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2020.12.28 (公開 2020.12.28) 海水魚図鑑

ペパーミントシュリンプの飼育方法~カーリー対策におすすめ!

ペパーミントシュリンプは十脚目(エビ目)・モエビ科のエビの一種です。赤くてきれいなだけでなく、水槽内にはびこりサンゴに悪影響をあたえる「カーリー」を捕食してくれます。ただし個体によってはあまりカーリーを捕食しなかったり、サンゴを啄むこともあるため、注意が必要です。

標準和名 なし
学名 Lysmata wurdemanni (Gibbes, 1850)
英名 Peppermint Shrimp
分類 軟体動物門・軟甲綱・真軟甲亜綱・十脚(エビ)目・抱卵亜目・モエビ科・Lysmata属
全長 10cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 粒状の配合飼料(メガバイトレッドMなど)
添加剤 アイオディオン、カルシオンなど
温度 22~23℃
水槽 45cm~
混泳 肉食性の強い魚とは組み合わせにくい
サンゴとの飼育 サンゴの種や状態によっては啄むことも

ペパーミントシュリンプってどんなエビ?

赤い体に細かい模様が入る美しいエビで、大西洋やその沿海であるカリブ海に生息しています。ただしひとくちに「ペパーミントシュリンプ」といっても、何種類かいるようです。大西洋には6種ほどおり、Lysmata wurdemanniという学名の種が一般的にペパーミントシュリンプとされているようです。いずれも模様が非常に似通っており、見分けるのが難しいエビたちです。

近縁種

▲宇和海で採集したアカシマモエビ

日本には生息していないペパーミントシュリンプですが、同じ属に含まれ、よく似ているアカシマモエビは日本近海でもよくみられるエビです。数は多いとは言えませんが、沿岸の藻場や岩礁域で採集することができます。このほかにも先述したように西大西洋には本種に似たものが何種かいます。

なお、このLysmata属にはほかにもさまざまなエビが含まれます。サンゴ礁域で大型魚のクリーニングを行うアカシマシラヒゲエビ(通称スカンクシュリンプ)や、赤い体が美しいシロボシアカモエビ(同ホワイトソックス)などもこの属のエビです。ただし本種はほかの魚の体表をクリーニングすることはあまりないようです。

カーリー駆除

ペパーミントシュリンプは、カーリー(セイタカイソギンチャク)を捕食するので、カーリー対策として入れられることがあります。カーリーは強い毒をもち、サンゴ水槽で飼育しているとサンゴがダメージを受けることもあります。そして非常に繁殖力が強く、あっというまに水槽中に広まっている、なんてこともあります。ペパーミントシュリンプはサンゴをカーリーから守るために水槽に入れられますが、弱っているハードコーラルやマメスナギンチャクなどを啄んで食べてしまうこともあり、注意が必要です。また個体によっては、カーリーを食べないようなもののいるようです。

カーリーを駆除する方法にはほかにフチドリカワハギなどを入れる方法がありますが、この種はサンゴも食べてしまうおそれがあります。このほか薬剤を使用してカーリーを駆除する方法があります。もちろん、薬剤を使う場合は、使用方法などをきちんと守ることが大事です。

ペパーミントシュリンプ飼育に適した環境

水槽

基本的に海水魚を飼育できるのであればどんな水槽でもよいのですが、水質の急変には弱いため、水質が安定しやすい60cm以上の水槽で飼育するのがおすすめです。

水質とろ過システム

水質悪化には比較的耐えられますが、水質の急変には弱いです。そのため、安定した水質で飼育するのが重要といえます。上記のようにやや大きめの水槽し、ろ過槽も大きめのものを使うようにしましょう。上部ろ過槽を中心にし、このほか外部ろ過槽やプロテインスキマーを利用するのもよいでしょう。おすすめはオーバーフロー水槽で、安定性は格段に増します。

水温

経験上では25℃を超えるような環境でも調子が悪くなるということはありませんでしたが、大西洋やカリブ海に生息する種であるということを考えると、あまり高めの水温は苦手です。22~23℃前後で飼育するとよいでしょう。また、水温もなるべく一定に保つようにしたいものです。ヒーターとクーラーを使用し、水温が一定になるようにしましょう。

ペパーミントシュリンプに適した餌と添加剤

カーリーをよく食べてくれますが、いつもカーリーばかり食べているわけではないようで、魚の残り餌などもよく食べてくれます。餌がいきわたっているか心配ならば、ペパーミントシュリンプが活発に動き、ほかの魚が眠っている夜間に粒状の餌を水槽の底の方に撒いてあげます。沈降スピードが早い大きめの粒の餌がおすすめです。

添加剤

エビ、カニなどをうまく飼育するにはヨウ素やカルシウムなどを添加するとよいでしょう。ヨウ素の不足は脱皮不全にかかわるともされます。またカルシウムもすべての生物の骨格を形成するのに不可欠なものですので、添加するようにしましょう。もちろんミドリイシなどのサンゴを飼育するのであればカルシウムなどの添加は不可欠です。

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ペパーミントシュリンプをお迎えする

ペパーミントシュリンプは日本には生息していないので、購入に頼ることになります。海水魚専門店で販売されていることが多いですが、クリーナーシュリンプとはことなり、「常時いる!」というものではないようです。

体表に傷があるものや、眼玉がないもの、体が濁っているようなものは選んではいけません。脚は1本2本とれているだけなら問題ないことも多いのですが、脚の大部分がなくなっているようなものは避けた方がよいでしょう。また、海水魚と同様、入荷してから時間がたっていないものも避けた方が無難でしょう。また、水槽に入れる前にはじっくり時間をかけて水合わせをしてから水槽にいれることも忘れないようにしましょう。

ほかの生き物との相性

ほかのエビとの関係

ほかのエビ、たとえば同属のクリーナーシュリンプや、サラサエビの仲間との混泳は問題ありません。テッポウエビとの飼育もできますので、共生ハゼとテッポウエビがくらす水槽のカーリー退治を行うこともできます。なお、同じペパーミントシュリンプ同士でも飼育することができます。

ただし、大型になるイセエビやセミエビ、大きなハサミをもつオトヒメエビなどには捕食されたり、襲われたりすることもあるので一緒に飼育するのはやめた方がよいでしょう。逆に小さなグラスシュリンプなどもやめた方がよいかもしれません。

魚との混泳

▲大きめのテンジクダイも注意が必要

ペパーミントシュリンプはカーリー退治をしてくれたり、魚の残り餌などを食べてくれますが、魚のクリーナーとしてはほとんど役に立ちません。そのため大きな魚には襲われてしまいます。ベラは甲殻類が大好物ですので注意しましょう。とくに大きめのタキベラやモチノウオ系などは要注意です。このほか、ゴンベの仲間や大きめのバスレット、テンジクダイなどは本種を襲うことがあります。とくにテンジクダイは夜間活発に泳ぎますので、エビが活発に活動する時間とかぶります。そのため注意が必要となります。

テンジクダイの仲間でも小型のマンジュウイシモチやキンセンイシモチなどであれば混泳しやすいですが、シボリやヤライイシモチ、オオスジイシモチなど肉食性が強いものや大きくなるものは避けましょう。上記のイエローストライプカーディナルフィッシュ(ハイフィンカーディナルとも)は口に入るようなエビを食べてしまい、我が家でもペパーミントシュリンプを食べられてしまいました。

サンゴとの関係

ペパーミントシュリンプの飼育で注意したいところは、サンゴとの相性があまりよくないということです。とくにハナガタサンゴやオオバナサンゴ、ウミバラなどのLPSの共肉をむしってしまう個体もいるので、注意しなければなりません。ダメージを受けたサンゴは隔離ケースなどの中で隔離しておくようにしましょう。ソフトコーラルもマメスナギンチャクなどを食べてしまうことがあるので注意が必要です。逆に大型のイソギンチャクなどはペパーミントシュリンプを食べてしまうことがあります。

ペパーミントシュリンプ飼育まとめ

  • 大西洋に生息するモエビ科のエビ
  • アカシマシラヒゲエビやシロボシアカモエビと同属
  • カーリー対策として飼育されることが多い
  • 60cm以上の水槽で飼育したい
  • 水温はやや低めがよい
  • 配合飼料もよく食べる
  • ヨウ素やカルシウムを添加したい
  • 体に傷があるもの、色が妙に白っぽいもの、入荷してすぐのものは購入しない
  • 水合わせは慎重に
  • 肉食性の魚との混泳は避ける
  • サンゴの種類によっては食べてしまうことも

2020.12.15 (公開 2020.12.15) 海水魚図鑑

タネハゼの飼育方法~他の魚との混泳に注意!餌・水温・飼育環境

タネハゼはハゼ科オキナワハゼ属のハゼで、体が細長く大きな鰭が特徴的で格好いいハゼです。これほど格好いいのに、地味な色彩のためかあまり販売されていることはないのですが、黒潮の影響を受ける地域では頻繁にみられるため、採集して飼育することができます。しかし、比較的おとなしい魚で同種同士の混泳もできますが、その一方でほかの魚に鰭などをつつかれやすいというところもありますので注意が必要です。今回はタネハゼの飼育方法をご紹介します。

標準和名 タネハゼ
学名 Callogobius tanegasimae (Snyder, 1908)
英名 不明
分類 条鰭綱・スズキ目・ハゼ亜目・ハゼ科・ハゼ亜科・オキナワハゼ属
全長 10cm
飼育難易度 ★★☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッドM(※最初は切り身など)
温度 25℃
水槽 45cm~
混泳 おとなしい性格で性格の強い魚との飼育は不適
サンゴとの飼育 サンゴとの飼育はおおむね問題ないが似合わない

タネハゼって、どんな魚?

タネハゼはスズキ目ハゼ科オキナワハゼ属の魚です。岩礁やサンゴ礁域というよりも、内湾の砂泥底、河川が近くにあるような場所で多くみることができるハゼで、琉球列島などではマングローブの中でも見られる種類です。色彩的には茶褐色で地味な種類ですが、尾鰭や胸鰭が大きく格好いいハゼです。なお種の標準和名、学名は本種のタイプ標本が種子島で採集されたことにちなみます。全長は10cm前後になります。

オキナワハゼ属の魚

▲沖縄のタイドプールではおなじみのナメラハゼ

オキナワハゼ属の魚はマリンアクアリウムにおいては著名なものは少ないのですが、それでもフタスジハゼなどは海水魚店などでたまに見ることができます。また、沖縄便に力を入れているようなお店であればナメラハゼなどの近縁種も入手することができます。浅い海に生息するような種類であれば磯採集も可能で、沖縄の磯ではフタスジハゼやナメラハゼが獲れます。少なくとも20数種が知られていますが、未記載種もいます。ただ色彩は地味なものなのであまり入荷しないものといえます。

タネハゼの飼育に適した環境

水槽

タネハゼは最低でも45cm以上の水槽で飼育したい魚です。これはオキナワハゼ属の中ではやや大きくなる種であり、そのぶん大きめの水槽で飼いたいからです。ほかのハゼとの混泳も45cm水槽で問題なくこなせますが、やや大きくなるマハゼなどと飼育するのであれば60cm以上の水槽で飼育するのが無難です。

水質とろ過システム

タネハゼの生息場所を考えると水質悪化に強いイメージがあります。実際に水質悪化にもある程度耐えられますが、できるだけきれいな海水で飼育してあげたいものです。45cm水槽では外掛けろ過槽と外部ろ過槽、60cm以上の水槽であれば上部ろ過槽が最適です。オーバーフロー水槽で飼育するときはサンプに落ちることがないように注意が必要です。これはこの仲間はたまにふわふわと泳いでいることがあるからです。場合によってはフロー管にもフタをするなどの対策が必要かもしれません。タネハゼはサンゴには無害でベルリンシステムなどでも飼育できませんが、あまり似合わず、魚も多く入れることはできません。

水温

水温は25℃前後でかまいません。ただし高水温は30℃付近まで耐性があるように思います。ただしそれはベストではありません。できる限り25℃前後で飼育してあげましょう。もちろん水温が安定していることも重要です。

隠れ家

タネハゼは大きな岩の下に生息していることが多いです。水槽内の飼育においても岩やカキの殻などを入れて隠れ家を作ってあげましょう。

底砂

タネハゼはもともと茶褐色の魚なのですが、サンゴ砂を敷いた水槽では体色が白く変色してしまうことが多くあります。飼育には全く支障はありませんが、色彩も気にするのであれば黒っぽい色の底砂で飼育するとよいでしょう。シーケムの「グレイコースト」などがおすすめです。以前も述べましたが、熱帯魚・水草用のソイルなどは絶対に使ってはいけません。水質が変動し魚に悪影響を与えてしまうおそれがあります。

タネハゼに適した餌

タネハゼは動物食性で、底生動物や小型甲殻類などを主に捕食しています。餌は配合飼料も食べますが、最初のうちはなかなか餌を食べてくれないこともあります。配合飼料の種類としてはフレークはあまり適さず、粒状の沈むタイプの餌がおすすめです。どうしても食べないというときは魚の切り身やエビのむき身などで餌付けます。ホワイトシュリンプなどもよく食べますが、切り身やホワイトシュリンプなどは水を汚してしまいやすいので、与えすぎには注意します。特に小型水槽では注意しなければなりません。

タネハゼをお迎えする

沖縄便に強いショップであれば販売しているところもありますがほとんど見られず、採集されたものを飼育することが多いでしょう。ただし運搬に弱いようで注意が必要です。このタネハゼだけを隔離して運搬するのが望ましいでしょう。ちなみに分布域は関東以南の太平洋岸、種子島、屋久島、琉球列島で、国外では台湾に見られます。

なお、我が家で飼育していたタネハゼは夏の暑い日に青潮の影響で浮かんできたところを掬ったものです。プランクトンが大量に発生し、そのプランクトンが死して硫化水素が発生すると魚が酸欠で浮かび上がってくるのです。その魚を酸素のよく溶け込んだ水槽に入れると回復することが多く、筆者はこの方法で採集したタネハゼを1年ほど飼育していました。

販売されているところはほとんどないのですが、購入する際は餌をよく食べているもの、単独で飼われているもの(気性が荒い魚と一緒だと鰭や体表をつつかれてダメージを受けていることが多い)、体表に傷やただれなどがないことを確認しましょう。また入荷直後はなかなか餌をたべてくれないような個体も多く、できるだけ避けたいところです。

タネハゼとほかの生物の関係

ほかの魚との混泳

タネハゼは動きが遅いのでほかの魚との混泳は注意が必要です。とくに長い鰭をつつくような魚、たとえばスズメダイの仲間などと飼育するのは避けた方が賢明といえます。またメギスやスズメダイの大きいのとの相性はかなり悪く、ぼろぼろにされて最悪の場合食べられてしまうことがあります。特にハゼの仲間は細長い体のものが多く、肉食性の魚から捕食されやすいので肉食魚との混泳は避けなければなりません。

同種間の混泳もできます。異種混泳では同じような場所に住むクロコハゼやスジハゼ類、ヒメハゼ、マハゼなどが似合います。チチブ類(アカオビシマハゼなど)もよく見られるのですが、チチブ類は肉食性が強く性格もかなりきついので避けた方がよいでしょう。

サンゴ・無脊椎動物との相性

▲オトヒメエビとの飼育は危険!

タネハゼはサンゴ水槽での飼育もできます。ただしあまり似合わず、底砂にサンゴ砂を敷くことも多いので体の色が白っぽく変色してしまうこともあります。またイソギンチャクなど捕食性が強い無脊椎動物の餌となってしまいやすいので注意が必要です。

甲殻類との飼育はあまりおすすめできません。タネハゼは動きが緩慢で、甲殻類の餌になってしまう可能性も高いからです。特にオトヒメエビは大きなハサミをもち、飼育していたタネハゼを襲って食べてしまったことがあります。そのため一緒に飼育するのは避けた方が無難といえます。

タネハゼ飼育まとめ

  • 色彩は地味であるが鰭が大きく格好いい
  • 本種のほかのオキナワハゼ属も流通はまれ
  • 水質の悪化には耐性があるがしっかりしたろ過槽で飼育したい
  • 水温は25℃前後で一定の水温を保つようにする
  • 岩の下などに潜むことも多いので隠れ家をつくってあげたい
  • 白いサンゴ砂のもとで飼育すると体が白っぽくなることが多い
  • 慣れれば配合飼料も食うが最初のうちは冷凍餌や魚の切り身などで餌付ける
  • 販売されていることはあまりなく採集するしかない
  • おとなしい魚とであれば混泳可能
  • スズメダイなどは鰭をかじることがあるためおすすめできない
  • サンゴ水槽での飼育もあまり似合わない
  • 甲殻類には襲われやすいので注意

2020.12.14 (公開 2020.12.14) 海水魚図鑑

シコンハタタテハゼ(パープルファイヤーゴビー)の飼育方法~餌・混泳のポイント

シコンハタタテハゼ

ハゼ亜目魚類最高峰的な種といえるシコンハタタテハゼ。アケボノハゼに似ていますが、尾が黄色く、顔にも黄色が入る美しい種類です。高価な魚なので飼育には覚悟が必要かもしれませんが、ハタタテハゼ属の魚を飼育したことがある方ならば、飼育は容易です。

ただ非常に臆病であり、「飼育難易度が高い」というわけではありませんが、高価なお値段もあわせ、初心者におすすめできるものではありません。飼育にあたっては特に混泳や飛び出しに注意する必要があります。

標準和名 シコンハタタテハゼ
学名 Nemateleotris helfrichi Randall and Allen, 1973
分類 スズキ目・ハゼ亜目・クロユリハゼ科・ハタタテハゼ属
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッド冷凍イサザアミ
温度 23~25度
水槽 35cm以上
混泳 同種、気が強い魚とは注意が必要
サンゴ飼育

シコンハタタテハゼの分類

まずは、タイトルの括弧の中にある、「パープルファイヤーゴビー」という名称について解説いたします。日本では本種のことを「パープルファイヤーゴビー」なんていう名前で販売しているのですが、英語ではヘルフリッチダートフィッシュと呼びます。英語で「パープルファイヤーゴビー」と言ったらアケボノハゼを指すことが多く注意が必要です。英語や、英語風の名前は、万国共通の名称ではありません。学名は全世界で通じますが、考え方によって属など違ってくる場合があります。日本のアクアリストは、標準和名も覚えておくとよいでしょう。

初心者にもお勧めできる海水魚、ハタタテハゼと同じ仲間ですが、本種はこの属としてはもっとも高価なものです。以前は1万円を切るような値段でも販売されていましたが、最近はじわじわと値段が上がってきているようです。それでも人気があります。

なおハタタテハゼ属の交雑は、ハタタテハゼ×アケボノハゼがよく知られていますが、ハタタテハゼとシコンハタタテハゼの交雑も水中で撮影されています。残念ながら観賞魚としてはまだ流通はしていないようなのですが…。

なお遊泳性ハゼ飼育の基本についてはこちらもご覧ください。

シコンハタタテハゼの生息する海域と個体の選び方

分布域はハタタテハゼと比べるとやや狭く西~中央太平洋に限られます。ハワイ諸島には分布していません。日本における分布域は高知県、琉球列島、小笠原諸島に限られますが、殆ど入ってくることはありません。

日本にはマーシャル諸島など西―中央太平洋の深場から輸入されてきます。また色彩の変異も見られ、南太平洋には体だけでなく頭もピンク色の鮮やかなものが生息しています。しかし、そのような個体はなかなか入ってこず、また値段もまた極めて高価であり、なかなか入手しにくい魚といえます。

シコンハタタテハゼの飼育に適した水槽

大きくても7cmまでの小魚なので水槽はそれほど大きくなくて良いです。35cmくらいの水槽でも冷却装置をしっかりしておけば飼育可能です。しかし、やや深場の魚なので水槽用クーラーが欲しいところです。他の魚との混泳を考えるならば、60cm水槽が必要になってくるでしょう。

シコンハタタテハゼの生息水深はアケボノハゼよりも深めで、潮がよく流れるサンゴ礁域の深場、水深40mから、深い場所では水深90m位までの深さに生息するとされます。ですから、暑いのは苦手なようです。やや温度低めの23℃くらいがよいかもしれません。25℃でも飼育できましたが、半年しか飼育できていません。また驚くと跳ねることもあるので、フタは用意しておきたいところです。

シコンハタタテハゼの餌

基本的に口に入るサイズの粒状餌を与えるのが適しています。このほかに、おやつみたいな感じでたまにイサザアミやコペポーダなどの冷凍餌を与えると、かなり喜ぶでしょう。

もちろん、冷凍の餌は水を汚すことがあるので、水質には十分気を付ける必要があります。冷凍の餌はたまに与えるくらいでちょうどよいのです。

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シコンハタタテハゼと他の魚との混泳について

ハタタテハゼやアケボノハゼとは混泳も可能ですが、サイズや導入の順番などによっては争う可能性があるので、チェックを怠らないようにしたいものです。クロユリハゼ属やサツキハゼ属、あるいはハゼ科・ベニハゼ属のアオギハゼなど、他の属の遊泳性ハゼとの飼育は、特に大きな問題にはなりません。またカクレクマノミやスズメダイの仲間の比較的温和な種、カエルウオの仲間、小型のイトヒキベラややはり小型のハナダイの仲間などとも混泳できます。生息環境から考えると、特に小型のイトヒキベラやハナダイの仲間はいい混泳相手になるのではないでしょうか。

難しいのはハタタテハゼやアケボノハゼの仲間同様にキュウセンの仲間やニセモチノウオの仲間、あるいはメギスの仲間など強い魚です。これらは気がかなり強いので、要注意です。勿論カエルアンコウの仲間やハタの仲間、ウツボの仲間、フエダイなどの肉食性の魚とも一緒に飼うことはできません。豪華なご飯になってしまいます。

ヤッコ、ベラ、テンジクダイの仲間なども混泳は危険です。一度一緒に入れてしまうと、岩場に隠れて姿を見せなくなるということもあります。

シコンハタタテハゼ(パープルファイヤーゴビー)とサンゴや無脊椎動物との相性

他の遊泳性ハゼと同様、サンゴには特に危害を与えることはありません。やや深場に生息する種ですので深場ミドリイシやLPSなどと組み合わせると似合います。

できればペアで導入して泳がせてみたいところですが、ハゼの仲間とは思えないほど高価な種であり、なかなか難しいかもしれません。しかしもしそれが叶うとすればそれは最高の水景となることでしょう。

2020.12.11 (公開 2020.12.11) 海水魚図鑑

コケ対策として入れられる巻貝とその効果

マリンアクアリウムは水槽を「見て楽しむ」趣味です。ですから水槽にコケが生えてしまい、水槽が見えにくくなると楽しみにくいといえます。そのようなときにコケを食べてくれるのがコケ取り貝です。うまくいけば、水槽のコケを食べて掃除の手間を減らしてくれるかもしれませんが、食べた跡は残るので結局掃除は必要です。今回はコケ取り貝と称される貝の仲間についてご紹介します。

コケを食べてくれる貝

軟体動物はいくつかの「綱」に分かれており、その中で藻類を食べてくれるのは腹足綱(巻貝やウミウシのグループ)、多板綱(ヒザラガイのグループ)くらいです。二枚貝の仲間は水中のプランクトンを捕食し、水槽壁面・ガラス面のコケは食べられません。

またこれらの貝はコケを掃除機のように吸い取るのではなく、歯で削りとって食べるため、コケを食んだ跡が残ります。そのため、「掃除が不要!」とはならないので注意が必要です。また、コケの種類によっては食わないこともあります。

シッタカガイ

この名称で呼ばれるのはいくつか種類があり、バテイラやベニシリダカ、オオコシダカガンガラなどですが、最近はクボガイやクマノコガイなどをも含む、ニシキウズ科全般を指すことがあります。いずれも食用になり、とくにバテイラなどは漁業権が設定されることもあるので注意が必要です。藻類を常食しており、水槽でもガラス面や壁面につくコケをよく食べてくれます。比較的安価で、購入しやすいといえますが、種類や個体によっては高水温に弱いのことがあるのでこの点も注意が必要です。

ニシキウズ

琉球列島に生息する「沖縄版シッタカガイ」といえるような種です。基本的な特徴はシッタカガイと同じではありますが、こちらは熱帯性のため高水温に強く、熱帯性海水魚やサンゴとの飼育に向いています。基本的に本種は沖縄便に強いお店ほど入手しやすい種といえるでしょう。貝殻底部の模様が「渦」を巻いているように見えることからこの名前がついたともいわれます。

チョウセンサザエ

サザエ科の貝もコケ取りとして採用されることがあります。写真のチョウセンサザエはアクアリストが購入するだけでなく、ライブロックに小さなものがついており、これが水槽内で育って大きくなった、なんていうケースもあります。昼間は岩の中に隠れたりしていますが、夜になると活発に岩の上や壁面などを歩き回ります。この仲間には水産上重要種であるサザエはもちろん、タツマキサザエやリュウテンサザエなども知られています。アクアリウムにおいては沖縄便につよいショップが扱うこともあるようです。

アマオブネガイ類

アマオブネガイ

磯の浅いところにごく普通にみられる巻貝です。サザエやアワビほどは食用とされていません。淡水水槽の掃除屋さんとして知られるイシマキガイやカノコガイなどの近縁種で、やはり掃除屋さんとして役に立つ種類です。この名前で呼ばれているものにはアマオブネガイのほか、アマガイやキバアマガイ、琉球列島などに多いリュウキュウアマガイなども含まれています。潮だまりでも見られ、沖縄方面まで足を延ばすと、サンゴヤドカリの仲間がアマオブネガイの仲間の貝殻を背負うところはよく見られる光景といえます。アマオブネガイは千葉や和歌山などでもごく普通にいますが、琉球列島にも分布し水温にも幅広く対応できそうです。

タカラガイの仲間

ハナビラダカラ

▲ハナビラダカラガイの貝殻

外套膜が体を覆ったハナビラダカラガイ

タカラガイの仲間はそのかわいらしい見た目からコレクターに人気があり、また工芸としても使用されました。そんなタカラガイの仲間にはコケ取りをしてくれる種も知られています。きれいなキイロダカラガイやハナビラダカラガイは九州以北の海にもおり、採集して飼育しコケを食べてもらうとよいでしょう。ただしホシダカラガイなどは雑食性が強く、カイメンやサンゴなどを食べてしまうこともあるので注意しなければなりません。また作業効率もシッタカなどと比べて落ちる印象です。タカラガイを採集、もしくは購入して入れる前にどんな性質でどんなものを食うのか、はちゃんと調べておきましょう。また見た目がよく似たウミウサギガイなどはウミキノコなどを食べてしまいます。

個人的にはキイロダカラガイやハナビラダカラガイをのぞき、あまりおすすめしません。ハナビラダカラガイの飼育方法については、以下のリンクで記述しています。

アワビ・トコブシ

アワビは主に養殖の個体(俗にグリーンアワビなどと称される鮮やかな緑色個体)が海水魚店に入ってきますが、このような種類は温帯に生息し、一般的な熱帯性海水魚との飼育には不向きなところがあります。琉球列島や西太平洋のサンゴ礁に生息するミミガイなどの種も入ってきますが、こちらは沖縄便に強いお店でしか入ってこないので入手が難しいといえます。採集は漁業権に抵触するようなこともあり難しいです。このほか同じアワビ類でもトコブシやアナゴの仲間は南方系に多く、こちらのほうがアワビより向いているかもしれません。養殖では配合飼料を与えたり、大型海藻を与えありしますが、我が家では照明の照射時間を長くしているためか、ほどよくコケが生えており、それだけで2年以上飼育することができています。

マガキガイ

ソデボラ科(以前はスイショウガイ科とされた)の巻貝です。本州以南の沿岸に生息している貝で、温帯から熱帯の海域に多くいます。見た目は熱帯域に生息する有毒の貝であるイモガイなどによく似ていて、擬態かもしれません。藻類食というよりは雑食に近いようで、砂を攪拌してくれたり、ときに水槽の壁面・ガラス面に付着した藻類やバクテリアなどをいろいろ食べています。高知県などでは「ちゃんばら貝」と称し食用になり、意外と美味です。

この貝については以前にもご紹介していますので是非ご覧ください。なお、本種が含まれるソデボラ科の仲間はほかにクモガイやスイジガイなど、土産物店でお馴染みの貝もいろいろ含まれています。

餌について

コケ取りに入れられる巻貝は餌のコケがないと飢え死にしてしまいます。そのためコケを取りすぎないよう、水槽にコケ取り貝を入れすぎないように気を付けなければなりません。照明を適切につけておくとやがてコケが生えるので、照明は重要といえます。9~11時間くらいは照明をつけておいたほうがよいでしょう。なお、アワビ類の養殖には専用の配合飼料を使用することもありますが、我が家ではコケがよく生えるためか、それだけで2年以上生存しています。

天敵

ベニワモンヤドカリの新居はマガキガイを食べてゲット

ヤドカリの大きいものや大型のベラ、モンガラカワハギ、イシダイなどは貝を食べてしまうことがあるので注意します。いずれもひっくり返して貝殻を割って食べたりします。ヤドカリが貝を襲うのは、餌を食べるということのほか、貝殻を得るという目的もあります。ヤドカリと貝には相性があるようで、例えば我が家ではベニワモンヤドカリを貝と飼育していますが、ニシキウズやチョウセンサザエ、アワビなどは問題なかったのですが、マガキガイは食われてしまいました。また、タカラガイの仲間もベニワモンヤドカリが入っていることが多く、ベニワモンヤドカリやマガキガイ・タカラガイなどとは組み合わせるべきではないといえます。

コケ取り貝まとめ

  • コケ取りの貝は基本的に腹足綱(巻貝)の仲間
  • 食み跡は残るのでコケ掃除が不要になるわけではない
  • コケの種類によっては食わないことも
  • シッタカガイは安価で購入できるが高水温に注意が必要
  • ニシキウズは高水温に注意が必要
  • チョウセンサザエなどの貝もコケ取りには役立つ
  • アマオブネガイは淡水のイシマキガイなどに近い仲間
  • タカラガイもコケ取りに役立つが種類によってはサンゴを食うことも
  • アワビなどもコケ取りに有用だが水温が合わないこともある
  • マガキガイは主に底砂の攪拌に役立つ
  • コケ取り貝は餌がないと飢え死にしてしまう
  • 大型魚やヤドカリに襲われることも
  • 特にベニワモンヤドカリとマガキガイ・タカラガイとの相性は最悪

2020.12.09 (公開 2020.12.09) 餌・添加剤

ブラインシュリンプ(アルテミア)はどんな餌?どんな生物に適している?


小型の海水魚は主に微小な甲殻類などのプランクトンや付着藻類などを食べていますが、多くの種は飼育下では配合飼料もよく食べてくれるため、あまり餌の心配はいりません。ただし魚の稚魚、あるいはヨウジウオなどの餌が特殊な魚には、口に入るサイズの微小な生きたプランクトンを与えなければなりません。そのようなときによく用いられるのがブラインシュリンプです。今回はこのブラインシュリンプ、通称アルテミアについてご紹介します。

ブラインシュリンプとは

▲ブラインシュリンプの孵化したての個体(冷凍)

ブラインシュリンプは水中に生息する甲殻類の仲間です。この生物は塩湖や塩田などに生息し、乾燥に耐える耐久卵を産みます。この卵を塩水に入れれば24時間くらい後に孵化します。属の学名から「アルテミア」ともよばれます。日本にはアメリカ(主にユタ州ソルトレイク)のものや中国産、ブラジル産などのものが輸入されていますが、それぞれ別の種類のようです。その中でもArtemia salinaと呼ばれる種類が多いようです。

このブラインシュリンプは養殖の幼魚に与える餌としてはよく使われているものです。このほか実験キットとして「シーモンキー」などと称され、夏休みなどにはホームセンターや量販店などでの扱いもあります。ブラインシュリンプ卵は日本動物薬品、テトラなどいくつかのメーカーが販売しています。小さい銀色のパックに入っていたり、缶に入っています。

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ブラインシュリンプを与える

ブラインシュリンプを与えるメリットとデメリット

メリットとしては、安定して生きた動物プランクトンを魚に給餌できるというところにあります。ブラインシュリンプの登場により、手間はかかるとはいえ、家庭でも熱帯性淡水魚の繁殖が楽しめるようになりました。しかしながら海水魚の場合は、うまれてくる稚魚は淡水魚より小さく、まずはシオミズツボワムシなどを与えなければなりませんが、その後の段階としてブラインシュリンプを与えることになります。また後述しますが、ヨウジウオなどの魚は成魚でもブラインシュリンプなどのプランクトンフードを与えなければなりません。

ブラインシュリンプを与えるデメリットとしては、生きたブラインシュリンプを与えるのであれば育てる作業をする必要があるということです。もちろん孵化させるだけでなく、ブラインシュリンプに餌を与えることが必要になります。また問題としてブラインシュリンプ自体はあまり栄養がないとされており、栄養強化を行う必要があります。養殖場などでは海産の珪藻類やナンノクロロプシスなどを使用します。家庭水槽では、このような餌料生物用の餌を培養することはなかなか難しいため、市販されている栄養強化剤、クロレラ、酵母などを餌にします。

冷凍ブラインシュリンプ

「冷凍ブラインシュリンプ」は孵化させたブラインシュリンプを冷凍させたもので、キョーリンやベンリーパック食品製のものが全国の観賞魚店で販売されています。

メリットとしては栄養が強化されていること、長期間冷凍庫で保存できること、育てる手間が不要なことがあげられます。デメリットとしては冷凍餌であることです。保管には冷凍庫が必要であること、これらの冷凍ブラインシュリンプは凍っており、死んでいるので動きません。そのため動くものしか食べない魚は見向きしないことも多いのです。

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どんな生物に適している?

▲ヨウジウオの仲間(写真はテングヨウジ)の餌に最適

生きたプランクトンをメインに食べる魚に向いています。具体的に言えば、タツノオトシゴを含むヨウジウオの仲間、ヘコアユやカミソリウオ、チンアナゴなどの仲間、魚の稚魚などです。また無脊椎動物でも捕食性の強いイボヤギなどのサンゴやクラゲなどの餌に適しているといえます。

ブラインシュリンプはまた、淡水魚であるカワスズメ(シクリッド)や淡水性フグなどの稚魚の餌としても使用できます。ただし淡水魚の餌として使用する場合は、与える前に塩抜きをする必要があります。

実際にブラインシュリンプを育てる

必要なもの

ブラインシュリンプ乾燥卵・エアポンプ・エアチューブ・エアストーン・ヒーター・容器を用意します。オーバーフロー水槽などで飼育している場合、写真のようにサンプで湯煎をするようにして孵化させることもでき、水槽用のヒーターと別のヒーターは不要です。

育てる

容器に海水を入れ、ヒーターで海水をあたためます。水温は25℃で問題ありませんが、早く孵化させるのであれば28℃前後に設定します。20℃以下では孵化しないこともあるようです。海水にブラインシュリンプの乾燥卵を入れます。28~30℃では24時間前後で孵化します。

給餌・栄養強化する

先述のようにブラインシュリンプは栄養的には欠陥があるとされますので、給餌をしたり、海水魚に必要な脂肪酸などを与えて栄養の強化を図る必要があります。専門店の「日海センター」が運営するネットショップや、餌や専用の栄養強化剤が市販されている店から購入するとよいでしょう。なお栄養強化剤は魚の栄養強化にはなりますが餌生物にはメリットがあまりないようで、餌と栄養強化は別のものとして考えるようにします。

卵の保管

▲ブラインシュリンプの卵

開封後は冷暗所に保管しておく必要がありますが、私が使用しているブラインシュリンプは日本動物薬品のもので、同社によれば、結露によって腐敗する可能性があり、冷蔵庫での保管は避けたほうがよいようです。また耐久卵は5~6年ほど生命を保つことができるといわれていますが、これは未開封の場合で、開封後はなるべく早めに使いきるようにします。もちろん、余った卵やブラインシュリンプそのものを海や河川に放すようなことは絶対にしてはいけません。

そのほかの生き餌とのちがい

アカムシ・イトミミズ

アカムシ(赤虫)は昆虫の一種であるユスリカの幼虫です。オイカワなどの淡水魚を釣るときの餌として、またコイ、淡水ハゼ、シクリッド、淡水フグなど淡水魚の生き餌として知られ、冷凍されたものも販売されています。しかしながら栄養価の違いや消化の問題から海水魚の餌としては適していません。また淡水魚の餌として知られる生物にはほかにイトミミズなどもありますが、これも海水魚に与えるのは避けたいところです。

ワムシ

袋形動物と呼ばれるグループです。非常に小さな生物ですが、シオミズツボワムシなどは海水魚の初期餌料として知られています。一部の海水魚店がシオミズツボワムシを培養して販売しておりますが、それにより一般のアクアリストでも海水魚の繁殖を成功させることができるようになりました。ただし稚魚はともかく、プランクトン食の成魚には小さすぎて食べにくいこともあります。

コペポーダ

小型の甲殻類であるカイアシ類のことで、ケンミジンコとも呼ばれます。海水魚の餌として知られている生物の一種で、魚の稚魚はこのコペポーダを好んで捕食しています。また、ヨウジウオや食用魚のイワシなど成魚でもこれらのプランクトンを捕食しています。しかしながら生きたコペポーダを魚に与えることは難しく、観賞魚店で販売されている冷凍のものを餌として与えることになります。しかしながら冷凍コペポーダはどうしても生きたコペポーダよりも食いつきが悪くなります。

イサザアミ

見た目がエビの仲間に似ていますが、アミ目という別の目の甲殻類です。沿岸域や汽水域に多く生息しており、これを採集し生かしたままストックされ、観賞魚店で販売されています。タツノオトシゴやヨウジウオ、魚の稚魚などに最適の餌です。しかしながら時期によっては入手できなかったり、扱っている観賞魚店とそうでない店があるなどのデメリットもあります。このイサザアミを冷凍させたものがキョーリンから販売されています(キョーリン クリーン ホワイトシュリンプ)。栄養強化がされており栄養面では申し分ないのですが、タツノオトシゴなどに与える場合、やはり生きたものと比べて食いつきが悪いのが難点です。

エビ

よく餌に使用されるイソスジエビ

エビの仲間のうち、テナガエビの仲間のイソスジエビ、スジエビモドキ、スネナガエビなどは肉食性海水魚の餌として用いられることがあります。やや大きく栄養強化がしやすいですが、欠点としてはどこの観賞魚店でも取り扱っているというわけではないことがあげられます。また、エビは時期によっては小さいサイズのものが手に入りにくい場合も考えられ、ごく小さいサイズの魚に与えるのであればブラインシュリンプのほうが適しているといえるでしょう。入手性についても、ブラインシュリンプはどこの観賞魚店でも扱っていますし、ホームセンターや玩具店などでも扱っていることがあります。

ブラインシュリンプまとめ

  • アルテミアとも呼ばれる小さな甲殻類
  • ヨウジウオなどの飼育に最適
  • 卵を塩水に入れると24時間以内に孵化する
  • 海水で生きられかつ安定して供給・育成可能な餌生物
  • 孵化させて育てたり栄養強化する必要がある
  • 冷凍ブラインシュリンプは魚によっては見向きしないこともある
  • 育てるには容器やヒーター、エアチューブ、エアストーンなどが必要
  • このほかエビやイサザアミなどが生き餌として知られる
  • アカムシやイトミミズなどは海水魚の餌として与えないほうがよい
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2020.12.07 (公開 2020.12.07) メンテナンス

レッドシーソルトの使い方~紅海の天然海水からつくられた人工海水のもと

「レッドシーソルト」は、紅海の海水から作られた人工海水のもとです。紅海の環境は安定しているのが特徴で、高い品質と元素のバランスのよい人工海水となっています。世界の多くの国々で愛用されており、日本でも「ライブシーソルト」や「シーライフ」などと同様によく使用されている人工海水です。今回はこのレッドシーソルトの使い方をご紹介します。

レッドシーソルトとは

レッドシーソルトはイスラエルのレッドシー社が製造する人工海水です。レッドシー(紅海)の名前の通り、紅海の海水から製造しているものです。カルシウム、マグネシウム、重炭酸塩などの元素がバランスよく高い比率で配合されています。アルカリニティは8dKHで、ミドリイシを含めた多くのサンゴ、海水魚、無脊椎動物、イソギンチャクに適しています。日本では多くのアクアリストが使用し、同じくレッドシーが提唱する、サンゴのための色揚げプログラムである「リーフケアプログラム」と合わせて使っているアクアリストも多いです。

紅海の海水の特徴

レッドシーソルトの「ふるさと」である紅海は西をアフリカ大陸、東をアラビア半島に囲まれた海で、北はエジプトのスエズとポートサイドの間にあるスエズ運河の開通により地中海と、南はアデン湾を経てインド洋とつながっています。周囲は砂漠地帯であり、河川の入り込みが少ないため、塩分が高めで比重も高く安定しているという特徴があります(ただしそれにより紅海産海水魚は低比重に弱いといわれているので注意が必要)。陸上は生命の息吹の少ない、厳しい環境ですが、海の中は巨大なサンゴ礁が多くのダイバーを魅了します。

なお紅海のサンゴ礁にはカラフルな海水魚が多数知られ、マリンアクアリストにはお馴染みです。チョウチョウウオはゴールデンバタフライフィッシュを筆頭にホワイトフェイスバタフライフィッシュ、レッドシーラクーンバタフライフィッシュ、レッドバックバタフライフィッシュなど。ヤッコはレッドシーエンゼルフィッシュが固有種。ベラは種類が多くレッドシークリーナーラスやエイトラインラスなど。このほか広い分布の種でもニシキヤッコの黄色みが強い個体や、タテジマキンチャクダイのオレンジテール、黒色斑のないトゲチョウチョウウオなどのバリエーションも見られこれらの種類も輸入されることがあります。なお一部の海水魚は紅海から地中海へスエズ運河を経由し分布を広げています。

レッドシーソルトの使い方

レッドシーソルトはサイズごとに何種類か市販されています。用途に合わせて必要なものを選ぶことができます。

バケツ

よく陳列され見る機会が多いのがバケツです。デバスズメダイがサンゴの中に入っている写真が使われている紺色のバケツがレッドシーソルトで、このバケツも2種類あり、7㎏(210リットル用)のものと22㎏(660リットル)のものがあります。バケツ入りのメリットとしては保管しやすいことや、水かえの時などに使えて便利であること。デメリットとしては場所を取ることです。なお採集した魚をレッドシーソルトのバケツで運ぶなら水量の多い22㎏のバケツのほうが適しているでしょう。

レッドシー (RedSea) レッドシーソルト 660L用 人工海水

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バケツをすでに購入し使い切ってしまったのならあとは袋を購入するだけでよいです。袋入りのものも各サイズがそろいます。一番小さな袋は10リットル用のものであり、小型水槽や非常時にもおすすめです。最も大きなものでは600リットル用のものまであります。大型水槽や頻繁な水かえをするのにあたってはこちらが役に立つでしょう。

便利グッズ

以前はレッドシーソルト専用のメジャーカップが販売されていました。これは簡単にレッドシーソルトやコーラルプロソルトを水に溶かす分量をはかることができるすぐれものです。ただし現在は製造中止のようで、在庫しているお店以外ではなかなか手に入れることができません。

上位アイテム「コーラルプロソルト」との違い

レッドシー社製の人工海水にはベーシックなレッドシーソルトのほか、サンゴの成長に適したコーラルプロソルトも市販されています。レッドシーソルトよりも高めのアルカリニティ(12dKH)で、サンゴの成長を促すのに最適です。バケツはサンゴの合間にナンヨウハギの写真が使用された黒いバケツです。特に高いKHを維持しレッドシーソルトよりも早く成長させることができ、特におなじレッドシーのリーフケアプログラムを使用することにより成長速度を自然の4倍まで早められるといいます。またLPSであってもアザミハナガタサンゴなどは骨格の密度が高く高めのKHで飼育したいサンゴであり、コーラルプロソルトのほうをおすすめします。

一方レッドシー リーフケアプログラムによる色あげ効果を期待するのであれば、レッドシーソルトのほうが向いているといいます。レッドシーのWEBサイトでは、自分の水槽にはどちらの人工海水のもとが適しているか調べることができるようになっています。魚がメインならばレッドシーソルトで全く問題なしです。

実際に使用してみました

今回はレッドシーソルト334グラムの袋を使用します。なお、レッドシーソルトは以前ご紹介しましたライブシーソルトとは異なり、カルキ抜きの成分が含まれていませんので、水道水で溶かすのであれば、別途カルキ抜きを購入しなければなりません。なお飼育する生物にあわせて溶かす量は異なります。海水魚飼育の場合は10リットル(比重1.0215)、サンゴ飼育の場合は8.7リットル(比重1.0255)の真水(RO水、もしくはカルキ抜きをした水道水)に溶かします。

まずは人工海水をつくるまえに10リットル用のRO水を25℃にあたためておきます。これは比重は水温により変動するためです。写真のヒーターは一定の水温にあたためるオートヒーターですが、できればサーモスタットで温度調節できるタイプのヒーターが望ましいです。

レッドシーソルトを25℃に調節した真水に溶かします。溶かすと水が白く濁りますので攪拌を行います。

塩がすべて溶けるまでしっかりと攪拌します。透明になっても底に塩が沈殿している可能性がありますので、しっかりかき混ぜましょう。

比重計で比重をチェックし、適した比重になるまで水やレッドシーソルトを加えて調節します。

水槽に入れます。今回のような少量の場合はプラケースでいれてもよいのですが、大型水槽向けであればポンプとホースの使用が最適です。入れた直後は魚やサンゴに悪影響が及んでいないか、よく観察したいものです。

レッドシーソルトまとめ

  • 紅海のきれいな海水から作られる人工海水
  • アルカリニティは8dKH
  • リーフケアプログラムとの組み合わせによりサンゴの色揚げがしやすい
  • 10リットルから660リットル用まで用途別に選ぶことができる
  • カルキ抜きは含まれていないので水道水に溶かすときはカルキ抜きが必要
  • 10リットル用であれば10リットルの真水に溶かせば比重1.0215の人工海水ができる
  • 姉妹品のコーラルプロソルトであればよりアルカリニティの高い人工海水を作ることができる

2020.12.02 (公開 2020.12.02) 海水魚図鑑

ナメラヤッコの飼育方法~サンゴをつつくためサンゴ水槽には向かない

ナメラヤッコは灰色と黒という色彩で派手さはないのですが、鱗ひとつひとつに白色斑があり、眼の周りが赤く、よく見ると大変美しくかわいい小型ヤッコです。しかしながら本種はケントロピーゲ亜属に含まれ、ルリヤッコやアカハラヤッコに比べ多少飼育しにくい面があります。ただしこの亜属のものの中では状態さえよければ長期飼育も決して難しいものではなく、おとなしい種で争いも好まずケントロピーゲ亜属の初チャレンジにも適した一種です。今回はナメラヤッコの飼育方法をご紹介します。

標準和名 ナメラヤッコ
学名 Centropyge vrolikii (Bleeker, 1853)
英名 Pearlscale angelfishなど
分類 条鰭綱・スズキ目・スズキ亜目・キンチャクダイ科・アブラヤッコ属
全長 10cm
飼育難易度 ★★★☆☆
おすすめの餌 メガバイトグリーンなど(最初は冷凍餌から餌付けたい)
温度 25℃
水槽 60cm~
混泳 強くない魚とであれば混泳可能。ヤッコ同士の混泳は要注意
サンゴとの飼育 サンゴはよくつつく。ハードコーラルとの相性は悪い

ナメラヤッコって、どんな魚?

ナメラヤッコ

小型ヤッコは派手な色彩をした魚が多いのですが、このナメラヤッコは灰色と黒という色彩でやや地味な印象の種です。しかし眼の周りや胸鰭上方が橙色になり、さらに背鰭軟条部、臀鰭、尾鰭の縁辺が青色になるなど、派手ではないものの美しい色彩をしている種です。鱗の白い斑点から英語圏ではパールスケールエンゼルフィッシュ、つまり真珠の鱗のキンチャクダイという素敵な名前で呼ばれています。ただし淡水のエンゼルフィッシュの一品種にも同名で呼ばれているものがおり注意が必要です。

よく似たエイブルズエンゼルフィッシュ

エイブルズエンゼルフィッシュ

ナメラヤッコはインド洋から西太平洋のサンゴ礁に生息しますが、インド洋では東インド洋に少しいるだけです。そのかわりインド洋には本種によくにたエイブルズエンゼルフィッシュ(エイブリーエンゼル)が分布しています。分布域はインドネシアからスリランカで、インドネシアから入ってくるため安価ではありますが、あまり丁寧に扱われていないため、初心者には若干難しいヤッコといえます。体の色はグレーでナメラヤッコに似ていますが、鮮やかなオレンジ色の横帯があることにより容易に見分けられます。

交雑個体

▲コガネヤッコ

ナメラヤッコが含まれるケントロピーゲ亜属の魚にコガネヤッコというものがいます。コガネヤッコはナメラヤッコに非常に近い種とされており、この2種の間ではしばしば交雑個体が発生します。黄色い体でコガネヤッコに似た模様ですが、尾部が黒っぽくなり、ナメラヤッコの特徴がでていることが多いです。しかしながら交雑個体では模様などは個体ごとに異なります。

交雑個体は種や亜種としては認められませんので、標準和名や学名はつけられないのですが「ナメラピール」という愛称がつけられています。「ピール」というのはコガネヤッコの英名レモンピールにちなみます。

ヤッコに擬態するハギ

▲クログチニザ

ナメラヤッコに姿が似ている魚として、クログチニザというニザダイ科の魚がいます。クログチニザは成長すると黒っぽい色に変貌しますが、幼魚期間は小型ヤッコににた色彩をしています。ナメラヤッコのほか、ヘラルドコガネヤッコ、コガネヤッコ(レモンピール)に擬態したりすることで有名です。ニザダイ類の幼魚が小型ヤッコに擬態する理由としては、小型ヤッコは鰓蓋にある鋭い棘のおかげで肉食性の魚から捕食されにくいともいわれており、それが理由になっているようです。

ナメラヤッコとクログチニザの見分け方は、ナメラヤッコは体に大きな鱗があり、鰓蓋に大きな棘があること、尾柄に棘がないこと、クログチニザは大きな鱗や鰓蓋の棘がないこと、尾柄に小さな棘があることで見分けられます。これらの特徴は小型ヤッコやクロハギ属に共通の特徴であるため、ナメラヤッコではなくヘラルドコガネヤッコに擬態するクログチニザであっても同様の方法で見分けることができます。

クログチニザは西―中央太平洋に広く分布していますが、インド洋ではココスキーリング諸島以東にしかいません。そのかわりインド洋には極めてよく似たインディアンミミックタンというのがいます。この種の幼魚は灰色の体にオレンジ色の横帯があり、尾は黒くエイブルズエンゼルフィッシュに擬態しているようです。

ナメラヤッコに適した環境

水槽

小型水槽でも飼育不可能ではないのですが、60cm以上の水槽で飼育するとよいでしょう。水量が多ければ多いほど水質が悪化しにくく、変化が少ないので水質悪化に比較的弱い小型ヤッコを飼育するのであれば、大型水槽が理想といえます。しかしながら小型ヤッコ飼育初心者が120cm、150cmほどの大型水槽で飼育するのは現実的でなく、そのような意味でも手軽でそこそこの水量をキープすることができる60cm規格水槽がおすすめ、ということになります。

もちろん経済事情が許すというのであれば同じ60cm水槽でも60cm×45cm×45cmの水槽や、45cm×45cm×45cmの水槽(45cmキューブ水槽)などを使用するのもよいでしょう。前者は60cm水槽でありながら100リットルオーバーの水量を稼ぐことができ、後者は45cm水槽ではありますが、60cm規格水槽よりも多くの水量を確保することができます。ただ水量が多いということは同時に重くなるということですので、水槽台はよりしっかりしたものを使用する必要があります。

水質と水槽システム

小型ヤッコの仲間はハゼやスズメダイ、クマノミといった魚よりは硝酸塩の蓄積に弱いですので、しっかりとした飼育システムが求められます。外部ろ過槽や外掛けろ過槽は単用を避け、ほかのろ過槽やプロテインスキマーと組み合わせるようにします。病気を予防するため殺菌灯の使用もおすすめです。

もちろんサンゴを飼育するためのベルリンシステムやゼオビットシステムなどでの飼育もできるのですが、ケントロピーゲ亜属の魚はどの種もサンゴ食性が強く、ハードコーラルとの飼育には向いていません。

水温

クマノミなどと同じく25℃で飼育可能です。水温が上下すると病気になりやすいので、水温を安定するためにヒーターと水槽用クーラーで水槽を安定させるようにします。また、いくら殺菌灯をつけて菌を殺しても水温の変動が激しければ魚も体調を崩して病気になりやすくなりますので、病気になりやすい魚の場合はとくに水温が安定していることが大事です。

隠れ家と砂

ナメラヤッコが落ち着けるように、サンゴ岩やライブロックを入れてあげましょう。砂は敷きたくなりますが、配合飼料への餌付けがすむまではやめておいたほうがよいでしょう。これは最初のうちはアサリをあげたくなるためで、このアサリをヤッコが食い散らかしてしまうと、残り餌が水質を悪化させてしまう危険性があります。そのため残り餌はこまめに吸い出す必要があります。そして砂がないほうが残り餌を吸い取りやすいでしょう。

ナメラヤッコに適した餌と餌付け方

▲アサリを食うナメラヤッコ。周囲が汚れている

ナメラヤッコはアブラヤッコやソメワケヤッコと同じくケントロピーゲ亜属の種で、ルリヤッコやアカハラヤッコなどと比べて餌付けは若干難しめ、といえます。とくに大きな個体になると餌付けの難易度が増してしまいます。逆に小さな幼魚は餌付きやすいのですが、こまめな餌やりが必要です。ですから大きすぎても小さすぎても飼育しにくいものです。また、観賞魚店で餌を食べていても、環境が変わってしまうとなかなか餌を食べないこともあります。最初はナメラヤッコのみ、もしくはナメラヤッコにとってプレッシャーになりにくい魚と混泳するとよいでしょう。

水槽に入れた翌日から餌やりをはじめ、配合飼料を食べない場合は冷凍餌などを与える必要があります。また餌付けに効果があるとされる「エンジェリクサー」などを添加した餌を与えるのもおすすめです。添加剤はヨウ素や微量元素などを添加するとよいでしょう。ヨウ素はサンゴだけでなく、魚にも有用な成分だからです。どうしても餌付かない場合はアサリを与える必要がありますが、上水槽のように食べ残しは水質を汚しやすいので注意しなければなりません。このナメラヤッコはその後病気になってしまったので薬浴して治療し回復しましたが、そうならないようにこまめな水かえが大事です。また底砂も汚しやすいので、初心者は砂を敷かないほうがいいかもしれません(前述)。

配合飼料を与えるのであれば我が家のナメラヤッコもよく食べているキョーリンの「メガバイトグリーン」などがおすすめですが、まずは冷凍餌からスタートしなければなりません。

ナメラヤッコをお迎えする

▲高知県の海で泳いでいるナメラヤッコ

ナメラヤッコはお店では1000~2000円くらいで販売されており、小型ヤッコの中でも安価なもののひとつといえます。しかし、主な生息地はフィリピンやインドネシアなどの東南アジア近海で、小さい袋で来ることも多いため入荷してから時間が経った個体を購入することをおすすめします。

東南アジアのほか、沖縄から来ることもあります。値段は東南アジアのものよりもやや高めですが状態はよいことが多く、はじめてナメラヤッコを飼育するのであれば沖縄産のものがよいかもしれません。ケントロピーゲ亜属飼育初心者の方は小さすぎず大きすぎないサイズで、すでに粒餌を食べているものを選ぶとよいでしょう。ただしお店では配合餌を食していても、環境が変わってしまうと餌を食べなくなるおそれもありますので注意が必要です。

購入する際のチェックポイントは、概ねほかの海水魚と同様です。つまり鰭に白い点がついていないか、鰭がぼろぼろだったり溶けていないか、体に赤いただれはないか、眼は動くものによく反応しているか、口に傷がないか、入荷して時間はたっているか、ゆったりと泳いでいるか、などです。

また和歌山や四国などでは磯で採集することも可能ですが、本種を採集するのにはある程度の技術が必要になります。

ほかの生物との関係

ほかの魚との混泳

小型のスズメダイ、小型のゴンベ、小型のベラ、チョウチョウウオ、ハギ(ニザダイ)の仲間、ハナダイ、ギンポなど他の多くの魚と組み合わせられます。もちろん初心者に人気のカクレクマノミとも混泳できます。

スズメダイの仲間とは混泳可能と述べましたが、大きいスズメダイは気性が荒いため混泳には注意が必要です。とくにルリスズメダイ属、ソラスズメダイ属、ミスジリュウキュウスズメダイなどとの飼育は避けたほうがよいでしょう。デバスズメダイやクロオビスズメダイなどスズメダイ属の小型種との飼育は可能です。小型ヤッコは色彩が美しいためいろいろな種を一つの水槽で飼育したくなりますが、争うおそれがあるため小型水槽での複数飼育はおすすめしません。

サンゴ・無脊椎動物との相性

本種を含むケントロピーゲ亜属の魚はどうしてもサンゴ食性が強いため、サンゴ、とくにハードコーラルメインの水槽で飼育するのには適していません。ソフトコーラルも個体によって、またはサンゴの種類、状態によっては捕食してしまうことがあります。ケヤリムシなどの環形動物もつついてしまいますのでおすすめできません。

甲殻類や軟体動物との飼育は可能なものが多いです。クリーナーシュリンプとしてはスカンクシュリンプやホワイトソックスは大丈夫ですが、オトヒメエビは性格がきついので避けた方が賢明です。イセエビなども種によっては魚を傷つけたり食べたりすることがありますのでおすすめできません。

ほか、ペパーミントシュリンプや小型のヤドカリ、底砂掃除のマガキガイ、壁面掃除のニシキウズなどは一緒に飼育可能です。ただし温帯性のシッタカは水温の都合上あまり好ましくなく、ナマコは底砂にたまるデトリタスを分解してくれるので飼育されていることも多いのですが、死んだり傷ついたりすると魚に致命的なサポニンという毒を放出しますので注意が必要です。

まとめ

  • 地味だがよく見ると模様が美しい小型ヤッコ
  • クログチニザなどは本種や近縁種に擬態
  • 60cm以上の水槽で飼育したい
  • 水質悪化にはスズメダイより弱い面あり。しっかりしたろ過槽を
  • 水温は25℃前後で安定していることが大事
  • 隠れ家をしっかり用意してあげたい
  • 配合餌などに餌付いていない場合は砂を敷かないほうがよい
  • 配合飼料を最初から食うとは限らないのでアサリなどから餌付ける
  • アサリの食べ残しは水質を著しく悪化させる
  • 購入するときはほかのヤッコ同様体表や鰭、吻部、泳ぎ方をしっかり見たい
  • 多くの魚と混泳を楽しむことができるが気が強いスズメダイなどは避けたほうがよい
  • サンゴとの相性はよくない。とくにハードコーラルとは飼わないほうが無難

2020.12.01 (公開 2020.12.01) サンゴ図鑑

ロングテンタクルアネモネの飼育方法~クマノミの仲間が共生するイソギンチャク

ロングテンタクルアネモネは長い触手をもつ大型のイソギンチャクで、クマノミの仲間が共生するタイプのイソギンチャクです。きれいな水と強めの光が必要なイソギンチャクではありますが、適応範囲は広いようで比較的飼育しやすい種類ともいえます。また、砂の中に体をうずめていることがあり、サンゴイソギンチャクやセンジュイソギンチャクほど激しく移動することはあまりないなど、イソギンチャクをはじめて飼育するのに適した種類といえます。今回はロングテンタクルアネモネの飼育方法をご紹介します。

ロングテンタクルアネモネって、どんなイソギンチャク?

▲ロングテンタクルアネモネ

上記のイソギンチャクとは別種かもしれない

ロングテンタクルアネモネはサンゴ礁周辺の岩礁などに生息するイソギンチャクです。英語名Long-tentacle anemoneは「長い触手のイソギンチャク」という意味です。その名の通り、非常に長い触手をもち、触手に触れた魚をとらえたりサンゴにダメージを与えたりする困ったちゃんです。また本種の場合、触手がとくに口周辺でまばらで本数が少ない印象をうけますが、マバラシライトイソギンチャクと呼ばれる種類やオオサンゴイソギンチャクなど、おそらく複数種が含まれると思われます。主に琉球列島、西太平洋からインド洋に生息し、日本においてはフィリピンなどから入ってくる種で価格は比較的安価です。

ロングテンタクルアネモネと共生するクマノミ

ロングテンタクルアネモネは(比較的)カクレクマノミが入りやすいイソギンチャクとされています。共生するまで時間がかかるかもしれませんが、サンゴイソギンチャクなどよりは早いでしょう。またクマノミやハナビラクマノミなども好んで入ります。ほかのクマノミも入ってくれることが多いですが、ハマクマノミ系統はタマイタダキイソギンチャクなどのほうを好むようです。

ロングテンタクルアネモネに適した飼育環境

水槽

最低でも60cm水槽が欲しいところです。ロングテンタクルアネモネはあまり歩き回らない種類ではありますが、触手が長くのびること、またイソギンチャクは水を汚しやすいので少しでも広めの水槽で飼育したいからです。

水質とろ過システム

水質はサンゴだけでなくイソギンチャクにも重要な要素です。サンゴ同様に硝酸塩の少ないきれいな水が求められます。ただしイソギンチャクの場合はサンゴと異なり飼育水を著しく汚しやすいという特徴があります。つまりサンゴ以上に水質や餌には注意しなければなりません。

ろ過槽は上部ろ過槽、外部ろ過槽、オーバーフローシステムなどがよいでしょう。底面ろ過装置はイソギンチャク飼育にはよく使われたものですが本種は砂の中の基質につく習性が強いため、底面ろ過槽は使用しないほうがよいかもしれません。またロングテンタクルアネモネはサンゴイソギンチャクや、センジュイソギンチャクほど激しい移動はあまりしないのですが、それでも少しは移動するため、ろ過装置のストレーナーには必ずスポンジを使って吸い込まれないように配慮をしたいものです。

このほかにプロテインスキマーもあると水槽から残り餌などをハイパワーで取り除いてくれるのでよい水質を維持するのに役立つでしょう。外掛け式のものでもよいですので、ぜひとも入れてあげたいところです。

水温

水温は25℃前後が望ましいです。通常のサンゴと同じくらいです。あまりにも高水温にさらされると褐虫藻が抜けるなどし、弱って死んでしまうので温度はしっかり一定の水温を保つことが重要です。安定した環境は海水生物の飼育には重要ですが、イソギンチャクなど飼育が難しい生物の場合はとくに重要な要素となってきます。クーラーとヒーターを駆使し25℃をキープしましょう。なおヒーターには専用のヒーターカバーをつけておきましょう。

イソギンチャクの飼育について光は重要な要素ではありますが、ロングテンタクルアネモネはメタハラなどのような強めの光でも、比較的安価なLEDでも飼育でき光への順応性が高いといえます。逆に強い光のもと長期間いると色が抜けてしまうことがありますので、注意します。イソギンチャクの様子を見ながら照明の位置や強さを決めていくとよいでしょう。

水流

水流もあったほうがよいのですが、イソギンチャクはどうしても動くので水流のポンプを体でふさいでしまうという出来事が起きる危険性があります。そうなると体に傷がついてそこから死んでしまうこともあるので水流ポンプは使用しにくいです。ろ過槽からの水の流れを工夫したり、エーハイムのサーフェススキマーを使用するなどの工夫もしましょう。

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底砂とライブロック・サンゴ岩

ロングテンタクルアネモネは自然下では砂の中に体をうずめていることも多く、ある程度砂を敷いてあげたいものです。また岩の隙間にいたりすることもあるので、水槽内でもライブロックやサンゴ岩で岩組を組んであげましょう。底砂はあまり深く敷きすぎると硫化水素が発生する危険性もありますので、5cmくらいまでにとどめておきたいところです。

ロングテンタクルアネモネに最適な餌と添加剤

イソギンチャク専用のペレット

イソギンチャクに与える餌もいろいろ販売されています。おすすめはバイタリス(エムエムシー企画レッドシー事業部)のアネモネペレットで、水を汚しにくいドライフードです。ただしイソギンチャクの調子が悪いときや飼育をはじめたばかりのときなどは生のエビや魚の切り身などの餌を与えるようにします。しかしこれらは水を汚しやすいのでしっかりとしたろ過システムの構築と適度な水かえは欠かせません。

添加剤

サンゴ同様ミネラル豊富な海水を好みます。pH、KHも安定した環境が必要であることを考えると、しっかり添加剤も添加するべきです。カルシウム。ストロンチウム、マグネシウム、アルカリニティ。ヨウ素、微量元素の添加剤がほしいところです。レッドシーの各種添加剤や、ブライトウェル(マーフィード)の各種添加剤がおすすめです。

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ロングテンタクルアネモネをお迎えする

▲白っぽいものや透明のものはきれいだが要注意!

ロングテンタクルアネモネは比較的安価で購入できますが、イソギンチャクすべてに共通することとして「入荷直後の個体は購入しない」「白っぽいもの、色が抜けたものは購入しない」ということを守りましょう。また内臓が出たり、触手を下に向けてだらーん、としているのも絶対に選んではいけません。いきつけのショップに相談してみるとよいでしょう。とくにクマノミと共生を考えるのであれば、クマノミとイソギンチャクをセットで購入するのもよいかもしれません。もちろん売ってくれれば、の話ですが。

ロングテンタクルアネモネとほかの生物との相性

クマノミ類をのぞく魚との相性

イソギンチャクは強力な刺胞毒をもち、触れた魚を殺して餌にしてしまいます。そのためクマノミの仲間以外の海水魚とは一緒にしないほうがよいでしょう。魚の遊泳空間さえ確保できれば事故は起こりにくい、ともされますが、照明の点灯および消灯、ほかの魚に追いかけられた、地震や振動などに驚いた、などの理由によりイソギンチャクの触手に触れてしまい、最悪食べられてしまうことがあります。そのためイソギンチャクとクマノミ以外の魚を飼育するということは危険性があります。下写真ではマンジュウイシモチと組み合わせていますが、できるだけ魚との飼育は避けたほうがよいのです。また、タツノオトシゴなど動きがスローな魚や、ハゼの仲間やカエルウオといった底生の魚も捕食されやすいです。

またフグやチョウチョウウオなどは大きさにもよりますがイソギンチャクを捕食してしまうこともあり、これもだめな組み合わせといえそうです。

サンゴとの相性

▲ソフトコーラルとであれば飼えなくはないが注意したい

ロングテンタクルアネモネはほかのイソギンチャクほどではないのですが、たまに移動することがあります。そして移動によってサンゴにダメージを与えてしまうことがあります。とくにハードコーラルとの相性は悪いです。ハードコーラルと一緒にイソギンチャクをうまく飼育している人もいますが、条件がぴたりと合い、イソギンチャクにとって適した位置にずっといるということが条件になります。ソフトコーラルであればまだ入れられますが、それでも十分に注意しなければなりません。

ロングテンタクルアネモネ飼育まとめ

  • 長い触手をもつが複数の種が含まれていると思われる
  • カクレクマノミはサンゴイソギンチャクなどよりも入りやすい
  • 安定して飼育するのに60cm以上の水槽が必要
  • 硝酸塩濃度の低いきれいな水を好む。ろ過槽もしっかりしたものを
  • ろ過槽のストレーナーにはスポンジをしっかりつけておきたい
  • 水温は25℃をキープ。ヒーターカバーも忘れずに
  • 強い光を好むが適応性は広いよう
  • 水流についても工夫がいる
  • 砂の中に体をうずめるため砂は必ず敷いておきたい
  • 餌や添加剤の添加も重要
  • 白いのや透明なものはきれいだが褐虫藻が抜けている可能性も
  • 魚は捕食される可能性があるので注意
  • サンゴとの相性もよくない

取材協力

コーラルタウン

2020.11.28 (公開 2020.11.27) サンゴ図鑑

トゲナシヤギの飼育方法~鮮やかな色彩が魅力だが長期飼育は困難

トゲナシヤギは、ソフトコーラルの中でも変わったサンゴです。枝状の骨軸を共肉が覆い、そこからポリプが出ています。非常に美しいサンゴでありますが、陰日性サンゴの一種であり、光合成をしないので、給餌をする必要があります。そのため飼育は非常に難しく、初心者には向いていません。今回はこのトゲナシヤギの飼育方法をご紹介します。

トゲナシヤギって、どんなサンゴ?

▲浅場にすむカリブ海産のゴルゴニア(ヤギ)。トゲナシヤギと異なり光合成する

トゲナシヤギが含まれるヤギの仲間はソフトコーラルの一種ですが、骨軸をもち、それを共肉が覆いそこからポリプが出るという特徴を有します。ただしイシサンゴ目のハードコーラルとはことなり、骨軸はもろくて細く壊れやすいです。またポリプの触手の数は8本で、ほかの多くのソフトコーラル同様八放サンゴの仲間に分類されています。

ヤギの仲間は好日性のものと、陰日性のものがあります。好日性のヤギは比較的飼育しやすいですが、ヤギの仲間で人気の種類は陰日性のものです。陰日性ヤギは赤や黄色、そしてこのトゲナシヤギのようなカラフルなものがおり、鮮やかな色彩だからです。一方好日のヤギはカリブ海産のカリビアンゴルゴニアと総称されるカリブ海産のヤギなどがおり、やや高価ですがその割には地味です。

トゲナシヤギなど陰日性サンゴというのは学術的な分類ではなく、ウミトサカ目のサンゴであるトゲトサカの仲間や、イシサンゴ目のイボヤギ、キサンゴ、ハナタテサンゴなどを含んでおり、これらは強い光がなくても餌だけで飼育できるので簡単そうに思われますが、これはマメに餌やりや水かえができるタイプのアクアリストにしか飼えない種で、ビギナーが飼っても失敗しやすくまったくおすすめできないサンゴといえます。

トゲナシヤギ飼育に必要な環境

水槽

▲トゲナシヤギの骨軸

水槽でもそれなりに大きく、高さがあるものが必要になります。そのため最低でも60×45×45(cm)の水槽が欲しいところです。また陰日性サンゴはどの種も給餌が必要ですが、それにより水質が悪化しやすいため、大きな水量の水槽が必要になるのです。

水質とろ過システム

水質はベルリンシステムでも、ろ材を用いた強制ろ過でもどちらでも飼育できますが、水質の悪化には強くないのでよい水質をキープすることが重要です。水質維持のポイントは二つあり、適切な水かえとハイパワーのプロテインスキマーの設置です。給餌が必須な陰日性のサンゴは非常に水を汚しやすいサンゴで、そのため水質の維持にはこまめな水かえがかかせないのです。また、残り餌などを取り除いてくれるプロテインスキマーの設置も重要で、陰日性サンゴを飼育するのにはマストアイテムともいえそうです。水槽サイズに対してやや大きめの機種が望ましいといえます。

水温

陰日性サンゴの一種ですが、よく海水魚店に入ってくるインドネシア産の個体であれば23~25℃くらいで飼育できます。もちろん水温は一定に保つようにしなければなりません。

水流

水流はヤギの飼育に重要な要素のひとつです。強すぎず弱すぎずの水流が間接的にあたるのがよいとされています。また、多くのサンゴに共通する点として、直接水流が当たるのはよくないといえます。本種も同様であり、壁やガラス面にあたり分散された水流が間接的に当たるのが望ましいです。

照明と配置場所

陰日性のサンゴで、照明は弱くても問題ありませんが、逆にミドリイシの水槽のような強い照明は厳禁です。むしろ室内の光だけで十分なくらいです。そうしないと枝にコケがつき、そのコケがポリプを覆うように増えて死滅させてしまうこともあります。我が家ではゼンスイの古いLED照明を使用していましたが、それでも明るすぎるようでした。

トゲナシヤギに適した餌と添加剤

▲トゲナシヤギのポリプ。一つ一つに餌を吹きかけるようにして与えたい

トゲナシヤギはひとつひとつのポリプが大きいので、トゲトサカの仲間と比べればまだ餌を与えやすいです。餌の種類は粉末状のフードや、コペポーダなどのプランクトンや、コペポーダよりもやや小さめのワムシ類などを主原料とした「ズープランクトスS」などを与えるとよいでしょう。ほかにもショップ限定のパウダーフードなども効果があるようです。

与え方としては給餌の際には循環ポンプと水流ポンプを停止させ、スポイトを使ってポリプに吹きかけるようにして与えます。もちろん給餌後にはポンプを再起動するのを忘れないようにします。そうしないとサンゴや魚が死んでしまうおそれがあるからです。なお、餌は毎日しっかり与えるようにします。

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添加剤

ほかの多くのサンゴと同様、カルシウム、ストロンチウム、マグネシウム、ヨウ素、微量元素などを添加するとよいでしょう。意外なほど微量元素の添加も重要で足りていないとポリプが剥離するともいわれます。その点もこの仲間がやや難しいといわれる理由でしょう。

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トゲナシヤギをお迎えする

トゲナシヤギは海水魚店で販売しているものを購入するのがベストです。近海産でイセエビ漁などで漁獲されたものがまれに販売されることもありますが、インドネシアのもののほうが飼育はしやすいでしょう。これはインドネシア産のものが比較的高い水温への耐性があるとされているからです。ただでさえ難しいサンゴですからできるだけ状態がよさそうなものを購入したほうがよいということです。

購入時の注意点はよくポリプを広げているものを選ぶということのほか、共肉が剥げて骨軸が見えているところが少ないこと、もやっとしたコケがはえていないというのも選ぶ際に重要なポイントになります。骨軸が見えている部分が多いものは飼育していても共肉が退行してコケが生えやすくなったりすることもあるようで注意が必要です。

トゲナシヤギとほかの生物の相性

魚・甲殻類

トゲナシヤギを飼育するなら魚は少ないほうがよいでしょう。魚と一緒に飼育するのであれば食べ残しを食べてくれる小型のハゼ類や小型のテンジクダイ、ハナゴイなどおとなしい魚との飼育が適しているでしょう。ヤッコやチョウチョウウオにはポリプをつつかれてしまうので避けたほうが無難です。また一部のエビやカニなどもポリプを食べてしまうことがあり、おすすめできません。

ほかのサンゴとの相性

トゲナシヤギはほかのサンゴとの相性もよいとはいえません。ほかのサンゴの多くは光合成をするため、水槽内を照明で照らさないといけません。この光が大敵であり、先ほども述べたようにコケがヤギの骨を覆ってポリプを殺してしまうこともあるのです。さらにトゲナシヤギには頻繁な給餌が必要なのですが、その給餌により水質が悪化してしまうこともあります。そのため、好日性サンゴとの飼育は困難なのです。

ほかのサンゴと組み合わせるならイボヤギなど同じような陰日性サンゴが最適ですが、これらのサンゴの中にはイボヤギなど毒性強めのサンゴもおりますので、接触させないようにするべきです。

トゲナシヤギ飼育まとめ

  • 鮮やかな色彩のサンゴであるが飼育は難しく初心者には困難
  • 骨軸があるがハードコーラルの骨格と異なり弱くて折れやすい
  • 陰日性サンゴで光を好まない
  • しっかりとしたろ過システムと残り餌を取り除くスキマーが必要
  • 強めの水流を好むが直接当てるのはよくない
  • 水温は低めを好むが産地によっては23~25℃でも飼育できる
  • 添加剤はほかのサンゴと同じように添加する
  • 餌は重要、毎日開いたポリプに液状やプランクトンフードをふきかける
  • 購入する時はよくポリプを開き剥げている部分が少ない個体を選ぶ
  • 剥げているところにコケが生えて骨軸を覆ってしまうことも
  • 魚は少ないほうがよい。小型のテンジクダイやハナダイなどにとどめる
  • 陰日性サンゴとの組み合わせはよいが好日性サンゴとの組み合わせは困難

2020.11.25 (公開 2020.11.25) 水槽・器具

カルシウムリアクターの仕組み・使用方法・注意点

カルシウムリアクターはカルシウムなどを含んだメディアを溶出させ、水槽に供給しカルシウムの濃度をあげたり、KHを維持させるためのアイテムです。従来から「メタハラ」「スキマー」とならび、ミドリイシ飼育の三種の神器と称されてきましたが、調整にはコツがいることや、緑色の大型ボンベを使用する必要があること、などから取り扱いには注意が必要なアイテムといえます。今回はカルシウムリアクターの基本についてご紹介します。

カルシウムリアクターとは

カルシウムリアクターは造礁サンゴを飼育するのに役に立つ器具です。水槽にカルシウムメディアの内容物を溶出させ、水槽内にカルシウムを供給しKHを安定させるというものです。従来は「プロテインスキマー」「メタルハライドランプ」とならび、ミドリイシ飼育の三種の神器的な存在でしたが、現在はプロテインスキマーは使用しているが、照明はLEDで、カルシウムリアクターは使用していない、というアクアリストも多いです。しかしながら、多くのミドリイシを飼育するためにはいまでも重要なアイテムであり、より安定して飼育できる、という意味ではあったほうがよい器具といえます。

なお、リアクターは「反応装置」とかそのような意味があります。市販されているマルチリアクターというのは主に流動ろ過のろ材やバイオペレットなどを入れるためのものであり、カルシウムリアクターとしては使えないので注意が必要です。

カルシウムリアクターが欲しいサンゴ

カルシウムリアクターはどんなサンゴ飼育にも役に立つのですが、サンゴ水槽に必須、というものではありません。しかし、カルシウムリアクターを使用することによりサンゴの飼育がしやすくなることがあります。とくに10~15年くらい前には先述のようにミドリイシにはカルシウムリアクターが必須、なんていわれていたこともありました。

ミドリイシ

飼育するのに高いKH値を維持しなければならないサンゴの代名詞がこのミドリイシです。KHが低すぎるとミドリイシは白化してしまいます。添加剤でのKH維持も可能ではありますが、カルシウムリアクターを使用したほうが安心して飼育できるでしょう。

コモンサンゴ、ほかSPS全般

コモンサンゴの仲間にも高いKHが重要

コモンサンゴはミドリイシ科のサンゴではありますが、それでもある程度丈夫なため飼育しやすいサンゴといえます。しかしやはり飼育にはある程度高いKHが重要で、成長のためにはカルシウムも必須です。このほか、SPSと呼ばれるハナヤサイサンゴ、ショウガサンゴ、トゲサンゴなども同様です。そうなるとカルシウムリアクターを使ったほうが飼育しやすいでしょうが、添加剤の定期的な添加によっても維持・成長させることはできます。

ハナガタサンゴ・キクメイシ

アザミハナガタサンゴも高いKHの飼育水を好む

ハナガタサンゴの類は骨格の密度が大きいため高いKHでの飼育が望ましいといえます。キクメイシの仲間も丸い骨格のものなどは成長が遅いため、成長させたい場合にはカルシウムリアクターが役に立つでしょう。

なお、ここに挙げた種類のサンゴだけでなく、各種ハードコーラル(イシサンゴ)やアオサンゴ、イソギンチャクであってもKHのそれなりに高い水が欲しいところですので、添加して損するということはありません。

カルシウムリアクターの仕組み

カルシウムリアクターは筒の中にカルシウムメディアと呼ばれるものを入れ、そこに二酸化炭素(CO2)を添加してメディアを溶かし、その溶けた水を水槽に添加しますが、その添加量の調整は注意しないと水槽のpHが大きく変動してしまい魚やサンゴが全滅してしまうこともあります。

機種によってはセカンドステージがついているものもあります。これは残ったCO2をしっかり消費させるものです。水槽内にCO2が入るともったいないし、pHが低下し、水槽が崩壊する、なんて恐ろしいことがおこる危険もあります。最近はセカンドリアクターを使用せず、OCTOやPRSのリアクターのようにCO2リサイクル機能を取り入れたものもあります(後述)。

カルシウムリアクターを動かすのに必要なもの

二酸化炭素(CO2)ボンベ

二酸化炭素が充填された緑色のボンベです。これがないとカルシウムメディアを溶かすことができないので、カルシウムリアクターを使用することはできません。写真は2.5リットルの液化炭酸ガスボンベです。

ボンベのコスト

一般的にカルシウムリアクターは緑色のCO2ボンベを使用します。よく観賞魚店でみられる酸素入りのボンベが黒、塩素が黄色、水素が赤で炭酸ガス(CO2)は緑色と、ガスの種類別に色が決まっています。大体2.5リットルのボンベで20000~25000円くらい、数か月~半年に一度、充填費用が4000円くらいかかります。水草用の小さなCO2ボンベも使用可能ですが、頻繁な交換が必要になります。

レギュレーターと逆止弁、スピードコントローラー

レギュレーターはボンベからCO2を排出させるためのアイテム、逆止弁は逆流を防止するもので、必ず備え付けておく必要があります。スピードコントローラーは添加のスピードを調整するのに重要です。レギュレーターも10000円ほどと結構高くついてしまうので、できるだけ専門店の方と相談して決めるようにしましょう。

カルシウムメディア

カルシウムを水槽に供給するには、そのカルシウムのもとになるものが必要です。これがカルシウムメディアです。リアクターメーカーなどから販売されていますが、どれも炭酸カルシウム鉱物のアラゴナイト(アラレ石)です。これは死んだサンゴの骨格や、サンゴ砂などと比べて溶けだしやすいという特徴があります。基本的にリアクターのメーカーが推奨するものを使用するのが一番ですが他社製のメディアでも問題ないとのこと。たとえばH&S製のリアクターであればH&Sのメディアを使用するのが一番ですが、他社製でも粒が大きいものであれば問題ないということです。

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黒い紙

カルシウムリアクターのカルシウムメディアを入れる場所には黒い紙をテープなどで貼ってもよいでしょう。これは明るい場所にさらされるとメディアにコケが生えてしまうことがあるためです。ただし、メディアの量や状態を確認するために、貼ったりはがしたりできるようにすることが理想です。

主なメーカーのカルシウムリアクター

一部国内メーカーのものもありますが、市場に出ているものでは海外製品が多いです。

H&S(エムエムシー企画レッドシー事業部)

ドイツの老舗メーカーです。我が家の水槽でも使用しているプロテインスキマーHS850が有名ですが、カルシウムリアクターも製造。日本のアクアリウム市場で流通しているのは「CA-0」、「CA-1eco」、そして「CA-2eco」の3種類です。サンプ内で使用することが前提ですが、CA-1eco、そしてCA-2ecoについてはオプションパーツを使用することで外部式に変更することも可能。メディアについてはH&Sリアクター専用メディアを使用します。

OCTO(旧リーフオクトパス:LSS研究所)

中国の人気メーカー、OCTOもプロテインスキマーで有名ですがカルシウムリアクターも販売しています。自社製のACポンプを搭載した「クラシック カルシウムリアクター」と、中国製らしくDCのVariosポンプを使用した「カルシウムリアクター」の2シリーズを用意。水槽のサイズに合わせ、クラシックは2種類、カルシウムリアクターは3種類から選ぶことができます。どちらの商品も残ってしまった二酸化炭素をリサイクルする「CO2リサイクルバイパス」がついています。

PRS

「雲海」スキマーなどで知られている埼玉県のメーカーですが、リアクターも製造しています。OCTO同様に二酸化炭素をリサイクルする仕組みをもち、DCポンプで稼働します。従来はセカンドリアクターがあるモデルを製造していましたが、最近はシングルタイプのもののみのようです。ただしオプションパーツとしてチャンバーなども販売されており、つなげてセカンドリアクター的に運用することも可能です。

カルシウムリアクターの運用とメンテナンス

水槽崩壊を招くおそれがある

カルシウムリアクターは水槽崩壊を招く危険性がある器具です。これはカルシウムリアクターの使用により低いpHの水が水槽に供給され、水槽の酸化や酸欠によって最悪水槽が崩壊してしまうことがあるのです。さらに価格も高価であり、安定したフルオート化で運用しようものならコントローラーや電磁弁、エレクトロ―ドなど高額な費用がかかってしまいます。どんな器具でもそうですが、とくにカルシウムリアクターのような高価であったり、水槽崩壊を招くこともある危険なものは店員の方やアクアリストに相談するなどして納得いくチョイスを心掛けたいものです。

定期的なpHとKH、カルシウムのチェック

カルシウムリアクターというのは二酸化炭素を供給するため、pHが下がりやすいという問題があります。そのためpHは頻繁にチェックしたほうがよいでしょう。水槽内のpHが極端に下がっているなら即刻リアクターを止めなければなりません。

もちろんKHがしっかり上がっているかのチェックも欠かせません。リアクターから出てくる水はKHが20~30dKH、水槽内のKHは7~12dKHがそれぞれの目安です。カルシウムは380~450ppmが目安です。

pHをチェックする

KHをチェックする

カルシウムをチェックする

メディアの交換と補充

カルシウムメディアは成分を溶出させるために使っているうちに減っていきます。できるだけ早いうちに交換しておきたいものです。汚れてきたら洗浄しますが、あまりに細かくなると目詰まりを起こしやすいので交換するのが望ましいです。

CO2ボンベの交換と充填

リアクターを動かすためには二酸化炭素が必要ですが、この二酸化炭素を貯蔵しておくCO2ボンベは交換もしくは充填が必要となります。先述のように数か月~半年に1回の交換が必要になります。水草用の安価なボンベについては初期投資が緑色のボンベと比べ低く抑えられるものの、頻繁な交換が必要となります。

カルシウムリアクターの代わりになるもの

▲カルシウムリアクターの効果を再現する「リキッドリーフ」

近年はカルシウムリアクターの代わりをするものが販売されています。これはカルシウムリアクターに使用されるCO2ボンベの充填や交換が必要であることや、カルシウムリアクターそのものが高価であり初期投資がかかる、初期設定が若干難しく失敗すると生物を全滅させる危険性がある、などの問題があります。近年は添加剤でも、カルシウムリアクターの代わりとなるものが市販されており、このようなものを使用するアクアリストも多いようです。

有名なものは日本国内ではマーフィードが取り扱っているケントの「リキッドリアクター」ですが、マーフィードのホームページではカタログ落ちしてしまっています。そのため、やはりマーフィードが日本で取り扱うブライトウェルアクアティクス社の「リキッドリーフ」を使用する方法があります。これはアラゴナイトから溶け出すのと同じ比率でカルシウム、ストロンチウム、マグネシウム、ポタシウムを水槽に供給します。

レッドシーによる「リーフケアプログラム」のサブプログラム「リーフファンデーションプログラム」も同様です。カルシウム、KH、マグネシウムなどをサンゴに必要な濃度で維持します。欧米では近年CO2ボンベが危険物で敬遠されているようで、リーフキーパーはそれを補う必要があるのでしょう。これらの商品を使う上でのメリットは安価で使用できること、CO2の添加が不要であり充填コストが抑えられる、pHが低下して水槽が崩壊する危険性がないところがあげられます。逆にデメリットとしてはミドリイシを詰め込みすぎたような水槽では対応できない場合があること、添加剤を頻繁に購入するなら結局ある程度の出費が必要になるということがあります。

カルシウムリアクターまとめ

  • アラゴナイトのメディアを溶かしてサンゴに適したKHやカルシウム値を維持する
  • 従来はスキマー、メタハラとともにミドリイシ飼育にとっては欠かせないものだった
  • 今でもミドリイシをぎっしり詰め込んだ水槽ではよく使用されている
  • ミドリイシのほかLPSやソフトコーラル、イソギンチャクなどにも有効
  • 本体のほかにCO2ボンベやカルシウムメディア、レギュレーターなどが必要
  • CO2ボンベは定期的な充填や交換が必要
  • 調整を間違えると水槽が崩壊してしまう危険性も
  • pHとKH、カルシウムの数値はチェックしたい
  • メディアは細かくなると目詰まりしやすいので早めに交換したい
  • 添加剤を使用してリアクターの効果を得る方法も

2020.11.20 (公開 2020.11.19) 海水魚図鑑

サザナミヤッコの飼育方法~成長を楽しめるが成魚は巨大な水槽が必要

サザナミヤッコは、海水魚専門店ではよく見られる魚です。濃青色の体に白い横線があるものがよく販売されているのですが、これは幼魚であり、成長すると緑色の体に青い点が散らばるようになります。そして大きさも30cmを超えるので、小型水槽では終生飼育できません。飼育には大型水槽が必要です。長寿でよく慣れるのでイヌやネコを飼うような感覚で飼育できるかもしれません。今回はこのサザナミヤッコの飼育方法をご紹介します。

標準和名 サザナミヤッコ
学名 Pomacanthus semicirculatus (Cuvier, 1831)
英名 Koran angelfish, Semicircle angelfishなど
分類 条鰭綱・スズキ目・スズキ亜目・キンチャクダイ科・サザナミヤッコ属
全長 30cm(海では40cm)
飼育難易度 ★★★☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッド海藻70など
温度 25℃
水槽 120cm~
混泳 同種同士の混泳はペア以外は避ける。180cm以上でなければ混泳は難しい
サンゴとの飼育 サンゴは食べてしまうのでサンゴ水槽には向かない

サザナミヤッコって、どんな魚?

サザナミヤッコはヤッコの仲間では大型になり、俗に「大型ヤッコ」と呼ばれる種です。全長40cmほど、水槽でも30cm以上に成長します。その大きな特徴は成魚と幼魚で模様や色彩が大きく異なることです。水槽内で変化を観察するのも楽しいものですが、成魚は大型水槽が必要なので注意しなければなりません。英語では幼魚や若魚の尾鰭の模様から「Koran angelfish」と呼ばれますが、これは若い個体の尾鰭の模様がアラビア文字に似ているから、ともいわれ、イスラム教の聖典コラーン(クルアーン)の名前が付けられたようです。一方比Fishbaseでは「Semicircule angelfish」という英名もついています。これも幼魚の模様由来でしょう。

幼魚

▲いわゆる「三本線」

▲磯で採集したサザナミヤッコの子

本種は10数cmになっても幼魚の模様をしているものが多いようです。逆にすぐ模様が変化してしまうものにはイナズマヤッコなどがいますが、この種は手のひらにのるサイズでも成魚の模様をしています。ごく小さいうちは白い横線がカーブしていることもあり、タテジマキンチャクダイの幼魚(ウズマキ)と間違えられることもあります。ごく小さいうちは「三本線」とよばれ、線の数も3本なのですが成長につれて増えていきます。ただしこの三本線はやせやすく飼育しにくいので、5cmくらいのものを採集して飼うのがよいでしょう。

成魚

▲サザナミヤッコ

成魚になるとオリーブグリーンの体に青色の小さな斑点が散らばり、幼魚とはまた違う美しさとなります。また、マクロススやアズファーなどと同様に、背鰭と臀鰭の後方が少し伸びるのも特徴です。またサザナミヤッコはある程度大きくなっても横縞模様が残ることがあります。すぐ成魚の模様に変貌してしまうイナズマヤッコとは対照的です。長寿で人にもよく慣れるため、ペット的な付き合いになってくるでしょう。同じ属のロクセンヤッコは水族館で40年以上生きた記録もあるようです。なお、成魚は沖縄などでは食用となり、意外とおいしい魚です。

カラーバリエーション

セイシェルや東アフリカ沿岸の個体は色彩が日本やアジアのものとはやや異なっています。ケニア便で幼魚が日本にもたまに入ってくることがありますが、沖縄や東南アジアのものとくらべるとどうしても高価です。また、サザナミヤッコの幼魚はたまに乱れた模様を持つことがあります。

サザナミヤッコに適した飼育環境

水槽

▲大型魚を多数混泳させるならそれなりの水槽が必要

サザナミヤッコを終生飼育するのには小さくても120cm水槽を用意したいものです。ほかのヤッコと組み合わせるのであれば、180cm以上の水槽が欲しくなります。幼魚は小型水槽でも飼育でき、その中で餌付けを行うとよいでしょうが、成長しても小さい水槽のままだと、ヤッコにとっては窮屈になってしまい、体形が崩れてしまいやすいので、おすすめできません。

ほかの大型ヤッコもそうですが非常に長寿なため、長く付き合うことになります。水槽だけでなく、機材もしっかりしたものを用意しておきたいところです。とくに循環ポンプやクーラーといった機材は一般的な対応水量スペックよりも大きめのものを選ぶようにしましょう。それを考えると幼魚から一気に120~180cm水槽にサイズアップするのもよいかもしれません。ステップアップするうえで余計な機材を購入しなくてもよくなるからです。

水質とろ過システム

大型ヤッコの仲間はよく餌をたべ、そうなると排せつ物の量も多くなりますのでしっかりしたろ過システムが求められます。幼魚を小型水槽で飼育するときは外部ろ過槽や外掛けろ過槽を単体で使うのは避け、この二つのろ過槽を併用して使うようにします。この二つのろ過槽を併用することにより、互いの弱点を補うことができるからです。

成魚は巨大になりますのでろ過槽は現実的に上部ろ過槽をメインに使用するしかないでしょう。これに外部ろ過槽を組み合わせるのもよいですが、外部ろ過槽も相当大きなものを使用するしかありません。最もおすすめなのはオーバーフロー水槽にしてサンプでろ過する方式です。これならば圧倒的なろ過スペースを確保でき、好気性バクテリアが必要とする酸素も溶け込みやすいです。このほかに殺菌灯やプロテインスキマーなどを接続するのもしやすいのでおすすめです。

水温

サンゴ礁の魚ですので原則25℃前後を保つようにします。ヤッコの仲間は病気にかかりやすいところがあり、病気予防のためには水温が一定であることも重要ですので(後述)、夏季はクーラー、冬期はヒーターを用いるようにします。

サンゴ岩・ライブロック

大きめの魚を飼育するときは、サンゴ岩やライブロックを少なめにするのが重要です。これは遊泳のためのスペースがいきわたるようにしたいからです。ただし幼魚のうちは臆病であり隠れがちなので、穴のような隙間があったライブロックや、サンゴ岩をアーチ型に組むなどして落ち着けるような場所をつくりたいところです。

底砂は敷いても敷かなくてもかまいません。ただし大型ヤッコは排せつ物の量が多く底砂に汚れがたまりやすいことを考えると砂を敷かないほうがよいかもしれません。砂がないと掃除もしやすく、何かとメリットが多いです。砂にもぐって眠るホンベラ属やカンムリベラ属の魚と飼育するのでなければ砂は全く不要です。

サザナミヤッコに適した餌

ヤッコの仲間ですので、個体にもよりますが最初から配合飼料に餌付く、とは限りません。最初のうちは冷凍餌を与えれば餌付くことが多いのですが、たまにアサリから与えなければならないようなものもいます。冷凍餌やアサリを食べてくれるのであれば与え続けてもよいのですが、これらの餌は水を汚してしまうので、完全に餌付いたのであれば配合飼料に切り替えましょう。どうしても食わないのであればアサリや冷凍餌でそのまま飼育していきますが、栄養が偏るなど難点もありますので、できるだけ配合飼料に餌付けたいものです。雑食性ですのでキョーリンのメガバイトシリーズは「レッド」「グリーン」のどちらかではなく、できれば両方与えたいところです。またメガバイトグリーンをベースとした「海藻70」を与えるのもおすすめです。

またほかの大型ヤッコとの混泳を考えるのであれば、幼魚のうちは60cmくらいの水槽で、ある程度のサイズに育ててから混泳水槽に入れるとよいでしょう。幼魚のうちはほかの魚からの攻撃を受けやすいからです。

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サザナミヤッコの病気対策

サザナミヤッコはリムフォシスティス病や白点病などにかかることがあります。また肌があまり強くないのか、細菌感染症にかかったりすることもあります。病気予防の方法もいくつかあります。

常にきれいな海水で飼育

きれいな海水と汚い海水では当然ながらきれいな海水で飼育したほうが病気にはなりにくくなります。きれいな海水で飼育するのにはこまめな水かえが重要となります。また先述のようにプロテインスキマーの設置も効果的です。

病気予防=殺菌灯と思い付きがちですが、基本的なことをしっかり行うことが重要になります。殺菌灯を使用していても汚い海水、温度の急変などでは病気になってしまう可能性が高いです。殺菌灯ももちろん病気対策によいのですが、基本的なことをしっかり押さえてから使用するようにしましょう。また魚病薬や活性炭を使ったり、汚い海水で飼育していたりするとHLLE(頭部および側線浸潤)を引き起こしやすいので注意しなければなりません。

水温の安定

これも重要な要素です。海水魚はおおむね水温が一定のサンゴ礁の海を泳ぎ回っているのです。そのため水温の変動が大きいと体調を崩してしまいやすいのです。どんな魚でもそうなのですが、とくにサザナミヤッコを含むヤッコの仲間や、チョウチョウウオの仲間は病気になりやすいため、水温の安定はとくに重要な要素といえるのです。また殺菌灯や殺菌灯を動かすポンプ自体も水温の上昇を招きやすいので、クーラーの増強が必要になることもあります。

同様に病気になる要素を少しでも減らすのであれば、砂を敷かないベアタンクでの飼育(砂に有害物質が蓄積しやすい、また白点病の原因になりうる原生生物がいることがある)、白点病を招きやすいチョウチョウウオとの混泳を避ける、餌の単食を避ける、などもあげられます。

抵抗力を高める

▲ガーリックエキスを餌に添加するとよい

海水魚用の添加剤を使用して病気に対する抵抗力を高める方法もあります。有名なのがブライトウェルのガーリックパワー、コンティニュアムアクアティクスのバイオガーリックなどに代表されるガーリックエキスの添加剤です。このガーリックエキスの成分が魚の抵抗力を高める効果があるとされるので配合飼料などに添加して与えるとよいでしょう。また魚の体表に寄生虫が見られたときに使用すると状態が改善するという報告もありますが、「薬品」ではないので効果が得られないこともあるため注意しましょう。

サザナミヤッコをお迎えする

採集する

▲10月の潮だまり。2本の網でサザナミヤッコを追う

8月の終わりから10月にかけて、千葉県以南の太平洋岸で本種の幼魚に出会えることがあります。ほぼ毎年のように流れては来ますが、死滅回遊魚と呼ばれるもので越冬はほぼできません。浅い場所で採集できることもありますが、極小サイズで「三本線」などと呼ばれるものは先述のようにやせやすいので初心者には向きません。掌サイズのやや大きいものがよいのですが、よほどウデがよくないと採集はできません。

購入する

サザナミヤッコは海水魚専門店であればどこでも在庫されているでしょう。人気は餌付けのよい幼魚に集中します。小型水槽でも飼えるからという点での人気もありそうですが、小型水槽で終生飼育はできませんので注意が必要です。さすがに少ないと思われますが、ごくまれに「三本線」が売られることもあるようですが、三本線も初心者には全く向いていません。

選ぶときの注意点はほかの多くの海水魚と同様で、おおむね上記の図通りですが、このほか鰭が妙に白っぽくなっていないこと、動くものによく反応すること、ゆったり泳いでいる(泳ぎ方がおかしくない)ことなども見てほしいところです。また入荷後時間が経過していないものも購入をやめたほうが無難です。

ほかの生物との相性

大型ヤッコ同士の混泳

▲サザナミヤッコとタテジマキンチャクダイの争い

大型ヤッコ同士の混泳はよく行われています。ただし大型ヤッコを複数飼育するのであれば巨大な水槽が必要になります。最低でも150cm、できれば180cm以上の水槽で飼育したいものです。大型ヤッコは大きくなるだけでなく喧嘩するため「逃れる場所」を作ってあげたいのと、争いを緩和するために3匹の大型ヤッコを混泳することもあり、そうなると当然巨大な水槽が必要となってくるからです。また、サザナミヤッコはタテジマキンチャクダイよりも神経質なところもあるようで、無理のない混泳が重要となります。

どうしてもうまく混泳がいかないときはあきらめる勇気も必要です。この場合ヤッコの仲間をショップに引き取ってもらうしかありません。もちろん海へ逃がしたりしてはいけません。

小型ヤッコとの混泳

幼魚を小型ヤッコと組み合わせたくなりますが、できるだけ避けたいところです。小型ヤッコと大型ヤッコの同じくらいの大きさのものでは小型ヤッコが成魚、大型ヤッコは幼魚となり、弱い立場になりやすいからです。成魚を小型ヤッコと混泳させるのであれば、シマヤッコなどの繊細な種は避け、ココスピグミーエンゼルやフレームバック系の強健な種を選ぶようにした方がよいでしょう。

ほかの魚との混泳

▲サザナミヤッコとトカラベラの組み合わせは避けたほうがよいかも

サザナミヤッコは魚食性ではなく、よほど小さい魚でない限り食べることはほとんどありません。ただしハナゴイや遊泳性ハゼなど臆病すぎる魚は岩陰などに引きこもって死んでしまうこともありますので、混泳は避けましょう。

混泳させるのであればスズメダイやベラなどのような、小さくても比較的タフな種類がおすすめです。ニセモチノウオやキツネベラの仲間は混泳相手がデカくても怯えることはありません。コガネキュウセンやトカラベラ、ツユベラなども丈夫ですが、これらのベラは夜間砂に潜る習性があるため、砂を敷いた水槽で飼育するようにします。ただし、大型ヤッコは排せつ物の量が多く、管理を楽にするために砂は敷かないほうがよい、ということを考えると、砂に潜る習性のあるベラの仲間との混泳はあまりおすすめできません。

サンゴ・無脊椎動物との相性

大型ヤッコはLPSをつつくことが多いのでLPS水槽には入れてはいけません。また大型ヤッコは大食漢で排せつ物の量も多く、硝酸塩が蓄積しやすいので、そういう意味でもサンゴとの飼育には向いていません。またカイメンの仲間などはヤッコの大好物で捕食してしまうおそれがあります。

甲殻類は種類によっては餌になってしまうおそれもありますが、スカンクシュリンプ、ホワイトソックスならば問題はないでしょう。オトヒメエビはサザナミヤッコが幼魚であれば襲ってしまいますが、成魚であれば問題はありません。

まとめ

  • 大型ヤッコの一種であり大型水槽が必要になる
  • 幼魚と成魚で模様が大きく変化する
  • 「三本線」と呼ばれる極小サイズの個体は飼育が難しい
  • 成魚は120cm水槽がいる。混泳なら180cm水槽が欲しい
  • 上部ろ過槽かオーバーフローが現実的な選択肢
  • 水温は25℃をキープしたい
  • サンゴ岩やライブロックで隠れ家をつくるが遊泳スペースも確保したい
  • 砂はしかないほうが管理しやすい
  • 幼魚は冷凍餌はよく食うが配合飼料に慣れさせたほうがよい
  • 配合飼料は複数種与えたほうがよい
  • 常にきれいな水で飼い水温も安定させて病気を防ぐ
  • よく販売されているが状態はよく観察したい
  • 大型ヤッコとの混泳は種によっては難しいことも
  • サンゴはつついたりしてしまうのでおすすめできない
  • クリーナーシュリンプとの飼育はおおむね問題ない

協力

コーラルタウン

HN.クマノミさん

2020.11.13 (公開 2020.11.13) 水槽・器具

冬の水温対策~水槽を石油ストーブで温めてはいけない理由

マリンアクアリウムで飼育される魚のほとんどが熱帯性の海水魚です。そのため、そのままでは日本の冬の寒さに耐えられず死んでしまいますので、冬には水槽を保温してあげる必要があります。しかし石油ストーブなどで水槽を温めてはいけません。今回はなぜ水槽を温めるときに石油ストーブを使用してはいけないのか、どうやって水槽を温めるとよいのかご紹介します。

石油ストーブで水槽をあたためてはいけない理由

一酸化炭素の発生

水槽を温めるものとしてはいろいろな方法が考えられます。ヒーターの使用、水槽のある部屋をエアコンで温める、石油ストーブを使うなどの方法です。しかし、石油ストーブで水槽をあたためることはやめたほうがよいでしょう。

石油ストーブは石油を燃焼させてあたためます。しかし、燃焼させるとどうしても一酸化炭素が出てしまいます。一酸化炭素はヒトにも有毒であり、石油ストーブを使用するときに「換気しましょう」と、よくいわれるのはこのためです。そして一酸化炭素は海水中のpHも下げてしまうのです。ですから石油ストーブを水槽のそばにおいて水槽をあたためてはいけません。

ですが私たちアクアリストが「あまりにも寒いため石油ストーブをつけたい」、ということもあるでしょう。その時はしっかり換気をすることが重要です。しかしどうしてもpHは下がってしまいます。pHは定期的に測定し、減っていたら水かえやpH上昇の添加剤を使用しますが、石油ストーブよりも室内のエアコンであたためたほうがよいかもしれません。

水槽の劣化

アクリル水槽であれば、一酸化炭素が発生するだけでなく石油ストーブからの熱により劣化してしまうこともあります。そのため水槽のそばで石油ストーブを使用しないようにしましょう。

水槽の保温方法

観賞魚用ヒーターであたためる

▲原則的に水槽はヒーターであたためるようにしたい

もっとも一般的な方法です。観賞魚用ヒーター(以下ヒーター)は、大きく分けて2種類あり、サーモスタットと一緒に使って温度調整を行うものと、オートヒーターと呼ばれるサーモスタット不要のものがあります。オートヒーターはサーモスタットが不要でコストを抑えられるなどのメリットもありますが、温度調節のできるタイプのほうが何かと便利です。タツノオトシゴやヨウジウオ、イソギンチャクなどを飼育するのであれば、やけどを防ぐために専用のカバーも必要です。同様にアクリル水槽での使用も注意が必要です。

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エアコンを使用する

水槽が複数あるというのならエアコンを使用して部屋ごとあたためるのもよいでしょう。エアコンつけっぱなしというのはお金がかかるように思えますが、それぞれの水槽にヒーターをつけるよりもずっと安上がりになることがあります。観賞魚店であればヒーターを使用せずエアコンだけで対応するということもあります。

欠点としては四六時中部屋にヒーターをつけておく必要があるため、ひとつひとつの水槽にヒーターをつけるときと同様お金がかかるということです。人がいようがいまいがつけておく必要があるので家族の理解も得られにくいです。また、ヒーターを使用している場合でも夜の冷え込み対策として深夜の時間帯のみエアコンをつけておくということもあります。そうすればより安定して水温を維持することができます。

断熱材の使用

断熱材として、スチレンボードなどの断熱材を貼っている人も多いようです。また発砲スチロールを貼っても効果が得られるようです。実際に水槽と水槽台の間に敷いたり、ガラス面などに貼ったりするなどして保温するのです。ただしこれはあらかじめ水温を維持するためのヒーターを有していることが前提になります。2011年の東日本大震災とそれによる電力不足で計画停電が行われた際にはこの方法で水槽の温度を維持していたアクアリストが多かったようです。

冬にもクーラーはつけておいたほうがよい

冬季の水槽でもクーラーはつけておいたほうがよいです。その理由としては何らかの原因で水槽が過度に温められたりする必要があるからです。そのとき冷やす手段がないと、敏感な魚は病気になってしまう可能性もあります。ですから冬であっても水槽用クーラーのスイッチは消さないようにしておきます。

なおヒーターの差し込み口がある水槽用クーラーが多く販売されていますが、そのような差し込み口を使用するなら冬期であっても絶対に電源を切ってはいけません。テコ(エムエムシー企画)が輸入販売しているTK500以上の機種ではヒーター内臓のものが市販されていますが、このような機種でも同様です。

このほかの注意点としては冬季にはヒーターによる水の蒸発が夏場よりも激しいということです。水が蒸発することによって水位が低下してしまい、サーモスタットのセンサーが露出して魚やサンゴが全滅したという話もききます。我が家もヒーターのセンサー部が水面から露出してしまうという出来事がありましたが、これもクーラーが稼働していたので事なきをえました。

ストーブであたためてはいけない理由まとめ

  • 一酸化炭素が発生しpHが下がる
  • アクリル水槽であれば不具合も起こりやすい
  • アクアリストが室内でストーブをつけるなら換気はしっかりと
  • 水槽は水槽用ヒーターであたためるのが基本
  • 水槽の数が多いならエアコンであたためる方法もあり
  • 断熱材を使うと水槽の保温効果が高まる
  • 冬でも水槽用クーラーのスイッチは消さないようにする
  • 蒸発による水位の低下には要注意

2020.11.10 (公開 2020.11.10) サンゴ図鑑

イソギンチャクの飼育は難しいの?初心者用イソギンチャク飼育ガイド

「ニモ」などの映画や、ダイビングで見たカクレクマノミとイソギンチャクの共生するようすを水槽で再現したいと思っている初心者アクアリストも多いでしょう。しかし、イソギンチャクは残念ながら初心者には難しい生き物です。今回はイソギンチャクの飼育がなぜ難しいのか、どのようにすればうまく飼えるのか、どの種類が飼育しやすいのかなど、イソギンチャクの仲間をはじめて飼育するときの注意点をご紹介します。なお、この記事は「ある程度サンゴ飼育にチャレンジして成功した方がイソギンチャクを飼育する」ということを前提に作成しております。

イソギンチャクとは

イソギンチャクは刺胞動物門・花虫綱・イソギンチャク目に含まれる動物の総称です。一見植物にも見えるのですが、サンゴやクラゲなどと同様に刺胞をもつ刺胞動物門というグループに含まれています。英語ではSea anemone(海のアネモネ)と呼ばれており、イソギンチャクと共生するクマノミの仲間もAnemonefishと呼ばれています。イソギンチャク目に含まれる動物は磯でごく普通にみられるミドリイソギンチャクやタテジマイソギンチャク、時に大量発生し毒でサンゴを弱らせたりするセイタカイソギンチャク(通称カーリー)なども含まれますが、ここでは原則としてクマノミと共生するタイプのイソギンチャクの飼い方を中心に紹介します。

サンゴとの違い

▲イソギンチャクと間違えられやすいオオナガレハナサンゴ

イソギンチャクはよくサンゴと間違えられることがありますが、大きな違いがあります。それは、イソギンチャクには「足」があり、水槽内を動き回るということです。サンゴは一部の種をのぞき移動することはできないのですが、イソギンチャクは筋肉質の体をもち、水槽内を歩き回ります。そしてこの「動く」習性がイソギンチャクの飼育を難しいものにしている理由の一つです。

またサンゴは体に骨格を有していますが(ソフトコーラルにも骨片がある)、イソギンチャクは骨格のない筋肉のかたまりです。ただしサンゴとして販売されているディスクコーラルやヘアリーディスクなどはイソギンチャクに近い仲間とされています。マメスナギンチャクはスナギンチャク目の生物でまた別の仲間です。なおイソギンチャクの仲間は六放サンゴ亜綱で、トサカやウミアザミ、ウミヅタなど多くのソフトコーラルが含まれる八放サンゴ亜綱とは異なった分類群です。

サンゴ水槽でイソギンチャクを飼育しているアクアリストもいますが、後述の理由からあまりおすすめしません。

イソギンチャクの飼育が難しいといわれる理由

よく歩く

イソギンチャク飼育のうえで最大の問題が「よく歩く」ということです。水面ギリギリにあるオーバーフローのスリットに詰まって水をあふれさせたり、ストレーナーに詰まって水の循環を止めてしまったり、水中ポンプのスリットに挟まれポンプのペラーでちぎれたりと、イソギンチャク飼育で起こりやすいトラブルの多くが、イソギンチャクが歩くことに起因しているともいえます。とくにサンゴイソギンチャクとセンジュイソギンチャクは非常によく歩き回るため注意が必要です。また動けないサンゴ、とくにハードコーラルの上に乗っかり毒でダメージを与えることもあります。よく歩くイソギンチャクはサンゴ水槽での飼育はまったく不向きです。

きれいな水を好むが水を汚しやすい

イソギンチャクは粘液を出したりすることもあって、水を汚しやすい生き物といえます。そのため水質に気をつかう必要があります。しっかりとしたろ過装置を使ったり、プロテインスキマーを使用することは重要です。そして水を汚しやすいくせに、水質に関してはきれいな海水をもとめるものが多くいます。とくにハタゴイソギンチャクは清浄な海水を必要とし、それが飼育しにくい理由のひとつとなっています。そのほかのイソギンチャクもできるだけきれいな海水で飼育してあげたいものです。また弱ってしまったら早いうちに隔離しなければなりません。死んでしまうと水質を著しく悪化させ崩壊の危険もあるからです。

強めの光が必要

イソギンチャクは餌のほか、光からもエネルギーを得ています。そのためある程度強めの光が必要となります。ただ光は強ければ強いほどよい、ということはなく、あまりに光が強いと色が飛んでしまうこともあります。最近の水槽用照明としてはLEDが主流ですが、スポット的なものが直接当たるようだとイソギンチャクにとっては明るくなりすぎることもあります。そうなってしまうと色が抜けて弱ってしまうことがありますので、イソギンチャクと照明の適切な位置関係を見つけたいところです。

魚を食べてしまう

ギンポやハゼの仲間は捕食されやすい

これも大きな問題です。イソギンチャクは刺胞に毒があり、触れた魚を麻痺させて食べてしまうのです。そのため、クマノミ以外の魚との飼育には向かず、イソギンチャクの種類によってはある程度大きなヤッコなども食べてしまうことがあります。ですからクマノミ以外にも魚がいろいろ入っている水槽にイソギンチャクはいれないほうがよいといえます。特にハゼの仲間やカエルウオ、ネズッポ、タツノオトシゴなどは注意が必要です。

輸送でダメージを受けていることがある

▲色が抜けてしまったイソギンチャク

イソギンチャクの仲間は採集のとき岩などからはがすときにダメージを受けてしまうことがあります。とくにハタゴイソギンチャクなどは採集や輸送によってダメージを受けやすいので、選ぶときは慎重にしたいものです。また、色が飛んでいるものは強い光にさらされるなどして褐虫藻が抜けている可能性もあるので選ばないほうがよいでしょう。ベテランであれば褐虫藻が抜けつつあるようなものでも回復させられますが、イソギンチャク飼育初心者であるならこういうのは選ばないほうが無難です。また、ぐったりしていて触手がだらん、と下がってしまっているものも購入するべきではありません。

イソギンチャク飼育難易度

クマノミの仲間と共生するタイプのイソギンチャクはいろいろな種類が知られていますが、種によって飼育難易度は異なります。今回は各イソギンチャクの飼育方法について、コーラルタウン店主の小沼さん(町長さん)にお伺いしました。

サンゴイソギンチャク(比較的飼いやすい)

サンゴイソギンチャクは温帯でも見ることができるイソギンチャクです。おもにクマノミやハマクマノミ、スパインチークアネモネフィッシュが共生しますが、飼育下ではほかの種類のクマノミとも共生します。この水槽ではハナビラクマノミと共生していました。カクレクマノミも共生することがあります。熱帯だけでなく温帯域の磯でも見ることができます。

「サンゴイソギンチャクはイソギンチャク初心者の方にはいいかもしれないですね、難点があって、よく動くけど。光もちょっと弱めでいいと思います。ただカクレクマノミはなかなか入りにくいですね」(町長さん)

タマイタダキイソギンチャク(比較的飼いやすい)

タマイタダキイソギンチャクはサンゴイソギンチャクによく似ていますが、先端が丸いのが特徴です。習性などもサンゴイソギンチャクとあまり変わらず、よく動くのでその対策さえしてやれば初心者にも飼育可能と思われます。クマノミやハマクマノミなどがよく共生しています。

「タマイタダキイソギンチャクはサンゴイソギンチャクとあまり変わらないですね。光も強くなくていいし、丈夫です。サンゴイソギンチャクと混同されて来るのであまり来ないですね」(町長さん)

ロングテンタクルアネモネ(比較的飼いやすい)

その名の通り長い触手を持つイソギンチャクで、「LT」と略されていることもあります。多くのクマノミの仲間と共生させることができ、飼育下では写真のようにカクレクマノミも入ることがあります。写真のような褐色のものから濃いグリーン、パープルまでカラーパターンがいくつかありますので好みのものを購入するとよいのですが透明感があるものは避けたほうがよいでしょう。本種は砂に潜るため、サンゴ砂を敷いてあげたいものです。

「難易度的にはタマイタダキイソギンチャクやサンゴイソギンチャクとあまりかわりませんね。小さい個体さえ手に入れば、初心者にもおすすめだと思います。砂を掘ってすみ水槽の中だと底のガラスにくっついたりしてますね。一度落ち着けばほかのイソギンチャクと比べるとあまり移動もしませんのでそこも初心者によいところといえそうです」(町長さん)

「シライトイソギンチャク」(種類や状態によって難易度は異なる)

シライトイソギンチャクの名前で売られていた(キッカイソギンチャク?)

「シライトイソギンチャク」と呼ばれて販売されているイソギンチャクには複数のタイプがあり、それぞれ種類も飼育難易度も異なります。そのため一概には説明しにくいところもあるようです。本家シライトイソギンチャクだけでなく、キッカイソギンチャクやチクビイソギンチャクなどの種類も「シライト」として販売されることがあります。見分けが難しいため同一の名称で販売されておりますが、飼育難易度が異なっており、それがシライトイソギンチャク=難しいという認識につながっているのかもしれません。

「シライトイソギンチャクっていってもいろいろあって、よくお店でも売ってる真っ白なのは色が抜けているからハタゴイソギンチャク以上に難しい。褐色で先端ピンクの、ウチにあるようなタイプのイソギンチャクはそれほど難しくないですね。種類や個体により光にも気をつかうべきかもしれません」(町長さん)

センジュイソギンチャク(やや難しい)

センジュイソギンチャクはサンゴ礁に生息する大型のイソギンチャクで、メータークラスになることもあります。カクレクマノミもよく共生しています。しかし、イソギンチャクのなかでも飼育は難しいとされています。

「センジュイソギンチャクは難しいですね〜。やっぱり、よく動きますからね。要求する光についてもハタゴイソギンチャクほどではないですが、ある程度強い光がいります。状態もハタゴイソギンチャクよりはよいものが多いんだけど、まあ、でっかいですよ」(町長さん)

ハタゴイソギンチャク(難しい)

ハタゴイソギンチャクは人気のカクレクマノミがよく共生するため、もっとも人気の高いイソギンチャクのひとつとされます。その一方で「ハタゴイソギンチャクは難しい」というのは多くのアクアリストにとって共通の認識、となっているところがあります。しかしながら町長さんはこうおっしゃります。

「ハタゴイソギンチャクは難しいといわれるのですが、そのまえに状態が悪い個体が多いように思います。状態のよい個体さえ購入できれば、飼育することができます。照明は強いのがいいですね、調光できるのがいいかと、水質もきれいな海水が望ましいですね。あまり動いて移動するような種類ではないです」(町長さん)

一方刺胞の毒性が強く、ほかの魚を捕食してしまいますので注意しなければなりません。またヒトに対しても有毒であり、素手で触れないように取り扱うべきイソギンチャクといえます。

イボハタゴイソギンチャク(やや難しい)

イボハタゴイソギンチャクはハタゴイソギンチャクによく似ている種類ですが、触手がやや短めです。上の写真の手前がイボハタゴイソギンチャク、奥がハタゴイソギンチャクで、触手の長さを比べたら違いがわかりやすいでしょう。主にトウアカクマノミなどが共生するイソギンチャクで、カクレクマノミは時間をかければ入ってくれることがあります。カラーバリエーションが豊富で、極めて美しいグリーンや写真のようなパープルのものも見られますが、強い毒をもっているため注意が必要です。

「ハタゴイソギンチャクと飼育方法は似ているのですが、ハタゴイソギンチャクよりは飼いやすいですね。比較的よい状態で来るのが多いからかもしれないですね。ただ毒性が非常に強いので注意しなければなりません」(町長さん)

イソギンチャクの飼育に適した機材

ここでは難しいといわれるイソギンチャクを上手く飼育するための機材について考えてみます。写真はコーラルタウンに設置されているイソギンチャク飼育水槽。複数のロングテンタクルアネモネをメインに、ウミキノコ、各種トサカ、ツツウミヅタを入れています。魚はカクレクマノミ複数とテンジクダイ科のマンジュウイシモチ2匹、マガキガイ、各種コケ取り貝です。

水槽

できるだけ安定した環境で飼育したい生物ですので、水槽も大きめのほうが当然ながら有利になります。写真の水槽は60cm水槽で、オーバーフロー水槽ではない単体の水槽です。写真からもわかるようにイソギンチャクの種類によっては60cm規格水槽でも飼育できるでしょうが、やや小さいため初心者には不適かもしれません。また、イソギンチャクが大きく広がった状態をイメージし、触手をのびのびと広げられるような広い水槽のほうが飼育しやすいでしょう。

オーバーフロー水槽での注意

飼育がやや難しいイソギンチャクを上手く飼育するのには水量が豊富で安定したオーバーフロー水槽での飼育が最適!と思われがちなのですが、じつは大きな落とし穴というのがあります。というのはよい場所をもとめて歩きまわるということです。歩き回っているうちにオーバーフロー水槽のフロー管に詰まってしまうなどのトラブルが起こることもあります。そうなると水があふれてしまうこともあります。カクレクマノミが入るセンジュイソギンチャクは非常によく歩き回りこのような事故が起こりやすく、初心者向けともいわれるサンゴイソギンチャクも同様に歩き回ったりしますので、気をつけなければなりません。

ろ過槽

ろ過槽は外掛け、外部、上部、底面などいろいろありますが、この水槽は外部ろ過槽のみです。水の吸い込み口であるストレーナーにはスポンジがしてあります。これはイソギンチャクがストレーナーに詰まったというトラブルがよく起こるためです。スポンジをつけ、さらに岩組みで隠すことができればより完璧でしょう。以前は底面ろ過槽が吸い込み口がなくイソギンチャクに適しているとされましたが、ロングテンタクルなどが詰まったり、掃除が面倒であることから最近はあまり見なくなりました。

プロテインスキマー

イソギンチャクは水を汚しやすいという特徴があります。そのためプロテインスキマーが欲しいところです。H&SのHS850や各社のコーンスキマーはスキミング能力が高いのですが、オーバーフロー水槽以外では使えないというデメリットもあります。最近はオーバーフロー水槽以外でも水槽に引っ掛けるタイプのプロテインスキマー(ゼンスイのQQ1など)が市販されていますのでそれを使うのもよいでしょう。引っ掛けるタイプのプロテインスキマーといえばエアーリフト式を思い浮かべるアクアリストも多いようですが、エアーリフト式のスキマーはパワーが弱いのでおすすめできません。上記の60cm水槽ではQQ1を使用していました。

水流

水流も欲しいところですが、水中ポンプのスリットにイソギンチャクの体が挟まり、ポンプのプロペラでイソギンチャクが傷ついたりすることもあります。そのためよく動くタイプのイソギンチャクにはおすすめしません。この水槽では外部ろ過槽、プロテインスキマーからの水流のほか、サーフェススキマー(水表面のごみを取る装置)の一種であるエーハイムスキマーからの水流もあてています。

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照明

照明については種類も多いので選ぶのが難しいです。海水魚店による「こだわり」もあるということで、照明については海水魚店に相談してみるべきかもしれません。なお上記の水槽ではゼンスイ製のLEDライト「ナノレビル ブルー&ホワイト」を使用しています。強い光を好むハタゴイソギンチャクはこれだけだと難しいかもしれませんが、あまり強い光のいらないロングテンタクルであればこれでも十分といえそうです。

水温

水温は25℃前後で問題ないでしょう。それ以上の高水温にも耐えられる種はいます。特に浅場のイソギンチャクは高めの水温への耐性が強いようですが、高すぎると水が悪くなりやすいので注意します。ヒーターはそのまま設置するとイソギンチャクがやけどしてしまうことがありますので、ライブロックやサンゴ岩を組んでヒーターを隠すか、オーバーフロー水槽で飼育したいところですが、先述したようにオーバーフロー水槽での飼育には注意が必要なところもあるので注意しましょう。

ライブロックとサンゴ岩

海でのイソギンチャクは岩にくっついていることがほとんどです。ハタゴイソギンチャクも砂の上にポツンと置いてあるように見えますが、実際には岩などにしっかりと付着しています。ロングテンタクルアネモネも砂にただ埋もれているだけでなく、砂の中の岩についているようです。またストレーナーやヒーターなど、イソギンチャクに近くに来られるとまずいものを隠したりするときにも使います。

底砂

イソギンチャクの仲間には砂地にも見られます。ハタゴイソギンチャクなどは砂中の岩などにくっついていることが多く、水槽でもできるだけそのような生息環境を再現してあげたいところです。底砂はパウダー~やや粗目の砂を均一に引くとよいでしょう。

餌と添加剤

ここであげたイソギンチャクは褐虫藻を共生させており、光だけでも飼育は不可ではないのですが、たまに餌を与えるとよいでしょう。専用のアネモネペレットが英国のバイタリスから販売されています。日本においてもエムエムシー企画レッドシー事業部から販売されていますので入手は難しくはないでしょう。やわらかく消化しやすいのでイソギンチャクに最適です。なお、イソギンチャクのほかにもハナガタサンゴやオオナガレハナサンゴといった、捕食性の強いLPSにも最適なフードです。

ただし食べないときやイソギンチャクの調子が悪そうなときは消化しやすい生の甘エビなどを与えたほうがよいかもしれません。添加剤はカルシウム、ストロンチウム、マグネシウム、ヨウ素、微量元素、炭酸塩など。つまりサンゴ飼育と同様のものがいります。

イソギンチャク飼育まとめ

  • イソギンチャクの飼育は初心者には難しい
  • 骨がなく筋肉質の足で歩き回りトラブルの原因となりやすい
  • オーバーフローパイプに詰まって水をあふれさせたりサンゴにダメージを与えることも
  • 足や体の一部がポンプのプロペラなどでちぎれることも
  • 綺麗な水を好むが水を汚しやすい
  • 種類によっては強い光が必要
  • 魚を食べてしまうこともあるのでハゼやカエルウオなどは避けたい
  • 白っぽくなっているものは購入しないほうがよい
  • ロングテンタクルアネモネ、サンゴイソギンチャク、タマイタダキは飼いやすい
  • シライトイソギンチャクは種類や状態による
  • センジュイソギンチャクはよく動きあまり初心者向けではない
  • ハタゴイソゴンチャクやイボハタゴイソギンチャクは状態次第だが難しい
  • イソギンチャクが広がるのをイメージして大きめの水槽で飼う
  • 外部ろ過槽などがよいがストレーナーはスポンジでふさいでおきたい
  • 外部ろ過槽を使うならプロテインスキマーは欲しい
  • 好む照明はイソギンチャクの種類によって異なる
  • 水温は25℃をキープしておく
  • ライブロックだけでなく種類によっては砂も重要
  • 餌も与えるのが望ましい
  • 添加剤はサンゴと同様なものが必要

2020.11.02 (公開 2020.11.02) 海水魚図鑑

大型ヤッコの幼魚を小型水槽で飼育することはできるのか

大型ヤッコは全長30cmをこえる種類も多いのですが、幼魚と成魚では色彩や模様が大きく異なるものが多く、育てる楽しみもあります。この大型ヤッコの幼魚を60cm水槽で育てているアクアリストも多いのですが、必ず大型水槽が必要になるなど、いろいろ注意しなければならないポイントもあります。今回は60cmくらいの手ごろな大きさの水槽で大型ヤッコの幼魚を飼育するメリットとデメリット、注意点をご紹介します。

大型ヤッコの幼魚

▲タテジマキンチャクダイの幼魚。通称ウズマキ

大型ヤッコはサザナミヤッコやタテジマキンチャクダイなどのサザナミヤッコ属(通称ポマカン)と、クイーンエンゼルやパッサーエンゼルなどのホラカンタス属の魚の総称です。この仲間は幼魚と成魚では見た目が大きく異なり、幼魚も成魚も魅力的な色彩をしています。30cmをこえる種類が多く、いずれの種類も、うまく飼育するのには120cm以上の大型水槽が必要になりますが、育つ様子を観察したり、大型ヤッコ同士の混泳は楽しいものです。

混泳注意

▲パッサーエンゼルは大きく育つと気が強くなりやすい

しかし大型ヤッコのなかには、イナズマヤッコやロックビューティー(ヌリワケヤッコ)のように成魚サイズが小さくて臆病なものがいます。このような種類は大型ヤッコ同士の混泳はさせないほうが賢明でしょう。葛西臨海公園水族園やうみたまごといった水族館の大型水槽ではロックビューティーとクイーンエンゼルの混泳を見せていますが、狭い家庭水槽では避けたほうがよい組み合わせといえるかもしれません。大体強いのがタテジマキンチャクダイ、マクロスス、サザナミヤッコ、アデヤッコ、パッサーエンゼルなどですが、個体差もあります。

大型ヤッコの幼魚を60cm水槽で飼うメリット

大型ヤッコの成魚は30cmを超え、家庭の水槽で飼える海水魚としては大きめに育ちます。そのため60cmほどの水槽では終生飼育不可で、90cmでも困難、120cm水槽以上の水槽で飼育すべきものです。成長は早いものが多く、ぐんぐん育ちますので「幼魚のうちは小型水槽で飼って、成長につれて大きな水槽にしていこう」という考えではいけません。最初から大きな水槽で飼育したい種といえます。小さいうちから育てると何年も生きてイヌやネコ以上に長生きすることもあります。その点でも、長く付き合えるような飼育方法を考えるべきでしょう。

ただし、大型ヤッコの成魚が飼育できるレベルの水槽を有したうえで、60cm水槽で大型ヤッコの幼魚を飼うということは否定しません。60cm水槽で大型ヤッコの幼魚を飼うのには、いくつかのメリットもあるからです。ただし、勘違いしてほしくないのは、これらはあくまでも「大型水槽を用意できる、終生飼育できると約束できる方」に限っての話です。

幼魚のみのスペースを作ることができる

▲磯で採集したサザナミヤッコの稚魚。通称「三本線」

大型ヤッコの幼魚を購入(または採集)し、そのまま水槽に入れれば先住の縄張りを主張する大型ヤッコの存在がプレッシャーとなりストレスで死んでしまうか、餌がいきわたらずに餓死してしまうというパターンが多いように思います。一方60cm水槽を別途用意するのであれば、幼魚のための専用スペースを作ってあげられます。

水槽には飾りサンゴやライブロックを入れてあげましょう。そうすると大型ヤッコの幼魚が落ち着くからです(後述)。サンゴ、とくにハードコーラルやケヤリムシ、ウミアザミなどは食べてしまうことがありますので、あまり入れないほうが賢明でしょう。

なおこのような水槽を立ち上げるとほかの魚を入れたくなりますが、あまりほかの魚とは飼育しないほうがよいでしょう。同じくらいの大きさのヤッコであっても小型ヤッコなどは成魚であるため、気が強いからです。ほかの魚と飼育するのであればおとなしい小型のカエルウオか、ハゼの仲間になります。クマノミやスズメダイなどは縄張りをアピールするのでよくないです。またおとなしい種類との混泳であってもいわゆる「三本線」のような稚魚はかなり臆病で餌付きもよくないため、ほかの魚を入れるのは望ましくないし、飼育も難しいといえます。また幼魚は餌付きやすい反面体力もないため十分気をつかってあげましょう。

餌付けを行うこともできる

アサリに餌付かせてからほかのヤッコと混泳させるようにしたい

幼魚の場合60cm水槽で餌付けを行うこともできます。というか、ここで配合飼料に慣らしてからメイン水槽へと移すようにします。ヤッコの仲間は飼育をはじめて最初のうちはアサリなどしか食べない個体も多く、そのような個体に混泳水槽でアサリをあげていてもほかの魚が我先に飛びついてしまい、新入りの魚がアサリを食べられないということも起こりうるからです。最初はアサリを食べたら冷凍餌、配合飼料という風に切り替えていきますが、食べ残しは水質を悪化させますので早いうちに取り除きたいものです。

大型ヤッコの幼魚を60cm水槽で飼うときのデメリットと注意点

終生飼育ができない

まずこの点があげられます。海水魚飼育は終生飼育が基本、のはずなのですが、これを忘れてしまっているというアクアリストもいるようです。そうなってしまうと海に捨てられてしまうおそれもあり、放流された魚は冬季の寒さに耐えられず死んでしまうことも多いのですが、生き残って場合によっては在来生物にダメージを与えたり、アクアリストのモラル低下につながってしまうこともあるからです。

成長すると60cm水槽ではせまい

▲鰭がよく伸びたセダカヤッコ(マクロスス)

これも上記と同様の理由に近いですが、ヤッコの遊泳のためのスペースがなくなってしまうため問題が起こりやすくなります。何かに驚いて暴れて体表にスレ傷がつくこともあります。また、マクロススやクイーンエンゼル、アフリカヌスなど背鰭や臀鰭(アフリカヌスでは尾鰭も)が長くのびるような種類は小さいうちからある程度の大きさの水槽で飼育したほうがよくのび格好よくなるとされています。タテジマキンチャクダイやアデヤッコ、ロクセンヤッコは丸かったり伸びても短いのであまり変わらないかもしれませんが、遊泳スペースに余裕を持たせた大型水槽のほうが明らかに健康に育ってくれるでしょう。また飾りは必要ですが、その飾りも遊泳スペースを阻害しないように置き方を工夫したいものです。

水質が安定しにくい

300リットル近くの水が入る120cmの大型水槽にくらべて50リットル台の60cm水槽は水量がどうしても少なくなってしまいます。そのため大型水槽ほどは水質が安定しにくいというデメリットがあります。水を汚しやすいアサリなどを餌にすることも多いため、しっかりと水かえを行い、コンディションを安定させる必要があるのです。

大型ヤッコの幼魚を60cm水槽で飼うときの器具

ろ過システム

大型水槽と比べると簡易的な60cm水槽であってもしっかりしたシステムを考えておくべきです。ろ過槽は外掛けろ過槽はあまりよくなく、上部ろ過槽、もしくは上部ろ過槽をメインに外部ろ過槽を補助に使うのが理想といえます。これは前述のように、60cm水槽で餌付けをすることも多く、特に最初はアサリを餌に与えることが多いのですが、アサリの汁や残り餌は水を汚しやすいのでしっかりしたろ過槽を組んでおく必要があるからです。そのため外掛けろ過槽や、外部ろ過槽(の単独使用)ではろ過能力が不足しやすいのでおすすめできません。ろ過の補助、もしくは酸素供給という理由で外掛けのプロテインスキマーをつけてもよいのですが、上部ろ過槽との相性はあまりよくありません(水槽上部のスペースがせまくなる)。

水温と病気対策

水温はクーラーやヒーターを用いて常に一定を保たないといけません。そうしないと体調を崩して病気になってしまうこともあります。とくに小型個体は体力がないので病気になったら死んでしまうことも多いです。殺菌灯で病気を防ぐというのも重要なのですが、それ以上に安定した環境で飼育することのほうがずっと大事だといえます。

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底砂と隠れ家

底砂は敷かないほうがよいでしょう。これはアサリなどを入れておくとどうしても餌が食い散らかされてしまうからです。そしてその餌を吸い取る際には底砂がないと掃除もしやすいのです。一方隠れ家は重要です。ライブロックでなくても飾りサンゴやサンゴ岩、殺風景ですが塩ビパイプなどでもかまいません。とにかくヤッコの幼魚が隠れられる場所を作ってあげるようにしたいものです。

大型ヤッコの幼魚を60cm水槽で飼育する―まとめ

  • 大型ヤッコは全長30cmを超えるため小型水槽での終生飼育は不可
  • 幼魚のうちは小型水槽で飼い、成長につれ水槽買い替え、というのでは間に合わない
  • 60cmで飼育するメリットは幼魚専用の空間をつくることができるという点
  • その幼魚専用の空間で餌付けるようにしたい
  • 60cm水槽で長いこと飼っていると鰭がうまく伸びないことも
  • 小型水槽では大型水槽よりも水質が安定しにくい
  • 上部ろ過などしっかりしたろ過槽が必要
  • 水温もヒーターとクーラーで一定に保ちたい
  • 底砂は敷かないほうが掃除しやすいのでおすすめ
  • ライブロックやサンゴ岩などで小型ヤッコの休息場所をつくる

2020.10.30 (公開 2020.10.29) 海水魚図鑑

リュウキュウイシモチの飼育方法~赤い体が美しいが飼育は難しい

リュウキュウイシモチは赤いガラス細工のような、美しい魚です。実際に本種は繊細な魚であり、傷つきやすいので初心者にはやや難しい魚といえます。夜行性で昼間はライブロックの中などに隠れていますが、夜間には積極的に泳ぎ回ります。今回はこのリュウキュウイシモチの飼育方法をご紹介します。

標準和名 リュウキュウイシモチ
学名 Apogon indicus Greenfield, 2001
英名 Indian cardinalfish
分類 条鰭綱・スズキ目・スズキ亜目・テンジクダイ科・テンジクダイ亜科・コミナトテンジクダイ属
全長 4cm
飼育難易度 ★★★☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッドS(最初は冷凍餌でないと食べないことも)
温度 25℃
水槽 35cm~
混泳 非常に繊細なため混泳には向かないことも多い
サンゴとの飼育 サンゴとの飼育はおおむね問題ないがイソギンチャクなどはだめ

リュウキュウイシモチって、どんな魚?

▲リュウキュウイシモチ

リュウキュウイシモチはテンジクダイ科コミナトテンジクダイ属の魚で、半透明の赤い体が魅力的な魚です。この仲間には何種類かいますが、すべて赤い体をしており、見分けるのが難しいところがあります。本種はやや体高が高く、背鰭の棘が伸びていない、胸鰭の軟条数が13本、などの特徴があり、ほかの近縁種と見分けられます。学名は従来Apogon erythrinus という学名が使われていましたが、2001年にリュウキュウイシモチに似た魚の分類学的再検討が行われリュウキュウイシモチの学名はA. indicusとなりました。A. erythrinusはハワイ諸島特産とされますが、リュウキュウイシモチはインドー太平洋域に分布し、学名は「インドの」を意味し、は本種がこのコンプレックス(複合種群)で唯一インド洋にもいることにちなむようです。タイプ標本もインド洋で採集されています。ちなみに「リュウキュウ」と種の標準和名についていますが日本では八丈島や高知県にも生息しています。

コミナトテンジクダイ属とは

▲コミナトテンジクダイ属のヤミテンジクダイ

コミナトテンジクダイ属はテンジクダイ科でも大きなグループで、およそ50種類以上が知られています。大きくても3cmくらいのものから、全長15cmくらいに達する大型種までいます。色は赤いものが多く、幼魚、種類によっては成魚でも透明感があるものがいます。また黒い斑点があったりするものもいますが、一部の種類をのぞき同定が難しいこともあります。分布域はひろく、テンジクダイ科としては三大洋すべてに複数種が分布している唯一の属といえます。もっとも古くから知られている地中海産の真っ赤なカーディナルフィッシュもこの属のものです。

従来Apogon属(旧テンジクダイ属)にはキンセンイシモチやネンブツダイ、イトヒキテンジクダイなど多くの種が入れられてきましたが、近年再検討がなされ、多数の属に分割されています。Apogon属は混乱を避けるためにコミナトテンジクダイ属という標準和名がつけられました。これについてはリンクもご参照ください。

リュウキュウイシモチ飼育に適した環境

▲実際にリュウキュウイシモチを飼育していた水槽

水槽

リュウキュウテンジクダイのような小型種をしっかり観察するのであれば、35cm以上の小型水槽が最適です。大体45cmくらいの水槽で飼うのに適しているでしょう。これらの水槽は初心者向けの水槽ではないのですが、リュウキュウイシモチ自体が初心者向けの魚とはいえないところがあります。

水質とろ過システム

リュウキュウイシモチはテンジクダイの仲間でも水質にややデリケートなところがあります。あまりよくない環境で飼育していると、赤い体が白っぽくなってしまうことがあります。きれいな水を維持するためにシステムにも注意しましょう。ろ過槽については外部ろ過槽と外掛けろ過槽の組み合わせなど、ある程度のろ過槽容量を確保しながら、酸欠になりにくい方法を考えなければなりません。サンゴには無害なためサンゴ飼育のためのベルリン水槽でも飼育することができますが。あまり複雑なレイアウトだどこへ行ったかわからなくなってしまうこともあり、注意が必要です。

水温

水温は25℃前後を保つようにします。もちろん、水温の変動が大きいと体調を崩しやすく、そこから病気になってしまうこともあるので、年中クーラーとヒーターで一定の温度を保つことが重要となります。とくにリュウキュウイシモチのようにややデリケートな魚を飼育するのであればなおさらです。写真の水槽ではヒーターを設置し、夏季は室内のエアコンで管理していましたが、一般家庭で飼育するならクーラーがあったほうがよいでしょう。

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隠れ家

臆病な魚なので、ライブロックなどで隠れ家を作ってあげましょう。

リュウキュウイシモチ飼育に適した餌

リュウキュウイシモチの飼育がやや難しいとされているところは、最初から配合飼料を食べない場合があるということです。多くの魚と同様に最初は粒餌で餌付かせますが、食べないときはホワイトシュリンプなどの冷凍餌を与えなければならないこともあります。慣れて配合飼料を食べるようになってもやせてしまうようなときには冷凍餌も併用して与え続けますが、水を汚しやすいのでこまめな水かえで対応したいところです。

リュウキュウイシモチをお迎えする

リュウキュウイシモチは購入のほか、採集することもできます。沖縄では浅い礁湖でも採集することができますが、九州以北では本種は浅瀬ではあまり見ません。そのため購入することが多くなるでしょう。

注意したいのはお店での扱いです。小さくて弱い魚なので網で掬わないで、必ずプラケースで掬ってもらうようにします。採集するときも同様です。網でリュウキュウイシモチを掬いますが、水から上げずに、プラケースを使用して水からあげるようにしましょう。また必ず沖縄のものを購入するようにします。フィリピンやインドネシアで採集されたものも入ってきますが、これらの産地のものはどうしても扱いが雑で、輸送時間も長くなりがちだからです。

購入するときは、体表に白い点がついていないか(テンジクダイ類は若干白点病になりやすいところがある)、体の一部が白くなっていないか、泳ぎ方はおかしくないか、体に赤いただれはないか、などの点をチェックしましょう。もちろん入荷直後の個体もいけません。

リュウキュウイシモチとほかの生き物との関係

ほかの魚との混泳

小さく臆病な魚なので、ほかの魚との混泳は難しいところがあります。混泳させるなら小型のハゼや小型のカエルウオなどしかありません。大きめの魚はいるだけでプレッシャーがかかりやすいのでやめましょう。

サンゴ・無脊椎動物との相性

サンゴとの相性はよいです。小型水槽ではサンゴの飼育が大型水槽よりも難しいですが、ある程度経験を積んだら小型水槽でソフトコーラルと飼育すると楽しいでしょう。ただしイソギンチャクの仲間は魚食性が強く一緒に飼育してはいけません(ディスクコーラルやスナギンチャクの仲間は問題なし)。一方甲殻類はリュウキュウイシモチを襲ってしまうことがあるのでやめましょう。

リュウキュウイシモチ飼育まとめ

  • 赤い体がきれいなテンジクダイの仲間
  • きれいだが小さく、やや飼育は難しいので初心者には不向き
  • 夜間は盛んに泳ぎ回る
  • 小型水槽での飼育に向く
  • 綺麗な水を好む。ろ過システムはしっかり。
  • 水温は25℃で安定した環境にすることも重要
  • 臆病なのでライブロックで隠れ家をつくりたい
  • 最初から配合飼料を食わないことも。ホワイトシュリンプなどを与えたい
  • 沖縄産の個体がよい。魚の体の様子や掬い方などもしっかりチェック
  • あまりほかの魚との飼育には向かない
  • 一般的なサンゴとは問題なく飼育できる

2020.10.28 (公開 2020.10.27) 水槽・器具

採集や水槽代わりに 海水魚飼育における「プラケース」の使い方


プラケースは昆虫や小動物、カメなどを飼育するのに重要なアイテムです。しかし、マリンアクアリウムではプラケースは小さく、海水魚やサンゴなどを飼育するのにはほとんど使われません。しかしながら飼育水槽以外の用途ではいろいろ使われます。今回はマリンアクアリウムにおけるプラケースの使い方をご紹介します。

プラケースとは

「プラスチックケース」の略で、文字通り透明なプラスチック製の容器です。昆虫などを飼育するためのもので、一般的には「虫かご」とも呼ばれています。ただし一般的に虫かごといえばプラケースでなくザルのようにスリット(溝)が一面についているタイプのものを指すことも多いのでここでは「プラケース」と称します。さすがにプラケースはあまりにも小さく、これで恒久的に海水魚を飼育するのには現実的ではないのですが、海水魚の飼育や採集に持っておくと便利なアイテムです。

プラケースの使い方

水槽の代わりに使う

▲エビの水合わせ

ある程度大きなプラケースであれば、採集した魚をその中に入れてみるのもよいでしょう。そのときに魚を横から眺めて観察したり、写真を撮ったりするのに使えます。一般的なガラス水槽などは磯へもっていくと落として割れたりヒビが入るなどして危険なので、アクリル板で小さな水槽を作ってもっていってもよいのですが、アクリル板で水槽をつくる手間がかかってしまいます。それならプラケースでも十分ということがいえます。また、魚やエビの水合わせをするのに横から観察できたり、場合によっては薬浴するのにも重宝するでしょう(ヒーターを使うときはしっかりカバーをつけましょう)。この用途で使用するならできるだけ大きなものをチョイスしなければなりません。

魚の隔離

▲プラケースで隔離しているアミキカイウツボ

採集へ行くと様々な魚が採集できますが、中には小魚を食べてしまう魚もいます。そのような魚はバケツの中に隔離ケースを浮かべておいて隔離しておきますが、この隔離ケースの代わりにプラケースを使用することもできます。プラケースのメリットとしては隔離ケースよりも広いスペースが確保できるという点が大きいといえます。

ただし、水は出入りしてしまうので、フグやハコフグ、ヌノサラシ、ウバウオなど、粘液毒を放出するような魚には向きません。またプラケースのサイズにもよりますがウツボやアナゴ、カサゴなど大きな魚の隔離にも向いていないところがあります。そして大きいバケツが必要ということもあげられます。小サイズでも大体20リットル以上の大きさのバケツに入れてあげたいところです。

また、水槽にマグネットなどを使用して、プラケースを水槽のガラス面や壁面にくっつけて隔離ケースとして使用することもできます。これにより小さな魚やカニなどを水槽内で育てることもできますが、水の通りが悪くなるという欠点もありますので、こまめな掃除が重要になってきます。また水中ポンプなども使って、プラケースのフタに開いているスリットから少し水が入るように工夫してあげるとよいでしょう。

魚を傷つけずに掬う

▲網に入ったナンヨウミドリハゼ。この状態からプラケースで掬うのがベスト

プラケースで海水魚を掬うこともあります。この方法は海水魚を飼育中、病気の魚やけがをした魚、いじめられた、もしくはいじめた魚を隔離するのに使います。海水魚店では魚を購入するときに、販売水槽の魚をプラケースだけで掬ってしまうこともよくあります。一般家庭の水槽では網を使用して魚を掬うことが多いでしょうが、そのまま水から上げず、プラケースで海水ごと掬うようにすると傷がついたり、鱗がはがれるといったことが網でそのまま掬ったときとくらべて発生しにくいのでよいとされています。また、採集する時も同様で、網を水から上げずに、ケースの中に入れておくことで魚の傷がつきにくくなります。テンジクダイの仲間やハゼの仲間、ごく小さなスズメダイの仲間などでも有効です。

プラケースの種類とサイズ

プラケースもいろいろなメーカー、ブランドから出ていますが、用途によってサイズを使い分ける必要があります。たとえば、魚を掬うという用途には大きなプラケースは使いにくいものです。いくつかのプラケースを用意しておくとよいでしょう。魚を掬ったり、採集魚の隔離として使用するのであれば小さなプラケースが使いやすいのですが、水槽の代わりとして使用するのであれば、マルカンの「いきものたちの楽園 中」以上のものが欲しいところです。また、プラケースは前面が曲がったタイプがあったり、まっすぐのものがあったりします。これはお好みで選ぶとよいでしょう。

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プラケースまとめ

  • プラスチック製で昆虫や小動物などの飼育に適している
  • サイズが小さいので恒久的な海水魚飼育にはあまり適さない
  • 磯に持っていくと真横から魚を観察できる
  • 水合わせや薬浴などにも重宝する
  • 隔離ケースのように扱うこともできる
  • プラケースで水ごと掬えば網で掬うより魚が傷つきにくい
  • 用途に合わせて適した大きさのプラケースを購入したい

2020.10.23 (公開 2020.10.23) 海水魚の買い方

海水魚を購入するなら幼魚・成魚どちらが飼育しやすい?

海水魚店ではさまざまな魚が販売されています。成魚だけでなく、幼魚も販売されていることがあります。魚、とくにヤッコなどについては雑誌や書籍などで「幼魚のうちから飼うとよい」といわれる魚もいますが、それはどのような理由があるのでしょうか。そして、幼魚から飼育するメリット・デメリットについてはどのようなものがあるのかをご紹介します。

幼魚・成魚どちらから飼育すべきか

幼魚で購入するメリット


▲タテジマキンチャクダイの幼魚

幼魚のほうがよいとされるのはキンチャクダイ科、ヤッコの仲間です。ヤッコといえば、幼魚の色彩や斑紋が成魚と大きく異なる特徴があります。とくにサザナミヤッコやタテジマキンチャクダイなどのサザナミヤッコ属、クイーンエンゼルなどのホラカンタス属で顕著です。小型ヤッコではあまり模様の変化はないのですが、大きな個体をそのまま小さくしたようなアブラヤッコやソメワケヤッコ、アカハラヤッコなどは非常にかわいいものです。中にはコガネヤッコのように目玉模様が入るようなものもいます。

またおおむね幼魚のほうが餌付きのよいことが多いといえます。小さいのは好奇心旺盛でサンゴ岩やライブロックをつつきまくっていますが、配合餌にも早く慣れやすいからです(チョウチョウウオにも同様のことがいえます)。ただし体力があまりないので、その点については注意が必要です。また、シマヤッコやスミレヤッコといった種類は神経質で混泳相手によっては餌付かないこともあるので、少なくとも小さいうちは単独で飼わなければなりません。

このほかスズメダイの仲間やベラの仲間なども成長するにつれて斑紋や色彩が変化します。しかしスズメダイの仲間は成長するにつれ地味になることが多く、さらに性格もきつくなります。ベラの仲間も大きくなるのは注意が必要です。成長するとどんな風になっていくのか、わかっているアクアリストはよいのですが、そうでないとスズメダイが暴君と化し、地獄を見ることになる可能性もあります。

成魚、もしくは若魚で購入するメリット

▲タテジマキンチャクダイの成魚

基本的にやせやすい、もしくは臆病な魚ほど、ある程度の大きさのサイズで購入するのがよいでしょう。特にアイゴの仲間やナンヨウハギなどのニザダイ(ハギ)類はある程度のサイズに育ったのを購入するのが安心です。ただしナンヨウハギはある程度のサイズに育ち120cm水槽が欲しくなりますので、注意が必要です。

ヤッコの仲間は成魚や若魚でも入ってきます。成魚や若魚で飼うことの最大のメリットは、丈夫さ。これにつきます。ただしその分配合餌に対する餌付きは若干悪くなってしまいますし(種類によっては全く食わないことも)、小さい魚との混泳にも向かなくなります。

魚種別

ヤッコの仲間―幼魚は餌付きやすいが飼いやすいのは体力のある成魚

アブラヤッコ

アブラヤッコは大きいのは丈夫だが配合餌は食べず

ヤッコの仲間の小さい個体はかわいいからだけでなく、餌付きがよい、という理由で小さい個体が購入されることが多いのですが、あまりにも小さすぎるのはよくありません。ヤッコの幼魚は体力がなく、餌を切らすと痩せてしまいやすいからです。成長のため一日に何度か餌をあげたいからです。

逆に大きすぎるものは2,3日餌を切らしても痩せてしまうなんてことはないのですが、自然の海で食べていた餌に慣れてしまい、配合飼料に慣れにくいというデメリットもあります。マックスサイズに近いアブラヤッコは結局配合飼料は一切口にすることなく、アサリやエビのミンチなどを与えていました。小型ヤッコとしてはアブラヤッコのほか、ヘラルドコガネヤッコ、ソメワケヤッコ、イエローフィンエンゼル、エイブリーエンゼルはやや難しく、フレームエンゼルやアカハラヤッコ、フレームバックなどは比較的餌付きやすいといえます。

チョウチョウウオの仲間―幼魚はやせやすく難しい種は成魚でも難しい

▲チョウチョウウオ類の種ごとの特性も理解する必要がある

チョウチョウウオの仲間も小さいうちはやせやすいので頻繁に餌を与えなければなりません。潮溜まりで500円玉くらいのサイズのチョウチョウウオの幼魚を採集できますが、チョウチョウウオの仲間は飼育しているとすぐ背の肉がおちてしまいやすいです。チョウチョウウオの小さいものを海で観察していると、常に岩をつついています。つまり成長のために幼魚は多くの餌を要するのです。

チョウチョウウオの餌付けについてはその食性も深くかかわってきます。コクテンカタギやカスミチョウチョウウオ、ゾスター、ハタタテダイなどプランクトン食性の種類はそれほど餌付けは難しくないのですが、ウミヅキチョウチョウウオ、ミスジチョウチョウウオ、ミカドチョウチョウウオといった種類はサンゴのポリプを捕食するので難しくなります。とくにオウギチョウチョウウオ、ハナグロチョウチョウウオ、ハクテンカタギはもはや飼育困難といえるくらい飼育が難しいとされますが、ミスジチョウチョウウオやウミヅキチョウチョウウオなどは小さいものであればアサリから人工餌へ切り替えることもできます。

一方雑食性でも難しいものはいます。通称「ナミチョウ」とよばれるチョウチョウウオは毎年磯で採集できますが飼育は決して簡単とはいえません。意外と神経質でほかの魚との混泳には注意します。ほかハシナガチョウチョウウオ(チェルモン)やフエヤッコダイも雑食性で餌付きますが長期飼育となると難しいです。

スズメダイの仲間―幼魚はかわいいが成魚の姿も忘れずに!

▲クロスズメダイの幼魚。幼魚はかわいいのだが…

スズメダイの仲間は飼育しやすい種が多いのですが、成魚と幼魚で大きく模様が変わるという特徴を持っています。そのため、色や模様の変化を楽しむことができるのですが、大体黒や茶褐色といった地味な色彩になってしまうのです。しかも、海水魚店の店員でさえも、スズメダイが大きくなるとどんな色彩になるのか知らなかったりします。ある程度図鑑などで、そのスズメダイは大きくなるとどんな色彩になるのか調べてから飼育にのぞむようにしましょう。また、スズメダイの仲間は成長すると性格がとてもきつくなることが多いので注意します。もちろん、スズメダイがきれいな色ではなくなったり、気性が激しいからといって海へ逃がしてはいけません。

ベラの仲間―幼魚から飼うと成長と斑紋の変化が楽しめる

▲トカラベラの幼魚

▲やや大きくなった個体

ベラの仲間も成魚と幼魚で大きく異なります。また雌雄でも色彩が大きく異なり、幼魚の模様・色彩から雌の模様・色彩へと変わっていきます。雌はやがて雄に性転換する様子を観察できるかもしれません。飼育下でも成長する楽しみを味わえますが、ツユベラやカンムリベラといった種類は大型になり、とくにカンムリベラはメーターサイズになるので、購入する前にどのくらいのサイズにまで成長するのか、よく調べておきましょう。

またベラの仲間の習性をよく知ることも大切です。オグロベラの仲間やカミナリベラの仲間など、臆病な種類もいて混泳向きでないのもいます。逆にモチノウオ類、タキベラなどは性格がかなりきつめでこれも混泳には不向きです。ベラの仲間はどの種もヤッコなどと比べると餌は食います。幼魚でも心配しなくてもよいでしょう(チューブリップの仲間は除く)。餌の量はやや多めにしておけば問題ないでしょう。

ブダイの仲間―小さいうちはこまめな餌やりが大事

▲アオブダイの幼魚と思われるもの(中央)

ベラ科とともにベラ亜目を形成するもうひとつのグループであるブダイ科の魚は、多くの種が藻類を主食とした雑食性という食性をもっています。ベラと異なり、幼魚期はやせやすいのでしっかりと餌を与えなければなりません。ブダイの仲間に限らず、アイゴ、ニザダイ、ヤッコ、カエルウオなど、藻類をメインに食う魚はやせやすい傾向にあるといえそうです。「海藻70」など専用フードをしっかり与えて太らせるようにしましょう。

ニザダイ・アイゴの仲間―幼魚はやせやすいので注意が必要

▲ヒフキアイゴの幼魚。小さいのは飼いにくい

▲ある程度育ち背中の肉がしっかりしたものがよい

ニザダイやアイゴは初心者にはある程度育った個体をおすすめします。ナンヨウハギの小さいのは海水魚店でよく販売されていますが、白点病になりやすく幼魚だと体力もないため、初心者に不向きです。ある程度育った個体を購入するほうがどのくらいの大きさにまで育つのかわかりやすいでしょう。アイゴの仲間は小さいのはぺらぺらにやせやすいため、こまめな餌やりが必須となります。初心者がアイゴの仲間を飼うなら、こちらもある程度育ったものが安心できます。

餌食いはアイゴ類やナンヨウハギ、キイロハギ系はおおむね良好ですが、クロハギ属の一部(シマハギ、ニジハギ、クログチニザなど)は最初は配合飼料を食べにくいといえます。とくにシマハギは意外なほど餌付けにてこずることも。しかもこれは幼魚・成魚関係ないので注意が必要です。海藻系のフード(海藻70など)や、生の海藻(ウミブドウなど)をあげるなどの工夫も必要です。

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ハナダイの仲間―幼魚・成魚それぞれに異なる難しさ

ハナダイの仲間はやせてしまいやすいので注意!

ハナダイの仲間も幼魚と成魚どちらの購入をおすすめするか、悩ましい仲間です。幼魚は食が細いためか、常に餌を多く与えないとやせて死んでしまうし、成長すると配合飼料をなかなか食べなくなることがあるからです。キンギョハナダイは丈夫で買いやすいといわれますが、それでもあまり小さいのはやせやすく飼育が難しいところがあります。ある程度育った、よく太った個体を購入するようにしましょう。

またパープルクィーンやハナゴイ、オオテンハナゴイといった種類は臆病であり、どうしても飼育が難しいことがあります。逆にバートレッツアンティアスは丈夫ではありますがおとなしめのハナダイとは飼えないほどきつい性格をしています。キンギョハナダイやスミレナガハナダイといった種もほかのハナダイ、特に小型種やハナダイの幼魚にとっては存在がプレッシャーとなることもありますので、注意が必要です。

ハコフグの仲間―幼魚はかわいいが購入はおすすめしない

ハコフグの幼魚

ハコフグの仲間は体が骨質の甲に覆われているという特徴があります。そのため海水魚店で泳いでいるハコフグがやせているか、そうでないかの判別がしにくいところがあります。その時点でもう初心者向けといえないところがあります。また幼魚は餌を食べるのも遅く、パフトキシンと呼ばれる毒を出して魚を殺すこともあるのでほかの魚との混泳も難しいです。ハコフグはできるだけ、ある程度大きいのを購入して単独で飼育したほうが安全ではありますが、いずれにせよ初心者には全くおすすめできない魚であることには変わりありません。

テンジクダイの仲間―種類や個体によって配合餌を食わないこともあり

▲大型個体はなかなか配合餌に餌付かないことも

テンジクダイの仲間は幼魚から成魚まで販売されていることがあります。キンセンイシモチ、マンジュウイシモチなど一部の種類は小さな稚魚が販売されていますが、このような個体はスレなどの傷に極めて弱いところがあります。大きな魚の存在はプレッシャーになり、逃げる過程でもスレ傷ができることがあります。このほか小さくても気が強いスズメダイ系は要注意です。

適切な環境下では餌は配合飼料などをよく食べてくれます。ただし釣りで採集された大きめの個体や、養殖されたプテラポゴンなどは最初のうちは配合飼料を受け付けないことがあります。その場合は動物プランクトンフードやイワシなどのミンチを与えるしかありません。そのような餌は水質の悪化を招きやすいので注意が必要です。

海水魚の幼魚と成魚どっちを買うべき?まとめ

  • 幼魚は成魚よりも餌付きやすいが体力がなくやせやすいので注意
  • 成魚は幼魚よりも体力があるが餌付きにくいことがあり性格もきついことが多い
  • ヤッコの仲間は小型個体のほうが餌食いはよい
  • チョウチョウウオの仲間は種類により餌付けが難しいことも
  • スズメダイは大きくなると色が黒っぽくなり、性格も荒くなる
  • ベラは幼魚雌雄で色が異なり変化を楽しめる
  • 藻類を食うブダイやアイゴ、ハギなどは幼魚だとやせやすい
  • ハナダイの仲間も幼魚だとやせやすい
  • ハコフグの幼魚は餌を食うのが遅く飼育しにくい
  • テンジクダイの仲間は成魚だと配合餌を食わないことも

2020.10.22 (公開 2020.10.21) 海水魚飼育の基礎

海水魚飼育をやめる方法~飼育や水槽の維持・継続ができなくなったとき

「海水魚ラボ」では、これまで「マリンアクアリウムのはじめかた」「マリンアクアリウムの維持の方法」については書いてきましたが、「マリンアクアリウムのやめ方」についても書いていかなければいけません。「なぜ」と思う方もいるでしょうが、はじまったものには必ず終わりというものがあります。つまり、いつかはマリンアクアリストが水槽を手放さなければならない時が絶対に訪れるのです。飼育を継続できそうにないとき、どうすればいいか、とるべき方法をご紹介します。

飼育の継続ができなくなったとき

マリンアクアリウムは楽しい趣味ではあるのですが、転勤であったり、病気になってしまったり、あるいは子供が大きくなり進学や受験の費用がかかってしまい、水槽を畳まなければならない…なんてこともあるでしょう。一方、病気などが蔓延して魚が全部死んでしまったときなどもマリンアクアリウムをやめるきっかけになってしまうこともあります。いずれにせよ、マリンアクアリウムという趣味をやめるのには、いろいろ考えなければいけないところがあります。

ほかの趣味との違い

▲海水魚は餌をあげたり水を循環させないと死んでしまう

ほかの趣味、たとえばプラモデル、ミニカー収集、鉄道模型、ゲーム、動画撮影、RCカーなどはこれらのものを押し入れに保管しておくだけでよく、売って資金稼ぎをするにしても、ヤフオク!やメルカリなどを使用することで簡単に売り買いできます。しかしながら海水魚(を含むアクアリウム全般)はそうはいきません。海水魚の水槽を押し入れにおいてそのまま放置していれば確実に魚は死んでしまいます。そのため一定間の休養期間がもてない趣味ということもいえます(ガーデニングや観葉植物なども同様)。ですから、飼育が継続できないか、困難であることがわかったら、早いうちに魚などの生き物や器具をどうするか考えるようにしましょう。

また、永いことアクアリストをやってきても、いつかは水槽をのこして旅立たなければいけない日は絶対にやって来ます。そのときどうすべきかは生前にあらかじめ考えておかなければなりません。

方法

魚などの生き物

▲友人から譲り受けたイトヒキテンジクダイ

魚などの生き物を殺処分するのはかわいそうなのでおすすめしません。近年は外来生物の問題をどうにかしようという機運の高まりもあり、観賞魚店が観賞魚を無償で引き取ることも多くなりました。そのようなところに頼んで引き取ってもらうのがベストです。もちろん、マリンアクアリウムがらみのお友達がいるのであれば、お友達に魚やサンゴを譲るのもよいでしょう。私も友人から譲り受けたカクレクマノミやイトヒキテンジクダイを飼育しています。ただし、あなたが飼っていた魚を、お友達が欲しいというのであればよいのですが、無理強いはしてはいけません。そのためにも引き取ってもらえそうな海水魚店をあらかじめ探しておくようにします。注意点としては、海水魚を引き取ってもらうときは海水魚を取り扱うお店でないと引き取ってもらえないこともあるので、注意が必要です。

もちろん、魚やサンゴなどの生物を海に逃がす(放流する)ということがないようにお願いいたします。なぜ放流をしてはいけないのかはこちらの記事もご覧ください。

水槽・器具

▲蛍光灯は最近入手しにくくなっている

魚とは異なり、水槽や器具については保管することもできます。またいつか再開したい、というときには器具をキープしておくのもよいでしょう。ただしプロテインスキマー、水流ポンプ、照明といったアイテムは新しいのがどんどん出てきているのでそのうち時代が追い付かなくなっているかもしれません。また照明のうち、蛍光灯やメタルハライドランプの場合、交換球が手に入りにくいなんてことも起きていますので、照明は再開時にLED照明を購入したほうがよさそうです。もちろん、観賞魚店に引き取ってもらったり、あるいはヤフオク!やメルカリなどで売っても構いません。

添加剤や餌などは長期保存しておくと腐ってしまったり、カビがはえてしまうこともあるため、早いうちに譲渡する、もしくは廃棄処分するのが賢明です。とくに開封後は早めに使い切りたいところです。なお、バクテリア製剤はこれらよりは長持ちしますが、それでも開封して1年以内に使い切るようにするべきです。

海水魚飼育をやめる方法まとめ

  • 転勤、病気、子供の進学のためなどでアクアリウムをやめる人は意外と多い
  • 飼育継続が困難であることがわかったら早いうちに準備をしたい
  • 海水魚やサンゴをはじめアクアリウムは「保管」しておくことができない
  • 友達に譲ってもよいが無理強いはさせないこと
  • あらかじめ引き取ってもらえる海水魚店を探しておく
  • もちろん魚やサンゴは海に放流してはいけない
  • 水槽などの用品は物置などに保管しておくことができる
  • 照明については蛍光灯やメタハラは交換球が入手しにくくなっている
  • 添加剤や餌などは早めに使い切る必要がある

2020.10.19 (公開 2020.10.19) 海水魚図鑑

海水魚飼育における”クリーナー”とされているが要注意な生物たち(ベラ・エビなど)

ベラ科のホンソメワケベラは、ほかの海水魚の掃除を行う「クリーナー」としてよく知られています。海水魚専門店では。ホンソメワケベラ以外にも何種かのベラがクリーナーとして販売されていますが、中には成長するとともにクリーニングしなくなってしまう種類もいます。さらにひどいことに、成長するとサンゴを食べてしまうような魚までいるのです。このほかエビの仲間も注意しないとサンゴを食べてしまうなどの害を与えてしまうので注意が必要です。今回はクリーナーフィッシュとして販売されていても、安易に水槽に入れないほうがよい魚やエビをご紹介します。

クリーナーとは

▲クリーニングするホンソメワケベラ

ほかの魚の体表や口腔内などを掃除(クリーニング)する魚は一般的に「クリーナー」といわれています(このほかコケや残り餌を食べる生き物を指すこともある)。クリーナーとして有名なのがホンソメワケベラで、この魚の青と黒のラインは同じようにクリーナーとして知られる大西洋産のネオンゴビーなど、クリーニング行動を行う魚の多くが身にまとっており、「クリーナーのシンボル」ともいえます。その中には幼魚だけホンソメワケベラに似た青と黒のいでたちをした魚もいます。しかし、これらの種類の中には成長するとクリーニング行動を行わなくなることが多く、種類によってはサンゴをつついてしまうものもいます。またエビの仲間ではクリーナーとされていてもサンゴや小魚を食べてしまうようなものもいます。今回はそんな要注意なクリーナー生物をご紹介します。

要注意なクリーナー生物

レッドシークリーナーラス

レッドシークリーナーラスはベラ科の魚で、名前に「クリーナー」とあり、ホンソメワケベラの仲間のように思えますが、ホンソメワケベラとは別属の魚です(本種のみの1属1種)。色彩は紺色で体側に青い縦線が2本並び、美しいのですが成長するにつれてこの縦線は薄れて消えてしまいます。また大きくなると眼の下に「へ」の字のような模様が現れます。飼育してみたいアクアリストも多いようですが食性に難ありで、幼魚のうちはほかの魚のクリーニングをするのですが成長するとサンゴのポリプを食べるようになってしまいます。紅海にのみ分布するやや高価な魚です。

イエローテールラス

イエローテールラスはレッドシークリーナーラスを白く、体の後方や腹部を黄色くしたようなベラです。この種もレッドシークリーナーラスと似たような習性をもち、幼魚のころはクリーニングしますが、成長につれてサンゴをつつくようになってしまいます。また飼育も難しいとされています。本種の生息地はインドネシア、フィリピン、マレーシアなど西太平洋のサンゴ礁域で、レッドシークリーナーラスよりも安価で購入できるのでつい入れてしまいそうですが、安易に購入しないほうがよいでしょう。なお日本でも見つかる可能性がありますが、まだ確認されていません。

チューブリップの仲間

▲クロベラの頭部。英語名の通りチューブのような口が特徴的だ

インドー中央太平洋のサンゴ礁に生息するベラの仲間で、ミヤケベラ、マナベベラ、クロベラ、アレンズラスなど、2属7種が知られています。いずれの種類もサンゴ礁に依存しており、サンゴのポリプをつついて食べますが、幼魚のうちは黒っぽい体に白~青白い縦帯が入り、レッドシークリーナーラスなどと同様にほかの魚の体表につく寄生虫を多少は食べているようです。ただしこの習性は幼魚のみで成魚になるとサンゴのポリプを好んで食うようになってしまいます。なお、成魚のその食性から飼育は難しいとされており、あまり観賞魚として適していないかもしれません。ミヤケベラの雄は非常に美しいのですが残念です。

ホワイトソックス(シロボシアカモエビ)

モエビの仲間はサンゴとの相性に注意が必要なことも

ホワイトソックスことシロボシアカモエビは海水魚店では比較的よく見られるエビの仲間です。クリーナーとして販売されていますが、クリーナーとしてよく知られる同属のアカシマシラヒゲエビ(スカンクシュリンプ)ほど積極的なクリーニングはしません。また、この仲間は空腹のときはディスクコーラルやマメスナギンチャクなど、イソギンチャクの仲間をむしって食べてしまうことがあります。餌をしっかり与えても食べてしまうことはありますが、まずはエビにも十分に餌がいきわたるようにしましょう。フレークなどは軽量で浮いている時間が長いためやや食べにくく、食べられても量が少ないのでペレットタイプが最適です。

従来は海産エビ用のペレットフードも販売されていましたが、現在はないようで、海水魚用のペレットフードを与えるようにします。

オトヒメエビ

オトヒメエビもクリーナーとして知られ、ウツボやハタなどの大きい魚の体表をクリーニングしますが、小魚はクリーニングするどころか、大きなハサミでバリバリと食べてしまいます。ハゼやカエルウオ、ベラなど夜間休眠するタイプの魚は特に襲われやすいです。そのため小型水槽では魚との飼育には適していないエビといえます。丈夫で飼育自体は簡単で、美しいのでついつい入れたくなりますが、後悔してしまうこともあります。大型水槽で飼育し、一緒に入れる魚も大きなものにしたほうがよさそうです。

クリーナーまとめ

  • ほかの魚をクリーニングするクリーナーとしてはホンソメワケベラが有名
  • ホンソメワケベラ以外にもいくつかの魚がクリーナーとして販売されるが要注意な魚も
  • レッドシークリーナーラスは幼魚はクリーナーだが成魚はサンゴを食う
  • イエローテールラスやチューブリップの仲間も同様
  • ホワイトソックスはスカンクシュリンプほど掃除もしないしソフトコーラルをついばむことも
  • オトヒメエビは大きなハサミで動きの鈍い小魚を襲う

2020.10.16 (公開 2020.10.16) 水槽・器具

ゼンスイ「QQ1」レビュー!小型サイズの外掛けベンチュリー式プロテインスキマー

ゼンスイから販売されている「QQ1エターナルナノスキマー」(以下、QQ1)は小型水槽向けのスタイリッシュなプロテインスキマーです。小型水槽ではエアポンプとエアストーンを用いた「エアリフト型」が主流ではありますが、このQQ1は大型水槽向けのスキマーと同様にベンチュリー式を採用し、かつDCポンプを使用した高性能モデルです。今回はこのQQ1の使用方法や特徴などをご紹介します。

QQ1とは

中国のBubble-magus(バブルメイガス)社の製品で、日本においてはゼンスイから販売されている小型プロテインスキマーです。Bubble-magus社は自社ブランドで販売するほか、海外有名メーカーの製品作成も行っているものです。スキマーのほかにも、カルシウムリアクターやメディアリアクター、水中ポンプ、ドージングポンプなどを製造しており、以前はLSS研究所がBubble-magusブランドのドージングポンプを販売していましたが、今では扱っていないようです。このQQ1においてもフタの部分やポンプなどに「Bubble-magus」のロゴを見ることができます。

QQ1の大きな特徴としてはその形状とサイズにあり。外掛けろ過槽のように水槽の縁に引っ掛けるタイプで、サンプを必要としません。対応水量は100リットル以下とされていますが、それより半分~2/3くらいまでが安心かもしれません(生物ろ過併用時)。

なおこのシリーズではほかに上位機種としてQQ2、QQ3があります。QQ3は最近日本でもゼンスイが販売をはじめましたが、その中間のQQ2は日本で市販されていません。アリエクスプレスやAmazonなどの海外ECモールサイトで購入できますが、日本の電圧などに対応しているかは不明で、もちろんPSEなどの取得もなされていませんので、自己責任でお願いいたします。なお、「プロテインスキマーって何?」という方は、こちらもご覧ください。

ゼンスイQQ1の特徴

ゼンスイQQ1は小型プロテインスキマーなのですが、ほかの小型プロテインスキマーと異なる特徴として、ベンチュリー方式を採用していることがあげられます(後述)。専用の小型ポンプを使用しており、ほかの小型スキマーよりもずっと高い性能を誇ります。水槽に引っ掛けるだけで設置でき、一見外掛けろ過槽に見えますが、生物ろ過の機能はなく、純粋なプロテインスキマーとして使用するべき製品です。写真ではなぜかオーバーフローホースが外れてしまっていますが、この状態だとオーバースキム(粘り気の少ない泡と水が大量に巻き上げられること)した際に水が外へ流れ出るため、しっかり取り付ける必要があります

中国のメーカーであるからか、ポンプは中国が最近得意とするDCポンプを採用しています。DCポンプはACポンプに比べて電子部品が多用されているとのことで、耐久性には劣るのですが、駆動音が静かなのが特徴です。

そのほかの小型プロテインスキマーとの違い

▲カミハタの海道河童。スキマー付きのろ過槽だがスキマーのパワーは弱い

この「QQ1」以外に多くの小型スキマーが販売されています。具体的なメーカー、ブランドをあげればエムエムシー企画レッドシー事業部の「オルカミニット」、マメデザインの「マメスキマー」、カミハタ「海道河童」などがあります。しかしこれらのプロテインスキマーはエアリフト方式と呼ばれるもので、ウッドストーン、もしくは専用のセラミックストーンからでる細かい泡が汚れをカップに押し上げていくというもので、どうしてもパワー不足に陥りやすいといえます。またウッドストーンを定期的に交換する必要があること、パワーのあるエアポンプを購入する必要があることもデメリットとして挙げられます。つまり初期投資はある程度必要になるのですが、維持費を抑えることもできます。

LSS研究所からはTUNZEのComline DOC Skimmerや、ウェーブリーフのナノスキマーなどDCポンプを用いたスキマーが販売されていますが、ややお値段が高めで、LSS研究所製品の販売店でも在庫していないことがあり、購入しにくいといえます。

本製品の最大のライバルとなりうるのはカミハタから販売されている「海道達磨」です。しかし海道達磨はQQ1とは比べ物にならないほど大きなプロテインスキマーで、高さ45cmにもなる大型のスキマーになります。そのためQQ1との単純な比較は難しいです。QQ1はメーカーのうたう対応水量100リットルに対し、海道達磨は生物ろ過を併用することで360リットル以下が目安、とパワーはあるのですが、小型水槽には合わないこともあります。60cmくらいであれば海道達磨もしくは先述のQQ3、小型水槽であればQQ1というふうに使い分けることができます。

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使用例

サンゴやイソギンチャクを飼育する

コーラルタウンに設置されている60cm水槽のQQ1。外部ろ過槽とセットで使用

使用例としては写真のように外部ろ過槽や外掛けろ過槽との併用が考えられます。写真はコーラルタウンの60cm水槽で、海水は外部ろ過槽でろ過していますが、外部ろ過槽だけでは酸欠になりやすいため、このようなスキマーは有機物をこしとるだけでなく、酸素供給の役割もするのです。また写真右側にイソギンチャク(ロングテンタクルアネモネ)がいますが、これはなかなかのトラブルメーカーで、餌をあげるとよく成長することがありますが、餌を吐き出したりして水を汚すことがあります。この汚れをこしとるためにプロテインスキマーが役に立ちます。もちろん水かえや定期的な元素の添加もお忘れなく。

魚水槽に使用する

▲我が家の水槽。なぜか海道河童と並んでいる…

外掛けろ過槽を用いた海水魚水槽の場合も、プロテインスキマーは酸素を供給する役目をします。魚水槽などではより酸欠になりやすく、魚が排せつすれば汚れも蓄積されるため、ろ過槽の補助という意味でもQQ1は重要な役割を果たしてくれます。上部ろ過槽ではごちゃごちゃしてしまいやすいので使用は現実的ではなく、外掛けろ過槽、外部ろ過槽、底面ろ過装置などのサポートとしてはよいでしょう。

なお、QQ1は右です。左は海道河童で、これはスキマー付きのろ過槽というものです。しかし海道河童のスキマーはエアリフト式と呼ばれるもので、パワーはQQ1に比べると劣ってしまいます。どちらも小型の水中ポンプを使用しています。音についてはAmazonのレビューでは「静か」という人と「うるさくて夜も眠れない」という二つの評価にわかれてしまっています。「モーターとケースの部分が接触して大きな音が出る、触らないようにしたら改善した」という意見もあります。

QQ1を設置できる水槽

QQ1は以下の条件の水槽で使用できます。その条件は、4~14mmの厚さのガラス水槽であること、水位が水面から35mm以内であること、水温10~40℃であることなどです。またプロテインスキマーは淡水では泡が上がらず使用することができません。詳しくはゼンスイのホームページで公開されている専用の取扱説明書もご覧ください。

QQ1のセットアップ

まずQQ1を水槽に引っ掛けるようにして配置します。内部にはポンプやらベンチュリーパイプなど、様々な機材が入っていますが、あらかじめ組み立ててあるため安心です。説明書には組み立て方は乗っているのですが、これはメンテナンスした後の参考にしてくださいとのこと。配置場所を決めたら、前面に露出しているねじで固定するようにしましょう。

設置場所をきめたらコレクションカップを外します。

本体に計量カップなどを用いて、海水を入れます。量としては水槽内に水が戻るようになるまで入れます。

再びコレクションカップをQQ1に取り付けます。取り付けたら電源を入れて始動させます。

電源を入れたらその直後に右側のサイレンサー上部にある穴をふさぎます。空気が引き込まれなくなり、その際に水槽内からQQ1のポンプに水が引き込まれます。1分ほどで水が本体とカバーの間から出てきます。

QQ1のスキミングの調整はコレクションカップの上下で行います。コレクションカップを上下させ、ベストな位置になったら調整ねじで固定します。

最初はもっと下に配置していましたが、オーバースキミングを発生させてしまいました。最初のうちはこのくらいの高さをキープしたほうがよいかもしれません。1週間くらいすると汚水がたまってきますので、そうなったらQQ1の電源をとめ、コレクションカップを洗浄し、また最初からセットしなおします。水の音が小さいので本当に出ているか不安になることも。なお、QQ1は最初のうちは機材に塗ってあるワセリンの影響などでパフォーマンスを発揮しないことがあり、1~2週間は「慣らし」運転が必要なようです。

QQ1のメンテナンス

QQ1のメンテナンスとしては定期的なコレクションカップの清掃があげられます。また、泡の戻りを防ぐために設けられているスポンジにもゴミやコケ、茶褐色のシアノバクテリアが付着することがあるので、これも定期的な清掃が必要になるとのことです。このほかベンチュリーパイプについてもこまめな清掃をしてほしい、ということでした。これはベンチュリーパイプにカルシウム分や石灰藻などがついていると、泡の量が減ってしまったり、泡が出なくなったりということがあるからです。

もちろんプロテインスキマーは有機物を取り除いて水質悪化を防ぐことはできますが、水かえを不要にするという効果はありません。そのため硝酸塩が蓄積された、pHが低い、サンゴが元素を消費してしまったような海水を水かえにより交換してあげる必要があります。とくに各種元素はサンゴにとって重要な成分ではありますが、プロテインスキマーにより取り除かれやすいため定期的な添加が必須になります。

ゼンスイQQ1まとめ

  • 小型ながらハイパワーで本格的なベンチュリー式プロテインスキマー
  • 上位機種としてQQ3が日本でもゼンスイから販売されている
  • エアリフト式と異なりパワーがあるのはもちろん、エアポンプやエアストーンなどが不要で経済的
  • その分初期投資が高い
  • サンゴ水槽にも海水魚水槽にも使用することができる
  • 始動の際にサイレンサーをふさぐ必要がありその点はちょっと面倒
  • 最初のうちはコレクションカップをやや高めにしておきたい
  • メンテナンスはコレクションカップやスポンジ、ベンチュリーパイプなどを清掃する

外部リンク

ゼンスイによるQQ1紹介ページ

ゼンスイQQ1取扱説明書(PDF)

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