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2020.04.02 (公開 2020.04.01) 海水魚図鑑

ホホグロギンポの飼育方法~餌や混泳の注意点

ホホグロギンポは紀伊半島、高知県、琉球列島以南のサンゴ礁に生息するカエルウオの仲間です。本種は「カエルウオミックス」としてタネギンポやタマギンポなどとともに入ってくることが多いです。体には斑紋がなく、同じ属のモンツキカエルウオやハナカエルウオと比べると地味な種類ですが、雄の体には細い縦線が多数入り求愛の時には格好いい色彩になります。今回はこのホホグロギンポの飼育方法をご紹介します。

標準和名 ホホグロギンポ
学名 Blenniella bilitonensis (Bleeker, 1858)
英名 Biliton rockskipper
分類 スズキ目・ギンポ亜目・イソギンポ科・カエルウオ族・ハナカエルウオ属
全長 10cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 海藻70など
温度 25℃前後
水槽 45cm以上
混泳 細身の体なので大型魚に捕食されることもある
サンゴとの飼育

ホホグロギンポって、どんな魚?

ホホグロギンポはスズキ目イソギンポ科・カエルウオ族・ハナカエルウオ属の魚で広い意味ではカエルウオの仲間になります。また昔はカエルウオ属のものとされていたこともあります。体はヤエヤマギンポなどと比べると体高が低いためか細長く見えるのが特徴です。なお写真の個体は雌と思われます。雌の体には黒い四角い斑点がならび、その下に黒い横帯が入ります。雄は正中線に大きな皮弁があり、体には雌にもあるような斑紋のほかに細い縦線が多数入るようになります。また求愛時はグレーメタリックの体になり、体側の細い縦線がより明瞭になります。

種の標準和名の由来は鰓蓋が黒くなることからとされますが、求愛時の雄の色彩からでしょうか。一方学名の種小名については本種の基産地であるインドネシアのビリトン島にちなみます。英名も同様です。

ハナカエルウオ属

▲ハナカエルウオ

本種が含まれるハナカエルウオ属は上述のようにカエルウオに近い仲間です。日本には7種が分布し、うち5種が磯で採集できます。ただし南方性のものが多く、九州以北にはほとんど見られず、和歌山や高知にもいるホホグロギンポが採集できるのみです。観賞魚として人気があるものはオレンジ色の斑点が鮮やかなモンツキカエルウオやハナカエルウオくらいで、ほかのカエルウオの仲間はめったに見られませんが、本種は他種の混じりにより沖縄などからやってくることがあります。

ホホグロギンポに適した飼育環境

水槽

全長10cm以上と、カエルウオの仲間としては比較的大きく育つ種ですので最低でも45cm水槽、できれば60cm水槽で飼育するのがよいでしょう。ほかの魚との混泳であれば60cm以上の水槽で飼育するのが安心といえます。

水質とろ過システム

ほかの多くのカエルウオの仲間と同様、水質悪化には強いのですが、ろ過をおろそかにしてはいけません。外掛けろ過槽はパワーが低く、外部ろ過槽などほかのろ過槽と併用するか、2台使うかしないと満足できないこともあります。また、構造上、水槽上にフタをしていても隙間ができやすい(飛び出しやすい)というデメリットもあります。おすすめは上部ろ過槽で、隙間ができにくく、ろ過能力も高いからです。ただし小型水槽では使いにくいでしょう。

ホホグロギンポはサンゴ水槽での飼育も楽しめます。サンゴ飼育に有用なシステムといえばベルリンシステムなのですが、このシステムで飼育するなら魚の数は絞らなければなりません。

水温

水温は22~28℃くらいです。ホホグロギンポは水温の変動が大きいタイドプールなどに生息しており、ある程度水温の変動には強い魚ですが、水温の変動が大きすぎると体調を崩してしまう可能性もあるからです。

フタ

カエルウオの仲間であり、飛び出すおそれもあるためフタが重要です。見栄えは悪くなってしまいますが隙間をしっかり埋めておくと脱走対策に効果的です。本種は採収しても網からぴょんと跳ねて逃げ出すこともあり、フタは重要です。

ホホグロギンポに適した餌

ホホグロギンポは岩や死サンゴにつく藻類を主に食べます。海藻は食べません。主に藻類食性魚向けの配合飼料を与えます。キョーリンから販売されている「海藻70」などがベストです。しかし、ほかに強い魚がいるような水槽では餌を食べないこともあります。最初のうちは静かな環境で餌に慣れさせることも大事といえるでしょう。

また最初のうちはコケもよく食べるのですが、配合飼料に慣れてしまうとコケを食べなくなることもあるので注意が必要です。

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ホホグロギンポをお迎えする

▲カエルウオミックスの中に入っていたホホグロギンポ

分布域は和歌山県、高知県、琉球列島、西太平洋のサンゴ礁におよびます。和歌山などの磯採集でまれに採集できることもあるようですが九州以北ではまれなものです。琉球列島の潮だまりではごく普通にみられるものですが素早いので二つの網をもち、片方に追い込むなどしなければ採集が難しいこともあります。夜間には容易に採集することができますが、必ず複数で行動するようにします。夜の磯は非常に危険だからです。干潮時水深10cmくらいの場所でよく見られます。

海水魚店でもしばしば販売されるホホグロギンポですが「ホホグロギンポ」の名前で販売されることはまずありません。タネギンポやタマギンポなどとともに多くが「カエルウオミックス」「カエルウオsp.」などの名称で販売されています。またチャームの「カエルウオミックス」という名前で販売されているものは複数種いるものと思われますが、サンプル写真になっているのはこのホホグロギンポです。

購入する時には入荷して時間がたっているもの、状態がおちついているものを選びます。入荷直後の個体は避けるようにします。また背肉が落ちた(やせた)もの、体に白い点がついているもの、鰭が溶けているものなどは購入を避けます。

ホホグロギンポとほかの生物との関係

ほかの魚との混泳

おとなしい魚であれば混泳はできます。小型のハゼ、小型のベラ、小型のハナダイなどであれば混泳も難しいことはありません。ただし大きな口をもつ魚はカエルウオを含む小魚を捕食してしまうこともあるので混泳は避けるべきです。また性格がきついスズメダイの仲間や、自分に似た魚に攻撃を仕掛けるメギスの仲間も混泳相手としては適切ではないといえます。

ほかのカエルウオ類との混泳

▲カエルウオは性格きつめ。混泳注意

ほかのカエルウオの仲間との混泳は注意が必要です。ホホグロギンポはやや臆病なところがあるようで、カエルウオやタネギンポなど、自分より大きく強いカエルウオの仲間との混泳にはあまり適していないといえそうです。我が家ではホホグロギンポよりも小さなシマギンポ2匹と混泳していますが、現状では問題なさそうです。またカエルウオの仲間は雌同士を複数入れて問題ないことが多いですが、雄同士は争いが起きやすいので混泳は避けるようにします。

サンゴ・無脊椎動物との相性

ホホグロギンポはサンゴには無害なので、サンゴ水槽での飼育もできます。ただ巨大なディスクコーラルや、クマノミと共生するようなイソギンチャクには捕食されることもあるので、一緒に飼育するのは避けます。甲殻類との相性は悪くはないのですが、小魚を食べてしまうような大型のもの、例えばイセエビなどは避けましょう。またオトヒメエビの類も性格がきついので避けたほうが無難です。サンゴヤドカリの類やアカシマシラヒゲエビ(スカンクシュリンプ)などであれば問題ないことが多いです。

ホホグロギンポ飼育まとめ

  • モンツキカエルウオなどと同じハナカエルウオ属の魚
  • カエルウオミックスとして販売されることが多い
  • 雌雄で色や斑紋が異なる。雄には皮弁もある
  • 45cm以上の水槽で飼育したい
  • できれば上部ろ過槽を使用する
  • 水温は25℃がベスト。一定の水温をキープする
  • フタはしっかりすること
  • 海藻70など藻類食魚用の餌を与える
  • やせてるものや体に異常があるもの、入荷直後のものは避ける
  • ほかの魚との混泳もできるが性格がきつい魚はだめ
  • カエルウオやタネギンポなどとは争うので避ける
  • 捕食性の強いサンゴやイソギンチャク、大きくなる甲殻類もだめ

2020.08.05 (公開 2020.03.31) メンテナンス

危険?安全?ライブロックから出現する生物ガイド

ライブロックは英語で「Live rock」つまり「生きた岩」という意味になります。ライブロックに生きたバクテリアがすむほか、ライブロックに開いた穴の中や、そのすきまにもいろいろな生物が潜んでおり、どんな生き物が隠れているか見るのも楽しみというものです。しかしながらこれらの生物の中には水槽の生物にとって脅威になるものも潜んでいます。今回はライブロックに潜んでいる生物とその対策についてご紹介します。

ライブロックから出現する生物たち

マリンアクアリウムの水槽立ち上げにおいて重要な役割をするライブロックですが、その中から出現する生物は無数に存在します。今回はその中の代表的な生物をご紹介します。

シャコ

有害?無害?

シャコは動物食性が極めて強く魚を襲ったりほかの生物も傷つけるなどします。そのためシャコはほかの魚やサンゴに有害とされています。また大きなものは薄い水槽を割ってしまうこともあるようで、注意が必要になります。

対処法

シャコは甲殻類としては結構頭がいいところがあります。シャコをとるためのワナも市販されていますが、効果は不明です。くぼみの小さな穴の中に潜んでいることも多いので、いないか探してみましょう。結論としては入れないことが重要となります。

カニ

カニもライブロックの中に見られる生物としては多いものです。種類は非常に多く、小さいものから大きく育つものまでいろいろいます。多くはオウギガニ科のカニで、脚部がオールのようになっているワタリガニ科のカニやイソガニ系のカニもたまに見られるようです。ライブロックの中に潜む甲殻類はシャコやカニが多く、エビなどほかの甲殻類はめったに見られません。エビの仲間は体がやわらかいものが多く、つぶれて死んでしまうこともあるからか数は少なめです。

有害?無害?

一般的にライブロックの中にいるものはオウギガニの仲間であることが多く、とくに小型のものはあまり影響をあたえませんが、大型のものは魚を食べたり、岩組を破壊したり、一部のサンゴを食べてしまうようなものもいます。

対処法

昼間は岩の隙間にいることが多く、夜間出てくることが多いです。そこを捕まえるのがいちばん簡単でしょう。ただしはさむ力が非常に強いものもおり、実際につかまえるときはピンセットを使うのがよいでしょう。またカニに限らず甲殻類の仲間はハサミを使ってサンゴを岩組から落下させることもあるので専用の接着剤を使用して岩組に固定するようにします。

ウミケムシ

ウミケムシはゴカイの仲間です。漢字で「海毛虫」と書くように毛虫のような体をしていて不気味がられる生き物でしかも毛には毒があります。ライブロックの中に潜み夜間に活動するようです。

有害?無害?

上述のように毒の毛に触れると痛痒いです。ただし魚を襲ったりするようなタイプではないようです。

対処法

発見次第摘み取り除きます。もちろん手で取り除くのは危険なので、ピンセットなどを使用しましょう。アローヘッドクラブなどの一部の生物が食べてくれますが、入れることによるデメリットもあるので発見次第摘んで水槽から出すのが重要です。体の一部が残っているとまた大きくなったものと遭遇することになりますので確実に取り除くようにします。

ウズマキゴカイの仲間

ライブロックや貝類の殻、水槽の壁面、ガラス・アクリル面にくっつくゴカイの仲間で、筒の中にゴカイの仲間が潜んでいます。水槽内では時に大発生することがありますが、水槽の中が見えにくくなるものの、とくに有害生物というわけではありません。

有害?無害?

魚やサンゴには全く無害な生き物です。ただし水槽の壁面やガラスやアクリル面にくっついてしまい、なかなか取れないこともあります。

対処法

スクレイパーなどを使用し水槽や壁面についているウズマキゴカイを削り取ります。アクリル水槽は傷つきやすいので専用のスクレイパーを使用する必要があります。またゴカイなどを捕食するような魚が中身だけを食べてしまうこともあります。詳しくは以下の記事もご覧ください。

カンザシゴカイ・ケヤリムシの仲間

ライブロックの中に潜むゴカイの仲間です。穴の中から鰓の部分だけをのぞかせていることが多く、大きな魚が通過すると鰓を引っ込めます。この仲間はアクアリストによく飼育されているものを含みます。イバラカンザシなどはとくにカラフルで人気があります。また筒の中に潜み鰓だけを出しているケヤリムシの仲間もゴカイの仲間とは思えないくらい美しい生物です。

有害?無害?

ゴカイの仲間で魚や甲殻類を捕食することのない、無害な生き物でサンゴ水槽をより華やかにしてくれます。

対処法

とくに害をなすことはないので放置で問題ありません。しかしカンザシゴカイやケヤリムシはヤッコの仲間やチョウチョウウオの仲間、フグ、キュウセン系などのベラにとっては好物なのでやがて消えてしまいます。

ヒトデの仲間

ナマコやウニ同様棘皮動物の一種です。ライブロックの中から大きなものがでることはあまりないのですが、ピンク色や灰色の小さなヒトデが多数出現することがあります。

有害?無害?

ヒトデの仲間は海水水槽で飼育されていることも多いのですが、種類によってはサンゴを食べてしまうこともあるようです。そのためサンゴ水槽には入れにくい生物といえます。

対処法

見つけたらピンセットか手でつまんで水槽から出します。体の一部がちぎれて水槽に残ると、そこからまた元通りになるので注意します。

ウニの仲間

ウニはヒトデの仲間と同じ棘皮動物の仲間です。ウニの仲間もいろいろな種類がありますが、一般的にライブロックから出てくるのは、写真に示したようなナガウニの仲間が多いように思います。この手のウニは沖縄の磯ではごくふつうにみられるウニです。

有害?無害?

ウニの仲間は石灰藻を削るようにして捕食したり、棘や強い歯によりアクリル水槽に傷をつけたりすることがあります。ガラス水槽でもシリコン部を傷つける可能性があり要注意です。このほか死亡すると棘が水槽内に散らばり美観を損ねる、ウニが大きくなると活動によりサンゴや岩組を崩す、などの問題もあります。

しかしながら藻類食のものが多いため藻類対策では重要とされます。シラヒゲウニなど一部の種はアミジグサなどの対策に重宝します。

対処法

ピンセットなどでつまんで取り出します。ナガウニは素手でつかんでも問題になりにくいのですが、ウニの仲間には毒をもつものもいるので、注意しなければなりません。

クモヒトデの仲間

クモヒトデはヒトデ、という名前がついていますが、やや異なる生物で、「腕」の部分がヒトデの仲間よりも細長いのが特徴です。

有害?無害?

ヒトデの仲間とは異なりサンゴを食べることはなく、魚の残り餌などを食べることが多いです。サンゴにも無害で、もっとも海水魚水槽に入れやすい棘皮動物ともいえるでしょう。また魚の残り餌なども食べてくれます。

対処法

岩の下などにいることが多いですが、無害な生き物であり、放置でかまいません。

貝の仲間

ライブロックからは巻貝も多く出現します。丸っこいサザエ系から写真のような正体不明のものまでいろいろ出てきます。正体不明のものはサンゴに悪さをする可能性もあるため、入れないほうが賢明でしょう。またライブロックの中にはカキやウグイスガイ系の二枚貝も出てきます。

有害?無害?

貝の仲間は種類が多く、また有害か、それとも無害なのか、判別するのは非常に難しいところがあります。ホンハナマツムシのような貝はミドリイシなどを主に捕食し、ほかにもサンゴの仲間を食べる貝は多数知られています。見つけ次第取り除いたほうがよさそうです。二枚貝のほうは水質浄化の手助けをしてくれるといわれますが、あまり大きな効果は望めません。ただ魚にもサンゴにも無害です。

対処法

わからない種類の貝は見つけ次第ピンセットなどでつまんで取り出します。サンゴを食われてしまっては遅いからです。二枚貝はとくに悪さをしないので放置でかまいません。ただ小さい水槽に大きな二枚貝を入れると死亡した際に著しい水質悪化を招くことがあるので注意が必要です。

カイメン

▲多く見られるグレーのカイメン

▲黄色が美しいカイメン

カイメンの仲間は海綿動物という分類群の生物で、サンゴの仲間のようにも見えますが、サンゴとは関係ない仲間です。体の表面に開いた穴から海水ごとプランクトンや有機物、微生物などをこしとり食べるという変わった習性をもっており、水質浄化に役に立つのではないか、ともいわれます。大型のオレンジスポンジと呼ばれるものは海水魚専門店ではよく販売されていますが、ライブロックに生えているものよりも飼育が難しいとされます。

有害?無害?

カイメンは特にほかの生き物に悪さをするわけではなく無害です。

対処法

無害なカイメンですが、どうしても邪魔というときは手でむしるだけで簡単に取り除くことができます。ただし触っているとかゆくなることもあるので、手袋をつけるのもよいかもしれません。またヤッコ、チョウチョウウオ、フグの仲間などはカイメンを捕食します。

マメスナギンチャク・ディスクコーラル

ライブロックにマメスナギンチャクやディスクコーラルがついていることもあります。このようなサンゴを育てるのは楽しいものです。特にマメスナギンチャクは産地によるバリエーションも多く、コレクションも楽しいです。しかし増殖しすぎることもあるので注意が必要です。

有害?無害?

これらのサンゴは餌をあげたら増殖します。しかし増殖しすぎてもてあますこともあります。

対処法

増えすぎたらつまんで間引いてしまうとよいでしょう。またフラッギングして増えたサンゴを友人と交換するのも楽しいでしょう。

セイタカイソギンチャク

マリンアクアリストには「カーリー」、学名からアイプタシアと呼ばれることもあるイソギンチャクの一種です。ライブロックに付着していたり、サンゴの骨格部にくっついて水槽に入ってくることが多く、一度入ってきたら爆発的に増殖するという特徴があります。そのため駆除が必要になるのです。

有害?無害?

セイタカイソギンチャクはサンゴにとって強い毒があり、サンゴにダメージを与えることもあります。また非常に繁殖力が強く、対策は必須といえます。

対処法

ペパーミントシュリンプなどが食べてくれます。またレッドシーの「アイプタシア―X」のように、駆除するための専用の薬剤も販売されています。詳しくはこちらの記事もご覧ください。

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ホヤの仲間

ホヤの仲間もカイメンほどではないですが、ライブロックにはよくついている生物といえます。写真のホヤは透明感があり、入・出水孔の付近に黄色の斑点があり美しいですが、このようなものは珍しいです。またホヤには餌を与える必要もあり、カイメンと比べて長期飼育は難しくなります。

有害?無害?

特に有害となることはありません。そのまま放置して大丈夫ですが、逆に増やしたい場合は液状のフードなどを与えたいところです。そうしないと消えてしまうことが多いようです。

対処法

とくに害はないので放置して問題ありません。なおヤッコの仲間チョウチョウウオなどは、ホヤをつついて食べてしまいますので、そのような魚を入れているとそのうちいなくなるようです。

イワズタの仲間

ウミズタの仲間はアクアリウムでお馴染みの海藻ですが、これがライブロックについていることもあります。ライブロックについていることが多いのはスズカケズタやタカツキズタ、ヘライワズタなどが多いです。

有害?無害?

クビレズタは別名「ウミブドウ」と称され、食用としてしられる海藻ですが、マリンアクアリストにおいてもよく飼育されているもので、光合成をしたり、栄養塩を文字通り「栄養」とし、増殖していきます。ただし生えすぎると水流を遮るなどのデメリットも出てきます。

対処法

こまめに刈り取るようにしましょう。根絶させたい場合はニザダイ(ハギ)やアイゴの仲間を入れておくときれいに食べてくれますが、個体によってはサンゴを食べることもあり、注意が必要です。

バロニアの仲間

バロニアは緑色の球状の形をした単細胞からなる藻類です。オオバロニアなど鑑賞用として販売されることもありますが、一般的にはサンゴやライブロックを買ったときについてきて水槽に入ってきたというパターンが多いようです。

有害?無害?

特に害はないのですが、見栄えがよくなく、大発生してしまうこともあり、あまり歓迎されません。またつぶれるとリン酸塩の濃度が上がってしまうともいわれ、サンゴ水槽に入れるのは推奨されないようです。海藻用リフュジウム向けといえそうです。

対処法

見栄えが悪いなと思ったらつまんで水槽から出すようにします。ライブロックの上に生えたものはライブロックごと水槽から出して取り除きます。サンゴ岩などについたものはサンゴ岩ごと水槽から出して真水で洗うのもよいようです。エメラルドグリーンクラブなどはバロニアをつぶして食してしまいますが、バロニアはつぶしてしまうと逆に大量発生するので注意が必要です。

シオグサの仲間

▲サンゴ岩に生えるシオグサ

▲顕微鏡で見たシオグサ

サンゴ岩やライブロックに生える海藻の一種です。イワズタの仲間同様緑藻の一種なのですが、イワズタよりも硬くて岩にしっかりと固着しています。顕微鏡でみると細長い細胞が連なって一つのシオグサを形成します。

有害?無害?

魚を襲ったりすることはないのですが、繁殖力が強くライブロックを覆うレベルで増殖することもあります。そのため早いうちに水槽から取り除いてしまったほうがよいでしょう。

対処法

手やピンセットでちぎったり、サンゴ岩を水槽から出したり、暗いサンプ内に入れておくなどして弱らせます。エメラルドグリーンクラブが食べてくれることもありますが、個体差もあり、食べない個体も多いようです。緑藻の仲間なのでカエルウオは食べず、ニザダイやアイゴなどもほとんど効果がありません。

ハネモ

ハネモは緑藻の仲間です。先端部の形状が羽毛のように見えるのが特徴です。写真は砂の上に発生したもので小さいのですが、もっと大きなものがライブロックやポンプなどの器具に生えることがあります。

有害?無害?

大量発生しやすく、サンゴなどを覆ってしまうことがあります。そのため水槽では厄介者になりやすく、できるだけ早いうちに水槽から取り出すようにしなければなりません。

対処法

砂の上に生えたものは砂ごと水槽から取り出しますが、ライブロックに生えているものはゴシゴシ削り取るなどしなければなりません。ハネモにも種類があり、ある種のものはヒフキアイゴが食べてくれることもあるようですが、カエルウオなどは食べてくれません。ちなみに写真のような個体はヤドカリの仲間のヨコバサミ類が食べてくれたのか、これらのヤドカリを入れるとだいぶ減っていきました。このほかレタススラッグというウミウシもハネモを食べてくれるようです。

一方であまりにもひどい場合はライブロックを取り出して天日干しにするしかありません。そうなると当然ハネモだけでなく、ライブロックに付着していた微生物も死んでしまうので、あくまで最終手段として使うようにします。

まとめ

  • ライブロックから出てくる生き物にはほかの生き物に悪さをすることも
  • シャコはほかの生き物を襲う
  • カニの仲間は大きいものほど危険性が大きい
  • ウミケムシは魚などにはあまり害はないが刺されると痛い
  • ウズマキゴカイは水槽壁面に発生したら取り除く
  • カンザシゴカイやケヤリムシは大発生しにくくきれいでかわいい
  • ヒトデの仲間はサンゴに有害なものも
  • ウニの仲間はアクリル水槽では要注意
  • クモヒトデの仲間は無害。掃除屋さんとしても活躍
  • 巻貝の仲間は種類によってはサンゴに有害なことも
  • カイメンの仲間は無害、水槽を浄化する
  • ディスクコーラルやマメスナギンチャクがついていることも
  • カーリーはサンゴ水槽の大敵。毒性が強くサンゴを弱らせる
  • ホヤは無害だが給餌しないといなくなる
  • イワズタの仲間は増殖しやすい。増えすぎそうなら適度に間引く
  • バロニアは間引くときに破らないように注意
  • ハネモは大量発生しやすくサンゴを覆うことも

2020.03.25 (公開 2020.03.25) メンテナンス

海水水槽の壁面に付着する「白いウズマキ」の正体と対処方法

マリンアクアリウムにおいては、水槽内に得体のしれない生物が出現することはしばしばあります。その一つとして、サンゴ水槽など、水槽やサンプのガラス・アクリル面や壁面、ヒーターやポンプなどの器具にウズマキ、貝のような白い点がいっぱい付着していることがあります。

今回はこの生物の正体と、ほかの生き物に有害なのかそれとも無害なのかについて解説します。

白いウズマキ、貝の正体

▲上記の「ウズマキ」を拡大してみたところ

水槽やサンプのガラスや壁面、各種器具、オーバーフロー水槽のパイプなどに多数発生するこの白いウズマキのような形の物体はウズマキゴカイと呼ばれる多毛類、つまりゴカイの仲間なのです。この白い管の中にウズマキゴカイが潜んでいます。水槽には主にライブロックについていたものが入ったものが増殖した可能性が高いです。サイズも数mmという小さいもので、ライブロックに紛れやすいものです。また貝殻などに付着していることもあります。

ライブロックにはほかにも様々な種類のゴカイが潜んでいることが多く、ウミケムシのように毒の毛を持っているものもいますが、白く細長いものを出すようなゴカイや、チンチロフサゴカイのようなカラフルなもの、カンザシゴカイのような、ライブロックの穴から鮮やかな鰓冠を出しているものなども知られており、ひとくちに「ゴカイ」といってもいろいろなものがいるのです。

悪さはするの?

▲ウミケムシの仲間。毒の毛をもち刺されると痛む

ゴカイの仲間にはウミケムシのように「毛」の部分に毒があり刺されると危険なもの、オニイソメのように魚を捕食してしまうようなものなど、水槽内で問題を起こすような種類も知られていますが、ウズマキゴカイは無毒で、海水魚やサンゴに対してはとくに悪さをすることはありません。しかし水槽の中で大量発生してしまうと水槽の中身が見えにくくなることもあります。マリンアクアリウムは見て楽しむ趣味なのですから、水槽の中を見るのに支障があるとあまり楽しめないわけです。そのため、適度な除去が必要になってきます。

除去方法

除去の方法は簡単です。水槽ガラス面をスクレイパーで削るだけ。これで完了です。しかし、スクレイパーで削るととくにアクリル水槽では傷だらけになってしまうため注意が必要です。やわらかいアクリル水槽用のスクレイパーを使用しても、削り方を間違えたりすると水槽に傷がつきますので注意が必要です。がしがしと強く削ったりしなくても、壁面についたウズマキゴカイはターゲットスポイトの先端でつついても取り除けるくらいなので、優しく削るのがコツ、といえそうです。

そのほかの駆除方法としてはヤッコの仲間などがつついて食べてしまうこともあります。そのせいか、我が家では魚水槽よりもオーバーフロー水槽のサンプ(水溜め)でとくに大発生しているように思います。

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白いウズマキまとめ

  • 正体はゴカイの仲間
  • ライブロックや貝などに付着して水槽に入ってくる
  • 毒はなく魚やサンゴ、甲殻類には無害
  • 増えすぎると水槽のガラス・アクリル面にもつき中が見えなくなることも
  • スクレイパーで駆除するが鑑賞面が傷つかないよう注意。とくにアクリル水槽は要注意

2020.03.24 (公開 2020.03.23) 水槽・器具

オーバーフロー水槽の循環ポンプ~絶対に値段だけでは選ばないこと

オーバーフロー水槽はサンプの水を水槽に注水し、水槽からあふれた水をサンプ(水溜め)におとしてその中でろ過やプロテインスキマーによる有機物除去を行い、ろ過された水を循環ポンプで持ち上げるシステムです。この循環ポンプがオーバーフロー水槽では非常に重要な役目を果たします。循環ポンプにはマグネットポンプと水中ポンプの2種類があります。はじめてオーバーフロー水槽を購入するときや比較的小型のオーバーフロー水槽であれば水中ポンプ、120cm以上の水槽であればマグネットポンプというように使い分けるとよいでしょう。ここではオーバーフロー水槽の循環ポンプの種類とその選び方についてご紹介します。

循環ポンプとは

オーバーフロー水槽をまわすためのポンプです。オーバーフロー水槽の水はフロー管を伝い落下し、サンプにたまります。このサンプにたまった水を循環ポンプを使ってくみ上げます。循環ポンプはオーバーフロー水槽の心臓部と言えます。このポンプになんらかのトラブルが発生して停止してしまえば、水が循環されず、水が汚れて魚やサンゴが死んでしまいます。ですからこの循環ポンプはよく考えて選ぶ必要があります。絶対に値段だけでは選ばないようにしましょう。

オーバーフロー水槽の循環ポンプの種類

オーバーフロー水槽の循環には、一般的に水中ポンプとマグネットポンプのどちらかが使用されますが、どちらも一長一短がありますので、水槽のサイズや状況にあわせて選択することになります。迷ったらお店の人に相談しましょう。

マグネットポンプ

▲筆者宅 大型オーバーフロー水槽メインポンプに使用しているレイシーRMD 551

マグネットポンプは陸上に置いて使用するタイプのポンプで、大型(120cm以上)オーバーフロー水槽ではこのマグネットポンプが使用されることが多いです。90cmオーバーフロー水槽であれば、このマグネットポンプを採用することも、水中ポンプを採用することもありえますが、120cm以上の水槽ではマグネットポンプの採用が多いです。

メリットはハイパワーであることはもちろんですが、ポンプ自体は陸上に置くことになるため水温の上昇が抑えられることがあげられます。デメリットは高価であること、音が気になること、実際に設置する際にサンプの加工を行う必要があることがあげられます。通常サンプに穴を開けて設置するのですが、場合によっては水漏れのおそれもありますので要注意です。オーバーフロー水槽を購入したお店にやってもらうのが一番よいでしょう。一旦設置してしまえば長くメンテナンスしなくても使用できるので、おすすめといえます。

レイシーマグネットポンプ RMD-551

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水中ポンプ

▲エーハイム製の小型水中ポンプ。パワーは低めで小型OFに最適

90cm以下の(比較的)小型オーバーフロー水槽には水中ポンプが採用されることがほとんどであり、それより大きな水槽であってもDC水中ポンプが人気の昨今では水中ポンプが使用されることも多いです。水中ポンプを使用するメリットはサンプに加工をしなくてもよいので水漏れの心配が少ないこと、比較的音が静かになることです。デメリットとしては水温を上げてしまうおそれがあること、定期的なインペラーのメンテナンスが必要になることなどです。また、マグネットポンプと比較するとパワーもやや低めです。なお、中には水中ポンプとしても、陸上ポンプとしても使えるものがあります。

パワーが低めな分水中ポンプはマグネットポンプと比べて安価ではありますが、値段だけで決めるということは絶対にしてはいけません。ECモールサイトで中国メーカーの極めて安価なポンプを購入したところ、生物に有害なグリースがべったりと塗られていた、とか、品質チェックもろくにしていないのか、それとも有名ブランドのポンプの検品除外品を販売しているのかわからないですが、全く動かなかったなんていうこともあります。エーハイム、ネワ(ナプコ)、リオ(カミハタ)など有名なブランドであれば問題はないと思いますが、使用する前によく洗浄することをおすすめします。

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ACポンプとDCポンプの違い

ACポンプ(交流ポンプ)

ACポンプは従来からある製品で、DCポンプよりも静音性や省エネという観点では劣り、多くのポンプはヘルツフリーでないなどの欠点もありますが、耐久性では圧倒的にこちらが優れています。ただしヘルツフリーでないものがほとんどで、引越・転勤が多いというアクアリストには向きません。主なものとしてはナプコから販売される各種ポンプ、シッチェシンクラ(エムエムシー企画)、リオ(カミハタ)などの水中ポンプや、レイシー(イワキ)、三相などから出ているマグネットポンプがあります。我が家の水槽で使用しているのもこのACポンプになり、海水魚水槽ではリオの水中ポンプを、サンゴ水槽ではレイシーのマグネットポンプを使用しています。

DCポンプ(直流ポンプ)

最近はこちらのDCポンプが人気といえます。省エネや静音性に優れており、ハイパワーです。しかしながら電子部品が多く使用されているので、ACポンプと比べるとどうしても耐久性は劣ってしまうようです。最近はDCポンプの中でも高耐久性をうたう商品が販売されていたりしますが、非常に高価です。ヘルツフリーでないACポンプと異なり、50Hz/60Hzどちらでも使用できるというメリットもあります。主なDC循環ポンプJebao DCポンプ(LSS研究所)や、ZOOX アルティメットアクアリウム DCポンプ(エムエムシー企画)などがあります。

ただ、オーバーフロー水槽の循環というものは、循環ポンプが停止してしまえば生物の死につながります。耐久性の低いものを水槽の心臓に使用するのはどうかと思います。はじめてオーバーフロー水槽を飼育するのであれば、マグネットポンプか、従来から使用されて実績あるAC水中ポンプがおすすめです。

水槽サイズに合わせた流量選択

▲リオプラス1100を250リットルのOF水槽のメインポンプにするのは困難。上位機種を推奨

一般的には「総水量(リットル)×回転数(回/時)÷60(分)」で、ポンプの揚水量が求められるとされています。回転数というのは水が水槽を回る(ろ過槽を通過する)かというもので、一般には毎時3~6回転くらいさせるのがよいといわれます。総水量180リットルのオーバーフロー水槽で毎時4回転させるのであれば、180×4÷60で、だいたい12リットル/分の揚水量をもつポンプが最適、となります(ただしメーカー公称値はあてにならないことも多いので注意)。

ただし注意したいことがあります。ポンプの先に殺菌灯やクーラーなどをつければ抵抗になってしまいます。また配管が曲がりくねった場合はそれも抵抗になりますので注意が必要です。できればワンランク上のものを購入するようにしたいものです。そんな抵抗がイヤという場合は、殺菌灯やクーラーを別のポンプで循環させる方法もあります。メインポンプに負荷はかかりにくくなりますが、その分水温の上昇を招くことがあるので注意が必要です。多少高価になっても、やはり実績のある、信頼できるショップにおまかせするのが一番です。

ポンプのメンテナンス

▲小型オーバーフロー水槽のポンプ。水中ポンプはこまめなメンテナンスが重要だ

常に水中に置いていて、デトリタスなどが詰まりやすい水中ポンプを使用するのならばとくにこまめなメンテナンスが重要です。3か月~半年に一度はインペラーを洗浄するなどのメンテナンスを行うようにしたいものです。インペラーが壊れたらポンプは動かなくなり、そうなってしまうと水が循環されなくなってしまうので、万が一の故障に備え、予備のポンプを持っておくくらいの対策はしておくべきかもしれません。私もオーバーフロー水槽の循環用に使用していた水中ポンプが突然動かなくなった、という経験をしていますが、その時は予備の水中ポンプ(現在使用しているリオプラス)を使用することでピンチを切り抜けました。

一方マグネットポンプは一度設置してしまえば、メンテナンスフリーで長期間使用することができます。ただ本体を軽く水拭きするなどのメンテナンスはした方が長く使うのに役立つでしょう。

まとめ-マグネットポンプと水中ポンプの比較

マグネットポンプのメリット

  • パワーがある
  • メンテナンスフリーで長期間稼働させられる
  • 水温の上昇を抑えられることも

水中ポンプのメリット

  • 音がマグネットポンプより静か
  • サンプに穴を開けなくてすむ
  • 比較的安価で入手もしやすい

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2020.03.19 (公開 2020.03.19) 海水魚図鑑

ジュウモンジサラサハゼの飼育方法~きれいなハゼだがサンゴとの相性は悪い

ジュウモンジサラサハゼはサラサハゼ属の一種で、頭部のピンク色の線や橙色の格子状模様などがおしゃれできれいな魚です。きれいなのでついつい水槽に入れてみたくなるのですが、砂ごと餌を食ういわゆる「ベントスハゼ」の一種で、しかも中層を泳ぐこともあるためサンゴ水槽には入れにくい種類です。今回はこのジュウモンジサラサハゼの飼育方法をご紹介します。

標準和名 ジュウモンジサラサハゼ
学名 Amblygobius decussatus (Bleeker, 1855)
英名 Crosshatch goby, Orange-striped gobyなど
分類 スズキ目・ハゼ亜目・ハゼ科・ハゼ亜科・サラサハゼ属
全長 7cm
飼育難易度 ★★☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッドなど
温度 25℃前後
水槽 45cm以上
混泳 大型魚には食べられやすい。白点病にかかりやすい魚との混泳も避ける
サンゴとの飼育 サンゴに砂をかけるおそれあり。あまり適さない

ジュウモンジサラサハゼって、どんな魚?

▲サラサハゼ

ジュウモンジサラサハゼは以前ご紹介しましたサラサハゼと同じ属の海水魚ですが、色彩はグレーのサラサハゼと異なり、白っぽいからだで、頭部には目立つ縦線、体側には薄いだいだい色の横帯と縦帯が特徴がありおしゃれです。おそらく名前もこの帯にちなむのでしょう。英名Crosshatch gobyもまさにこの斑紋にちなむもので、一方Orange-striped gobyというのは体側の縦・横帯の色彩にちなみます。また尾鰭の付け根のあたりに小さな赤色斑があります。よく似たものにホホベニサラサハゼという種がいますが、ホホベニサラサハゼには横帯がなく縦帯のみで、尾の付け根の赤色斑がありません。

全長は7cmほどと、15cmに達するサラサハゼよりは小型なので、そのぶん水槽には入れやすいといえます。

ジュウモンジサラサハゼに適した飼育環境

水槽

▲90cm水槽で飼育されているジュウモンジサラサハゼ

それほど大きく育つ魚ではないのですが、安定して飼育ができるのは45cm以上でしょう。ほかの魚との混泳が楽しむのであれば60cm以上の大きさの水槽が飼育しやすいといえます。

水質とろ過システム

水質悪化にはある程度耐性がありますが、できるだけきれいな水で飼育したい魚です。底砂を動かすタイプの魚ですので、底面ろ過装置は選択肢になりません。60cm以下の水槽であれば上部ろ過槽を使用するか、外掛けろ過槽+外部ろ過槽の併用が適切でしょう。それ以上の水槽では上部ろ過槽が第一選択肢になりますが、可能であればオーバーフロー水槽がよいでしょう。

中層を泳ぐサラサハゼ属のベントス食ハゼで、サンゴとの飼育にはあまり適していない魚です。また砂を掘ったりしますのでDSB水槽などでは飼育しないほうがよいでしょう。

水温

基本的に水温は25℃前後を維持します。大体22~26℃くらいが理想ですが、水温の変動が大きいのはいけません。

底砂

ベントス食性のハゼは砂をほる習性がありますので飼育下では砂を敷いてあげたいところですが、砂を厚く敷くと硫化水素が発生しやすいので、薄く敷くようにします。3~5cmほどがちょうどよいといえます。なお、砂の種類はパウダー状のものをメインにし、本種を飼育している水槽でテッポウエビを飼育するのでしたらパウダー状のサンゴ砂に加え、粗目のサンゴ砂を少し混ぜるのもよいでしょう。

フタ

ジュウモンジサラサハゼは遊泳性が強いため、遊泳性のクロユリハゼと同じように、フタはしっかりしておく必要があります。そうしないと干物と対面する可能性が高いからです。

ジュウモンジサラサハゼに適した餌

最初のうちは底砂の上に粒状の餌をばらまいて与えます。なれれば浮いた餌も食うようになります。ただしフレーク状の餌はあまり向いていません。薄っぺらく量的に少ないからです。コペポーダやホワイトシュリンプなどを与えるのもよいのですが、これらの餌は水を汚しやすいのでたまに与える程度にとどめておきましょう。

ジュウモンジサラサハゼをお迎えする

沖縄(八重山諸島に多い)では採集することもできますが、ほかの地域では採集することは難しいといえます。海水魚店で販売されていることもあり、沖縄以外にフィリピンやインドネシアから入ってきます。そのため安価ではありますが、状態については注意したほうがよいでしょう。安価で販売されているので雑な扱いを受けていることもあるからです。体に傷があるもの、鰭が溶けているようなもの(少し切れている程度であれば問題ないことが多い)、体表や鰭に赤いただれがあるようなもの、眼が濁っているものなどは購入するのを避けます。

また、この手のハゼはやせやすいので、そのような個体は選ぶのはやめます。ペラペラなのは回復させるのはまず無理ですが、そうでない個体であっても、背中の肉がついていなかったり、腹部がへこんでいるのも購入しないほうがよいです。ふっくらした丸みのある個体を選ぶようにします。

ほかの生物との関係

ほかの魚との混泳

▲ほかの魚(シールズカーディナルフィッシュ)との混泳例

おとなしめの魚で、ほかの魚との混泳もできます。小型のハナダイ、写真のようなスジイシモチ属のテンジクダイ類、遊泳性ハゼ各種、同様に小型のハゼ、小型のベラなどです。ただしチョウチョウウオやキイロサンゴハゼなどは白点病にかかりやすいため、一緒に飼育することは避けなければなりません。また、細長い体をしており捕食性の魚との混泳もいけません。このほか、大きめのスズメダイやメギス(ドティバック)などは気性が激しく、混泳には不適です。

サンゴ・無脊椎動物との相性

▲サンゴと飼育するのには適さない

サンゴとの相性は悪いといえます。本種は口の中に砂を入れて、餌だけを食べて鰓から砂を排出するタイプのハゼ、つまりベントスハゼの仲間だからです。その中でも本種を含むサラサハゼの仲間は中層を泳ぎ回ることも多く、サンゴの上に砂を落とすなどしてダメージを与えることもあるからです。とくにハードコーラルの仲間はやめたほうが無難でしょう。写真ではキクメイシの仲間がうつっていますが、このキクメイシもジュウモンジサラサハゼの砂かけ攻撃を受け弱って死んでしまいました。

またイソギンチャクはハゼの仲間を捕食してしまうこともあるので一緒に飼育しないほうがよいです。サンゴやイソギンチャク以外の無脊椎動物、例えば甲殻類は小型のエビやサンゴヤドカリなどとであれば問題なく飼育でき、マガキガイやニシキウズなどの貝類や海藻も問題ないことが多いです。

ジュウモンジサラサハゼ飼育まとめ

  • サラサハゼに似ているが頭部や体側の斑紋が美しい
  • サラサハゼよりも小型で水槽に入れやすい
  • 45cm以上の水槽で飼育できるが60cm以上の水槽がよい
  • 底面ろ過槽やDSB水槽では飼育できない。上部ろ過槽が最適
  • 水温は25℃前後
  • パウダー状の底砂を3~5cm敷く
  • 飛び出しやすいのでフタはしっかりする
  • 底に沈んだ餌のほか、慣れれば浮いた餌も食べることが多い
  • 体に傷があるものや鰭が溶けているもの、入荷してすぐのものは購入しない
  • 背肉が落ちたものや腹部がへこんでいるものも避けたほうが無難
  • 温和な魚となら混泳も可能
  • 肉食性が強い魚や気が強いスズメダイ、白点病にかかりやすい魚との混泳も避ける
  • サンゴやイソギンチャクとの飼育には不向き
  • サンゴヤドカリなど小型甲殻類との飼育は可能

2020.12.04 (公開 2020.03.16) 海水魚飼育の基礎

旅行や留守中の海水魚水槽の扱い~アクアリストはどうしているの?

私は、四国や九州、沖縄など、全国いたるところへ採集に出かけています。そのような話をすると、驚かれることがあります。

「え、魚を置いて出かけるんですか?」

と。結論から言えば、1週間未満の短い旅行や出張であれば、魚を放置していても問題ないことが多いのです。今回の記事では海水魚を飼育している私がどうやって旅行へいくのか、そして旅行に行っている間の世話はどうするのかということをご紹介します。

海水魚を飼育していると旅行や出張にはいけないのか?

海水魚を飼育していると旅行や出張にはいけない、ということはありません。

実際に私も魚をおいて遠出をしたことは何度もあります。

うまく水槽が立ち上がって安定している、一般的な海水魚水槽では3泊4日くらいでは問題ないことが多いです。長期間留守にするわけでなければ、旅行に行くことができるのです。ただし1週間以上の長期の旅行や出張は難しくなることがあります。その場合、信頼できる熱帯魚店に預けるなどしなければなりませんが、それをやってくれるところは多くありません。

旅行前の心がけ

海水魚を飼育していると旅行へ行けないわけではないのですが、旅行の前に気をつけておくべきポイントというのがあります。

旅行直前に生体を追加しない

▲とくにイソギンチャクは要注意!

旅行へ行く直前に新しく生き物を追加してはいけません

これは新たに追加した生き物が、旅行に伴う留守中にどのような悪さをするかわからないからです。サンゴは接触した場合、強い毒をもったサンゴがダメージを与えることもありますし、イソギンチャクなどは留守の間に動き回るようなことがあればサンゴを毒で弱らせたり、オーバーフロー管に詰まったりして水槽を壊滅させるおそれもあります。旅行に行くときは飼育しているイソギンチャクの様子についてはとくにしっかり見ておかなければなりません。

サンゴは接着剤で固定しておく

▲サンゴが崩れないよう固定しておくのは大事

サンゴは接着剤で固定しておきましょう。サンゴがカニやヤドカリ、エビなどが餌を探したり、あるいはよじ登るなどして岩組から落下してしまうおそれがあるからです。このほか軽い地震でも落下してしまうおそれがあるので、旅行に関係なく、サンゴは常に、しっかりと接着しておきたいものです。

接着には専用の接着剤を使用します。プラモデルなどをつくるときなどに使う接着剤には有機溶剤が含まれていることが多く有害なので、かならずサンゴ用の接着剤を使うようにしましょう。おすすめはデルフィスの「ウォータージェル」です。同社からでている「クイックジェル」よりも硬化するのに時間はかかりますが、水中でも接着することができるのは大きなメリットといえます。

冬季は要注意

冬は乾燥しやすくヒーターなどを使用していることもあり、水の蒸発が起こりやすいともいえます。最悪ヒーターが露出しても最近のヒーターは故障するくらいで火災が発生しにくいようにはなっていますが、水位が減少したり塩分が濃くなり魚の調子が悪くなったりすることもあります。近年は自動給水装置などもあり、そのようなアイテムを使用してもよいですがやり方を間違えるとサンゴなどが死滅してしまうこともありますので、必ずあらかじめ動作をチェックしたり使用方法を覚えておく必要があります。

旅行の直前に気を付けること・すべきこと

だれかに餌やりをしてもらえるか聞いてみる

留守中家にだれか家族がいるのであれば、餌をあげてもらうのが一番確実といえます。あらかじめ家族、もしくは同居している人にどの餌を何回、一度にどれだけの量を与えるのか十分伝えておきましょう。

旅行前に餌を与えすぎない

旅行中に魚が腹ペコになるからといって、旅行前に餌をたくさん与える、というのはやってはいけないことです。魚は餌を食べた後排せつを行うので、その排せつ物の量も増えたりしてしまい、あるいは食べ残しが出てしまったりして、水質の悪化を招きやすいからです。極力普段通り、もしくは普段よりも少なめをこころがけましょう。

水かえをするときは軽く

旅行中に水かえ、というのは通常はできませんので、旅行前には軽く水かえをしておくとよいでしょう。ただし「軽く」というのが重要で、がっちり水をかえるようなことはしないほうが無難です。がっちり水を大量にかえてしまうと、それによって万が一魚やサンゴに問題が起こっても留守中なので対応することができないからです。

二つのろ過装置を設置する

▲小型水槽に使用している二つの外掛けろ過槽

オーバーフロー水槽以外で海水魚を飼育している場合は、二つ以上のろ過装置を併用するとよいでしょう。これはろ過槽がトラブルなどで止まってしまうのを防ぐためです。とくに外掛けろ過槽はちょっとしたことですぐ止まってしまうので、上部ろ過槽などほかのろ過槽をつけるのが安心です。また上部ろ過槽を使用していても水の蒸発などにより停止してしまうことがあるので、保険のためにも二つのろ過槽を使うようにしたいものです。

ただし停電などが発生してしまったらどうしようもありません。通電するだけで簡単に復旧する投げ込み式ろ過器などをつけておくのも手です。

旅行時のお役立ちグッズ

タイマー

水槽の照明をつけっぱなしにしておくと、魚は夜間も眠ることができず、ストレスを感じてしまいます。またずっと水槽を照らすことになるので、水槽の壁面やガラス面にはコケが大量に発生してしまいます。逆に真っ暗だと魚は起きることができますが、サンゴにとってはよくありません。そのため、水槽の電気をつけたり、消したりしてくれるタイマーを使用するようにしましょう。

ただし、タイマーに接続してよい機材は照明と水流をつくるための水中ポンプだけです。循環ポンプやろ過槽、ヒーター、クーラーなどには絶対タイマーを接続してはいけません。循環ポンプやろ過槽が動かなくなるとろ過がなされなかったり、酸欠により魚が死んでしまうおそれがあります。ヒーターやクーラーにつないでしまうと水温が一定にならなくなりますので魚が病気になったり、死んでしまうことがあるからです。

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自動給餌器(オートフィーダー)

自動給餌器(オートフィーダー)は、自動で餌を与えてくれる便利なアイテムです。ただし取り付けるときに水槽上部にピッタリしたフタができなくなってしまうため、ハゼの仲間などを飼育しているときなどは注意が必要です。

いろいろなメーカーのものが販売されていますが、ジェックスやテトラ、エーハイムから販売されているものが間違いないでしょう。購入する前にはどこが販売しているかチェックしなければなりません(日本のアマゾンや、チャームなど日本国内のペットショップから配送されてくるのがおすすめ)。中国メーカーや検品落ち品を購入するよりは若干高くても日本国内から発送されてくるものを購入したほうが迅速かつ保証もしっかりしており安心です。

自動給水装置

冬季は水が蒸発しやすく、塩分は蒸発しないので海水の塩分が濃くなってしまうことがあります。その蒸発のときに役に立つのが自動給水装置です。

この装置にもフロート式や光センサー式などいくつかのタイプがあるのですが、トラブルが発生すると塩分が薄くなりサンゴなどに致命的な害を与えることもありますので、この装置を使う場合も自動給餌器同様、旅行の前にあらかじめ作動させて使用方法を覚えておく必要があります。

お役立ちグッズを使う際の注意

あらかじめ出かける何日も前に実際に作動させておき、動きなどをしっかりチェックしておきましょう。タイマーやオートフィーダーが不良品で餌が出てこないとか、タイマーの使い方がわからない、餌の量が多すぎた、なんていうトラブルをふせぐためです。

まとめ

  • 海水魚を飼育していると旅行や出張へいけない、ということはない
  • しかしそれでも注意しておくべき点がある
  • 旅行前には生体を追加しない
  • イソギンチャクは状態に要注意
  • サンゴは接着剤でしっかり固定する
  • 冬季は水分の蒸発に注意する
  • 誰かに餌やりをしてもらえるか聞いてみる
  • 旅行前には餌を与えすぎない。いつも通りか、やや少なめに
  • 旅行直前に水をがっちりかえない
  • 二つ以上のろ過装置を併用するとよい
  • タイマー、自動給餌器、自動給水装置などお役立ちアイテムもある
  • 旅行前にあらかじめ使って動作を確認しておくこと

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2020.03.15 (公開 2020.03.12) サンゴ図鑑

アザミサンゴの飼育方法~強い毒性をもつためほかのサンゴとの接触に注意!

アザミサンゴはイシサンゴ目ビワガライシ科のハードコーラルで、よく似た名前でマリンアクアリストにとって人気のあるウミアザミとは大きく異なるサンゴです。飼育は比較的容易なサンゴではありますが、毒性が非常に強いサンゴとしても知られており、触れたサンゴを溶かしてしまうこともあります。そのためほかのサンゴと接触しないように注意しなければなりません。今回はアザミサンゴの飼育方法をご紹介します。

アザミサンゴって、どんなサンゴ?

アザミサンゴは群体を作る好日ハードコーラルであり、分類学的にはイシサンゴ目ビワガライシ科の中に含まれている六放サンゴの仲間です。日本では西表島での群体が有名ですが、1989年、このアザミサンゴの群落に落書きがなされるという出来事が発生し東京の大新聞が取り上げたものの、結局それは新聞カメラマン自らが落書きをする、つまり記事を捏造したことであることが判明するなど、悪い意味でも有名になってしまいました。分布は広いようで、ほかのサンゴ礁域でも見られ、インドネシアなどから入ってくるものが販売されています。色は白っぽいものやグリーンのものなどが多く、特に写真のようなグリーンのものは青色LEDのもとで輝き非常に美しくなります。ただし色は変わってしまうこともあります。私が飼育しているアザミサンゴはグリーンからグレーへと変化してしまいました。

なお、アザミサンゴもフラグ化されているものが販売されることがありますが、珍しいといえます。

名前「だけ」似ているウミアザミ

▲ウミアザミ

マリンアクアリウムでは「ウミアザミ」というサンゴがよく知られており、ウミアザミも「アザミサンゴ」などと一部のアクアリストは使っているようです。しかし、ウミアザミは八放サンゴの仲間で、かたい外骨格を有しないソフトコーラルの一種であり、混同しないように注意しなければなりません。

アザミサンゴは飼育はしやすいですが、ウミアザミは水質にうるさく、しかも水質悪化には弱い面もありますのでやや飼育しにくいといえます。一方ウミアザミはほとんど毒性をもちませんがアザミサンゴは強力な毒をもち触れたサンゴを殺してしまうこともあります。

アザミサンゴに適した飼育環境

水槽

アザミサンゴは水質の悪化にはやや強く飼育しやすいほうですが、それでも水はきれいなほうが当然望ましいです。そうなれば当然水量が多い大型水槽での飼育が有利です。600×450×450(mm)以上の水槽が最適です。

水質とろ過システム

通常ろ過でも飼育できないことはないのですが、ベルリンシステムでの飼育が無難でしょう。そうなるとオーバーフロー水槽での飼育が有利となります。水質はある程度硝酸塩が検出されるような水槽でも飼育できますが、きれいな水を保つようにしましょう。逆に超低栄養塩のシステムでの飼育はあまり向いてないかもしれません。

水温

基本的に25℃をキープするようにしましょう。浅い海に生息するサンゴですので少しであれば29℃などの高水温には耐えられますが長期的な目でみるとあまりよくありません。

水流

水流は強めのものを好みますが、アザミサンゴに直接強い水流が長時間あたり続けるのはよくありません。

照明と配置場所

照明についてもあまり選ばずでT5、メタハラ、LED、いずれでも飼育できます。私はT5蛍光灯の直下に置いていますが、蛍光管やメタハラを使用する場合は経年による劣化に注意します。置き場所としては、メタハラ250Wの直下は避けたいところです。また毒性はつよく、接触してしまったほかのサンゴを溶かしてしまうため、あまりほかのサンゴの近くに置かないほうが望ましいといえます。

アザミサンゴに適した餌と添加剤

基本的に餌は不要なようで、与えるのであれば粉末フードを海水に溶いて与えますが、このようなやり方は水を汚しますので水質悪化には十分に注意しなければなりません。

添加剤

ハードコーラルですので、骨格の成長に添加剤は欠かせません。添加剤はカルシウム、ストロンチウム、マグネシウム、ヨウ素、微量元素などを添加します。カルシウムの添加やKHの維持には添加剤のほかカルシウムリアクターが効果的です。

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アザミサンゴとほかの生物との相性

魚や甲殻類との相性

▲スズメダイの仲間(ヤノリボンスズメダイ)との飼育例

アザミサンゴに限らず、ハードコーラルを飼育するのであれば、どのような種であれ一緒に飼育する魚は少ないほうがよいでしょう。魚種としてはスズメダイの仲間、ハナダイの仲間、遊泳性のハゼの仲間などであれば問題なく飼育できます。一方チョウチョウウオの仲間や小型ヤッコの仲間はサンゴをつついて食べてしまう習性があるので一緒に飼育するべきではありません。ハタなどは大型になり排せつ物も多く水を汚しやすいため、このような魚も不向きです。

甲殻類ではカニやヤドカリと飼育すると、サンゴをひっくりかえしてしまうこともありますので、専用の接着剤を使用して岩組に接着しましょう。また骨格は意外ともろいようで折れやすく、落書きをせずとも傷がつきやすいといえます。しっかり接着してあげることが重要です。

ほかのサンゴとの相性

▲サンゴ同士は離れた場所に配置する

アザミサンゴのふさふさした触手には非常に強い毒があり、触れたサンゴを殺してしまいます。私は大型のウネタケを飼育していましたが、このアザミサンゴに触れた部分が死んでしまい、死んでしまった部分をカットしてしまいました。ウネタケは毒性が弱いとはいえ、ほかのサンゴも触れてしまうと大きなダメージを受けてしまうため、アザミサンゴの触手が触れるところにほかのサンゴを配置してはいけません。

アザミサンゴ飼育まとめ

  • 好日性のハードコーラルでウミアザミとは大きく異なる仲間
  • カラーはベージュやグレー、グリーンなど。グリーンはブルーLEDのもとで美しく輝く
  • 硝酸塩の蓄積には耐えられるがなるべくきれいな水で飼育したい。ベルリンシステムが最適
  • 水温は25℃をキープ
  • 強すぎず弱すぎずの水流が必要
  • LED、メタハラ、T5などの照明で飼育することができる
  • 餌は基本的に不要
  • ハードコーラルなのでカルシウムなどの添加は必須
  • チョウチョウウオやヤッコなどはサンゴをつつくのでアザミサンゴとの飼育不可
  • 甲殻類などに落とされないよう骨格を土台にしっかり接着する
  • 毒性はきわめて強い。配置には注意

2020.03.25 (公開 2020.03.05) 海水魚図鑑

イットウダイの仲間を飼育する基礎知識

イットウダイの仲間(イットウダイ科)はキンメダイ目の海水魚です。メジャーな種類ではありませんが、テリエビスやイットウダイなどは赤い体に白い線が入り美しいので、古くから飼育されてきた魚です。意外と種類は多く、90種近くの種類が知られており、観賞魚としても20種近くが販売されています。今回はこのイットウダイ科魚種について基本的な情報をご紹介します。

イットウダイ科とは

▲イットウダイ科の含まれるキンメダイ目の魚たち

イットウダイ科はキンメダイ目イットウダイ科の魚類です。キンメダイ目魚類は深海性のものが多いのですが、このイットウダイ科は浅いサンゴ礁でもごく普通に見られます。浅いサンゴ礁域から深海にすみ、三大洋の熱帯域に広く分布していますが、ほかの熱帯性海水魚の多くの種同様、インド-中央太平洋域に多くの種が生息しています。

食用としては熱帯のサンゴ礁域でよく利用され、釣りや刺網などで漁獲されます。また鮮やかな赤色に白い縦線が入るなど綺麗な色をしたものも多く、観賞魚として飼育されるものも多いです。

イットウダイ以外のキンメダイ目魚類

水族館で見られる深海魚の代表種、ハシキンメ

キンメダイ目魚類はイットウダイ科のほかに、キンメダイ科・ヒウチダイ科・マツカサウオ科・ヒカリキンメダイ科・オニキンメ科・ナカムラギンメ科が知られています。ヒウチダイ科やマツカサウオ科、ヒカリキンメダイ科といった魚は水族館でおなじみで、キンメダイ科やヒウチダイ科は食用魚としても重要なものを含んでいます。

アクアリストにとってキンメダイ目で有名なものは、マツカサウオでしょう。この種は発光魚として知られていますが、生きたエビを好んで食べるので、配合飼料も食うイットウダイの仲間と比べると飼育難易度は高いです。ハシキンメの仲間もまれに観賞魚として出回り、深海生物としては飼育しやすいですが水温を低く保たなければ飼育することはできません。

棘に注意

▲ニジエビス(イットウダイ属)の棘

イットウダイ科のうち、特にイットウダイ属の魚の前鰓蓋骨には巨大な棘(黒い丸で囲んだ部分)があります。この棘には毒があるとも言われており、刺されるとずきずきします。短時間で痛みが引くので毒性は弱いようですが、注意が必要です。

イットウダイ科の基本的な飼育環境

イットウダイ科の魚は夜行性で、昼間は岩陰に隠れており、夜間に外に出て泳ぎ回ります。そのため飼育水槽でも岩陰を作ってあげましょう。サンゴを食べたりすることはなく、サンゴ水槽での飼育もできますが、エビやカニ、コシオリエビなどとの飼育は難しくなります。

イットウダイ科の食性

▲メガバイトレッド。Mサイズのほうがおすすめ

知られている限り、みな動物食性です。夜間に住処の岩陰から出てきて小魚や甲殻類を主に食べます。飼育下では配合飼料を食べてくれることが多いのですが、食べてくれないときはキビナゴの切り身やエビの切り身などを与えるようにします。ただしこのような餌は水質を悪化させやすく、注意が必要です。なお、釣り餌で使われるオキアミなどは与えない方が賢明でしょう。

配合飼料を与えるときは粒が大きめのものが最適です。アカマツカサのような口が大きいのは「メガバイトレッド」のSサイズよりはMサイズ、もしくはLサイズが適しているかもしれません。ただし個体サイズにより最適な粒サイズは異なります。

イットウダイ科・カタログ

▲イットウダイ亜科とアカマツカサ亜科

イットウダイ科は8属が知られ、うちイットウダイ属・ウケグチイットウダイ属・ノボリエビス属の3属はイットウダイ亜科に、アカマツカサ属・エビスダイ属・ヤセエビス属・リュウキュウエビス属・ヤスリエビス属の5属はアカマツカサ亜科に含まれています。このふたつの亜科は前鰓蓋部の隅角部に1本の大きな棘の有無(イットウダイ亜科にあり、アカマツカサ亜科には1種をのぞきない)および臀鰭軟条数(イットウダイ亜科7~10、アカマツカサ亜科10以上)により見分けられます。

イットウダイ属

▲アヤメエビス

▲線が白くないホシエビス

イットウダイ属を含むイットウダイ亜科は前鰓蓋骨の隅角部に大きな棘(前述)があります。これには毒があり、刺されるとズキズキとした痛みが走るので気をつけなければなりません。

ウケグチイットウダイ属に似た種もいますが、背鰭棘最後の1本は短く、軟条部には接しないことにより見分けられます。体に白い縦線が入るものも多いですが、アオスジエビスの縦線はグレーでありあまり目立たず、トガリエビスやクラカケエビスなど白い縦線がないものもいます。

日本には15種ほどが知られていますが、基本的には沖縄などに多く、温帯域に分布するものは限られています。たまにニジエビスやアヤメエビスなど一部の種が輸入されています。近海便ではテリエビスかイットウダイが多いですが、ほかの種は少ないです。最大種は沖縄では食用となるトガリエビスで40cmを超えますが、普通はもっと小さいです。

種一覧(★は日本産種、▲は日本にもいるがまだ和名のない種)

★イットウダイ Sargocentron spinosissimum (Temminck and Schlegel, 1843)

★テリエビス Sargocentron ittodai (Jordan and Fowler, 1902)

★ニジエビス Sargocentron diadema (Lacepède, 1802)

★アヤメエビス Sargocentron rubrum (Forsskål, 1775)

★クロオビエビス Sargocentron praslin (Lacepède, 1802)

★スミツキカノコ Sargocentron melanospilos (Bleeker, 1858)

★ヒメエビス Sargocentron microstoma (Günther, 1859)

★バラエビス Sargocentron dorsomaculatum (Shimizu and Yamakawa, 1979)

★ハナエビス Sargocentron ensifer (Jordan and Evermann, 1903)

★トガリエビス Sargocentron spiniferum (Forsskål, 1775)

★クラカケエビス Sargocentron caudimaculatum (Rüppell, 1838)

★スミレエビス Sargocentron violaceum (Bleeker, 1853)

★サクラエビス Sargocentron tiereoides (Bleeker, 1853)

★コガシラエビス Sargocentron iota Randall, 1998

★アオスジエビス Sargocentron tiere (Cuvier, 1829)

★ホシエビス Sargocentron punctatissimum (Cuvier, 1829)

▲スリースポットスクアールフィッシュ Sargocentron cornutum (Bleeker, 1854) 高知県、西太平洋

シミズスクアールフィッシュ Sargocentron shimizui Randall, 1998 インドネシア

スパイニースクアールフィッシュ Sargocentron lepros (Allen and Cross, 1983) 東インドー太平洋

Sargocentron hormion Randall, 1998 クック諸島~仏領ポリネシア

ハワイアンスクアールフィッシュ Sargocentron xantherythrum (Jordan and Evermann, 1903) ハワイ周辺

Sargocentron megalops Randall, 1998 ピトケアン諸島

ウィルヘルムスクアールフィッシュ Sargocentron wilhelmi (de Buen, 1963) ラパヌイ

イエローチップスクアールフィッシュ Sargocentron seychellense (Smith and Smith, 1963) 西インド洋

ビッグスケールスクアールフィッシュ Sargocentron macrosquamis Golani, 1984 西インド洋

ラティススクアールフィッシュ Sargocentron inaequalis Randall and Heemstra, 1985 西インド洋

Sargocentron marisrubri Randall, Golani and Diamant, 1989 紅海

ティンセルスクアールフィッシュ Sargocentron suborbitale (Gill, 1863) 東太平洋

ダスキースクアールフィッシュ Sargocentron vexillarium (Poey, 1860) 西大西洋

イッテンエビス Sargocentron bullisi (Woods, 1955) 西大西洋

リーフスクアールフィッシュ Sargocentron coruscum (Poey, 1860) 西大西洋

サドルスクアールフィッシュ Sargocentron poco (Woods, 1965) 西大西洋

レッドスクアールフィッシュ Sargocentron hastatum (Cuvier, 1829) 東大西洋

ウケグチイットウダイ属

▲ウケグチイットウダイ

ウケグチイットウダイ属はイットウダイ属よりも細長い体をしています。インド-中央太平洋、西大西洋に見られ、太平洋の分布はハワイ諸島、マルケサス諸島まででそれより東にはいません。5種類が知られ、そのうち日本産は4種がいます。よく知られているのはウケグチイットウダイで、日本では琉球列島や小笠原諸島だけでなく、田辺湾以南に見られます。ホソエビスはウケグチイットウダイに似ますが国内では石垣島で確認されているもののまれな種です。ヒレグロイットウダイは八丈島、長崎、琉球列島に分布し、その名の通り背鰭の多くの範囲が黒いのが特徴です。

ホホベニイットウダイと大西洋のロングジョースコーレルフィッシュは赤みを帯びた色彩が特徴的で、どちらも水深30m以深とやや深い場所にすみますので、アクアリストが採集することはまず無理でしょう。まれに観賞魚店に入ってくることがありますが、かなり高価です。一方浅い海にすむウケグチイットウダイはたまに観賞魚店に入り、安価で購入できます。

ノボリエビス属

大西洋の広い範囲に生息するイットウダイの仲間です。大西洋にのみ分布しており、他の海域では見られません。この仲間では最大クラスで全長50cmを超えますが、ふつうはもっと小さいです。入荷量は少ないのですが、ノボリエビスはたまに観賞魚店に入ってくることがありますが、大西洋産なのでウケグチイットウダイよりは高価です。

ウケグチイットウダイの仲間は背鰭の最後の棘が軟条に接近し、その前方の棘より長いことが多いようですが、ノボリエビス属は背鰭最後の棘は最も短く、軟条部に接近しないのでウケグチイットウダイ属と見分けることができます。イットウダイ属とは背鰭軟条部が長く伸びることにより見分けられます。

種一覧(日本産種なし)

ノボリエビス Holocentrus adscensionis (Osbeck, 1765) (大西洋)

ロングスパインスクワールフィッシュ Holocentrus rufus (Walbaum, 1792) (西大西洋)

アカマツカサ属

▲アカマツカサ属のセグロマツカサ

インド-太平洋域に見られ、日本では15種が知られています。眼が非常に大きく、顔つきも丸いのが特徴です。

一般的な海水魚店ではアカマツカサ、マルマツカサ、セグロマツカサ、ツマグロマツカサなどが見られ、近海魚に強い店舗ではナミマツカサとツマリマツカサがよく見られますが、同定が難しいこともあります。大きめのヤッコやハナダイと混泳できますが、口に入るような小さな魚とは飼えません。小型個体は釣り採集することができます。

アカマツカサ亜科は背鰭棘数は通常12棘の属が多いのですが、アカマツカサ属だけは通常11棘です。その棘のうち第10棘と11棘の間は完全に分離され、第11棘は軟条に接近します。またアカマツカサ属の中には側線有孔鱗数が27~30と少ないグループと32~43と多いグループに分けられ、前者にはアカマツカサ、セグロマツカサ、ウロコマツカサなどが含まれ、後者にはクロオビマツカサ、キビレマツカサ、アメマツカサなどがいます。ツマリマツカサは側線有孔鱗数28~29なのですが、なぜか「日本産魚類検索」で側線有孔鱗数32~43のグループに入れられており間違えやすいので注意が必要です。

エビスダイ属

▲エビスダイ

インド-中央太平洋、西大西洋に分布し14種が知られ、日本には4種が知られています。代表的な種は属の和名になっているエビスダイです。エビスダイは状態よい個体が水族館で飼育されたり、深海生物につよい海水魚店でも販売されていることがあります。両鼻骨間の溝は深いV字状なので、ひし形状のヤセエビスなどと見分けることができます。

水深200m前後の深場に多く見られる種類ですが、水族館で飼育されていることも多い種です。また近海魚メインのお店でもまれに販売されていることがあります。深海生物としては飼育しやすい種のようですが、それでも水温は低めに抑えなければならないでしょう。

ヤセエビス属

▲ヤセエビス

1属1種で、ヤセエビスのみが含まれます。水族館で飼育されていることもありますが、やや深場にすみ、状態よい個体は少ないようです。国内では相模湾以南に分布し、近海魚を扱う店が販売している可能性もあります。マイナーではありますが食用にもなり、刺身などに向きかなり美味です。

形態的な特徴としては両側の鼻骨間の溝がひし形であること、側線有孔鱗数が28~30であること、生鮮時体側の鱗に白い斑点があり点列をなすことなどで見分けられます。

リュウキュウエビス属

和歌山県以南、東アフリカからハワイまでのインド-太平洋域に広く分布するリュウキュウエビスと、大西洋のカーディナルソルジャーフィッシュの2種が知られています。どちらも浅いサンゴ礁に生息しており、たまに入荷します(とくに最近カーディナルソルジャーはよく入るようになった)。美しい赤い体が美しく、非常に大きな眼が可愛い海水魚です。リュウキュウエビスはヤセエビスに似ていますが側線有孔鱗数が32~42と多く、不明瞭な白い点があるのが特徴です。

種一覧(★は日本産種)

★リュウキュウエビス Plectrypops lima (Valenciennes, 1831) (インドー太平洋、チリ領イースター島)

カーディナルソルジャーフィッシュ Plectrypops retrospinis (Guichenot, 1853) (大西洋)

ヤスリエビス属

ヤスリエビスのみの1属1種です。米国サウスカロライナからブラジル沿岸、セントヘレナ、カーポベルデの深場に生息する種で、日本にはいません。観賞魚として入荷したという話も聞きません。この属は前鰓蓋に強い棘をもっていますが、臀鰭軟条11という特徴はアカマツカサなどと共通し、アカマツカサ亜科に含められています。アカマツカサ亜科としては唯一の特徴です。背鰭棘数は12でエビスダイ属に近いです。

種一覧(日本産種なし)

ヤスリエビス Corniger spinosus Agassiz, 1831(大西洋)

イットウダイの仲間まとめ

  • キンメダイに近い仲間
  • 同じキンメダイ目にはキンメダイやヒウチダイ、マツカサウオなどが含まれる
  • イットウダイ属の前鰓蓋の棘は毒があるとされる。取扱い注意
  • 夜行性で昼間は岩陰に潜み、夜間に活動的になる
  • 動物食性。配合飼料にも慣れやすい
  • 個体のサイズにより粒の大きさを使い分けたい

2020.07.01 (公開 2020.03.04) 餌・添加剤

【海水魚用餌】粒餌とフレークの違い~どちらの餌が適している?

海水魚の配合飼料では粒餌かフレークフードのどちらかがほとんどです。粒餌は生き餌や冷凍餌しか食わない魚をのぞき、ほとんどの魚に適しているという特徴があり、一方のフレークは長いこと水面に浮かんでいるため魚にとって見えやすいという特徴があります。今回は粒餌とフレークフードの違いと、どちらの餌が魚に適しているかをご紹介します。

粒餌とは

ひかりメガバイトの粒(Sサイズ)

その名の通り粒状の餌です。フレークよりも沈みやすいものが多く、カクレクマノミやハタタテハゼといった遊泳性の魚から底のほうにいるハゼやネズッポの類まで多くの海水魚に適していることから、近年はこのタイプが海水魚の餌の主流となっています。なお、粒餌には正確には成形方法などにより顆粒、クランブル、ペレットフードなどに分けられますが、ここではひとまとめに「粒餌」として扱います。

主なブランド

▲おすすめの配合飼料「メガバイトレッド」

ヒカリ(キョーリン)の「メガバイト」、マリンテック(日本海水)の「シュアー」、ライブシー(デルフィス)の「デルマリンフードEX」「デルベビー海水用」、どじょう養殖研究所の「シグマ・グロウ」、バイタリス(エムエムシー企画)の「マリンペレット」などがあげられ、このほかにもショップオリジナルのものなどいろいろな種類の粒餌があります。私がこの中でおすすめするのはキョーリンのメガバイト レッド。食いがよいほか、国内の工場で製造されており、安定して供給ができること、多くのお店で扱いがあること、つまり購入しやすいのもメリットです。

メガバイトシリーズはレッドのほかに藻類を好む魚に適した「メガバイト グリーン」、さらにメガバイトグリーンをベースにした「海藻70」もあり、これらはヤッコやスズメダイ、藻類食の強いカエルウオの仲間やハギ(ニザダイ)の仲間に最適です。個人的には粒状を買うか、フレークを買うかで悩んだら粒状の餌をおすすめしています。

与え方

▲メガバイト レッドのMサイズを海水魚に与える

プラスチック製のスプーンが付属していることが多いです。魚の数にもよりますが、60~90cm水槽でカクレクマノミとほか何種かの魚を飼育している水槽にメガバイトレッドのSサイズを与えるのであれば1日に1~2回与えるとよいでしょう。また、小さな容器の中に粒餌を入れ、それに水を加えて沈ませてからスポイトなどで魚に与えるのもよい方法で、特にハゼなど水槽の底のほうにいる魚用の餌としてもよいのですが、このような餌の与え方は水を汚しやすいので量は少なめにしておきましょう。

対象魚種

▲多くの海水魚に最適

配合飼料を食べるような魚であればどんな種類にも与えることができます。ヤッコの仲間、チョウチョウウオの仲間、テンジクダイ、バスレットなどはこれでもフレークフードでもよいのですが、カエルウオの仲間、底生ハゼの仲間、ネズッポの仲間、といった魚はフレークフードよりもこちらの餌のほうが適していると思われます。結論として生き餌しか食わないような魚や、ヨウジウオやニシキテグリなど餌が特殊な魚以外は、この粒餌で間に合ってしまうことも多い万能フードといえます。私も底生のハゼなどを多く飼育しているため、フレークフードではなく粒餌を多く与えています。

フレークフードとは

▲キョーリンのマリンプロスグリーン

フレークフードはフレーク(薄片)の名の通り薄っぺらい餌です。水面に浮かびなかなか沈まず、魚に見えやすく、食べるときに魚自身が口でちぎって食べることができるというメリットがあります。その一方デメリットとして、沈むスピードが遅いので、いつも底のほうにいる魚や口の細い魚などは食べにくかったり、餌がフロー管などに詰まりやすいということもあります。また薄っぺらな分量的にも少ない餌ですので、魚の種類によっては餌が足りなくなってしまう可能性もあります。

主なブランド

ヒカリの「マリンプロス」シリーズ、テトラ(スペクトラムブランズ)の「テトラ マリンフレーク」、BCUKアクアティクス(LSS研究所) 「マリンフレーク」「ベジフレーク」など、こちらもさまざまな商品があります。おすすめはマリンプロスで、一般的な海水魚向けの「レッド」と、ナンヨウハギなど藻類を食う魚向けの「グリーン」の2種類があります。またキョーリンやテトラはほとんどどのアクアリウムショップでも取扱いがあり、入手しやすいです。ただし私は従来はよく使用していたものの、最近は粒餌をメインにしており、ほとんどフレークは使っていません。

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与え方

オーバーフロー水槽ではフレークフードはフローパイプに吸われてしまうことも多く、なるべく循環ポンプを止めてから給餌するようにします。薄っぺらで量が少ないフレークフードだからといって、一度に与える量が多すぎるのはだめです。できれば1日2回くらいに分けて与えるとよいでしょう。また勢い余って魚が水槽の外へと飛び出して死んでしまう、という事故を防ぐためにも、フタはしっかりしておきたいものです。

対象魚種

▲ネズッポの仲間などには向いていない

フレークフードはなかなか沈まず、底のほうにいるハゼなどには食べにくいです。またそれに加えてネズッポなど口が小さな魚の餌としてもあまり向いていないといえます。そのため、私は最近はフレークフードはあまり与えていません。そのため表層から中層を泳ぎまわるスズメダイやクマノミ、ハナダイ、ベラなどの餌として与えるとよいでしょう。

まとめ

  • 粒餌はほとんどの海水魚に最適な餌
  • 粒餌は泳ぎ回るものから底生魚まで与えられる
  • フレークは浮かんでいる時間が長く魚が見つけやすい
  • フレークは薄い分量的に少ない
  • フレークはネズッポなど口が小さい魚には向かない
  • 迷ったら粒状の餌がおすすめ

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2020.03.15 (公開 2020.02.28) 海水魚図鑑

ツムギハゼの飼育方法~熱帯の海にすむ有毒のハゼ

ツムギハゼは日本ではおもに琉球列島の汽水域から内湾に生息しているハゼの仲間です。見た目は何も変わったところがないハゼなのですが、このハゼはほかのハゼとは大きく異なっているところがあります。それは、体にふぐ毒をもつということです。しかし食べなければ問題ありません。このツムギハゼは沖縄などでは河川の汽水域などで釣れることもあります。今回はこのツムギハゼの飼育方法をご紹介します。

標準和名 ツムギハゼ
学名 Yongeichthys criniger (Valenciennes, 1837)
英名 Hair-finned goby, Horny goby, Poisonous gobyなど
分類 スズキ目・ハゼ亜目・ハゼ科・ハゼ亜科・ツムギハゼ属
全長 10cm
飼育難易度 ★★☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッドなど
温度 25℃前後
水槽 45cm以上
混泳 小魚は食べてしまうことがあり。大型魚・肉食魚との飼育も避ける
サンゴ飼育 可だがあまり似合わない

ツムギハゼって、どんなハゼ?

ツムギハゼはハゼ科ツムギハゼ属のハゼで、熱帯域に分布しています。日本では静岡県以南から記録がありますが、基本的には熱帯性の魚で、奄美大島以南に多い種です。生息場所は河川河口周辺の汽水域(マングローブ林があるところなど)、漁港の内部、内湾などです。

体側に並ぶ黒い3つの斑点が明瞭な以外は、あまり大きな特徴はありません。地味なハゼですが、ほかのハゼと大きく異なるところがあります。それはツムギハゼの筋肉や皮膚などに強い毒がある、というところです。

ツムギハゼの持つ毒

ツムギハゼの毒はテトロドトキシン、つまりふぐ毒です。

ツムギハゼの毒は個体による差も大きいとされています。おそらくツムギハゼも毒をもつしくみはフグの仲間と同様に、食物連鎖であると思われるのですが、細菌を食べるほか、同じように毒をもつオキナワフグの死骸を食べるともされています。またツムギハゼの近縁種であるキララハゼ属のホクロハゼなど、一部の種もテトロドトキシンをもつ可能性があるようです。

ツムギハゼ以外で毒をもつハゼにはキイロサンゴハゼやコバンハゼといった魚がいます。この仲間は皮膚から毒を出して、バケツなどの容器にほかの魚と一緒に入れておくとほかの魚を殺すことがあります。

ツムギハゼ属

▲キララハゼ属のモヨウハゼと思われる個体

ツムギハゼ属は4種が有効種とされ、日本においてはツムギハゼ1種類が知られています。ただしツムギハゼはYongeichthys nebulosusと同一の種とされることもあります。またツムギハゼ属はスジハゼなどを含むキララハゼ属と近縁の属とされており、同じく近縁のフタスジノボリハゼ属と同様にキララハゼ属に入れられることがあります。ツムギハゼはキララハゼ属の魚とは、頭部の鱗の分布などで見分けられる、とされているのですが、一般アクアリストが鱗の分布だけで属を見分けるのは難しいところがあります。

ツムギハゼに適した飼育環境

水槽

あまり大きくなる魚ではなく、泳ぎ回るタイプの魚でもないのでそれほど大きな水槽は必要ありませんが、45cm以上の水槽が飼育しやすいのでおすすめです。60cm水槽は水量が大きくなる分、45cm水槽よりも安定するので、さらに飼いやすいといえます。

水質とろ過システム

ツムギハゼは水質悪化にはかなり耐えられる魚ですが、できるだけ綺麗な海水で飼育するように心がけましょう。ろ過槽は多くのろ材を入れられ、酸素がバクテリアにいきわたりやすい上部ろ過槽がおすすめです。小型水槽であれば外掛けろ過槽でもよいのですが、ろ過能力不足に陥りやすいので、外部ろ過槽との併用がおすすめです。

もっともおすすめなのはオーバーフロー水槽にしてサンプの中でろ過を行う方法です。また、サンゴを飼育するためのベルリン水槽でも飼育できますが、あまり似合わず、魚も多く入れられないので注意が必要です。

水温

熱帯性の魚ですので、水温は原則25℃をキープします。基本的には病気になりにくい丈夫な魚ですが、あまりにも水温の変動が大きすぎると病気になってしまうことがあります。

底砂

多くの海水魚飼育の場合、底砂はサンゴ砂が最適です。ツムギハゼの生息環境はマングローブ周辺の砂泥底に多いですが、泥はあまり水槽には向いていないところがあります。ただし最近は海水魚飼育で使用できるマッドや、海水魚に使える黒っぽい砂(シーケム・グレイコーストなど)も販売されていますので、そのような底床を使用するのもおすすめです。ただし熱帯魚用のソイルは絶対に使用してはいけません。

ツムギハゼに適した餌

自然下では底生小動物や細菌、口に入る魚までなんでも食べますが、飼育下ではすぐに配合飼料を食べてくれることも多いです。餌は底に沈むタイプの沈降性のものがおすすめです。たとえば「メガバイト」であればSサイズよりもMサイズの方が向いているでしょう。どうしても食べないときは最初は冷凍のホワイトシュリンプなどを与えますが、冷凍餌は与えすぎると水質悪化を招きやすいので注意が必要です。小型水槽では外掛けろ過槽などが使われることが多く、とくに気をつけなければなりません。

ツムギハゼをお迎えする

採集する

▲宮崎の沿岸で釣れたツムギハゼ

四国や九州の太平洋岸や琉球列島で採集することもできます。動きはほかのハゼほどは素早くなく、網で掬うこともできますが、一番簡単なのは釣り採集です。小さな針にオキアミをつけて、ハゼの前に垂らしてあげれば、簡単に釣ることができるでしょう。ただし針を飲みこんでしまった個体は飼育には向きません。

購入する

ツムギハゼは海水魚専門店ではあまり見られず、入荷しても「ハゼsp.」などとして販売されていることがあります。またケショウハゼやクツワハゼ、近縁とされるキララハゼ類などとまざって販売されていることもあります。購入するときは鰭がぼろぼろ、体や鰭に傷やただれがある、などの個体は購入しないようにします。また入荷して間もない個体も購入してはいけません。

ツムギハゼとほかの生物の相性

ほかの魚との関係

ツムギハゼは意外なほど動物食性が強く、採集して同じ水槽の中に入れたアゴハゼを平らげてしまったこともあります。口に入るサイズの魚との混泳は避けた方が無難でしょう。

また、ツムギハゼを捕食してしまうような魚との混泳は厳禁です。ツムギハゼの毒は個体により変異があり、強い毒をもつものや、逆にまったく毒がないものもいるので、食べられてしまうこともあり、食べた魚も殺してしまう可能性があるからです。おとなしい魚なのでおとなしい魚との混泳が望ましいといえます。また、フグの仲間のように死亡すると毒を出す可能性も否定はできません。私がツムギハゼを飼育していた時は単独での飼育でしたので、残念ながらそれは確認できていません。

サンゴ・無脊椎動物との相性

サンゴとの相性は概ね悪くはないのですが、底の方にサンゴを置いておくとハゼが砂を舞いあがらせたときに、砂を被ることもあるのでよくありません。また、本種の生息域を考えても、あまりサンゴ水槽に似合う海水魚ではないともいえます。甲殻類は小さすぎると捕食してしまいますし、大きい甲殻類には食べられてしまうこともあります。

ツムギハゼ飼育まとめ

  • 主に熱帯の汽水域や内湾、マングローブ域にみられるハゼ
  • フグとおなじテトロドトキシンを皮膚や筋肉などにもっている
  • スジハゼなどが含まれるキララハゼ属と近縁
  • うまく飼育するなら45cm水槽で飼育したい
  • 外掛けろ過槽よりは上部ろ過槽がよい
  • 水温は25℃前後をキープする
  • 泥やソイルは使用しない。専用のマッドや黒い底砂がおすすめ
  • 沈降性の粒餌が最適
  • 琉球列島などでは釣りで釣れることが多い
  • 小魚は食べてしまうことがある
  • 逆に大型の魚や甲殻類に襲われることも
  • サンゴとの飼育は可能だがあまり似合わない

2020.12.07 (公開 2020.02.26) メンテナンス

デルフィス「ライブシーソルト」人工海水の特徴~サンゴも魚もうまく飼いたい人向け

海水魚は淡水では飼育することができませんので、飼育するには海水が必須です。その海水の入手方法には2種類あります。天然海水を使用する方法と、淡水に人工海水のもとをとかして人工海水をつくる方法です。この「人工海水のもと」も何種類かあり、用途別に選択する必要がありますが、一般的なシステムでクマノミとサンゴを飼うのであれば「ライブシーソルト」が最適だと思います。今回はこのライブシーソルトについてご紹介します。なお、ほかの人工海水との比較につきましては、リンクをご参照ください。

ライブシーソルトとは?

▲ライブシーの添加剤

兵庫県伊丹市のアクアリウム用品メーカー、株式会社デルフィスの製品です。デルフィスが展開する「ライブシー」ブランドの中核的な商品です。2000年から販売されてきたもので、今年(2020年)で発売20周年となりましたが、2018年には成分を若干変更し、さらにパッケージもリニューアルしています(200リットル用)。新しいライブシーソルトはサンゴの成長を促す微量成分を強化しています(200リットル用以外はパッケージは同様も、中身は新しくなっている)。ライブシーブランドとしては、このライブシーソルトをもとに失われる成分を補給する各種添加剤や、逆に過剰な成分(リン酸塩や硝酸塩)を取り除くための除去剤などを販売しています。

なお、デルフィスはほかに「リベラ」(淡水魚や水草向け商品のブランド)、「アストロビーム」(水族館向け照明やメタハラ)、「匠」(水槽やキャビネット)のブランドを有してさまざまなアクアリウム製品を販売しています。

ライブシーソルトの商品ラインナップ

ライブシーソルトには量別に4種類あります。今回ご紹介している200リットル用のほか、25リットル用、100リットル用、600リットル用(200リットル用×3)があります。大きければ大きいほど安くなりますが、湿気に弱いので開封後は乾燥した冷暗所に置いておきたいものです。45cmまでの水槽であれば25、もしくは100リットルを用意しておけば十分ですが、60cm水槽では予備を含めて200リットルあったほうが安心です。

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ライブシーソルトの特性

▲旧パッケージのライブシーソルト

ライブシーソルトは製造からパッキングまで日本国内で行われているため、保存料やEDTAなど、生物に対して懸念のある成分を使用していません。また日本国内の水道水に合わせ開発されており、塩素中和剤(カルキ抜き)が不要なところもよいところです。

また、マリンテックの「シーライフ」には「ヴィーソルト」、レッドシーの「レッドシーソルト」には「コーラルプロソルト」といった上位商品がありますが、このライブシーソルトにはそれがありません。理由は「どの生物にも最高の品質の人工海水を使ってもらいたいため」とのことですが、まさにその通りで、魚からSPSまで、どんな生物にも使用できる製品です。そして上述の通り、2018年にパッケージと成分もリニューアルし、よりサンゴに適した人工海水になりました。

どんな水槽に適している?

上記の通りで、魚水槽にも魚&サンゴ水槽にも、SPS水槽にも使用することができます。とくに2018年以降の新パッケージの製品はサンゴ向けの成分が強化されており、サンゴ水槽にもおすすめです。ほかのサンゴ用の成分を強化した人工海水のもとよりも溶けやすく、使いやすい人工海水です。我が家ではすべての海水水槽にライブシーソルトを使用しており、自信をもっておすすめできます。

ライブシーソルトの便利グッズ

▲ライブシーソルト専用計量カップ

ライブシーソルト使用して人工海水を作るのに便利なグッズがあります。写真は「ライブシーソルト専用計量カップ」で、3リットル、5リットル、10リットル分の人工海水を作るのに必要なライブシーソルトの量をはかることができます。魚飼育用の量とサンゴ飼育用の量、ひとつで両方はかることができるので便利です。ライブシーソルトを使用するのであれば、ぜひともひとつは持っておきたいアイテムです。

またより多くの量の人工海水をつくるのに、ライブシーソルト専用のバケツもあります。1~13リットルまで目盛りがついていて、その分だけ専用計量カップではかったライブシーソルトを入れるだけなので簡単です。また、魚の薬浴など、水量を正確に測るようなときにも役に立ちます。さらに、バケツにはホース固定用のリングもついているので、水換えもラクラクです。

人工海水は湿気に弱いので、開封後は早く使い切りたいものです。湿気を防ぐのには輪ゴムなどで封をするべきですが、よりしっかり封をしたいのであればスティックジッパーをするとよいでしょう。クリップ式ではなくスライド式で、密封性を保つのに最適です。

ライブシーソルトで人工海水をつくる

ここでは、実際にライブシーソルトを使用して人工海水をつくる手順をご紹介します。

水をくみ水温調整

▲ヒーターでバケツの水をあたためる

まず真水(水道水・RO水。上記の通りカルキ抜き不要)をバケツに汲み、ヒーターを使って温めます。水温調整が面倒くさいからと、横着してお湯で溶かすのもいけません。ライブシーソルトが化学反応を起こして再度結合してしまうことがあるからです。

規定の量を入れて溶かす

▲ライブシーソルト専用計量カップで計測する

先にライブシーソルトを入れた後水を注ぐのはいけません。かならず温度合わせをした真水の中に入れるようにします。なお、別売の専用計量カップを使用すれば正確な量をはかることができるのでおすすめです。写真の量のライブシーソルトでサンゴ水槽に適した比重の10リットル分の海水を作ることができます。

かき混ぜる

▲長い棒状のものでよくかき混ぜる

人工海水が入ったバケツをよくかき混ぜたり、エアレーションをするなどしてライブシーソルトを溶かします。ライブシーソルトはサンゴ飼育に適していますが、その中では溶けやすいです。

注水する

かき混ぜた後比重を確認して、水槽やサンプに注水します。

また海水を水槽に入れる場合はそのまま水槽にそそぐ方法と、ポンプを使ってくみ上げて水槽に戻す方法がありますが、先ほどご紹介した、別売のライブシーバケツ13リットルはそのどちらでも使いやすくなっており便利です。ライブシーソルトを使用するなら、専用の計量カップとバケツの両方を所持するとよいでしょう。なお注水するばあいは砂を巻き上げないように注意しましょう。

まとめ

  • デルフィスが「ライブシー」ブランドで展開する人工海水
  • 日本国内で製造・梱包することにより有害になりうる保存料などを使用しない
  • 日本の水道水に合わせて作られており水道水のカルキ抜き不要
  • 量によって4種類が販売されている
  • サンゴのための成分を強化しているが真水に溶けやすく使いやすい
  • サンゴ・魚水槽いずれにも最適
  • 専用の計量カップやバケツ、保存用スティックジッパーなどの便利グッズもある
  • 人工海水の水温調整にはヒーターを使用する。熱湯は使ってはいけない
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2020.09.21 (公開 2020.02.21) 海水魚図鑑

サラサハゼの飼育方法~中層をおよぎサンゴ水槽には不向きなベントスハゼ

サラサハゼは全長15cmになる大型のベントス食性ハゼで、ミズタマハゼやアカハチハゼとは別のサラサハゼ属に属しています。色彩は派手ではないのですが、よく見たら美しい魚です。しかし本種は中層を泳ぎまわるタイプのベントスハゼで、サンゴの上に砂を撒いてしまうこともあるので、サンゴ水槽全盛の現在はイマイチ人気がない種類といえます。今回はこのサラサハゼの飼育のポイントをご紹介します。

標準和名 サラサハゼ
学名 Amblygobius phalaena (Valenciennes, 1837)
英名 Whitebarred goby, Banded gobyなど
分類 条鰭綱・スズキ目・ハゼ亜目・ハゼ科・ハゼ亜科・サラサハゼ属
全長 15cm
飼育難易度 ★★☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッドなど
温度 25℃前後
水槽 60cm~
混泳 小型水槽ではほかの魚との混泳は避ける。ウツボの仲間同士の混泳も要注意
サンゴとの飼育 サンゴに砂をかけるおそれあり、あまり適していない

サラサハゼって、どんなハゼ?

▲サラサハゼの成魚(水族館で撮影)

サラサハゼは比較的大型のベントス食性ハゼで、全長15cmにも達します。体には横帯があり、尾鰭上部に黒色斑があります。背鰭の形状は三角形に近い形で、その棘が少し伸びるのも特徴的です。よく似たものにスフィンクスサラサハゼがいますが、背鰭は三角形ではなく、棘も伸びていません。色彩は黒っぽくて派手ではないものの、よく見ると美しい魚で、海水魚店でも最近はよく見るようになりました。分布域は西―中央太平洋ですが、ハワイ諸島など分布していないところもあります。国内では和歌山県以南に分布し、高知県や琉球列島では比較的よく見られます。

サラサハゼの仲間

▲ジュウモンジサラサハゼ

サラサハゼはサラサハゼ属という属の魚で、おなじベントス食性のアカハチハゼやオトメハゼ、ミズタマハゼなどが含まれるクロイトハゼ属とは別属のハゼになります。

サラサハゼ属のハゼは世界で19種が知られています。分布域はインド―太平洋域で、東太平洋や大西洋にはいません。日本にはそのうち8種類が知られています。サラサハゼ属の(比較的)メジャーな海水魚には、キンセンハゼやレインフォーズゴビー、写真のジュウモンジサラサハゼなどがおり、これらはたまに観賞魚として流通するのですが、そのほかの種類はあまり入荷しません。

その理由は生息場所にあるかもしれません。キンセンハゼやサラサハゼはサンゴ礁に生息するのに対し、ワカケサラサハゼやエサキサラサハゼなどはマングローブ域や河口域に潜んでいるためその姿を拝むのが難しいということがあるようです。

なお、ベントス食性のハゼについてはこちらをご覧ください。

サラサハゼ飼育に適した環境

水槽

▲沖縄美ら海水族館のサラサハゼ

サラサハゼはベントス食性のハゼとしては比較的大きく、全長15cmほどになります。水族館では驚くべき大きさのサラサハゼを見ることができます。最低でも60cm水槽で飼育するべきです。ほかの魚との混泳は90cm以上の水槽で楽しむべきでしょう。

水質とろ過システム

水質悪化には比較的強めですが、それでもきれいな水で飼育してあげたい魚です。外掛けろ過槽や外部ろ過槽はパワーが弱かったり酸欠になりやすかったり、あるいは水槽の上面に隙間ができやすく単独で使用することはおすすめできません。上部ろ過槽でもよいのですが、設置できるのであればオーバーフロー水槽で飼育してあげたいものです。また、その特性から底面ろ過槽の水槽やDSB水槽・モナコシステムでの飼育はできません。ベルリンシステムでの飼育は可能ですが、サンゴとの相性はあまりよくないので注意が必要です。

水温

水温は原則として25℃をキープするようにしましょう。ただし高水温は28℃、低水温では20℃前後まで飼育できますが、いずれにせよ温度が一定であることが重要です。水温の変動が大きすぎるといくら丈夫なサラサハゼでも体調を崩してしまうことがあるので、できるだけ水温を一定にすることを心掛けましょう。

底砂

サラサハゼはベントス食性のハゼで、飼育にはある程度の厚さの底砂を敷いてあげたいものです。ただし砂を厚く敷きすぎると有害物質の蓄積を招いたり硫化水素の発生を招くため底砂は薄目(5cmまで)がよいでしょう。また同様の理由から、砂を敷いてからだいぶ時間がたったような水槽には入れないほうがよいでしょう。うまくいっていた水槽が、サラサハゼを含むベントス食ハゼを入れたために白点病が蔓延してしまったり、有害物質が出てきて魚が死んでしまったりすることもあるので注意が必要です。

フタ

ハタタテハゼなどクロユリハゼ科でなくても、ハゼの仲間は飛び出してしまう事故が多いです。本種のように中層を泳ぐようなハゼは特に飛び出しに注意しなければなりません。フタはしっかりしておきましょう。

サラサハゼに適した餌

▲沖縄の磯で採集したサラサハゼの幼魚

サラサハゼはフレークフードより、沈降性の粒餌のほうが優れています。慣れると粒餌を食べるようになりますが、慣れてないものの砂中の餌を食べるようなしぐさをしているときはスポイトを使い、餌を砂にうずめて与えるという方法を使うとよいでしょう。ホワイトシュリンプやコペポーダといったプランクトンフードも食べますが、水を汚しやすいので、ほどほどにしましょう。

幼魚はかわいいのですが、やせやすいのでこまめな給餌が必要になります。頻繁な給餌も水を汚しやすいため注意が必要です。

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サラサハゼをお迎えする

サラサハゼは幼魚をのぞき、採集しにくいので海水魚店で購入することになります。一般的にフィリピンやインドネシアから入ってくるもので、安価ですが状態には注意が必要です。入荷した直後ではなく、落ち着いた状態のものを購入しましょう。また、体表にただれがあるもの、鰭がぼろぼろのもの(溶けているもの)、水槽の隅でじっとしているもの、鰭や体表に白い点がついているもの、口に傷があるものなどは絶対に購入しないようにします。

海外から輸入されてくるもののほか、沖縄産も少ないものの入ってくることがあります。サラサハゼを購入するのであれば、このようなものが最適かもしれません。

サラサハゼとほかの生物との関係

ほかの魚との関係

サラサハゼはほかの魚とはあまり争うこともないため、さまざまな魚との混泳が可能です。ただし、サラサハゼの仲間を捕食するような魚は入れられません。また白点病にかかりやすい魚も不向きといえます。具体的にはチョウチョウウオ、キンチャクダイ、ハナダイ、フグの仲間などです。フグやハコフグは餌を食べるのが遅いことも多く、弱ったら毒を出すので混泳向きではありません。

サンゴ・無脊椎動物との相性

サラサハゼはサンゴ水槽で飼育されることが多いミズタマハゼなどと同様のベントス食性ハゼですが、ミズタマハゼとことなり中層や表層を泳ぐこともあるため、あまりサンゴ水槽には向いていないところがあります。とくにハードコーラルはダメージを受けやすく一緒に飼育しないほうが無難です。そのため海水魚店では見られても、一般アクアリストの水槽ではあまり見ないような気もします。

サンゴ以外の無脊椎動物との飼育は問題ありません。アカシマシラヒゲエビ(スカンクシュリンプ)、サラサエビ、サンゴヤドカリの類、共生ハゼとテッポウエビの水槽に入れることもできます。ただし大きなエビ、大きなカニ、大きなヤドカリやオトヒメエビの仲間と飼育するのはやめましょう。

サラサハゼ飼育まとめ

  • 大型のベントスハゼで15cmになることも
  • オトメハゼやミズタマハゼとは別属
  • 大型になるので60cm以上の水槽での飼育が望ましい
  • 上部ろ過槽かオーバーフロー水槽で飼育したい
  • 水温は25℃前後
  • 砂は必ず敷いておくが厚すぎるのはよくない
  • 飛び出す事故を防ぐためフタはしっかり
  • 粒餌が最適。幼魚はやせやすいので餌はこまめに
  • 入荷してすぐのものや、鰭がぼろぼろだったり鰭や体表に白い点がついているものは購入しない
  • ほかの魚との混泳は可能だが肉食魚やチョウチョウウオなどとの混泳は避ける
  • サンゴとは意外にも相性が悪い
  • 小型の甲殻類は問題ない

2020.02.23 (公開 2020.02.20) 海水魚の買い方

ブリードの海水魚を購入するときの注意

観賞魚店で販売される海水魚は海で採集された「ワイルド」のものと、飼育下で養殖された「ブリード」のものがあります。海水魚は淡水魚とは異なり、ほとんどがワイルドものでしたが、近年はカクレクマノミを中心にブリードものも流通するようになりました。このブリードは単に海水魚を安定供給する以外にも大きな意義をもっています。今回はブリードされる海水魚の種類とその選び方などをご紹介します。

ブリードもの

観賞魚店で販売される海水魚にはおおむね「ワイルド」ものと「ブリード」ものがあります。前者はその名の通り海で採集されたもので、後者は「カルチャードフィッシュ」とか「キャプティブブリード」とか呼ばれる飼育下で繁殖させた個体をいいます。淡水魚では小型のカラシン類、コイ類(ドジョウ類はのぞく)、コリドラスやプレコなどのナマズ、シクリッド、アナバスの仲間から巨大になるアロワナやピラルクまでブリードものが見られますが、海水魚でブリードが成功しているものはまだまだ少ないといえるでしょう。

しかし最近は海水魚を繁殖させる業者も増えてきました。また業者だけでなく、カクレクマノミなどは愛好家でも増やすことができます。まだまだ種類は少ないのですが、海水魚もブリードものが主流になる時代が来るのかもしれません。

ブリードされる海水魚の種類

ブリード個体が販売されている海水魚は以下の通りです。

クマノミの仲間

▲ミッドナイトクラウン。説明がなければだれもカクレクマノミとは思わないであろう

カクレクマノミは家庭でもブリードが可能な数少ない海水魚のひとつです。現在ではアクアリウム関連企業がカクレクマノミのほかにもハナビラクマノミや、スパインチークなどのクマノミの仲間の繁殖に成功し、流通しています。

また、カクレクマノミは色々な改良品種が生みだされています。「ブラックオセラリス」と呼ばれる、オレンジ色の部分が黒くなっているものや、全身が真っ白な「プラチナ」、全身が真っ黒な「ミッドナイト」、全身がオレンジ色の「ネイキッドオセラリス」などです。これらの名称はキンギョの「和金」「琉金」などと同様品種名であり、いわゆる「標準和名」や「学名」などとはまた異なりますので注意が必要です。

ヤッコの仲間

ヤッコの仲間も近年はブリードものが販売されることがあります。従来は高級な種であったヤッコも、ブリードすれば安価で手に入る、と思いきや依然高めのままです。ヤッコの仲間は一般のアクアリストには繁殖させられないタイプの繁殖行動をとる魚だからです。超巨大な水槽であれば産卵・採卵まではできるかもしれませんが、産まれてそれ以降、稚魚まで育てるのは困難です。

ワシントン条約の付属書Ⅱに分類されているクラリオンエンゼルフィッシュは商業的に輸出入が禁止されている、というわけではないのですが、それでも証明書が必要など条件が厳しくなるため、インドネシアでは少なくとも2013年ごろからブリードが行われ、2018~2019年ごろには養殖物が日本に一部流通しましたがそれでもきわめて高価なのは変わりません。

メギスの仲間

メギスの仲間もブリードものが販売されることがあります。全身が紫色で美しいオーキッドドティバック(通称フリードマニー)は紅海にのみ分布していますが、現在ではブリードのものがアメリカから輸入されるほか、日本でもブリードされています。

タツノオトシゴの仲間

▲タツノオトシゴの仲間

タツノオトシゴもすべての種がクラリオンエンゼル同様CITESの付属書Ⅱとされています。これは中国の漢方薬の需要があり、乱獲されているからです。幸いにもタツノオトシゴは比較的養殖は(ほかの魚と比べれば)容易で、現在は卸問屋だけでなくアクアリストによるブリードも行われています。主にカリブ海産の種を国内で繁殖させたものがよく出回っています。ただし繁殖は容易なものの飼育は初心者には難しく、とくに混泳水槽では短命になってしまいやすいです。

ハゼの仲間

▲ライブロックに産卵するイレズミハゼ

ハゼの仲間はまだまだブリードは進んでいませんが、最近はギンガハゼなど一部のハゼがブリードされています。ハゼ科の魚は知られている限りすべての種が付着卵を産み、イレズミハゼやイソハゼの類など、個人アクアリストでも産卵させ、孵化させるところまではいくのですが、産まれた仔魚を育てるまでには至っていません。

バンガイカーディナルフィッシュ

▲バンガイカーディナルフィッシュ

学名から「プテラポゴン」とか「カウデルニィ」などと呼ばれる、1属1種のテンジクダイの仲間です。テンジクダイ科の中でも美しい魚で、黒い体に白い斑点があり、鰭が長いのも特徴です。他のテンジクダイの仲間と同様口腔内で卵を育てるマウスブルーダーですが、他のテンジクダイ類は孵化したらあとは独り立ちですが、この種はある程度大きくなるまで子を守ります。そのため海水魚の中では比較的繁殖がすすんでいるといえます。なおこの種もIUCNレッドリストでは絶滅危惧種(EN)、CITESのⅡ種とする提案がなされましたが、撤回されています。

ブリード海水魚を購入するメリット

クマノミの仲間

▲クマノミは病気になることもある。初心者は要注意

クマノミは比較的皮膚が弱い種類が多く、スズメダイの仲間としてはやや病気にかかりやすい面があります。ブリード個体はそれに比べれば丈夫で初心者にも飼育しやすく、うまく飼えば初心者でも10年くらい飼育することができます。初心者がはじめてクマノミの仲間を飼育するのであれば、ブリードものを選ぶのがよいでしょう。またカクレクマノミはとくに人気がありますが、春夏秋冬、晴れの日も嵐の日もいつも店頭でその姿を見られるというのはブリードされたことによる恩恵といえるでしょう。

また、先述の通り、クマノミの仲間はまるでキンギョや錦鯉、熱帯魚のグッピーなどのように改良品種がいろいろと作出されていますので、このようなものが欲しい方は購入してもよいでしょう。

タツノオトシゴの仲間

タツノオトシゴの仲間の飼育は餌の確保が重要となってきますが、養殖個体は比較的冷凍イサザアミ(キョーリンから出ているクリーンホワイトシュリンプなど。とくにカミハタブリードの個体は餌付きやすい)に餌付かせやすいため、タツノオトシゴを飼いたい!というのであれば、養殖個体から飼育をスタートするのがおすすめです。しかし、飼いやすくなったとはいえそれでも飼育はほかの海水魚と比べて難しいので、ある程度ほかの海水魚を飼育し、その飼育に慣れてから飼育することをおすすめします。また、タツノオトシゴのほか、先述したクラリオンエンゼルフィッシュのようにCITESに記載され取引に規制がある魚などの保全にも役に立つというメリットがあります。

ブリード海水魚を購入するときの注意

ブリード個体だからとくに魚体を見なくても問題ない、というのは誤りです。とくにカクレクマノミは簡単にブリードできるため、お店によっては1000円弱という値段でも販売されていることがありますが、安い魚はどの種も扱いが雑になりやすく、とくに注意しなければなりません。そのためブリードの海水魚を購入するときも、海で採集された魚を購入するときのように、健康状態をチェックするのが大事なのです。

海水魚のブリードを行う意義

海水魚のブリードは確かにお金がかかります。しかも売れても1匹あたり1000円前後。大きな儲けは期待できません。しかし海水魚のブリードにはお金儲け以外に大きな意義があるのです。

今回の記事で登場した魚のうち、タツノオトシゴの仲間やクラリオンエンゼルフィッシュ、そしてバンガイカーディナルフィッシュは数の減少に伴い絶滅が危惧されるようになりました。しかし、それらの魚も養殖が成功したことにより、そのぶん、海から獲られる数を減少させることができます。その結果種の個体数の回復が促されることになるのです。もちろんマリンアクアリウムという趣味を持続可能にするという意味でも大きな意義があるといえます。

そして最近すばらしいニュースが入ってきました。オーストラリアでリーフィーシードラゴンのブリードに成功した愛好家が、世界中の水族館や観賞魚問屋にリーフィーシードラゴンを出荷したのです。この種はオーストラリアでは保護されており採集や販売などが禁止されているのですが、愛好家が許可を申請して繁殖を成功させたものを大きく育てて出荷させたのです(詳細はマリンアクアリスト誌 2020年冬号 No.94も参照のこと)。日本では希少な淡水魚を採集や販売することを禁止したりする法律(種の保存法)がありますが、それは愛好家が繁殖させたものの流通も禁止するというものであり、やはり世界のほかの国と違い生物の保全にたいして遅れているという印象があります。

また、希少な海水魚を養殖して保全するだけの目的だけでなく、一般アクアリストも繁殖に関連したユニークな生態を観察することができますし、うまい人ならそれに関して文章を書いたりすることもできます。これもまた海水魚飼育の楽しい点といえるでしょう。

ブリード海水魚まとめ

  • 海水魚はブリードが少なく、多くが海で採集されたもの
  • クマノミの仲間やタツノオトシゴの仲間、メギスなどがブリードされている
  • ブリードされたクマノミは海で採集されたものよりも丈夫で初心者向け
  • クマノミの改良品種もいる
  • ブリードのタツノオトシゴはホワイトシュリンプもよく食べる
  • ブリードであっても購入前には状態をよくチェックする
  • 海水魚のブリードは保全に役立ちマリンアクアリウムを持続可能なものにする

2020.11.17 (公開 2020.02.19) 海水魚飼育の基礎

海水水槽に「ナマズ」の仲間がいない理由

淡水水槽を経験したアクアリストであれば、水槽でナマズの仲間を飼育した経験も多いでしょう。底砂掃除をしてくれる「コリドラス」、水草についたコケを食べてくれる「オトシンクルス」、見た目が派手でマニアも多い「プレコ」など…。

しかし、海水魚の水槽でナマズの仲間を飼育しているアクアリストはほとんどいません(少なくとも私は出会ったことがありません)。それはいったいなぜなのでしょうか。

ナマズの仲間はどんな魚なのか

▲南米最大のナマズ、ピライーバ

まず、海水水槽でナマズが飼育されない理由の前に、ナマズの仲間とはいったいどんな魚がいるのかご紹介します。

ナマズ目魚類は2005年の時点では少なくとも34科以上が知られており、種は2405種以上が知られているとされましたが、毎年のように多数が新種記載されています。その結果、ナマズ目魚類はフィリピンのFishbaseによれば3800種を超える大所帯となっています。大きさも様々で、南米アマゾン川・オリノコ川などに生息するピライーバや、欧州産のヨーロッパオオナマズのように3mを超えるような巨大なものもいますが、多くは小型種です。

分類学的には骨鰾上目とよばれるグループであり、コイやドジョウ、カラシンの仲間に近縁です。南極を除く全大陸に生息していますが、欧州などは極端に種類が少なく、東南アジア、アフリカ、南米では数多くの種類が見られます。日本では種類が少なく在来種は14種(うちアカザは複数種に分けられる可能性が高い)。淡水魚が少ないオーストラリアでは淡水性のゴンズイやハマギギの仲間など一風変わった魚が見られます。

一方外来のナマズが移入先で問題になることもあります。チャネルキャットフィッシュやブラウンブルヘッドといった種類はオセアニアやアジアなどに移入され生態系に悪影響を及ぼしています。日本においてもチャネルキャットフィッシュやマダラロリカリアなどが増殖し問題となっています。

ナマズのひげの役割

夜行性のナマズの仲間、ギバチ。ヒゲをたよりに餌を探す

ナマズの特徴としては「ひげ」があげられます。このひげがある姿がかわいいというのもナマズが人気な理由でしょう。例えばナマズやギバチなどはひげに触れた餌を捕食します。ナマズの仲間は夜行性のものが多く、この長いひげを頼りに餌を探しているようです。ただしこのひげはどのナマズの仲間にもあるわけでなく、パンガシウスの仲間(とくにメコンオオナマズなど)のように退化しているようなものもいます。また幼魚はひげがあるものの、成長するとひげがなくなってしまうような種も知られています。

お役立ち系のナマズ

ナマズの中には、水槽のガラス面や水草のコケを食べてくれたり、残り餌を食べてくれるようなものもいます。

コケを食べてくれる

▲小型のロリカリア科魚類、オトシンクルス

▲プレコの仲間は水槽に生えるコケを食べる

水草水槽では水草についたコケを食べてくれるオトシンクルスなどが好まれます。オトシンクルスの仲間はロリカリア科の小型種で、ほかの魚に害を与えないので人気の魚です。一方大型魚混泳では同じロリカリア科魚類であるプレコの仲間が人気です。ただしセイルフィンプレコやアグアプレコ、トリムプレコの類は大型になり性格もきつくほかの魚との混泳は注意が必要です。とくにセルフィンプレコは大型になる種で、小型水槽での飼育はやめたほうが無難です。また大型プレコの仲間はアクリル水槽をぼろぼろにしてしまうことがあります。

プレコの仲間は一部汽水域に入るようなものもいますが、海水域には生息していません。そのためプレコは海水では飼育できません。海水水槽のコケを食べてもらうのであれば、ニシキウズやサザエの仲間など藻類を食べる巻貝にお願いするしかないです。

残餌を食べてくれる

小型ナマズの中でも最も有名なのがコリドラスの仲間でしょう。コリドラスの仲間は小型でありきれいな色彩で、かわいいこと、飼育しやすい(ものが多い)こと、多くの種類が知られ(未記載種も多い)コレクション性もあること、繁殖もさせやすいことから初心者からマニアまで非常に人気があるナマズです。また多くの魚との混泳を楽しむことができます。さらにほかの魚の残り餌も食べてくれることもうれしいポイントといえるでしょう。ただし残り餌ばかり食わせるとやせてしまうこともあるので注意が必要です。

コリドラスの仲間も海にはいませんので、当然ながらコリドラスも海水水槽では飼育できません。海水水槽で残り餌を食べてもらうのであれば微小なヤドカリやそのほかの甲殻類、巻貝の一種であるムシロガイなどを入れておくのが望ましいでしょう。

ナマズの仲間は海水にはほとんどいない!

▲骨鰾類としては珍しい海水魚、サバヒー

ナマズの仲間は基本的にほとんどの種が淡水魚であり、海水に生息するナマズの仲間はゴンズイ科とハマギギ科くらいと少ないもので、しかも飼育も簡単とはいえません。そのため海水水槽ではナマズの仲間はほとんど飼育されないのです。また、ナマズの仲間が含まれる骨鰾類(骨鰾上目)も海にはほとんどいません。この仲間にはネズミギス目、コイ目、ナマズ目、カラシン目、デンキウナギ目がいますが、ほとんどが淡水魚であり、ネオンテトラやクラウンローチ、ゼブラダニオなど、有名な熱帯魚も多く含まれますが、海水魚はほとんどいません。さきほど述べたゴンズイの仲間とハマギギの仲間のほかには、わずかにネズミギス目のネズミギスやサバヒーくらいのものです。ニゴイやウグイ、マルタ、ジュウサンウグイ、コイなど一部の種は海域にも出現しますが、これは例外的なものです。

海にいる数少ないナマズ

海に生息するナマズの仲間は少なく、ゴンズイ科とハマギギ科が知られているだけです。例外的に大雨の後など湾内でナマズの姿が見られることもありますが、このようなケースは含めません。

ゴンズイ科

インド―太平洋にすむゴンズイ科の魚は、ナマズ目の仲間、というよりも骨鰾類では数少ない海水魚です。ゴンズイ科のすべてが海水魚、というわけではなく、中にはタンダンの仲間のようにオーストラリアやその周辺の淡水・汽水域を主な住みかとしている種も存在します。海水に生息するゴンズイ科の魚は、日本近海に住むゴンズイやミナミゴンズイ、東南アジアのグレイイールキャットフィッシュ、オーストラリアの西岸にすむセイルフィンキャットフィッシュなどで、観賞魚として入ってくるのはゴンズイやセイルフィンキャットフィッシュなどです。

背鰭は二つに分けられ、第2背鰭と臀鰭は尾鰭とつながり、ウナギのような形の尾となっています。背鰭と胸鰭に棘があり、この棘には強い毒があるので、取り扱いには注意します。掬うときも網ではなく、プラケースなどで掬ってあげたいものです。スレ傷などに弱いのか、飼育してもあまり長生きしないことが多いです。

ゴンズイはホンソメワケベラほどではないのですが、大きな魚をクリーニングすることがあります。

ハマギギ科

ハマギギの仲間はおおむね汽水域から沿岸の浅場に生息し、ゴンズイの仲間同様にナマズ目では珍しい海水魚のグループです。ゴンズイと異なり、大きくほかの鰭とつながっていない尾鰭をもち、脂鰭もあるため、見た目は淡水産のギギやギバチなどを思わせます。日本には3種が知られるもののまれな種で、観賞魚の世界でもなかなかお目にかかれず、また広い遊泳スペースを確保する必要があります。それでも汽水域に生息する一部の種は観賞魚としての入荷も見られます。雄が口腔内で卵を保護するマウスブルーダーとしての習性も知られています。口腔内で卵を保護する魚はほかにもいろいろいますが、海水魚ではテンジクダイやアゴアマダイの仲間とならび少数派です。

見た目がナマズに似た魚

海にはナマズの仲間は少ないのですが、ナマズの仲間に似た魚がいくつかいます。

イタチウオの仲間

▲イタチウオ

イタチウオは日本沿岸からインド―太平洋の浅瀬から深海(650m以浅)に生息する魚です。口に大きなヒゲがあり、ナマズの仲間ににていますが、アシロ目アシロ科と呼ばれる、まったく異なるグループでむしろタラなどに近い仲間とされています。その中でも海産ナマズであるゴンズイと間違えられることもありますが、本種にはゴンズイの特徴である縦帯がないのが特徴です。また背鰭にも胸鰭にも大きな棘はなく、つかんでも問題ありません。全長40cmと、比較的大型の魚で、刺身にして食べると極めて美味です。

アシロの仲間はほかにも多数の種がしられますが、日本産のアシロの仲間で吻部にひげをもつのはイタチウオのみです。ヨロイイタチウオやウミドジョウなどは下あごに細い糸状のものがあるのですが、これは腹鰭です。

ヒメジの仲間

▲オジサン

スズキ目ヒメジ科の魚です。下顎に1対のひげをもち、多くの種類でより髭の数が多いナマズの仲間とは区別できます(日本のナマズは3対6本)。このひげもナマズのヒゲ同様感覚器官であり、ひげを自在に動かして餌の場所を探すことができますが、大型の種類は魚を食べてしまいます。アクアリストにおいてはこの仲間では比較的小型のオジサンやインドヒメジが見られ、これらのヒメジが水槽飼育向けです。このほかに黄色がきれいなマルクチヒメジなども入ってきますが、マルクチヒメジは50cmにも達する大型種ですのでおすすめしません。ただしヒメジの仲間は白点病などにかかりやすく、注意しなければなりません。

コンビクトブレニー

スズキ目ポリディクテュス科の魚です。「ブレニー」の名前がありますが、トラギスなどと同様のワニギス亜目とされており、カエルウオなどのギンポ亜目とは縁が遠い魚といえます。西太平洋からオーストラリアに2種が知られており、一般的にはフィリピンやインドネシアなどに生息する、Pholidichthys leucotaeniaと呼ばれる種が流通し、オーストラリア産のPholidichthys anguisが入荷したという話は聞きません。

英名の「コンビクト」(Convict)というのは囚人のことで囚人が着る「囚人服」ににた模様があることからこの名前が付いたようです。しかしこの模様は成魚にのみあり、幼魚のころは黒いからだに白い線があり、大きな群れでおり、ゴンズイの仲間の幼魚ににています。ゴンズイは背鰭・胸鰭の棘に毒があり、擬態の一種ともいわれています。観賞魚としてはフィリピン、もしくはインドネシアから入ってくるので高価な魚ではありませんが、状態には注意しなければなりません。

海のナマズまとめ

  • 淡水水槽ではナマズの仲間がよく飼育されるが、海水魚水槽では飼育されない
  • 海水で飼育できるナマズにはゴンズイやハマギギの仲間がいるが、飼育はやや難しい
  • コケ取りとされるオトシンクルスやプレコの仲間は海水での飼育は不可
  • 残餌を食べるコリドラスの仲間も海水では飼育できない
  • コケは貝類に、残り餌はムシロガイやヤドカリに食べてもらう
  • イタチウオやヒメジはナマズの仲間同様にひげがある
  • コンビクトブレニーはゴンズイに擬態している
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2020.09.21 (公開 2020.02.17) 水槽・器具

プロテインスキマー「HS-850」のレビュー!古くから使われるロングセラースキマー

「HS-850」はアクアリウム用品メーカー、H&S  GmbH製のプロテインスキマーです。おそらくもう20年くらい販売されているであろうACポンプ・筒状のプロテインスキマーで、近年販売されているものと比較すると機能などは劣っているようにも思えますが、使いやすさや実績、ベルリンシステムでも十分使えるパワーなどから、今日でも使っているアクアリストも多いでしょう。今回はこのHS-850についてご紹介します。

また、そもそもプロテインスキマーって何?という方は、以下をご覧ください。

HS-850とは

HS-850はドイツのH&S社(H&S  GmbH)製のプロテインスキマーです。プロテインスキマーにはエアリフト式、ベンチュリー式、ベケットヘッド式などがありますが、このHS-850はパワーが高い割には初心者にも扱いやすいベンチュリ―式プロテインスキマーとなっています。人気の高い機種で、もうたぶん国内でも20年近く発売しているのではなかろうかというロングセラー商品です。この商品は内部式(インサンプ式)と呼ばれるもので、プロテインスキマー本体をサンプ(水溜め)の中に入れて設置するタイプです。メーカー希望価格107,000円(+税)と高価ですが、それに見合うだけのパワーはあります。

おなじH&S社からアクアリスト向けに販売されているプロテインスキマーとしては下位モデルのHS-400、より上位のモデルであるHS-1500、HS-2200、HS-3000がラインナップされています。名称お「850」というのは最大対応水量(850リットル)をあらわしますが、ベルリンシステムの水槽ではだいたい550リットルまでです。またサンプにスキマーを入れるスペースがない、というときに重宝する外部式モデルのHS-Aシリーズもあります。こちらも同様にHS-A400、HS-A850、HS-A1500がありますが、こちらはスキマーのほかに給水ポンプを購入する必要がありますので注意が必要です。どのポンプが最適なのかは、エムエムシー企画レッドシー事業部のHPをごらんください。

なお、エムエムシー企画レッドシー事業部ではこのほかにレッドシー「リーファースキマー」、オルカ「バブルラッシュ」、ZOOX「アルティマ」など、HS-850と同様のベンチュリー式スキマーを取り扱っています。またオルカ「ミニット」のような小型エアリフト式プロテインスキマーもあります。

形状

HS-850の形状はいわゆる筒状のものであり、近年販売されているコーン状のスキマーよりもパワーに劣るといわれていますが、蒸発や水位変動などにも強く安定した稼働ができるという点ではコーンタイプのスキマーより優れている、といえるかもしれません。

ポンプの種類

ポンプは最近はDCポンプが主流ですが、このHS-850は古くからあるロングセラープロテインスキマーのためACポンプが採用されています。静音性や調節のしやすさなど、性能的にはDCポンプが優れている…なんていわれることも多いものの、DCポンプは電子部品が多く使用されているという関係上、耐久性はまだまだACポンプが有利といえます。ただしヘルツフリーではないので注意が必要です。なお、このプロテインスキマーのインペラーは剣山状になっており、細かい泡を出すことができますが、泡の出が悪くなった時にはインペラーの交換が必要となります。

HS-850を水槽に設置する

HS-850はインサンプ式のプロテインスキマーで、オーバーフロー水槽にしか設置できません。スキマーの寸法は幅340mm、奥行き170mm、高さ510mmで、それ以上の大きさのサンプが必要になります。排水は高さ275mmのところから出てくるので、ある程度の水温も必要になります。写真のように600×300×330(mm)の水槽をサンプにするのもよいでしょう。安価な水槽ですので観賞魚店だけでなく、量販店などで販売されることもあるので入手しやすくおすすめです。

スキマーの左側にあるのは仕切り板です。スキマーへ給水するためのポンプに大きなものがつまると故障の原因になってしまいます。ウールボックスなどのない、一般の水槽をサンプにするにはこのような工夫も必要なのです。

HS-850の調整とメンテナンス

HS-850の調整

HS-850の空気(泡量)調整はエア調整バルブで、水位調整はイージーコントロールパイプを使って行います。とくに水位調整はやり方をあやまるとカップに水があふれることもあるので注意しなければなりません。

エア調整バルブを使った調整

エア調整バルブは、スキマーの左側にあるエアチューブに付属する白いバルブです。円形のツマミをまわすことによりエアチューブが少しつぶれてスキマー内部に入るエアの量を調節します。地味ですが極めて重要なパーツですので、なくさないように注意が必要です。スキマーの内部の水位を調節するイージーコントロールパイプとともに調整する必要があります。

イージーコントロールパイプを使った水位調整

イージーコントロールパイプとはスキマー本体の横についているパイプのことで、このパイプを回すことによりスキマー内部の水位の調節ができます。空気量を調節するエア調整バルブと併用して使用するようにしましょう。なお、スキマーをセットするときにはイージーコントロールパイプとその下部のT字状の排水パイプの部分にある白いマークを合わせるようにし、そこから調整していきます。また、やりかたをあやまるとカップに水があふれるという事態にもなりますので注意が必要です。

日々のメンテナンス

▲汚水がカップ内にたまった様子

HS-850の上にあるカップには汚水がたまりますので、1週間に1回くらいはカップを外して汚水を取り除き、カップのなかにこびりついた汚泥を洗い流すなどして清掃したいものです。カップは反時計回りの方向に軽くひねるだけで簡単に取り外しができますので、メンテナンスが容易な機種といえます。掃除する際はぬるま湯などで汚れを落とすようにし、洗剤などは使用してはいけません。

交換パーツ

泡の量は調整する必要がありますが、あきらかに泡の量が減った、というときはインペラーの部分が寿命をむかえている可能性もありますので、インペラーは早いうちに交換しましょう。ただしモーターブロック(ポンプ)には新型・旧型の2種があり、それぞれ互換性がないので注意が必要です。つまり新型モーターブロックに適したインペラーは新型用のもの、旧型モーターブロックには旧型のインペラーを使う必要があるということです。

それでも泡が少ない場合にはモーターブロックを交換しなければならないこともあります。なお、モーターブロックはUP2000という機種になります。50Hz用と60Hz用があり、お住いの地域により選ぶ必要があるということです。

HS-850まとめ

  • 初心者でも扱いやすく十分なパワーがあるベンチュリー式
  • その名の通り850リットルまで対応(ベルリンシステムは550リットルまで対応)
  • 昔からある筒状で安定して稼働する
  • ACポンプで信頼性が高いが、ヘルツフリーではないことに注意
  • 内部(インサンプ)式でサンプの中に設置する必要がある
  • ウールボックスのない水槽をサンプにするには仕切り板をつける必要あり
  • エア調整バルブとイージーコントロールパイプで泡の出方を調整
  • カップの汚水は1週間に1回くらいは取り除きたい
  • インペラーやモーターブロックは泡量が落ちたら交換する

外部リンク

H&S Aquaristik (独語)

H&S Aquaristik日本代理店 エムエムシー企画レッドシー事業部のページ

2020.09.21 (公開 2020.02.14) 水槽・器具

アクリル水槽で海水魚飼育!ガラス水槽と比較したメリットとデメリット

海水魚を飼育するための水槽は、一般的に「ガラス水槽」と「アクリル水槽」に大きく分けられます。アクリル水槽はガラス水槽よりも高級なイメージがありますが、正しく使用すればどちらを選んでもカクレクマノミやスズメダイ、小型ヤッコを飼育すること自体には支障がありません。どちらを選んでもよいのですが、それぞれにはメリットとデメリットが存在します。今回はガラス水槽と比較したアクリル水槽のメリットとデメリット、アクリル水槽に入れにくい生物について解説します。

ガラス水槽のメリットとデメリットはこちらをご覧ください

アクリル水槽とは

アクリル水槽というのは、その名の通りアクリル板を使って作られた水槽です。アクリル素材のうち水槽に使用されるものは「キャスト材」とよばれるもので、押し出し材と比べると硬度が高く、「反り」が発生しにくいというメリットがありますが、小型水槽であればガラス水槽よりも明らかに高価になってしまいます。

生物を飼育する水槽には、一般的にガラスのものとアクリルのものがあります。必ずしも「アクリルでなければ飼育できない」生物は存在しません。飼育したい生物に合わせて選ぶようにしましょう。

アクリル水槽の種類

▲(新)石垣空港に設置された円柱状の海水魚水槽

アクリル水槽は既存の水槽のほか、オーダーメイドで色々な形の水槽をつくることができます。一般的な四角い形状の水槽のほか、三角形の水槽、円柱状の水槽など、さまざまな形状のものをつくることができます。

水族館の水槽もアクリルで作られています。昔は水族館でもガラスを枠にはめこんだ水槽が使用されていましたが、最近の水族館の大型水槽はみなアクリル製です。溶剤を使用しアクリル板を溶かしてつなぐ、重合接着を行えば、巨大なアクリル水槽も作成することができるのです。

このほか、オーバーフロー水槽では魚を観賞する部分をガラス水槽にして、水溜めの場所(サンプ)をアクリル水槽にするという例もあります。アクリル水槽をサンプにする上でのメリットとしては、計量であり、加工がしやすいことがあげられます。

アクリル水槽のメリット

軽い

アクリル水槽はガラス水槽と比べると非常に軽量です。そのため搬入・移動も(ガラス水槽と比べれば)楽になります。写真はニッソーのクロスミニと呼ばれる非常に小型のアクリル水槽で、計量で水が入っていても容易に移動させることができます。

割れにくい

▲ガラス水槽(写真)と異なり割れにくい

アクリル水槽のメリットとしてはガラス水槽よりも割れにくいことがあげられます。子供がいて叩いたりしても割れてしまう可能性が低いため、水槽レンタル業などでも使われます。コケをとると傷つけやすい、というデメリットも業者がコケ取りをおこなうことにより解消されやすいです。

また地震大国日本では「割れにくい」というのも水槽選びの重要なポイントになりえます。アクリル水槽ではほとんどの水槽にフランジがついており、ある程度水が外にでにくくなります。

大型水槽ではガラスよりも安価

小型水槽ではアクリル水槽の方がガラス水槽よりも高価ではありますが、180cmのような巨大水槽になれば、アクリル水槽のほうが安価になります。

結露対策ができる

▲アクリル水槽で深海魚飼育も結露しらず?

最近、深海生物がブームとなっています。深海生物は基本的に12℃とか極めて低い水温で飼育されていることも多く、水族館の深海生物水槽は結露が見られないことが多いです。これは特別につくられたアクリル水槽だからです。ガラス水槽で低水温を好む魚を飼育するため、水温を低く設定していると、水槽のガラス面に結露が生じてきます。

一方アクリル水槽で結露を防ぐための加工がおこなわれた水槽では結露の発生も気になりません。しかしアクリル水槽でも薄すぎるものでは結露がでることもあるので、15mm以上の分厚いアクリル水槽で飼育するとよいでしょう。ただしこのような分厚いアクリル板を使用した水槽はどうしても高価になってしまいます。

もちろん深海魚のみならず、ダンゴウオやスナビクニンなど、冷水性魚類の飼育にも適しています。

アクリル水槽のデメリット

アクリル水槽にもデメリットがあります。アクリル水槽とガラス水槽、両方のメリットとデメリットを理解し、水槽の購入を検討するようにしましょう。

高価

アクリル水槽は小型水槽であればガラス水槽よりも高価になることが多いです。ある程度の大きさ以上であればアクリル水槽の方がガラス水槽に比べて安くなります。しかしそれは120cm以上の大型水槽の話であり、60cm位の水槽ではガラス水槽のほうがまだまだ安価です。

傷がつきやすい

▲細かい傷がつくのはアクリル水槽の宿命

アクリル水槽はガラス水槽とはことなり割れにくいのですが、細かい傷がついたりして、魚を観賞する上で支障がでることがあります。水槽の壁面にガラス水槽用のスクレイパーを使ったり、ライブロックと接触したりすると、あっという間に傷がついてしまいます。私たちが飼育する魚は「観賞」魚、つまり、観て楽しむ魚なので、水槽が傷だらけになればそれが難しくなってしまうということになります。

また、ウニの仲間はアクリル面をかじったり、その棘で水槽に傷をつけることもあるためアクリル水槽にはあまり向いていないところもあります。このほか海水魚ではないのですが、淡水魚のナマズの仲間であるプレコ(の、特に大きくなる種)は口で水槽の壁面に吸着し、歯でコケをそいでたべていますが、アクリル水槽では水槽に傷をつけてしまうおそれがあるため、やはりアクリル水槽での飼育は向かないとされています。

専用のスクレイパーが必要

アクリル水槽はガラス水槽と比べて傷がつきやすく、ガラス水槽用のスクレイパーを使うとアクリル面を傷つけてしまうこともありますので、アクリル水槽にもガラス水槽にも使用できるスクレイパーを使う必要があります。フレックススクレイパーなどが入手しやすく安価なのでおすすめといえるでしょう。

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どちらが特別優れている、というわけではない

ここまでガラス水槽、アクリル水槽のメリットとデメリットを見てきましたが、どちらが特別優れている、というものではありません。例えば個人のアクアリストが「初心者でもかわいいカクレクマノミが飼える水槽が欲しい」という場合にはアクリルではなくガラス製60cm水槽をおすすめします。ガラス製を選ぶ理由は安価であり、水槽のガラス面を清掃しやすいためです。一方商業施設、老人ホームや幼稚園、福祉施設などでの海水魚飼育では割れにくいアクリル製水槽を使用し、給餌などをのぞいてプロにサポートしてもらうのが確実でしょう。

なお私はサンゴを飼育して、コケをガリガリ掃除したいのでメイン水槽にはAMP製ガラス水槽を使用しています。

アクリル水槽 ガラス水槽 まとめ

  • アクリル水槽とガラス水槽はどちらも一長一短
  • 計量かつ割れにくい。キャスト材を使用しているので硬度も高い
  • 加工も容易にできる。水族館の水槽はアクリル製が多い
  • ガラス製オーバーフロー水槽で飼育していてもサンプはアクリルということも多い
  • 分厚いアクリル板により結露も防ぐ。深海生物や冷水魚に最適
  • 小型水槽では高価、大型水槽であればガラス製より安価なことも
  • アクリル面に傷がつきやすい
  • 掃除には専用のスクレイパーが必要になる
  • ガラス水槽とアクリル水槽のメリットとデメリットを把握してから購入したい

2020.02.14 (公開 2020.02.13) 海水魚の採集

関東の磯で採集できるウツボの仲間とウツボに似た魚たち

海水魚ラボではこれまで、何度かウツボの飼育についてご紹介しました。我が家ではウツボの仲間を3種類飼育していますが、これらはすべて和歌山、四国、沖縄で採集した、もしくは採集されたものを頂いたものです。では関東の磯でウツボの仲間を採集することはできるのでしょうか。

関東の磯でもウツボの仲間は4種類見られます。夏から秋の磯では関東の潮溜まりでもウツボに出会える可能性があるのです。今回は関東の海で採集できるウツボの仲間と、ウツボの仲間に似た魚をご紹介します。

関東の磯

▲千葉県の磯

関東地方の磯は四季の変化が大きいです。冬から春にかけては多くの海藻が見られ、夏や秋など水温が温むと海藻が春よりも減退していきます。もちろん、魚も季節により現れるものが変わります。メジナやカサゴのようにほぼ周年見られるものもいれば、スナビクニンやダンゴウオのように冬期にのみみられるもの、ムツのように冬から春に幼魚のみ浅瀬で見られるものなどがいます。また、夏から秋にかけては「死滅回遊魚」といい、南方系の魚が関東の磯でも見られます。では、ウツボの仲間は見られるでしょうか。

関東の磯で見られるウツボ

先ほども述べたように、関東地方の磯ではさまざまな南方系の魚が見られるにもかかわらず、ウツボ科魚類の種数は少ないです。ウツボは「葉形仔魚」(レプトケパルス)と呼ばれる期間を浮遊して過ごすようで、関東近辺に現れてもよさそうなものですが、繁殖場所が南方なのか、なかなか関東の磯には姿を現しません。関東地方の磯で見られるウツボは、以下の4種にほぼ限定されています。

ウツボ

お馴染みのウツボ

お馴染み、標準和名ウツボです。日本では茨城県以南の太平洋岸に広く分布する普通種で、房総半島でも周年見られます。南は九州まで多く、奄美大島や沖縄でも見られますがまれです。

黄色い体に褐色の帯があり、臀鰭の縁辺に明瞭な白色線があるのが特徴といえます。基本的には温帯性ですが、小笠原諸島、奄美大島や沖縄の慶良間諸島でもまれですが見られます。海外では朝鮮半島、台湾、ハワイ諸島に分布していますが、ハワイ諸島のウツボは同種のように見えません。

浅場から深場にまでみられ、浅いところのものは25℃くらいでも飼育することができます。成魚は唐揚げや干物などで賞味されています。

ワカウツボ

▲水族館で飼育されているワカウツボ

ワカウツボは千葉県以南太平洋岸の磯で見られるウツボです。ただし関東の沿岸ではあまり見られず、多くは紀伊半島や四国の沿岸で見られます。分布域はインド-太平洋域と東太平洋にまで及びますが、インド-太平洋域では熱帯域では見られません。そのため低めの水温で飼育するのがよさそうです。

個体により斑紋や色彩などが大きく異なるのも特徴的ですが、頭部や吻の部分が黄色であることも多いです。よくにたハナビラウツボとは、口の中の色彩により区別されます。ワカウツボは体色と同じか、灰褐色で、ハナビラウツボは白いです。

トラウツボ

▲トラウツボ

赤い体に白色の斑点がある美しいウツボです。トラウツボの特徴はこのほかに両顎が湾曲し、完全に顎を閉じられず常に口から牙状の歯をのぞかせること、後鼻孔が長い管状になることもあげられます。温帯性で千葉県から屋久島までの太平洋岸、小笠原諸島では多く見られますが、沖縄では伊江島からの記録があるもののほとんど見られないようです。海外ではインド-太平洋域にいます。

その派手ないでたちから観賞魚として人気が高いウツボです。しかし全長80cmになり、大型水槽が必要です。

コケウツボ

コケウツボは相模湾から奄美大島までの太平洋岸と台湾、ガラパゴス諸島に分布する種です。口の部分はトラウツボ同様に湾曲していて、鋭い牙を口から覗かせますが、後鼻孔は管状にならないこと、体にコケ状の斑紋があること、などの特徴によりトラウツボとは見分けられます。やはり全長90cmになるため、大型水槽でないと飼育できない種です。

このほか、千葉県から相模湾沿岸ではタカマユウツボ、オキノシマウツボ、アミウツボ、ミゾレウツボ、ユリウツボ、クロエリウツボなどが確認されていますが、まれなタカマユウツボを除き深場にすむため磯採集で遭遇することはできないことから今回は除外させていただきました。

ウツボの仲間を採集したら

ウツボは2本の網を使い、片方の網でもう片方の網へ追い込むようにして採集するとうまくとれます。テレビなどでよく使われる銛やヤスで採集すると、ウツボは死んでしまうのでよくありません。

ウツボを採集したら、速やかに綺麗な海水をはったバケツの中に泳がせる必要があります。ウツボは海から出てもしばらくの間は生きていられますが、その割には酸欠に弱いためエアポンプで酸素を送ることも忘れてはいけません。ただしフタを開けっ放しにしておくとすぐ脱走してしまうので、フタを閉めても空気を送られるようなバケツを購入するか、コマセバケツに穴をあけるなど改造しておくとよいでしょう。

ウツボと間違えられやすい魚

関東の磯では一見、ウツボの仲間に見えるものの、ウツボの仲間でないものも見られます。ほかのウナギ目の仲間もいるのですが、多くはカズナギ属や、ダイナンギンポ属の魚です。

カズナギ属

▲コモンイトギンポ

カズナギの仲間はスズキ目・ギンポ亜目・タウエガジ科(従来はゲンゲ科とされた)の魚です。細長い体をしていて、口が大きくウツボに似ている魚です。日本では北海道、本州~瀬戸内海、九州北岸に生息する温帯性の魚で、関東沿岸ではトビイトギンポ、コモンイトギンポ、カズナギの3種が知られていますが10cm前後と小さなものが多いです。また高水温にも弱く、水温が高い夏場には浅瀬から姿を消してしまいます。水槽でも水槽用クーラーがなければ飼育は不可能です。

ウツボの仲間ににていますが、背鰭には棘をもち、明瞭な胸鰭をもっていることにより見分けることができます。

ダイナンギンポ属

▲ダイナンギンポの仲間も磯で採集できる

ダイナンギンポの仲間もカズナギ属同様タウエガジ科の魚で、関東の磯ではダイナンギンポとベニツケギンポの2種が見られます。この仲間はウツボ同様長い体が特徴ですが、ダイナンギンポには胸鰭があること、ウツボの仲間には見られない、網目のような側線が体にあることで見分けることができます。磯でもよく見られますが、テトラポッドの隙間にいるカサゴやキジハタなどを狙う「穴釣り」でも釣れてきます。高水温にはカズナギ属よりも耐えられるようですが、20℃前後の水温での飼育が理想です。一方ベニツケギンポは25℃までであれば耐えられるようです。

ダイナンギンポは30cmほどに育ちますが、ベニツケギンポは15cmほどの小型種です。

関東の磯で採集できるウツボ まとめ

  • 関東の磯でも4種のウツボに出会える可能性がある
  • 主にウツボ・ワカウツボ・トラウツボ・コケウツボの4種が知られる
  • 網で掬うことが重要。銛やヤスで突いたらウツボが死んでしまう
  • すぐに綺麗な海水の入ったバケツに入れる
  • 酸欠に弱いのでエアレーションも重要
  • カズナギやダイナンギンポの類は胸鰭があるのでウツボの仲間と見分けやすい
  • ダイナンギンポとウツボの仲間は特徴的な側線の有無でも見分けられる

2020.09.21 (公開 2020.02.10) 海水魚図鑑

ウツボ(種)の飼育方法~給餌と脱走には要注意!

ウツボは、科の標準和名にもなっていることからもわかるように千葉県以南の太平洋岸では広い範囲で見られる魚です。ウツボといえば「獰猛」「凶暴」「海のギャング」的なイメージが強いのですが、実際はそれほど恐ろしい存在ではなく、誇張された表現といえます。しかし鋭い歯をもつ肉食性の魚ですので、咬まれないよう注意が必要です。また脱走して干物になってしまうこともあるのでフタはしっかりしておきましょう。

標準和名 ウツボ
学名 Gymnothorax kidako (Temminck and Schlegel, 1846)
英名 Kidako morayなど
分類 条鰭綱・ウナギ目・ウツボ科・ウツボ亜科・ウツボ属
全長 80cm
飼育難易度 ★★☆☆☆
おすすめの餌 イカやタコ、魚の切り身など(本文参照)
温度 25℃前後
水槽 90cm~
混泳 小型水槽ではほかの魚との混泳は避ける。ウツボの仲間同士の混泳も要注意
サンゴとの飼育 困難

ウツボって、どんな魚?

ウツボはウナギ目ウツボ科ウツボ属の魚です。太い体をもつウナギ型の魚で、ウナギやアナゴなどと比べて胸鰭などの鰭を欠くなど鰭の退化が著しい仲間です。細長い体で全長80cmに達し、ウツボ科の魚としては中型の魚ですが、一般的にマリンアクアリウムの中で飼育される魚としては大型です。体は黄褐色で黒い横帯が入り、この仲間では一般的な魚であるもののかなり美しい魚です。

学名と英語名は神奈川や九州での本種の地方名から来ています。神奈川県三崎地方でもキダコというようですが、タイプ標本が採集された長崎の方かもしれません。

なお、「ウツボ」といった場合、ウツボ科の魚類の総称をさす場合と、ウツボ科魚類の一種をさす場合がありますが、この記事で単に「ウツボ」といった場合、本種のことをさすものとします。そのほかのウツボ(ウツボ科魚類)については、ウツボ科の記事をご覧ください。

注意すべき点

▲ウツボの口。鋭い歯が並ぶ

ウツボの仲間は多くの種が鋭い歯をもち、顎の力も強いため、咬まれると大怪我をすることもあります。よくテレビ番組などでウツボを「海のギャング」と紹介し、恐怖を煽る演出をしているものの、実際には動物食性ではありますが、ヒトに向かって襲いかかるようなことはありません。

ただ、自分の身を守ったり、給餌中に指を餌と間違えるなどの理由でかみつくことがあります。そうなると大けがをすることがありますので、ウツボの口のまわりに手をもっていかないように注意しなければなりません。

またウツボの仲間は飛び出したり、フタをしても隙間から脱走してしまうことがあります。

美味しい一面

ウツボは食べても美味しい魚です。干物や唐揚げも美味しいですが、ウツボのタタキはとくに美味しいものです。千葉県、三重県、和歌山県、高知県など太平洋岸では盛んに食べられますが、日本海岸ではウツボが少ないためか、一部の地域を除いて食べられていないようです。沖縄にはウツボは少ないのですが、近縁種であるドクウツボなどは食用となっています。小笠原諸島にも分布していますが、写真からは別の種のような雰囲気もあり、将来的には別種とされる可能性もあるかもしれません。

ウツボ飼育に適した環境

水槽

小型個体であれば60cm水槽での飼育もできますが、長期飼育することを考えると90cm~120cm水槽での飼育が望ましいです。成長するにつてて大型水槽が必要になるということは、必ず頭に入れておく必要があります。

水質とろ過システム

ろ過システムは外掛けろ過槽や外部ろ過槽はおすすめできません。外掛けろ過槽はパワーが低く、水槽の上に隙間ができやすい(脱走しやすくなる)のでどんなウツボ飼育にも向きません。外部ろ過槽は密閉式のため、酸素を水槽に供給しにくいというデメリットがあり、一般的な海水魚であっても淡水魚よりもワンランク上の適合水量のものを買いたいため、水を汚しやすいウツボ飼育には不向きなところがあります。

現実的な選択肢は上部ろ過槽かオーバーフロー水槽です。おすすめはオーバーフロー水槽にしてサンプ(水溜め)でろ過をする方式で、ほかのろ過システムと比べて圧倒的なろ過能力があります。サンゴを飼育するためのベルリンシステムでの飼育は向きません。ウツボはサンゴを食べることはないのですが、岩組を崩したり、生の餌を食べて水を汚してしまうこともありますので、サンゴ水槽での飼育は困難です。

水温

温帯性ですが、比較的高い水温にも耐えられるようで、浅い潮溜まりで採集した個体は水温25℃で飼育しても大丈夫です。実際に私も25℃で飼育していますが、それ以上水温が上がらないほうがよいかもしれません。最近は近海魚専門店で深場の筒籠などで漁獲されることもあります。このような漁法で採集されたものは高水温に弱いことがありますので、どのくらいの水深で採集されたか、どのくらいの水温で飼育すればいいのか、あらかじめお店に聞いておくとよいでしょう。

隠れ家

ウツボが落ち着けるような場所を作りたいところです。ライブロックを組み合わせたり、人工の飾りを入れてもいいのですが、崩されるおそれがあることは考慮しなければなりません。塩ビ管などを入れておくとよいでしょう。

脱走対策

ウツボの仲間はフタをしっかりしていないと、水槽から脱走してしまうことがあるため、しっかりした脱走対策が必要です。水槽の上にフタをしっかりするだけでなく、フタの斜めにカットしてある部分に分厚いアクリル板を置いたり、フタにペットボトルの重石をするなど、脱走対策は厳重に行いたいものです。

ウツボに適した餌

ウツボは配合飼料、というよりは生の餌を与えるのが基本的です。我が家では主にイカを与えています。イカはオールシーズン入手しやすく、油が浮いてしまうようなことも少なく、与えやすい餌です。イカは与える前に冷凍しておきます。このほかアジなどの切り身や小さなイワシ、タコなども与えてよいですが、魚は油が浮きやすいので控えめに、タコはイカ同様使いやすいものの販売されているものは大型のもので高価であることが多いです。

なお、餌は必ずピンセットで与えなければなりません。これはウツボに咬まれてけがをすることを防ぐためです。

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ウツボをお迎えする

ウツボは採集することも、購入することも可能です。磯は千葉県以南の太平洋岸で見られ、季節により潮溜まりでもみることができます。釣りで釣ることは針をのみこんでしまったり、針を外す際にけがをしてしまうことがあるため、おすすめしません。

購入するときは近海産魚に強いお店で購入するのがおすすめです。このようなお店で販売されている魚については釣りではなくおもにウツボ籠とよばれるもので採集されていることが多いです。釣り針を飲み込んでしまうと飼育下で早いうちに死亡してしまうことも多いのです。漁獲方法や飼育水温などをしっかり聞いておくようにしましょう。

ほかの生物との相性

ほかの魚との相性

▲ウツボ同士の混泳はサイズに注意

ウツボはほかの生き物を捕食してしまうことがあるため、ウツボの仲間以外との混泳はおすすめできません。ウツボ同士であってもサイズの違いによってはほかのウツボを捕食してしまう、もしくは捕食されてしまうこともあるため注意が必要です。写真の水槽では同じくらいの大きさ(太さ)のサビウツボと混泳しています。水族館ではウツボの仲間を何種類も何匹も飼育していますが、家庭の水槽では単独か2~3種が限度でしょう。

写真ではウミヘビ科のモヨウモンガラドオシとも混泳していますが、ウツボは餌を大量に食べるためモヨウモンガラドオシに餌がいきわたりにくいことがあります。しっかりモヨウモンガラドオシも餌を食べているか観察しましょう。

サンゴ・無脊椎動物との相性

サンゴ食べてしまうということはないのですが、岩組を壊したり、水を汚してサンゴを死なせてしまうことがあるので、やめたほうがよいでしょう。無脊椎動物は食べてしまいますので、一緒に飼わない方がよいでしょう。水族館では多くの場合、クリーナーシュリンプと一緒に飼育していますが、水槽内では食べてしまうこともあります。

ウツボ(種)の飼育方法まとめ

  • ウツボの仲間を代表する種
  • 全長80cmに達し、ウツボとしては中型
  • 鋭い歯をもっているため注意しないとかまれるおそれあり
  • 90cm以上、できれば120cm水槽が欲しい
  • ろ過槽は上部ろ過槽、できればオーバーフロー水槽
  • 温帯性だが浅場で採集したものは25℃で飼える
  • 脱走の名人なので対策が必要
  • イカなど生の餌を与える
  • 餌を与えるときは必ず長いピンセットを使う
  • ウツボの仲間以外の魚との飼育はおすすめしない
  • ウツボ同士の混泳も注意
  • サンゴや無脊椎動物との飼育も避ける

2020.09.21 (公開 2020.02.07) 餌・添加剤

イカを魚の餌に与える~ウツボには最適の餌!

イカは貝と同じ軟体動物ですが、危険が迫っても貝殻のなかに隠れることができず、大型の魚はイカを好んで食べてしまいます。ウツボの仲間は同じ頭足類であるタコが大好物ですが、タコよりも入手しやすく安価なイカをメインに与えるのがおすすめです。今回はイカをウツボやそのほかの魚に与える方法についてご紹介します。

イカを魚に与える

▲巻貝の仲間。イカと異なり危険が迫ると貝殻の中に隠して身を守ることができる

イカはタコとともに軟体動物門・頭足綱に属する生物の一種です。ほかの軟体動物の多くにある「貝殻」が外部になく、身を守るすべは主に「スミ」を吐いて逃げるということになります。貝殻に隠れ身を守ることができないためか、多くの肉食魚に捕食される生物です。実際にハタの仲間や外洋を遊泳する魚など、多くの魚の消化管内からイカが見つかっています。イカの足の部分を餌にするとハタの仲間やベラの仲間など、色々な魚が釣れてきます。イカは多くの魚にとってよい餌となっているのです。イカの子は大型魚だけでなくテンジクダイの仲間などの餌になりますが、大きなイカはそのような魚を食べてしまいます。

イカを好む魚

イカを食べるサビウツボ

イカは多くの動物食性の魚に最適です。ベラやハタなどの魚は配合飼料も食べますが、ウツボやモンガラドオシの類などはこのイカをメインに与えることが一般的になります。ウツボはよくタコを好んで食べる旨がテレビなどで紹介されていますが、タコはイカほどには新鮮なものが手に入りにくく、また大きいものが多く価格もイカより高いため、イカを与えることが多いといえます。

イカを与えるメリット

イカはアジやイワシの切り身などに比べると脂分が少ないのか、「脂が浮いてしまう」なんていうことは起こりにくいです。またイカ類はスーパーマーケットなどでも簡単に入手できるので、入手性に優れているのもメリットといえるでしょう。1匹のイカが大きすぎる、というときは細かく切って袋にいれて冷凍しておけばよいですし、さらに同じく冷凍で保存しておく必要があるコペポーダやアカムシ、イトミミズ(淡水用餌)と比べて家族の同意を得やすいというメリットもあります。

イカを与える前に行うこと

冷凍

イカの仲間には寄生虫などがついている可能性もあるので、必ずいったん冷凍するようにします。

下ごしらえ

▲コウイカの仲間は「甲」をもつ

イカは足(いわゆるゲソ)の部分も、胴の部分も餌として有用ですが、内臓(イカゴロと呼ばれる)は水質を悪化させやすいので飼育している魚の餌には一般に使われません。一方釣り餌では内臓も使用し、特に北海道では人気が高くカレイや根魚釣りでは特効餌とされています。

一般的に日本近海で水揚げされるイカには大きく2つのものに分けられます。体に「甲」をもつコウイカの仲間(コウイカ、カミナリイカなど)と、透明な「軟甲」をもつツツイカの仲間(ヤリイカ、スルメイカ、ホタルイカなど)に分けられます。コウイカは販売されていてもやや高価ですが、底曳網などがある場所では小さいのがまとまって獲れ、販売されることがありますので、そのようなものを餌にしてもよいでしょう。ただし餌にする前にはそのまままるごと与えるのではなく、体の中の「甲」の部分を取り除いてから与えるようにします。スルメイカなどツツイカの仲間の軟甲も同様に取り除いてから与えます。

どちらも大きいもの(一般に販売されているスルメイカなど大きいもの)は胴の部分や足の部分もカットし、小型のウツボであれば5cmほどにカットします。そのほうがウツボが食べやすいです。足の部分には吸盤がありますが、吸盤が特に大きなものでない限り取り除かなくても問題ないようです。

テンジクダイなど小魚に与えるときはさらに細かく切る、または包丁でミンチのようにして与えるとよいでしょう。

小分けにする

▲チャックつきの袋であれば保存も簡単

切ったイカの足や胴は小さなビニール袋に入れて、小分けにして冷凍しておくと便利です。水を使った流水解凍、もしくはそのまま、自然解凍させてから魚に与えます。大きすぎる場合はさらにカットしてあたえます。

給餌

▲ウツボにはかならずピンセットを使って与えたい

ウツボにイカを与えるなら、ウツボ1匹1匹の口もとまで持っていき与えます。もちろん、素手で与えるとウツボに咬まれて大けがをすることもありますので、ピンセットで口もとまで持っていき与えるのです。あまりに餌が細長いとほかのウツボに餌を横取りされることもあるため注意します。またピンセットが短いとウツボに餌を与えるときにかみつかれてけがをすることもあり、注意しなければなりません。

テンジクダイの仲間やハゼの仲間など、そのほかの魚に与えるのであれば普通に落とすだけでもよいでしょう。ただしイカを与えたい魚の口のサイズには注意します。あまりにも大きいと餌を口に入れることができず、吐き出して落としてしまうことがあるからです。一回底に落ちてしまった餌はテンジクダイの仲間(特にイトヒキテンジクダイ属やスジイシモチ属、マンジュウイシモチなど)は食べにくいのです。

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イカを餌に与えるまとめ

  • 多くの肉食魚に好まれる餌
  • ウツボなどには最適
  • アジなどの切り身と比べて油が浮きにくい
  • イカを冷凍し寄生虫を殺す
  • コウイカは小さくても甲を取り除く
  • 足や胴は魚の口のサイズに合わせてカットする
  • ビニール袋に入れて冷凍保存するとよい
  • ウツボに餌を与えるときはピンセットを使うと安心

2020.09.21 (公開 2020.02.06) 海水魚飼育の基礎

深海生物を飼育する~家庭でも飼育できる深海魚と飼育方法をご紹介

深海生物は水深200m以深に生息する生物のことをいいます。最近は深海生物が人気で、水族館でも深海生物が種類は少ないながらも飼育されており、中には家庭の水槽で飼育できるようなものもいるのです。このような深海魚の飼育ではどのような点に気を付ければよいでしょうか。

深海生物とは

「深海生物」とは、一般的に水深200m以深に生息している生物のことを指します。浅い海の生物とはことなるユニークな生態、変わった見た目、いまだに未知の生物が多数生息しているというロマン…これらの要素により昨今「深海生物」がブームとなっています。

博物館などで行われる深海生物の展示はいつも盛況、マスメディアでも深海生物の話題は広く取り上げられており、さらには深海生物についての知識を身につけられる「深海生物検定」なるものも登場しています。そして、最近は多くの水族館でも深海生物展示コーナーを設けるなどして、深海生物ブームを引っ張っていきます。

深海生物の飼育は難しい

しかし、深海生物を展示している水族館でも、生きた深海生物にはあまり多くの種類には出会えず、がっかりされた方もいるかもしれません。しかし、それには理由があるのです。

状態よく上がってくることが少ない

▲深海から上がってきたホウズキ(メバル科)。眼や内臓が飛び出ている。そうなると飼育は困難

まず深海生物を水族館などで展示するには、深海から生物を連れてこなければなりません。しかし深海生物を連れてくるのは、なかなか難しいことなのです。

深海にすんでいる生物を釣りや底曳網などで一気に引き上げてしまうと、急激な水圧の変化によって鰾(うきぶくろ)が膨張してしまい、口や肛門からは内臓が飛び出し、眼が飛び出していることもあります。そのようになってしまった魚は飼育が難しいのです。

低い水温を保つ必要がある

大体12℃から14℃を保たなければならないものがほとんどです。そのため、クーラーも強力なものが必要になります。ゼンスイなどから販売されている強力なクーラーが必要になります。

また、クーラーの能力をフルに引き出すためにクーラーのある部屋も涼しく保ちたいものです。ゼンスイの「ZC100α」を例にあげれば、水温15℃で周りの温度が30℃の場合、40リットルの水を冷却することができますが、周辺が35℃の場合25リットルにまで能力が落ちてしまうからです。夏を通り越すことが深海生物の飼育で最も大変なことといえます。ゼンスイでいえば「ZC-500α」など、できるだけ大きなクーラーを用いるようにしましょう。

なお、水温を低くしてしまうと結露が発生してしまうので、分厚いアクリル板の水槽がよいでしょう。そうすればあるていど結露の発生を防ぐことができるようです。

人気深海魚の飼育は難しい

▲リュウグウノツカイ

人気ある深海魚といえば「リュウグウノツカイ」や「チョウチンアンコウ」、深海性のサメの仲間である「ラブカ」や「ミツクリザメ」などですが、これらの飼育は難しいです。リュウグウノツカイはいくつかの水族館が水槽で泳がせていましたが、残念ながら数時間で死亡してしまいました。ラブカやミツクリザメも駿河湾や東京湾などで漁獲されたものが水族館で飼育されていたことがありますが、基本的に2,3日くらいで死亡してしまいました。

1960年代にチョウチンアンコウが江ノ島水族館で飼育されましたが、そのときは8日ほど飼育されており、光るルアーを使うシーンなど貴重な行動も記録されました。現在の科学のチカラであれば、もっと長期飼育できるかもしれません。

深海生物を採集する

深海魚釣り

▲深海延縄で釣り上げられたトウジン(ソコダラ科)

深海生物を採集する上では一般的な採集方法です。普通に竿を使った釣りのほか、深海延縄などがあります。前者は主に遊漁、後者は職漁で使用されることが多いです。ただし、釣りで採集された魚はすべて状態よく持ち帰ることができる、というわけではありません。口から胃袋などを出したりして飼育することが出来なくなってしまっているものも多いです。

水深100m前後にいる魚は鰾(うきぶくろ)に専用の針を刺すなどしてうまく泳げるようになることもあるのですが、それでも生存率はそれほど高くありません。水族館にいたり、観賞魚店で販売されているものは、奇跡的に生き延びた個体ともいえます。大事に飼育してあげたいものです。

深海生物用のワナ

▲筒状のワナ

筒状やカゴのワナを海底に仕掛け、中に入った生物を捕獲するというものです。アナゴ類や食用となる深海性のカニ(ズワイガニの仲間など)はこれで獲れます。他に深海性のゲンゲ類やクサウオ科、各種甲殻類なども入ることもあります。入る魚種は限られますが、状態は概ね良好です。

底曳網漁業

▲底曳網漁業で採集された生物。スレ傷などが多

袋状の網を船でひいて魚介類をとるのが底曳網漁業です。イカ釣り漁やカニかご漁、イカナゴ漁では特定の魚を追いかける漁法ですが、この底曳網漁業は特定の魚を追いかけて漁業をするのではなく、獲れる魚を獲る、という漁業です。網に入った魚は食用魚や練り製品の原料の魚は持ち帰りますがそうでない魚は逃がすことになります。深海の生物に大きな影響を与えるので漁期や網の目のサイズなど、ほかの漁業よりも多くの規制があります。したがって底曳網漁業の禁漁期間は、この漁法でしかとれないような生物は手に入りません。

底曳網漁業で獲れる魚は傷ついていることも多く、魚の採集には適さないこともあります。しかし深海性の貝類やヒトデ、各種甲殻類などはスレにつよく、採集して生かして持ち帰ることができます。またキホウボウなど一部の魚もうまく生かして持ち帰られる場合があります。

一方サメの仲間はスレに強い印象があります。確かに硬骨魚類より強いことが多いのですがなぜかこの漁法で採集されたものは長期飼育が難しい傾向にあります。オオメコビトザメなど、採集したばかりのときはバケツで泳ぎ回っていますが、表層の水温に耐えられないのか、すぐに死んでしまいます。ただしこの仲間のサメは水族館でも上手く飼育できておらず、水温のせいだけではなさそうです。

無人潜水艇で採集する

▲深海性のウニ、ヤミガンガゼ。沖縄美ら海水族館で撮影

「ROV」と呼ばれる遠隔操作で動く無人潜水艇を使用して深海生物を採集することがあります。しかしこのROVは水族館で展示する魚や研究用としての実績はあるのですが、アクアリストが運用して魚を採集するとなると、莫大な費用が必要になることから困難になってしまいます。さらに泳ぎ回る魚をROVを使用して採集することはどうしても困難なので、現在のところは「水族館が飼育するための無脊椎動物を採集する」というものになっています。

沖縄美ら海水族館ではROVを使用して採集した甲殻類や棘皮動物などの生物を色々と飼育しています。写真のヤミガンガゼもそのような無脊椎動物です。

浅いところに来たものを採集する

▲オオクチイシナギは幼魚が浅い海に現れることも

深海生物の種類によっては、幼魚が浅い場所に現れるのでそのときに採集することができます。たとえば成魚は深い場所にうつるムツやオオクチイシナギ、ツボダイといった魚は幼魚は浅場で釣りや定置網などで採集されることがあるので、それを釣るなどして採集することになります。また一部の魚種は水温が下がる冬期には浅い場所に出現することがあります。やはりその時期に採集するとうまく飼育できることがあります。

一方ハダカイワシの仲間は昼は深海におり、夜間は水面近くに浮上してくるのですが、その習性からもわかるように遊泳力が非常に強く、名前からもわかるように鱗が剥げやすいので、飼育は困難です。発光器をもち、飼育すると美しい姿を見ることができるハズなので、ぜひとも各地の水族館にはチャレンジしてほしいものです。

家庭でも飼育可能な深海生物

飼育が難しい深海生物ですが、その中には家庭の水槽で飼育できるものもわずかながらいます。

ユメカサゴ

ユメカサゴ

水深150~900mまでの深海に生息するメバル科の深海魚です。別名は「ちょうか」、もしくは喉が黒いことから「のどぐろ」などと呼ばれています。深海釣りではよく釣れる魚で食用になり、煮つけや塩焼、揚げ物などで美味な魚ですが、状態よいものが観賞魚店に入ってくることもあります。釣りたてのものは赤くて綺麗なのですが、飼育されているものは灰色っぽくなるようです。

釣りやかごなどで漁獲され、深海魚を飼育している水族館ではまず間違いなく出会えるでしょう。

ハシキンメ

▲水族館で飼育されているハシキンメ

ハシキンメは水深150~700mに生息する深海性の魚です。名前に「キンメ」とあるようにキンメダイ目の魚ですが、キンメダイ科ではなくヒウチダイ科の魚で、浅海でみられるマツカサウオと近縁な魚です。この種も状態よく水揚げされることがあり、そのようなものは水族館へいったり、観賞魚店で販売されることもあります。ユメカサゴ同様、水族館ではよく見られる深海魚です。

地方名では「ごそ」とよび、底曳網の魚が水揚げされる三河湾や駿河湾では食用となります。白身の魚で開いたものを焼くと極めて美味です。

ムツ

スズキ目・ムツ科の魚です。成魚は水深200~700mに生息していますが、幼魚は沿岸のごく浅い場所に生息し、磯で採集することもできます。それを水槽で育てるのも簡単で、深海生物を扱っている水族館ではよく見られる魚です。

ただし肉食性の魚ですので、小魚などを捕食することがあるため注意が必要です。また幼魚が浅いところに出現するわりには高水温にも弱いようで注意が必要です。さらに大きいものは60cmになるため、成魚は大型水槽が必要です。釣りや延縄などで釣れる食用魚です。

キホウボウ

水深110~500mに多く生息するキホウボウも比較的丈夫な深海魚であり、底曳網で漁獲されたものでもうまく飼育されていることがあります。体がほかの魚と比べて硬いこともその理由でしょう。海水魚店でも極まれに販売されていることがありますが、そのような個体を購入して飼育するのもよいでしょう。ただし水温は12~14℃に抑えておかなければなりません。

キホウボウは成魚でも20cmほどの小型種ですが、中には50cmにもなるものがいます。大型になる種は食用魚で塩焼などにするとかなり美味ですが、その姿から食用として流通することはまずありません。

オオグソクムシ

▲トラップで採集されたオオグソクムシ

等脚目・スナホリムシ科の節足動物です。見た目は巨大なダンゴムシのようで、実際に海に進出したダンゴムシの仲間といえます。海底に非常に多くの個体がおり、底曳網やカゴ漁などで漁獲されます。私は静岡県石花海、高知県足摺岬沖などで採集しています。

甲殻類は水圧の変化に強い面があり、非常に飼育しやすく、うまくいけば長期飼育が楽しめます。ただし高水温にだけは注意したいものです。深海生物専用に高性能のクーラーを使用するしかありません。食用となり美味、お土産物の「オオグソクムシせんべい」なども人気です。

よく似ているダイオウグソクムシは全長50cmにもなり、等脚目としては世界最大です。メキシコ湾などの深海に生息していますが、水族館向けでの輸入はあるものの、観賞魚店ではなかなか見られないようです。

タカアシガニ

日本の太平洋岸と台湾の深海にすむクモガニ科のカニです。脚を広げた長さでは世界最大のカニとして知られており、1.5mになり、最大で3mにもなります。

そのサイズから家庭水槽での飼育は難しいです。まれに小型の個体が販売されることもあるのですが、やがては大きくなることを考えておかなければなりません。甲殻類は水圧の変化に強く、水温にさえ気を付ければ飼育しやすいです。餌は水族館では魚やイカの切り身を与えています。なお食用種でもあり鍋にして食べられ美味です。

タカアシガニは大きくなり飼育が難しいのですが、このほかにもやや小ぶりな深海性のカニや、「カニ」という名前がついていても実際にはヤドカリの仲間であるイガグリガニ(タラバガニの仲間)、ヤドカリや貝殻を背負わないコシオリエビなど、深海の甲殻類も色々な種類がいるのです。

深海生物の飼育まとめ

  • 水深200m以深にすむ生物を深海生物という
  • 現在は深海生物ブームで水族館で深海生物を見ることもできるが、種類は少ない
  • 状態よくあがってくることが少なく、水温が高くなると弱ってしまうことが多い
  • キホウボウやオオグソクムシなど家庭で飼育できる深海生物もいる
  • 水温は12~14℃くらいがちょうどよい
  • 深海釣りで釣れてもすべてうまく持ち帰られる、わけではない
  • トラップで採集されたものは底曳網のものと比べて状態がよいが種類は限られる
  • 底曳網漁業では多くの種類が獲れるが飼えるような状態のものは少ない
  • 水族館では無人潜水艇を使って採集することもある
  • 一部浅い海に現れるような深海魚もいる
深海生物大事典

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