐って死んでしまうことがあります。一方ライブロックに付着しているカイメンにも小さな穴が多数開いているのですが、その多くが空気との接触に耐えられるようです。また販売されているカイメンをうまく維持するのには頻繁な給餌が欠かせないという意見もあり、長期飼育は難しいところもあるといえます。

ライブロックにつくカイメンまとめ

  • ライブロックにつく黄色やグレー、紫色などのものの正体はカイメン
  • カイメンの仲間はスポンジと呼ばれ重宝されてきたが今では人工的に作成されている
  • 少しずつ成長していくが悪さはせずとくに駆除の必要はない
  • チョウチョウウオやヤッコ、フグの仲間はカイメンをつついて食べる
  • 大型のカイメンは海水魚店でも販売されている
  • 大型のカイメンは体内に空気が入らないように注意。そこから腐って死んでしまう
  • ライブロックに付着するカイメンは空気との接着に耐えられるものが多い

2020.11.13 (公開 2020.06.17) 海水魚図鑑

ヒメアイゴの飼育方法~毒棘に注意!餌や飼育環境について

ヒメアイゴはアイゴ科の中でもヒフキアイゴに次ぐ人気種です。体側にはヒフキアイゴのような黒い点はないのですが、鮮やかな黄色と青白い模様が体に入るなど美しい魚なのでアクアリストにはお馴染みの魚です。しかしながら本種もほかのアイゴの仲間同様、背鰭・臀鰭・腹鰭棘に強い毒をもっており、刺されないよう注意しなければなりません。今回はヒメアイゴの飼育方法をご紹介します。

標準和名 ヒメアイゴ
学名 Siganus virgatus (Valenciennes, 1835)
英名 Barhead spinefootなど
分類 スズキ目・ニザダイ亜目・アイゴ科・アイゴ属
全長 25cm
飼育難易度 ★★☆☆☆
おすすめの餌 海藻70など
温度 25℃前後
水槽 90cm~
混泳 おとなしい魚とであれば混泳も可能。同種同士の混泳もできる
サンゴ飼育 ハードコーラルは種類や状態によってはつつくこともある

ヒメアイゴって、どんな魚?

ヒメアイゴはスズキ目アイゴ科アイゴ属の魚です。アイゴ科はアイゴ属のみが知られていますが、アイゴ属は主にふたつの亜属に分けられており、本種はSiganus亜属に含まれています。体の黄色が美しく、ヒフキアイゴとならび海水魚専門店ではよく見られる魚です。ヒフキアイゴとは異なり吻は伸びず、体側の黒い斑点がないこと、頭部に眼を通る黒い帯と、鰓蓋後方にも黒い帯があることなどの特徴があります。

ヒメアイゴの近縁種

▲マジリアイゴ

ヒメアイゴの近縁種としてはバードスパインフットSiganus doliatus Guérin-Méneville, 1829-38という種がいます。体側中央部に多くの雨だれ模様と尾柄部に青い縦線があるのが特徴です。ヒメアイゴの場合はこれらの模様がなかったり、あっても少ない、もしくは不明瞭です。バードスパインフットは西オーストラリアからインドネシア東部、ニューカレドニア、トンガ、パラオ、コスラエなどに分布し、フィリピンなどにもほとんど見られないようです。なお日本からも宮古諸島もしくは八重山諸島からバードスパインフットと思われるものが発見され、ヨコジマアイゴなる標準和名がつけられたことがありましたが、1950年代以降に採集された記録はなく、これもヒメアイゴと混同されている可能性があるということです。観賞魚としてはニューカレドニアなどから来たこともありますが、ヒメアイゴと比べると非常に高価でした。

またヒメアイゴ同様琉球列島から東南アジアのサンゴ礁にすむマジリアイゴもヒメアイゴによく似た魚といえるかもしれません。しかしマジリアイゴは鰓蓋後方に斜めに入る帯がないこと、体中に細い縦線が入ることなどからヒメアイゴとは区別することができます。沖縄ではアイゴ類をすべて食用にし、このマジリアイゴやヒメアイゴも食用となっていますが、意外なほど美味です。

毒棘に注意!

▲ヒメアイゴの毒棘

アイゴの仲間はどの種も鰭の棘に毒棘をもち、刺されると非常に痛い思いをします。この武器は背鰭に13棘、臀鰭に7棘、左右の腹鰭にそれぞれ2棘あります。水槽の掃除をしているときや、作業中に「うっかり」刺されてしまうという事故が多々あります。刺されたあとはよく洗い、やけどしない程度の熱さのお湯につけると痛みが多少やわらぎますが、それでも痛みが引かない場合は病院で手当てをうけるようにします。

ヒメアイゴに適した飼育環境

水槽

▲90cm水槽で飼育されているヒメアイゴ

ヒメアイゴは全長20cm、自然界では最大30cmになります。水槽は最低でも60cm、できれば90cm以上の水槽を用意したいところです。ほかの魚との混泳を考えるのであれば120cm以上の水槽が適しているでしょう。

水質とろ過システム

アイゴの仲間は同じニザダイ亜目のニザダイ科やツノダシ科ほどきれいな水でなくても飼育できますが、できるかぎりしっかりした環境で飼育してあげてほしいものです。水槽システム的にはしっかりろ過がしたいので外掛けろ過槽は使用せず、外部ろ過槽も単独で使用するのは避けるようにします。基本的には上部ろ過槽、もしくは上部ろ過槽と外部ろ過槽を使用しますが、オーバーフロー水槽が置けるのであれば一番おすすめです。

サンゴはつつくこともあるので、ベルリンシステムに代表されるサンゴ水槽であればソフトコーラルやSPSなどがよいでしょう。共肉をぷっくりと膨らませるキクメイシやオオトゲサンゴ類は一緒に飼育しないほうが望ましいといえます。またベルリンシステムなどはあくまでもサンゴを飼育するためのシステムであり、魚を入れすぎると硝酸塩などが蓄積され、サンゴが弱る原因となることもあります。そうするとサンゴは魚につつかれやすくなるという悪循環に陥りやすいのです。そのため入れすぎは厳禁です。

水温と病気対策

水温は基本的に25℃をキープするようにします。大体22~27℃ほどであれば状態よく飼育できるのですが、水温が一定でないと調子を崩してしまい、そこから白点病などの病気にかかることもあるのでヒーターおよびクーラーを使用して一定の水温をキープするようにします。また水中ポンプを使用して水槽全体にまんべんなく水流をつくることも大事です。病気予防としては殺菌灯をとりつけることを思いつきやすいのですが、殺菌灯をつけるよりもこれらの基本的なことが重要です。

ヒメアイゴに適した餌

▲アイゴ科の魚の餌といえばやっぱり…

ヒメアイゴは雑食性で、甲殻類や底生の小動物を捕食していることも多いのですが、藻類食が強く海藻を好んで食べます。そのため餌は海藻70やメガバイトグリーンなど、藻類を好んで食べる魚用の餌が最適です。しかしある程度大きいものはそれらの餌をなかなか食べてくれないこともあります。そのようなときはウミブドウ(クビレズタ)などの海藻を与えるようにします。ホワイトシュリンプなども食いますが、そればかり食わせると栄養が偏りがちで水を汚すこともあります。また釣りでアイゴ科魚類を狙う場合の特効餌としてオキアミや酒かすなどを使った練り餌をつかうこともありますがこのような餌を与えると水質が急激に悪化するおそれもあるので絶対に与えてはいけません。

ヒカリ (Hikari) ひかりプレミアム海藻 70 S サイズ

ヒカリ (Hikari) ひかりプレミアム海藻 70 S サイズ

1,245円(12/14 18:46時点)
Amazonの情報を掲載しています
ヒカリ (Hikari) ひかりプレミアム海藻 70 M サイズ

ヒカリ (Hikari) ひかりプレミアム海藻 70 M サイズ

1,250円(12/15 04:24時点)
Amazonの情報を掲載しています

ヒメアイゴをお迎えする

▲ヒメアイゴ購入時にチェックしたいポイント

ヒメアイゴは国内ではほぼ琉球列島にしか分布しないようで(口永良部島での記録もある)、それより北方では購入にたよることになります。ヒメアイゴも、ほかのアイゴの仲間も、購入する前に確認するべきポイントはたいして変わりません。アイゴの仲間はやせやすいので、当然薄っぺらいものは避けます。そのような個体はたとえ元気であっても回復させにくいのです。また頭部が妙に大きく、厚く見えるのもいけません。これは周囲の肉がなくなっていって頭部が大きく見えるということになります。そのほかの注意点はほかの多くの魚と同様で体に白い点がついているもの、体表に傷やただれがあるものは避けるとか、眼は動くものによく反応しているか、などです。泳ぎ方はゆったりと泳いでいるものが最適です。

また入荷直後のものは購入しないほうがよいでしょう。ヒメアイゴは2,000~3,000円前後(昨今のCOVID-19のパンデミックの影響で流通量が少なくなりやや価格上昇気味)で購入できますが、このくらいの価格帯の魚も意外と雑に扱われやすいところがあります。さらにこのヒメアイゴの場合は産地も多くの場合フィリピンやインドネシアのような東南アジアで、この海域の魚はおおむねそのような傾向があります。

ヒメアイゴとほかの生物の関係

ヒメアイゴとほかの魚との関係

▲同種他種ともに協調性あり

アイゴの仲間は近縁とされているニザダイの仲間と比べると同種同士では争うことはあまりなく、同種同士での飼育も可能です。ただしある程度の大きさに育つ魚ですので、その場合でも90cm以上の水槽が望ましいです。ほかの魚との混泳は近縁の科であるニザダイの仲間、デバスズメダイなどおとなしめのスズメダイ、カクレクマノミ、ハナダイ、カエルウオ、テンジクダイ、ハゼ、バスレットなどかなり多くの種類の魚と混泳させることができます。ただし性格がきついメギスや大型のスズメダイ、臆病な遊泳性ハゼなどとの飼育には適さないところがあります。

ヒメアイゴとサンゴ・無脊椎動物などとの相性

▲海藻を食べるヒメアイゴ

ヒメアイゴをサンゴ水槽で飼育しているアクアリストもいますがヒユサンゴ(オオバナサンゴ)などはつついて捕食してしまうこともありますのであまり賢明とはいえないかもしれません。ソフトコーラルならまだつつかないので入れられますが、トサカやスターポリプ、ウミキノコ類にとどめたほうが無難かもしれません。サンゴ以外の無脊椎動物ではサンゴヤドカリ類やベニワモンヤドカリ、オウギガニの類、各種クリーナーシュリンプと飼育でき、ある程度の大きさまで育つとオトヒメエビなどとも飼えます。ただし大型のエビ・大型のカニ・大型のヤドカリとの飼育は避けたほうが無難です。

海藻は先ほども述べたように入れたらヒメアイゴに食べられてしまうため一緒に入れることはできません。餌として海藻を育てるのであれば別の水槽で育てる方式をとるとよいでしょう。

ヒメアイゴ飼育まとめ

  • ヒフキアイゴとともに海水魚店ではよく見られるアイゴ
  • ヨコジマアイゴ・マジリアイゴなどの近縁種もいる
  • 背鰭・臀鰭・腹鰭に毒棘あり要注意
  • 最低でも60cm、できれば90cm水槽が必要
  • 上部ろ過槽、上部ろ過槽と外部ろ過槽の使用、もしくはオーバーフロー水槽が最適
  • 水温は25℃をキープして病気を防ぐ
  • 餌は海藻70などが適しているが食べないときは海藻をあたえるしかない
  • やせやすく体が薄っぺらいものは購入を避ける
  • 白い点がついているものや体にただれがあるものなども購入を避ける
  • 同種同士の混泳もできる
  • ほかの魚との混泳も可能だが強すぎる魚はだめ
  • サンゴはつつくことがあり海藻は食べてしまう

2020.06.17 (公開 2020.06.16) 海水魚図鑑

アイゴの飼育方法~痩せと毒棘に注意!餌や飼育環境まとめ

アイゴは本州から九州、琉球列島まで広い範囲に分布し、釣り人にはお馴染みの魚ですが、その一方漁師さんにとっては海藻を食べてしまうということもあり、あまり有り難がられない魚といえます。このアイゴは夏ごろ海藻の生える場所で群れていることも多く、このような個体を採集して飼育することもできます。しかし鰭棘に毒があるため取り扱いには注意が必要です。今回はアイゴの飼育方法をご紹介します。

標準和名 アイゴ
学名 Siganus fuscescens(Houttuyn, 1782)
英名 Mottled spinefoot, Dusky rabbitfishなど
分類 スズキ目・ニザダイ亜目・アイゴ科・アイゴ属
全長 30cm
飼育難易度 ★★☆☆☆
おすすめの餌 海藻70など
温度 25℃前後
水槽 90cm~
混泳 おとなしい魚とであれば混泳も可能
サンゴ飼育 ハードコーラルは種類や状態によってはつつくこともある

アイゴって、どんな魚?

▲神奈川県三浦半島で釣ったアイゴ

アイゴはインド―西太平洋の温暖な海域に生息していますが、日本においては青森県以南に生息するなど、温帯域にも多く見られる魚です。琉球列島にも見られますが、琉球列島のものは体に白い斑点があり、従来はシモフリアイゴと呼ばれてきましたが、これは現在アイゴと同種とされています。関西地方や九州では「バリ」などと呼ばれ、非常に引き味が強く、釣り魚として人気があります。食用としても知られていますが、においがきついことなどもあり、関東ではあまり人気がなく西日本のほうで食べられることが多いです。また海藻を食べることも多く、漁業従事者にはあまりありがたがられない魚ともいえます。新種記載されたのは1782年で、オランダのHouttuynにより日本(長崎)で採れた個体をもとに記載されています。

アイゴの仲間

▲ヒフキアイゴ

▲ヒメアイゴ

アイゴ科の魚は世界で28種ほどが知られていますが、本州には少なく、奄美大島以南の琉球列島に多く生息しています。中にはカラフルな色彩のものも知られており、ヒフキアイゴやヒメアイゴ、マジリアイゴなどのように、海水魚専門店では必ず見られるような魚も多く含まれていますg、標準和名アイゴは海水魚店ではほとんど見られません。アイゴ科の魚はアイゴ属のみが知られていますが、Siganus亜属(アイゴ科のほとんどの種を含む)とLo亜属(吻がとがるヒフキアイゴのグループ、5種)の二つに分けられます。アイゴ科の魚類について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

アイゴの毒棘に注意!

▲赤く囲んだ場所に毒棘がある!

アイゴ科の魚はどの種も背鰭13棘10軟条、腹鰭1棘3軟条1棘、臀鰭7棘9軟条で、特に腹鰭の形状(前後に各1本の棘が1対ある)がほかの魚と大きく異なる特徴です。そしてアイゴの仲間の大きな特徴は背鰭などの鰭棘に毒があることです。この鰭棘に刺されると激しく痛みます。近くにいなければ問題はないのですが、水槽内に手を入れてコケをとるときなど近寄ってくることもあります。アイゴの仲間が水槽にいることに十分注意して作業をしなければなりません。万一刺されてしまった場合はやけどしない温度のお湯に患部をつけると痛みが和らぐことも多いのですが、痛みが引かない場合は医師の診察を受けるようにします。

アイゴに適した飼育環境

水槽

▲水族館で飼育されているアイゴ

アイゴは海中では全長30cmになる大型魚です。家庭水槽内ではそれほど大きくなることは少ないとは思いますが、それでも20cm近くには育ちますので最低でも90cm以上の大型水槽が欲しいところです。また混泳を考えるのであれば120cm以上の水槽が欲しいところです。

水質とろ過システム

アイゴの仲間はニザダイと比べたら若干水質の悪化には耐えられるものの、スズメダイやハゼなどと比べると水質悪化には弱いところがあります。ろ過装置については外掛けろ過槽や外部ろ過槽の単独使用は候補からはずれ、上部ろ過槽を使用するか、上部ろ過槽+外部ろ過槽を使用することになります。ですが、オーバーフロー水槽を用意できるのであればオーバーフロー水槽で飼育したほうがずっと安定して飼育できるようになるでしょう。

アイゴはサンゴの共肉をつつく可能性もありますが、チョウチョウウオやヤッコほどではないため、ベルリン水槽などサンゴ水槽での飼育も不可能ではありません。また生息環境を考えればLPSよりはSPSやソフトコーラルとの飼育が望ましいです。しかしこれらを全く食べない、という保証はありません。とくにベルリン水槽で魚を多く入れすぎるとサンゴの調子が悪化することもあるのですが、そうなると魚につつかれやすく負の連鎖に陥りやすいので注意しなければなりません。

水温と水流

温帯の個体でも高水温には比較的強く、25℃ほどで飼育できます。また本州から九州産のものは比較的低水温(20℃くらい)でもよいのですが、水温が頻繁に上下するのはよくありません。ヒーターとクーラーを使ってできるだけ一定の温度を保つようにしましょう。温度の変動が大きいと白点病などの病気が発生しやすいからです。また水流があまりなくよどんでいて汚いとウーディニウム病などにもかかるおそれがあります。病気予防には殺菌灯!と思ってしまいますが、実際にはきれいな水とほどよい水流、安定した水温がずっと大事なのです。

アイゴに適した餌

▲藻類食魚には海藻70が最適

アイゴの仲間は雑食性ですが、主に藻類を捕食しています。捕食する藻類はライブロックにうっすら生えたコケ(茶ゴケはあまり食べない)から大きな海藻まで食べます。幼魚のうちは配合飼料もよく食べますが、ある程度育ったものは配合飼料を最初から食べるとは限らないため注意が必要です。配合飼料はメガバイトレッドも食しますが、おすすめの餌は「海藻70」もしくは「メガバイト グリーン」で、これらは海藻やそのほかの藻類を食する魚のために、海藻が強化配合されています。最悪の場合は餌用として販売される「ウミブドウミックス」などの餌を与えなければならないこともあります。またアイゴやニザダイの仲間はやせやすいのでこまめな給餌が必要になります。

また釣りでアイゴを専門に狙うときは練り餌を使いますが、この練り餌は水を著しく汚してしまうおそれがあるので絶対に与えないでください。

ヒカリ (Hikari) ひかりプレミアム海藻 70 S サイズ

ヒカリ (Hikari) ひかりプレミアム海藻 70 S サイズ

1,245円(12/14 18:46時点)
Amazonの情報を掲載しています
ヒカリ (Hikari) ひかりプレミアム海藻 70 M サイズ

ヒカリ (Hikari) ひかりプレミアム海藻 70 M サイズ

1,250円(12/15 04:24時点)
Amazonの情報を掲載しています

アイゴをお迎えする

▲福岡県沿岸で採集したアイゴの幼魚

アイゴは夏ごろに磯で潜ると幼魚を見ることができます。とくに海藻が多い場所などではアイゴが海藻類をつついて食べる様子をみることができます。これを網で掬って飼育するのがよい方法です。ただしアイゴの仲間は成長が早く、あっという間に大きく育ちます。餌を控えると先述のように体がぺらっぺらになってやせて死んでしまいますので、餌をしっかり与えて大きくしましょう。もちろん飼育できなくなっても海に逃がすのはいけません。

販売されていることは少ないのですが、まれに海水魚店で販売されていることもあります。販売されている個体を購入するときは、鰭がぼろぼろになっていうもの、体表や鰭にただれがあるもの、体表や鰭に体側の白色斑よりもかなり細かい点がついているもの(白点病)などは避けます。また背肉がおち頭部が大きく見えるような個体は避けたほう無難です。

アイゴとほかの生物の関係

アイゴとほかの魚との関係

アイゴはニザダイの仲間よりは協調性がありますが、大きくなる魚ですので小型水槽に同種を多数詰め込まないほうがよいでしょう。ほかの魚との相性はおおむね問題はないですが、かなり大きくなるスズメダイやメギスなどとは組み合わせないほうが無難です。

アイゴとサンゴ・無脊椎動物などとの相性

アイゴは雑食性で藻類を中心に捕食しますが、サンゴが弱っているとサンゴを食べてしまうこともあります。そのためサンゴ水槽での飼育には注意が必要となります。サンゴを食べてしまうようであればアイゴ、もしくはサンゴを水槽から退避させるしかありません。甲殻類はスカンクシュリンプなどクリーナーシュリンプやサンゴヤドカリであれば飼育可能ですが大きな甲殻類(イセエビや大型のカニ、大型のヤドカリなど)との飼育は避けたほうが無難です。そして海藻類はアイゴに食べられてしまうので一緒に飼育することはできません。アイゴの餌として海藻を育てるのであれば、海藻はアイゴを飼育する水槽と別に維持するとよいでしょう。

アイゴ飼育まとめ

  • アイゴの仲間ではもっとも一般的な魚
  • アクアリウムではヒメアイゴやヒフキアイゴなどカラフルな種のものが人気
  • 背鰭・腹鰭・臀鰭の棘に毒があるので取り扱い注意
  • やや大きくなるため90cm以上の水槽で飼育したい
  • ろ過槽もパワーがあるものを使用する
  • 水温を一定に保ったり、適切な水流を作ったりして病気を防ぎたい
  • 藻類食が強く「海藻70」がおすすめ
  • 幼魚は磯で採集できる
  • やせているものや白点病にかかってるものなどは購入してはいけない
  • ほかの魚には無害だが性格がきつい魚とは飼育しない
  • 弱ったサンゴを食べてしまうことも
  • 海藻は食べてしまうので海藻水槽では飼育できない

2020.06.15 (公開 2020.06.15) メンテナンス

KH (炭酸塩硬度)とは?海水魚・サンゴ飼育に重要な数値について

KHは炭酸塩硬度ともいわれているもので、海水魚やサンゴを飼育する上で重要な数値です。魚やサンゴを飼育しているときはpHの維持やバッファー剤として重要で、炭酸塩はカルシウムと結合することによりサンゴの骨格形成に重要な成分です。今回はこのKHの役割と上昇・安定させる方法をご紹介します。

KH(炭酸塩硬度)とは

KHは炭酸塩硬度、もしくはアルカリ度ともいいます。ただし、これはアクアリウム関係のみで使われるもののようです。本来、炭酸塩硬度やアルカリ度はそれぞれ異なるものなのですが、海水魚水槽では同じようなものとして考えられていますので、ここでもそのように使用します。注意すべき点としては、単位には「dKH」や「meq/l」を使用するので、それぞれの単位が混同しないように注意しなければなりません。

KHの数値がなぜ重要なのか

pHとの関係

▲海水魚の場合pHは8.1~8.5くらいがよい

KHはpHと深い関係があります。KHは緩衝の役目をしており、pHの数値変動を緩やかにする効果があります。当然ながらpHの変動が大きすぎると魚やサンゴにストレスになりますので、できるだけ一定の値になるようにしたいところです。KHを上昇させることをうたう添加剤は「バッファー剤」ともよばれています。添加剤メーカー(ブライトウェルアクアティクス)によれば大体7~12dKH(2.5~4.3meq/L)の間でアルカリ度を維持するのがpHを希望の範囲にとどめておくポイントとされます。

サンゴに吸収される

▲ミドリイシを飼育するならKHの値にも気を付ける

炭酸塩とカルシウムを結合させたアラゴナイトはサンゴの骨格の90%を占めるというデータもあります。造礁サンゴの骨格にも使用されているので、ハードコーラル、とくにミドリイシを飼育するのであればKHは非常に重要なものになっています。低すぎるのも高すぎるのもよくありません。カルシウムリアクターを使ったり、レッドシーやブライトウェルアクアティクスから出ている添加剤を使用してKHを保つ必要があります。とくにミドリイシはKHが低すぎると白化してしまいます。なお、レッドシーが展開する「リーフケアレシピ」によればミックスドリーフ(ソフト&ミドリイシ以外のハードコーラル)であれば11.5dKH、SPSドミナント(一般的なベルリンシステムでのSPSの飼育)であれば8dKH、超低栄養塩システムであれば7dKH(ゼオビットでは6.5~7.5dKH)、魚のみの水槽であれば同じく7dKHというのが理想です。ただし、数値に振り回されるのではなく、サンゴや魚の様子を見ながら調節していきましょう。

KHを計測する方法

KHを計測するのであればレッドシーやセラから出ている専用のテストキットがおすすめです。レッドシーから出ているpH/アルカリニティはKHの数値だけでなくpHを計測することもできます。とくに先述のようにpHとKHの数値は密接にかかわっているため、両方をはかることができるのでとてもよい製品といえます。またより正確に計測するなら同じくレッドシーから出ている「KH/アルカリニティ」を使えばより正確に計測することができます。

KHを上昇・安定させる

KHを上昇・安定させるのには一般的に以下のような方法があります。

水かえする

一番簡単な方法は水をかえることです。水かえはただ単に古くなり硝酸塩・リン酸塩・ケイ酸塩が多く含まれる海水を、これらの少ない新しい水とかえる、というだけのことではなく、人工海水に含まれる成分を再構築するという目的もあります。もちろんKHやpHのバランスを再構築する、というのもその中に含まれています。

添加剤を使用する

▲アルカリン8.3(ブライトウェルアクアティクス)

KHを上昇させる簡単な方法は、添加剤を使用することです。よく知られた商品でいればブライトウェルアクアティクス(マーフィード)の「アルカリン8.3」、レッドシーの「リーフケアプログラム ファンデーションB」、国産品もデルフィスの「ライブシー バッファーペーハーアルカリ」などがあります。もちろん添加剤を使用する場合は、説明書をよく読み、添加すべき量をしっかり計り、入れすぎないように注意しなければなりません。とくにリーフケアプログラムのものは正確に測ることが望ましいです。なおリーフケアプログラム専用のテストキットも市販されていますので、使用してみるとよいでしょう。

添加剤には液体状のものとパウダー状のものがあります。ブライトウェルアクアティクスのアルカリン8.3は液体状のものですが、デルフィスのものはパウダー状のみです。レッドシーのものは液体状とパウダー状のものがあります。なお、アルカリン8.3についても姉妹品としてパウダー状の「アルカリン8.3-p」と呼ばれるものが海外で販売されていますが、日本では並行輸入しか手に入れることはできません。もちろん説明も日本語のものではなく、ヘタに使うと崩壊のおそれもあります。

カルシウムリアクターを使用する

▲グローテックのカルシウムリアクター

カルシウムリアクターは名前に「カルシウム」とついていることからもわかるように、カルシウムを水槽に供給するものと思われがちですが、サンゴの飼育に必要で、サンゴに吸収されやすいKHを維持するという意味合いも強いです。カルシウムリアクターの仕組みとしてはアラゴナイトなどを筒の中に入れ、それを二酸化炭素で溶かし、溶け出した水を水槽に供給するというものです。ミドリイシの飼育においてはカルシウムリアクターが登場して飼育しやすくなったといえ、かつては必需品とまでいわれていたこともありました。

ただし近年は添加剤の質が上がったり、添加方法の理解がすすみ、その一方でカルシウムリアクターについては別途二酸化炭素のボンベが必要であるなどの理由でリアクターを使用せずに、添加剤だけでKHを上昇させているアクアリストも多いようです。ただしその場合もKHやpHはしっかり計測しながら添加しなければなりません。

KHまとめ

  • 炭酸塩硬度ともよばれ、海水魚やサンゴにとって重要な値
  • pHの値の変動が緩やかになる
  • 炭酸塩がサンゴに吸収され、骨格の素材になる
  • 魚中心、低栄養塩システムなら7dKH前後が理想
  • ゼオビットでは6.5~7.5dKHが理想
  • SPSでは8dKHが理想
  • LPSやソフトコーラルの「ミックスドリーフ」では11.5dKHが理想
  • 専用のテストキットでKHを測定できる
  • 添加剤やカルシウムリアクターを使用してKHを調整する

2020.11.10 (公開 2020.06.10) 水槽・器具

ウツボの隠れ家に塩ビパイプが適している理由

ウツボの仲間は細長い体をもち、岩やサンゴの隙間に身を寄せています。夜間になるとそこから這い出て餌を捕食します。水槽内でも昼間ウツボが隠れるためのものが必要になります。水族館ではパイプの中に多数のウツボが密集している様子を見ることができます。実際パイプはウツボの隠れ家には最適なものです。今回はなぜパイプがウツボに適しているのか考えてみましょう。

ウツボの隠れ家になるもの

▲我が家のウツボ水槽に使っているVU40

ウツボが身を寄せる「隠れ家」にはいろいろなものがあります。ライブロック、サンゴ岩、シリコンなどでできた飾りサンゴ、各種土管・パイプなどです。水族館へ行くと、パイプの中にたくさんのウツボやアナゴなどが身を寄せている光景を見ることがありますが、実際にパイプというのはウツボの仲間にとって最適な隠れ家といえます。パイプにもいろいろな種類がありますが、塩ビ製のものがよく用いられ、この塩ビ製のパイプが家庭の水槽でウツボを飼うのにはもっとも適しているように思えます。

なぜ塩ビのパイプがいいの?

軽い

まず塩ビパイプのいいところは「軽い」ところです。ウツボはかなり力が強いため、サンゴ岩やライブロックを動かしてしまうことがあります。それだけならまだよいのですが、サンゴ岩により水槽に傷がついたり、最悪破損してしまうこともあります。しかしこの塩ビパイプは軽量ですので、そのような心配はサンゴ岩やライブロックよりは低いといえます。

割れにくい

また塩ビパイプそのものが割れにくいということもあります。素焼きの陶器などは使用しているうちにぶつかるなどして欠けてしまうことなどもありますが、塩ビパイプではそのようなこともありません。

入手しやすい

塩ビパイプは給水・排水といった用途に使用されるもので、ホームセンターで簡単に購入することができるというメリットもあります。ウツボの大きさに合わせて選ぶようにしましょう。

有害物質が溶け出さない

金属製のパイプだと海水の使用で錆びてしまったり、有害物質が溶け出してしまうことがありますが、塩ビパイプではそのようなことが起こりにくいため安心して使用できます。

塩ビパイプのデメリット

人工物らしさが出てしまう

塩ビパイプは灰色や紺色で、どうしても人工物らしさが出てしまいます。そのあたりはデメリットといえます。

コロコロ転がりやすい

断面が円形であり、かつ軽量な塩ビパイプはウツボが動かすなどしてコロコロと転がってしまいやすいものです。そのためほかの魚がいる水槽や、サンゴを飼育している水槽では使いにくいものです。しかし、ウツボはほかの魚を食べてしまったり、水質を悪化させやすいということもあるため、あまりほかの魚やサンゴとの飼育には適していないところがあるといえます。

ウツボのサイズごとに適したパイプ

▲VU40

ウツボのサイズによって適したパイプのサイズは変わってきます。ウツボの幼魚、成魚であってもアミキカイウツボのような小型種、ウツボではないですがミミズアナゴのような小型種であれば呼び径13mm、外径18mm前後のVP13の塩ビパイプでも問題ないでしょう。なお塩ビパイプには一般的にVP管とVU管というのがありますが、VU管は薄肉管、VP管は厚肉管とも呼ばれ、VP管よりもVU管のほうが薄くなっています。アクアリウムではオーバーフロー水槽のパイプにも使用され、どちらもよく使用されておりますが、VP管のほうは落下音が軽減されるともいわれています。

アクアリウムでお馴染みのパイプ系アイテムといえば、ミニテムの「エビ土管」や「ハゼ土管」があります。直径などでみればVP13とあまり変わらないように見えますが、長さという点においては切断することで好みの長さに変えることができるVP13のほうが便利といえます。ただし、切断するためにパイプカッターやノコギリなどが必要であるところはデメリットといえます。

参考までに、我が家で使用している塩ビパイプは積水化学工業・エスロンパイプ(JIS K 6741)のVU40です。外径48mm、内径44mmというものです。長さはおおよそ50cmくらいにカットしています。このパイプの中に2匹のウツボと1匹のモヨウモンガラドオシがすっぽりと隠れてしまうのです。なお写真のウツボやサビウツボは全長40~50cm前後です。

ウツボの隠れ家まとめ

  • ウツボ飼育には隠れ家が必要
  • 岩やライブロックで隠れ家を組むのはおすすめしない。塩ビパイプがおすすめ
  • 塩ビパイプは軽くて割れにくい
  • 塩ビパイプなら欠けて割れる心配もない
  • 塩ビパイプならホームセンターでも販売されており購入しやすい
  • 金属製のものと異なり塩ビパイプは錆びず有毒成分溶出もない
  • 塩ビパイプは人工物の感じが出てしまいやすい
  • 塩ビパイプは転がりやすいので他の魚がいる水槽やサンゴ水槽には適しない
  • 塩ビパイプにはVU管とVP管の2種がある
  • エビ土管やハゼ土管などもあるがウツボ飼育なら切断して長さを変えられるVP13が便利

2020.06.17 (公開 2020.06.09) 水槽・器具

ジェックス「デュアルクリーン600」でウツボを飼育~上部ろ過槽のメリットと脱走予防策

ジェックスの「デュアルクリーン600」高いろ過能力をもち、魚中心の飼育に最適なろ過槽です。上部ろ過槽は「照明が多く置けないためサンゴには不向き」などといわれることもありますが、経験上LPSやソフトコーラルは多くの場合問題ありません。たしかに強烈な光が必要となる浅場ミドリイシなどのSPSには確かに不向きではありますが、これは硝酸塩の蓄積を嫌うミドリイシはろ過槽を用いるシステムでは飼育が難しいからです。

上部ろ過槽はどんな海水魚を飼育するのにも適しているのですが、その中でもほかのろ過槽では飼育しにくいウツボの仲間を飼育するのにはもっとも適しているといえます(オーバーフロー水槽はのぞく)。なお、ここでは主に上部ろ過槽でウツボやそれとよく似たウミヘビの仲間の魚を飼育するための方法についても解説します。上部ろ過槽の詳細については、こちらをご覧ください。

なぜウツボ飼育には上部ろ過槽が最適なのか

以前、魚種別のおすすめろ過槽のお話をしてきました。上部ろ過槽はどんな海水魚を飼育するのにも適していますが、その中でも上部ろ過槽では飼育しやすいのに、ほかのろ過槽、たとえば外掛け式ろ過槽や外部ろ過槽では飼育が難しいものにウツボやウミヘビ科の魚がいます。

ウツボ飼育で最も気をつけなければならないのが「脱走」です。外掛けろ過槽ではどうしても水槽の上に隙間ができてしまいやすく、その隙間からウツボが脱走するおそれがあります。もちろん、上部ろ過槽を使用しても小さな隙間が出来てしまいますので、その部分は塞ぐ必要があります。

また、ウツボは大食いであり、しかもイカや魚の切り身など生の餌を与えることが多く、どうしても飼育水を汚しやすい魚です。外部ろ過槽や外掛けろ過槽だとろ過能力が追い付かないことも考えられるため、上部ろ過槽の方が有利と言えます。また外掛けろ過槽は概ね小型水槽用であり、大きくても60cm水槽までですので、大きく育つウツボの仲間を飼育するにはもともと使いにくいといえます。

デュアルクリーン600を改造

▲デュアルクリーン600を使用した60cm水槽

今回ウツボ飼育に使用する「デュアルクリーン600」はジェックスから販売されている上部ろ過槽です。その名の通り二つ(デュアル)のろ過槽をもち、オーバーフロー式散水器を採用することにより酸素をたっぷりと溶け込ませることができます。酸素がいきわたることにより好気バクテリアが活発に活動してくれ、酸欠の心配も解消されます。オープン価格ですが、ホームセンターやディスカウントストアの観賞魚扱い所などで販売されていることもあり、3000円代、もしくはそれ以下という低価格で購入できるのも注目のポイントです。

デュアルクリーンを購入するとき、ろ過材として「クリーンバイオ」「マット」がついてきますが、クリーンバイオはここでは使用しません。そのかわり粗めのサンゴ砂や、「パワーハウス ハード」などの海水魚用ろ材を使用します。ウールマットはあってもなくてもかまいません。確かに大きなゴミを濾しとるのには有用なのですが、そこで腐らせていては逆に水を汚してしまうこともあります。もし使用するのであれば、頻繁にウールマットの掃除をすることが重要です。また今回は別用途でウールマットを使用します。

ウツボ水槽用に改造

ほかの魚と異なる独特なキャラクターを持つウツボをうまく飼育するためには上部ろ過槽のすきまを埋める必要があります。といってもそれほど大がかりなものではなく、上部フィルターに簡単な脱走防止用のフタを施すだけで、安心してウツボを飼育することができます。

ウツボの習性をおさらいすると、まず「脱走しやすい」ことがあげられます。そのため、上部ろ過槽にできやすい隙間をふせぐようにします。また驚かすと「ジャンプするように泳ぎ逃げようとする」こともあるため、フタの上に重石を載せておきますが、重い石を水槽の上に乗せるとフタが割れてしまうこともあるため注意が必要です。

隙間を埋める方法

デュアルクリーン600は名前からもわかるように「二つのろ過槽」があります。写真の第2ろ過槽は説明書によれば「クリーンバイオ」と呼ばれるろ材が入るところなのですが、ここに穴が開いています(青い矢印)。そこからウツボが脱走するのを防ぐためにアクリル製のフタをします。先述のようにクリーンバイオはウツボ飼育には使用しませんが、海水魚飼育に適した粗目のサンゴ砂を敷き敷き詰めています。もちろんサンゴ砂は粗目のものを使用します。これは細かすぎるものだと詰まってしまい水の流れを遮ってしまうおそれもあるからです。

ちなみにこのアクリル板は正方形に見えますが実際には長方形で、119mm×110mmで作っています。またカットしたアクリル板はよく水道水で洗浄しておきましょう。注意点としてはデュアルクリーン600は2019年にリニューアルされたため(600SPからDC600へ)、若干寸法に変更があるかもしれないところです。改良の理由は散水器を改良したためとなっており、あまり関係はなさそうですが、もし寸法に変更があればその分大きさを調整する必要があります。なお今回使用したデュアルクリーン600は600SPです。

ポンプルームの隙間を埋めるのであれば硬めのウールマットが最適でしょう。ただし隙間を埋めすぎないよう注意します。そうするとヒーターの電源コードなどをつなげなくなってしまうおそれもあるからです。

メンテナンス

ほかのろ過装置も同様ですが、ろ材はあまり頻繁にメンテナンスしないほうがよいでしょう。汚れが舞うことによって魚が病気になったりするおそれもあります。また、ろ材にはバクテリアがたくさん付着しますので、頻繁に交換するのもよくありません。交換するのであれば半年に一回、半分くらい交換します。

ポンプが水を吸い込むストレーナーのスポンジフィルター部分にも汚れが付着するため、これもたまに水槽から出して水道水で洗い流すようにします。

また、ろ過槽にウールマットを使用するのであれば、ウールマットの掃除も必要になります。頻繁にろ過槽から出し水道水で洗うなどして、汚れを取り除きます。洗っても汚れが取り除ききれない、あるいはウールマットがぼろぼろになるようであれば交換するようにしましょう。ポンプルームの隙間を埋めるウールは頻繁に交換しなくても問題ありません。

このほか当然ながら水かえも必要になります。基本はほかの魚と同様2週間に一度、1/3の水かえです。ただしウツボはイカやタコの足、魚の切り身などを与えることになるため水を汚しやすいのでより多くの水をかえるとよいでしょう。逆に水かえをしないと水質が悪化しやすいので水かえは重要です。

まとめ

  • ウツボは大食いで脱走しやすい。オーバーフロー水槽でなければ上部ろ過槽での飼育がおすすめ
  • 上部ろ過槽を使用するときも隙間を埋めるなどの工夫が必要
  • 「デュアルクリーン600」では第2ろ過槽にアクリル製のふたを作ってつけるとよい
  • ポンプルームにも固めのウールマットを使って隙間を埋める
  • フタもしっかり。上にはペットボトルで重石をのせるとよい

2020.06.15 (公開 2020.06.05) 水槽・器具

海水魚水槽にレプリカサンゴ・ライブロックを入れる~人工アクセサリーの種類・特徴を解説

海水魚水槽を彩るのは魚やサンゴなどの生物だけではありません。カラフルな人工のサンゴ、人工のイソギンチャク、人工のライブロックやキャラクター商品などの水槽用アクセサリーも水槽に彩りやドラマを加えます。しかしながらこのようなアクセサリーにもメリットやデメリットが存在します。今回は水槽に入れられる人工アクセサリーの種類やメリット・デメリットをご紹介します。

水槽内に人工的なアクセサリーを入れる

水槽内にライブロックやサンゴ岩だけでなく、人工的なアクセサリーを入れて面白いレイアウトをつくることもできます。人工的なサンゴや中世のお城、ディズニーなどのキャラクター、さらには海賊船までまでいろいろな水槽用アクセサリーが販売されています。もちろんこれらの販売されている水槽用アクセサリーは魚に無害なように作られています。

人工的なアクセサリーの種類

ひとくちに「人工的なアクセサリー」といっても、いろいろな種類があります。

人工サンゴ

種類豊富なゼストのレプリカサンゴ

シリコン、もしくはプラスチック製の人工サンゴです。各メーカーからいろいろな形・素材のものが販売されていますが、とくにゼスト(ゼンスイ)から出ているものはリアルで種類も豊富です。写真はゼストのレプリカサンゴを使用して作った水槽レイアウトです。サンゴのほかにもシャコガイ、フジツボ、アオヒトデに似せたものもあります。多くの場合は本物のサンゴの骨格から型を取っているので非常にリアルです。

ゼスト (ZEST) レプリカサンゴ M-1

ゼスト (ZEST) レプリカサンゴ M-1

2,517円(12/14 14:22時点)
Amazonの情報を掲載しています
ゼスト (ZEST) レプリカサンゴ S-1

ゼスト (ZEST) レプリカサンゴ S-1

1,404円(12/14 14:22時点)
Amazonの情報を掲載しています

レプリカライブロック

「人工ライブロック」だと、セメントを成形して海中に沈めてライブロック化させたようなものも含むので、ここではレプリカライブロックと表記します。ライブロックのような見た目のカラーリングに塗装したものです。有名なものではエムエムシー企画レッドシー事業部が輸入販売するインドネシアATS(Aneka Tirta Surya)社の「ライブロックレプリカ」というのがあります。これはグラスファイバーを材料に使用しているので非常に軽く、かつ色も本物に似せています。岩組だけでなく、オーバーフローパイプに重ねて使う「ライブロックリング」というものもあります。どうしても人工物感丸出しになってしまうパイプを隠すことができます。

もちろん本物のライブロック(人工ライブロック)とことなりシャコやイソギンチャクなどの害を及ぼすおそれのある生物が付着することはないのもメリットといえますが、バクテリアなども繁殖していません。見た目は本物のライブロックのようにも見えるのですが、やはり色の塗り方などは人工物っぽく見えてしまうことがあります。

人工水草

ジェックスなどから人工の水草も販売されています。プラスチックやシリコン製の水草で、主に淡水魚水槽ではよく使用されているものです。海水用には一部アマモを模したようなものもあるようですが、あまり販売されていないようです(少なくともお店では見たことがない)。

人工イソギンチャク

▲カミハタの「いそぎんちゃくん」とクマノミ

カミハタから出ている「いそぎんちゃくん」が有名です。いそぎんちゃくんはシリコン製のイソギンチャクで、5種の色彩(イエロー、オレンジ、ブルー、ピンク、パープル)と、それぞれ2種のサイズ(MとL)があります。触手の先端がパープル(写真)やピンクのものなどは妙にリアルで、知らない人がみたら本物のイソギンチャクと間違えてしまうかもしれません。しかし下のほうは「明らかに人工物」というちゃちな感じですので、下のほうをライブロックやサンゴ岩などで隠すように配置しましょう。

カミハタ いそぎんちゃくん ピンク M サイズ

カミハタ いそぎんちゃくん ピンク M サイズ

850円(12/14 19:24時点)
Amazonの情報を掲載しています

テトラポッドなど

水族館の水槽では見栄えのよいテトラポッドだが…

海でよく見かけるテトラポッドのアクセサリーもあります。水族館などでは沿岸域を再現するアクセサリーとして使用されています。このほか、「沈没船」「橋」や「お城」などのアクセサリーもあるのですが、これらもどうも入れるとちゃちなものになってしまいがちです。おそらく大きさの問題もあるかもしれません。現実の沈没船であれば周囲を魚が群れていて、船の中にハタやアカマツカサなどがいたりするのですが、実際に水槽に入れられるサイズの沈没船は入れてもハタやアカマツカサなどのほうがかなり大きく見えてしまいます。リアリティよりもファンタジーを求めるのであれば入れても問題はないでしょうが…。

パイプ・土管

▲ウツボ水槽にはパイプを入れることが多い

ウツボなどの長い魚の隠れ家としてパイプを入れることが多いです。ひとつのパイプに何匹もウツボが入っていることがあります。ライブロックなどでもよいのですが、ウツボのパワーはすさまじいため岩組を崩したり、水槽面に傷がついたりすることもあるので、ウツボ水槽にはこのようなパイプが適しているといえるでしょう。なお小型のハゼなどには専用の土管が販売されています。このような商品は色がブラウンやグレーで、水槽の景観を極力損ねないような工夫がされています。

キャラクターもの

ディズニー映画「ファインディング・ニモ」「ファインディング・ドリー」などが公開された後、登場したキャラクターのアクセサリーがいろいろ販売されています。「ドリー」の映画に出てきたタコやシロイルカなど、マイナーであったり、飼育しにくい生物のキャラクターも製品化されています。生きてはいませんが、映画の雰囲気を出すのには十分でしょう。ほかにエアーを入れると動物の口が開閉するような楽しいアクセサリーもあります。

人工的なアクセサリーを入れるメリット

チョウチョウウオなどの入った水槽にも入れられる

▲サンゴを食べるチョウチョウウオ水槽でも人工サンゴなら入れられる!

チョウチョウウオはサンゴを食べてしまうので、チョウチョウウオを飼育している水槽ではサンゴを入れることはできません。またチョウチョウウオは病気にもなりやすい魚ですが、サンゴが入っていると魚病薬も入れられないので、チョウチョウウオとサンゴの相性は最悪といえるでしょう。しかし人工のサンゴであればサンゴが食べられる心配はありません。配合飼料に餌付いていないチョウチョウウオには、人工サンゴに配合餌を練ったものを付着させることにより、餌付けに使うこともできるでしょう。

魚を多く入れられる

サンゴを飼育すると魚を多く入れることはできません。魚は餌を食べ、排せつすることによりアンモニアが蓄積され、それらがバクテリアにより亜硝酸塩、最後には硝酸塩に分解されるのですが、硝酸塩は一般的には分解されず、水槽に蓄積されることになります。サンゴはこの蓄積に弱いのです。

なお、家庭の水槽だけでなく、水族館でもサンゴ礁水槽でたくさんの魚が入っているようなところでは、人工サンゴを使用していることが多いようです(後述)。

魚を傷つけにくい

人工のサンゴはシリコンなどの材料で作られていることも多く、とがった飾りサンゴなどとくらべ、傷つけにくいといえます。魚水槽で混泳を行うときには大きなメリットといえるでしょう。また同時に軽量であるというメリットもあります。とくにATS製のライブロックレプリカはグラスファイバー製で非常に軽量で使いやすいといえます。

飼育が難しい生き物(の偽物)も水槽に入れられる

▲イソギンチャクは初心者には飼育困難

人工アクセサリーの中にはカミハタの「いそぎんちゃくん」のように飼育が難しい生物をモデルにしたものもいます。イソギンチャクは飼育しにくい生物で、飼育が難しいだけでなく、水を汚しやすい、歩き回ってサンゴにダメージを与える、有毒の触手で魚をとらえて食べてしまう、配管につまり水の循環をとめる、もしくは水をあふれさせるおそれがあるなど、飼育しにくい生物です。とくに初心者がクマノミとイソギンチャクの共生を楽しみたいと思って購入した場合、高い確率で水槽が崩壊するおそれがあります。そういうときにはこのいそぎんちゃくんが役に立ちます。ただし「必ず入る」という保証はありません。もっともこれはいそぎんちゃくんに限らず本物のイソギンチャクにもいえることですが。

そのまま水槽に入れられる

▲本物のライブロックにはシャコが潜んでいることも

レプリカライブロックの場合、軽く水洗いしてそのまま水槽に入れられるということがあげられます(ただし、ライブロックの中でも本物と似たような素材で作られているものは真水でなく海水で洗ったほうがよいともいわれています)。本物のライブロックであればシャコやウミケムシなど有害な生物が出てくることもありますが、レプリカライブロックではそのようなことはなく、付着生物もいないため付着生物が死んで水質に悪影響を及ぼす・・・なんていうこともありません。ただし水槽システムで重要なろ過バクテリアはついていませんので、別途バクテリアを購入して水槽に投入する必要があります。

アクセサリーを入れるデメリット

一方、人工的なアクセサリーを水槽に入れることでこのようなデメリットも存在します。

水槽がちゃちな感じになる、飽きやすい

これが一番大きなデメリットです。どうしても人工物を水槽に入れてしまうとちゃちなものになってしまう感じは否めません。また人工サンゴの多くは色が鮮やかすぎるということもあり、どうしても飽きてしまいやすいです。さらに先ほども述べたように沈没船を水槽に入れても、隠れる魚の大きさを考えるとうまく隠れられなかったりもします。上記の理由から、ある程度経験を積んだアクアリストとなればこのような人工物を水槽に入れるのは避ける傾向にあります。

また死んでしまったサンゴを塗装して水槽に入れることもありますが、塗料の種類によっては溶けだして生物に悪影響を及ぼすこともあるため危険です。自分で塗装しないようにしましょう。

バクテリアが付着していない

ライブロックレプリカには当然ながらバクテリアが付着していません。ですから実際にバクテリアを水槽に投入してあげなければなりません。ただし乾燥しておりバクテリアが付着していないということはカニやウミケムシなど害を及ぼす可能性がある生物もいないということで、一概にデメリットとはいえません。

水族館の人工アクセサリー

しものせき水族館 海響館のサンゴ礁水槽。チョウチョウウオやスズメダイが多い。サンゴは人工。

▲沖縄美ら海水族館のサンゴ礁水槽。生きたサンゴが入っているが魚はその分少ない

水族館ではサンゴ礁の魚が泳ぐ水槽に人工のサンゴが使用されることが多いです。写真の海響館のほか、全国の多くの水族館でみられるものです。これは先ほども述べたように海水魚を多く飼育するのであればサンゴを飼育するのは難しく、またあるていどのサイズになり、きれいで見栄えがよい「ザ・サンゴ礁の魚」といえるチョウチョウウオなどはサンゴを食べてしまうので水槽に入れられないからです。水族館の水槽は家庭水槽とくらべると巨大ではありますが、それでもたくさん魚を入れれば硝酸塩が蓄積されてしまいます。

水族館の中には最近、生きたサンゴを飼育している水族館もあります。写真は沖縄美ら海水族館の、入館後すぐに広がるサンゴ水槽です。しかしその場合は、魚は少なくしていることが多いです。水槽の中にぎっしりサンゴを入れており、チョウチョウウオが多少つついても問題ないようにしているようです。種類もミゾレチョウチョウウオのほか、アミチョウチョウウオやシチセンチョウチョウウオ、さらにはサンゴ食性の強いミナミハタタテダイのような種も飼育されていました。

水槽用アクセサリーまとめ

  • 人工サンゴやレプリカライブロックからキャラクターものの人形までさまざまな種類がある
  • 人工サンゴは本物のサンゴから型を取り塗装したものでリアル
  • レプリカライブロックは見た目がリアルであるが軽量。ただし塗装は若干人工物らしさが残ってしまう
  • 人工水草は海水ではあまり使われないが淡水魚水槽ではよく使用される
  • 人工イソギンチャクの「いそぎんちゃくん」は有名
  • 沈没船やテトラポッドなどは水族館でよく見られる
  • ウツボなどはパイプや土管などに隠れる
  • 「ニモ」や「ドリー」などのキャラクター商品もある
  • チョウチョウウオなどサンゴをつつく魚の水槽にも最適
  • いそぎんちゃくんはイソギンチャクの代わりにもなる
  • 水槽に人工物を入れるとちゃちな感じになり飽きやすい
  • 水族館では多くの魚を飼育するのに人工サンゴを使用するケースも
  • 生きたサンゴを飼育する水族館の水槽では魚は少量のみ飼育されている

2020.06.03 (公開 2020.06.03) 海水魚図鑑

イトマンクロユリハゼの飼育方法~丈夫で飼育しやすいが飛び出しには要注意!

イトマンクロユリハゼは遊泳性ハゼの仲間で淡い緑色の体が特徴です。性格はやや強めではありますが、それでも温和な性格で、同じ遊泳性ハゼやそのほかのおとなしい魚との混泳が可能です。丈夫で飼育しやすく、病気にもかかりにくいのですが、飛び出しには十分に注意する必要があります。今回はイトマンクロユリハゼの飼育方法をご紹介します。

標準和名 イトマンクロユリハゼ
学名 Ptereleotris microlepis (Bleeker, 1856)
英名 Blue gudgeon, Green-eyed dart-goby, Smallscale hovergobyなど
分類 スズキ目・ハゼ亜目・クロユリハゼ科・クロユリハゼ属
全長 10cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッドなど
温度 25℃前後
水槽 60cm~
混泳 おとなしい魚との混泳が望ましい
サンゴ飼育

イトマンクロユリハゼって、どんな魚?

イトマンクロユリハゼはクロユリハゼ科の遊泳性ハゼです。ゼブラハゼやオグロクロユリハゼなどに近い仲間で、全長10cmを超えるやや大きめの種になります。体は薄いグリーンという感じで派手さはないのですが美しく、ほかの似たような体色をもつ種とは胸鰭に黒い線があることにより見分けられます。また体には目立つ模様はないこと、背鰭が二つに分かれていること、尾鰭は伸びていないこと、下顎に肉質突起をもたないことによりほかの同属の遊泳性ハゼと見分けることができますが、よく似た種と間違えられることもあります。

イトマンクロユリハゼに似た別種

イトマンクロユリハゼには、よく似た種類が何種類かいます。これらはたまにイトマンクロユリハゼという名前で販売されることもあります。

ヒメユリハゼ

ヒメユリハゼはイトマンクロユリハゼによく似ています。しかしこの仲間の多くの種では背鰭が二つに分かれているのに対し、ヒメユリハゼの背鰭は第1背鰭と第2背鰭が鰭膜でつながっているのが特徴です。また色彩もメタリック色が強く、イトマンクロユリハゼの胸鰭基部に見られる黒い線はありません。海水魚店ではあまり見られない種類です。

スミゾメハナハゼ

スミゾメハナハゼはイトマンクロユリハゼよりは、同じクロユリハゼ属のハナハゼに近い仲間です。ハナハゼによく似た細い体をもち、下顎に小さな肉質突起を有しています。ただし、ハナハゼとは異なり尾鰭の鰭条が伸びるようなことはありません。また、鰓蓋や胸鰭基部にピンク色の点を有するのも特徴です。性格はかなり臆病なので、強い魚とは混泳させないほうがよいかもしれません。海水魚店ではたまに見られ、「イトマンクロユリハゼ」とか「ハナハゼラウンドテール」なる名前で販売されていることもあります。スミゾメハナハゼの飼育詳細はまた別にご紹介します。

イトマンクロユリハゼ飼育に適した環境

水槽

遊泳性ハゼとしてはやや大きめの種類ですので、できれば60cm以上の水槽で飼育したいものです。幼魚は小型水槽でも飼育できるのですが、成長することも考えると60cm以上の水槽が必要になってきます。

水質とろ過システム

丈夫な魚で比較的硝酸塩が蓄積されていても飼育できますが、できるだけきれいな水で飼育してあげましょう。まず外掛けろ過槽は水槽の上面が開きやすいため候補になりにくいです。また外掛けろ過槽や外部ろ過槽だけではろ過能力が低いのも困ったところです。おすすめは上部ろ過槽ですが、隙間をメッシュなどで埋めておき、飛び出し事故を防ぐようにしたいものです。もっともおすすめなのはろ過能力の高いオーバーフローシステムです。

イトマンクロユリハゼはサンゴにはいたずらすることはないのでサンゴ水槽でも飼育できますが、ベルリンシステムなどサンゴメインのシステムで飼育するのであれば魚は多く入れられないので注意が必要です。

水温

水温は25℃をキープします。22~27℃くらいまでなら状態よく飼育できるのですが、朝22℃、夜27℃と、水温の変化が大きいのはいけません。水温の変化により海水魚は状態を崩してしまうことがあり、丈夫なイトマンクロユリハゼといっても病気になるおそれがありますので、きちんとヒーターとクーラーを使用して一定の温度を保ちましょう。

フタ

イトマンクロユリハゼを飼育する際に重要なことはフタをしっかりするということです。そうしないと水槽から飛び出してしまうことがあります。このように飛び出して死んでしまうという事故も多いので、フタは隙間も埋めるようにしっかりしておきたいものです。またオーバーフロー水槽ではできればフロー管の上にもフタをしておきたいところです。

隠れ家

イトマンクロユリハゼは臆病な性格をしており、危険がせまるとすぐにサンゴや岩の隙間に隠れてしまいます。飼育下でもライブロックやサンゴ岩を組むなどして隠れ家を用意してあげましょう。ただし複雑に組むとなかなか出てこなくなってしまうこともありますので、注意が必要です。

イトマンクロユリハゼに適した餌

イトマンクロユリハゼは海では動物プランクトンを食べていますが、飼育下では配合飼料をよく食べてくれます。ただし大きな粒のものはイトマンクロユリハゼは食べることができません。成魚であれば「メガバイト レッド」のSサイズが最適でしょう。コペポーダやホワイトシュリンプなどのプランクトンフードもよく食べてくれるのですが、このような餌を与えすぎると水質が悪化しやすいので注意が必要です。たまに与える程度にとどめておきましょう。

イトマンクロユリハゼをお迎えする

分布域は広く、紅海から仏領ポリネシア、トゥアモトゥ諸島まで広く分布しています。日本では琉球列島でふつうに見られるほか、静岡県以南の海で見られることもあり、採集することもできます。ただしクロユリハゼなどにくらべると数は少なく、関東の海では毎年来るというわけでもないようです。そのため一般的には購入して入手することが多いといえます。

入荷量は多くもなく、かといって極端に少ないというものでもありません。主に沖縄、マニラ、バリなどから入ってきますが、とくに海外産の個体は状態がよくないこともあり、注意が必要です。また背中の肉がついていないものも選ばないほうがよいでしょう。回復に時間がかかり、初心者では回復しないまま死なせてしまうことも多いからです。もちろん鰭が溶けているとか、体表や鰭に白点がついている、赤いただれがある、傷があるなどの個体も選んではいけません。

イトマンクロユリハゼとほかの生物の関係

同種同士の混泳

▲同種同士混泳可能

イトマンクロユリハゼは海の中でも水槽の中でも群れをつくります。性格はこの中では比較的強め(激しく争うことはない)ですので1匹だけでも大丈夫ではありますが、群れで飼育するとより楽しめるでしょう。とくに小さいのは群れで泳がせると非常にきれいです。

ほかの魚との混泳

▲ほかの魚との混泳も楽しめる

イトマンクロユリハゼはほかの魚との混泳もできます。同じ属の遊泳性ハゼ、あるいはハタタテハゼの仲間やサツキハゼの仲間であればどの種とも混泳できます。底生のハゼの仲間(共生ハゼ含む)はイトマンクロユリハゼと同じくらいの大きさか、やや底生ハゼのほうが小さいのであれば混泳できます。これは底生ハゼがイトマンクロユリハゼの幼魚を捕食してしまう可能性があるためです。

ほかの魚ではカクレクマノミや温和なスズメダイ、小型ヤッコ、小型のハナダイ、イトヒキベラ、各種カエルウオとの混泳が最適です。大きなスズメダイやメギスの仲間は攻撃的であまりイトマンクロユリハゼとの混泳には向きません。もちろんイトマンクロユリハゼを捕食してしまう可能性がある肉食性の魚との混泳もやめましょう。

サンゴ・無脊椎動物との相性

▲ディスクコーラルとの飼育例

サンゴにはいたずらをしないため、ソフトコーラル、ハードコーラルいずれの水槽でも飼育できます。イソギンチャクは魚を食べてしまうことがあり一緒にしないようにします。とくに本種は何かに驚くと、シュッと近くの岩陰などに身を隠す習性があり、イソギンチャクの触手に触れてつかまり、食べられてしまいやすいのです。ただし小型のディスクコーラルについては問題ありません、またマメスナギンチャクなども問題ありません。

一方甲殻類の仲間ではイトマンクロユリハゼなどの小魚を捕食することがあるので注意が必要です。とくに大きなカニ、大きなヤドカリ、イセエビなどは注意が必要です。小型のクリーナーシュリンプやサラサエビの類、共生テッポウエビ、サンゴヤドカリの類、ベニワモンヤドカリ、小型のオウギガニなどであれば問題ありませんでした。

イトマンクロユリハゼ飼育まとめ

  • 丈夫で飼育しやすいクロユリハゼ属の一種
  • よく似た種類も「イトマンクロユリハゼ」の名で流通することがある
  • 下顎に肉質突起がなく胸鰭基部にも黒い線がない
  • 水槽は60cm以上が必要
  • 外掛けろ過槽はしっかりフタをしにくい。上部ろ過槽かオーバーフロー推奨
  • 水温は25℃を保つようにしたい
  • フタはしっかりする
  • 隠れ家もしっかり作ってあげたい
  • 動物プランクトンが主食だが配合飼料もよく食べる
  • やせている個体や傷、ただれなどのある個体は購入しない
  • 同種同士やほかのおとなしい魚と混泳を楽しめる
  • 肉食魚や大きなスズメダイ・メギスなどは避ける
  • サンゴには無害

2020.06.03 (公開 2020.06.01) 水槽・器具

ジェックス(GEX) 水槽用クーラー「クールウェイ」の性能やゼンスイとの違いを解説

日本のアクアリウム市場においてはゼンスイ、ニッソー(マルカン)、テコ(エムエムシー企画)、そしてジェックスなどのメーカーが水槽用クーラーを販売しています。我が家ではゼンスイ製のクーラーと、ジェックス製のクーラーが稼働しています。今回はアクアリウム用品の総合メーカーであるジェックスが販売する水槽用クーラーである「クールウェイ」についてご紹介します。

ジェックス クールウェイってどんなクーラー?

▲クールウェイBK110

クールウェイはジェックスが販売しているクーラーで、3種類が販売されています。「BK110」、「BK210」、「BK410」の3つのタイプで、それぞれ冷却可能水量が異なります。私が使用しているBK110は100リットル以下(周囲の温度が35℃以下の場合。周囲の温度が30度前後なら200リットルまで)の水を冷却することができます。ただし、あまり大きな水槽を冷却することはできません。ただ45cmや60cm規格水槽を25℃に冷却するのであれば十分なパフォーマンスを見せてくれるでしょう。

より大きな水槽で飼育するなら総水量160リットル以下の水槽を冷却可能な「BK210」や、350リットル以下の水槽を冷却できる「BK410」を購入しましょう。

クーラーのほかに必要なもの

接続用のホースと水中ポンプ(もしくは外部ろ過槽)が必要になります。ホースは内径12mm、16mmのものが使用できます。ポンプは毎分5~15リットルのもの(最大揚程3m以下の時)が必要です。参考までに我が家ではエーハイム製のホースとマキシジェットを使用しています。

センサーの位置に注意

ゼンスイ製の水槽用クーラー「ZC」および「ZR」シリーズでは、センサーはクーラー内蔵でしたが、クールウェイシリーズではセンサーが本体から飛び出しており、水槽内にセンサーを設置するようになっています。ですから、センサーが水から飛び出してしまっていては設定した水温に保つことができなくなります。水の蒸発などにより、センサーが水から飛び出さないように注意しなければなりません。

メンテナンス

クールウェイはセンサーが本体から飛び出している都合上、できるだけ水槽やサンプに近いところに置きたいものです。しかし水槽やサンプのそばにおくと海水がはねて塩水がクーラーにかかり、見栄えが悪くなったり、故障の原因になることもありますので、水はねの対策をしたほうがよいでしょう。また前面のエアーフィルターにほこりなどの汚れが付着してしまうと冷却能力が落ちてしまうので、たまに外して掃除してあげましょう。またネコやウサギなどを飼育しているのであればとくにこの作業をしっかりやったほうがよいでしょう(フィルター内に毛がびっしり、なんていうことも)。

クーラーのリコール

▲リコール対象のクーラー「GXC-100」

かつてジェックスから販売されていたクーラーの中にはリコールの対象となっているクーラーもあります。「GXC-100」「GXC-200」「GXC-400」「GXC-101X」「GXC-201X」「GXC-401X」の6種類です。これらのクーラーは経年劣化などにより煙が出たり、最悪の場合発火する可能性があるということでリコールの対象となっています。対象商品は回収してもらい、新品の同サイズのクーラーと交換してもらうことになります。その際に来たのが我が家で現在使用しているジェックス クールウェイというわけです。なおリコールの詳細についてはジェックスのホームページを検索してください。

ゼンスイ製クーラーとのスペック比較

機種 BK110 ZC-100α
メーカー ジェックス ゼンスイ
冷却水量目安 100リットル 100リットル
消費電力 155W/180W(50/60Hz) 95W/112W(50/60Hz)
寸法(cm) 250×355×395 196×320×350
価格 62,000円 64,000円

▲クールウェイBK110と似たような製品ZC-100αとの比較表。数値はメーカーの公称値。

国内で販売されているクーラーとしてはゼンスイが高いシェアを誇っています。理由は機種の多さ、徹底的なサポート体制によるものと思われます。ジェックスのクールウェイももちろん、故障時の修理や点検をしてくれるのですが、無料点検やオーバーホールなどクーラーをメインに販売するゼンスイらしいところもあり、サポートに関してはゼンスイのクーラーのほうがよいといえるでしょう。

クールウェイBK110と、同様のスペックをもつゼンスイZC-100αのスペックの違いは上記の表のとおりです。残念ながらゼンスイのZC-100αのほうがクールウェイBK100よりも若干消費電力が少なく、また寸法も小型で、クールウェイのメリットといえば価格くらいといえるかもしれません。ただしクールウェイは水槽用のクーラーとしては安価であり(標準小売価格よりもかなり安い値段で販売されていることも)、安くても性能のよい水槽用クーラーが欲しい、というのには適しているということがいえます。

ジェックス クールウェイまとめ

  • ジェックスから販売されている水槽用クーラー
  • 周囲35℃なら100リットル、周囲30℃なら200リットルまで冷やすことができる
  • センサーが水中から露出しないように注意
  • キャビネットに海水がかからないようにしたい
  • 前面のフィルターはたまに掃除する
  • 一部製品はリコールがかかっている
  • ZC-100αとくらべてやや性能は劣るがそれでも十分使用できる
  • ZC-100αよりも安価

外部リンク

ジェックス株式会社の水槽冷却装置のページ

2020.07.02 (公開 2020.05.28) 海水魚図鑑

魚の鰭の名称と位置について

魚の体の仕組みで重要なもののひとつが「鰭」(ひれ)です。魚はこの鰭を使って遊泳し、止まり、あるものは鰭を使って餌を捕食したり、またあるものは鰭を使って身をまもったりします。さらに鰭の位置は研究者に魚はどのように分類されるべきか、どのような進化をしてきたかを考えるヒントを与えてくれるのです。今回は鰭の位置、名称、数え方など鰭に関するあれこれを解説します。

鰭の位置と名称

▲クロソラスズメダイ(スズメダイ科)の鰭

背鰭(せびれ・ハイキ)

英語でDorsal fin (略称D)。マリンアクアリウムで飼育されることの多いスズキ目の場合背鰭はほとんどが1~2基で基底が長く、棘条部と軟条部からなりますが、ヘビギンポの仲間のように3基の背鰭をもつものや、タウエガジ科(カズナギ属やヒメイトギンポ属などをのぞく)のように背鰭がほぼすべて棘条で構成されるものなども見られます。

背鰭の数

背鰭の数は魚により違いがあります。海水魚は背鰭がひとつ(一基)か、ふたつ(二基)であることが多いです。前者はチョウチョウウオの仲間、ヤッコの仲間、ハナダイの仲間(のほとんどすべて)、ベラの仲間の多くが含まれ、後者はテンジクダイの仲間(一部は一基)、ヒメジの仲間、ハゼの仲間(一部は一基)などが含まれます。カエルウオの仲間は背鰭が1基ですが、背鰭中央に欠刻があり、2基に見えることもあります。ヘビギンポ科(スズキ目・ギンポ亜目)の魚とタラ科(タラ目)の魚は近縁ではありませんが、どちらも背鰭を3つもっているという特徴があります。また、中には背鰭の棘に毒をもつオニオコゼやミノカサゴ、アイゴなどの魚も知られており、注意が必要です。

図は主な魚の背鰭です。左列の魚は背鰭が1基、右側の魚は背鰭が2基の魚です。1のルリスズメダイなど、スズメダイ科の魚は背鰭が1基です。カクレクマノミなどは背鰭の中央部が凹んでおり、ひとによっては2つ背鰭があるように見えます。2のハタタテダイなどのチョウチョウウオ科やキンチャクダイ科の魚も背鰭は1基です。3のカエルウオは背鰭の中央に欠刻があり、ふたつ背鰭があるように見えます。4のサクラマスは背鰭は1基、その後方に脂鰭という肉質鰭をもちます。

右列は背鰭が2基の魚です。第1背鰭が棘条で構成され、第2背鰭は1棘~数本の棘と複数の軟条で構成されるものです。テンジクダイ科、ハゼ科(一部を除く)、アジ科、エボシダイ科などが含まれ、このうち5のテンジクダイ科と6のハゼ類は姉妹群ではないかとする研究もあります。またアジ科の第1背鰭は鰭膜がなく小さな棘があるだけのものもいます。7のモンガラカワハギの仲間は第1背鰭に棘条をもちますが第2背鰭には棘条がありません。このような特徴はほかにネズッポ科やヒメジ科、ワニギス亜目などももっています。8はサメの仲間です。サメの仲間はほとんどの種で背鰭が2基ですが、ラブカやカグラザメのように背鰭が1基しかないものもいます。

魚種によっては背鰭を有していないものもいます。タウナギやゴマウミヘビ、ミズウオダマシなどで、細長い体の魚が多いです。

臀鰭(しりびれ・デンキ)

英語Anal fin (略称A)。 スズキ目の魚の場合は2~3つの棘条がありその後方に軟条があるというパターンが多いです。また臀鰭の棘に強い毒をもつアイゴなどの魚も知られています。

なお、漢字で「尻鰭」とか書かれますがこれは誤りです。基本的に臀鰭の数はひとつですが、タラの仲間のようにふたつに分けられているという珍しいケースも見られます。また、一部の魚種では臀鰭と尾鰭がつながるようなものもいます。ウナギやアナゴなどがそれです。

胸鰭(胸鰭・キョウキ)

左右対になっている「対鰭」と呼ばれるもののひとつです。英語でPectoral finですが、同じPからはじまる腹鰭との混同をさけるために「P1」と略されます。

多くの魚類では胸鰭には棘条がありません。ミノカサゴの仲間は長い背鰭の棘に毒を持っていますが、同じく派手な胸鰭には棘がなく、当然毒もありません。その一方ナマズの仲間は胸鰭に棘を持っており、中にはゴンズイなどこの棘に毒を有する種もいますので、素手で触らない方がよいでしょう。ホウボウの仲間は胸鰭が大きく、内側にはハデな模様があります。またホウボウやハリゴチなど一部の魚では胸鰭下部に遊離軟条をもっています。

腹鰭(はらびれ・フッキorフクキ)

胸鰭同様に左右の鰭で1対になっている対鰭のひとつです。英語でPelvic finで、やはり胸鰭と同様の理由から「P2」と略されます。スズキ目の場合腹鰭には棘条があるものがほとんどで、1棘5軟条のものが多いです。ただしアイゴの仲間のように腹鰭に二つの棘をもっているものもいます。またハゼの仲間のように腹鰭が吸盤状になる魚も知られています。胸部の直下にあるもの多く胸鰭と勘違いされやすいので、注意が必要です。

腹鰭の位置

▲腹鰭と胸鰭の位置関係。赤は腹鰭、青が胸鰭を示す

原始的な形質を持つような魚ほど腹鰭は腹部のほうにあります。例えばイセゴイの仲間、コイの仲間、ニシンの仲間、サケの仲間です。スズキの仲間では腹鰭が胸鰭の下あたりまでくることが多く、ハゼの仲間など腹鰭が吸盤状に変化しているものも知られています。マリンアクアリウムで飼育される魚はほとんどが腹鰭が胸鰭の下に来ています。

図は魚の胸鰭と腹鰭の位置的な関係をしめしたものです。ウツボ(1)などウナギ目の魚は腹鰭がありません。またウツボ科では胸鰭も見られません。シシャモ(2)はサケ目の魚で原始的な形質をもち、腹鰭が腹部にあり胸鰭よりも後方になります。フエヤッコダイ(3)などスズキ目のほとんどの魚は胸鰭のすぐ下に腹鰭があります。右列は特殊な腹鰭を持つ魚で、カスリミシマ(4)などミシマオコゼ科の魚の腹鰭は胸鰭の前方にあり、モンガラカワハギ科(5、写真はイトヒキオキハギ)の魚の腹鰭は退化的、フグ科(6、写真はヨリトフグ)では完全に腹鰭が消失しています。

尾鰭(おびれ・ビキ)

英語でCaudal fin (略称C)。その名の通り魚類の尾部にある鰭です。一部の魚種では背鰭や臀鰭とつながります。ウナギやウツボ、アナゴ、ゲンゲといった魚がそれです。一方モヨウモンガラドオシなどに代表されるウミヘビ科の多くには尾鰭はなく、背鰭と臀鰭がつながりません。魚の泳ぎ方は尾鰭の形状にも左右されていることも多く、例えばマグロやカジキなど外洋を高速で泳ぐ魚は大きな推進力を得られる三日月形の尾鰭をもっています。一方ハタの仲間は大きなウチワのような形の尾鰭でダッシュするのに向いていますが、ハタの仲間にはバラハタのような三日月形の尾鰭のものもおり興味深いものです。

尾鰭のない魚

▲尾鰭がないタツノオトシゴ

魚によっては尾鰭がないものもいます。アクアリウムでお馴染みの魚としてはタツノオトシゴの仲間は尾鰭がなく、そのかわり尾部を自由自在に動かし、海藻・海草やサンゴ、ロープに撒きついたりします。エイの仲間は尾鰭があるものとないものがおり、ないものは尾部がむち状です。また、尾部には毒棘をもっているものもおり、注意が必要です。また先述のウミヘビ科の魚も尾鰭はありませんが、同じウミヘビ科であってもニンギョウアナゴ亜科のものや、ヒレアナゴといった種は尾鰭を持っています。

またゴンズイなどは従来は第2背鰭とされていたものが体背部尾鰭(DPC)とされ、鰭条数の表記方法が従来から変更されているので注意が必要です。

脂鰭(あぶらびれ)

▲アユ

英語ではAdipose finとよばれるもので、背鰭の後方についている肉質の鰭です。海水魚ではサケマス、ニギス、ヒメ、エソなどに見られるものです。ほかの条鰭綱の鰭とは異なり肉質で鰭条もなく、ほかの鰭と性質が異なります。海水魚ではこの鰭を有するものでアクアリストにお馴染みというのはいませんが、淡水魚ではカラシンやナマズの仲間などにこの鰭をもつものが多くいます。淡水釣りで「アブラビレ」といえばサケ・マスのことを指し、コイ科のアブラハヤなどと区別していますが、ほかにも脂鰭を有する魚がいます(ギギ、アユなど)。

小離鰭(ショウリキ)

▲マサバ

アジ科、サバ科、サンマなどの魚類に見られるもので、背鰭や臀鰭の後方にそれぞれ複数存在する小さな鰭のことです。このような鰭を有する魚はアクアリウムの世界ではほとんど見られませんが、食用魚としては一般的なものが多くいます。アジの仲間ではムロアジ属やツムブリなどは背鰭と臀鰭の後方に一つしかありませんが、オニアジでは多数の小離鰭をもっており、ほかのアジ科とは容易に見分けられます。

舵鰭(かじびれ)

マンボウ類特有の鰭です。背鰭と臀鰭の一部が変化しているもので、鰭条式ではClavusと表記されます。Caudal fin(尾鰭)と同じく「C」ではじまりますが、この鰭はマンボウ類にしかなく、特に混同されることはないといえます。ただ、その位置から尾鰭と間違えられやすいといえます(マンボウ類の成魚はヤリマンボウをのぞき尾鰭を欠く)。また鰭条式ではD+A+Clavusとし、背鰭軟条、臀鰭軟条、舵鰭軟条の合計を記述することがあります。また、尾鰭を有するヤリマンボウについては、尾鰭軟条も表記することがあります。

頭鰭(あたまびれ・トウキ)

▲ナンヨウマンタ。黒の矢印の部分が頭鰭

トビエイ科のエイに見られる鰭で、胸鰭の一部分が頭部前端に突出したものです。イトマキエイの仲間のものがよく知られており、左右のものが分離し耳状になります。トビエイなども頭鰭を持ち、頭部の前方に達しますが耳状に分離することはありません。

棘条と軟条

▲棘条と軟条

鰭には棘条と軟条があり、これらを総称し「鰭条」と呼んでいます。この鰭条の間には鰭膜と呼ばれる膜があります。この膜の模様が同定の形質になることもありますが、破れやすいので取り扱いには注意しなければなりません。また鰭条数は魚によって異なることも多く、同定のポイントになります。しっかり計測することが重要です。

棘条

節のない硬い鰭条で、棘とされることもあります。主に背鰭・臀鰭・腹鰭にあるものです。スズキ目の魚の場合、背鰭では大体10棘前後、多くても20棘ほどのものが多いのですが、中には50本以上の棘条をもつものもいます。また多くの魚ではその後方に軟条域があるのですが、タウエガジ科のものなど背鰭に軟条がないような魚もしられています。腹鰭は前方に棘があり、その後方に数本の軟条があるという魚が多いです。しかし、アイゴの仲間のように腹鰭が2本あるものもいます。臀鰭にも棘があり、スズキ目スズキ亜目では2~3棘とその後方に軟条があるというものが多いですが、タウエガジ科のトゲギンポのように臀鰭最後の軟条が棘になっているものもいます。オコゼの仲間やアイゴの仲間などは鰭の棘に毒をもっており、刺されると激しく痛むので注意が必要です。

軟条

軟条はその名の通り、棘条よりもやわらかいもので、棘条と異なり節があります。先端が分岐していることが多く、一部不分岐の軟条もあります。また鰭の最後の軟条とそのひとつ前の軟条が根元で分岐することがありますが、それは1つの軟条として数えます。そのため数え間違いのないよう注意し、背鰭を撮影するときはしっかり根元まで撮影しておいたほうがよいでしょう。

棘状軟条

淡水魚のコイ科がもつ特徴的な軟条です。分節があり一応軟条とはされているのですが不分岐で棘のように強いので、この名前がついています。一方ナマズの仲間でもこれが見られますが、ナマズ類は節がありません。

遊離軟条

▲ホウボウ。足のように見える細長いのが遊離軟条

ホウボウの仲間やハリゴチの仲間などは胸鰭下方の一部の軟条が鰭膜でつながっておらず、糸状に伸びたりしていることがあります。これを遊離軟条といいます。これで海底をはい回ったり、餌を探したりするといわれています。

鰭条数

一般的な海水魚

硬骨魚類の鰭条の数をあらわすのにはアルファベットとローマ数字とアラビア数字を使用することがほとんどです。ただし比Fishbaseのようにローマ数字を使わないこともあります(見やすいからかも)。アルファベットはD(背鰭)、A(臀鰭)、P1(胸鰭)、P2(腹鰭)、C(尾鰭)が基本です。ローマ数字は大文字のローマ数字が棘条を、小文字のローマ数字が不分岐軟条(棘状軟条)を表します。通常棘条と軟条の間はカンマで区切ります。

上の写真は「日本産魚類検索 第三版」から引用しましたカクレクマノミの鰭条数です。背鰭(D)が10~11棘、13~17軟条、臀鰭(A)が2棘11~13軟条、胸鰭(P1)が15~18軟条となります。腹鰭の軟条数が掲載されていませんが、省略されることも多いようです。カクレクマノミを含むスズキ目スズキ亜目の場合1棘5軟条であることが多いです。

こちらはカクレクマノミ同様、日本産魚類検索 第三版から引用しましたハタタテハゼの鰭条表記ですが、これは背鰭の棘数6と1の間にハイフンが入っています。これは背鰭が2基、つまり第1背鰭と第2背鰭が分離しており、第1背鰭が6棘、第2背鰭が1棘28軟条であることを示します。臀鰭は1棘26軟条です。

骨鰾類

淡水魚がほとんどで、海水魚は少ない骨鰾類ですが、鰭条の表記法を少しご紹介します。コイ目のように不分岐の棘状軟条を有する場合は小文字のローマ数字で表します。例えばD  ⅲ+7;A  ⅲ+9となっていれば、背鰭3棘状軟条7軟条、臀鰭3棘状軟条9軟条、ということになります。一方ナマズ目のもつ背鰭や胸鰭の棘は棘とみなされ、大文字のローマ数字で表します。D Ⅱ+6~7と表記されていれば、背鰭2棘と6~7軟条ということになります。また、小文字のアルファベットは骨鰾類に限らず不分岐の軟条をあらわすときに使いますので覚えておきましょう。

マリンアクアリウムでの鰭

▲アイゴの仲間は背鰭・臀鰭・腹鰭に毒棘があり。刺されないように

マリンアクアリウムにおいて魚の鰭は、海中での鰭の役目同様、鰭を使って泳ぎ、鰭を使ってとまり、鰭を使って餌を獲ったりします。ですが、アクアリストが魚の調子を見るポイントのひとつにもなります。元気な魚はふつう、鰭をゆったり動かしますが、病気になったりすると鰭暴れるように激しく動かしたりもします(種類によっては元気な魚でも激しく動かすことがあります)。また、鰭に白い点がついていたり、鰭が溶けているようであればそれぞれ原生生物による病気(白点病など)、細菌性の病気とも考えられます。鰭の様子や泳ぎ方に注意して病気の早期発見につとめたいものです。また、購入する前にそのような症状が出ているかどうかチェックし、そのような症状が出ている魚は購入しないようにしましょう。場合によっては同じ水槽にすむほかの魚も購入しないほうがよいかもしれません。なお、魚同士のけんかなどで鰭が少し傷ついた、鰭が若干切れているというのであれば、魚さえ元気であればやがて治っていきます。

また先述のように鰭の棘や棘状軟条に毒がある魚がいます。アイゴ類、ニザダイ類、カサゴ・オコゼの類、ゴンズイなどです。魚はなるべく手ではなくプラ製ケースなどで掬うようにしましょう。ヒフキアイゴと接触したときはずきずき痛みました…。

魚の鰭まとめ

  • 魚にとっては泳いだり曲がったり止まったりするのに鰭をつかう
  • アクアリストにとっては魚の状態を示す指標にもなりうる
  • 一般の魚の鰭は背鰭・臀鰭・腹鰭・胸鰭・尾鰭の5種
  • 魚によっては一部鰭がないものも
  • 鰭条数は魚の同定の指標にもなりうる
  • 元気な魚は鰭をゆったり動かす
  • 病気の魚は鰭を激しく動かしたりする
  • 鰭に白い点がついているものや鰭が溶けた魚は購入しない
  • アイゴやオコゼなど鰭棘に毒がある魚も
フリーワード検索
海水魚の記事
サンゴの記事
    もっと読む