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2020.07.19 (公開 2020.05.25) メンテナンス

海水魚飼育におけるpH~海水魚が好むのは酸性?アルカリ性?

魚を飼育する時にはよく「pHとは」「pHはいくつ?」と疑問をもたれることがあります。pHは水が酸性なのか、アルカリ性なのかを示す数値で、とくに淡水魚を飼育しているときはよく聞くものです。淡水魚は種類によって、弱酸性を好むのか、弱アルカリ性を好むのか違いがあります。そのため好む水質が大きく変わる魚は一緒に飼うことはできません。では海水魚を飼育するときにもこれはあてはまるのでしょうか。今回は海水魚飼育のpHについて考えてみたいと思います。

pHとは?

pH(水素イオン濃度)は簡単にいえばその液体が酸性なのか、それともアルカリ性なのかをしめす指数です。ペーハー、もしくはピーエッチと読みます。最近はピーエッチと呼ばれることが多く、実査に日本工業規格では「ピーエッチ」とされておりますが、アクアリウムの世界ではいまだにペーハー読みが主流です。ちなみにペーハーというのはドイツ語です。アクアリウムとしてはドイツは先進的なイメージもあり、そういう点もペーハー読みがいまだに使われている理由なのかもしれません。

酸性

▲弱酸性の水を好むディスカスとオトシンクルス

▲アフリカ産シクリッドのうち河川のものは弱酸性の水で飼育できる

一般的に弱酸性はpH6前後をさします。弱酸性の水を好む魚としては南米やアフリカにすむカラシン類やディスカス、ドワーフシクリッド、東南アジアの小型コイ類やグラミーのなかまなどがいます。中性をこのむコイの仲間でも徐々な変化であればpH6前後の弱酸性で飼えるものも多いです。アフリカ産のシクリッドは弱アルカリ性というイメージがありますが、湖産シクリッド(アウロノカラ、ネオランプロログスなど)以外のアフリカ産シクリッドの多く(トーマシーなど)は弱酸性の水で飼育することができます。

中性

▲キンギョやメダカもpH7前後で問題ない

中性はpH7で、これより数値が大きいと弱アルカリ性、少なければ酸性となります。また純水のpHが7です。中性の水を好む淡水魚はコイの仲間やカラシンの仲間、中・大型魚です。日本の淡水魚も多くは中性から弱酸性で飼育することができます。キンギョやニシキゴイ、メダカなどもこの数値前後で飼育して問題ありません。

アルカリ性

▲汽水域を好むテッポウウオ

マラウィ湖やタンガニーカ湖のシクリッドはアルカリ性の水を好む

pH7以上ではアルカリ性になります。淡水魚でアルカリ性を好むものは少ないですが、アフリカのマラウィ湖やタンガニーカ湖などの湖産シクリッド(通称アフリカンシクリッド)や、托卵という変わった習性をもつものが含まれる湖産シノドンティス(ナマズの仲間)などを飼育する際には弱アルカリ性の水で飼育する必要があります。またヒメツバメウオやミドリフグなどの汽水魚を飼育する際も弱アルカリ性の汽水で飼育することになります。

海水魚のpHは?

海水魚の水はアルカリ性です。アルカリ性であればpHの値がいくらでもいいというわけではなく、おおむね8.1~8.4の間になるのがベストですが、夜間はpHが下がりやすい傾向にあります。酸素呼吸によっても生成されるので、昼間は光合成していた藻類なども夜間は呼吸するためですね。

また有機物の分解によっても生成され、魚を中心とした水槽ではpHが下がりやすい傾向にあります。サンゴ砂を敷けばある程度はpH維持に役立つのですが、それ以上に魚の排せつや生物ろ過によっても低下していくからです。そのため水替えや添加剤を使用してpHの維持につとめたいところです。なお海水魚はどの種もpH8.1~8.4くらいの水で飼育することができますので混泳についてpHはあまり重要な要素ではないのですが、新しい魚を水槽にいれるの際のpHショックには注意が必要です。そのため水合わせが必要です。魚ではないのですがエビの仲間は水質の急変に弱いので注意が必要です。

アルカリ度(炭酸塩硬度、KH)

pHをアルカリ性に維持するためにはアルカリ度を高めるためのバッファー剤もいっしょに添加したいものです。これはアルカリ度の値もpHの変動に影響を及ぼすためで、アルカリ度が低いとpHも下がってしまいやすいからです。またアルカリ度はサンゴの骨格を形成するのにも使用されており、サンゴ水槽でも減っていってしまいます。そのため添加剤を使用して添加しておきたいものです。

添加剤でのpH調整

いくつかのメーカーからpHやKHを調整するための添加剤が販売されています。

ブライトウェル pHプラス&アルカリン8.3

▲pHプラスとアルカリン8.3

マーフィードが輸入販売するブライトウェルアクアティクスの添加剤です。我が家ではおおむねこの方法でアルカリ度を上げています。pHプラスはpHを生物にとっては安全に上昇させることができます。しかしながらアルカリ度が低いとpHも上がっていかないので、アルカリ度を上昇させる必要もあります(説明書によれば2.5~4.3meq/l、炭酸塩硬度で7~12dKHをキープしておく必要があるとのこと)。そのためアルカリ度を上げるアルカリン8.3も同時に添加したいところです。なお、アルカリ度が低い場合は「アルカリン8.3」を添加してからpHプラスを添加するとよいようです。また、できるだけpHメーター、もしくはテストキットを用いて添加量をしっかりと計測したいところです。

レッドシー ファンデーションB KH/アルカリニティ

▲レッドシーのファウンデーションB

レッドシーの添加剤「ファンデーションB」は「リーフケアプログラム」と呼ばれるサンゴの健康維持や成長を促すためのプログラムのなかの4つのサブプログラムのひとつ「リーフファンデーションエレメンツ」の中に含まれます。このサブプログラムではサンゴの健康維持や成長に重要な安定した環境を維持することに重点がおかれています。リーフファンデーションエレメンツには「A」「B」「C」の3種の添加剤があり、「A」はカルシウムやマグネシウム、「B」は炭酸塩、「C」はマグネシウムが含まれます。またこれら3種すべてをふくむセットも販売されています。

このうちpHやKHの維持に役に立つのはファンデーションBで、KH/アルカリニティでは炭酸塩やバッファー成分が混合されておりサンゴに適切なアルカリ度やpHを維持します。注意点としてはマニュアル化されている添加剤ですので、レッドシーのWEBサイトでダウンロードできる添加マニュアルに従う必要があります。また同様に添加の際には適切なテストキットでの測定が必要になることがあげられます。

レッドシー ファンデーションB KH/アルカリニティ 500ml

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pHの計測

▲マーフィードの「エコペーハー」

古くからあるリトマス紙のようなものもありますが、昨今はアクアリウム用のpHメーターを使って計測するほうが簡単でわかりやすいため、よく使用されます。マーフィードなどからpHメーターが販売されているので、できれば購入して計測しておきたいところです。また水槽に設置し、pHの値を監視してくれるpHモニターも各社から出回っていますので、このようなアイテムを使用するのもよいでしょう。

ただし正確に測りたいのであれば試薬タイプを使用するとよいでしょう。現在日本においてもっとも入手しやすい試薬はイスラエルのレッドシーのもので、pHとKHを測定できるテストキットが市販されています。

マーフィード エコペーハー pHメーター標準液 90ml

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海水魚飼育におけるpHまとめ

  • 水素イオン濃度とよばれ液体が酸性なのかアルカリ性を示す
  • pH6前後が弱酸性、カラシン類や河川のシクリッドを飼育するのに適する
  • pH7が中性、純水は中性で日本産淡水魚などの飼育にも適する
  • pH7より上はアルカリ性、アフリカの湖産シクリッドはアルカリ性で飼育する
  • 海水魚はpH8.1~8.5ほどで飼育する
  • アルカリ度が低いとpHは上がっていかない
  • 魚水槽ではpHが下がりやすい
  • 添加剤などを使用してpHを維持する
  • pH計測のためには専用のpHメーターを使用する
  • 試薬を使うと詳細にpHやKHを測定できる

2020.05.28 (公開 2020.05.21) 海水魚図鑑

アジの仲間が海水魚水槽で飼育しにくい理由

アジの仲間は食用魚として人気があります。一部の種は美しい色彩やユニークな見た目から、観賞魚として飼育されることもあります。しかしアジの仲間はアクアリウムの中ではマイナーで、長期飼育が難しい魚です。今回はなぜアジの仲間が飼いにくいのか、ご紹介します。

アジ(アジ科魚類)とは

アジはスズキ目・アジ科の海水魚の総称で、世界で146種、そのうち日本には61種類が知られています。どの種も沿岸から外洋の海域に生息していますが、一部の種では河川の汽水域や純淡水域に入るものもいます。

アジ科魚類は食用になるものが多いです。アジ類の「アジ」は、味がよいことからついた、ともいわれています。魚のことをあまり知らなくてもブリ、カンパチ、シマアジ、マアジなどは知っている人も多いですし、伊豆諸島の「くさや」はムロアジ類からつくりますが、現在はトビウオなどほかの魚でも作られるようです。

アジ科魚類の特徴

稜鱗(ぜんご、ぜいご)

▲矢印が稜鱗

アジの仲間は体側に「稜鱗」と呼ばれる鱗があります。これは一般的には「ぜんご」「ぜいご」ともよばれ、アジ科の大きな特徴でもあります。ただし、稜鱗はすべてのアジにあるわけではなく、ブリやブリモドキ、ツムブリ、イケカツオ、コバンアジなど稜鱗がないものもいます。そのような魚種は次の臀鰭遊離軟条の特徴で見分ける必要があります。

アジ科の中には稜鱗の長さが同定に重要な種もいます。例えばムロアジ属のムロアジは稜鱗が側線直走部の後3/4を占めるのに対し、クサヤモロは1/2くらいです。

臀鰭遊離軟条

▲ギンガメアジの臀鰭遊離軟条

アジ科はみな臀鰭棘の2棘が臀鰭第3棘から離れています。これもアジ科とほかの魚を見分けるうえでの重要な特徴といえます。ブリやイケカツオなど、体側に稜鱗がないアジの仲間はこの特徴からアジ科とされています。ただしオキアジなど、臀鰭棘が皮下に埋没し外見上見られないものがいますので、注意が必要です。またこの臀鰭棘は可動性です。

アジの仲間が飼いにくい理由

アジの仲間はキラキラ光る体が美しく、色彩が鮮やかなものや、形が面白い魚も多いのでアクアリストにも人気が出そうですが、残念ながらあまり販売されておらず、あまり人気がない仲間です。その理由は主に以下の理由からといえます。

大きくなる種が多い

▲沖縄美ら海水族館のロウニンアジ

アジの仲間には大きくなる種が多いです。とくに写真のロウニンアジや、観賞魚として輸入されてくるコガネシマアジなどは1m近くなることもあります。家庭水槽ではそこまで巨大にはならないかもしれませんが、小さな水槽ではいずれ持て余してしまうことになるため、注意が必要です。これらを終生飼育するならば超巨大な水槽が必要になるのです。釣ってきた小さなギンガメアジも上手に飼えばすくすく大きくなっていきます。もちろん、海へ放流するようなことがあってはなりません。

ほかの魚を食べる

アジの仲間は魚食がつよく、ほかの魚を食べてしまうことがあるため、小魚との混泳には向きません。ある程度大きな魚との混泳は可能ですが小魚を食べていないか、逆にアジの仲間が他の魚に追われていないかをチェックするようにします。アジの仲間も幼魚のうちはほかの魚に襲われたり、なかにはつつき殺されたりすることがあるからです。スズメダイの大きいものやコトヒキなどとの混泳はやめたほうがいいかもしれません。

スレにより傷つきやすい

▲シマアジ

アジの仲間の多くの種類はスレ傷に弱いという特徴があります。実際にシマアジなどは体表が傷つきやすく、手で触ったりするとそこがすれて白っぽくなったりすることもあります。シマアジなどの養殖業者はシートを張ったタモの中にいれて水ごと運ぶなどの工夫をしています。もちろん水槽に入れる時も水ごと水槽に移すなどしたほうがよいでしょう。

また彼らは遊泳性が強く、水槽で飼育する時もあまりごつごつした飾りをいれないほうがよいでしょう。飾りと接触してけがをするおそれもあるからです。

水質悪化に弱い

アジの仲間は水質悪化に弱いところがあります。しっかりとしたろ過能力をもろ過装置を使用して飼育しなければなりません。オーバーフロー水槽が最適です、というかアジを飼育するのであれば大型水槽が必要でオーバーフローシステムしか現実的な装置はないのですが。ベルリンシステムなどはサンゴを中心に飼育するシステムで、魚を多く入れることはできず、アジのようなタイプの魚には向いていないところがあります。またアジの上記のような性質上、せまい水槽にサンゴを入れるのはあまりおすすめしません。

餌は「アジ=サビキ釣り」というイメージもあり、サビキ釣りで使うアミエビを与えるような人もいるようですがこんな餌をあたえていてはろ過が追い付かなくなり水質が悪化してしまい、死んでしまいます。基本的にペレットフードを与えるべきですが、アジの仲間は小麦粉などを消化吸収しにくいようで、できるだけ小麦粉類を使用しないフードが望ましいでしょう。最初はクリルを与えてから徐々に配合飼料への切り替えをしていくとよいのですが、どうしても食べないというときは海でアゴハゼの小さいのなどを採集して餌にするしかありません。これはクリルは栄養が偏っているからです。

飼育される主なアジの仲間

マアジ

▲マアジの群れ

マアジは名前に「マ」とつき、漢字でも「真鯵」と書くことからもわかるように、アジの仲間の代表的な種です。海水魚店で販売されることは少ないのですが、近海魚に近いお店で購入できることがあるほか、サビキ釣りでも釣ることができます。水質の悪化には弱いので大量に持ち帰ったりすることは避け、できるだけ大きな、しっかりしたろ過槽のある水槽で飼育するようにしましょう。全長50cmくらいになりますが、ふつうはもっと小さく、ギンガメアジなどと比べればまだ飼育可能です。

アクアリウムで飼育されるほか、いけす料理店などで生きたまま泳がせることがありますが、大きいものが多く網でスレているためか状態がイマイチな個体も多いです。また釣具店でも大きな水槽の中で泳いでいることもありますが、これはアオリイカ釣りの生き餌としての需要があるからで、このような用途に使う個体は弱っていてもよいのですが、飼育には向いていません。

ギンガメアジ

▲ギンガメアジの幼魚

ギンガメアジの幼魚は体に太い帯が5本ほどありますが、大きくなると消えてしまいます。海水魚店で「アジsp.」の名称で販売されているのは本種の幼魚であることも多いです。

沿岸域からやや沖合、サンゴ礁域や内湾の砂底までみられ、河川の汽水域にもよく見られます。また河川の中流でも本種の姿を見ることができますが、一般的には海水で飼育したい魚です。成魚は全長50㎝ほどになり、当然大型、いや、巨大水槽が必要です。

本種は「エバ」、幼魚を「メッキ」とよび、釣りの対象魚となります。引きがつよいだけでなく食用としても美味ではありますが、熱帯域のものはシガテラ毒をもつことがあります。東京ではある程度の大きさを超えると出荷できなくなるようです。

カスミアジ

▲カスミアジの幼魚

▲カスミアジの成魚

カスミアジは琉球列島の磯で見られるアジの仲間ですが、幼魚は関東から九州の太平洋岸や長崎近海で見ることができます。幼魚も鰭の付け根がブルーになり美しいのですが、成魚では体中に青い斑点が散らばり非常に美しい色になります。しかしながら成魚は60cmを超えるので小型水槽では終生飼育できません。180cm以上、できればもっと大きな水槽が必要です。

釣りではすばらしい引きを見せ、かつ磯からでも釣れるのでルアー釣りの対象魚として優れています。琉球列島では食用としても重要なのですが、太平洋諸島の地域によってはシガテラ毒をもつことがあるので注意が必要です。

コガネシマアジ

黄金色の体が美しいアジですが成長するとこの黄色が消えたり薄くなったりして、細い横帯があるだけのアジになってしまうことがあります。大きさも全長70cm(最大120cm)ほどになり、水槽飼育でもそこまでではないですが大きく育つので飼育には相当の覚悟が必要なアジといえます。特徴は体色や模様のほか、両顎に顎歯がないのも特徴といえます。

自らの身を守るためにサメなどの大型魚やジュゴンなどと一緒に泳いでいることが多いですが飼育については本種のみで飼育して問題はありません。というか、大きくなり家庭の水槽では本種1匹くらいが限界かもしれないです。日本ではおもに琉球列島に分布し、インド-汎太平洋域に広く分布しています。

イトヒキアジ

幼魚は有名で背鰭と臀鰭の軟条のうち何本かが著しく長く伸びるのが特徴です。しかしこの鰭はやがて短くなっていきます。

熱帯性のアジですが海流に乗ってやってくるため北海道沿岸やピーター大帝湾でも採集されています。近縁種のウマヅラアジ(ウマヅライトヒキアジ、とされることもあるが誤り)はイトヒキアジよりも眼前方の頭部の形状が直線的であることにより見分けられます。海水魚店でもまれに販売されることがありますが、近海魚をメインに扱っているお店に聞いた方が早いと思います。

成魚は食用になり、大きいものは美味です。船釣りで釣れることがあるほか、定置網や沖合底曳網で漁獲されることもあります。写真の個体は定置網で漁獲されたものです。このほか大西洋に生息するルックダウン(シロガネアジ)の仲間、沖縄などからくるコバンアジの仲間も入ってきます。

アジ飼育まとめ

  • きらきら光り輝き美しく変わった形のものも多いが飼育は難しい
  • 多くの種類に稜鱗がある
  • 多くの種類は臀鰭に遊離棘を二つもつ
  • 大型になり飼育には大型水槽が必要
  • 水質悪化にも弱くしっかりしたろ過ができるシステムが必要
  • 餌は配合飼料。間違ってもサビキ釣り用のアミなど与えないように
  • 遊泳性が強くスレにも気を付けるべき
  • 主にカスミアジやコガネシマアジ、イトヒキアジなどが販売されるが小型水槽では飼えない

2020.05.20 (公開 2020.05.19) 海水魚図鑑

タルボッツデムワーゼルの飼育方法~丈夫で飼育しやすくほかの魚との混泳も可能!

タルボッツデムワーゼルはスズキ目スズメダイ科・ルリスズメダイ属のスズメダイです。ルリスズメダイ属の魚は体が青系の色のものが多いのですが、このタルボッツデムワーゼルは体がピンク~ベージュ色で頭部が黄色というこの仲間としては珍しい色をしています。ほかのスズメダイの仲間同様飼育はしやすく、性格はルリスズメダイと比べて温和で大きめの水槽であれば比較的混泳もしやすいでしょう。今回はタルボッツデムワーゼルの飼育方法をご紹介します。

標準和名 なし
学名 Chrysiptera talboti (Allen, 1975)
流通名 トールボッツダムゼル、トールボッツダムセル、トールボッツデムワーゼルなど
英名 Talbot’s demoiselle
分類 スズキ目・スズキ亜目・スズメダイ科・ルリスズメダイ属
全長 5cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッドなど
温度 25℃前後
水槽 45cm~
混泳 ルリスズメダイ属のなかでは比較的おとなしい
サンゴ飼育

タルボッツデムワーゼルって、どんな魚?

スズメダイ科・ルリスズメダイ属の魚です。体は黄色っぽい頭部で、体はベージュからピンクに近い色で、背鰭に黒色斑があります。特に幼魚のうちは黒色斑の周りが青く縁どられていますがこれは身を守るためにあるようです。ルリスズメダイ属の魚は幼魚と成魚で色が異なっているものも多く、幼魚はきれいでも成魚では黒っぽくなる種もいるのですが、本種はそのようなことはなく、幼魚も成魚もあまり色彩的には差はありません。

名前

「トールボッツデムワーゼル」、もしくは「トールボッツダムゼル」「トールボッツダムセル」などと呼ばれることも多いです。デムワーゼルはdemoiselleと綴り、フランス語由来、貴婦人のことですが発音は「ドゥモワゼル」というのが近いようです。Damselも同様にフランス語が由来で、「ダムゼル」とすることもあれば「ダムセル」とすることもありますが、どちらも間違いとはいえません。ただしアクアリウム用ではない図鑑などでは「ダムゼル」表記が多いようです。例を挙げれば益田 一・ジェラルド・R・アレン共著「世界の海水魚」(山と渓谷社,1987)、加藤昌一・著「ネイチャーガイドブック スズメダイ」(誠文堂新光社, 2011)ほかがあります。

カラーバリエーション

分布域はインドネシアからフィジーまでの西太平洋と東インド洋です。しかしフィジー産のものは頭部が黄色く、体の大部分が黒いこと、腹鰭も黒いことが特徴でほかの地域のタルボッツデムワーゼルとは見分けることができます。フィジーからの便は現在は少なく、入荷もまれです。なお、この属の魚はほかにも海域によるバリエーションがいくつかある種がいます。ローランズデムワーゼル、スプリンガーズデムワーゼル、ルリスズメダイなど。もしかしたら海域によるバリエーションは今後それぞれ別種となっていくのかもしれません。

タルボッツデムワーゼルに適した飼育環境

水槽

小型水槽での飼育も可能ですが、うまく飼うのであれば45cm以上の水槽で飼育したいところです。ほかの魚との混泳ならば60cm以上の水槽が必要になります。

水質とろ過システム

スズメダイ科のほかの多くの種同様、水質悪化には強い魚です。ですがろ過をおろそかにしてはいけません。小型水槽であれば外掛けろ過槽、外部ろ過槽と外掛けろ過槽を使用し、60cm水槽なら上部ろ過槽が理想的です。もちろんオーバーフロー水槽が用意できるのであればオーバーフロー水槽で飼育するのが一番です。

タルボッツデムワーゼルはサンゴに悪影響を与えませんので、ベルリンシステムやゼオビットシステムなど、サンゴを飼育するための水槽システムでも飼育することができます。ただしこのようなシステムはあくまでサンゴを状態よく飼うためのシステムであり、魚を多く入れることはできません。

水温

原則的に25℃をキープするとよいでしょう。大体22~28℃くらいで状態よく飼育できますが、温度が頻繁に2℃以上上下するのはよくありません。水量に適したヒーターとクーラーを使用し、水温を一定に保つようにしましょう。

隠れ家

タルボッツデムワーゼルは縄張りをつくるタイプのスズメダイです。水槽内にはライブロックやサンゴ岩などの隠れ家を入れてあげましょう。

タルボッツデムワーゼルに適した餌

食性は雑食性で微小動物や動物プランクトン、藻類などを食べます。飼育においては餌は配合飼料を与えるようにします。タルボッツデムワーゼルもほかのスズメダイ同様、配合飼料をよく食べてくれるので助かります。口の大きさなど考えますとキョーリンの「メガバイト」シリーズであればSサイズがよいです。メガバイトにはレッド、グリーンの2種類がありますが、藻類も食べるようですのでメガバイトグリーンのほうがよいでしょう。

たまにコペポーダやホワイトシュリンプなどのプランクトンフードを与えるのもよいのですが、この手の餌は水を汚しやすいため与えすぎは水質の急激な悪化につながることがありますので注意します。

タルボッツデムワーゼルをお迎えする

タルボッツデムワーゼルは日本には分布しておらず、飼いたいのであれば購入するしかありません。タルボッツデムワーゼルは多くの海水魚店で販売されている魚で、非常に安価な魚です。しかしそれゆえ、あまりいい扱いをされていないこともあるため、購入時は注意が必要です。また産地もインドネシアであることが多く、大量に来る分、状態もあまりよくないことがあります。その一方やや高価なフィジーなどのものも輸送時間が長いためか状態を落としている個体もいるようですので注意が必要です。

購入する際のポイントとしては、入荷してすぐの個体や、岩陰でじっとしている個体は避けるようにします。もちろん魚の体のようすもチェックするのを忘れないようにします。例えば鰭がぼろぼろになっているものや溶けているもの、体表や鰭に白い点がついていたり赤くただれているもの、口のところが白くなっているものなどは危ないです。このようなスズメダイは安くて丈夫だから、と通販での購入をおすすめされることがありますが、安価な魚だからこそしっかりと様子を見て購入したいところです。

タルボッツデムワーゼルとほかの魚との相性

ほかの魚との混泳

▲タルボッツデムワーゼルとほかの魚との混泳例

ルリスズメダイ属の魚ですが、その中では比較的おとなしめな性格をしているように思います。ただしそれでもほかの魚との混泳は注意が必要で、最低でも60cm以上の水槽で混泳させたいものです。もちろん極端に臆病な魚(遊泳性ハゼなど)や、逆に非常に気が強い魚(大型のスズメダイ、大型のメギスなど)、肉食魚(オコゼ、カサゴ、カエルアンコウなど)は避けます。同種同士の飼育はある程度広い水槽では可能ですが、小型水槽ではけんかしやすいので避けます。

サンゴ・無脊椎動物との相性

スズメダイ科の魚はほかの魚とは争うことがあるものの、サンゴには無害で多くのサンゴと組み合わせられます。水深30m以浅に生息しており、サンゴはLPS、SPS、ソフトコーラルいずれの組み合わせも似合います。ただしクマノミと共生する大型のイソギンチャクの仲間は魚を捕食することがありますので避けたほうが無難でしょう。

一方甲殻類については、スズメダイの仲間を攻撃するようなもの、例えば大きなエビ、大きなカニ、大きなヤドカリなどは一緒に飼育してはいけません。クリーナーシュリンプはおおむね無害ですが、オトヒメエビは小さな魚を強大なハサミで襲うことがありますので、おすすめできません。

タルボッツデムワーゼル飼育まとめ

  • ルリスズメダイに似ているが黄色い体が特徴的なスズメダイ
  • 丈夫で飼育しやすいため初心者にもおすすめ
  • フィジーなどでは体の後方が黒っぽいバリエーションも見られる
  • 「トールボッツデムワーゼル」などの表記も見られる
  • 小型水槽での飼育もできるが初心者には45cm以上の水槽が安心
  • 丈夫で飼育しやすいが高いろ過能力のあるろ過槽が欲しい
  • 水温は25℃前後を一定に保つようにする
  • ライブロックやサンゴ岩などの隠れ家を入れてあげたい
  • 餌付きはよくすぐ配合飼料を食べてくれる
  • 安価な魚であるが購入時は状態に注意。来たばかりの個体もだめ
  • ほかの魚との混泳もできるが弱い魚や逆に強すぎる魚との混泳は避ける
  • サンゴとの相性は良好

2020.10.17 (公開 2020.05.15) 水槽・器具

【アクアリウム】オールガラス水槽に「フランジ」が必要な理由

オールガラス水槽やアクリル水槽の内側には「フランジ」というものがついています。一見地味な部分なのですが、この部分には大事な役割があります。水槽をオーダーメイドで作る、もしくは既存の水槽を購入するのであれば、このフランジをオプションで取り付けたり、フランジのある水槽を購入しましょう。フランジはそれほど重要なものなのです。今回はこのフランジの役割をご紹介します。なお、サムネイルの写真は、レッドシーのリーファーナノのものです。

フランジとは

フランジはオールガラス水槽やアクリル水槽の内側にある「出っ張った」部分です。一般的に水槽と同じ素材で製造されます。たとえばガラス製水槽であればガラス、アクリル製水槽であればアクリルのフランジがつきます。またアクリル製の水槽であれば水槽の上面をくり抜きの板にすることもできます。

オールガラス水槽にフランジがあったほうがよい理由

オールガラス水槽を購入するのであればオプション設定であってもフランジがついているものを選ぶのがよいでしょう。アクリル水槽であればフランジがついていることが多いのですが、オールガラス水槽にはフランジがついていないことも多いのです。

塩だれをある程度抑えられる

▲a.m.pの高級オーバーフロー水槽。中古でフランジがないもののため塩だれに悩まされることに

フランジをつけることにより、海水水槽の宿命、ともいえる塩だれを抑えることができます。我が家ではフランジ付きの安いオーバーフロー水槽とフランジのついていない(ショップオリジナル木製フタ受け付き)のa.m.p水槽の二つのオールガラス製オーバーフロー水槽がありますが、やはり塩だれの量はフランジ付きの水槽のほうが少ないです。a.m.pの水槽の場合はフランジはオプションとなっていますが、絶対につけてもらったほうがよいでしょう(筆者がオーダーする時は絶対つけるのですが、この水槽は中古なので…)。

オールガラス水槽でない水槽ではガラス製のフタを使用して水のはねを防ぎますが、上部ろ過槽の水がおちる部分の周辺に隙間があるとその部分に塩だれができてしまうことがあります。しっかりフタをしておきましょう。また水位を高くして水がはねるのを防ぐのも効果的で、上部ろ過槽ならそれでもいいのかもしれませんが外部ろ過槽でこれをやると酸欠で魚が全滅するおそれもあります。

フタをしやすい

▲カエルウオなど飛び出しやすい魚を飼うのならフタが必要

水槽にフタをしやすいというのもフランジのメリットとなります。水槽のフタはいくつかの理由により重要なものです。魚が飛び跳ねたり、脱走したりして死ぬことを防ぐことができます。またフランジと合わせて微細な水しぶきから塩だれが発生することをより効果的に防ぐことができます。

地震の際の水はねを軽減できる

最近多い自然災害といえば「地震」ですが、地震の際の揺れで水槽の水がはねてしまうことがあります。フランジを使用すれば飼育海水が飛び散ることをある程度防ぐことができるのかもしれませんが、完全に防ぐことができるというものでもないので、過信しないほうがよいでしょう。とくにコンセント周りは注意が必要です。

フランジがない水槽の場合

小型水槽であれば後からフランジをつけることができます。アクアリウム用品大手ジェックスから販売されている「アクアフランジ」というのがそれで、オールガラス水槽など、既存のフレームレス水槽に取り付けることができるというもので、これを使用するとオールガラス水槽でも簡単にフタをすることができたり、水の飛び跳ねをある程度軽減することができます。ただしこの商品は30cm用のものと45cm水槽用のものしかないのが欠点です。また後からつける商品なので強度も必ずしも高いわけではないので(PVC製)、過信するのは禁物といえます。それでもフレームレスのものが多いオールガラス水槽では数少ない選択肢になります。

ジェックス アクアフランジを購入するときはガラス厚に注意が必要です。「6‐45」は4~6mm、「10‐45」は8~10mmのガラス厚に対応しますので、それぞれの水槽にあう厚のガラス水槽を選びましょう。

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まとめ

  • フランジは水槽に必要なもの
  • 塩だれの発生をある程度おさえられる
  • フタをしやすく魚の飛び出しを防ぐことができる
  • 地震の際の水はねを軽減できる
  • オールガラス水槽には付属していないことも多いので要注意
  • フランジがない水槽ではPVC製フランジを後からつける

2020.06.17 (公開 2020.05.12) 海水魚図鑑

共生ハゼの混泳、飼育の組み合わせを考える

テッポウエビと共生するハゼ、通称「共生ハゼ」は海水魚の中でも人気の魚です。色彩がきれいというのもありますが、クマノミとイソギンチャクの共生と異なり、海の中で共生する様子を水槽内でも簡単に再現することができるというのも人気の理由の一つ、といえます。しかし共生ハゼを一つの水槽で2種類以上飼育している場合、種類によってははげしい争いが発生することがあります。またほかの魚と共生ハゼを飼育していると、ほかの魚が共生ハゼを食べてしまったなんていうこともあります。今回は共生ハゼを複数飼育する、もしくはほかの魚と飼育する上での注意点をご紹介します。

共生ハゼとは

ハゼの仲間は2000種近くの種が知られています。ハゼの中には、ほかの生物と共生するものがいますが、その中でもテッポウエビと共生するタイプのものが有名で「共生ハゼ」といえば一般的にはテッポウエビと共生するものをいいます。共生ハゼの詳細についてはこちらの記事もご覧ください。

共生ハゼのパワーバランス

一つの水槽で複数の共生ハゼを飼育させるのであれば、共生ハゼのパワーバランスを理解しておく必要があります。ここでは共生ハゼ各属のパワーバランスをご紹介します。ただし消滅したホタテツノハゼ属、飼育経験のないオドリハゼ属、カスリハゼ属、ハラマキハゼ属、Nes属の魚は除きます。

イトヒキハゼ属

イトヒキハゼ属は共生ハゼのメジャー種としてギンガハゼを含みますが、そのほかの種(オイランハゼやムラサメハゼなど)はどうしてもマイナーな種です。この属は共生ハゼとしては性格がきつめで、大きくなるためほかの共生ハゼとは組み合わせにくいところがあります。どうしてもほかの共生ハゼと混泳させるのであれば広い水槽で飼育するようにしますが、それでも大きく育つギンガハゼと小さなヤシャハゼやヒレナガネジリンボウとの混泳は不向きです。

ハゴロモハゼ属

小さくて大人しいハゴロモハゼはあまり混泳には向いていません。観賞魚として流通されるのはほとんどがハゴロモハゼで、クロオビハゼやミホノハゴロモハゼは流通しているのはなかなか見られません。

ダテハゼ属

▲ハチマキダテハゼやクビアカハゼなどが混泳向き

ダテハゼの仲間は共生ハゼの仲間でも種類が多いグループで、ギンガハゼと比べると性格はきつくなく、共生ハゼ同士の混泳ができるものが多いです。ただしダテハゼの仲間も大きいのは性格がきつくなることがあります。ニチリンダテハゼは結構性格がきついものが多く、共生ハゼ同士の混泳は避けた方が無難です。ヤノダテハゼやクビアカハゼはやや大人しめでほかの共生ハゼとの混泳もできますが、とくにヤノダテハゼは臆病な性格で、水槽から飛び跳ねることもあるため注意が必要です。

ネジリンボウ属

▲ヒレナガネジリンボウ

ネジリンボウ属の中で観賞魚として飼育されるのはヒレナガネジリンボウ、ヤシャハゼ、ドラキュラゴビーの3種です。これらの種は同種雄同士では争いますので、ペア飼育が理想です。ほかの共生ハゼとの飼育も可能ですが、サイズがあまりにも大きすぎるハゼとの混泳はできません。また大きめで性格きつめの魚との混泳にも向いていません。カクレクマノミとの混泳は可能ですが、90cmくらいの広めの水槽で、多くの隠れ家が必要になります。それでも隠れがちになります。

オニハゼ属

混泳に向いているのはヒメオニハゼやレイドシュリンプゴビーなどで、かなり大きくなり肉食もつよいオニハゼは共生ハゼ同士の混泳には不向きです。逆にホタテツノハゼは混泳させると魅力的な第1背鰭が切れてしまうこともあるので、ほかの共生ハゼや強い魚との混泳は禁物です。

シノビハゼ属

シノビハゼの仲間はマイナーな共生ハゼです。観賞魚店でみられるのはハタタテシノビハゼなどですが臆病で混泳させにくいといえます。混泳させるならおとなしめの小型共生ハゼということになるでしょう。無理な混泳は寿命を縮めやすく、また病気にもかかりやすくなります。

ヤツシハゼ属

ヤツシハゼ属のハゼも温和でなものが多く、混泳には注意が必要です。一般に飼育される種は西太平洋にすむイエローラインシュリンプゴビーと呼ばれる種で、白っぽい体に黄色い縦線が入る美種です。

共生ハゼと混泳できる魚

ほかのハゼの仲間

▲テッポウエビの掘った巣穴に暮らすスミゾメハナハぜ

ハナハゼの仲間は危険が迫るとダテハゼとテッポウエビの共生する巣に居候することがあります。この様子は水槽内でも観察することができます。遊泳性ハゼは共生ハゼとの混泳は問題ないことが多いのですが、あまりにも共生ハゼが大きく、遊泳性ハゼが小さいと、共生ハゼに捕食されてしまいます。実際にダテハゼの仲間がハナハゼの幼魚を捕食することもあるようです。

ほかのハゼとしてはミズタマハゼ、サラサハゼ、ジュウモンジサラサハゼ、キンセンハゼといったベントス食性のハゼ、イレズミハゼやベンケイハゼ、サンカクハゼなども問題なしです。ただしクモハゼなどは共生ハゼの小さいのを襲って食べてしまうこともありますし、またベニハゼなどのピグミーゴビーはサイズによっては共生ハゼがこれらのハゼを食べてしまうこともあるので注意が必要です。

カエルウオの仲間

▲ヒメオニハゼ(左)とヤエヤマギンポ(右)

カエルウオの仲間も共生ハゼに悪影響を与えにくいのでおすすめです。ただオニハゼなどの大型種の口に入ってしまうような極小サイズのカエルウオはさすがに餌になってしまいます。同じくらいの大きさのカエルウオであれば問題が発生しにくいです。カエルウオの仲間は魚食性ではないので、写真のような体格差があっても問題は発生しにくいです。

テンジクダイの仲間

イトヒキテンジクダイは多くの共生ハゼにとってよいタンクメイトに

テンジクダイの仲間との混泳もできますが、共生ハゼとの混泳におすすめできるものとそうでないものがいるので注意が必要です。おすすめなのはマンジュウイシモチやイトヒキテンジクダイで、これらの種類は温和で飼育もしやすいからです。スジイシモチ属の種類としてはネオンテンジクダイやナガレボシなどが小型共生ハゼとの混泳に最適です。

一方シボリやヤライイシモチなど大きくなり、肉食性の強い魚は共生ハゼとの飼育は困難です。逆にネオンテンジクダイなどは小さく弱いので大型の共生ハゼに襲われたり捕食される可能性もあるので注意が必要です。

共生ハゼと混泳しにくい魚・できない魚

スズメダイの仲間

▲デバスズメダイなどとなら組み合わせられるが

▲カクレクマノミに尾鰭などをぼろぼろにされたハチマキダテハゼ

スズメダイの仲間は気性が激しいものも多くおり、共生ハゼとの混泳にはあまり適していません。ただしデバスズメダイなどは比較的おとなしい性格をしているので、一緒に飼育することができます。ただし、共生ハゼが落ち着いてから追加することをおすすめします。同じスズメダイ科のクマノミも避けたほうが賢明ですが、カクレクマノミなどとは隠れ家を多く入れたりすることにより混泳ができることもあります。ただし共生ハゼの隠れ家がないとカクレクマノミは共生ハゼの鰭や体をぼろぼろにしてしまいますので危険です。

チョウチョウウオ・ヤッコ

チョウチョウウオやヤッコは白点病になりやすく、砂を掘る(砂の中にひそむ白点病の原因となる生物を巻き上げてしまう)テッポウエビの仲間と共生するハゼとの飼育にはあまり向いていないといえます。ヤッコの仲間も同様の理由のほか、気が強いとハゼやエビにとって「見えない圧力」がかかり、ひきこもってしまうこともあるからです。またチョウチョウウオやヤッコを飼育するときは病気予防とメンテナンスの観点から砂を敷かないベアタンクで飼育しているアクアリストも多いのですが、このような水槽だとテッポウエビが砂を掘ることができなくなってしまいます。

ベラ

▲共生ハゼとの飼育ならイトヒキベラ類の小型種がよい

ベラの仲間はテッポウエビを襲撃するおそれがあります。キュウセンの仲間などは特にそのおそれが強いので一緒に飼育するのは避けたほうが賢明でしょう。ベラの中でもイトヒキベラやクジャクベラなどはそういうことをしにくいのでおすすめですが、あまり体格に差がある組み合わせは避けたほうがよいです。ハチマキダテハゼやクビアカハゼであればイトヒキベラの仲間では小型なラボックスラスなどがおすすめです。またできるだけ大きな水槽で飼育することも大事といえます。

フグ

フグの仲間も動物食性が強いので一緒に飼育してはいけません。さまざまなものを食べ雑食性が強いのですがエビも強い歯で食べてしまいます。またハコフグの仲間は皮膚から毒を出すのでこちらもいけません(サザナミフグなども皮膚から毒を出すとされる)。

肉食魚

▲トラギスの仲間も危険

ハゼの仲間は細身の体で肉食性の魚には捕食されやすいといえます。カサゴやオコゼ、カエルアンコウ、ウツボ、ハタ、サメ、エイなど明らかな魚食性魚のほか、ある程度に育つバスレットの仲間やトラギスの仲間、ゴンべの仲間などにも捕食されることもあるため注意しなければなりません。メギス(ドティバック)は動物食性であるだけでなく気性も激しく似た形の魚に攻撃を仕掛けることもあるので混泳は避けたほうがよいでしょう。このほかハゼだけでなくエビの仲間を好物とする魚も多く、そのような魚も注意が必要です。

組み合わせの例

共生ハゼ同士の組み合わせ例

個人的には、小型のダテハゼ(ヤノダテハゼやニチリンダテハゼなどは除く)は、比較的ほかの魚と組み合わせやすいように思います。クビアカハゼはそれほど大きいものではないのですが丈夫で飼育しやすく、協調性があり、ほかの共生ハゼとの飼育もしやすいといえます。写真は40cmの水槽でのヒメオニハゼとの組み合わせ例です。ヒメオニハゼとほかの共生ハゼを入れるのであればこのようなダテハゼ類か、ヒレナガネジリンボウが最適でしょう。テッポウエビについてはヒメオニハゼやヒレナガネジリンボウなどはコトブキテッポウエビ(ランドールズピストルシュリンプ)を好みますが、クビアカハゼは多くの種のテッポウエビと組み合わせることができるようで、コトブキテッポウエビとの共生例もあります。ただし一般的にはニシキテッポウエビやコシジロテッポウエビのほうを好むようです。写真では1匹のテッポウエビと2種の共生ハゼが共生している形になりますが、できれば1種の共生ハゼにつき1匹のテッポウエビという関係がのぞましいかもしれません。

共生ハゼとほかの魚の組み合わせ例

▲90cm水槽でカクレクマノミなどと飼育されているハチマキダテハゼ(左端)

写真は90cm水槽でハチマキダテハゼを飼育している例です(右側の部分はカットしています)。ほかにカクレクマノミやアケボノハゼ、写真には写っていないもののシールズカーディナルフィッシュやヤクシマダテイシモチ、ヤミテンジクダイ、ヒフキアイゴなども飼育しています。テンジクダイの仲間は口が大きく、口の中に入る魚は食べてしまうこともあるので小型種は当然入れられません。そのためある程度の大きさの共生ハゼとテッポウエビしか入れられません。ハチマキダテハゼは丈夫で飼育しやすく協調性がありますのでこのような混泳水槽での飼育もできるのです。テッポウエビは大きめのニシキテッポウエビが最適です。

なお同じようにクマノミなどの魚と混泳できる共生ハゼにはクビアカハゼもいます。クビアカハゼは小さい共生ハゼから大きめの魚まで混泳をよくこなします。ギンガハゼやニチリンダテハゼも混泳できますが、これらのハゼは性格がきつくなるので他の共生ハゼとの飼育はさせないほうが賢明です。

テッポウエビを飼育しなくても共生ハゼは飼育することができますが、ほかの魚に追いかけまわされても隠れられるような場所が必要です。隠れ家としてはライブロックのほか、小型の塩ビパイプや土管などを組み合わせるのもありです。ただし人工物は目立ってしまいやすい、一部は有害な成分が溶出するなどのデメリットもあります。ミニテムの「ハゼ土管」などは水槽に有毒な物質が溶け込むこともなく、地味な色彩で水槽にもなじみやすいのが特徴です。

まとめ

  • 共生ハゼにも相性がある。小型水槽では組み合わせが難しいパターンも
  • ギンガハゼなどイトヒキハゼ属は気が強め
  • ハゴロモハゼはイトヒキハゼ属と比べおとなしい
  • ダテハゼ属やオニハゼ属は種類ごとにサイズや性格が異なり注意
  • ヒレナガネジリンボウやヤツシハゼの仲間は小型種なので組み合わせに要注意
  • 小型ハゼやカエルウオ、大人しめのテンジクダイとの組み合わせがよい
  • スズメダイの仲間の大きいのやヤッコ、チョウチョウウオ、フグ、肉食魚はだめ
  • 1種につき1匹のエビと共生させたほうがよさそう
  • ライブロックやサンゴ岩などをうまく組み合わせればカクレクマノミなどとの混泳もできる

2020.06.18 (公開 2020.05.08) 海水魚図鑑

アイゴ科の基本的な飼育方法~カラフルなものもいるが毒棘にご注意を!

アイゴといえば西日本ではよく知られた釣り魚で、よく知られた食用魚です。このアイゴの仲間もいろいろおり、亜熱帯にはカラフルなものが見られます。しかしアイゴの飼育には注意すべき点があります。藻類を中心とした雑食性でやせやすいこと、鰭の棘に毒があることです。これらの点に注意しアイゴ飼育を楽しみましょう。今回はアイゴ科の魚の飼育についての基本をご紹介していきます。

アイゴ科とは

「アイゴ」というのはアイゴ科魚類の総称をさすこともあれば、その中の魚の一種(アイゴ)を指すこともあります。アイゴの仲間は海水魚飼育ではメジャーなものが何種類か含まれており、とくにヒフキアイゴやヒメアイゴは多くの海水魚専門店でみられるものです。

食用魚としても知られており、日本では関東ではあまり喜ばれないものの、西日本では食用として人気です。沖縄では幼魚を「スクガラス」にしてたべます。熱帯太平洋域でも市場に出て焼き物などにして食べられています。しかしその一方で海藻類を好んで食べるという習性があり、九州以北では海藻を食べてしまうなどの問題も起こっており漁業者からは嫌われている存在でもあります。

アイゴ科の分類

▲吻が長めのヒフキアイゴ(Lo亜属)

アイゴ科は分類学的上ニザダイ科に近いものとされており、アイゴ科、ニザダイ科、ツノダシ科、マンジュウダイ科、クロホシマンジュウダイ科、アマシイラ科でニザダイ亜目を形成します。ニザダイの仲間とは尾柄部に大きな棘がないこと、臀鰭に7本の棘があることなどにより見分けられます。アイゴ科はアイゴ属のみからなりますが、そのアイゴ属はSiganus亜属とLo亜属のふたつに分けられることが多いです。前者はアイゴ、ゴマアイゴ、ヒメアイゴなどを含み、後者はヒフキアイゴの仲間のグループです。

腹鰭の棘

アイゴの仲間の大きな特徴が腹鰭です。多くの魚は腹鰭に1対の棘をもつ(腹鰭は片側にひとつずつあり、対鰭の一種である)か無棘ですが、このアイゴは腹鰭に2対の鰭棘を有するという珍しい特徴があります。最も前に1本の棘があり、最も後ろにもう1本の棘があります。そしてその間に3本の軟条があります。

鰭棘の毒に注意

▲アミアイゴ。赤く囲んだ部分に毒棘がある(腹鰭は対鰭)

アイゴの仲間はどの種も背鰭・臀鰭、そして腹鰭に毒棘をもっています。これらの鰭にある毒棘に触るとずきずき痛みます。写真のアミアイゴの赤く囲んだ部位には毒棘があり刺されないように注意します(実際に撮影中誤って手が触れてしまった)。

分布域

アイゴの仲間はインド―中央太平洋域に広く分布していますがハワイ諸島にはいません。また大西洋やアメリカの西岸には分布していません。一方欧州沿岸ではもともとは分布していませんでしたが、スエズ運河開通後ダスキースパインフットSiganus luridus、マーブルドスパインフットSiganus rivulatusという2種類のアイゴが地中海東部(ギリシャ、イタリア、マルタ、トルコ、キプロス、レバノンなど)に入っているようです。

日本の太平洋岸ではアイゴ科の魚の幼魚が何種類か見られますが、そのうち越冬しているのはほとんどアイゴのみです。

アイゴ科の基本的な飼育環境

アイゴ科の魚は水槽内では自然下より小さいとはいえ10cmは超えますので、最低でも60cm、できれば90cm水槽は用意したいものです。また排せつ物の量も多くろ過槽もしっかりしたものが必要になります。水温はどの種も25℃前後でかまいません。アイゴはかなりの低温にも耐えられますがそのほかの種は22℃までにとどめておいたほうがよいかもしれません。

アイゴ科に適した餌

アイゴの仲間は雑食性ですが、藻類を食する習性が強いため、海藻の成分が強い餌を与えるようにしましょう。藻類食性魚用の餌は各社から販売されていますが、「海藻70」はおすすめです。また海藻をそのまま乾燥させたタイプの餌や、海藻そのものもアイゴにとってはよい餌となり、ウミブドウを大量に飼育していてもいつのまにかアイゴに丸裸にされた…なんていうこともあります。

ただしサンゴの調子がよくないとサンゴをつつくこともあるので注意が必要です。とくにLPS、その中でもヒユサンゴ(オオバナサンゴ)やコハナガタサンゴなどは捕食されやすいため、一緒に飼育しにくいといえます。

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飼育される主なアイゴ科魚類

アイゴ科はインドー太平洋域、紅海、地中海(移入)から29種が知られています。そのうち日本には12種類が分布しています。

ヒフキアイゴ

観賞魚店で販売されるアイゴの仲間としては最もよく知られている魚です。小さいものはやせやすいので、写真のようなある程度の大きさに育ったものが安心ですが、個体によってはサンゴはつついてしまうことがあるので注意が必要です。60cm以上の水槽で飼育できますが、大きく育つことも考えると90cm水槽で飼育したいところです。

飼育の詳細はこちらをご覧ください。

フォックスフェイス

ヒフキアイゴに似ていますが、体側の黒色斑を欠くという特徴があります。それ以外の特徴はヒフキアイゴとほぼ同様であり、この2種は同種であるともいわれています。ヒフキアイゴやそれに似た吻が長いものはLo亜属というグループに入れられ、5種類が知られています。基本的にはどの種も飼育しやすいですがやはり幼魚はやせやすいのでこまめな餌やりが大事といえます。

ヒメアイゴ

観賞魚の世界ではヒフキアイゴに次いでよく見られる種類のアイゴです。全長20cmくらいになります。黄色い体が美しいアイゴですが、体側にヒフキアイゴのような黒色斑はなく、吻も伸びていません。ヒメアイゴによく似ているものとしては体側に青白い模様が目立つバードラビットフィシュというのもまれに入ってきます。成魚はできるだけ90cmくらいの水槽で飼育したいところです。

マジリアイゴ

ヒメアイゴに似ていますが眼を通る黒い帯の後方に帯がないのが特徴です。やや吻が長く、体も黄色い体に青白い線が入るというカラフルな色彩で人気があります。主にフィリピンやインドネシアなどから輸入されてくる種ですが、ヒフキアイゴやヒメアイゴと比べると数は少ないようです。沖縄ではアイゴ類はどの種も食用となり、本種も市場に出ており美味です。

サンゴアイゴ

黄色い体に青色の斑点が散らばる美しいアイゴの仲間です(写真ではちょっと地味な色彩ですが)。入荷量はヒメアイゴよりも少なく入手しにくいのが難です。これも海では20cmくらいに育ちますので最低でも60cm水槽で飼育し、できれば90cm水槽で飼育するようにしたいところです。沖縄では食用になるようです。

アイゴ

種の標準和名アイゴです。東北地方以南の海に生息する普通種で、海水魚店で購入するよりも磯で採集する機会のほうが多い種といえます。一見地味ですが白い斑点が特徴的です。写真は幼魚で、簡単に採集できますが鰭の棘に強毒があるため刺されないように注意します。また非常にやせやすいのでこまめに藻類食魚用の餌を与えるべきです。成魚は全長20cmほどになり、釣りの対象魚として知られますが、海藻類を食べてしまうため漁業者からはあまりよい扱いをされない魚です。

近縁種がいくつかおり、西インド洋のホワイトスポッテッドスパインフットなどは本種と極めて似ています。沖縄産のアイゴは白い点が多数ありシモフリアイゴと呼ばれ、学名もSiganus canaliculatusとなっていましたがこれはアイゴの種内変異とされているようです。また本種は河川の汽水域にもよく入り、紅海の近縁種はスエズ運河を経由して地中海にも分布を広げています。

ゴマアイゴ

ゴマアイゴはアイゴ科の仲間でもとくに大きくなる種で、海中では全長40cmにもなり、日本産のアイゴとしては最大級です。小型の個体がまれに海水魚店で販売されているものの、大きくなることを考えると、簡単に手を出してよい種とはいえません。沖縄では「カーエー」と呼ばれ釣り魚や食用として人気。近縁種にゴールドラインドラビットフィッシュという種類がおり、これは体に細い線が入ります。

アイゴ科まとめ

  • 西日本で人気の釣り魚アイゴに近い仲間
  • 吻が長めのものと短いものに分かれている
  • 背鰭・臀鰭・腹鰭の棘に強い毒があり刺されると痛む
  • 藻類食性が強く餌にも専用フードを与えたい
  • やせやすいためこまめな給餌が必要
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2020.05.28 (公開 2020.05.06) 水槽・器具

ガラス製オーバーフロー水槽 各メーカーのおすすめポイント・特徴を解説

水槽の素材にはアクリルとガラスのものがあります。アクリル水槽に比べてガラスは加工しにくいという点がありますが、ガラス製水槽はどの水槽も同じ、ということはありません。各メーカーが作るガラス製オーバーフロー水槽にはいろいろな特色があります。今回は数あるガラス製オーバーフロー水槽の中でも特徴的な水槽をご紹介します。

シーホース

▲シーホースの大型ガラス水槽

有限会社四葉工房の水槽ブランドです。「シーホース」ブランドの水槽でユニークなのは底面で、塩ビ製であることがあげられます。これによりオーバーフローパイプの取り付けなど、水槽底面の加工を容易にし、軽量化にも役立ちます。オーバーフローパイプの位置や三角管、底面吹き出し口なども注文の際に取り付けてもらうことができます。

水槽の枠の部分も独特で強度が高まります。枠は古くから水槽についていたもので2種類があります。しかしながら最近はこの枠がないフレームレス水槽も製造されており、その際もいろいろなものをとりつけてもらうことができるようになっています。このほか巨大な水槽も作ることができるようです。受注生産のためどうしても時間がかかりますが満足できる水槽が手に入るでしょう。

アクアマリンプロ

▲筆者の自宅のオーバーフロー水槽

アクアマリンプロの水槽も高級な水槽として日本のアクアリストにはよく知られた存在です。とくにこの水槽で特徴的なのがガラスの接着に国産のシリコンではなくドイツ製のシリコンを使用していることです。フレームレス水槽では枠がない分、接着した部分だけで強度を確保しなければならないため、国産のやわらかいシリコンでは耐久度を確保しにくく劣化もしやすいとのことで、ドイツ製のシリコンのほうが劣化しにくいのでおすすめといえます。そして接着部にワームプロテクトを使用しており、さらに耐久性が高まっています。3年間の漏水保証付きです。

メーカーのこだわりにより、シーホース水槽とは異なり5面すべてがガラス水槽でできていますが、底面吹出し口などのオプションもつけられます。オーバーフロー水槽についてはスライドコーナーも三重管も選ぶことができます。我が家の水槽のものは三重管です。

一方魚の飛び出しを防ぐためにはフタが重要です。このフタを置くためのフランジはオプションとなっていますが、できるだけつけてもらったほうがよいでしょう。我が家は中古で購入し、ショップオリジナルの蓋受けをお店に作ってもらっていましたが、それがないとフタを置くのが難しいです。また昨今は地震が多くなっていますがそれによる水のはねを軽減する効果もあります。

レッドシー

▲レッドシーリーファーナノ

▲リーファーナノのオーバーフローシステム

レッドシーから出ている水槽といえばオールインワンのオーバーフローシステム水槽である「レッドシーMAX」、大型オーバーフロー水槽セットである「リーファー」などがありますが、これらの水槽はウルトラクリヤーガラス(低鉄ガラス)が採用されているのも特徴です。鉄分を含むガラスは独特の青みが出ますが、「低鉄ガラス」の名の通り、ガラスに含まれる鉄分を極力少なくすることにより、透明度の高いガラスとなります。大きな観賞魚店ではディスプレイとして展示されていることもありますので、ぜひ見て効果を実感してください。

写真の水槽はリーファーナノで、飼育水槽やサンプ合わせて105リットルの水量をカバーしています。背面オーバーフロー式で、見た目もすっきりします。ほかに配管などはすべてセットになっていますが、ポンプは付属していないので別途購入する必要があります(シッチェのシンクラサイレント2.0などがおすすめとのこと)。「デラックス」ではLEDライト(ReefLED)も付属します。

このような水槽は先ほど紹介した水槽ではなく、既製品であるため通販でも購入でき、サンプ(水溜)も付属しているなど、比較的安価で入手しやすいというのがメリットです。ただし先ほどご紹介したような水槽底面に穴をあけるなどのオプションはつけられません。なお水槽にフランジはついており、フタも簡単にのせられます。

どんな水槽でも海水魚飼育は可能

▲安価なオーバーフロー水槽でも海水魚を長期飼育できる

今回は日本で製造、もしくは流通されている特徴的なガラス水槽をご紹介しました。高級な水槽が多かったのですが、ほかにもさまざまな水槽が販売されています。もっと安価な水槽でも十分、海水魚やサンゴの長期飼育を楽しむことができます。我が家で現在使用しているオーバーフロー水槽のひとつは安価な既存水槽ですが、それでも魚やサンゴを飼育するには十分で、水槽を設置して7年間が経過していますが、水漏れなどのトラブルも発生したことはありません。水槽の掃除の際にシリコンがはがれないように注意する、とか、しっかりマットを敷く、などの点に注意すれば、安価な水槽でも海水魚の長期飼育を楽しめるはずです。

また、水槽の素材にはガラス製のもののほか、アクリル製の水槽もあります。アクリル製の水槽は透明度が高い、割れにくい、加工しやすい、軽いというのが魅力ですが、傷がつきやすいことや変質しやすいという欠点もあります。用途や設置場所に応じて選びましょう。

まとめ

  • ガラス製オーバーフロー水槽にもいろいろな特徴がある水槽が出ている
  • シーホースは底面を塩ビにすることにより加工しやすくなっている
  • アクアマリンプロの水槽はドイツ製のシリコンを使用しフレームレス水槽でも優れた強度を誇る
  • レッドシーリーファーは低鉄ガラスを使用し透明度が高く配管も簡単
  • これらのほかにも様々なメーカーからガラス製オーバーフロー水槽が出ている
  • どの水槽でも長期飼育可能。安い水槽でもうまく使えば長持ちする

2020.06.05 (公開 2020.05.04) 水槽・器具

【海水魚用】初心者におすすめ!クーラー機種ランキングベスト3(アクアリウム)

もう5月になりだいぶ暑くなってきました。暑い夏季、海水魚の快適な生活のためにはクーラーが必須となります。そのためクーラーは夏季に水温を下げるためのもの、と思われがちですが、実はそうではありません。ヒーターやサーモスタットとセットで、年中水温を安定させるために重要なものなのです。長く使うものであり、かつ魚の健康と生命にかかわるものなので、値段ではなくしっかりものを見て決めましょう。今回は初心者向けの水槽用クーラーをご紹介します。

初心者におすすめできる海水魚用クーラー

▲ペルチェ式のテガルはおすすめしにくい

最近小型水槽用にペルチェ式の小型クーラーも販売されていますが、正直これらは初心者にはおすすめできません。一般的な水槽用のクーラーよりも冷えず、小型水槽用(初心者にはやや難しい)のものだからです。ただ小型水槽用の数少ない冷却装置としては使用できます。ペルチェ式の商品の代表例としてテトラの「クールタワー」やゼンスイの「テガル」などがあります。

初心者にも使いやすい水槽用クーラーは冷媒(ガス)を使用して冷やすものです。現在一般に使用される冷媒使用水槽用クーラーも2種類あり、クーラーの中に水を入れて冷やす方法と、冷媒管と呼ばれる管を水槽の中に入れる方法の2種類があります。海水魚水槽では前者が一般的で、ここで紹介しているのもこのタイプです。後者は「投込式」と呼ばれ、ポンプを必要とせず、パイプを水槽の中に入れるだけで簡単に設置できますが、見た目はどうしても悪くなってしまいます。海水魚にも使用できる投込式クーラーとしてはゼンスイの「MCシリーズ」などがありますが、かなり高価です。

このほか万一、クーラーが故障してしまった際の対応がしっかりしているところも見てみましょう。各メーカー、ブランド名でググると、メーカーの公式サイトにアクセスできます。故障時どのように対応してもらえるかあらかじめ調べておくとよいでしょう。

海水魚・アクアリウム用クーラーおすすめランキング

1位:ゼンスイ ZCシリーズ

▲オーバーフロー水槽ならZCシリーズが最適。写真は旧シリーズのもの

私が最もおすすめするクーラーはゼンスイの「ZCシリーズ」です。ゼンスイといえば国内で販売される水槽用クーラーの中でも最大手といえるメーカーですが、その中のフラッグシップモデルといえるのがZCシリーズといえます。フラッグシップモデルであると同時にスタンダードな製品か、多くの海水魚店で取り扱っているので購入しやすいという特徴もあります。

ZCシリーズの最新バージョンは「水温監視アラート」や2時間以上の運転でランプがついてお知らせしてくれる「オーバータイム機能」などを搭載しているほか、クラス最高の省エネをほこります。ゼンスイのクーラー群で「ZR」と比べ高価ではありますが、それだけに高性能なクーラーとなっています。ZC-500α以上の機種になると、付属のパッキンなどを使って塩ビパイプと接続することができるようになります。サイズは6種類あり小型水槽からオーバーフロー水槽まで適したものを選ぶことができます。さらにゼンスイはクーラーのサポートにも定評があり、無料点検や、有料ではありますがクーラーのオーバーホールなども行っています。

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2位:ジェックス クールウェイBKシリーズ

▲性能もコストパフォーマンスの両立もできる

ジェックスのクールウェイもおすすめのクーラーのひとつです。60cmオーバーフロー水槽用ならBK210がおすすめで、単体であればBK110でも対応可能です。コストパフォーマンスにも優れ、冷却性能もそこそこ高めです。中国製で値段は安価です。お金を抑えて、でも冷えるクーラーが欲しいならこのクールウェイかゼンスイZRシリーズということになります。またジェックスもゼンスイ同様にアクアリウムの業界では名が知られている総合アクアリウムメーカーですので多くのお店で販売されていて購入しやすいのも特徴です。

デメリットとしてはゼンスイ製のものと異なり、温度センサーが飛び出しているタイプで(ゼンスイのクーラーは温度センサーが内蔵されている)、センサーが露出してしまうと冷えすぎてしまい魚が死んでしまうという事故がおこる可能性もあることです。ちゃんとセンサーの水位をチェックしておきましょう。

3位:ゼンスイ ZRシリーズ

低価格がうれしいゼンスイのZRシリーズです。ZCシリーズと異なり水温監視アラートやオーバータイム機能を有していないなどのデメリットがあり省エネという意味ではZCシリーズにおとるものの、小型水槽から60cmくらいならこのシリーズでも十分です。このシリーズは中国で製造することにより価格がZCシリーズよりも安くなっているので、「初期投資を抑えたい」という方にはおすすめです。小型水槽に最適なZR-miniはとくにその用途に最適といえます。一方オーバーフロー水槽であればこのシリーズでも使用できないというわけではないのですが、オーバーフロー水槽で使用するのであれば塩ビパイプが使用できるZCシリーズ(ZC-500α以上の機種)のほうが適しているでしょう。ゼンスイ製のクーラーですので、ZCシリーズ同様サポートもしっかりとしています。

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そのほかの海水魚用クーラー

このほかにもレイシー、ニッソー(マルカン)、テトラ(スペクトラムブランズジャパン)、テコ(エムエムシー企画レッドシー事業部)からクーラーが販売されていますが、このあたりのクーラーは使用したことがなく、とくにレイシーやテコなどは販売しているお店もあまり多くなく(取り寄せは可能)、今回はランキングから外させていただきました。

まとめ

  • 初心者におすすめのクーラーは冷媒を使用して冷やすタイプ
  • ZCシリーズは小型水槽からオーバーフロー水槽まで使える人気製品
  • ジェックスのクールウェイBKシリーズは安価だがそこそこ冷え使いやすい
  • ZRシリーズは初期投資を抑えたい人向け
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2020.08.22 (公開 2020.05.01) 海水魚図鑑

イトヒキベラの飼育方法~水温と水槽サイズには注意が必要

イトヒキベラの仲間は熱帯性のものが多いのですが、このイトヒキベラという標準和名をもつ種は温帯域にも生息していて、本州から九州の磯で釣れることもあります。一見地味なものではありますがよく見るときれいな魚で、とくに婚姻色の出た雄は極めて美しいものです。その代わり、やや大きめの水槽で飼育する、高水温に注意する、など気を付けるべき点もあります。今回はこのイトヒキベラの飼育方法をご紹介します。

なお、ここではイトヒキベラという種の飼育方法をご紹介しています。イトヒキベラの仲間全体の飼育についてはこちらをご参照ください。

標準和名 イトヒキベラ
学名 Cirrhilabrus temminckii Bleeker, 1853
英名 Threadfin wrasse
分類 スズキ目・ベラ亜目・ベラ科・イトヒキベラ属
全長 10cm
飼育難易度 ★★☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッドシグマグロウなど
温度 23℃前後、フィリピンなどのものは25℃前後でよいかもしれない
水槽 90cm~
混泳 大きめのハナダイとの相性は悪いかもしれない
サンゴとの飼育 問題なし。魚の遊泳スペースをとるように配置する

イトヒキベラって、どんな魚?

イトヒキベラは日本の本州から九州沿岸、琉球列島、フィリピン、インドネシア、オーストラリアの東インド―西太平洋に生息しているベラの仲間です。この仲間は熱帯域に多いのですが、本種は温帯性で、日本の太平洋岸にもよく見られ、上記の分布域の魚は別種である可能性も指摘されます。またほかのイトヒキベラの仲間の多くと同様、雌雄で色彩や体つきに違いが見られます。雄は写真のように腹鰭が長くのび色彩もより美しくなります。体は背中が赤く腹部がダークグレーという色になり、婚姻色の出た雄の色は極めて派手です。

イトヒキベラ属の魚

▲ラボックスラス

イトヒキベラの仲間はベラ科の中でも最大級のグループのひとつです。いずれも鮮やかな色彩のものが多く、ほとんどすべての種が観賞魚として輸入されています。飼育しやすいものが多いのですが、中には大きくなるものや遊泳性が強いものもおり、そのような種を飼育するのであれば大型水槽が必要になります。イトヒキベラは全長10cmほどでこの仲間では中型といえます。

イトヒキベラの近縁種

今一般的に「イトヒキベラ」と呼ばれているものの中にはいくつかの種が混じっているといわれています。実際Rudie H Kuiterの「Labridae Fishes: Wrasses」では3つのタイプに分けられています。Temminck’s fairy wrasse (Cirrhilabrus temminckii)、Blue-stripe Flasher (Cirrhilabrus cf temminckii 1)、Peacock Flasher(Cirrhilabrus cf temminckii 2)と呼ばれるものです。

このうち日本(とおそらく韓国にも分布)にすむものはTemminck’s fairy wrasseです。いずれにせよ標準和名イトヒキベラ、Cirrhilabrus temminckiiの学名はこの種にあてられるべきのようです。

Kuiterの図鑑でBlue-stripe Flasherとされるものはインドネシアやフィリピン、台湾、琉球列島に分布するもので、フィリピンタイプとも呼ばれています。連続する青い縦線や雄の体側の白っぽい腹部などが特徴的です。フィリピンから来る「テミンキーズフェアリーラス」はこの種のようで。婚姻色にも違いがあります。ただし種が分けられれば「テミンキーズフェアリーラス」の名前は使用しないほうが賢明です。この名称は人名由来の学名に由来していますが、Cirrhilabrus temminckiiの学名は日本の長崎で獲れたものを指すため、それと同種であればこの学名を使えますが、別種とされれば同じ学名は使えなくなるからです。

Peacock Flasherはアブロルホスやモンテベロ諸島などの西オーストラリアに生息しており、日本産のものよりも緑が強い印象です。ただし生息地が保護区の島嶼域に限定されておりよほどのことがないと入荷することはないといえそうです。

イトヒキベラ飼育に適した環境

水槽

水槽は最低でも60cm水槽が必要になりますが、できれば90cm以上の水槽で飼育するようにします。イトヒキベラはこの属では平均的なサイズではありますが、遊泳力が強く水槽内でもよく泳ぎ回るからです。

水質とろ過システム

イトヒキベラの仲間はベラの仲間としてはきれいな水を好みます。できるだけ高いろ過能力を得るためにしっかりとしたろ過能力を持ったろ過槽を選びましょう。オーバーフロー水槽を使用するか、上部ろ過槽と外部ろ過槽を一緒に使うとよいでしょう。外部ろ過槽だけ使用するというのはよくありません。一方ろ過槽のないベルリンシステムでも飼育することができます。ただしベルリンシステムはサンゴを中心としたシステムであり、このシステムで飼育するのであれば魚は多く入れられないので注意しなければなりません。

水温

水温は日本近海のものであれば23℃、東南アジアのものであれば25℃前後が快適です。もちろん温度が一定に保たれていることが重要です。ヒーターとクーラーを用いて年中同じ温度をキープするようにしましょう。

水流

イトヒキベラの仲間はよく泳ぎ、水流が強めの場所に多いため、水流ポンプを使用してある程度の水流を作ってあげたほうがよいでしょう。

フタ

イトヒキベラは何かに驚いたりすると飛び跳ねたりすることもあるので、フタはしっかりしましょう。

隠れ家

イトヒキベラは砂に潜らないタイプのベラで、夜間は岩の影などで休息します。そのためライブロックやサンゴ岩などの隠れ家を作ってあげたいものです。サンゴ水槽で飼育しているとサンゴの隙間などで眠ることもあります。

イトヒキベラに適した餌

イトヒキベラは海の中ではプランクトンなどを捕食していますが、飼育下では基本的によほどの大きなサイズの個体でなければ配合飼料などもすぐに食べてくれるはずです。あまり大きな粒だと食べにくいこともありますので、「メガバイト」であればSサイズを与えるなどの配慮も必要です。幼魚はもっと小粒の餌、たとえばシグマグロウのBなどを与えるのもよいでしょう。どうしても餌食いが悪いときはホワイトシュリンプやコペポーダなどを与えてもよいのですが、これらの冷凍餌は与えすぎると水質悪化につながりやすいので注意します。とくに小型水槽で飼育するときは要注意です。

イトヒキベラをお迎えする

▲高知県で採集したイトヒキベラ。体側の青い点線がつながっていてフィリピンタイプのようにも見える

イトヒキベラは採集することもできますが、基本的には観賞魚店で購入することが多いでしょう。一般的な海水魚店ではフィリピンなどから輸入されてくることも多いようですが、たまに近海産のものも入ってきます。どこで獲れたのかお店の人に相談するとよいでしょう。釣りや磯で潜って採集することもできるのですが、深い場所から釣れてひっくりかえったものなどは飼育には向きません。

購入するときは鰭や体表に白い点やただれがあるもの、体表や吻などに傷があるもの(鰭が傷ついても治ることは多いが初心者にはあまりおすすめしない)などは選んではいけません。じっといているものは隠れていたり、休息しているだけのこともあり、あまり気にする必要はないのですが、できるだけ元気に泳いでいるものを購入するようにします。

イトヒキベラとほかの生物との関係

ほかの魚との混泳

▲意外と威張るケラマハナダイ

イトヒキベラは雄同士では争うことがあります。雄雌で飼うか、ほかの魚と飼育するのがベストでしょう。それ以外では多くの魚と飼育することができますが意外なことに生息域が被る大きめのハナダイ系との相性がいまいちなような気がします。今回写真でご紹介した個体はケラマハナダイなどと飼育していましたがストレスになっていたようで弱って死んでしまいました。そのほかの魚であれば概ね問題ないのですが、形が似ているメギスの仲間や気が強いスズメダイの仲間、肉食性の強い魚との混泳はしてはいけません。

サンゴ・無脊椎動物との相性

サンゴには無害です。浅場にも見られミドリイシ水槽で飼育してもよい魚です。もちろんLPSやソフトコーラルとの相性はよいのですが、クマノミが共生するタイプのイソギンチャクは餌にしてしまうのでよくありません。とくに小さめの水槽では襲われる危険があります。ディスクコーラルやスナギンチャクの類との飼育は問題ありません。

ベラの仲間ですが甲殻類との相性はおおむね悪くありません。しかし小さなエビは食べてしまうことがあり、イセエビの類や大きめのエビ、大きめのカニ、大きめのヤドカリはイトヒキベラを襲うことがあり、一緒に飼育するのは避けます。このほかオトヒメエビは夜間活発に活動し、寝ている魚を襲うことがあるので、岩陰で完全に眠る習性があるイトヒキベラとの飼育はやめたほうがよいでしょう。

イトヒキベラ飼育まとめ

  • 温帯域に生息するイトヒキベラの仲間
  • 雌雄で斑紋がやや異なり、雄の婚姻色は派手になる
  • 海域により模様がことなり一部は別種になるかもしれない
  • 飼育にあたっては最低でも60cm、できれば90cm水槽が欲しい
  • オーバーフロー、もしくは上部ろ過槽と外部ろ過槽の両方を使用して飼育したい
  • 水温は23℃前後が最適
  • 水流もあったほうがよい
  • 夜間は岩陰で眠る。隠れ家は用意しよう
  • 小粒の餌を与えたい。冷凍の餌は水を汚すので与えすぎには注意
  • 購入することも採集して飼育することもできるが状態には注意したい
  • 大きめのハナダイの仲間との相性はあまりよくないかも
  • スズメダイの大きいのやメギスとの飼育も避けたい
  • サンゴには無害だがイソギンチャクは避ける
  • 甲殻類との飼育も可能だが大きい甲殻類はだめ

2020.04.29 (公開 2020.04.28) 海水魚の買い方

チャーム通販での死着保証について~海水魚・サンゴが死んで届いた場合の対応

通販で海水魚やサンゴを購入すると、たまに魚やサンゴが死んで届くということもあります。これが「死着」です。この死着は多くの海水魚店で保証の対象となっています。基本的には返金して補償してもらうのが安心です。なお、死着が発生するのは必ずしも海水魚店側に落ち度があるということはなく、道路やトラックの状況、天候、受け取り時間などにも左右されますので購入するときには注意しましょう。また緊急事態宣言による外出自粛が求められている今、通販の注文が平時よりも多く、通販でも海水魚やサンゴを買わないほうが賢明かもしれません。

死着とは

アクアリウムで通販を行うと、魚が死んで届いてしまうことがあります。これを死着といいます。死着は多くの海水魚店で保証対象となっています。ただし例外的なものもありますので、通販を利用する場合はしっかり確認しておきましょう。主に「通販について」とか「特定商取引法に基づく表記」などにのっているはずですので必ずチェックしましょう。

観賞魚店での死着保証の内容

死着保証は海水魚店により異なります。今回ご紹介する「チャーム」を含めた多くのお店が返金による対応となります。中には「リミックス」や「Kazika」のように同じ種の魚がいればそれを代わりに送ってくれるお店もありますが(返金対応もしてくれる)、基本的には返金対応のほうが望ましいでしょう。ちなみにチャームの通信販売についてはこちらをご覧くださいませ。

なお、ネット通販において魚やサンゴなどを購入する際の注意点はこちらをご覧ください

実際に死着保証をお願いしました

今回筆者は「チャーム」の通販にて、テンジクダイ科のウスモモテンジクダイという魚を購入しましたが、3匹購入したものの、残念ながらそのうち2匹が死んでしまっており、チャームの死着保証を利用することになりました。

必要な写真

死着保証を受ける際には写真が必要になります。どのようにして死亡したのか判断するためで、場合によっては死んでしまった魚を送り返さなければならないこともあるようです。補償を受けるには次にあげる3つのポイントをうつした写真が必要になります。

袋の中の魚がお亡くなりになっている写真

極めて重要な点として「開封前」の写真を撮影することです。開封したあとの写真では一切保証してもらえません。なお、生きている生き物がいるときは写真撮影後生きている個体を水合わせすればよいのですが、その場合は補償の対象外となってしまうので注意します。この写真では左に死んでいる2匹のウスモモテンジクダイのほか、右下方に1匹生きているウスモモテンジクダイがうつっていますが、これも水合わせした後、弱って死んでしまいました。

留め金

チャームでは輪ゴムより写真のような留め金を使用していることが多いです。この留め金の様子も撮影してほしい、とのことです。

ラベル

袋についているラベルです。IDや注文番号、パッキングした日付なども記録されています。

これら3つの写真を撮影してチャームのカスタマーセンターへメールを送付し、補償ができる内容であると確認されると、返金先の口座を教えてほしい旨のメールが来るので返信して終了です。なお到着後24時間以内という条件があります。チャームで魚やサンゴを買うと必ず保証書がついてくるはずなのでチェックしましょう。また箱の中で魚がビビっていて模様が変わることもありますが、これは落ち着いたら戻ります。またブダイやハギ、ベラなどは横たわって眠るので死着と勘違いされるケースもあるようです。

死着を防ぐためにできること

▲ウミアザミは意外と輸送に弱い

死着を防ぐためにできることとしては「迅速に受け取る」ことです。袋という狭い空間、しかもろ過されていない場所に閉じ込められているわけですから、迅速に受け取る必要があります。とくに盛夏や冬季などは水温の都合上、できるだけ早く受け取ってあげましょう。指定時間に受け取ることができないと死着補償の対象外になるケースもあります。また繁忙期や台風が近づいているとき、高速道路の集中工事が行われているときなど、物流が滞りやすいときには注文しないというのも対策のひとつになるでしょう。

また、現在は緊急事態宣言により外出自粛が求められています。そのようなときは通販で海水魚やサンゴを購入しよう、と思っている方もいるかもしれませんが、避けたほうが無難です。理由はインターネット通販への注文が平時よりも大幅に増加しているようで、チャームにおいても注文から発送まで4~14日を要しているとのことです。またタイムサービス便や山口便への配送は休止となっています。

またトラックの数にも限りがあるということです。チャームのほかにもさまざまな業態の通販が一気に増加しておりますがトラックに載せられる量には限りがあります。さらに運転手の数も少なく、便数も増やせないというのが現状のようです(そもそもこの問題は以前から指摘されてきたことですが)。ですから発送から到着まで時間がかかる可能性があり、外出自粛が求められている間は通販で海水魚やサンゴを購入しないほうがよいかもしれません。

なお、別の海水魚店では「もともと状態が悪い魚を通販で送っている」なんて疑惑が出ていたようですが、実際にそんなことがあれば死着補償などつけたら莫大な額の補償をしなければなりませんし、インターネットが発達した昨今そんなことをやれば悪いうわさがたって閉店に追い込まれるかもしれません。つまり、わざわざ弱った魚を通販で送ることはないようですが、急いでいるときなど水槽から魚を掬う際に乱暴に扱って傷つけてしまう可能性はあるようです。また、中には今回注文したウスモモテンジクダイなどのテンジクダイや、ウミアザミなどのようにどうしても輸送に弱い魚やサンゴもいます。そのような生物は通販で購入しないほうがよいかもしれません。

まとめ

  • 通販で魚を購入すると魚が死んで届く「死着」がたまにある
  • チャームなどでは死着保証を受けることができる
  • 死着保証には条件があるので注意
  • 袋開封前の死着した魚・留め金・ラベルの写真を到着後24時間以内にチャームに送る必要がある
  • 迅速に受け取ることで死着の可能性を少しでも減らすことができる
  • 繁忙期や荒天時などは通販で海水魚やサンゴを買わないほうがよいかもしれない

2020.05.07 (公開 2020.04.24) 海水魚図鑑

ヨスジリュウキュウスズメダイの飼育方法~ミスジリュウキュウスズメダイとの違いに注意

ヨスジリュウキュウスズメダイはスズメダイの仲間で、同じ属の魚であるミスジリュウキュウスズメダイによく似ていますが、若干性格には違いがあるようです。また背鰭や尾鰭の模様もミスジリュウキュウスズメダイと異なっているところがあります。ほかのスズメダイ同様枝状のサンゴのそばに見られることが多いですが、日本のサンゴ礁では少ない種類です。今回はこのヨスジリュウキュウスズメダイの飼育方法をご紹介します。

標準和名 ヨスジリュウキュウスズメダイ
学名 Dascyllus melanurus Bleeker, 1854
英名 Black-tail dascyllus, Black-tail humbugなど
分類 スズキ目・スズキ亜目・スズメダイ科・ミスジリュウキュウスズメダイ属
全長 8cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトグリーン海藻70など
温度 25℃前後
水槽 45cm~
混泳 性格は強めだが幼魚は臆病なところも
サンゴとの飼育 問題なし

ヨスジリュウキュウスズメダイって、どんな魚?

▲ヨスジリュウキュウスズメダイ

ヨスジリュウキュウスズメダイはスズメダイ科ミスジリュウキュウスズメダイ属の魚で、西太平洋からカロリン諸島に生息しています。日本においては沖縄島や慶良間諸島、宮古諸島に生息していますが数は多くありません。主に東南アジアから輸入されてくるようです。

なおミスジリュウキュウスズメダイ属のうち、「~リュウキュウスズメダイ」と名前についている3種を「リュウキュウスズメダイ」としてひとまとめにする風潮がありますが、それには賛同できません。なぜならば、この「~リュウキュウスズメダイ」と名前についている3種はそれぞれ性格などが若干ことなっているところがあるからです。

この仲間を英語でハンバクといいますが、humbugとは「ばかばかしい」とか「ごまかし」といったほか、イギリスなどでみられる白黒のキャンディのことをそういったりするようです。たしかにヨスジリュウキュウスズメダイの模様は、そのキャンディによく似ています。

ミスジリュウキュウスズメダイとの見分け方

▲ヨスジリュウキュウスズメダイの特徴

▲よく似たミスジリュウキュウスズメダイ

ヨスジリュウキュウスズメダイは体側に太い横帯があり、ミスジリュウキュウスズメダイによく似ています。写真はヨスジリュウキュウスズメダイの特徴をまとめたもので、このうち「体側の黒色帯が背鰭でつながらない」、「尾鰭にも黒色帯がある」という特徴でミスジリュウキュウスズメダイと見分けることができます。ミスジリュウキュウスズメダイでは、体側の黒色帯が背鰭でつながり、尾鰭には黒色帯がなく真っ白になります。

ファインディング・ニモ

映画「ファインディング・ニモ」に登場する歯科医の水槽で飼育されているスズメダイの「デブ」のモデルについては、多くの媒体で「ヨスジリュウキュウスズメダイ」として紹介されています。確かに、「デブ」の尾鰭に黒い帯があり、これはヨスジリュウキュウスズメダイの特徴なのですが、体側にある横帯が背鰭でつながっているところはミスジリュウキュウスズメダイの特徴になります。この2種の両方の特徴を併せ持ったキャラクターといえるでしょう。

なお、ヨスジリュウキュウスズメダイとミスジリュウキュウスズメダイの間で交雑個体が出てくることがあります。ただしこのような個体は尾柄部に細い黒い線があるだけで「デブ」ほどははっきりとしていません。また近年インド洋に生息するDascyllus abudafurという種が復活し、この種も尾鰭に黒い帯が入りますが、ヨスジリュウキュウスズメダイほどはっきりしたものではありません。

ヨスジリュウキュウスズメダイ飼育に適した環境

水槽

▲90cm水槽での混泳例

小型水槽でも飼育できますが、安定して長期飼育を目指すのであれば少なくとも45cm水槽は用意してあげたいところです。ほかの魚と混泳するのであれば60~90cm水槽で飼育するようにしたいところです。

水質とろ過システム

ヨスジリュウキュウスズメダイは丈夫で飼育しやすいですが、あまりにも水が汚いとウーディニウムなどの病気に罹ってしまう可能性があります。なるべくきれいな海水で飼育することを心がけましょう。そのためにはろ過槽が重要で、外掛けろ過槽や外部ろ過槽はあまりおすすめできません。上部ろ過槽かオーバーフロー水槽が初心者に扱いやすく、しかもろ過能力が高いのでおすすめです。

サンゴを飼育するためのベルリンシステムでの飼育もできます。ただしベルリンシステムはあくまでもサンゴを飼育するためのシステムであり、魚を多く入れることができるシステムではないので注意が必要です。

水温

サンゴ礁の魚なので、基本的には25℃前後の水温で飼育するようにしましょう。もちろん水温の変動が大きいと病気にかかってしまうこともありますので、一定の水温で飼育することが大切です。病気の予防には殺菌灯、と思ってしまいがちですが、実際にはそれよりも水温を安定させることのほうがずっと大切です。

ヨスジリュウキュウスズメダイに適した餌

ヨスジリュウキュウスズメダイは動物プランクトンなどを捕食しています。水槽内ではおおむね海水魚用の配合飼料を最初から食べてくれることが多いので助かります。海水魚の定番フードである「メガバイト」を与えるのであれば小型個体はSサイズ、ある程度育った個体はMサイズというように、魚の大きさに合わせて餌の粒サイズを選ぶようにします。なお、本種は藻類も食するようで、メガバイトグリーンや、これをベースにした海藻70をメインに与えるのもよいでしょう。このほか、各種プランクトンフードも与えると食べますがこのような餌は与えすぎると水を汚しますのでほどほどにしましょう。

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ヨスジリュウキュウスズメダイをお迎えする

ヨスジリュウキュウスズメダイはミスジリュウキュウスズメダイと異なり数が少なく採集はしにくいので、購入に頼ることになります。主にフィリピンやインドネシアなどから入ってくるので、高価なものではありません。ただし安価な分魚の状態をしっかり見極める必要があります。これは安価なため雑に扱われがちだからです。入荷直後のものは買わず、落ち着いた状態の個体を購入するようにしましょう。もちろん体が赤くただれていたりとか、白い細かい点がついている、泳ぎ方がおかしいなどの個体は購入してはいけません。

ヨスジリュウキュウスズメダイとほかの生物の関係

ほかの魚との混泳

▲成魚は大型水槽で大型魚と混泳してもおびえない

ヨスジリュウキュウスズメダイもミスジリュウキュウスズメダイ同様きつめの性格をしていますが、幼魚のうちはミスジリュウキュウスズメダイよりも幾分おとなしいように思え、気が強い魚と飼育する際はおびえていないか、よく観察しましょう。一方大きく成長したものは気が強いところがありますので、ヤッコやニザダイ、アイゴ、ベラ、マツカサなど大きめの魚との混泳も大丈夫です。逆に成長したものは小魚との混泳は難しくなってしまうことがあります。

サンゴ・無脊椎動物との相性

▲ヨスジリュウキュウスズメダイとマメスナギンチャク

サンゴを食べるタイプの魚ではないので、サンゴ水槽での飼育にも適しています。どんなサンゴとも飼えますが、生息環境を考えると浅場のSPSやソフトコーラルがよく似合うでしょう。ただし本種を入れるとサンゴ水槽に適した小魚は入れにくくなってしまうこともありますので注意が必要です。一方イソギンチャクは捕食性が強いため入れないほうが無難です。なお、マメスナギンチャクの類やディスクコーラルとは問題ありません。

一方甲殻類は大型のカニ、大型のヤドカリ、大型のエビ(イセエビなど)との飼育もやめましょう。これらは魚を捕食してしまうこともあるからです。クリーナーシュリンプやサンゴヤドカリ、ベニワモンヤドカリなどは問題ありません。

ヨスジリュウキュウスズメダイ飼育まとめ

  • ミスジリュウキュウスズメダイに似るが背鰭や尾鰭の斑紋が異なる
  • ファインディング・ニモの「デブ」の尾鰭はヨスジリュウキュウスズメダイに似る
  • 小型水槽でも飼育できるが混泳するときは60~90cm水槽で飼育したい
  • 水質悪化には強いが、できるだけきれいな水で飼いたい。ろ過はしっかり
  • 水温は25℃で一定を保つ
  • 配合飼料はよく食べてくれる
  • 高価な魚ではないが雑な扱いを受けている可能性が高い。状態はよくチェック
  • 成魚は大型水槽で大型魚と飼ってもおびえないが、幼魚はおとなしめなので注意
  • サンゴには無害だがイソギンチャクとの飼育は避ける
  • 大型の甲殻類との飼育も避けたい

2020.04.24 (公開 2020.04.23) 水槽・器具

ライフガード QL-15 殺菌灯をレビュー!90cm水槽におすすめの殺菌灯

殺菌灯は海水魚飼育に100%必要!というわけではありませんが、あったら安心するアイテムです。水中に漂う病気のもとになる生物やコケの胞子などを文字通り「殺菌」してしまうのです。殺菌灯はいくつかのメーカーから販売されていますが、大型水槽に殺菌灯を取り付けるのであれば、その分大きなものが必要になります。大型水槽用の殺菌灯は各メーカーから出ていますが、今回はライフガードから出ている殺菌灯「QLシリーズ」、その中の一つ「QL-15」をご紹介します。

QL-15とは

ライフガードの水槽用殺菌灯で、日本においてはナプコリミテッドジャパンが輸入販売する大型の殺菌灯です。QLシリーズには15/25/40の3タイプがあり、この15は90×45×45cm水槽におすすめです。QLシリーズはほかの殺菌灯よりも大きくコンパクトではないのですが、その分強力に殺菌します。世界中の大型水槽をもっているアクアリストに使われているもので実績も十分といえます。なお、価格はオープン価格となっています。

なお、殺菌灯の役割についてはこちらをご覧ください。

使用するポンプ

▲同じくナプコから出ているネワジェット。写真は1ランク上のNJ2300

殺菌灯は買っただけでは使用することはできません。購入した殺菌灯を動かすのにはポンプとホースが別途必要になります。ポンプは適応水量毎分20リットル以下が適しているとのことで、同じくナプコのポンプであればネワジェットNJ1700Nが最適でしょう。ただし、NJ1700Nはヘルツフリーではないので、お住まいの地域に合わせて購入することになります。また内径が15~16mmのホースも必要になりますので、必ず購入しましょう。流速が速すぎるとうまく照射されないことがあるので、適応水量に従う必要があります。このほか配管の途中に接続することになりますので、テフロンテープなども必要になってきます。

どこに取り付ける?

オーバーフロー水槽

オーバーフロー水槽のサンプ内に取り付けるのが一番やりやすいです。Ql-15はハイパワーではありますが、高さ45cmもあり、見栄えも悪くなりがちです。殺菌灯のような見栄えがよくないものはサンプ内に隠しておきましょう。注意点としてはクーラーの前に取り付けるということ。せっかくクーラーで冷却した水を殺菌灯で温めることになってしまうため、殺菌灯はクーラーの前につけるようにします。

オーバーフロー以外の水槽

オーバーフロー水槽以外の水槽ではサンプに置くことができませんので、水槽内に水中ポンプを置き、ホースを使って殺菌灯と接続することになります。

従来はナプコリミテッドからホース、パイプ、テフロンテープなどが入った、簡単に取り付けるためのキット(QL殺菌灯ラクラク設置キット)が販売されていましたが、現在は販売していないようです。なお、おすすめのポンプは先ほどもご紹介したNJ1700ですが、ポンプのサイズが結構でかいので景観が気になってしまうかもしれません。このほか外部ろ過槽に取り付けることもできます。

付属品

QL-15を購入すると本体のほかにも様々なパーツがついてきます。このパーツ類をご紹介していきます。

本体

先ほども述べたように本体は45cmもあります。サイズについては手前においてあるメガバイトを参考にしてください。かなり大きく見えるものですが、それでもこのシリーズでは最小のものといえます。筒の下方に配管用のパーツがあり、この部分にホースや配管を接続します。

UVランプとクォーツスリーブ

▲UVランプ(上)とクォーツスリーブ(下)

QLシリーズのUV(紫外線)ランプは石英製で紫外線の照射ロスが少なくなっています。点灯している様子は殺菌灯上部のランプから見ることができますが、じょじょに放射線の量が少なくなっていくため、6~8か月ほどで寿命を迎えるともいわれており、メーカーは早めの交換を推奨しています。UVランプの下にある筒、クォーツスリーブは殺菌灯のランプが水に濡れないように保護するもので、専用のOリングも付属しています。QLシリーズのクォーツスリーブは透明度が高くUVランプ照射の邪魔にならないという大きなメリットがあります。ただしたまに掃除してあげるとよいとのことです。どうしても汚れがひどくなったら交換しなければならないのですが、QL-15用でも10000円近くしますので、なるべくきれいに保つようにしましょう・。

安定器

QLシリーズ専用の安定器です。やはりサイズに合わせた3種類が市販されています。安定器の中には温度ヒューズが入っており、一定の温度以上になった場合安全のために通電をストップしてくれます。その後は安定器の温度が冷え、電源を再度いれたら再度動きます。

小型の安定器で壁面に取り付けることができますが、サンプの中に取り付けると水がはねたりしてかかりやすいので、水槽台の横に取り付けるのもよいでしょう。小型ですのであまり目立ちません。

ほか各種パーツ

▲各種パーツ

配管に取り付けるためのエルボーや各種Oリングなどが入っています。Oリングは劣化する前に交換したほうがよいでしょう。手前のOリングはクオーツスリーブにつけるOリングで、ガスケット(固定用シール材)とセットで使用するためのものです。

寿命と消耗品

UVランプ

UVランプは強力ですが、四六時中照射するため蛍光灯よりも寿命は短くなってしまいますので、先述の通り6~8か月ごとに交換したいところです。高いからと取り換えないでおくと効果がなくなってしまうので早めに交換したいところです。

安定器

UVランプとともに安定器も重要な器具ですが、メーカーは3年かに1回の交換を推奨しています。これも結構高価ではありますが、交換しないと事故を招くおそれもありますので、早めに交換しなければなりません。

そのほか各パーツ

▲QL-15内部のパーツ

殺菌灯の内部パーツは四六時中強い紫外線にさらされるため、思いのほか劣化してしまいやすいのです。そのため内部部品の交換も必要になってきます。青い矢印で示したのはプロテクションスリーブとよばれるカバーで、紫外線が本体に照射されるのを防ぐためのカバーです。これがないと本体に直接紫外線が照射されてしまい、最悪の場合本体に穴が開いてしまうこともあります。メーカーは1年に1回の交換を推奨しています。

赤い矢印で示したのはオーバーフローパイプで、この部分も直接紫外線にさらされるので劣化しやすく、交換の必要があります。QL-15用プロテクションスリーブは1450円、QL-15用オーバーフローパイプは710円(いずれもメーカー希望価格、税別)と安価なので定期的な交換を心掛けたいものです。

QL-15使用まとめ

  • 世界中で使用されるライフガードの殺菌灯のなかでもっとも小さいモデル
  • 90cm水槽に最適
  • ほかに毎分20リットル以下の流量をもつポンプとホース、テフロンテープなどが必要
  • オーバーフローで使用するとサンプの中に本体を隠せるのでおすすめ
  • オーバーフロー以外の水槽でも水中ポンプを使用すれば接続可能
  • UVランプはクオーツスリーブの中に入れて保護する
  • 安定器は安全のために重要な装置。各商品に専用の安定器が付属
  • UVランプは半年に1回交換したい
  • 安定器も3年に1回交換する
  • 内部パーツのオーバーフローパイプやプロテクションスリーブも交換する

2020.04.22 (公開 2020.04.21) 海水魚図鑑

サンカクハゼの飼育方法~サンゴ礁で採集できる飼育しやすいハゼ

サンカクハゼは熱帯サンゴ礁に生息する底生ハゼの一種です。あまり派手な色彩ではないのですが、透明感がありよく見るときれいな魚です。ほかのハゼ同様に丈夫で飼育しやすく混泳もこなし、注意点はあるもののサンゴとの飼育も可能で初心者向きの魚ともいえます。今回はサンカクハゼの飼育方法をご紹介します。

標準和名 サンカクハゼ
学名 Fusigobius neophytus (Günther, 1877)
英名 Common fusegoby
分類 スズキ目・ハゼ亜目・ハゼ科・ハゼ亜科・サンカクハゼ属
全長 8cm
飼育難易度 ★☆☆☆☆
おすすめの餌 メガバイトレッドシグマグロウなど
温度 25℃前後
水槽 45cm~
混泳 多くの魚と混泳できるが肉食性の強い魚は避ける
サンゴとの飼育 低い位置にサンゴを配置しないようにする

サンカクハゼって、どんなハゼ?

サンカクハゼはインド―太平洋に広く生息し、国内では主に琉球列島に分布しています。和名の由来は吻がとがっており頭部の形状が三角形に近いから、もしくは体の横断面が三角形に近いからのいずれかとされています。色彩的には灰褐色で地味ではありますが、透明感がありまあまあきれいな魚です。また背骨に沿って白と黒の交互に入る模様もユニークです。

ほかのサンカクハゼの仲間とは背鰭が伸びないこと、背鰭に横帯がないこと、背鰭の上縁はわずかに白っぽくなること、第一背鰭の第1鰭膜に小さな黒色点があること、尾柄部の斑紋はおおむねひょうたんのような形をしていることなどで見分けることができます。非常に丈夫で初心者であっても飼育しやすいハゼといえます。

サンカクハゼの仲間

▲カペラサンカクハゼ

サンカクハゼの仲間はインド―中央太平洋のサンゴ礁に広く分布しています。世界には10種ほどがいて、日本には9種が分布しています(書籍「日本のハゼ」では8種とされていたが、同書に記載されていたサンカクハゼ属の1種が2009年に日本初記録として報告され、カペラサンカクハゼの和名がついた)。また新大陸周辺海域に生息するCoryphopterus属の魚種の中にはサンカクハゼとよく似ているものがおり、サンカクハゼもCoryphopterus neophytusという学名が使われていたこともあります(実際に2001年に新種記載されたサンカクハゼ属魚類は新種記載された当時はCoryphopterus属とされた)。しかしのちにmt-DNAのND2領域の遺伝子解析を行った結果この2属は近縁の種ではない、とされており別属とされるべきのようです。

この仲間では大きな鰭が特徴で目立つハタタテサンカクハゼやヒレフリサンカクハゼといった種がアクアリストやダイバーに人気があります。一見テッポウエビの仲間と共生しそうですが、共生はしないとされています。

サンカクハゼ飼育に適した環境

水槽

▲サンカクハゼを飼育している水槽

幼魚は小型水槽でも飼育可能です。成魚は45cm以上の水槽で飼育するとよいでしょう。参考までに我が家でサンカクハゼを飼育している水槽は幅40cmほどの小型水槽で、この水槽にサンカクハゼやヒメカザリハゼ、テンジクダイの一種などを入れています。ただし初心者には45~60cmの水槽がよいかもしれません。幅5cmの違いは水量をかせぐという意味では意外と大きいです。

水質とろ過システム

ある程度の水質悪化には耐える丈夫で飼育しやすいハゼですが、当然ながら硝酸塩はあまり蓄積されていない環境のほうがよいです。大きいものは砂を動かすことも多く、底面ろ過装置の使用はやめましょう。おすすめは上部ろ過槽、外部ろ過槽、外掛けろ過槽のうち二つを組み合わせることです。小型水槽では外掛けろ過槽と外部ろ過槽を組み合わせますが、60cm水槽は上部ろ過槽が使えるようになるためより飼育しやすくなります。可能ならばオーバーフロー水槽もおすすめです。

サンカクハゼはサンゴ水槽でも飼育できますが、サンゴと飼育するならばサンゴを置く位置にも気をつかう必要があります(後述)。また、サンゴ飼育を目的としたベルリンシステムなどでは魚をたくさん入れるのは不向きなところがあります。

水温

水温は25℃を保つようにすればよいでしょう。それよりも若干高め、もしくは若干低めの水温でも飼育できますが、水温が一定に保たれている必要があります。病気の予防のためにも一定の水温をキープすることを心がけます。

底砂

底砂を敷くとほかのハゼの仲間同様に落ち着きますので敷いてあげるとよいでしょう。厚く敷く必要はありません。厚く敷いてしまうと硫化水素が発生する危険性もありますので、2~3cm程度砂を敷く程度にします。パウダーから細目の砂が最適でしょう。

サンカクハゼに適した餌

サンカクハゼの餌としては配合飼料をすぐ食べてくれますのであまり心配はいりません。魚の体サイズに合わせて餌のサイズを使い分けます。サンカクハゼ幼魚ならメガバイトレッドのS。成魚であればMという感じで選びましょう。シグマグロウであれば幼魚はB、成魚はCを選ぶとよいです。ほかのハゼ同様、フレークタイプの餌よりも底に沈むタイプのほうが食べやすいようです。

サンカクハゼをお迎えする

採集する

サンカクハゼはサンゴ礁周辺の砂地で採集することができます。沖縄などであれば干潮時水深1~2mほどの場所でみることができます。動きは素早くないので容易に採集できます。「カクレクマノミと混泳させるような大きめのが欲しい!」というのであれば漁港などで釣るのもおすすめです。

なおアクアリストが採集できるサンカクハゼ属の魚は本種、ヒレフリサンカクハゼだけといえます。ほかの種類については5mの深さまで潜らなければ見られないようで、よほど潜水技術が優れていないと出会うことはできないでしょう。

購入する

サンカクハゼはめったなことでは輸入されることなく、沖縄産のものがたまに入ってくることがある程度です。沖縄便に強い海水魚店では購入できますが、それ以外のお店では購入できません。購入する際はほかの魚同様、鰭が溶けていないか、体や鰭の一部が赤くなっていないかなどチェックが必要です。また状態のよいものは透明感のある色彩ですが、体全体が妙に白っぽいようなものも購入してはいけません。

サンカクハゼとほかの生物との関係

ほかの魚との関係

▲サンカクハゼ(右)とヒメカザリハゼ(左)

サンカクハゼはほかの魚との混泳も可能です。写真は同じ場所で採集したヒメカザリハゼとのツーショットです。ヒメカザリハゼは小型種であり比較的おとなしめの性格のようですが、同属のクツワハゼなどはやや大きくなり、性格もきつくなるので注意が必要です。成魚はさまざまな魚との混泳に適していますが、大型魚やスズメダイ・メギスなど気性の激しい魚、肉食魚との飼育はいけません。ハゼの仲間は体が細めのものが多く、肉食魚に捕食されるおそれもあるからです。成魚に近いサイズのものであれば、カクレクマノミなどとの混泳もできます。

サンゴ・無脊椎動物との相性

基本的に問題ありません。ただしサンカクハゼの大きい個体は尾部をひねって砂を撒き散らかすことがありますのでサンゴを水槽の底のほうに配置するのは避けたほうがよいでしょう。イソギンチャクはハゼやカエルウオを食べてしまうので同じ水槽で飼ってはいけません(ただしディスクコーラルの小ぶりのものや、スナギンチャク系は問題なし)。また大型の甲殻類(大型のエビ、大型のカニ、大型のヤドカリ、オトヒメエビなど)はハゼを襲うことがあるので入れないようにします。とくにオトヒメエビはカラフルな色をしていて入れたくなりますので注意が必要です。

サンカクハゼ飼育まとめ

  • 地味ながら透明感のある色が特徴的なハゼ
  • 体の断面が三角形なのが特徴
  • 共生ハゼのように見えるがテッポウエビと共生しないとされる
  • 小型水槽でも飼育できるが45cm以上の水槽が最適
  • 小型水槽では外掛けろ過槽と外部ろ過槽を使用、60cm以上では上部ろ過槽かオーバーフローが最適
  • 水温は25℃
  • 砂を敷いてあげると落ち着く
  • 餌は最初から配合飼料を食べるがペレットフードが適している
  • 沖縄便に強いお店で販売していることが多い
  • 多くの魚と混泳させられるが、肉食魚はだめ
  • サンゴには基本的に無害だが、尾部で砂をまき散らすことも
  • イソギンチャクや大型の甲殻類はだめ

2020.04.21 (公開 2020.04.20) 海水魚図鑑

ホシササノハベラの飼育方法~アクアリストよりも釣り人になじみ深いベラ

ホシササノハベラはベラ科・ササノハベラ属の魚です。ササノハベラ属は温帯域に多いベラで、日本にはこのホシササノハベラとアカササノハベラが知られていますが、従来はこの2種は同じ種とされていました。カラフルな色彩、派手な模様が多いベラ科の仲間としては地味で観賞魚としてはあまり人気のない魚ですが、釣り人にはお馴染みの魚です。今回はこのホシササノハベラの飼育方法についてご紹介します。

標準和名 ホシササノハベラ
学名 Pseudolabrus sieboldi Mabuchi and Nakabo, 1997
英名 Siebold‘s wrasse
分類 スズキ目・ベラ亜目・ベラ科・ササノハベラ属
全長 20cm
飼育難易度 ★★☆☆☆
おすすめの餌 大型魚用の配合飼料、イカ、エビなど
温度 23℃前後
水槽 90cm~
混泳 ほかの大きめの魚と飼育する。小型魚や甲殻類などは食べてしまうことも
サンゴとの飼育 岩組を崩されないよう注意。温帯性でサンゴはあまり似合わない

ホシササノハベラって、どんな魚?

ホシササノハベラはベラ科・ササノハベラ属の魚です。日本の沿岸(琉球列島は除く)の広い範囲に見られる温帯性のベラです。派手な種類の多いベラ科のメンバーではありますが茶褐色や灰色に近い緑色という比較的地味な魚で、観賞魚店ではまずおめにかかれませんが、砂地のそばの磯では簡単に釣ることができる釣り人におなじみのベラです。磯釣りでお馴染みなので「磯べら」と呼ばれていますが、やや深い場所から釣れることもあります。タイやメバル、イサキ釣りの外道として扱われがちですが、食べてもおいしい魚で、磯で釣れたものを飼育するのも楽しいでしょう。なお、日本産ササノハベラ属はこのホシササノハベラとアカササノハベラの2種が知られています。

近縁種アカササノハベラとの違い

▲アカササノハベラの雌。ホシササノハベラに似ている

従来はホシササノハベラ・アカササノハベラ両種ともに「ササノハベラ」と呼ばれていましたが、1997年に「ホシササノハベラ」と「アカササノハベラ」の2種にわけられました。

学名については従来はPseudolabrus japonicusという学名が使われていましたが、この学名をもつ種の原記載は日本産のどの種のベラでもないとされ、ホシササノハベラにはあらたな学名が与えられました。アカササノハベラは中国をタイプ標本とするPseudolabrus eoethinusと同定されました。

アカササノハベラとホシササノハベラの見分け方は頭部の線にあります。頭部には線が複数本ありますが、そのうちもっとも下方にある線が胸鰭基部に達しないのがホシササノハベラ、達するものがアカササノハベラです。ただしアカササノハベラの大型の雄では模様が途切れてしまうこともあるので注意します。アカササノハベラの雄は紫と黄色という派手な色彩をしておりますが、雌はホシササノハベラににた地味な色です。しかし目立つ白色斑がないので見分けることができます(斑点はないが白色の不明瞭な横帯がでることがある)。

ほかのササノハベラ属

ササノハベラ属は太平洋の温帯域とオーストラリア周辺海域に10種が知られています。多くが温帯種で、日本周辺にすむ2種をのぞき南半球に分布しています。その中には魅力的な種も含まれていますが、残念ながらササノハベラ属はマイナーな属でほとんど輸入されることがないのですが、以前にレッドバンデッドラスというオーストラリア産の種が大阪のブルーハーバーで販売されていたことがありました。しかしめったに見られる種ではありません。また入荷してもどうしても高価になってしまいます。

ホシササノハベラ飼育に適した環境

水槽

全長20cmほどになるため、最低でも90cm水槽での飼育が望ましいといえます。多く魚を入れたいのであれば120cm水槽での飼育をおすすめします。オーバーフロー水槽が最適でしょう。

水質とろ過システム

硝酸塩の蓄積には強めですが、といって汚い水で飼育するのはよくありません。きれいな海水で飼育するようにしましょう。ろ過槽はホシササノハベラに適した水槽サイズを考えると上部ろ過槽か、オーバーフロー水槽にしてサンプでろ過する方法の二択になります。ただ上部ろ過槽だけでの飼育はおすすめしません。上部ろ過槽をメインにし、外部ろ過槽を補助的に用いたり、プロテインスキマーも使うとよいでしょう。後述の理由から水を汚しやすいからです。

水温

水温はやや低めの23℃前後がよいでしょう。ササノハベラの仲間はどの種も温帯性が強く、28℃くらいと高めの水温では餌をなかなか食べないことがあるので、高水温は避けます。もちろん水温の変動が大きいと、丈夫なホシササノハベラといっても病気になる可能性もあるため避けなければなりません。常にヒーターとクーラーを使用して一定の水温を保つように心がけましょう。

砂と隠れ家

ササノハベラ属は砂に潜ることはあまりないとされていますが、我が家では岩の下に潜ろうとする様子が観察できました。ただし我が家の水槽では岩の隙間など眠れるような場所が少なかった、という可能性もあります。また文献によれば夜間は岩陰で眠るが冬は砂中で冬眠する旨の記述もありますので、粗目の砂はあったほうがよいかもしれません。

ホシササノハベラに適した餌

ホシササノハベラは動物食性が強いのですが、多くの場合配合飼料を食べることが多いです。しかしかなり大きく育ったものは最初から配合飼料を食べるとは限らないので、最初は生の(一度冷凍したものを解凍したものがのぞましい)エビやイカの切り身などを食べさせたほうがよいかもしれません。ただしこのような餌は栄養のバランスが偏りやすく、また水質悪化も招きやすいので注意が必要です。先述のとおり、ろ過槽はしっかりしたものを選ぶ必要があります。

ホシササノハベラをお迎えする

ホシササノハベラは近海魚に強いお店であれば扱っていることもありますが、観賞魚店ではほとんど見ることはできません。本州~九州沿岸の釣りではそこそこよく見られる種で、内湾のような場所で多く見られます(一方荒磯ではアカササノハベラが多くなりますが、ホシササノハベラとアカササノハベラの両方の種が同じ場所で見られることも)。これを釣って飼育するのが簡単といえます。

ただし、何も考えず釣っただけでは上手く飼育することは困難です。夏の防波堤の上に置いたら魚の体表が焼けてしまうおそれもあります。しっかりしたケアが必要になります。ただどうしても針を深くのみこんでしまったものや、肛門から内臓が出てしまっているもの(船釣りで釣れたものに多い)、釣れた時点でひっくりかえってしまっているものは、飼育には向きません。食べたらおいしい魚ですので飼育が出来そうにないものは持ち帰って食べてあげるとよいでしょう。

ホシササノハベラとほかの生物との関係

ほかの魚との混泳

▲同じような温帯性の魚との混泳が最適

大きめのスズメダイやテンジクダイの仲間であれば混泳可能です。おそらくアイゴやウミタナゴなど、ほかの魚との混泳も大丈夫でしょう。ただ温帯性の魚ですので、あまり熱帯の海水魚との混泳には向いていないところがあります。このほか小さなハゼなどは捕食してしまうおそれもありますので注意が必要です。

サンゴ・無脊椎動物との相性

ベラの仲間のほかの多くの種と同様、ホシササノハベラも甲殻類は大好物です。そのため甲殻類と一緒に飼育しないほうがよいでしょう。サンゴは基本的には無害ですが温帯性のホシササノハベラにはあまり似合わず、ホシササノハベラが大きいと岩組を崩してしまうこともあります。

ホシササノハベラ飼育まとめ

  • 磯に多く生息し、釣り人には「磯べら」とも呼ばれる
  • 従来はササノハベラとされていたが2種に分けられている
  • ササノハベラ属はオーストラリア周辺の温帯域に多く知られる
  • 大きくなるため90cm以上の水槽が欲しい
  • 水を汚しやすくオーバーフローシステムが最適
  • 水温はやや低め、23℃くらいがよい
  • 隠れ家は用意してあげたい
  • 餌を食べないときは生の餌を与える
  • 釣ったものを飼育するとよいが、釣った後のケアをしっかり
  • 大きめの魚との混泳は可能だが、小魚や甲殻類は食べてしまうことも
  • サンゴとの飼育もできなくはないが、あまり似合わない。岩組を崩すこともあるので注意

2020.04.22 (公開 2020.04.16) 海水魚飼育の基礎

群れ・複数の混泳におすすめの海水魚と注意点

海水魚は鮮やかな色彩をしているものも多く、同じ種類の海水魚を水槽内で群れで泳がせてみたくなるものです。しかしながら、実際には海の中で群れている海水魚であっても、狭い水槽の中では激しく争うなんていうこともあります。しかし、中には群れで飼育することもできるような海水魚がいます。今回は同じ水槽で何匹も入れても大丈夫な海水魚をご紹介していきます。

海水魚の群れ

海水魚は海の中では群れでいるもの、単独でいるもの、あるいはペアやハーレムを形成するものなどがいます。しかし、これらの魚を狭い水槽で飼育すると争いがおこることもあります。魚は餌をめぐって、縄張りをめぐって、あるいは繁殖の相手をめぐって争うのです。しかし中には同じ種類であっても、水槽でも群れで飼育できる魚もいますし、逆に群れで飼育してあげるのが望ましい魚もいます。

海で群れていても水槽内では争うものも

▲ニザダイ(ハギ)は1匹だけにとどめたほうが無難かもしれない

一方海で群れていても飼育水槽内では争うものもいます。ヤッコの仲間は海の中ではハーレムをつくるのがいますが、水槽内では争うことも多くペアしか残らないことも多いです。ニザダイの仲間は海では非常に大きな群れをつくるのですが、水槽内で同じようなことをすれば激しく争うことになりますので、水槽内ではニザダイは1匹にとどめたほうが賢明です。

水槽内でも群れてくれる魚

ここに挙げたほかにも水槽内で群れる魚はいます。小型のハナゴイの仲間や、スカシテンジクダイ、ネオンテンジクダイ、一部のイソハゼの仲間などです。しかしながらこれらの魚は初心者に難しいこともあり、今回は除外とさせていただきました。

キンセンイシモチ

▲キンセンイシモチは群れで飼育できる

キンセンイシモチはテンジクダイの仲間でも複数個体で飼育しやすい魚といえます。オレンジ色の体に白い線が入るという美しい体が特徴的で、性格もおとなしめということで同種同士での飼育に向きます。ただし、この種はやや水質悪化に弱いところがあり、汚い水で飼育していると病気になりやすいので注意が必要です。またキンセンイシモチの含まれるスジイシモチ属の魚には、スジイシモチやオオスジイシモチなど気が強めの魚もいるので注意が必要です。

イトヒキテンジクダイ

▲イトヒキテンジクダイも群れで飼育できる

イトヒキテンジクダイもおとなしいテンジクダイで、群れで飼育することができます。内湾のサンゴ礁に多く、枝状のハマサンゴと一緒に飼育すると雰囲気がでます。ただし本種はスレ傷にやや弱い面もあり、輸送に弱いところもありますので、できれば沖縄などから入荷したものを購入することをおすすめします。また近縁種であるウスモモテンジクダイも同様に温和で混泳向きのテンジクダイです。

このほか、おなじように半透明の体をしているスカシテンジクダイやネオンテンジクダイなども群れを作りますが、このようなテンジクダイはスレ傷に非常に弱いため初心者には飼育しにくい面があります。また筆者も長期飼育の経験がなく、今回は省略させていただきました。

クロユリハゼの仲間

▲オグロクロユリハゼは臆病なので要注意

クロユリハゼの仲間も海水魚店で多くみられ、いずれも同種同士の混泳が可能です。そのため群れで飼育することができます。特にクロユリハゼの仲間は臆病なので群れで飼育してあげたいものです(それでもスズメダイやクマノミ、メギスといった性格がきつい魚との混泳は避ける)。特にオグロクロユリハゼは多くの個体を入れてあげるようにします。

この属でもっともカラフルなものはスジクロユリハゼですが、この種も臆病なので多数入れてあげましょう。しかしながらこの種は高価な魚ですので数をそろえるのはちょっと難しいかもしれません。

サツキハゼの仲間

▲サツキハゼの群れ。中央はハタタテハゼ

サツキハゼの仲間も群れでみられるクロユリハゼ科の遊泳性ハゼです。派手さはないものの薄いグリーンがよく見るときれいな種です。この種は海でも大きな群れでみられますが、水槽でも群れてくれます。というよりは大変臆病な魚のため、できるだけ群れで飼育してあげたい魚といえるでしょう。けんかもせず同種同士の組み合わせで悩むことはほとんどない魚といえます。サンゴ岩に隠れていることも多いため、存在を忘れてサンゴ岩を干してしまうことのないよう注意が必要です。沖縄にはサツキハゼのほか、ヨスジハゼやミヤラビハゼといった種もおり、同様に飼育できます。

基本的に遊泳ハゼは多くの種が同種同士で飼育できますが、ハタタテハゼ属はペア以外の同種同士で争うこともあるので注意が必要です。

デバスズメダイ

▲デバスズメダイの群れ

性格がきついスズメダイの仲間としては例外に、おとなしいデバスズメダイであれば複数飼育可能です。ブルーグリーンの美しい魚で、群れで飼育してあげると本来の魅力を発揮する魚です。スズメダイらしく丈夫で飼育しやすい面もありますが、水槽の水が汚かったりするとウーディニウムなどにかかりやすくなるのできれいな水で飼育してあげることが重要です。また輸入されてくるものはダメージをうけていることもあり、状態が落ち着いた個体を飼育するようにしましょう。

スズメダイ科の魚としてはソラスズメダイやオヤビッチャなども海では群がっていることが多く、水槽に多数入れてしまうことが多いですが、小型水槽ではすぐに激しく争うのでやめたほうが無難です。一方あまり群れを作らないシマスズメダイやメガネスズメダイはかなり気性が激しいので同種同士はもちろん、ほかの魚との混泳さえ厳しいこともあります。

水槽内で群れを再現する際に気を付けるべきポイント

90cm以上の水槽で飼育したい

上記の魚を入れて群れを再現するとなると、当然ながら多くの魚をひとつの水槽に入れることになります。しかし狭い水槽だと水量が足りない状態に陥りやすいので、成魚サイズが極めて小さいサツキハゼなど、一部の魚をのぞき90cm以上の水槽で飼育してあげるのが賢明でしょう。

問題発生時には退避させられるように

海水魚店では同じ種類のニザダイ(ハギ)やヤッコなど、同種同士を組み合わせていることがありますが、実際に家庭用水槽でおこなうのは問題があります。海水魚店であればある程度魚のパワーバランスを把握しており、いっしょにするのが難しいと思ったら別の水槽に移動させるということもできます。ただし、これができるのは海水魚店のみ。家庭の水槽ではどうしてもほかの同じくらいの大きさの水槽に~なんてことはできないのです(たくさんの水槽を所有している方は別です)。

今回ご紹介した魚も基本的には同種同士で飼育できる比較的おとなしい魚ですが、産卵期で卵を守っているときなど、なにかが原因でほかの個体を追い掛け回すこともあるのでできるだけ問題発生時に対処ができるよう、ほかの水槽もあったほうがよいでしょう。デバスズメダイを隔離するのであれば45cm水槽があれば十分でしょう。もちろんそれに適したろ過槽や水温調整も必要です。

隔離用のケースは小型の魚には最適ですが、大きい魚を隔離することはできないので注意が必要です。「ビックフィッシュハウス」はその中では大きいほうですが、小魚2~3匹が限度でしょう。

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水流を発生させてあげよう

▲水流は海水魚飼育にも重要な要素

魚が増えると当然呼吸をしますので、水中の酸素量は減っていきます。水槽に酸素を増やすためには波を発生させ酸素を水に溶け込ませるとよいでしょう。とくに外部ろ過槽しか使用していない水槽では酸欠になりやすいため、水槽にしっかりと酸素を溶け込ませるようにしたいものです。水流といえばサンゴ水槽ですが、魚水槽でも効果があるので設置してあげたいものです。また隔離ケースを使用するならばケースの中がよどまないよう水流をしっかりあてておきたいところです。

ろ過装置は大丈夫?

魚が増えると酸素が減る一方、餌を食べて排せつ物の量も増えますので、当然ろ過装置も大きな能力を持つものが必要になってきます。外部ろ過槽はパワー不足の状況に陥りやすいので補助的に使用するにとどめ、上部ろ過槽をメインに使用するようにしましょう。もちろんオーバーフロー水槽で飼育できるのであれば、オーバーフロー水槽の導入が最適です。

購入時には状態をよく観察しよう

群れをつくる魚を購入する前に注意しておかなければならないポイントとしては「購入時に状態をよく観察すること」です。群れをつくるタイプの魚は比較的安価なものが多く、雑に扱われてしまうものが多いからです。スカシテンジクダイのような体が透けている種やイトヒキテンジクダイなど、体に透明感がある種は、妙に白っぽくなっているものは絶対に避けます。もちろん体や鰭に赤いただれがあるもの、白い点がついているもの、傷がついているもの、泳ぎ方がおかしいものなども購入してはいけません。

またオグロクロユリハゼなどのクロユリハゼの仲間や、ハナダイの仲間の小型のものなどはやせやすいので特に状態には気を使うべきです。腹部がへこんでいるものや背中の肉が落ちているものなどは購入しないほうがよいでしょう。

混泳相手にも注意をはらおう

▲メギス(ドティバック)の仲間は美しいが気性も激しい

群れをつくる魚は混泳相手にも注意をはらわなければなりません。そもそもなぜ魚は群れをつくるのか。それは肉食性の強い魚から逃れるためです。一匹でいると肉食の魚に狙われやすいのです。水槽のような狭い環境下では、群れていても肉食性の魚に狙われることがあります。また肉食性でなくても、攻撃性の強い魚は避けます。とくにミツボシクロスズメダイやヒレナガスズメダイ、メギスなどはほかの魚をいじめてしまうことがあるのでやめたほうが無難です。イトヒキテンジクダイの群れであればカクレクマノミやデバスズメダイ、ハナダイ、各種カエルウオや各種ハゼは問題ありません。デバスズメダイは大きめの魚との混泳もでき、大型ヤッコや大きめのハナダイ、ニザダイ(ハギ)類との混泳もこなします。

群れを作る海水魚まとめ

  • 海水魚は海では群れていても水槽内では争うものも多い
  • 水槽内でも群れをつくるものがいる。複数飼育するならそういう種を選びたい
  • キンセンイシモチやイトヒキテンジクダイなどテンジクダイの仲間は複数飼育できる種が多い
  • 遊泳性ハゼも多くの種類が同種同士群れで飼育できる
  • スズメダイ科ではデバスズメダイが温和で群れで飼育できる
  • 海水魚を群れで飼育するならば90cm以上の水槽で飼いたい
  • 問題発生の際には退避できるように別水槽が欲しい
  • 水流やろ過能力にも気を使いたい
  • 群れる魚は安価な魚が多く魚の状態にも気を付けるべき
  • 強いスズメダイやメギス、肉食魚との混泳はさせてはいけない

2020.04.15 (公開 2020.04.13) サンゴ図鑑

海藻と海草の違い~アクアリウムでお馴染みのクビレズタやサボテングサはどっち?

海藻と海草、どちらも「かいそう」と読みますが、分類的には大きく異なる生物です。まず、海草というのは、顕花植物で種子で増えていきますが、海藻はコケに近い仲間で胞子を出して増えたり、ランナーを伸ばして増えていきます。さらに海草は陸上の植物同様、葉・茎・根の役目がしっかりしていますが、海藻はそれぞれ機能が分化しているということがないのも特徴といえます。また淡水で飼育される水草はその多くが海草と同様顕花植物です。今回は海藻と海草の違いをご紹介します。

海藻とはなにか

▲千葉県の磯でみられる海藻

▲海藻の中に群れるメジナの幼魚

海藻は根・茎・葉のようにみえるものがありますが、あくまでも「みえるもの」であって、実際にはそれぞれの機能が分化しているということはなく、海草や淡水の水草とはまた別の分類群です。種類が非常に多く、一般に食用としているものはこちらであることが多いです。

海藻が多く生える場所は「藻場」と呼ばれ、魚の稚魚や小魚のすみかになります。またアイゴやメジナ、ブダイといった魚やヤドカリ、ウニの餌場でもあり、またこのような生物を捕食するような大きな生き物もやってきます。ただし高水温には弱いのか、夏になると海藻の量はだんだんと減っていきます。

海藻は大きく「褐藻」「紅藻」「緑藻」の3種に分けられます。食用となるコンブやワカメ、ヒジキ、アクアリウムではありがたくないアミジグサなどは褐藻、オゴノリや一般的に海苔に加工されるタイプのノリ、ほかマクサ、ユカリ、フクロノリなどは紅藻、おなじみのウミブドウことクビレズタを含むイワズタの仲間、ミルの仲間、アオサの仲間、サボテングサの仲間などは緑藻で、アクアリウムでは厄介者扱いされるシオグサやバロニア、ハネモなどもこの仲間です。

なお、海藻の飼育についてはこちらの記事をご覧ください。

海草とはなにか

▲アマモ。茶色いものはウミサボテンと呼ばれる動物の一種と思われる

▲水草もこちらの仲間

海草は顕花植物とよばれ、花をつけるタイプの植物です。淡水に見られる水草のほとんども、海藻よりは海草にちかい仲間です。水草の仲間にもオオカナダモやアヌビアスなどきれいな花をつけますが、アマモもこれらの水草ほどではないのですが小さな花をつけます。海草の仲間も海藻が藻場をつくるようにアマモ場を作り、内湾に住む魚に隠れ場所と餌場を提供しますが、現在埋め立てなどによりアマモ場は減少しており、近年アマモ場の再生事業が日本の各地で行われています。なお、「海藻」「海草」はどちらも「かいそう」と読みますが、混乱を防ぐためあえて海草のほうを「うみくさ」と呼んでいることもあります。アマモは食用とされることがありますが、海藻類とちがい食卓にはなかなかあがらないようです。

アマモなどの海草類は陸上の植物同様、砂の中に根っこを張っており、そこから栄養を吸収しているところは一般的な海藻とことなるところです。海藻は基本的に根が岩などに固着し、流されるのを防ぐためについていることが多いのです。また海草は陸上の植物同様「葉」「茎」「根」の役割がしっかりしていますが、海藻は先ほども述べたように葉や茎の役割がしっかりとわかれていないようです。葉や茎のようなもの全体で光合成をして成長していきます。また海草は顕花植物であり種子で増えますが海藻は胞子で増えたりランナーを伸ばすなどして増えるなど、生態も大きく異なる生物です。マリンアクアリウムにおいては、海藻と海草を合わせたものとして、「マリンプランツ」という用語が使用されていることがあります。

マリンアクアリウムでおなじみの海藻・海草

▲海藻の一種サボテングサ。とても飼育しやすい

一番アクアリストにお馴染みの海藻は食用としても知られる「ウミブドウ」ことクビレズタでしょう。クビレズタは海藻の中でも特に飼育しやすく、じゃまなほどよく増えていきますので間引くのが重要です。また魚やサンゴを飼育する水槽とは別に水槽を設け、その中で海藻を育て栄養塩を吸着させ、適度に間引くことにより水槽内の栄養塩の濃度を減少させることもできます。また取り除いた海藻をニザダイやアイゴ、ヤッコなどの海水魚の餌として利用することもできます。

緑藻の仲間にはほかにもミルやサボテングサなど、アクアリストにお馴染みのものが多くいます。しかしながら紅藻や褐藻などはアクアリウムで飼育されるようなものはほとんどおらず、また飼育もやや難しいとされてますが、それでもアミジグサなどの一部の種は爆発的に増えてしまうことがあります。そうなるとウニに除去してもらう必要が出てきたりします。

海草の仲間は種類は少ないですが、アマモ類やリュウキュウスガモなど一部の種類が入ってくることがあります。なかなか入荷しないのですが、こういうのを育ててみるのも面白いでしょう。ただし飼育については強い光が必要であるなど、クビレズタなど緑藻よりも難しいところがあります。初心者が水槽にマリンプランツを導入するのであれば、クビレズタやスズカケズタといったイワズタの仲間や、サボテングサの仲間が最適でしょう。

海藻も海草も、光合成のために鉄分はかかせません。そのため鉄分の添加もしておきましょう。ただし鉄分は海藻・海草に欠かせないだけでなく、コケにとっても光合成に欠かせないものです。したがって過剰な添加は避けなければなりません。とくにリン酸塩の濃度が高い場合は注意が必要です。

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海藻と海草まとめ

  • 海藻と海草はどちらも「かいそう」と読むが全く違う仲間である
  • 海藻はコケに近い仲間のようで胞子を出すなどして増える
  • 海草は海産の顕花植物で種子を出すなどして増える
  • 海藻は葉・茎・根の役割がしっかり分かれている
  • 海藻・海草をあわせて「マリンプランツ」とよぶ
  • 海藻のほうが種類が多くマリンアクアリウムでも一般的
  • 光合成するため鉄分も必要になるので添加してあげたい

2020.10.17 (公開 2020.04.10) 餌・添加剤

オメガワン マリーンペレットを検証!澱粉だけでなく魚粉さえ排除したプレミアムフード

「オメガワン マリーンペレット」(以下マリーンペレット)はアメリカのオメガシーが製造する餌で、日本においてはナプコリミテッドが輸入販売する配合飼料です。この餌は新鮮さにこだわり魚粉を使用せず、アラスカ産のシーフードをふんだんに使用、色素もサケやマリーゴールドなどの天然色素を使用し、さらに澱粉も使わず水を汚しにくい特徴があります。

さらにガーリックや不飽和脂肪酸も入っており魚の健康のことも考えて作られたプレミアムフードです。今回はこのマリーンペレットについて解説します。

マリーンペレットの特徴

「オメガワン」というのは餌の名称ではなく、アメリカのオメガシー社の餌のブランドです。オメガワンからはペレットフードのほかフレークやタブレットフードなども販売されており、海水魚用の餌のほかにキンギョ用の餌やネオンテトラなどの淡水魚用の餌、ベタ用などの餌が多数販売されています。アメリカではほかにも冷凍のアラスカ産シュリンプなど様々な餌が市販されているようですが、日本国内ではあまり多くの種類は販売されていません。このマリーンペレットは海水魚の餌では特徴的な二つの特徴をもっており、おすすめのフードのひとつです。

鮮度へのこだわり

マリーンペレットはほかの海水魚用フードと明らかに異なる特徴があります。それは魚粉を一切使用していないということです。ほかの多くの製品は魚粉を使用していますが、この餌はアラスカで漁獲された魚(とくにサケ類)を急速冷凍したものをオハイオ州の工場で加工しています。このほかエビやラウンドニシン、タラなどを使用しているようです。

魚粉を使用していないほか、つなぎとして澱粉を使用しないのもこだわっているところです。魚粉や澱粉は水質を悪化させやすいことが理由です。とくに澱粉は水に溶けやすく、水を汚しやすいので注意すべきポイントといえます。

健康へのこだわり

マリーンペレットは魚の免疫力維持に必要な不飽和脂肪酸を強化配合しており、その点もすぐれているところといえます。また魚の健康によいとされるガーリックも2%ほど配合しており、健康へのこだわりがうかがえます。ただしこのマリーンペレットは小麦粉も使用しているようで、小麦粉を使用しないシグマ・グロウと比べると消化はあまりよくないかもしれません。

成分(Omega seaのウェブサイトより)

サケ、ニシン、小麦粉、小麦胚、ピープロテイン(エンドウが由来の植物性たんぱく質)、エビ、グルテン(小麦由来たんぱく質)、ニシンオイル、ケルプ(海藻)、ニンニク粉末、スピルリナ、クエン酸、アスコルビン酸、ビタミンE、トコフェロール、マリーゴールド抽出物(色素?)、ナイアシン、イノシトール、アスタキサンチン、カンタキサンチン、リボフラビン、ビタミンA,ビタミンB12

マリーンペレットのサイズ

▲ノーマルサイズのマリーンペレット

マリーンペレットにはふたつのサイズがあります。ノーマルサイズのマリーンペレットと、小型のマイクロペレット・マリーンの二つです。マイクロペレット・マリーンのサイズはランダムサイズですが、小型の魚が捕食しやすいサイズになっています。また同じマイクロペレットのシリーズでは「スーパーベジ」「スーパーカラー」も販売されており、それぞれ藻類食魚向けのものと、色揚げ用のものになります。この二つは淡水魚にも海水魚にも適し、淡水のシュリンプにも適した餌ということです。

実際に与えてみました

▲実際にあたえているところ。スプーンは付属しないので注意

▲クマノミやセグロマツカサなどが餌に集まる様子

ほかの餌同様そのまま指でつまんで与えたり、スプーンを使用して与えたりします。ただし小粒のマイクロペレット・マリーンのほうにはスプーンがついているものの、大粒のマリーンペレットにはスプーンがついていませんので自分で用意しなければいけません。ちなみに私はバイタリス(エムエムシー企画レッドシー事業部)のサンゴフードに付属していたスプーンを使用しています。実際に与えてみますと、クマノミの仲間や大型のスズメダイ、口の大きなアカマツカサ系などに適しているといえますが、小型のスズメダイやカクレクマノミはなかなか口に入れられません。量は飼育している海水魚によって異なりますが、1回の給餌では大体5分くらいで食べつくす量がよいでしょう。マリーンペレットは水を汚しにくいようにはなっているのですが、それでも与えすぎると水を汚してしまうことがあるからです。

マリーンペレットは沈むスピードが早めですが一部は水面を漂います。より小粒のマイクロペレット・マリーンではさらに長く水面に浮かんでいます。

オメガワン マリーンペレットを購入する

どこにでもあるような「メガバイトレッド」などとは異なり、お店によっては取り扱っていないこともあるため、通販で購入するのが確実かもしれません。ほかのナプコリミテッドが扱う商品(殺菌灯ライフガード、マキシジェット、インスタントオーシャンなど)を販売している店舗である場合、注文したら入れてくれるかもしれません。ただし、迅速に手に入れて試したいのであれば、通販で購入するのが確実でしょう。

まとめ

  • アメリカ産の新鮮な魚類を使用したプレミアムフード
  • 魚粉や澱粉を使用せず水を汚しにくい
  • 不飽和脂肪酸やガーリックを配合し魚の健康にも配慮
  • 小麦粉を使用しており消化吸収性は少し劣るかもしれない
  • サイズは2種あり。マイクロペレットマリーンにはスプーン付属
  • 早く水底に沈みやすい。マイクロペレットマリーンは浮かぶ時間が長い
  • 販売していない店もある

2020.04.10 (公開 2020.04.08) 餌・添加剤

カクレクマノミにおすすめの餌~ランキング形式で紹介

海水魚店へ行くと、「海水魚の餌」としてさまざまな餌が販売されています。そのどれもが海水魚に適した餌といえるのですが、あまりにも餌の種類が多すぎて、購入にあたり悩んでしまうこともあるかもしれません。今回は海水魚店でよく見られ、かつ最もよく飼育されている海水魚である(と思われる)、カクレクマノミに最適な餌を3つピックアップしてみました。

カクレクマノミにおすすめの餌ランキング

1位:どじょう養殖研究所 シグマ・グロウ

私がイチオシする餌は高知県のどじょう養殖研究所がつくる「シグマ・グロウ」という餌です。この餌の特徴は小麦粉類を排除している点にあります。海水魚は小麦粉の類を消化しにくい魚も多く、小麦粉を餌の成分から排除することにより、より消化吸収に優れた餌となります。さらにアミノ酸も配合し嗜好性も高く、EPAやDHAなど必須脂肪酸も多く含むなど、魚の健康に配慮した餌となっています。

ほかの多くの配合飼料と同様、シグマグロウにもサイズがいくつかありますが、カクレクマノミに与えるのであれば幼魚が「B」、成魚なら「B」もしくは「C」がよいかもしれません。我が家では「B」と「C」を与えていて、それよりも大型になるクマノミなども「D」で足りてしまいます。唯一、残念な点としては後述の「メガバイトレッド」と異なり、どこの海水魚店にも卸しているわけではないため、若干入手が難しいことがあげられます。取扱店が近くにないときは「チャーム」などの通販サイトを使用して購入するのが最適といえます。

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2位:キョーリンひかりプレミアム メガバイト レッド

キョーリンから販売されている「メガバイト レッド」もカクレクマノミにおすすめの餌のひとつです。「メガバイト」は最高の食いつきを意味するようで、その名の通り嗜好性が高く、食べやすい餌といえます。このシリーズにはこのレッドのほか、メガバイト グリーンというのもあり、これはカエルウオやハギ(ニザダイ)、アイゴなど藻類を好む魚に最適の餌となっていますが、雑食性の強いクマノミを含むスズメダイの仲間にもよい餌です。

サイズは「S」「M」「L」という3種類からなり、飼育している魚の口のサイズに合わせて選ぶことができます。うれしいポイントとしてはプラスチック製のスプーンが付属しており、手を汚したり、餌が爪の中に入ったりすることがなく餌を与えることができます(衛生的にもGood!)。クマノミであればS、もしくはMサイズで十分です。また、キョーリンは観賞魚用の飼料メーカーのパイオニア的存在で、全国ほぼすべての海水魚専門店で取扱いがされており、入手が容易であることもメリットといえるでしょう。我が家ではカクレクマノミにSサイズのものを使用しています。

3位:ナプコリミテッド オメガワン マリーンペレット

アメリカのオメガシーが製造し、ナプコリミテッドジャパンが輸入販売している「オメガワン マリーンペレット」は海水魚用の人気のフードです。魚粉は使用しないでサケやオヒョウ、コッド、オキアミ、カサゴ、イカ、タコ、二枚貝、ケルプなど新鮮なシーフードを使用し、澱粉も使用しないこだわりの餌となっています。免疫力維持のために不飽和脂肪酸を配合し、ガーリックも2%配合するなど、魚の健康にも気を使っているこだわりのフードといえます。さらに魚粉や澱粉を使用しないことにより崩れにくく水が汚れにくいというのもうれしいポイントです。

マリーンペレットのサイズは2種類あり、それぞれ「マリーンペレット」「マイクロペレット・マリーン」という商品名です。小型のカクレクマノミなどであればマイクロペレット・マリーン、大型個体などはマリーンペレットが好ましいでしょう。我が家では大きめのクマノミにマリーンペレットを与えていますが、クマノミの仲間の幼魚や小型のスズメダイはマイクロペレットマリーンでないと食べにくそうです。おいていない店舗もあるのですが、チャームなど通販サイトでも購入することができます。

このほかの餌が悪いというものではない

今回は私がカクレクマノミの餌として実際に使用した配合飼料のランキングです。特徴が明確でありかつ使いやすい餌をご紹介しました。このほかにも様々なブランドや製品のものが販売されているのですが、これらの餌が悪い、といっているのではありません。なお、配合飼料はそれだけ与えていても魚を飼育することができるように作られているのですが、栄養の偏りを防いだり、餌に飽きさせないためにも2種類以上の配合飼料を与えることをおすすめします。

まとめ

  • シグマグロウは小麦粉類を排除、必須脂肪酸を強化し魚の健康にも配慮されている
  • メガバイトレッドは食いつきが非常によく、多くの海水魚店でも販売されている人気の餌
  • オメガワンは魚粉ではなく新鮮な魚を使用し、澱粉も使わないため水も汚しにくい
  • このほかの餌が悪いということはない
  • 栄養の偏りや飽きを防ぐためにも2種類以上の餌を使うのがおすすめ

2020.06.01 (公開 2020.04.06) メンテナンス

サンゴ岩やライブロックに生える草(シオグサ) の対策

シオグサはライブロックやサンゴ岩に根を張る硬い海藻(緑藻)の一種です。先端が枝分かれしており(枝分かれしていないこともある)、面白い海藻ですが、大繁殖してライブロックやサンゴ岩を覆いつくしてしまうことがありますので、まだ少ないうちに適切な方法で駆除する必要があります。今回はシオグサの駆除方法などをご紹介します。

シオグサとは

▲シオグサを顕微鏡で拡大してみたところ

ライブロックやサンゴ岩についている海藻です。分類学的にはクビレズタ(ウミブドウの名でお馴染み)同様に緑藻の仲間で、シオグサ目・シオグサ科に分類されています。イワズタの仲間よりも硬い海藻で、ライブロックやサンゴ岩にしっかり固着しています。なお、同じシオグサ目の海藻としてはホソジュズモなどが知られておりますが、ジュズモの仲間はほかの海藻などに絡まっていることも多く、リフュジウムなどで飼育されることも多いです。

なお、拡大写真に見られる円柱状のものは細胞とのことです。大きな細胞が集まり、一つのシオグサを形成するようです。一般にシオグサと呼ばれるものも何種かいるようですが、同定は難しいようです。

シオグサの害

▲シオグサに覆われてしまったライブロック

シオグサは海藻の一種で、ほかの魚やサンゴを襲うことはないのですが、繁殖力は強いようで、ライブロックやサンゴ岩を覆ってしまい、そうなると駆除するのは困難になってしまいます。そのため水槽内で発見したらなるべく早く駆除したいものです。アクアリウムの水槽ではライブロックやサンゴの土台などに紛れて入ってくることがあります、。

我が家の場合低栄養塩の環境でも、高栄養塩の環境でも生えてきており、あまり栄養塩の量による違いはないように感じましたが、このシオグサの仲間の海藻であるホソジュズモはよくリフュジウムなどで飼育されており、栄養塩を吸着して大きくなっていくようです。

シオグサ対策と効果のある生物

カエルウオの仲間は?

▲ヤエヤマギンポはシオグサを食べない

シオグサはクビレズタなどと同様緑藻の仲間です。カエルウオの仲間は壁面やライブロックに付着した藻類を食むのですが、海藻の仲間は食しません。カエルウオの仲間は海藻水槽でも入れられますが、緑藻のような海藻類を食しない、ということはシオグサも食べてくれないということになります。ヤエヤマギンポやカエルウオがシオグサを口に入れ食んでいるように見えることがありますが、これはシオグサを食べているのではなく、シオグサに付着している藻類を捕食しているようです。このほかクビレズタなど緑藻をよく食べるアイゴの仲間やハギの仲間も、シオグサはほとんど食べてくれません。そのため別の対策を考えなければなりません。

エメラルドグリーンクラブ

▲エメラルドグリーンクラブ

西大西洋に生息するクモガニの仲間で、雑食性ではありますが海藻類を好んで食べます。ただしこのカニは好き嫌いが激しいのか、ある個体はシオグサを食べてくれたのに、ほかの個体は全く食べてくれなかった、などということもあります。このほかやはり緑藻の一種であるバロニアなども食べますが、バロニアは傷つけると逆に大量発生を招くこともあるので注意が必要です。なお、海藻を食べるということはクビレズタなども当然食してしまいますので、海藻水槽には入れるべきではありません。さらに、まれに小さな魚、あるいは弱った魚などを捕食してしまうこともあるので注意が必要です。

引っこ抜く

ライブロックやサンゴ岩に生えているシオグサをつまんで引き抜く方法もあります。毒性がある海藻というわけではないので、手で引き抜くのもいいのですが、かなり硬い海藻のため硬いピンセットを使用して引っこ抜いたり、ハサミなどを使ったり、刃物の刃の部分で根っこごと削り取ったりするのが有効です。特に後者は効果抜群ですが、ライブロックやサンゴ岩がもろくなっている場合は大きく削れてしまうので注意が必要です。

最終手段

サンゴなどを接着していないライブロックであれば、暗いサンプの中などで何か月か置いておくと、シオグサを少しは減らすことができます。またライブロックでなくサンゴ岩であれば、水槽から取り出して、何日か乾燥させるのもよいでしょう。ライブロックの場合はライブロックについている生物などが死んでしまうためこの手段は使ってはいけません。文字通り「デスロック」になってしまうからです。

また、サンゴ岩に孔が開いていたり、小さな隙間が開いているときは小さなハゼやギンポ・カエルウオなどが潜んでいる可能性もありますので、乾燥させる前によくチェックをしましょう。とくに遊泳性のハゼのうち小型のものは孔のかなり奥のほうに潜んでいることもあります。

シオグサ対策まとめ

  • ホソジュズモなどに近縁な海藻の一種
  • クビレズタ(ウミブドウ)などと同様緑藻の仲間
  • 緑藻の仲間ではあるが硬い
  • カエルウオやニザダイ、アイゴなどは食べてくれない
  • エメラルドグリーンクラブは食べてくれるとされるが個体差も
  • 手やピンセットでつまむか、シオグサが生えている部分を削るとよい
  • 最終手段として光の当たらないサンプの中に入れシオグサを弱らせる方法も
  • サンゴ岩を乾燥させてもよいが、ライブロックは乾燥させてはいけない

2020.04.04 (公開 2020.04.03) 海水魚の買い方

チャーム館林店に行ってきました!海水魚・サンゴの状態をレビュー

これまで群馬県邑楽町にあった総合ペットショップ、チャームが館林市に移転しました。店舗は小規模なショッピングセンター「アクロス館林」の中にあり、2019年の春に移転したばかりの新しいお店です。かつて書店と靴屋だったテナント2店を合体させるカタチの巨大店舗となっています。なお、アクロス館林の中にはほかにリサイクルショップのオフハウス、ドラッグストアのウェルシア、100円ショップのダイソー、ドコモショップのテナントも入っています。

お店の名前 チャーム 館林店
運営会社 株式会社チャーム
お店の住所 群馬県館林市近藤町178-96
電話番号 0276-88-4828
営業時間 12:00-19:00
定休日 年中無休、ただし年末年始などは時短営業日あり
取扱い生体 海水魚・サンゴ・熱帯魚・両生類・爬虫類・哺乳類・小動物など
魚の状態 大型の店舗のわりに海水コーナーは小さ目。したがって量は少な目だが状態は悪くない
魚の種類 定番種が中心。チョウチョウウオやヤッコ、ハナダイなどはそろうが種類は多くない
サンゴの状態 フラグサンゴが充実、ミドリイシなど大きめのものもあるが少ない
ウェブサイト https://www.charm.co.jp/shop/
通販 https://www.shopping-charm.jp/

チャーム館林店へのアクセス

都心から自動車を使って行く場合、最寄りのインターチェンジ(IC)は、東北自動車道の館林ICになります。国道354号を左折し館林方面へ、高架を渡ったあとの「小桑原」を右折、国道122号に入り、「赤土町」交差点を左折し県道314号線へ入り、そのまま直進します。セブンイレブンのある「大谷町」交差点をカーブに入らず直進してすぐです。

新潟・前橋方面からは北関東自動車道「太田桐生IC」から国道122号を館林方面へ。「上小泉」を左折し国道354号へ入ったあと「赤堀」交差点(ファミリーマートあり)を左折し県道314号線へ入り直進2.3km先にありますが、ICから結構距離がありあまり便利とはいえません。小規模なショッピングモールの中のお店ですので、駐車場にも困りません。なお、鉄道の場合、最寄駅は東武鉄道小泉線「成島」駅になります。

チャームの店舗の特徴

新しい店舗だけにとてもきれいで、二店舗分(およそ300坪)のスペースがある巨大な敷地にアクアリウム用品からイヌネコ用品までペット関連商品や生物が多数販売されていますが、チャームのショッピングサイトを想像すると意外なほど器具の数は少ないです。一方、淡水の熱帯魚の数が多く豊富です。

通販サイトで人気のチャームらしく、通販で購入した商品を受け取るのにも使用することができます。通販サイトでは餌なども非常に多数の商品が紹介されていますが、店舗ではそれほど多数の商品が並んでいるわけではないので注意が必要です。おそらくそれらの商品は物流倉庫に入っていると思われ、チャームの実店舗はショールーム的な意味合いも強いといえます(訪問した際に見た感じでは、海水関係ではキョーリンの餌やレッドシーの添加剤、プロテインスキマーはニオス製の一部商品など必要最低限に絞っているような感じでした)。商品情報の上3ケタが「048」「068」「070」「080」「081」となっているものはチャーム館林店で在庫されている商品となっているようですが、現在はチャーム本店サイトのリニューアルなどもあり、商品番号が変更されている可能性もあります。それ以外の商品で購入したいのがあれば、あらかじめ注文しておいて館林店受け取りにすることができます。

海水魚・サンゴの様子

▲チャームのフラグサンゴ

ずらーっと大量にならぶ水槽の中にいる淡水の熱帯魚と比べて、海水魚は種類や数は少なめでした。チャームの通販サイトでも、海水魚が在庫切れになっていることも多くあり、最近海水魚にあまり熱心ではないのか、と思ってしまいます。ただし魚の状態は決して悪くはなく、いきいきと泳いでいました。スズメダイやカクレクマノミなど定番種は在庫もありましたが、一部は死んでしまっているものもいました。また値段も安価で、ヤッコや沖縄産チョウチョウウオの一部は来店限定特価販売となっていました。

フラグサンゴはお値段がリーズナブルなものも多いのですが、海外でフラグサンゴにしたものを輸入し、販売していることもあり、それは非常に美しい反面、非常に高価です。チャームは通販でもおなじみなのですが、マメスナギンチャクなど、店頭だけの特別価格で販売されているようなものもあります。全体的にサンゴは状態は悪くなかったのですが、フラグは一部にコケが生えていたりちょっといまひとつでした。また、買いやすいSPSの代名詞的存在であるシコロサンゴのフラグも「ミドリイシ」として販売されており、おまかせミドリイシなる商品を購入すると、シコロサンゴが届くということがあるかもしれません。なお、生物を購入したときにパッキングされる袋はチャームの通販サイトでおなじみの梱包そのまんまで、袋にはラベルがついています。

まとめ

  • 従来の邑楽店が移転してリニューアルした通販人気店の実店舗
  • 首都圏からの最寄りICは東北道館林IC。新潟・前橋方面は北関東道の太田桐生からだがアクセスはいまいち
  • チャーム通販で頼んだ商品を受けとることもできる
  • 新しい非常にきれいな店舗で売場面積はおよそ300坪
  • 海水魚の種類はやや少なめではあるが状態は悪くはない
  • サンゴはフラグサンゴが多く大きなサンゴも少ないがある
  • 「ミドリイシ」として販売されているものにシコロサンゴが混ざっていることも
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